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歩夢「blue moon」しずく「bloom」
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0001名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 21:21:55.19ID:5KtlhpOi
あゆしず
短いです
0004名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 21:25:00.00ID:5KtlhpOi
歩夢「……ん、……」


―――深夜。


歩夢(んん……あれ…………?)


―――しずくちゃんの家にお泊まりした私は、一緒のベッドで眠っていたはずで。

―――眠りにつく前に、隣にあった温もりが失われていることに気がついて。

―――同時に、顔に当たる微風と少しの肌寒さを感じて瞼を開くと。

―――薄暗い部屋の中、窓辺に佇む人影がひとつ。
0006名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 21:30:43.59ID:x5S6f0xr
―――カーディガンを羽織ってベッドから起き上がり


歩夢「しずくちゃん……?」

しずく「あ……」


―――ひとり外を見つめる後ろ姿に声を掛ける。


歩夢「何してるの?」

しずく「すみません……起こしてしまいましたか?」

歩夢「ううん。たまたま目を覚ましたら、しずくちゃんがいなかったから」

しずく「私も目が覚めてしまって。少し夜風に当たろうかと」

歩夢「そっか……」
0008名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 21:35:19.31ID:LYFeHjQT
歩夢「眠れないの?」

しずく「そういうわけではないのですが……こうしていたい気分だったので」

歩夢「突然しずくちゃんが居なくなってて何事かと思っちゃった」


―――言いながら、隣まで歩み寄って肩をくっ付ける


しずく「それはすみませんでした」


―――しずくちゃんからも気持ち身体を預けられる

―――心と身体に心地良い温もりが戻ってくる


歩夢「……私もここに居ていい?」

しずく「ふふ、そんなこと聞かなくても」

歩夢「だって……一人で居たいときもあるかなって」

しずく「歩夢さんと居たくない瞬間なんてありませんよ」
0009名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 21:43:03.59ID:RkYRs7oN
―――分かっていても言葉にされると嬉しい。

―――気持ちの矢印の大きさが同じであることが嬉しい。


歩夢「夜中に目が覚める事、よくあるの?」

しずく「いえ、普段はありませんが、今日は……そうですね、歩夢さんが隣に居たからでしょうか」

歩夢「えっ……もしかして私、寝相が悪かった……?」

しずく「……」

歩夢「な、何か言ってよぉ……」

しずく「ふふっ、冗談ですよ」

歩夢「……もー」


―――こつんと。しずくちゃんの肩に頭を乗せて抗議。
0011名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 21:53:28.21ID:0Bb6uukO
しずく「まぁ、半分嘘ではありませんけど」

歩夢「へ……?」

しずく「歩夢さんが隣に居ては、落ち着いて眠れませんからね」

歩夢「……え、っと」

しずく「こうして風にでも当たらないと……熱を冷まさないと、ね」

歩夢「……」


―――しずくちゃんの言葉の意味を理解する

―――顔が熱い。


しずく「歩夢さんも同じみたいですね」

歩夢「……私はしずくちゃんが居なくて寒いから目が覚めたんだもん」

しずく「そうでしたね。すみません」


―――なんとなく揶揄われている気がして癪なので言い返してみる。

―――当の本人は、くすくすと笑って受け流しているけれど。
0012名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:00:56.06ID:iZzD3ypJ
歩夢「まだ眠くないの?」

しずく「はい。起き上がってしまったせいか、かなり眠気は飛んでしまいました」

歩夢「それなら……少し、歩かない?」

しずく「散歩ですか?」

歩夢「うん。その辺の庭を……私も目が覚めちゃって」


―――私としずくちゃんは家が遠いので、デートをするにしても夕方までで

―――そこから続けるにしても、どちらかの家に行くくらい。

―――あまり夜に出歩くことはないのでたまには、と。

―――とはいえ時間も時間なので、家の周りだけだけど。


しずく「構いませんよ。上着、持ってきますね」



0013名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:10:05.47ID:XTRI9hFX
歩夢「はぁ……」

しずく「……ため息。どうかしたんですか?」

歩夢「ううん……静かだなぁって」

しずく「こんな時間ですし、私たちしかいませんからね」

歩夢「そうだねぇ」


―――お互い、当たり前のことを言い合う

―――どうでもいい会話をして、何でもない時間がゆっくりと過ぎていく

―――多分、この上なく幸せな時間。


しずく「……はぁ」

歩夢「ため息。どうかしたの?」

しずく「……」


―――同じように返してあげるも、しずくちゃんからの返事はない

―――ただ、ぼーっと、夜空を見上げている


歩夢「しずくちゃん?」
0015名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:14:26.50ID:Nnqt2oAS
しずく「……二人きり、ですね」

歩夢「……そうだね」


―――始まった。

―――しずくちゃんのロマンチスト癖。

―――落ち着いていて、一歩引いているかのようで

―――時々暴走したり、ムキになって子供っぽくなったり

―――これまでにしずくちゃんのいろんな顔を見てきたけど

―――私は、このしずくちゃんが一番好き。
0016名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:18:24.20ID:gdR1sOwV
しずく「この広い庭も、ここから見上げる広い空も……」

しずく「一人だと少し持て余してしまって……寂しいんですけど」

歩夢「うん」

しずく「二人だと……この場だけでなく、この世界に私たちだけしかいないみたいな」

しずく「そんな気分になれて。このまま時が止まってくれたらいいのにな、なんて思います」

歩夢「……そうだね。私も」

しずく「……はぁ」


―――そしてまたため息。

―――こうして自分の世界に浸るしずくちゃんを、いつまでも隣で見ていたい。
0017名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:21:55.80ID:z3NChSkS
しずく「……月が綺麗ですね」


―――すると不意に。

―――未だこちらを見ずに、首を上に傾けたまま呟くしずくちゃん。

―――どうやら私もしずくちゃんの世界に誘われてしまったみたい。


歩夢(……うん、そういうことなら)



―――それは誰もが知ってる秘められた愛の告白。

―――知っているけれど、その由来について深く考えたことはなかった。

―――まるで繋がりのない言葉なのに、どうして?とは思っていた。

―――でも、なんとなく今なら分かる気がする。

―――ううん。きっと思いついた人の意図とは違うけれど、私なりの納得のいく理由付けができる。

―――ロマンチックな雰囲気の中、一緒に月を眺めるというシチュエーションが物語る二人の関係。

―――そしてきっと、想い人と添い遂げる以上の幸せなんてない、もう悔いなんて残らない。

―――だから私もこう答えるの。


歩夢「私、死んでもいいかも」

しずく「……」
0018名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:24:56.78ID:W13srIBg
―――そう言うと、なんだか複雑な表情で私を見つめるしずくちゃん


しずく「むぅ……」


―――そして膨れる。

―――予想に反して、この返答はお気に召さなかったらしい。


歩夢「違った?」

しずく「……歩夢さん、そんな悲しいこと言わないでください」


―――別に本当に死んでもいいと思ったわけではない。

―――ただ、形式に従っただけ。
0019名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:27:20.60ID:HbRGh94t
歩夢「え……?いや、だってそういうものでしょ?」

しずく「それでもです。死んでもいいなんて二度と聞きたくないです」


―――そんな私の言葉すらしずくちゃんは真剣に受け止めて。

―――そのまま少し寂しそうな顔で言うと、続けて


しずく「あなたと一緒に見る月だから綺麗なんですよ。歩夢さんが居ないと意味がないんです」

歩夢「あ……」

しずく「ですから、私を一人にしないでくださいね?」


―――月明かりを背に私に微笑みかけるしずくちゃん。

―――ごもっとも。それはそうなんだけど。

―――私の意識は、もうそのやり取りの事はどこかへ行ってしまって

―――ぼんやりと淡い光に照らされる、その姿があまりにも……
0020名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:30:31.68ID:mVCY1m7c
歩夢「―――、綺麗……」

しずく「……?月が、ですか?」

歩夢「……しずくちゃんが。あのお月様みたいに……ううん、それに負けないくらい綺麗」


―――夜空という舞台に浮かぶ無数の星々。

―――その中で一際大きく光り輝く今宵の青白い月は、主役に相応しい存在感を放っていて。

―――まさにしずくちゃんにピッタリの配役。

―――意識せずに出た言葉だけれど、考えれば考えるほどしずくちゃんはお月様のよう。


歩夢「とっても綺麗だよ……しずくちゃん」


―――照れくさくて言えないことも、つい口に出てしまうくらいに見惚れて。


しずく「ぇ、あっ、も、もうっ、歩夢さんってば急に何言ってるんですか……」


―――暗闇の中でも分かるくらい顔を赤く染めるしずくちゃん。
0022名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:32:55.63ID:WDCLoo77
歩夢「えへへ。こうしてお月様に手が届く私はやっぱり幸せ。もう死んでもいいかなぁ」


―――そんな様子が愛おしくて、しずくちゃんの腕に抱き着く


しずく「だ、だめですっ。縁起でもないこと言わないでくださいっ」


―――あたふたするしずくちゃんが見たくてつい意地悪。

―――もちろん冗談。


しずく「はぁ……それなら私も一つ言わせていただきます」

歩夢「なぁに?」

しずく「私を月だと言うなら、歩夢さんは太陽です」

歩夢「へ……?私が?」


―――唐突に切り返された言葉。

―――しっくりこない。私、太陽っぽくはないと思うけど。
0023名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:35:52.47ID:e4igteFC
歩夢「どうして?」

しずく「歩夢さんはいつだって太陽のように暖かく、優しくて……」

しずく「その全身を包み込んでくれるほどの大きな光で、たくさんの人の笑顔を咲かせてくれるんです」

歩夢「……そう、かな。大袈裟すぎない?」

しずく「いいえ。私が保証します」


―――そう言ってもらえるのは嬉しいけれど、あまり実感はない。


しずく「それに……」

歩夢「うん?」


―――そっと。私の頬に手を添えて、じっと目を見つめられる


歩夢「っ、な、何……」


―――急に距離を詰めてくるしずくちゃんに、たじろぐ私。

―――そんな私を見て、満足げな顔をすると……
0024名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:38:56.90ID:z4eGebAR
しずく「……月は、太陽が居てくれないと輝けないんですよ」

しずく「私が綺麗だとしたらそれは歩夢さんが隣にいてくれるからなんです」

しずく「そんな素敵なお日様を、私が独り占めしていていいなんて……こんな幸せな事、他にありません」

歩夢「……っ!!」

しずく「ふふっ、顔赤いですよ?お日様に負けないくらい熱そうですね」


―――あぁもう、そういうこと言う。

―――そんな、そんなの……だめ、何も言えない。

―――私の負け。

―――こういうやりとりはいつもしずくちゃんの方が一枚上手。


歩夢「しずくちゃん、ずるい……」

しずく「お互い様ですよ」

歩夢「むー……」


―――そうかもしれないけど。
0025名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:41:48.13ID:9NYOPyjh
しずく「というわけで、歩夢さんが居ないと私も死んでしまいますからね」


―――意趣返しのように、私とは違った意味で私と同じことを言う。


歩夢「それは…………困るかも」


―――だって私は太陽なんかじゃなくて。

―――きっとうさぎ。


歩夢「寂しくて私も死んじゃうよ」


―――月で跳ねているうさぎ。

―――月が居なくなったら足の踏み場もなくて。生きる目的そのものが無くなって。

―――どう生きていけばいいか分からないから。
0026名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:44:23.20ID:/8AsynhP
しずく「私の気持ち、分かっていただけましたか?」

歩夢「うん。死ぬまで傍に居させてね」

しずく「……本当にわかってくれてます?」

歩夢「もちろん。死ぬときは一緒だよ?」


―――しずくちゃんが居なくなった後の人生なんて、考えたくない

―――しずくちゃんを一人残して先に居なくなるなんて残酷な事、できるわけない


しずく「……もう。まぁ、そこは私も同じ気持ちです」

歩夢「お願いね」

しずく「何のお願いですか……」

歩夢「んー……なんだろうね。ふふっ」

しずく「……くすっ」
0027名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:46:44.99ID:BdG82OJV
歩夢「……ねぇしずくちゃん」

しずく「はい」

歩夢「……生まれて来てくれてありがとう」

しずく「……」

歩夢「私と出会ってくれてありがとう」

歩夢「私の事、好きになってくれてありがとう」

しずく「……本当にどうしたんですか、急に」

歩夢「どうしたんだろうね……」


―――こんな話をするつもりはなかったのに。

―――夜の静寂だとか、さっきまでの雰囲気に影響されて、なんだか急に寂しくなってしまって。

―――やっぱり私は太陽なんかじゃなくて、寂しがりやなうさぎさん。
0028名無しで叶える物語(光)
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2023/03/17(金) 22:50:13.73ID:sx9YDoPM
しずく「そんなの……お互い様ですよ」

歩夢「うん……」

しずく「私をあなたの人生のヒロインに選んでくださってありがとうございます」

しずく「私の人生のヒロインになってくださって、ありがとうございます」

歩夢「……えへ」


―――言っていることは同じ意味でも言い回しがしずくちゃんらしい


歩夢「しずくちゃん……大好きだよ」

しずく「……私もです。愛しています」


―――そうして、自然と手を取り合い、絡めて握る。

―――まだ少し肌寒い夜風を、その手の温もりで紛らわせて。

―――夜が明けるまでの僅かな時間、この暗くて素敵な二人きりの世界を噛み締めたくて……。
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