7月2日に投開票を控えた東京都議会議員選挙。論戦は終盤を迎えている。昨夏に当選した小池百合子知事率いる都民ファーストの会が、これまで多数派を形成し都政に絶大な影響力を発揮してきた都議会自民党を、どこまで追いつめられるかが焦点だ。

 論戦の最大のテーマが、築地市場の豊洲移転問題だ。6月20日、都は従来の築地を取り壊した後に土地を売却する方針を改め、「築地は守る、豊洲を活かす」をスローガンに、豊洲と築地の両方を活用する方針を発表した。

 流通業界関係者がこぞって注目したのが豊洲について。小池知事は「冷凍冷蔵・加工の機能を強化して、ITを活用した総合物流拠点にする」「湾岸地域の物流センターとして有効な立地。転配送機能や市場外流通機能を発展させることで新たなビジネスチャンスを生む」と発言している。

 ある物流企業首脳は「件の豊洲は考えられないくらい良い立地。まとまった広さがあるし、環状2号線の開通も予定されている。今一番勢いのある“黒船”が狙うのは当然だ」と語る。黒船とは日本の流通市場の“破壊者”米アマゾン・ドット・コムである。アマゾンと都が、豊洲活用で手を握るのではないか、と噂が広がっているのだ。

 というのもアマゾンは今、生鮮食品に非常に力を入れている。4月から青果、鮮魚、精肉、乳製品といった生鮮品1万7000点以上と、キッチン用品などを取りそろえる「アマゾンフレッシュ」という新サービスを都内の一部エリアでスタート。契約農園から仕入れた野菜や、築地で仕入れてその日の朝に加工した鮮魚を販売する「新鮮市」という企画を週2回開催したり、デパ地下でも人気の専門店ブランドを複数取り揃えたりと、流通大手のネットスーパー顔負けの、充実した内容だ。しかも配送は午前8時から深夜0時まで行い、注文から最短4時間で届ける。

 人気は上々で、6月には配達対象エリアを千葉と神奈川の一部エリアへも拡大。アマゾンは今後も準備が整い次第、配達エリアを広げていくという。

 こうしたサービス拡充には、新たな配送拠点が必須。冷凍冷蔵・加工の機能を持ち、立地も良い豊洲市場はまさにうってつけというわけだ。