【SS】彼方「相合傘する? 愛だけに」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
――――――
保健室
彼方「……すやぴ……」
彼方「ぐぅ……ぐぅ……」
?「失礼しまーす!」
?「さてさて、どこで寝てるかな〜っと……」
?「……あっ! みーっけ! カナちゃ〜ん!」
彼方「んん……しずくちゃん……?」
愛「ブー! 今日は愛さんでしたー!」
愛「おはよ〜、カナちゃんっ!」
彼方「おぉ愛ちゃん……珍しいねぇ♪」 彼方「練習ぅ?」
愛「いや、今日の練習はなくなった!」
愛「なんか台風来てるらしいし、早めに帰った方がいいってね」
彼方「そうなの?」
(ザー……)
彼方「あ……お外、雨すごいねぇ」
愛「アタシは他の部活にもちょっと用があったからこの時間までいたけど」
愛「もうみんな帰っちゃったんじゃないかな?」
彼方「そっかぁ。しずくちゃんとかは?」
愛「しずくは家が遠いからさ。早めに帰らせたよ」
愛「台風で電車が止まると困るだろうしね?」
彼方「愛ちゃん、さすが〜」
彼方「愛ちゃんのそういうところ、彼方ちゃん大好きだよ♪」
愛「んで寝てるカナちゃんを起こしに行く役を愛さんが買ったってワケ!」
彼方「そうだったんだ……愛ちゃん、わざわざごめんねぇ……」
愛「いいって! 1回愛さんもやってみたかったからね!」
愛「こーやってカナちゃん、起こしに行くの!」
彼方「……えへへ、光栄ですなぁ♪」 愛「はーい、それじゃカナちゃん!」
愛「起きて起きてー! おはようの時間だぞ〜!」
愛「ほらほら〜! カ〜〜〜ナ〜〜〜ちゃ〜〜〜〜ん!!!!!」
彼方「うぅ……こりゃしずくちゃんとは全く違うタイプの起こし方だぁ……」
愛「へへ、これだけ騒がしかったら起きるしかないっしょ??」
彼方「うーん……でもやっぱねむ〜い……」
彼方「あと2時間……」
愛「えー、そんな寝ちゃうのー?」
愛「もう、お寝坊してたら夕方になっちゃうぞ?」ぷにぷに
彼方「んん〜?」
愛「……へへ、柔らかそうなほっぺだな〜と思ってさ」
愛「ほらほら、起きてよカナちゃ〜ん」ツンツン
彼方「愛ちゃんや、ここはひとつ見逃しておくれよ〜」ギュッ
愛「おっ! 愛さん、抱き枕になっちゃった?」
彼方「へへへ、愛ちゃ〜ん……」
彼方「ぎゅう〜〜〜……」
愛「……あはは……」
愛「……ねね、そんなに抱き着かれると照れちゃうな……?」
彼方「……えへへ、愛ちゃんかわいいね〜」 愛「も〜! カナちゃん! 台風きてるんだって!」
愛「早く帰らなきゃ雨、酷くなっちゃうよ?」
彼方「むぅ……しずくちゃんと同じくらい手厳しいですなぁ?」
愛「まぁね。しずくにも言われたから!」
しずく『愛さん、彼方さんは簡単に起きません』
しずく『あの人、状況とか関係なく、起こしてもすぐまた寝ようとしますから』
しずく『だから愛さん、彼方さんが一度目を覚ましたら二度寝は絶対にさせちゃダメですよ!』
しずく『絶対に絶対に! です!』
愛「……ってさ!」
彼方「おのれ、しずくちゃん。全然彼方ちゃんのこと信用してないなぁ……」
愛「あはははは! まぁそれも好きゆえに、でしょ?」
愛「たぶんしずく、カナちゃんのこと本当に大好きなんだと思うよ」
彼方「そうかな?」
愛「たぶん気の置けないお姉ちゃんだって思ってるんだよ、きっと」
彼方「どっちかというと面倒見られてるのは彼方ちゃんの方だけどねぇ……」
愛「……あはは、羨ましいよ」 彼方「……しかしそこまで言われると素直に起きたくないなぁ?」
愛「え〜! ちょっとちょっと! 台風来ちゃうって!」
彼方「だってぇ〜、眠たいんだも〜ん……」
愛「……まぁでも」
愛「バイトも勉強もっていつも頑張ってるもんね」ナデナデ
彼方「あ〜……」
彼方「いいねぇ愛ちゃん、もっと撫でて撫でて〜♪」
愛「あはは、甘えんぼだなぁ♪」
愛「……勉強もバイトも、スクールアイドルも頑張っててさ」
愛「いつも妹さんのために頑張ってるの見て、すごいな〜って思ってたんだ」
彼方「……」
彼方「彼方ちゃんはすごくないよ。周りのみんなが助けてくれるおかげだよ?」
彼方「後輩なのに、いつもしずくちゃんに面倒見てもらってるし」
彼方「愛ちゃんみたいに、みんなを明るく引っ張れないし」
彼方「彼方ちゃんはみんながいなかったら……何もできないからねぇ」
愛「……そんなことないよ?」
愛「そうやって周りを大切に思えるカナちゃんが、みんな大好きなんだって♪」ナデナデ
彼方「……」
彼方「ありがと、愛ちゃん……嬉しいよ♪」 彼方「……よし、愛ちゃん。見て」
彼方「彼方ちゃん、おめめパッチリ」キリッ
愛「おぉ〜! カナちゃん、覚醒っ!!!」パチパチパチパチ
彼方「すまなかったね、わざわざ起こしに来てもらって」
彼方「さ、帰ろうか〜♪」
愛「うんうん、途中まで帰ろう!」
彼方「……愛ちゃんと二人で帰ったことないから新鮮だね?」
愛「あはは、そうだね!」
愛「……まぁ晴れてる時でもさ、二人で帰ったりしようよ?」
彼方「おぉ、もちろんもちろん♪」
彼方「愛ちゃんは元気だからねぇ……」
彼方「おねむな彼方ちゃん、いろんなところに引っ張って連れてって〜♪」
愛「もち!!!」 彼方「じゃ、帰り支度しちゃうねぇ」
(ゴロゴロ……)
(ゴゴゴゴゴゴ……)
愛「……あっ」
彼方「おや……雷……?」
彼方「……あらら。雲行き怪しくなってきたね。お空真っ暗だよ」
(ドォーン……ゴロゴロゴロ……)
愛「」ビクッ
愛「……」ぎゅっ
彼方「ん? 愛ちゃん?」
愛「あ、あ、……ご、ごめん! つい裾つかんじゃった!」
愛「よし、早く帰ろ!」
彼方(あ、そっか愛ちゃん……雷、ニガテなんだっけ)
彼方「……大丈夫だよ〜、愛ちゃん」
彼方「今日は彼方ちゃんがいるからね〜?」
愛「え? あ……う、うん」
愛「……えへへ、ありがとう♪」 (ゴゴゴゴゴゴ)
(ゴロゴロゴロゴロ……)
(ドォーーーーーン!!!!!)
愛「きゃああああああああああ!!?!」バサッ
彼方「わっ、わわっ!」 愛「う、うぅ……」
愛「怖い、怖いよぉ、おっきい音ぉ……」
彼方「……」
彼方(泣いてる……)
彼方(抱き着かれて、そのまま押し倒されちゃった……)
彼方(子供みたいに私の胸の中で泣いてる……)
彼方(愛ちゃん……本当に雷、怖いんだ)
愛「あ、ご、ごめんねカナちゃん。痛かった?」
彼方「……ううん。心配しないで。大丈夫だよ?」
愛「びっくりしちゃって……すごいニガテで」
愛「子供の頃からトラウマみたいでさ……」ビクビク
彼方「……そっかぁ」ナデナデ
愛「ごめんね、ごめんね……」
彼方「……ふふふ♪ なんで謝るの〜?」
彼方「彼方ちゃんは愛ちゃんがこうやって甘えてきてくれて嬉しいよ〜?」
愛「でも……もうアタシ、高校生だし」
彼方「そんなこと言われたらいつも甘えん坊な彼方ちゃんの立つ瀬がないよ〜」 (ゴロゴロ……)
愛「ひっ……!」
彼方「大丈夫、大丈夫だよ」
愛「う、うん。だよね。だ、大丈夫だよね。普通に考えて」ブルブル…
愛「あはは、冷静に考えれば平気だってわかるのにさ……」
愛「こう体、震えちゃうんだよね。笑っちゃうよね?」
彼方「ううん。無理することないよ〜」
彼方「よしよし……怖くないからね」ナデナデ
愛「……雨、嫌いだよ」
彼方「嫌い?」
愛「だって雨の日ってなんも遊んだりできないし」
愛「ゴロゴロ雷鳴って、なんかお空から怒られてる気分になってさ……」
彼方「……」
彼方(子供みたい……可愛いなぁ♪) 彼方「……お布団、被っちゃおっか?」
愛「え? お布団?」
彼方「ほら、彼方ちゃんとお布団入ってすやぴしよ〜」バサッ
愛「わっ……」
彼方「こうすれば雷の音も聞こえなくなるよ」
愛「……カナちゃん」
愛「……カナちゃんの、心臓の音、聞こえる」
彼方「えへへ。いっつもすやぴしてるからね」
彼方「心臓さんもいっつも元気に動いているのだよ」ドヤァ
彼方「……落ち着いた、かな?」
愛「……そう、かも。ちょっと安心する」
彼方「でしょ〜? こうしとけば大丈夫♪」
彼方「雷過ぎるまで……すやぴしちゃお?」
愛「……」
愛「……うんっ」 彼方「……ごめんねぇ」
愛「なにが?」
彼方「彼方ちゃんが寝てなければ、天気のいいうちに帰れてたかもなのに……」
愛「ううん。結局他の部活の用事があったからさ……全然謝ることないよ?」
彼方「……愛ちゃんも頑張り屋さんだねぇ」ナデナデ
愛「……あはは。なんか……めっちゃ恥ずかしい」
彼方「え〜、なんで?」
愛「アタシ、どっちかというと部活の助っ人とかして、人に頼られるタイプだからさ」
愛「あんまこういう、誰かに甘えたり頼ったりするの慣れてないのかも」
彼方「確かに愛ちゃん、なんでもできちゃうからねぇ」
彼方「なにかとみんな、愛ちゃんに頼りたくなっちゃうもの」
彼方「……これからは彼方ちゃんにはこう頼ってくれてもいいよ?」
愛「……」
愛「うんっ。カナちゃん」ぎゅっ (ザー……)
(ゴロゴロ……ドォーン……)
彼方「風も強くなってきた。こりゃ台風直撃だねぇ」
愛「うん……」
彼方「でも大丈夫だよ」
彼方「すやぴしてたらすぐどっか行っちゃうからねぇ」
愛「うん……」ぎゅっ
彼方「よしよし、愛ちゃん」
愛「……カナちゃん」モジモジ
彼方「うん?」
愛「……カナちゃん、すき」
彼方「えへへ、ありがと。なんか璃奈ちゃんみたい♪」
愛「……ちょっと意識してモノマネしてたりして」
彼方「えぇ〜? 愛ちゃんのいけず〜」
彼方「ちゃんと愛ちゃんの言葉で好きって言っておくれよ〜」
愛「……えへへ、照れ隠し照れ隠しっ♪」
愛「……」
愛(りなりーってば……よくあんな平気な顔で好きだなんて言えるな)
愛(愛さんは……口にするだけで恥ずかしいよ)
愛(……)
愛(でもほんとにすきだよ、カナちゃん) ――――――
校舎前
愛「わ〜〜〜〜!!!」
……台風が過ぎ去って、愛ちゃんが勢いよく外に飛び出した。
彼方「どうどう愛ちゃん……水溜まりあるよ」
愛「こんな綺麗な空を前にしたらなんだっていいって〜!」
まるでさっきまでの台風が嘘だったかのような、
じめじめした気持ちを全て吹き飛ばすかのような、綺麗な夕立ち。
まだ上空にいくつか雲は残っていて、流れも早い。
もしかしたらもう一降りしそうな気もするけど。
すっかり元気になった愛ちゃんとこの綺麗な空を見られるなら。
少しくらい降られてもいいかなって。そう思った。 愛「見て、カナちゃん!」
愛「めっちゃ綺麗だよ! 激アツ〜!」
跳ねる水溜まり、少し靴が濡れてしまっても構わず愛ちゃんは空を指をさす。
オレンジ色に広がる夕立ち空はどこまでも続いてる気がした。
彼方「ほんと……すっごい綺麗だね」
愛「こんな貴重なお空、なかなか見れないよね! 写真撮ろーっと!」
彼方「……ふふふ♪」
愛「どしたの? カナちゃん」
彼方「やっぱり愛ちゃんはそうやって元気にしてるのがいいなって」
愛「そ、そうだよねー! やっぱこれがアタシのキャラっていうか」
彼方「……でも怖がりで甘えんぼな愛ちゃんも大好きだけどねぇ」
愛「な、ななな……や、やめてよカナちゃん! もー、恥ずかしいなぁ……」 愛「……あれ?」
彼方「……ぽつぽつ、ちょっと降り始めたね」
愛「これくらいの雨だったらどうってことないよ!」
愛「さすがにさっきまで強くはならないだろうし!」
愛「早いうちに帰ろ! カナちゃん!」
彼方「……うん。帰ろっか」
彼方「……ねぇ愛ちゃん」
彼方「お近づきになれた印にさ、相合傘して帰らない?」
愛「え!? あ、相合傘〜?!」
愛「それってあれじゃん、カップルとかでやるやつでしょ?!」
愛「ハズい! それめっちゃハズいよ!?」
彼方「想像以上にピュアだなぁ愛ちゃん……」
愛「それに愛さん、折り畳み傘あるよ?」
彼方「……彼方ちゃんが愛ちゃんとお近づきになれた記念日にさ」
彼方「一緒に傘に入って帰りたいな♪」
愛「……えーでもなぁ」 彼方「……こほん」
彼方「ほら、愛ちゃん」
彼方「相合傘する?」
彼方「……愛だけに」キリッ
愛「……」
愛「……ぷぷっ」
愛「ぷ、はははははははは!!! あ、あ、愛だけに! 相合傘!」
愛「あはははは! おもしろすぎ……っ!」
愛「相合傘って、愛さん2回も出てきてるし……っ! あはははは!!!」
愛「天才だよ、カナちゃん天才……っ!」ポロポロ
彼方「……おいで、愛ちゃん♪」 ……カナちゃんはいつも居眠りさん。
アタシとは全く逆のタイプ、だと思う。
もし空に、大きな太陽が出てたら。
体がうずうずして走り出したくなるようなアタシと、
日向ぼっこしてすやすや寝息をたてるカナちゃん。
だけど大嫌いな雷と、こんな激しい雨の日が。
二人で一つ、同じ傘に入ってもいいんだよ、って教えてくれたのかな?
雨の日なんていいことないし大嫌い、って思ってたけど。
いつもの晴れの日より、カナちゃんの近くで一緒にいられるなら。
……雨の日も、いまよりずっと好きになれそうだよ。 彼方「……おいで、愛ちゃん♪」
愛「うんっ!」
バサッ……
彼方「……傘、小さいから。くっついちゃうね」
愛「……」
愛「……カナちゃん、今日はありがとう」
彼方「こちらこそ。起こしに来てくれてありがとう、だよ♪」
愛「……えへへ♪」
愛「相合傘っ! 愛だけに!」
おわり 乙です
妹みたいにカナちゃんに甘える愛ちゃんが可愛い 素晴らしすぎて脳が回復しまくりました……おつです! 愛さんしっかりしてるけど妹キャラなんだよな
彼方ちゃんのお姉さんっぷりと噛み合っててすごく良い
また読みたいです ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています