かのん「不良たちのクリスマス」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
千砂都「……」
千砂都「……ふぅー」
千砂都「今年ももう、この時期かぁ……」
千砂都「……」
千砂都「ふふっ」 かのん「ちーいーちゃん。お待たせっ」
千砂都「あ、かのんちゃん」
かのん「ご注文のスペシャルクリスマスパンケーキが2つと……」
かのん「特製カフェオレ2つになりまーす」
千砂都「ありがとう。ほら、かのんちゃんも座って」
かのん「……よし、と。これで準備できたかな」
千砂都「じゃあ、始めよっか」
かのん「うん。ちぃちゃん、メリークリスマス!」
千砂都「メリークリスマス、かのんちゃんっ!」 千砂都「まずは特製カフェオレから……」ズズ
かのん「どうかな?」
千砂都「……美味しい。すっごく、美味しいよ」
かのん「よかったぁ」
千砂都「やっぱり、かのんちゃんはカフェオレ作るの上手だよね」
かのん「そんなことないって、お店に出せるようなものじゃないし」
かのん「私はただ、ちぃちゃんが1番美味しいって思ってくれるカフェオレを作れるだけだよ」
千砂都「それでも十分すごいと思うけどなぁ」 かのん「それはもういいから。ほら、パンケーキも食べてみてよ」
千砂都「それじゃ、いただきまーす」パク
かのん「……」ジーッ
千砂都「……うん。パンケーキもとっても美味しい!」
かのん「ふふん。今日の日のために何度も練習して……」
千砂都「味100点、デコレーション100点、まる90点ってところかな」
かのん「え゛っ」
千砂都「こっち側がちょっと歪んじゃってるから。その分マイナス10点だよ」
かのん「ぐぬぬ……今年こそ満点だと思ったのに」 千砂都「でも、昔と比べるとかのんちゃんもだいぶまるのことを理解してきたね」
かのん「そりゃあね。何年ちぃちゃんといると思ってるのさ」
千砂都「かのんちゃんもまるの良さに気付いてくれたみたいで、ちぃちゃん嬉しいよ」
かのん「いやぁ、さすがにそんな境地みたいなところまでは行ってないけども」
かのん「……ただ、ちぃちゃんとはもうずいぶん長く一緒にいるよね」
千砂都「そうだねぇ。幼馴染っていう間柄になるくらいには一緒だもん」
千砂都「毎年恒例のこのクリスマス会も、もう何回目だっけ?」 かのん「うーん……。いっぱい、かな」
千砂都「あははっ。いっぱい、って何なの?」
かのん「いっぱいはいっぱいだよ」
千砂都「回数もよくわからなくなるくらい、一緒なんだね。私たち」
かのん「このクリスマス会も、最初は私のわがままから始まったんだっけ」
千砂都「そうそう。『ちぃちゃんとクリスマス会やるー!』って」
千砂都「いきなり聞かされたときは何事かと思ったよ」
かのん「だってさぁ。クリスマス会なんてものがあるって知ったときはすごい楽しそうだったんだもん」
かのん「……ただ、最初の何回かはヒドいもんだったなぁ」 千砂都「『食べ物も飲み物も私が用意する!』って言ったところまではよかったんだけど」
千砂都「パンケーキは生焼け、カフェオレはものすっごい薄くて」
かのん「作った自分が言うのもなんだけど、ありゃマズかったね」
千砂都「それが今じゃ、こんなに美味しいパンケーキとカフェオレを作ってくれるようになって……」
千砂都「さっきはああ言ってたけど、もうお店に出せるんじゃないの?」
かのん「実際のところはお母さんの判断を聞いてみないことにはわからないけど……」
かのん「でも、仮に合格だったとしてもお店に出すつもりはないかな」
千砂都「どうして?」 かのん「だってこれは、私がちぃちゃんに美味しいって思ってもらいたくて作ったものだから」
かのん「1番最初のクリスマス会のときから、ちぃちゃんだけのためにがんばって、美味しいって言ってもらえるようになったんだ」
かのん「だから私の作ったパンケーキとカフェオレのセットは、ちぃちゃん専用メニューなんだよ」
千砂都「私としてはちょっともったいないなって気はするけど……私専用メニューっていうのは、何だか嬉しいな」
かのん「豪華なデコレーションは付けられないけど、普通のパンケーキとカフェオレならいつでも注文してね」
千砂都「ふふっ。ありがとう」 かのん「そういえば1人で待ってるときに笑ってたみたいだったけど、何かあった?」
千砂都「あぁ、ううん。大したことじゃないよ」
千砂都「……ただ、今年もこの時期になったんだなぁって思って」
千砂都「毎年、終わったあとの誰もいない喫茶店で、かのんちゃんのクリスマスセットを待ってると……そう思うんだ」
千砂都「特に今年は、いろいろあったから余計にね」
かのん「……そうだね。いろいろ、あったよね」 かのん「結ヶ丘を受けて、私は音楽科がダメで……普通科には受かって」
かのん「それから可可ちゃんに誘われてスクールアイドルを始めて、すみれちゃんをスカウトして」
かのん「ちぃちゃんが普通科にやってきて、恋ちゃんと和解して……私たち5人でLiella!をするようになって……」
かのん「まるで嵐みたいな1年だったよ」
千砂都「嵐千砂都だけに?」
かのん「んふっ……!そ、そういうつもりじゃないけど」
千砂都「あはは、ごめんね」 かのん「……楽しかったね。今日の、みんなとのクリスマス会」
千砂都「うん。私、かのんちゃん以外の人とクリスマス会するの、初めてだったけど」
千砂都「みんなとするのも、楽しかったな」
かのん「ちぃちゃんも楽しんでくれたみたいで、よかった」
千砂都「最初その話を聞いたとき、今年は私たちのクリスマス会はないのかなって思っちゃったんだ」
千砂都「でも、こうしてみんなが帰ったあとにちゃんと用意してくれて、嬉しかった」
かのん「何言ってるの。それでちぃちゃんとの時間を無しにするなんてこと、私がするわけないでしょ」
千砂都「だとしても、ありがとう。かのんちゃん」
かのん「ん……。なら、受け取っておくね」 千砂都「ふぅ……。ごちそうさまっ」
千砂都「パンケーキもカフェオレも、とっても美味しかったよ」
かのん「来年はまるも100点もらえるようにがんばらないと」
千砂都「楽しみにしてるね」
かのん「パンケーキはおしまいだけど、飲み物のおかわりはいかがですか?」
千砂都「じゃあ、お願いしようかな」
かのん「では、少々お待ちください。なんてねっ」
千砂都「はーいっ」 かのん「……ちぃちゃんはこっち見てない、よね」
かのん「……」カサッ
かのん(私なりにちぃちゃんのことを考えて選んだつもり、だけど)
かのん(受け取ってくれるかな……。私からのプレゼントと、私の……)
かのん(私の、本当の気持ちを……)
かのん(……もう、覚悟を決めたんだ。あとは、私の全てをぶつけるだけ)
かのん(だけど……ほんのちょっとだけ背中を押してもらうために、これも一緒に)
かのん「……よし。行こうっ」 かのん「お待たせー。飲み物のおかわりになりまーす」
千砂都「かのんちゃん、ありがとう」
かのん「あ、飲むのちょっと待って」
千砂都「え?」
かのん「その……2杯目はこれ、入れてみない?なんて……」
千砂都「それって……お酒?」
かのん「う、うん。お母さんがたまに飲んだりお菓子に使ったりする用のブランデー、なんだけど」
千砂都「えー。いいのかなぁ」 Liella!のクリスマス会やった後に
ふたりだけのパーティーだなんて、悪い子だねぇ かのん「まぁほら、今日はせっかくのクリスマス会だしさ」
かのん「それに入れると言ってもほんのちょっとだけだから」
千砂都「わ。かのんちゃんってば不良だー」
かのん「そういう系の見た目してるなとは少し思ったことはあるけども……」
千砂都「……しょうがない、私も付き合うよ。かのんちゃんだけを不良にはさせられないし」
千砂都「ただし、入れるのは本当にちょっとだけだよ?」
かのん「わかってるって。……このくらい、かな」ポタッ
千砂都「お酒のことはよくわからないけど、そのくらいでいいんじゃない?」
かのん「じゃ、飲んでみよっか」 千砂都「……うん、美味しい……のかな。何だかちょっと不思議な味がする」
千砂都「ただ、ブランデーの香りと風味は好きかも」
かのん「おぉー。ちぃちゃんが大人だ」
千砂都「そういうかのんちゃんはどうなの?」
かのん「うーん。美味しいと言えば美味しい、ような」
かのん「……でも、舌と喉がイーってする」
千砂都「お酒ってこうなるもの……なのかな」
かのん「飲んでみたものの、私たちにはまだ早かったみたいだね」
千砂都「それなら、来年から1杯だけこれ作って飲むことにしようよ」
かのん「私にだけ言ってたけど、ちぃちゃんだって不良じゃない」
千砂都「かのんちゃんを止めなかった時点で私も共犯者だからね」 かのん「……ごちそうさまっ。ちぃちゃん、どうだった?」
千砂都「美味しかったよ。かのんちゃん」
かのん「そっか。よかったぁ」
かのん「私も、最後の方は慣れてきたのか美味しいって感じるようになったかも」
千砂都「でもまさか、1年の終わりにかのんちゃんと揃って不良になるなんてね」
かのん「一歩だけ大人になった、って言ってもらいたいなぁ」
千砂都「……あれ?かのんちゃん」
かのん「うん?」 千砂都「顔。ちょっと赤くなっちゃってる」
かのん「えっ?」
千砂都「……やっぱり。ほんのちょっととはいえ、お酒飲んじゃったからかな」
かのん「ちぃちゃんは……特になんともないね。何かズルいなぁ」
千砂都「かのんちゃん、大丈夫?酔ってない?」
かのん「たぶん大丈夫……だと思う。特に頭痛いとか気持ち悪いのはないし」
かのん「少しふわふわしてる感じはする……かな」
千砂都「そっかぁ……」
かのん「な、なに?」 千砂都「ううん、何でも。ただ、顔が赤くなったかのんちゃんが、かわいいなって」
かのん「……そう?」
千砂都「うんうん。もちろん普段のかのんちゃんもかわいいけれど」
千砂都「今のかのんちゃんも、とっても魅力的でかわいいよ」
かのん「うぇへへ……。そこまで言われると照れちゃうな」
千砂都「照れてるかのんちゃんもかわいいなぁ」
かのん「も、もうっ。ちぃちゃんだってとってもかわいいんだからね」
千砂都「ふふ。……ねぇ、かのんちゃん」
千砂都「今日、どうしたの?」 かのん「どうした、って……?」
千砂都「今日のかのんちゃん、いつもと様子が違うみたいだからだよ」
千砂都「店員さんごっこも無理に振る舞ってる感じだったし」
千砂都「何より、普段のかのんちゃんならしないような、お酒を持ち出したりしたから」
かのん「あはは……。やっぱりちぃちゃんにはバレちゃうかぁ……」
千砂都「もう何年もかのんちゃんの幼馴染やってるからね」
かのん「そんなちぃちゃんから見て、今の私は……どんなふうに見える……?」
千砂都「……何か、ピリピリしてる感じ?あとは……隠し事?してるみたいな」 かのん「……私ね、ちぃちゃんに……大事な用があるの」
千砂都「私に?」
かのん「うん。そのことを考えてて、ピリピリしたり……いつもと違う様子になってたと思うんだけど」
かのん「でも、ちぃちゃんには気付かれちゃってるみたいだから……」
かのん「……えっと、ちぃちゃん。これ、受け取ってくれない……かな」
千砂都「え……?かのんちゃん、これって」
かのん「う、うん。その、一応クリスマスプレゼント……のつもりなんだけど」
千砂都「かのんちゃん……!ありがとう!」
千砂都「プレゼント、さっそく開けてみてもいい?」
かのん「い、いいよ。ちぃちゃんに似合うといいんだけど……」 千砂都「……わ。これ、ネックレスだ……!」
かのん「私としてはちぃちゃんのことだけを考えて選んだつもり、だよ」
千砂都「かのんちゃんが……」
かのん「気に入ってもらえたかな……?」
千砂都「そんなの当然だよ!すっごく嬉しいっ!」
かのん「そ、っか。喜んでもらえたみたいで、よかったぁ……」
千砂都「……つけてみたけど、どうかな?似合ってる?」
かのん「とても……とっても、似合ってるよ」 千砂都「ねぇ、かのんちゃん。この先端の丸い玉って、もしかして……」
かのん「い、いやいや。さすがに本物の宝石だったら買えないよ」
かのん「それは人工宝石だから、私でも買えるくらいのやつだって」
千砂都「そ、そっか。そりゃそうだよね」
かのん「……あの、ちぃちゃん。その宝石の色、見てもらえないかな」
千砂都「色?綺麗なオレンジ色だけど……」
千砂都「……オレンジ色?」 かのん「うん。オレンジ色は……私の、イメージカラーだから……」
かのん「ちぃちゃんに私のイメージカラーを、持っていてほしかったの……」
千砂都「それって、どういう?」
かのん「さっき、言ってたよね。今の私はピリピリして、隠し事してるみたいな感じだって」
かのん「私……ちぃちゃんに、伝えたいことがあるんだ」
千砂都「伝えたいこと?」
かのん「すぅー……はぁー……」
かのん「ちぃちゃん……。私と……」
かのん「私と……恋人に、なってください!」 千砂都「それは……告白ってこと、だよね……」
かのん「私……ずっと、ずっとちぃちゃんのことがっ……!」
千砂都「ううん、大丈夫。言わなくてもわかってるから」
かのん「えっ……?」
千砂都「ごめんね、かのんちゃん。私、気付いちゃってたんだ」
千砂都「かのんちゃんが、私のことを好きなんだってことに」
かのん「……え、ええええぇぇぇぇっ!?」
かのん「な、何でっ!?どうして!?」 千砂都「さっきも言ったでしょ。私はかのんちゃんの幼馴染なんだから」
千砂都「かのんちゃんの気持ちはすぐにわかっちゃうよ」
かのん「じゃあ、ちぃちゃんは最初から知ってたの!?私の気持ちをっ!?」
千砂都「最初っていうのは、私が普通科に転科してすぐくらいからのことだよね?」
かのん「そこからもうバレてたの!?」
千砂都「だってあの頃からかのんちゃんの視線が多くなったし、私への態度も変わったみたいだったから」
かのん「うぐぐ……そうかもしれないけどぉ……!」
千砂都「あんなにわかりやすいと、バレないって方が無理だよ」 かのん「あーもう、最悪だよぉ……。ちぃちゃんにぜーんぶバレバレだったなんてぇ……」
千砂都「かのんちゃん、そんなにいじけないで。ね?」
かのん「だってぇ……ちぃちゃんは最初っから私が好きだってこと、気付いてたんでしょ……?」
千砂都「それは……まぁそうだけど、絶対だっていう確証はなかったし……」
千砂都「何より、自分から『かのんちゃんって私のこと好きだよね?』なんて聞けるわけないよ」
かのん「だとしてもずっと友達としての態度だったのはさぁ……。私の気持ち、知ってたのに……」
かのん「そうやって私のこと、弄んでたんだ……」
千砂都「人聞きの悪いこと言わないでよー」
かのん「ううぅ……」 千砂都「ねぇ、かのんちゃん。私ね、かのんちゃんのこと、ずっと待ってたんだよ」
千砂都「かのんちゃんが、私のことを好きだって言ってきてくれるのを」
千砂都「私の方から告白したり、私もかのんちゃんが好きって気付かせてあげてもよかったんだけど」
千砂都「でも、それだとかのんちゃんの告白するっていう決意を無駄にさせちゃうかもしれなかったから」
かのん「だ、だって気付いてたんでしょ?全部」
千砂都「私が気付いてたのは、かのんちゃんは私のことを好きなんだろうなってことだけ」
千砂都「心を読んでいるわけじゃないから、告白する決意を固めた、なんてことまではわからないよ」
かのん「それは……そう、なのかな……」
千砂都「……まぁ今日のクリスマス会はさすがに、何かあるようなピリピリ感は感じてた」
千砂都「ただ、実際にされる瞬間までその正体が告白だったとは気が付かなかったけどね」
かのん「そこまで気付かれちゃってたらさすがに立ち直れないよ……」 千砂都「かのんちゃん。私に告白してくれて、ありがとう」
千砂都「世界で1番、素敵で最高の告白だったよ」
かのん「そ、そっか。それなら、よかっ……」
かのん「……あっ。返事、返事は?」
千砂都「もちろん決まってるよ。私も、かのんちゃんのことが大好き」
千砂都「だから……私のこと、かのんちゃんの恋人にしてくださいっ!」
かのん「……よ」
千砂都「よ?」
かのん「よかったぁぁ……」
千砂都「か、かのんちゃん?大丈夫?」 かのん「……私、ちぃちゃんに気持ちが気付かれてたなんて思ってなかったから」
かのん「どうしたらいいのかって悩んで、迷って……それで、告白しようって決めて……」
かのん「もちろんちぃちゃんが受けてくれるかもわからなかったから、関係が終わったらどうしようって、怖くて……」
かのん「でも……告白して、よかった。ちぃちゃんが受けてくれて、本当によかったっ……!」
千砂都「かのんちゃん、ごめんね。私の勝手でつらい思いをさせちゃって」
かのん「ううん、いいの。あれはちぃちゃんなりの優しさだったんだと思うし」
かのん「それに私も、告白されるより告白したいって思ってたから」
千砂都「ごめんのついでにもうひとつ言っちゃうと、かのんちゃんに好きって言ってもらいたかったっていうのもある、かな」
千砂都「いつしてくれるんだろう。どういうふうにしてくれるんだろうって楽しみにしてたところも……」
かのん「そ、そうだったの?」
千砂都「ほ、ほら。やっぱり私としてはかのんちゃんの方から告白されたかったっていうか、その、ね」
千砂都「あはは……。ご、ごめんね」 かのん「もう。ひどいなぁ、ちぃちゃん」
千砂都「ごめんってば。許して、ね?」
かのん「……まぁ、私もちぃちゃんのこと、ずいぶん待たせちゃったしね」
かのん「本当はもっと早く伝えるつもりだったんだけど、まごまごしてたらこんな時期に……」
千砂都「でも、そのおかげで思い出に残る告白になったんじゃないかな」
かのん「え?」
千砂都「だってほら。今日は私たちのクリスマス会なんだから」 かのん「……そっか、そうだよね」
千砂都「これからクリスマス会が来る度、かのんちゃんに告白されたなぁって思い出すんだろうね。私たち」
かのん「せっかくの日が失恋の思い出にならなくて本当によかったよ」
千砂都「それと一緒に、揃って不良になったことも話してそうだよね」
千砂都「あの年のクリスマス会でかのんちゃんと不良になって、恋人になったよね、って」
かのん「あ、あれは別にそんなんじゃないっていうか、告白する勇気づけっていうか……」
千砂都「まぁでも、かのんちゃんと一緒なら不良になっちゃうのも悪くないかな」
かのん「私としてもあれ以上の不良っぽい何かなんてするつもりはないんだけどね」 千砂都「……私たち、恋人になったんだよね」
かのん「うん……。そう、だね」
千砂都「さっき言ってたやつじゃないけど、一歩だけ大人になったのかな」
かのん「どうかな。元々私たちって普通の友達よりも仲良しだからさ」
かのん「まだ、幼馴染から恋人になっただけ、って感じ?」
千砂都「それは……そう、かも」
かのん「それでも、一歩だけ前に進めたよね」
かのん「まだ幼馴染から恋人になっただけ。だけど、ついに幼馴染から恋人になれた、でもあるわけだし」 ノcノノ„>ノᴗ <„b💘၄(cʸ„„> ᴗ <„リ၃ 千砂都「今まではかのんちゃんとどこに行って、何をしたとしても幼馴染としての思い出だったけど」
千砂都「これからは……恋人としての思い出、いっぱい作ろうね」
かのん「……うんっ!」
千砂都「まずは明日、一緒にお買い物に行こうよ」
千砂都「かのんちゃんにクリスマスプレゼント貰っちゃったから、そのお返しをしてあげないと」
かのん「気にしないでよ、私がしたくてしただけのことなんだから」
かのん「ちぃちゃんが恋人になってくれたことが、私にとって1番のクリスマスプレゼントになったから……」
千砂都「かのんちゃん……」
かのん「それに、告白をOKしてもらいたいって下心もあったから、ね」
千砂都「そ、そっか」
かのん「だから一緒に出かけるのはいいけど、プレゼントのことは気にしなくてもいいんだよ」 千砂都「でも、せっかくかのんちゃんと恋人になれたわけなんだから」
千砂都「その最初の思い出が普通のお出かけだと、ちょっともったいないなって」
千砂都「かと言って他に何かいい案があるかなって言われると……」
かのん「……あっ」
千砂都「何か思いついたの?」
かのん「うん。ちょっと待ってて、用意してくるから」
千砂都「?」 かのん「お待たせー。はい、これ」
千砂都「これ、カフェオレ?」
かのん「うん。それで、3杯目のカフェオレにもう1回これを……」ポタッ
千砂都「あ。かのんちゃん、またブランデー入れたの?」
かのん「えへへ」
千砂都「えへへじゃなくて……何でまた?」
かのん「んと。ブランデーで不良になって、それから恋人になったわけだから」
かのん「最初の思い出も、不良になっちゃうのはどうかなって思って」
かのん「……えへへ」 千砂都「……かのんちゃん。それ、貸して?」
かのん「えっ?あ、う、うん」
千砂都「どうせなら、さ」ポタッ
かのん「ちょ、ちぃちゃん?」
千砂都「さっきより多めに入れて、もうちょっと大人になっちゃおうよ」ポタッ
千砂都「はいっ。かのんちゃん、どうぞ」
かのん「えぇー……?先にやり出したのは私だけど、いいのかな」 千砂都「いいのいいの。私たちはもう不良なんだから」
かのん「あははっ。ちぃちゃんもワルになっちゃったねぇ」
千砂都「私はかのんちゃんの共犯者だからね」
千砂都「それにかのんちゃんと一緒なら、不良になるのも悪くないって言ったでしょ?」
かのん「嬉しいと思えばいいのか、道を踏み外させてしまったと思った方がいいのか、複雑だなぁ」
千砂都「言われなくてもわかってると思うけど、これ以上の不良はしちゃイヤだよ?」
かのん「わかってるよ。ちぃちゃんを悲しませるような真似は絶対にしないから」
かのん「このブランデーのカフェオレだって、クリスマス会だけの秘密だからね」 千砂都「じゃあ、飲んでみよっか。私たちだけの、大人のカフェオレを」
かのん「うんっ。ちぃちゃん、乾杯っ!」
千砂都「かんぱー……」
かのん「……?どうしたの?」
千砂都「あ、ううん。乾杯でもいいんだけど、それだとお酒感マシマシになっちゃう気がして」
千砂都「まぁ、実際少しだけとはいえ飲んでることに違いはないんだけども」
かのん「それなら、何がいいかな?」 千砂都「今日はかのんちゃんと私のクリスマス会だから、そっちの方にしよっか」
かのん「言われてみれば、その方が思い出に残りそうだね」
千砂都「では、改めまして……」
かのん「ちぃちゃん、メリークリスマス!」
千砂都「メリークリスマス!かのんちゃんっ!」
おわり これでおわりです。読んでいただきありがとうございました
前作の最後でとんでもない誤字をやらかしたことを再度お詫び申し上げます
なお修正は前スレでしておきました
あとお酒は二十歳を過ぎてからでお願いいたします
お時間がありましたら過去のかのちぃもよろしくお願いします
かのん「幸せになるために」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1670148935/ 乙
そのまま酔って大人の階段をもう一歩登ってもいいぞ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています