聖良「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」客「今日限定の、聖良のおおきなふわふわ大福(ホワイトミルクチョコ)をください」
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聖良「……セクハラですか?」
聖良「え? 違う? 確かにメニューにある? そんな馬鹿な――……ありますね。3,000円? 高い」
聖良「失礼しました。厨房へ確認いたします。少々お待ちください」
聖良「……理亞。ねえ理亞。何だか、今日限定の謎のメニューの注文が入ったんですけど」
理亞「あ、さっそく入ったんだ? 分かった。用意するから待ってて」
聖良「待って。そういう事ではなくて」
理亞「なに? 早くお出ししなきゃ」 聖良「このメニューのこと知らなかったんですけど。何ですかこれは」
理亞「見ての通りバレンタイン限定メニューだけど。せっかくだし用意してみた」
聖良「そうね。季節感のある限定メニューはいいアイデアだと思います。でも、この商品名はいったい?」
理亞「聖良のおおきなふわふわ大福(ホワイトミルクチョコ)のこと?」
聖良「何で私の名前が使われてるんです?」
理亞「その方が売れるし」
聖良「……おおきなふわふわとか、要ります?」
理亞「その方が売れるし」
聖良「……ホワイトミルクチョコにした理由は?」
理亞「その方が売れるし。もう、別にいいでしょ、理由なんて」 いつも迷惑かけてるんだから今日くらいは協力してやれ 理亞「はい。出来たよ姉様。お客さんのところまでお願い」
聖良「わあ大きい。ところで、理亞」
理亞「なに?」
聖良「何で当然のように1皿で2個なんです?」
理亞「2個だと何か問題あるんだっけ?」
聖良「ないですけど。……ないですけど!」
聖良「あと、大福のてっぺんに桜色の突起があるのは何ですか」
理亞「苺チョコ」
聖良「そういうことを聞いているのではない」 聖良「それから、さっきメニュー表に描いてあったんですけど。この商品の宣伝文句」
聖良「本物のボリュームと柔らかな触感を完全再現!って。何ですか本物って? 何を再現したんですか?」
理亞「……」
理亞「もう。早くお客さんのところに持って行ってよ。お客さん、待ってるんだから」
聖良「あ、いま露骨に逃げましたよね。ねえ? 本物って何のことですか? ねえ?」
お客「あのー。聖良のおおきなふわふわ大福(ホワイトミルクチョコ)、まだですかー?」
理亞「ほら」
聖良「ぐっ……は、はーい、ただいま!」 聖良「お、お待たせしました。ご注文の品をお持ちしました」
聖良「……え? 商品名を、読み上げるんですか? 私が?」
聖良「せ、聖良のおおきなふわふわ大福(ホワイトミルクチョコ)、です……ご、ごゆっくりお楽しみください」ニコッ…
聖良「……」
聖良「あの。し、失礼ですが、お客様?」
聖良「どうして先ほどから、2個の大福を両手で掴んで揉んでいらっしゃるのでしょうか?」
聖良「え? 揉んではダメなのか? それは……まあ」
聖良「あ、いえ。衛生的に。食べ物を素手で撫でまわすのは衛生的に良くないかと」
聖良「ちゃんと手を洗ったから大丈夫だ? 消毒もした? ……なるほど。そうですか」
聖良「そう、ですか……」 聖良「……あの。いつまで揉んでいらっしゃるのですか?」
聖良「それは食べ物ですから。揉むものではありませんから。ただの大福ですから。早くお召し上がりになるのがよろしいかと」
聖良「そ、そうですよ。早く食べて出ていっ――もとい。妹の自信作だそうですので、早く味わってみてください」
聖良「……」
聖良「……あ、あの。召し上がってください、と申しました。それなのに先端の苺チョコに吸い付くのは少し、違うような……」
聖良「えっ? 先端に穴が空いていて中のホワイトミルクチョコが吸い出せるようになっている?」
聖良「そ、そんな……うわ。うわっ!?」ピュピュ…トロォ… 聖良「こ、これは何らかの不具合かもしれませんので。厨房へ確認してまいりますね」ニコッ…
聖良「……理亞。理亞っ」
理亞「なに。追加の注文?」
聖良「そうじゃなくて。さっきの大福、先端の苺チョコから中のホワイトミルクチョコが溢れてくるんですけど?」
理亞「ああ。乳首?」
聖良「乳首? いま乳首って言いました? ねえ?」
理亞「それはそういう仕様だから。品質にはまったく問題ないから気にしないで」
聖良「何で無視するんです? さっき、どう考えても大福とは無縁の単語が出てきましたよね?」 聖良「あと、あのお客様。なぜかずっと私を凝視してくるんですけど」
聖良「揉んでる間も。吸ってる間も。ずっと。ずっと!」
聖良「主に私の胸を!」
理亞「姉様は人の目を集めやすいから」
聖良「いいえ。どう考えてもあの大福の、本物の触感を完全再現!とかいう謳い文句のせいです」
理亞「それで売れるならいいでしょ」
聖良「あなたはいいでしょうね、あなたは」 客2「ごめんくださーい」
理亞「次のお客さんだ。姉様、お願い」
聖良「次はまともなお客様でありますように……」
客3「さむーい。手ぇ冷たーい」
客4「はやく指をホワイトミルクのいっぱい詰まった聖良のおおきなふわふわ大福で包み込みたい……」
聖良「ああ。今度もダメでしたか」
客5「聖良のおおきなふわふわ大福が揉める……聖良のおおきなふわふわ大福が吸える……」
客6「Don't stop dreaming!!」
聖良「え。あれ。ちょっと、多くないですか……?」
聖良「うわ!? 外にも並んでる!?」 聖良「理亞、理亞っ! 大変です、変態です! 変態がたくさん!」
理亞「落ち着いて姉様。……うん。SNSで宣伝した効果が出たみたい。今日だけの150食限定にしたのは正解だったかな」
聖良「150限定って。うち、日に150人もお客様が来たことないでしょう」
理亞「姉様の需要があってこそだよ。そこにバレンタインと数量限定って言葉が重なれば釣られる人はたくさんいるってこと」
聖良「そんな滅茶苦茶な……」
客7「すみませーん。注文おねがいしまーす」
聖良「は、はーい、ただいま!」
理亞「さあ、売ろう。販売価格3,000円(税別)。暴利の大福150食!」 聖良のおおきなふわふわ大福(ホワイトミルクチョコ) 客8「はぁ……はぁ……聖良さん、こ、これが、これが聖良さんの……!」
客9「うんめぇ、あぁ〜、うんめぇ」チュパチュパ
客10「すげぇ……指が沈みやがる……! あぁ、ミルクが溢れて……!」
客11「れろれろれろれろれろれろ」
聖良「地獄ですかここは」
理亞「予想以上に売れてるから整理券も配ろう。並んでもらってる中で売り切れちゃったら大変だし」
聖良「わ、私が配りに行きます! ここより外の方がマシです!」 客客客客「……」ゾロゾロ
聖良「うわぁ……すごい行列」
客32「あれ。店の外に、せ、聖良さんがいる……?」
客34「大福だ、本物の大福が来たぞ!」
客41「おおきな2個の大福だ、きっとふわふわだ! ミルクも詰まっている!」
客46「うおおおおおおお!!!」
聖良「何ですかこれ怖い」 聖良「あ、あの。整理券をお持ちしました。本日限定メニューをご注文の方はこちらの整理券をお受け取りのうえ、店内で提示ください」
客49「……商品名は?」
聖良「え?」
客50「商品名を言ってくれないと分からないよね? んん〜?」
聖良「……せ、聖良のおおきなふわふわ大福(ホワイトミルクチョコ)をご注文の方はこの整理券を」
客58「もっと大きな声じゃないと列の後ろまで聞こえないでしょうが!」
聖良「聖良のおおきな! ふわふわ大福(ホワイトミルクチョコ)をご注文の方は! 整理券をお受け取り下さーい!!」
客67「はい、はい! 聖良のおおきなふわふわ大福(ホワイトミルクチョコ)食べます! 食べまーす!」
客75「私もー!」
通行人「な、なんだあれ……」
聖良「うぅ……どうしてこんなことに」 ・
・
・
聖良「はぁ、はぁ、お、終わった……150食、完売した……」
理亞「予想よりも早い。さすが姉様」
聖良「こんなに忙しくて不快なのは初めてです……」
理亞「お店もたぶん今までで最高の売り上げだと思うよ。飲み物とか他のメニューも一緒に売れたし、後で計算しないと」
聖良「でしょうね」 聖良「それにしても、どうしてあんなメニューを作ったんですか。売るためにしてもイメージが悪すぎる」
理亞「それでも売りたかったから」
理亞「……あのメニューの利益のほとんどは私と姉様で折半していいってお母さんと話してある。お小遣い、増えたよ」
聖良「お小遣い稼ぎにしても、あんな」
理亞「これで一緒に卒業旅行に行ける。……沼津にも」
聖良「え――」
理亞「卒業する前に姉様と、遊びに行きたかったから」
聖良「理亞……」 聖良「もう、しょうがないですね」クスッ
聖良「じゃあ、どこに行きましょうか。Aqoursのみなさんと予定が合うか分かりませんから、とりあえず東京ですかね」
理亞「東京に行ったら向こうから呼び出しが来るかもね」
聖良「ふふ。いつも突然ですからね、あの人たちは。……ふたりで旅行、楽しみですね」
理亞「うん」 〜半年後〜
聖良「いらっしゃいませ」
お客「あれ。聖良ちゃん、実家に帰ってたの? 店番?」
聖良「お盆ですから。実家にいると、ついやりたくなってしまって」
お客「働き者だねぇ。じゃあ、久しぶりに接客してもらおうかな」
聖良「私でよければ喜んで。ではご注文をどうぞ」
お客「聖良のおおきなぷるぷるプリン(北海道生乳使用)をください」
聖良「……理亞。理亞―? 何で私がいない間にこんなのが恒常メニューになってるんですか? 理亞―?」
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