彼方「真姫ちゃんの病院で再検査……?」
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彼方「すやぁ……」 しずく「彼方さん、そろそろ練習始まりますよ」 彼方「……ふあぁ、しずくちゃん……あれえ、もうそんな時間?」 しずく「そうですよ。彼方さん、ここ最近ずっと眠そうですね……具合が悪いんですか?」 彼方「こう見えても彼方ちゃん、昔から健康なのがとりえなのだよ〜」 彼方「だからこの間の健康診断もきっと……」 ガラガラ 学校医「ああ、彼方ちゃん。ここにいたのね」 彼方「せんせ〜こんちには〜」 しずく「こんにちは」 学校医「はい、こんちには。実は彼方ちゃんのこと探していたの。少しお話しいいかしら」 彼方「彼方ちゃんを……?」 しずく「そういうことでしたら、私は外しますね。同好会のみなさんには遅れると伝えておきます」 学校医「そうしてもらえると助かるわ」 彼方「ありがとうしずくちゃん、おねがいね〜」 彼方「それで、お話しって何ですか?」 学校医「実はね、この間の健康診断の結果が少し気になってね……一度大きい病院で診てもらったほうがいいと思うの」 彼方「えっ……!?」 学校医「西木野病院って知ってるかな。ここの一帯でも特に技術と設備の優れたところなの」 彼方(西木野病院……真姫ちゃんの病院で再検査……?) 彼方「彼方ちゃん、病気なんですか……?」 学校医「ううん、心配しないで。今は健康そのものよ」 彼方(今は……) 学校医「明日早退の許可をもらったから、そのまま西木野病院まで連れて行ってあげるね」 学校医「それから……明日病院にいくこと、お母さんには伝えてもいいんだけど、それ以外の人には少し黙っていてほしいの」 彼方「ええっ、どうしてですか?」 学校医「それが西木野病院の方からの指示でね、私にもわからなくて……」 彼方(そんなに悪いのかな……?) 学校医「それじゃあ、また明日ね」 彼方「はい、失礼します……」 ガラガラ 彼方(彼方ちゃん、健康なのがとりえだったんだけどなぁ……どうしちゃったんだろう……?) ガラガラ あなた「あっ、彼方さん!」 しずく「お話しはどうでした?」 彼方「えっとね〜、保健室の使い方のことでちょっとね〜」 彼方(みんなにも相談できないからね……) せつ菜「さて、みなさん揃ったところで明日に向けてのミーティングをしましょう!」 彼方「あれ?明日って何かあったんだっけ……?」 あなた「ゲリラライブがどんどん人を集められているからね。このままライブの数を増やして畳みかけようって話をしてたんだ」 エマ「この前、μ'sと合同で合宿だってしたもんね」 かすみ「パワーアップしたかすみんたちのパフォーマンスで、部の人たちをぎゃふんと言わせてやるんです!」 彼方「そう、なんだ〜……」 かすみ「そうなんだ〜って、何人ごとみたいに言ってるんですか!彼方先輩だって一緒にやるんですよ!」 歩夢「彼方さんのパフォーマンス、すっごく人気ですよね」 璃奈「この間のリモートライブも、大盛況だったみたい」 あなた「だから今回は中軸に彼方さんを据えたセトリを考えているんだけど──」 彼方「あ、えっと……彼方ちゃん、明日は用事があって早退しなきゃいけなくて……」 エマ「早退?どうかしたの?」 彼方「ちょっとね〜、アルバイト先の店長さんからどうしても出勤してほしいって連絡があって……」 せつ菜「アルバイトを理由に早退ですか……あまり例を見ない事案ですが、よく先生方に承認されましたね」 彼方(うぅ……やっぱりつっこまれちゃうか……) 検査するくらい隠す必要あるのかな。心配させちゃうから? 彼方「えっと、ほら……最近ずうっとスーパーって忙しくてね」 璃奈「そういえば、ネットでも話題になってる。新型ウィルス再流行の気配で、スーパーやホームセンターの需要が増えているみたい」 しずく「なるほど、それで人手不足なんですね」 彼方「そういうこと〜、せっかくなんだけど今度のライブで彼方ちゃん頑張るから、明日はごめんね〜」 かすみ「ぐむむむ……」 エマ「かすみちゃん、仕方がないよ。次に彼方ちゃんがライブする時にもっとお客さん呼べるように頑張ろう?」 かすみ「そうですね……次は絶対参加してくださいね!」 彼方「もっちろ〜ん」 彼方(うう……かすみちゃんごめんよ〜) 彼方(だけど『次』が本当にあればいいんだけど……) ──翌日 西木野病院── 彼方「はぁ……」 彼方(おっきな機械の中に入ったり、レントゲン撮ったり採血したり、検尿や検便まで……) 彼方(色々調べてここに連れてこられたけど……) 彼方「すっごい大きい部屋だなぁ……」 彼方(ベッドもふかふか、壁掛けの大型テレビ、簡易的なキッチンと個別のお風呂にトイレ) 彼方(病院にこんな立派な個室があるなんて知らなかったよ〜) 彼方(だけど、こんなお部屋に連れてこられるってことは……彼方ちゃん、よっぽどひどい状況なのかなぁ……) 彼方(それにこんなところに泊まった日には、入院費が気になってすやぴできないよ〜……) 彼方(できないけど……ふかふかのベッドが睡魔を……) 彼方「……」ウトウト コンコン! 彼方「は、はい!」 彼方(お医者さんだ……彼方ちゃんが病気かどうか伝えにきたんだよね……うう〜……) ガラガラ 真姫「失礼するわね」 彼方「ありゃ、真姫ちゃん……?」 真姫「この間の合宿ぶりね。あの時の料理、とっても美味しかったわ」 彼方「にこちゃんのお料理だってとっても美味しかったよ〜」 真姫「そう。にこちゃんには伝えておくわ。それにしても、彼方だけじゃなくてせつ菜も料理上手だったなんて、知らなかったわ。エリーが何故か手をつけようとしなかったけど……」 彼方(あのスープ、彼方ちゃんが後から味を調整したからね……そっか、絵里ちゃんは前にせつ菜ちゃんの料理を見たことあるんだったっけ) 彼方「それはいいんだけど、真姫ちゃんがどうしてここに……?」 真姫「実は今回の検査の結果を、彼方に伝えるようにパパから言われたの。順番に説明するわ。ちょっと座るわよ」 真姫「さて、きっかけは何日か前に虹ヶ咲であった健康診断ね。あれを管理していたのがうちの病院なの」 彼方「そうだったんだあ。意外なところで繋がりがあるんだね」 真姫「その結果、すごいことが判明したわ。彼方、あなたの体内には未知の何かが発見されたの」 彼方「未知の……何か……?」 真姫「ええ。今まで見たことのないもの。微生物なのか、新種の細胞なのか、それともウィルスなのか……勝手ながらそれを調べさせてもらったみたい」 彼方「彼方ちゃん、死んじゃうの……?」 真姫「落ち着いて。さっきすごいことが判明したって言ったでしょ。いい、彼方の体内で発見されたそれは、あるものに対してだけ異常な攻撃性を見せたわ」 彼方「あるもの……?」 真姫「今話題の新型ウィルスに対してよ」 彼方「えっ……ええ?どういうこと?」 真姫「うちの医療グループの中でもパパが認めた少数精鋭だけが在籍するチームがあるんだけど、そのうちの1人が研究中だった新型ウィルスが入ったシャーレにソレを入れてみたの」 真姫「そしたらものの見事に新型ウィルスは死滅したのよ。調べた限りでは、その他の人体に関わる臓器や細胞には全く影響なし。世界が今一番欲している新型ウィルスのワクチンの鍵が、彼方の中に眠っているってわけ」 彼方「あっ、ああ、検査ってそういう……?」ポロポロ 真姫「ちょ、ちょっと、どうして泣いてるのよっ」 彼方「だ、だってぇ……何にも言われなかったから、彼方ちゃん、難病なのかな、死んじゃうのかなって思って……」 真姫「それだったら誰かに付き添いに来てもらってるでしょ。私から説明することもないでしょうし」 彼方「そっか、そうだよね……それじゃあなんで今回は真姫ちゃんが?」 真姫「……順番に説明するわ」 彼方「……?」 真姫「今回うちに来てもらったのは、ソレについて詳しく調べるためだったの。どういうところで、あるいはどういう環境で生成されるのか、とかね」 真姫「それがわかれば、ワクチンを作らなくても、生活環境を変えるだけで新型ウィルスが撃退できるかもしれないでしょ」 真姫「そうじゃなくても、ワクチンを作るのに必要な情報になり得るもの」 彼方「それであんなに色々と調べていたんだね」 真姫「結果、ソレがどこからどうやって採取できるのかがわかったのだけれど……わかったのはそれだけ」 彼方「どういうこと?」 真姫「現状他の人で再現することは不可能だってことよ。ソレを採取するには彼方に頼るしか方法がないって結論づけられたみたい」 真姫「そして前回も今回も、どういうわけかソレは同じ場所からしか採取できなかったのよ」 彼方「同じ場所って?」 真姫「……彼方の尿よ」 彼方「えええ?尿って……おしっこのことだよね? 真姫「平たくいえば、そうね」 彼方「ど、どうしてぇ?」 真姫「全くわからないわ。血液や唾液からは観測できなかったみたい。MRIやCTの情報からして、どうやら彼方の膀胱でしか生存できない様子らしいの」 彼方「そ、そうなんだ……この話、真姫ちゃんから聞かなかったら、疑っちゃってたかも……」 真姫「それをパパも心配していたの。こんな話、男の人から聞きたくないだろうって。だけどさっき言ったチームには男性の医者しかいなくって」 真姫「それで、女性でかつ彼方と面識のある私が伝える役目を仰せつかったってわけ」 彼方「そうだったんだね……ありがとう、真姫ちゃん」 真姫「べ、別に……頼まれたからやっただけよ」クルクル 真姫「……さて、ようやくこれで本題に入れるわ」 彼方「本題……?」 真姫「うちの病院は新型ウィルスの研究を積極的に行っていたの。というのも、入院患者が日に日に増えていて病床の確保が難しくなってきているわ」 真姫「それに世界中でこの新型ウィルスに苦しんでいる人がいるの。医療従事者なら……いえ、そうでなくても早く事態が終息することを願ってる」 真姫「だから新型ウィルスのワクチンがもし生成できるのなら、うちとしては何がなんでも実現させたいと思っているみたい」 真姫「だけど、その鍵は彼方の尿からしか検出できないの。もしこのまま研究を進めてもソレを再現することができなかったら……」 真姫「……彼方の尿を直接薬にするしかなくなってしまうの」 彼方「……!」 真姫「彼方の尿で作った薬を、知らない誰かが飲んだり血液に注ぎ込んだりすることになるわ。そんなの……考えたくないわよね」 真姫「そうじゃなくても、彼方の尿を色々と調べる必要があるから、ラットで実験したりするかもしれないわ」 真姫「私なら……いくら世界中の人々のためでも、やっぱり嫌かもしれない……」 真姫「だからパパは彼方の意見を尊重することにしたの」 彼方「彼方ちゃんの意見を……?」 真姫「もし彼方が、自分の尿を提供して研究されること、場合によってはそのままワクチンに使用されることに嫌悪感があるのなら、今回のことは綺麗さっぱり忘れるって」 真姫「ただ、もし彼方が協力してくれるのなら、ワクチン開発の手伝いをしてほしいって、そう言ってるの」 彼方「彼方ちゃんがお手伝いできるかな……?」 真姫「とはいっても簡単なことだけみたいよ。毎日何を食べたのかを書いてもらって、そのレポートと朝晩2回ぶんの尿を提供してもらうの」 真姫「それをもとに色々研究をして、ワクチン開発に繋げていく」 真姫「もしそれに同意してくれるのなら、病院としては当然協力金も支払うつもりみたいよ」 彼方「きょ、協力金?」 真姫「当然でしょ。彼方が世界を救う鍵になるんだから。パパはまずはひと月、レポートと尿の提出を協力してくれないかって言ってるわ。その協力金は──」 真姫「──300万円よ」 彼方「うぇ……えっ、えええ!?」 真姫「世界を救うことになるかもしれないもの。これでも少ないくらいだと思うけど」 彼方「だ、だって彼方ちゃんが1年アルバイトしたって届かないんだよ、それがひと月で300万……」 真姫「もちろんこれはひと月協力してもらうことの報酬よ。そのひと月で開発が上手くいかなければ、また同額で手伝ってもらうかもしれない」 真姫「あるいはもしワクチン開発に成功すれば、その鍵の提供者である彼方にはもっと多くの報酬金が支払われると思うわ。それこそ桁が変わるくらいはね」 彼方「桁が変わるって……1000万円!?」 真姫「ワクチンさえ開発してしまえば、多くの国がそれを欲しがるでしょうから、うちに入ってくるお金もたくさんでしょうね。そのくらい訳ないわ」 彼方「す、すごい話……彼方ちゃん、夢見てるのかなあ……?」 真姫「いいえ。私も話を聞いたときは正直夢かと疑ったけどね……どうやら現実なのよ」 真姫「彼方にはどうしたいのかを決めて欲しいの。だけど、出来る限り誰にも話さないでほしいんだって」 彼方「そういえば今日の検査もみんなには言わないように言われてたんだよね、どうして……?」 真姫「一つは病院の評判の心配。女子高生の尿から薬をつくるかもしれないなんて話、倫理的にどうなんだってクレームがくるかもしれないでしょ」 真姫「もう一つは彼方の心配なの。この話が広まったら、彼方を誘拐して金儲けを企むような悪い連中が出てくるかもしれないからって」 真姫「だから相談するにしても、お母さんだけにしてほしいって。こっちも私とパパの研究チームだけしか知らない極秘事項になってるの」 彼方「そうなんだ……」 真姫「あと、うちのことは気にしなくていいわ。彼方が協力すればうちの評判も上がるでしょうし、多額のお金も入ってくる。だけど、それは彼方には関係ないことでしょ」 真姫「あくまで大事なのは彼方がどうしたいかよ。その決断を病院は尊重するって。だから一晩考えて、それで答えを出してほしい」 真姫「さて、私の話はこれでおしまい。しばらく休んだら今日はもう帰ってもいいわよ」 彼方「うん……」 彼方(病気じゃなくてよかったけど、彼方ちゃん、どうしたらいいんだろう……?) >>1 来ないから代わりに言ってやるよ。キモ豚ガイジ 彼方「ただいま〜」 遥「お姉ちゃん!おかえりなさい」 彼方「今からご飯作るからね〜」 遥「お手伝いするよ」 彼方「ありがと〜」 彼方(遥ちゃんにも知られないように普段通りにしないと……) 彼方「えっと……学校は最近どう、楽しい?」 遥「うん!スクールアイドルの練習がほんっとうに楽しいの!」 遥「上手くいかないこととか、意見が違ってケンカみたいになることもあるけど……」 遥「だけど結局は楽しい!って感情に繋がるから続けられるんだ!」 彼方「遥ぢゃん゛……成長じで……」ウルウル… 遥「もう、大袈裟だよ〜」 遥「……お姉ちゃんは大丈夫なの?」 彼方「えっ……!?」 彼方(ま、まずいよ……気づかれちゃったかな?) 遥「最近、部と対立してるってあの人から聞いたけど……」 彼方「ああ、それなら大丈夫だよ〜。あの子がしっかりとスケジュールや練習方法を考えてくれたりしているし、みんな部に負けないようにメラメラしてるからね〜」 彼方「だから遥ちゃんが心配することなんて何もないんだよ〜」 遥「そっか……でも、お姉ちゃん困ったことあるとすぐ抱え込んじゃうんだから、たまには私のこと頼ったりしてよね!」 彼方「……もちろんだよ〜」 彼方(うう……今回ばかりはごめんよ、遥ちゃん) 彼方「ごちそうさまでした」 遥「ごちそうさまでした」 遥「それじゃあお風呂の準備してくるね」 彼方「お願いね〜、その間に彼方ちゃんが洗い物やっておくよ〜」 遥「は〜い」 ジャーーー 彼方(今のお家……彼方ちゃんは好きだけど、ちょっと小さいところもあるんだよね……) 彼方(お風呂は足伸ばせないし、お部屋だって遥ちゃんと共用だもん) 彼方(遥ちゃんは聞いてもきっとそんなこと言わないけど、もしかしたら窮屈に感じているかもしれない。自分だけのお部屋が欲しいかもしれない……) 【真姫「──300万円よ」】 彼方(300万……それだけあれば、もうちょっと広いところに引っ越せるかもしれない) 彼方(遥ちゃんにも個別の部屋をあげられるし、お母さんだってもっと職場に近いところのほうが楽できるだろうし……) 彼方(それだけじゃない。遥ちゃんがスクールアイドルの活動を続けるにも、やっぱりお金が必要だよね。彼方ちゃんが卒業してから働いたとしても、お母さんの負担は減らないだろうし……) 彼方(遥ちゃんが進学するなら尚更お金が必要になる) 彼方(入学金や授業料だけじゃなくて、教材のお金だったり、資格取得の費用だったり。場所によっては一人暮らしすることもあるだろうから、それにもお金がいる) 彼方(遥ちゃんのためを思えば、そしてお母さんのことを思えば、やっぱり彼方ちゃんがおしっこをすれば……) 彼方(そしたら……) ホワンホワン ヲタク《コポォwwwwJKの聖水キタコレですねwwwwフォカヌポウwwwwwww》 ホワンホワン 彼方(うぅぅ……流石にそれは嫌だなぁ……) 彼方(だけど、彼方ちゃんのおしっこで、世界中の人たちが救われるかもしれないんだよね……) 彼方(彼方ちゃんの周りにはまだ大丈夫だけど、東京の感染者数がどんどん増えているみたいだし) 彼方(真姫ちゃんも病院のベッドの数に問題が出てくるって言ってたもんね) 彼方(このまま感染が広がったらどうなっちゃうんだろう。イベントができなくなったりしたら、せっかくあの子が頑張ってきた同好会の活動もまた出来なくなっちゃうよ) 彼方「はぁ……」 彼方(どうしておしっこだったんだろう……血液とかなら、こんなに悩むこともなかったのになあ) 彼方「ふあぁ……」 遥「お姉ちゃんもあがった?」 彼方「うん。遥ちゃんのお風呂掃除のおかげで、すっごく気持ちよかったよ〜」 遥「よかった。私に出来るお手伝いはどんどんやっていくから、お姉ちゃん無理しないでね」 彼方「うぅ……彼方ちゃんは本当にいい妹に恵まれたよぉ」 遥「だから大袈裟だってば。私はそろそろ寝るね」 彼方「うん。彼方ちゃんは明日の予習をしてから寝るから先寝ててね。おやすみ〜」 遥「おやすみなさい」 彼方「……さてと」 彼方(今日の復習と明日の予習をして……たぶんそろそろ英語は小テストがあるから、果林ちゃんに聞かれてもいいように準備しておいたほうがいいかな) 彼方「ふあぁ、ぁぁ……」 彼方(今日も寝るのは2時頃かなあ。でも、早く寝ないと、練習中に、寝ちゃ、い、そう……) 彼方「……」ウトウト 「彼方……」 彼方「ううん……」 「ねえ、彼方」 彼方「……はっ、彼方ちゃん寝ちゃって、あ、お母さん。おかえりなさい」 近江母「ただいま。そんなところで寝てたら風邪ひくわよ」 彼方「ご、ごめんなさい。もうちょっとやってからちゃんと寝るから……」 近江母「……ねぇ、せっかくだからちょっと話しましょう」 彼方「話す……?」 近江母「お医者様から、彼方の身体のこと、聞いたから」 彼方(そっか、お母さんにだけは相談できるんだもんね) 近江母「ねえ、彼方はどうしたい?」 彼方「ええっと──」 彼方「──だから、どうしたらいいのかなって」 近江母「そう……彼方は相変わらず優しいのね」 彼方「そうかなあ、えへへ」 近江母「だけど質問の答えにはなってないかな」 彼方「えっ?」 近江母「今の彼方の話は、私のこと、遥のこと、同好会や患者さんのこと。そればっかりでしょう」 近江母「彼方自身がどうしたいのかっていうところが、あんまり見えてこないの」 彼方「だって、彼方ちゃんはお母さんや遥ちゃんが幸せなら……」 近江母「それは一旦置いておこうよ。お医者様にも言われたでしょう?あなたの気持ちを尊重するって」 彼方「彼方ちゃんの気持ち……」 近江母「さっきのノート……ポイントをわかりやすくおさえてあったみたいだけど、誰かに教えてあげるためのものだよね」 近江母「アルバイトだって、彼方がやりたいって言って始めたけれど、それも家計を助けるためでしょう?」 近江母「ねえ、もう一度聞くよ……彼方はどうしたい?」 彼方「彼方ちゃんは……働いて……お母さんと遥ちゃんに……」 近江母「もう、本当に強情なんだから。誰に似たんだか」 彼方「ええっ……?」 近江母「練習して帰ってきて、アルバイトの日は仕事もして、晩ご飯を作ってくれて、なのに夜遅くまで勉強するのは何のため?」 彼方「それは、特待生でないと学費がかかっちゃうから……彼方ちゃんのわがままで虹ヶ咲に編入したんだしそのくらい……」 近江母「……それじゃあ、彼方の机に入っていたこの用紙は何?」スッ 彼方「あっ……」 近江母「もらったプリントはその日のうちに出す彼方が、このオープンキャンパスの案内のプリントを10日も机の中に入れっぱなしだったのはどうして?」 彼方「えっと、それは友達に……」 近江母「いい加減にしなよ。お母さんが知らないと思ったの?」 近江母「彼方さ、大学に行きたいんでしょう?」 彼方「うう……お母さんだって強情だよぉ〜」 近江母「それじゃあ彼方の強情さは私ゆずりってことね」 彼方「でも、彼方ちゃんが大学行ったら、遥ちゃんやお母さんが大変になるって……」 近江母「その想いが彼方の本心で、優しさから来てるっていうのはわかってるの。だけど、彼方自身がしたい、やりたいことをもっと大事にしてほしい」 近江母「今回の話だってそう。彼方が断るにしろ受け入れるにしろ、お母さんにとってどっちだっていいの。でも、それはあくまで彼方の気持ちを尊重した場合よ」 近江母「彼方が自分の嫌悪感を優先して断ったっていいし、大学に行くために引き受けたっていい。だけど、家計や学費を心配してとか、世界中の人を助けるために犠牲になるとか、そういう引き受け方はして欲しくないの」 彼方「彼方ちゃん……大学に行ってもいいの……?」 近江母「彼方……」 彼方「エマちゃんや果林ちゃんと……大学生やってもいいの……?」ポロポロ 近江母「……バカね、当たり前じゃない」ギュッ 近江母「彼方がお母さんの幸せを願うように、お母さんもあなたの幸せを願ってるの」ポロポロ 近江母「落ち着いた?」 彼方「うん……」 近江母「勘違いしてほしくないんだけど、大学に行きたいなら引き受けてっていう話じゃないからね」 近江母「彼方が嫌だって思ったら当然断っていいんだよ。どっちにしたって進学してもお母さんがなんとでもするから、学費のことは心配しないで」 彼方「うん、大丈夫。彼方ちゃん決めたんだ〜」 彼方「せっかく彼方ちゃんが進学しても、新型ウィルスのせいで大学に入れなくなっちゃったりしたら困るのは彼方ちゃんだもん」 彼方「それなら──」 ──翌日── 彼方「──ワクチン開発のお手伝い、やるよ」 真姫「そう……彼方、ありがとう」 連投規制が重くて仕方ないので今日はここまでにします ストック自体はあるのでエタらずに明日から明後日くらいの完結を目指します コロナは治らなくてもいいから彼方ちゃんのおしっこを静脈注射されたい ムヒョヒョえっちだねえ!な気持ちで読めばいいのか真面目に読めばいいのか… まぁ細かいことは気にすんな 続きが読めるだけでありがたい 待ってるよ 真姫「それじゃあこれからの流れを説明するわ」 真姫「この袋の中に入っているのが採取キットよ。とはいってもいつも検尿する時に使っているものと同じだから普通に使えると思うわ。これに朝晩2回ぶんの尿を採取してほしい」 真姫「こっちのノートには朝昼晩と間食に何を食べたのかを書いてほしいの。そこからK細胞生成のヒントが見つかるかもしれないから」 彼方「K細胞?」 真姫「あなたから見つかった未知のモノの仮称よ。彼方の頭文字をとってK細胞。もちろん公式に発表するときは別の名前になっていると思うけど」 彼方(そっかぁ、彼方ちゃんの名前が残らないのはちょぴっと残念だけど、仕方ないよね) 真姫「わざわざうちの病院まで来てもらうのも大変だろうし、余計な誤解をうみかねないから、採取したものの受け取りは私が直接やるわ」 彼方「真姫ちゃんがって……毎日?」 真姫「正確には土日以外ね。土曜日は音ノ木坂で合同練習があるからその時でいいし、日曜日はお休みの日だから月曜日に2日分まとめてもらうわ」 彼方「真姫ちゃんありがとうね」 真姫「別にいいの。私がやり──じゃない、パパに頼まれたことだから」クルクル 彼方(彼方ちゃんのために志願してやってくれてるんだ……素直じゃないなぁ……でもありがとう) 真姫「それから明日どこで集合するかはその紙袋に入ってる紙を見てちょうだい」 彼方「LINEでもしてくれればいいのに〜」 真姫「病院としては、データ上に記録を残しておきたくないみたいなの。どこからか漏れたら大変だからって。だからその紙も覚えたら破いて捨ててほしいみたい」 彼方「色々大変なんだね〜」 真姫「明日はそこでモノを回収して、報酬金を渡すわ」 彼方「えっ、手渡しなのぉ!?」 真姫「これも振り込み関係をデータ上に残したくないからみたい。その日は真っ直ぐお家に帰ってもらえると助かるわ」 彼方「そっか、300万ものお金を彼方ちゃんが持たないといけないんだね……」 真姫「大変なことに巻き込んで申し訳ないけれど、あなたのためでもあるの。よろしくお願いね」 ──夜── 彼方「さて……」 彼方(今日からおしっこを採取しなきゃだよね) 彼方「よいしょっ……」チョロロロ… 彼方「んっ……」ロロ…ロ… 彼方(今まではあんまり意識したことなかったけど、この彼方ちゃんのおしっこがじっくり調べられちゃうんだよね……) 彼方(そしてこれが300万円になる……ううっ、なんだかこわくなってきちゃったよぉ……) 彼方(本当に大丈夫なんだよね?これが秘密裏にヤクザさんとかに売られてたりしないよね?) 彼方(町を守るような良いヤクザさんなんているわけないし……現役スクールアイドルのおしっこを高値でやりとりしたりしてないかな……?) 彼方「真姫ちゃん……」 ──翌日── 彼方「というわけで〜、真姫ちゃん、遊園地行こ〜」 真姫「ちょ、ちょっと待って!全く意味わかんないんだけど」 彼方「あれ〜、この間遊園地に行った時も楽しそうにしてたから、真姫ちゃん遊園地のこと好きなのかと思ってたんだけど……」 真姫「そうじゃなくて、あまりにも脈略がないじゃない。何がどういうわけなのよ」 彼方「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん。それにたった今彼方ちゃんは大金持ちになったからね〜、真姫ちゃんのチケット代くらい彼方ちゃんがおごってあげるのだ〜」 真姫「嫌」 彼方「ええっ、そんなぁ……それじゃあどこがいい?彼方ちゃんが真姫ちゃんの好きなところ……」 真姫「そ、そうじゃなくて……」 彼方「?」 真姫「せ、せっかくなんだからそんな風じゃなくて……ちゃんと友達として行きたいから……おごられたくなんてないの……」クルクル 彼方「ま、真姫ちゃ〜〜ん……!!」ダキッ 真姫「も、もう!抱きつかないで〜!」 彼方「それじゃあ、次の休みの日はよろしくね〜」 真姫「わかった、予定空けておくわ。それじゃあ、くれぐれも気をつけて帰ってね」 彼方「真姫ちゃんが彼方ちゃん家の近くを指定してくれて助かったよ〜。またね〜」 真姫「ええ。また明日」テクテク 彼方(さて、彼方ちゃんも帰ろう) 彼方(それにしても、今彼方ちゃんは300万円も持ってるんだね〜……お家にたどり着くまでドキドキだよお)テクテク 彼方(だけどお家までそう遠くないし、心配することも──)テクテク かすみ「あれぇ、彼方せんぱ〜い!」 彼方「お、おお!かすみちゃんたち!」 彼方(あちゃ〜〜……) 彼方「これはこれは、1年生お揃いでお出かけかな?」 しずく「はい。かすみさんが最近とっても美味しいスイーツ屋台を見つけたと言うので」 璃奈「ネットでも最近話題。新型ウィルスのせいで行けなくなっちゃう前に3人で行こうってなったの」 かすみ「あ〜あ、りな子がウィルスなんてやっつける発明してくれればなぁ〜……」 彼方「……!」 璃奈「私が得意なのは電子系統。薬学は専門外」 かすみ「そうだよね……じゃあ頼むならまき子の方だね!」 しずく「真姫さんにだって分野があるだろうし……というかそもそもまだ医者じゃないよ?」 璃奈「だけどなんとかしてくれそうな感じは、する」 彼方(やっぱり、みんなウィルスのことを何とかしてほしいって思ってるんだね) かすみ「──ってことで〜、彼方先輩もいっしょにどうですか〜?」 彼方「はえ?どこに〜?」 かすみ「んもうかすみんの話聞いてなかったんですか?スイーツですよ、スイーツ!」 彼方「ああそうだったね〜、えっとぉ……」 彼方(行きたいっ……!行きたいけど……お金が心配だからなぁ……) 彼方「ごめんねえ、行きたいのは山々なんだけど、遥ちゃんがお腹を空かせて待ってるから……また今度ね〜」 璃奈「……?」 しずく「そうですか、それは残念です」 かすみ「じゃあじゃあ、また今度行きましょう!」 彼方「わかったよ〜。それじゃあね〜」スタスタ 彼方(ふぅ〜、危ない危ない……) しずく「それじゃあ行こう?」 かすみ「行こう行こう……って、りな子どうしたの?」 しずく「誰かから連絡?」 璃奈「ううん。ちょっと調べ物……やっぱり。璃奈ちゃんボード《ぴこーん》」ツイツイー かすみ「調べ物?」 璃奈「うん。遥ちゃんの学校のスクールアイドル部、Twitterで今日は校内イベントだって告知をしてる。あと10分後に開始みたい」 かすみ「それがどうしたの?」 しずく「……さっき彼方さん、『遥ちゃんがお腹を空かせて待ってる』って言ってたよね」 璃奈「だけどその遥ちゃんはイベントでお家にいない。だからあの発言はおかしい」 璃奈「それに、会話中ちょっと上の空だった」 しずく「言われてみれば、帰り際どこか早足だったような……何か隠してることがあるのかな?」 かすみ「それじゃあ決まりだね!」 しずく「えっ?」 かすみ「今度のお休み、彼方先輩を尾行するよ!」 また夜更新します 彼方母→彼方の呼び方が既出だったのは私の不勉強です。申し訳ありません…… そこは真面目な話の最中だし彼方呼びしたって脳内変換したからおk 続きも楽しみにしてる 急な大金は振込だろうと散財だろうと不審に思われそう 楽しみにしてる ──数日後── かすみ「というわけで、早速尾行しちゃおう!」 璃奈「おー!」 しずく「……本当にやるんだね」 かすみ「だってぇ!彼方先輩の秘密がわかっちゃうかもしれないんだよ」 しずく「前にもにこさんの後をつけたことがあったけど、かすみさんこういうの好きだね」 かすみ「まあね。ほらっ、あんぱんと牛乳だって用意したんだよっ」 しずく「今時ドラマにもそんな人出てこないよ」 璃奈「そう言いつつ、しずくちゃんもやる気満々」 しずく「えぇ、そ、そうかな……?」 かすみ「確かに……しず子がスカート以外をはいてるの、衣装以外で全然見ないかも」 しずく「だ、だって……スカートだと走って追跡する時に不便かなって……」 かすみ「しず子ガチじゃん!」 ──── ── ─ かすみ「……つまんない」 璃奈「彼方さんの家の近くに張り込みして20分経ったね」 しずく「まあ、彼方さんが何かを隠していたとしても、今日行動に移すとは限らないし、そもそもこの間のことだってただの言葉の綾だったとかってこともあるかもしれないよ」 かすみ「ん〜でもでも……あの時の彼方先輩怪しかったんだけどなあ……」 璃奈「それに初めに気がついたの、私」 かすみ「そうかもしれないけど!よく見たら何か焦ってたような感じしたんだけど……」 かすみ「彼方先輩のアルバイトのシフト的にも、同好会の練習のスケジュール的にも、何かやるなら今日しかないと思ったんだけどなあ……」 しずく「かすみさんの方がガチじゃない?」 璃奈「でも、これ以上何もなさそうなら──」 ガチャッ 3人「……!!」 彼方「さてと……」 璃奈「彼方さん、出てきた」 しずく「ただのおつかいの可能性とかもあると思うけど……」 かすみ「でも見てよしず子、あの格好」 璃奈「確かに……おつかいにしてはやけにおしゃれ」 かすみ「よし、追ってみよう!」 しずく「しっ、かすみさん、気づかれるよ?」 璃奈「しずくちゃんも案外のりのり」 しずく「い、いいから行こう?」 ──駅── しずく「やっぱり……本格的におでかけだね」 かすみ「かすみんリサーチによれば、同好会の誰かとの予定はなかったはず」 璃奈「部のほうは確か今日はミーティングだって愛さんが言ってた」 しずく「遥さんとどこかに行くなら、今一緒にいるはずだろうし……」 かすみ「ってことは!やっぱり秘密のお出かけだね!」 璃奈「彼方さん、改札通った」 しずく「あっちの路線ってことは行き先は……」 かすみ「もしかして……遊園地だ!」 彼方「あれえ、もしかして彼方ちゃん、時間間違えちゃった?」 真姫「そうじゃないわ。私が早く着きすぎただけよ」 彼方「それじゃあやっぱり待たせちゃったんだね……ごめんね〜」 真姫「いいんだってば。私が勝手に早く来たのよ。その……楽しみだったから……」クルクル 彼方「ま、真姫ちゃ〜ん……!」ダキッ 真姫「んもう、だから抱きつかないでってば!」 ──── かすみ「着いた、やっぱり遊園地だよ」 璃奈「彼方さんと……真姫ちゃん……?」 かすみ「まき子と彼方先輩が密会?」 しずく「そうか……そういうことだったんだね……」 璃奈「しずくちゃん?」 しずく「そう、きっと2人は禁断の恋に……!」 しずく「別の学校でありながら2人は出会い、そして恋に落ちてしまう」 しずく「合同練習の合間を縫って逢瀬を重ね、親睦を深めていく」 しずく「音楽室での2人きりの時間。舞うは彼方 奏でるは最美の調べ……そんな束の間のひとときを楽しんでいたの」 しずく「しかし、2人は1年生と3年生。身分違いの恋に苛まれることになる」 かすみ「いうほど身分違いじゃなくない?」 しずく「いずれ彼方さんが卒業してしまえば、2人は離ればなれになってしまう。噫無情……この世界は悲しみに満ちてる……」 璃奈「今だって学校が違うのに会ってると思う」 しずく「しかし!最後の最後で2人は愛を確かめるために、初めて外でデートをすることにしたの。人目を気にしがながら、それでも2人は会うのをやめられなかった」 かすみ「全然めげないじゃんしず子……」 しずく「2人は少しずつ身体を重ねていき、そして──」 「あーーー!!!」 かすみ「えっ……!?」 Hey guys! We have a gift for you 凛「やっぱり!かすみちゃんたちだよ〜!」 璃奈「凛ちゃん、花陽ちゃん」 しずく「お2人ともは遊びに……?」 花陽「いや、えっとね……」 凛「……最近真姫ちゃん、練習終わったらすぐに帰っちゃうから、何かあったのかなって心配で」 かすみ「ええっ、もしかして2人も尾行!?」 花陽「2人も……って?」 璃奈「私たちも一緒。彼方さんの様子が変だったから、見に来たの」 しずく「では、やはりそうだったんですよ!2人はきっと禁断の──」 真姫「してないから」 花陽「ぴゃあああ!ま、真姫ちゃん!?」 真姫「そりゃあね、知り合いのあんな大きな声聞いたら、普通気がつくわよ」 彼方「ごめんね〜、心配かけちゃったんだね〜」 しずく「こちらこそ……後をつけるような真似をしてすみませんでした」 彼方「いいんだよ〜、遊園地だもん。みんなで遊んだ方が楽しいからね〜」 花陽「でもいいんですか?」 彼方「彼方ちゃんはね〜。真姫ちゃんは?」 真姫「……いいんじゃない。彼方がいいなら私も異議はないわ」 凛「やったにゃ〜!」 璃奈「それで、2人はどうしてここに?璃奈ちゃんボード《はてな?》」 真姫「料理をちょっと教えてもらおうと思ったのよ。この前は彼方たちもいたからなんとかなったけど、いつも合宿の時はにこちゃんに頼りっぱなしでしょ」 真姫「それで、にこちゃんと被りそうにないメニューのレシピをいくつか教えてもらったりしてたってわけ。そしたらこの間彼方が遊園地に行こうって言ったから今日一緒にいるの」 彼方(おお〜真姫ちゃんナイスアドリブ) 彼方「それじゃあ今日は楽しもうね〜」 凛「凛、またジェットコースター乗りたい!」 かすみ「うぇぇ、あれですか!?」 花陽「そういえば、凛ちゃんとかすみちゃんは前にも彼方さんと来たことがあるんだよね?」 凛「うん!その時、今度かよちんとも行こうって思ったから一緒に来られてよかったにゃ」 しずく「かすみさん急に大人しくなったけど……もしかして怖い?」 かすみ「し、仕方ないじゃん!かすみんかわいいのは得意だから、怖いの苦手なんだもん!」 璃奈「どういう理屈……?」 彼方「そうだなあ……」チラッ 真姫「……?」 彼方「彼方ちゃん、今日はゆっくりしたい気分だから、メリーゴーラウンドとかのほうがいいかなあ」 凛「そ、そうなんだ……」 璃奈「面白そうだったけど、それならまた今度だね」 真姫「……ああ、そういうことね」ボソッ ──── ── ─ 彼方「はぁ〜、最高だったね〜!!」ニコニコ しずく「知りませんでした、彼方さんがここまでジェットコースター好きだったなんて」 璃奈「以外」 彼方「そうなのかなあ?普通はこんな感じじゃない?」 花陽「私はもう途中から怖くなっちゃって、凛ちゃんの手をずぅっと握ってたよ」 かすみ「かすみんもでずぅ……」 真姫「相変わらずの迫力だったわね。だけど、クセになる気持ちも少しわかるかもって今回は思ったわ」 しずく「あっ、もうこんな時間なんですね」 花陽「ジェットコースターに乗れる時間が結構遅かったもんね」 璃奈「次のアトラクションで最後になりそう」 彼方「それじゃあアレに乗ろうよ、観覧車!」 真姫「夜の観覧車って、ライトアップされた園内が一望できて綺麗なのね」 彼方「そうなんだよ〜、これはこの前遥ちゃんと行った時に教えてもらったんだ〜」 真姫「そうだったのね……ねぇ、彼方」 彼方「ん〜?」 真姫「2人になれたことだし、私を遊園地に誘った理由、そろそろ教えてもらってもいいかしら?」 彼方「……真姫ちゃん賢いからなぁ。もう気がついてたりするんじゃない?」 真姫「メリーゴーラウンドに乗りたいって言ったり、ジェットコースターを遠慮したり……やたら私に気をつかってたでしょ?だけどそれがどうしてなのかはわからなかったわ」 彼方「あちゃあ、やっぱりそのあたりはバレちゃってたんだね……ただ今日は真姫ちゃんにお礼がしたかっただけなんだ〜」 真姫「お礼?」 彼方「……最初におしっこを採取した日ね、やっぱり怖くなっちゃったの」 彼方「もしかしたら、大金もらってこんなことするなんて、彼方ちゃん騙されてるのかな、悪用されるんじゃないかなって……」 真姫「まあ、そう思われても仕方がないかもしれないわね……」 彼方「もしこれを知らない男の人に渡すようだったら、彼方ちゃん続けられる自信なかったと思うんだ〜。でも真姫ちゃんが手伝ってくれてたから、そんなわけないよねって思えたんだよね」 彼方「だから、真姫ちゃんに感謝してるんだよ。ありがとう、真姫ちゃん」 彼方「ただ、真姫ちゃんには逆に気をつかわせちゃったみたいで、ごめんね〜」 真姫「そんな……それなら私だってそうよ」 彼方「ええっ?」 真姫「こういう風に色々と誘ってくれてありがとう。こうやってみんなと遊んだりするの、憧れがあったから……」 真姫「私、こういう性格だから自分から誘ったりできないし……彼方も含めて、虹ヶ咲のみんなが遊びに連れて行ってくれるの、感謝してるの」 彼方「えへへ、お互い様なんだね〜」 真姫「もっともちょっと前までの私だったら、誘われても断っていたかもしれないわね」 彼方「どうして?」 真姫「遊んだりしたいっていう気持ちを、抑えていたと思うからよ。今よりももっと自分の世界に閉じこもっていたから……」 真姫「だけど穂乃果が私を頼ってくれて、花陽と凛が友達になってくれて。そうしてμ'sに入ったことで、私は変わることができた」 真姫「たまに対立したりもするけれど、それも含めて楽しいことなのを知ってるから。だから、μ'sのみんなにももちろん感謝してる。まるで10年くらい一緒にいるみたいな錯覚すらあるわ」 彼方「錯覚……?」 真姫「もちろんものの例えだけどね」 彼方「へえ、真姫ちゃんはμ'sのこと大好きなんだね〜。素直な真姫ちゃん、いいじゃ〜ん」 真姫「もう……はぐらかすのが上手な彼方に言われるのは釈然としないわね……」 彼方「えへへ、それじゃあ彼方ちゃんももう1つお礼をしようかな〜」 真姫「だから気にしなくても……」 彼方「ううん、お料理の話だよ〜。きっとあれは誰かに気づかれた時に用意していた言い訳なんだと思うけど、今の話を聞いてたら、きっとそれも真姫ちゃんの本心なのかなって」 真姫「そうね。それじゃあまた今度お願いしようかしら」 しずく「夜景、すごく綺麗でしたね!」 かすみ「かすみん感動しちゃいました!」 花陽「私もっ!」 凛「今日は楽しかったにゃ〜!」 璃奈「今度はもっとみんなで来たい」 真姫「何人になると思ってるのよ……」 彼方「あはは、みんなで来たら海未ちゃんやダイヤちゃんの胃がもちそうにないね〜」 凛「だけどそれも楽しそう!」 しずく「では、そろそろ帰りましょうか」 真姫「そうね。行きましょう」 彼方(今日はみんなと親睦が深まったし、真姫ちゃんに感謝も伝えられたし、よかったなあ) 彼方(だけど、新型ウィルスがもっと流行しちゃえば、ここにくることもできなくなっちゃうかもだもんね〜……) 彼方(はやく解決するといいなぁ) ──数日後── 彼方「ええ?緊急事態!?」 真姫「そうなのよ。彼方のせいじゃないんだけどね……」 彼方「どういうこと?」 真姫「それが、パパが言うには彼方の尿の中から発見できるK細胞の量が減少を始めたみたいなの」 真姫「彼方の膀胱で繁殖していると思っていたのだけれど、何らかの原因でそれができなくなったのか、それともそもそもが外的要因によるものだったのか」 彼方「外的要因って、彼方ちゃんがK細胞を作ってたわけじゃないってこと?」 真姫「可能性としてはそこも考えられるわ。とはいえ一緒に送ってもらっている食事のレポートを見る限りは何か変なものを摂取しているわけでもないし……」 真姫「彼方は何か心当たりない?健康診断の前後で何かいつもと違うものを摂取した覚えはある?」 彼方(うーん、健康診断の前っていうと、合同合宿があった時だよねえ。そんな時にも特別変なものを食べた覚えは──) 彼方「──あっ!!!」 私の料理は世界のみなさんを健康にします! ブイッ❤︎ 彼方「さて……」 真姫「言われたものは全部用意したわ」 彼方「さっすが真姫ちゃん、ありがと〜!」 真姫「このくらいどうってことないってパパが言ってたわ。それよりも、本当に可能なの?」 彼方「まっかせて!こう見えても特待生なんだあ。彼方ちゃんだって、やるときはやるんです」 真姫「それは知ってるけど……まさか何週間も前に食べたレシピも知らない料理を、味の記憶を頼りに再現するなんて……!」 彼方(そう、彼方ちゃんがやるべきこと、それは──) 彼方(──あの合宿で食べたせつ菜ちゃんのスープを、再現するよ!!) 彼方「健康診断の付近で唯一食べた変なものが、あのスープだからねえ」 真姫「やっぱりエリーが遠慮してたってのはそういう意味だったのね」 彼方「逆に言えば希ちゃんは平気そうに食べていたよね〜」 真姫「その時は彼方が作ったってわかったんじゃない?希はタロットに愛されてるみたいだから」 彼方「あはは、なんだか納得できちゃうなあ」 真姫「それで、どうやって再現するの?」 彼方「もちろん、せっかくあの日準備した食材と全く同じ種類のものを用意してもらったからね、あの時の味に近づくように料理をしていくんだ〜」 真姫「手がかりはあるの?」 彼方「彼方ちゃん、気がついたんだよ〜。合宿以降で変わったことがもう1つあったことに」 真姫「変わったこと……?」 彼方「それはずばり……眠気なんだよ〜!」 真姫「眠気って……彼方はいつもそうでしょ?」 彼方「それがね〜、最近は特に眠気がすごかったんだよね〜」 【しずく「彼方さん、ここ最近ずっと眠そうですね……具合が悪いんですか?」】 【彼方(できないけど……ふかふかのベッドが睡魔を……)】 【彼方(今日も寝るのは2時頃かなあ。でも、早く寝ないと、練習中に、寝ちゃ、い、そう……)】 真姫「なるほどね。つまりあのせつ菜のスープには、眠気を誘うような何かが入っていたかもしれないってことね」 彼方「そのとおりだよ〜。それで今回彼方ちゃんが目をつけた食材が、じゃ〜ん、くるみだよ〜」 彼方「くるみの中にはね〜、トリプトファンがたくさん含まれてるんだ〜」 真姫「トリプトファン?」 |c||^.-^|| 「説明しましょう。トリプトファンとは、快眠ホルモンである『メラトニン』を生成する必須アミノ酸のことですわ。ヒトの体内では十分に生成ができない為、食事から摂る必要があるのですよ」 ──── ── ─ 彼方「むぅ……」 真姫「あれから2時間くらいかしら……」 彼方「う〜ん、惜しいところまできたと思うんだけどなあ……」 真姫「色味はだいたいこんな感じだったように思うけれど……味の再現までは流石に私にはわからないわね」 彼方「彼方ちゃんが今までやってきたのはね、既にある料理をアレンジしたり、盛り付けを考えたり、そういうのがほとんどだったんだあ。全く新しい料理を開発することはほとんどしたことないから……」 彼方「こんな、荒野を突き進むような大変なものだったなんて知らなかったよぉ……」 真姫「ふふ。独特の表現ね……じゃあ彼方、少し息抜きしない?」 彼方「息抜き……?」 真姫「前に約束したでしょ。料理教えてくれるって」 彼方「おお、そうだったね〜!それじゃあちょっと中断して、彼方ちゃんのお料理教室のはじまりはじまり〜」 彼方「はい!これでアクアパッツァのかんせ〜い」 真姫「……美味しい」 彼方「真姫ちゃん、トマトが好きだって聞いたからね。それににこちゃんの料理は和食が多いって聞いたから洋食がいいかなって」 真姫「色々気にして選んでくれてありがとう。料理って結構楽しいのね」 彼方「でしょでしょ〜、彼方ちゃんも大好きなんだ〜」 真姫「ふふ。ちょっと前の表情とはだいぶ変わったわね」 彼方「表情……?」 真姫「せつ菜の料理を作ろうとしていた時のことよ。色々プレッシャーがあるのはわかるけど、あまり楽しそうな表情でなかったから」 彼方「そうだったんだ……」 真姫「前に言ったでしょう。μ'sの活動は上手くいかないこともあるけど、それも含めて楽しいから続けられるって」 彼方「……!」 【真姫「たまに対立したりもするけれど、それも含めて楽しいことなのを知ってるから」】 【遥「上手くいかないこととか、意見が違ってケンカみたいになることもあるけど……結局は楽しい!って感情に繋がるから続けられるんだ!」】 彼方「そっか……!」 彼方「彼方ちゃん、うっかりしてた……せつ菜ちゃんもきっと、楽しい!っていう気持ち全開で料理していたんだよね!」 彼方「彼方ちゃん、せつ菜ちゃんのこと全然理解できてなかったよ……通りで再現なんてできないわけだよね」 彼方「それなら……きっとこんなもの使ってちゃダメなんだよ!」 真姫「ちょ、ちょっと彼方……?」 彼方「軽量カップもスプーンも必要ないよ。ぜ〜んぶフィーリングで作っちゃおう!」ババババ 真姫「は、早い……手際は流石ね」 彼方「あははは〜、こういう料理も楽しいんだね〜」ババババ 真姫「このスピード感……ジェットコースターといい、彼方ってスピード狂なのね、意外だわ」 彼方「え〜っと、こうした方が美味しくなるんだろうけど……こっちのほうが面白そうだね〜」 ──── ── ─ 彼方「出来た〜!!」 真姫「すごい……あれから30分くらいで、ここまで来たのね……!」 彼方「さてと。ここからはまた彼方ちゃんの本領発揮だよ〜」 真姫「あら?もう完成したかと思ったんだけど違ったの?」 彼方「ううん。せつ菜ちゃんの料理の再現は完璧にできたはずだよ。ただ、あとは彼方ちゃんがちょっとずつ味見をしながら調整したんだ〜」 彼方「どの段階でK細胞がなくなるのか、それとも現れるのかわからないからね。これはこれとしてそのパターンもいくつか作ろうと思うんだ〜」 彼方「ここからの作業は彼方ちゃんの得意分野だからね。もうすぐ終わると思うよ〜」 真姫「そう、流石特待生ね」 彼方「そこから先は真姫ちゃんのお父さんにお願いしなきゃだね〜、お薬を作るのは、彼方ちゃんにはできないから」 彼方「だから彼方ちゃんができることを精一杯!それじゃああと少しがんばるぞ〜」 ──数日後── 彼方「真姫ちゃん、なんだか久しぶりだね〜」 真姫「そうね。一時期は毎日顔を合わせていたからね」 彼方「それで、どうなった?」 真姫「ビンゴだったの。彼方が作ったサンプルの1つからK細胞が発見されたの。そのレシピを研究して、生成することにも成功できたわ」 真姫「あとは元々彼方から採取したK細胞のデータと統合して、注射タイプのワクチンに昇華することもできたの。既に動物実験には成功していて、政府の方に一般化の申請をしている段階みたい」 彼方「おお〜、それじゃあそれが承認されたら?」 真姫「うちの病院で試験的に導入して、結果が出れば全国に流通するわ。抗体ではなく新型ウィルスを完全に死滅させるものだから、感染拡大は間違いなく終息に向かうはずよ」 彼方「ってことは、イベントとかも……?」 真姫「そうね。自粛したりってことはなくなると思うわ」 彼方「よ、よかった〜……」 真姫「それからK細胞は仮称のつもりだったんだけどね。彼方から採取したんじゃなくて彼方が生成したものになるんだから、あなたの名前をそのままつけられるようになったの」 真姫「それとうちの名前を合わせて、NK細胞って名付けられることになったわ」 彼方「か、彼方ちゃんの名前がつくんだ〜……!」 真姫「……それと、もう1人の立役者の名前ね」 彼方「もう1人って……ああ、中川菜々ちゃんってことだね」 真姫「せつ菜の料理にインスピレーションを受けた彼方が作ったレシピにNK細胞が見つかったっていうシナリオにするみたい。せつ菜にも報酬金が与えられるみたいよ」 真姫「それにもちろん、彼方にもね」 彼方「彼方ちゃんが世界を救うことになるなんて、思ってもみなかったなあ……」 真姫「もちろん未成年の学生だからある程度情報は保護されるでしょうけど、少なくとも同好会のメンバーとかには公表できると思うの」 彼方「そっかあ、彼方ちゃん、ヒーローになっちゃったんだね……だけど彼方ちゃん、お金よりも名誉よりも、もっと素敵なもの貰っちゃったんだあ」 真姫「そうなの?」 彼方「真姫ちゃんと親しくなれたことだよ〜」 真姫「彼方……」 彼方「きっかけはちょっと変な感じだったけど、これが終わったからって真姫ちゃんと疎遠になるのは彼方ちゃんいやだからさ〜、またお料理教室を開催しようと思いま〜す」 真姫「まあ、彼方がしたいんならしていいんじゃないかしら」クルクル 彼方「やった〜!それじゃあ彼方ちゃん、腕によりをかけちゃうぜ〜!」 終わりです。締め方にちょっと納得いかなくて直したりしてたら遅くなりました…… 本当はもっとふざけるつもりがあったんですが、彼方ちゃんと真姫ちゃんを自然に動かそうとしたらだいぶ真面目よりの話になってしまいました ご覧いただいてありがとうございました 乙!面白かった まさかの廃人の人だったとは.... 次回作も期待してるね 廃人の人だったのか、納得。 今回は、初っ端ぶっ飛んでて後からまともになっていく、廃人とかとは逆のパターン。 おつおつ 面白かったです!廃人の人だったんだね、あれも楽しませてもらいました いい話だった 特待生彼方ちゃんの手際が感じられたのが良かった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
read.cgi ver 07.4.7 2024/03/31 Walang Kapalit ★ | Donguri System Team 5ちゃんねる