【SS】しずく「私がお月様なら、あなたは――」
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しずかすSSです。1回だけルート分岐があります。
スクールアイドルフェスティバルが終わってからというのも、私たちはさまざまなイベントに招待されている。
特に私は演劇部でも活動しているので演劇部の方でも声がかかっている。そのせいか…
かすみ「かすみんたち最近一緒に帰れてないね…」
しずく「うん…色んな人たちに声かけられてるからね…」
しずく「演劇のお稽古が忙しくて全然同好会の方に顔を出せてないし…本当にごめんね」
かすみ「同好会のみんなは全然気にしてないよ!忙しいのはみんな同じだしね!」
かすみ「色んなイベントに呼ばれるのはいいけどやっぱりプライデートの時間も欲しいよね〜」
かすみ「贅沢な悩みだってことはわかるんだけどね」ニコッ
前向きな笑顔。私には真似できないな…。 かすみ「そんな疲れた顔しちゃダメだよ?『演劇部のお月様』さん?」
合同演劇祭が終わってから私のことを『演劇部のお月様』なんて呼ぶ人が増え始めた。
しずく「もう、かすみさんまで…あれ言われるの結構恥ずかしいんだからね?」
かすみ「赤い顔してるしず子はかすみんにはない可愛さがあるからね!」
しずく「面と向かって言われると恥ずかしいんだけど…」
かすみ「ほらね?やっぱ可愛いじゃん」ニコッ
そんな顔をするあなたの方が可愛いよ…。 かすみ「あ、そうそう!来月の初めに花火大会あるよね!せっかくだし一緒に行かない?」
しずく「学園の近くで毎年やってる花火大会だっけ?」
かすみ「そうそう!演劇部の活動とかなかったら一緒に行こうよ!」
たまにはかすみさんと二人っきりで遊びたいな。
しずく「そうだね、たまにはゆっくりしたいもんね」
かすみ「よ〜し決まり!じゃあかすみんに合う浴衣着てくから楽しみにしておいてね!じゃあまた今度!」
そう言ってかすみさんは元気よく改札から出ていく。
私もすごく楽しみ。疲れているはずなのに足取りが軽いのが何よりの証拠。
かすみさんの浴衣…絶対可愛いだろうな…。
ピロンッ
こんな時間に部長から電話?
部長「しずくごめん!いま時間ある?」
部長「緊急のミーティングがあるの!」
緊急?とりあえず学園に戻らないと。 プライデートっていうデートかと思ったらプライベートか 演劇部部室
部長「今日は同好会の練習があったんだよね?ごめんね呼びだしちゃって」
しずく「今日は早めに終わって帰る途中でしたから、平気です」
しずく「それより緊急のミーティングってなんですか?」
部長「それがね、今日の放課後いきなり演劇の出席依頼があってさ、芸能界で有名な人も来る発表会なんだってさ」
しずく「演目はなんですか?」
部長「えーっと『ロミオとジュリエット』かな」
しずく「わかりました。いつやるんですか?」
部長「来月のことなんだけど…この日は大丈夫?」
しずく「…え?その日は確か…花火大会の日ですよね」
部長「そうだね。何か予定あるの?できればしずくに主人公役をやってもらいたいんだけど…」
しずく「すこし時間をください。…明後日までには決めてきます」
部長「わかった。用事があるならそっち優先してもいいからね?」 帰り道
さっきとは打って変わって足取りが重い。
かすみさんとの約束を先に結んだからそっちを優先するのは当たり前だし、部長も用事があれば休んでもいいって言ってくれたけど…。
有名な人、か。もしかしたら芸能事務所の人かもしれない…演劇でその人を魅了できたら私の夢に一歩近づく。
本当にどうしよう…。 ここでルート分岐させます。>>9の人のコンマでルートを決めようと思います。50以上花火大会√、49以下発表会√です 発表会ルートです
結局帰り道では決めることはできなかった。
ここはやっぱりかすみさんに相談するべきなのかな…。
大切な人だからこそ…なのかな。
かすみさんにメッセージを送る。
しずく(かすみさん、今から会える?)
かすみ(今から?かすみんはいいけどしず子の家は大丈夫なの?)
しずく(私は大丈夫。朝の待ち合わせ場所でいい?)
かすみ(わかった!すぐ行くからね!) かすみ「えー!?しず子早くない?」
かすみ「かすみん全力で来たのに!」
しずく「うん…どうしてもかすみさんより早く来なきゃいけなかったから…」
かすみ「ん?どういうこと?」
しずく「とりあえず一緒に来てほしいな」
かすみ「しず子〜?なんか変だよ?」
しずく「ごめんね。ここではちょっといえないことだから…」
2人きりで過ごせる場所じゃないと。本当に大切な相談なんだから。
かすみさんと歩いてる間、私は話しかけることすらできなかった。
かすみさんも私の顔を見るたびに不安そうな顔をする。
大好きな人にこんな顔をさせるならやっぱり花火大会を選ぶべきなのかな…。
だめだ。自分の頭だけで考えてたら…合同演劇祭の時と同じようになる。
あそこにかすみさんがいたからなんとかなったんだ。
かすみさんなら私の悩みを解決してくれるのかもしれない…そんな淡い希望を抱いて目的地まで歩いている。 しずく「…着いたよ。ここなら人がいないかなって思って」
かすみ「歩夢先輩の自己紹介動画撮ったところだ…」
しずく「『夕陽の塔』っていうんだって」
しずく「ここまで来させちゃってごめんね。遠かったよね」
かすみ「かすみんは本当に大丈夫!」
かすみ「…でさ、相談ってなに?」
胸が痛い…。
でも言わなきゃ。
しずく「………」
しずく「花火大会の…日のことなんだけど…」
言葉が震えてしまう。
しずく「……」
しずく「演劇の講演会が…入っちゃって…」
しずく「私にとっては…かすみさんも演劇も同じくらい大事だから…」
目の前の景色が滲む。 かすみ「そんな泣きそうな声しないでよ、しず子」
かすみ「それでさ…ありがとう」
しずく「…え?」
なんで感謝されるのかがわからない。
かすみ「しず子にとって演劇ってさ、すごく大事なものだったんでしょ?」
かすみ「何年も前からずっと頑張ってる演劇と、たったの数ヶ月一緒にいるだけの私が同じくらい大事って…こんなにも最高の褒め言葉はないよ?」
かすみ「それを言ってくれただけでかすみんは満足だよ!どんな花火よりも綺麗で最高の言葉だよ!」
かすみ「だからね?かすみんのことはいいからさ、行ってらっしゃい!だよ!」
大粒の涙が溢れる。
しずく「本当にごめんね…ごめんなさい…」
かすみ「こっちにおいで、しず子」
かすみ「かすみんの胸、借りていいよ」
しずく「うぅ…」グスン かすみさんは彼女の胸にうずくまる私の頭を撫でる。
かすみ「しず子は本当に優しいね」
違う。
かすみさんがいたから私はここまで人を想うことができた。
私はいつもかすみさんに助けてもらっているばかりで…。
かすみ「いっぱい泣いていいんだからね?」
しずく「……」
私の泣き声だけがこの空間を支配する。
…何分くらい泣いたんだろうか。私はかすみさんの顔を見る。
かすみ「落ち着いた?」ニコッ
しずく「…うん」 かすみ「じゃあちょっと歩こっか!」
しずく「どこにいくの?」
かすみ「うーん、どこ行こうかな〜」
しずく「決めてないのに歩こうとしたの?」
かすみさんってば…。自然と笑みが溢れてしまう。
かすみ「あ!今からかったでしょ!」
しずく「そうかもね」
かすみ「なにその裏がありそうな答え方!」
しずく「裏だなんて…本当になにもないよ?」
かすみ「ほんとに?」
しずく「ほんとだってば」
かすみ「うぅ…なんかモヤモヤするけど今日は許してあげる!」
かすみ「とりあえず駅まで歩こっか。はい!」
かすみさんは手を差し伸べる。
かすみ「一緒に歩こ?」
しずく「うん!」 駅前
かすみ「うーん…もう着いちゃったね…」
しずく「そうだね…」
しずく「明日の同好会は早く終わるの?」
かすみ「結構遅いかな〜。演劇部は?」
明日は結構早く終わってしまう。でもかすみさんとできるかぎり一緒にいたい。
しずく「私も明日は遅いから一緒に帰らない?」
かすみ「ほんとに!?2日連続なんて久しぶりじゃん!」
かすみ「じゃああのおっきいロボットのところで待ち合わせね!」
しずく「うん!」
これが今の私にできるかすみさんへの精一杯の誠意だ。
しずく「じゃあホームに行こっか」
かすみ「…今日は逆方向で帰るからここでお別れでいい?」
かすみ「明日はいっぱいお話ししようね!」
しずく「そっか…じゃあまた明日」
かすみさんをここまで来させたのにもっと拘束する訳にはいかない。
明日の放課後が待ち遠しい。 かすみ「しず子、帰ったかな」
かすみ「はぁ…」
かすみ「まぁ、でも…」
かすみ「『かすみさんも演劇も同じくらい大事』…」
あの言葉聞けただけで嬉しいな。
かすみ「夢を追いかける人の背中を見守るのも悪くないけどさ…」
かすみ「……」グスン
綺麗なお月様がぼやけ、いつもより遠くに見えるような気がする。
私もいっぱい泣いたら帰ろう。 翌日 放課後 演劇部部室
しずく「来月の演劇会、参加させてください」
部長「ありがとう!しずくがいれば百人力だよ!」
部長「じゃあ早速練習しようか!今回はいつも以上に頑張ろう!」
部長「って言っても今日は役決めだけだからリラックスしながら、ね」
かすみさんがせっかく譲ってくれたんだから。
いつも以上に全力で取り組まなくちゃ。
主役は私と部長の2人に決まり、今日の活動は終了した。
かすみさんに早く会いに行かないと。 放課後 虹ヶ咲学園正門
しずく「ふぅ…」
流石にここで1時間半も待っていると汗だくになってしまう。
かすみ「しず子〜!待った〜?」
しずく「ううん、5分くらいかな」
かすみ「にしてはすごい汗だよ?」
しずく「最近ずっと暑いから短時間でも汗かいちゃうよ」
かすみ「わかる!今日も暑いからね〜かすみん溶けちゃうよ〜…」
しずく「じゃあヴィーナスフォートで何か食べてこっか」
かすみ「今日はあそこで夜ご飯一緒に食べよ?」
しずく「いいよ。なに食べるの?」
かすみ「うーん…」
かすみ「しず子はなに食べたい?」
しずく「かすみさんと一緒ならなんでもいいよ?」
かすみ「それ答えになってないよ!」
と言いつつかすみさんは顔を少しだけピンク色に染める。
かすみ「むぅ…じゃあかすみんがテキトーに選ぶからね!」
かすみさんは私の手を強引に掴み走り出す。
…私もかすみさんと同じ色になっちゃった。 かすみ「ふぅー!パンケーキ美味しかった〜!」
しずく「レモンカスタードのパンケーキすごく美味しかったね」
かすみ「しず子が頼んだブルーベリーチーズのやつもすごく美味しかったよ!」
楽しい時間は一瞬で過ぎていってしまう。
しずく「明日も一緒にいたいんだけどかすみさんは大丈夫?」
なんて提案をしてみるが、ただただ願望を口にしただけのような口調になってしまう。
かすみ「かすみんは平気だけど…しず子は大丈夫なの?」
かすみ「演劇の練習を疎かにしちゃったらかすみん怒っちゃうからね?」
しずく「かすみさんが行ってらっしゃいって言ってくれたんだから」
しずく「そんなことは絶対しないよ?」
しずく「かすみさんのためにも、私のためにもね」
かすみ「……」
かすみさんの顔がトマトみたいに赤くなる。
かすみ「しず子ってすごいよね…」
自分が今、どんな言葉を発したかを思い出す。
しずく「…っ!///」
しずく「かすみさん、さっきの言葉…忘れてくれる?」
かすみ「…嫌に決まってんじゃん」
かすみ「嫌だよ〜!ぜっっっったい忘れないもんね!」
そう言ってかすみさんは私を置いていくように走る。
しずく「あ!かすみさん!待って!」
かすみさんの幸せそうな顔が見れたなら…
ちょっと恥ずかしくてもいいかな。 私は演劇のお稽古の合間に、できるだけかすみさんと一緒にいられるようにスケジュールを組んだ。
登校の時や昼休み、放課後…。どんな場所でもいいから…。
だけど。
講演会を1週間後に控えた日…。
虹ヶ咲学園 正門前
しずく「はぁ…ふぅ…」
昨日から倦怠感に見舞われている。熱はなかったけれど…。
かすみ「しず子〜!」
しずく「あ、かすみさん」
かすみ「もう講演会まで1週間だっけ?」
しずく「うん。あっという間だったよ…」
かすみ「なんかかすみんまで緊張してきちゃったよ〜」
かすみ「でもしず子はかすみん以上に緊張してるよね〜」
かすみ「…ってしず子?」 しず子「…あ、ごめんね。少しぼーっとしてて…」
かすみさんは私の顔をじーっと見つめる。
かすみ「しず子、今日は帰っていいよ」
しず子「え?」
かすみ「今日のしず子はちょっと疲れてるよ」
かすみ「かすみんが見ても分かるんだから、今日は早めに寝てね?」
しずく「またかすみさんに迷惑かけちゃったね…ごめんなさい」
かすみ「もう!そういうところは良くないよしず子!」
かすみさんは私に優しくデコピンをする。
かすみ「かすみんに謝るのはもうだめだよ?」ニコッ
かすみ「あと…今日から講演会の日まで会う間隔少しだけ減らそ?」
かすみ「しず子さ、私のために無理してるでしょ?隠してるつもりだけどかすみんには全部お見通しだからね!」
しずく「…うん。わかった」
しずく「でもほんの少しだけだよ?」
かすみさんには全部お見通し…。 あの日からかすみさんと一緒に登校したり、一緒に帰ることはなくなってしまった。お昼休みに一緒にご飯を食べる程度だ。
体調は落ち着いてきたけれど…心の中に空白が広がっていく。
演劇でしか満たすことのできなかった私の器に新しい色が混ざって、溶け込んで…
私の器を満たしてくれたんだ。
それが空になり始めている…。
同時にもっとかすみさんと一緒にいたいっていう気持ちが溢れ出る。
かすみとのメッセージ
しずく(かすみさん、明日の放課後、会える?)
かすみ(明日?講演会って明々後日だよね?)
かすみ(練習も大詰めって感じなんじゃないの?)
しずく(それはそうなんだけど)
しずく(どうしてもいっぱいお話ししたくて)
かすみ(電話とかじゃだめなの?かすみんならいつでも電話出れるよ?)
しずく(やっぱり電話だけじゃ緊張はほぐれないから…)
かすみ(わかった。じゃあ放課後ね!) 放課後
しずく「かすみさん!」
かすみ「あ!しず子!」
かすみ「今日はかすみんの方が早かったね〜?」
悪戯っぽく笑うかすみさん。
しずく「結構待たせちゃった?」
かすみ「15分くらいかな〜全然待ってないから大丈夫だよ!」
かすみ「今日はどこ行く?」
しずく「えーっと…行きたい場所あるんだけど行ってもいい?」
かすみ「うん!いいよ!」 かすみ「ここって…」
しずく「演劇の発表会の前にかすみさんと行きたいなって思って」
夕陽の塔。ここで私は…。
しずく「かすみさん、今から言うこと、よーく聴いて欲しいな?」
かすみ「?うん?いいけど…」
しずく「まずはありがとう」
かすみ「え?どうしたの急に?」
しずく「迷ってた私の背中を押してくれて、本当にありがとう」
しずく「1人で悩んでたら多分もっとひどい事になってたから…」
しずく「合同演劇祭の時も…今回の発表会も」
しずく「かすみさんがいたから前に進められた」
しずく「本当にありがとう」
私は頭を下げる。
言いたいことは全部言えた。この気持ちだけは絶対に伝えたかったから。
あとは…
しずく「それと……」
しずく「かすみさんの胸、少しだけ借りていい?」
しずく「緊張をほぐしたいんだけど、いいかな?」
この空白を埋められるのはかすみさんが放つ色しかないから。
かすみ「……いいよ」
…優しい鼓動。私の心がパステルイエローに染まっていく。
このまま寝てしまいたいくらい幸せな空間。
かすみ「落ち着くまでずっと貸してあげるからね?」
しずく「…うん。ありがとう」 10分くらい経っただろうか。心は満たされた。
しずく「かすみさん、ありがとう」
かすみ「…もういいの?」
しずく「うん。すごい元気もらえたよ」
かすみ「そっか…」
しずく「結構遅くなっちゃった…そろそろ帰らなきゃ」
かすみ「…あのさ!」
かすみ「発表会、がんばってね!」
かすみさんは徐に私があげた髪飾りを外す。
かすみ「これ…かすみんが「発表会が成功しますように!」ってお願いを込めたから…」
かすみ「発表会の時つけてあげて欲しいな」
かすみさん……大好き。
しずく「ありがとう…」
かすみ「そんな涙目にならなくてもいいのに…」
かすみ「絶対成功させてね!」
しずく「うん…!最後まで頑張る!」 かすみさんは他に用事があったようで、夕陽の塔で私たちは別れた。
しずく「………」
髪飾りを見つめる。大きなお星様が煌めく。
まるでかすみさんみたい。
明後日の花火大会には行けない、かすみさんにも会えないけれど…。
ずっとそばにいてくれる。そんな感覚がする。
かすみ「……しず子…」
髪飾りを渡したら、ずっとそばにいるような感じがするのかなって思ったけど…。
ここに残ってるのはかすみんだけ…やっぱり寂しいな。
かすみ「…それでも」
かすみ「発表会、成功するといいな」
あの人みたいに輝いているお月様に願う。
…あの時よりもお月様が近くにいるような気がした。 発表会当日
部長「今までやってきたことをできれば成功するよ!」
部長「頑張ろう!」
演劇部一同「おーー!」
ついにこの日が来た。いつも以上に緊張している。
部長「しずく!リラックスだよ!」
部長「有名な人が来るからって緊張する必要はないからね?言い方は悪いけど、私たちから見ればただのお客さんの1人なんだから」
しずく「はい。いつも通り、演劇しようと思いますっ!」
部長「その意気だよ!それじゃあ、行こう!」 しずく「『……ずっと、ずっとあなたのそばにいるの。お休み、お休みなさいロミオ』」
私たちはミスすることなく演技をし、幕が降りた。
過去最高の演技ができた。
これもかすみさんのおかげ。
だけどカーテンコールまで気は抜けない。最後までやり切るって約束したから。
赤い幕が上がる。
………………
一番最初に視界に入った人。
柔らかな赤い瞳、シルバーアッシュに染まる髪色。
間違いない。
しずく「かすみさん…」
しずく「『……ずっと、ずっとあなたのそばにいるの。お休み、お休みなさいロミオ』」
私たちはミスすることなく演技をし、幕が降りた。
過去最高の演技ができた。
これもかすみさんのおかげ。
だけどカーテンコールまで気は抜けない。最後までやり切るって約束したから。
赤い幕が上がる。
………………
一番最初に視界に入った人。
柔らかな赤い瞳、シルバーアッシュに染まる髪色。
間違いない。
しずく「かすみさん…」 …かすみさんだけじゃない。同好会のメンバーもいる。
同好会の皆さんには伝えていなかったし、学園でも発表会があることは知られていなかったはずなのに…。
きっとかすみさんがつれてきてくれたのだろう。
有名な人に演技に関する助言をもらい、メモしたのは良いがそれどころではなかった。
あの人が私の演技を見てくれた。その事実があまりにも嬉しかった。
部長「お疲れ様!じゃあ今日はここでかいさ」
しずく「お疲れ様でした!」
部長「しずく!?」
早く、早く行かなきゃ。
観に来てくれたお客さんはまだ少しだけ残っている。もしかしたらいるのかも。
メッセージにも連絡は入れてみたが既読はつかない。
どこにいるの…。 5分ほど探したが見つからなかった。
もう帰ってしまったの…
しずく「…あ」
夜風を浴びながら彼女は佇んでいた。
しずく「かすみさん!!」
かすみ「あ、しず子…ってうわぁ?!」
しずく「観に来てくれたよね?ありがとう!」
しずく「同好会の皆さんは?」
かすみ「いきなり抱きつかないでよしず子〜!」
かすみ「同好会のみんなは先に帰っちゃった」
かすみ「みんなに『かすみさんはやることあるでしょ』って言われて…」
しずく「そっか…」
花火の音が少しだけ聞こえる。
もしかしたら。
しずく「かすみさん、今から走れる?」
かすみ「どういうこと?」
しずく「花火、観に行こ?」
かすみ「…っ!」
かすみ「うん!行こ!」 虹色に輝くレインボーブリッジを渡る。
しずく「はぁ…はぁ…」
色とりどりの光とともに火薬の匂いが風に乗って流れてくる。
まさか間に合うとは思わなかった。
かすみ「すごいキレイ…」
しずく「うん…」
かすみ「しず子の演技もすごく綺麗だったよ」
しずく「…ありがとう」
しずく「かすみさんの髪飾りがあったからうまく演技ができたよ」
かすみ「恥ずかしいよぉ…」
しずく「本気で言ってるんだからね?」
かすみ「んもぉ〜!これ以上からかうのはなし〜!」
かすみ「かすみんもしず子のことお月様だって本気で思ってるもん!」
しずく「そうなんだ…」
そこまで想ってくれてたんだね。
それじゃあ… しずく「かすみさん」
かすみ「なに?」
しずく「今から話すこと、よーーく聞いてね?」
かすみ「いいよ?」
しずく「私がかすみさんのお月様なら…」
しずく「かすみさんは…」
しずく「私のお星様になって欲しい」
しずく「この髪飾りのお月様とお星様のように」
しずく「ずっと寄り添ってほしいです」
今日の花火大会で1番大きいであろう花火が開花する。
しずく「…意味、ちゃんと伝わった?」 なぜかかすみさんはその場でうずくまる。
しずく「かすみさん?」
かすみ「……」グスン
しずく「泣いてるの?」
かすみ「しず子にこんな顔見せたくないよぉ…」
しずく「かすみさん、こっちにおいで?」
しずく「私の胸、貸してあげる」
かすみ「うぅ…しず子ぉ…」
しずく「好きなだけ泣いていいよ」
花火が散り、海風とかすみさんの鳴き声だけが一体を包む。
かすみ「ねぇ、しず子…」
しずく「落ち着いた?」
かすみ「かすみんも…しず子とずっと一緒にいたい」
かすみ「これからも…ずっと」
かすみ「こんな私だけど…いい?」
…そんなの。
しずく「もちろんだよ」
しずく「だって私の一番大好きな人なんだから」
しずく「大好きだよ、かすみさん」
おわり 乙
情景が伝わってくるSS
jΣミイ˶º ᴗº˶リ素晴らしいです 神SSありがとう
できたら花火大会を優先したルートも見たいなあ 一応完成はしているのですが、結構忙しいので時間があったら別スレで立てようと思います とても良かった
最近ラ板でもしずかす受け入れられたのかSS増えてきて嬉しい おつだよ!
最近板に浄化されるSS増えてきて嬉しいよ かすみんならしず子の夢を応援しそうだし発表会が正規ルートなのかな?
結果的に花火も見れたしトゥルーエンドだよね
逆に最初から花火ルート選んだ展開が凄い気になるから是非今度描いてほしい できるだけ早く投稿できるようにがんばります
花火大会√は砂糖成分多めにする予定です あまりにも尊いしずかすssのおかげで心の臓の病気が治りました!ありがとうございました! 綿密な心情描写が本当に良いな
脳が最高に浄化されたよ、ありがとう 素晴らしいSSだった
両方のルートを書いてくれるなんて嬉しすぎる
しずかすへの愛がものすごく伝わった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています