自民党の石破茂前地方創生担当相が連日、メディアに露出し、安倍晋三政権への批判を強めている。東京都議選で自民党が惨敗し、安倍晋三内閣の支持率も急落する中、党内では「安倍降ろし」ととらえる見方も出ている。「ポスト安倍」をにらんで存在感の発揮に躍起なようだが、石破氏の「孤立化」に拍車がかかるリスクをはらむ。それでも批判は止まらない。

 石破氏は12日も都内での講演で政権批判を展開した。矛先は「地方創生」「1億総活躍社会」「人づくり革命」など政権が掲げる看板政策の変遷。「大河ドラマではないので、1年ごとに“出し物”が変わるのはいいことではない」

 昨年8月の内閣改造で閣外に出て以降、政権と距離を置く石破氏はメディアを通じ総裁任期の延長や憲法改正で異議を唱えてきた。都議選後はメディアの出演要請が殺到している。惨敗で揺れる「安倍1強」体制にあって、党内で異論を唱える貴重な存在となっているためだ。この10日間で新聞インタビューを含めた依頼は約20件にのぼり、日程の調整がつかず半分は断ったという。

 これまでの出演では「都議選が国政に影響を与えなかったことは一度もない。次の衆院選までに首相が謙虚に反省し、国民の共感を取り戻せるかどうかだ」(3日のテレビ東京番組)、「このままでは、もう一度国民の支持を失う。緊張感と責任感を取り戻さなければいけない」(8日の読売テレビ番組)などと批判を連発している。

 内閣改造と党役員人事を8月3日に控え、党内の多くは発言に慎重になっているが、石破氏周辺は「都議選でガタガタになった党を立て直すため、孤立無援になっても、もの申すべきだ」と指摘する。その上で「安倍降ろし」との見方を否定した。

 だが、石破氏には常に歴代政権の「倒閣」に関わった過去がつきまとう。平成5年に宮沢喜一内閣の不信任案に賛成し、21年には与謝野馨元財務相と首相官邸に乗り込み、当時の麻生太郎首相に退陣を促したことがあるからだ。

 それだけに、党内世論は冷ややかだ。参院のベテラン議員は「みんなで政権を支えようとしている今、批判することはない。野党が喜ぶだけだ」と漏らす。別の衆院議員も「政府・自民党が一番大変な時期に支える立場として力を発揮した方が求心力も高まる」と指摘し、「その方が党総裁選を見据えてプラスなのに、今の言動はマイナスだ」と断じた。

 「キジも鳴かずば撃たれまいと言っていると、日本がつぶれてしまう」。自身が率いる石破派の会合で、政権批判や不満が言いにくい雰囲気に苦言を呈した石破氏。10日のBS日テレ番組では「1羽撃たれても、その後続かずにダメだったらどうしようもないが、2羽目、3羽目、4羽目は必ず自民党にいる」と強調した。だが、党内で共感は得られていない。

7/13(木) 9:30配信 
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