「総理のご意向」文書を告発した公務員は守秘義務違反だと官邸・文部科学副大臣が言っている。

しかし、「総理のご意向」文書は、それ自体で、獣医学部新設を認める処分(まだ出てない)が出されようとしている今の段階で、
当該行政処分が「総理のご意向・総理官邸への忖度が当該行政措置の動機だった」という「動機の不法による行政権の濫用によりなされた行政法上違法」であることを
基礎づける事実を証する文書である。

よって、そのような「行政法上違法な処分がなされようとしている事実を基礎づける文書」それ自体には、行政法上保護に値する秘密は存在しておらず、
むしろ、国民主権の下、積極的に開示されるべきものである。

よって、守秘義務違反の問題は全く生じる余地はない。

詳細は次のとおり。

「総理のご意向」文書が仮に真実存在していたとしも「全く違法性はない」と官邸も、複数の識者も言っているが、
その「違法性がない」とは単に「刑法犯罪ではない」という意味に過ぎず、行政法上は立派に違法で、

もし仮に「総理のご意向」で獣医師学部の設置認可処分をすれば、「総理のご意向・総理官邸への忖度が動機だった」という
「動機の不法による行政権の濫用」による行政処分だとして、違法・取消とするのが最高裁判例。

行政法上の違法については、動機の不法による行政権の濫用、平等原則違反、信頼原則違反、比例原則違反、
行政裁量の判断過程の違法(必要な考慮要素を考慮しなかった、考慮すべきでない考慮要素を考慮した)など、
既に様々な違法事由が判例で認められている。

加計学園については、もし「総理のご意向・総理への忖度が当該行政措置の動機だった」という行政処分がなされたら、
それは動機の不法による行政権の濫用による行政処分だとして行政法上違法、
京都府の大学と加計学園とを合理的理由なく差別的に取り扱った行政処分だとして平等原則違反で行政法上違法、となる。

「動機の不法による行政権の濫用で行政法上違法」を認めた最高裁判例は、昭和53年5月26日最高裁判決・民集32巻3号689頁(行政法判例百選T 第6版 33事件)。

「平等原則違反で行政法上違法」を行政裁量が認められる処分についても認めた最高裁判例は、最近のものだが、平成27年3月3日・民集69巻2号143頁(営業停止処分取消請求事件)