果林「筋トレのアドバイスが欲しい?」侑「果林さんにしか頼れなくって」
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〜休日練習・休憩時間〜
虹ヶ咲学園・カフェテリア
侑「うん。モデルの果林さんなら、いろんな鍛え方を知ってるんじゃないかと思ったんだ」
侑「あっ、楽な方法がどうとかじゃなくて、見せるための体作りも動くための体作りもしてきただろうから、そういうことでっ」ワタワタ
果林「慌てなくても誤解なんてしないわよ」クスッ
果林「それは良いのだけど、侑っていつも私たちの練習を見てるでしょう?」
果林「私に聞かなくても、メニューは組めるんじゃないかって思うけれど」
侑「一緒に相談してきたし、みんなの分はだいたい組めると思う」
侑「ただね果林さん。これは自慢じゃないんだけど」
果林「ええ」
侑「私はあまりにも筋肉が無さすぎて、メニューを組むとかどうとかの次元じゃないんだよね」
果林「それは本当に自慢じゃないわね」 果林「確かにいたわ、読モの友達にも」
果林「スリムで見栄えするけれど、筋力や体力が足りないことに悩んでて、私に相談してくれた」
果林「ある意味ほぼゼロからの体づくりも見てきたから、侑にも多少はアドバイスできると思う」
侑「じ、じゃあ……!」
果林「ええ。私にできることなら力になるわ」
侑「やったぁ! ありがとう!」パアァ
果林「まだなにもしてないのに大げさね」フフッ
侑「助言をもらえるだけでありがたいよ」
侑「果林さんはこれから、私のあまりの体力のなさに度肝を抜かれると思うから」
果林「『度肝を抜かれる』って日常会話でそう聞かない言葉じゃないかしら」 果林「最初に確認だけど、ダイエットよりも体力や筋力をつける目的で良いのよね?」
侑「うん」
果林「最初にそうしたいって思った動機を聞かせてくれる?
果林「無理にとは言わないけど、その方が目標も立てやすいから」
侑「動機……って言っていいのか分からないんだけど、もしかして私ヤバい? って思ったことはあって」
果林「ええ」
侑「このあいだ、璃奈ちゃんに相撲で惨敗したんだよね」
果林「待って、頭の中を整理させてちょうだい」 侑「うん」
果林「あの……違うわ。馬鹿にしてるとかじゃないの」
侑「大丈夫。果林さんがそんな人じゃないって知ってるから」
果林「ありがとう。でもちょっとその……だいぶ予想外で」
果林「正直なところ、度肝を抜かれたわ」
侑「それが正しいと思う」
果林「さっきからだけど潔さがすごいわね」
侑「負けた瞬間、私がいちばん驚いたから」
果林「そう……」
侑「……」
果林「……」
果林「……あの……聞いてもいい? どういう状況だったのか」 侑「1年のみんなと、あと歩夢と部室で喋っててね」
侑「確か練習とかトレーニングメニューの話になって、最初よりみんな体力ついたねーって感じになって」
果林「そうね。みんなすごい早さで色んなことが上達してるわ」
侑「だよね。それで嬉しいねって話してたんだ」ニコッ
侑「そこからなんか、流れで取り組みを」
果林「流れで相撲……?」
侑「たぶんみんな熱に浮かされてたんだと思う」
果林「そう……」
果林「それで侑は……その」 侑「うん」
侑「負けたよ」
侑「璃奈ちゃんに惨敗したんだ」
侑「測ってないから体感だけど、20秒ももたなかったんじゃないかな」
果林「ごめんなさい。そんな悲しい顔をさせるつもりじゃなかったの」 侑「きっと璃奈ちゃん、上級生相手でも粘れるようになったよ! ってくらいの気持ちだったんだろうなぁ……」
侑「のこった! からの璃奈ちゃんの顔に浮かんだ驚きが忘れられないよ」
侑「思えばさ、背とか学年とか、関係ないんだよね」
侑「ちゃんと鍛えてたらそりゃあ、そうじゃない相手より強くなるのは当たり前で」
侑「なんかいたたまれない空気になっちゃってね」
侑「悪いことしちゃったなあ」
果林「やめましょうこの話」 果林「侑のトレーニングについて話しましょう」
果林「細かい区分けをすると、筋肉を大きくさせたいか引き締めたいかでも違いは出てくるけれど」
侑「私はそれ以前の問題だから」
侑「まず人並みになりたい……人間になりたい」
果林「落ち着いて? 卑屈になり過ぎてるわ。侑は人間よ」
果林「3秒息を深く吸って、6秒かけてゆっくり吐いて」サスサス
侑「……」スゥー
侑「……」フゥーー
果林「落ち着いたかしら」
侑「うん……」
侑「でも私、力が欲しいよ」
果林「落ち着いてこれならよっぽどね……」 果林「それだけ悩んでたなら、もっと早く誰かに相談しても良かったんじゃない?」
侑「最初は愛ちゃんやせつ菜ちゃんに聞こうかなって考えたんだけど、同級生にこういう話するの、ちょっと恥ずかしくて」
果林「あら、侑にもそういう感覚があるのね」クスッ
侑「か、果林さんっ!」カァッ
果林「良いじゃない、可愛くって♪」
侑「うぅー……」
果林「2年といえば、歩夢はどうなの?」
侑「うーん、頼ったら自分のことよりこっちを優先しちゃいそうというか」
果林「あぁ、確かに歩夢ってそういうこともしちゃいそうね。優しすぎるところがあるから」
侑「うん」 侑「それと、相撲で惨敗した私を見た悲しい勝者の目が忘れられなくて」
果林「取り組みしたのは1年生とだけじゃなかったのね」
侑「大人と子供の戦いだったよ。同学年なのに」
侑「赤子の手をひねるようって、ああいうことを言うんだろうね」
果林「今すぐ話を変えましょう」 果林「じゃあ、具体的なメニューについてね」
侑「い、いよいよだね……」ゴクリ
侑「聞いておいてなんだけど、私に施す術はある?」
果林「あるからそんな悲しい目をしないで」
果林「まず、種目は2つに絞りましょうか」
侑「いきなりたくさんじゃなくて助かるよ」
果林「数が多くて嫌になっちゃったら本末転倒だもの」
果林「慣れてきて、欲が出てきたら増やせばいいわ」
侑「なるほど……」メモメモ 果林「ただし。この2つは覚えやすいし動きも単純だけど、正しいフォームでやろうとするとかなり効くわよ?」
侑「お、おぉ……!」
果林「油断してかかると……」
侑「ゆ、油断してかかると?」
果林「翌日死ぬわ」
侑「死んじゃうの!?」 果林「そこまでは冗談……まあ冗談だけど、それくらい効果があるってこと」
果林「プランクとスクワット。名前は分かるわよね?」
侑「確か両方とも基礎トレに入ってるよね」
果林「それぞれ体幹と大きな筋肉に効くから、鍛えておいて損は無いわ」
果林「他の場所を鍛えるにせよ、土台固めは大事だから」
侑「部活でいつもやってるみんなでもキツそうにしてるけど、私にもできるかなぁ」
果林「大丈夫。膝の沈め方やフォームで負荷は軽くできるわ」
果林「詳しいやり方はあとで部室で一緒に確認するから、心配しないで」
侑「ありがとう果林さん、なにからなにまで」
果林「さっきの顔を見たら助けたくて仕方なくもなるわ」 果林「膝つきのプランクと、スロースクワットからね。これは後で部室で確認」
侑「よろしくお願いします」ペコッ
果林「あとはトレーニング以外のところかしら」
果林「食事はもちろんだけど、日常の動作にも気をつけると良いわ」
侑「なるべく階段を使うとか、電車では立つようにするとか?」
果林「それもいいと思うわ。あと、歩くときには背を伸ばして、下腹を引っ込めるようにするの」
果林「姿勢も良くなるし、体幹に刺激も加わるから」
侑「本当だ。引っ込めようとすると勝手に背筋も伸びるんだね」スッ
果林「簡単そうだけど、意識して続けると結構疲れるのよね」クスッ
侑「た、確かに……!」プルプル 侑「果林さんは普段からこうしてるの?」プルプル
果林「そうね。あまり意識しなくても体が勝手にそうするようになってるわ」
侑「歩き方とかもスッとしてて綺麗だもんね」プルプル…
侑「すごいなぁ、プロ意識だ」グテッ
果林「私なんてまだまだよ。モデルと言っても読者モデルだもの」
侑「だとしても。カッコいいよ」
果林「……ありがとう」
侑「あっ、ということは」
果林「どうしたの?」 侑「迷子になってるときも腹筋を……?」
果林「……」
侑「……」
果林「……」
果林「言われてみればそうね……」
果林「……意識はしていないけど、クセになってるからやってるんだとは思うわ」
侑「すごい……!」
侑「焦っててもトレーニングは忘れないなんて、ストイックでカッコいいなぁ……!」キラキラ
果林「複雑な気分ね。純粋な好意なのが分かるからなおさら」 果林「そういえば、筋トレをするときの注意」
侑「うん」
果林「とはいっても心掛けることは多くないわ」
果林「フォームが間違っていると怪我に繋がるから、それは気をつけないとダメ。あと、辛いと呼吸を忘れがちだけど、ちゃんと息を吸うこと」
侑「呼吸も大事なの?」
果林「慣れないうちは吸う吐くのタイミングまでは気にしなくていいわ。ただ、酸素不足だと気持ち悪くなったり、最悪倒れてしまう場合もあるから」
侑「それはまずいね……」
果林「おかしいなと思ったら窓を開けて深呼吸すること。良いわね?」
侑「うん! 部屋でするときは気をつけるね」 果林「それと、これが一番大切なこと」
果林「自分を追い込みすぎないように。もちろん、悪い意味で」
侑「……!」
果林「スクワットが浅くなってしまっても、プランクが途中で終わってしまっても、自分をダメだと思わないこと」
侑「……そっか」
果林「侑みたいな初心者ならなおさらそう」
果林「特にプランクなんて、最初は正しいフォームで構えるだけでキツいはずよ」
侑「いや、流石にそこまでは」
果林「舐めてると翌日死ぬわ」
侑「死ぬんだ」
果林「ええ」
侑「気をつけないと……」メモメモ 果林「出来ることをちょっとずつでも続けることが大事なの」
果林「理想の自分になることって、難しいかもしれないけれど」
果林「少しずつでも積み重ねていくのと諦めるのとでは、未来は大きく変わっているはずだから」
侑「できるかな、私にも」
果林「もちろん。誰だって変われるわ」ニコッ
侑「えへへ……ストイックな果林さんが言うと、説得力がすごいね」
果林「ふふっ、お褒めに預かり光栄ね」ナデナデ 果林「遅くなっちゃったけど、最後に小目標と大目標を決めましょうか」
侑「あれ? 目標にも種類があるの?」
果林「とはいっても人それぞれだし、私が提案するのはあくまで一例よ」
果林「プランクを何秒、スクワットを何回できるようになる、みたいなものが小目標」
果林「ビーチで目立つ体になるとか、あの機材をひとりで運べるようになるとか」
果林「そういう目的を大目標にすると良いかもしれないわ」 侑「そっかぁ、いろいろあるんだね。目標、目標……」
侑「まずは膝つきプランクの30秒×3セットと、スクワットの10回×3セットをまともにできるようになりたいな」
果林「良いじゃない♪ 体の調子を見ながら回数は調整していきましょ」
侑「うん! ……それで、大目標……うーん」
果林「小目標と同じで、達成のたびに設定し直すものだから、まずは簡単に思いつくものでも良いわ」
侑「どうしようかなぁ」
侑「……あっ、そうだ!」
果林「あら、決まった?」 侑「璃奈ちゃんと相撲するとき、30秒粘りたい!」
果林「勝ちたいとは言わないのね……」
おわり あれだけコッペパンやらあまったるい飲み物やら飲んでるのになんであんなに線細いんだ まあでも筋トレやるならスクワットだわな
人間は下半身の筋肉の割合が大きすぎる >>25
タピオカ流行った時はその為に朝食とか抜いてる人とかいたな
アホだと思ってたけど 思いついたので相撲リベンジマッチ編は今日の夕方か夜かに書きにきます 激弱侑ちゃん好き…
ちんちくりんのジャージ侑ちゃん、りなりーになす術もなく寄り切られたんだろうなあ クソザコゆうちゃんは本当にいい風潮。クソザコダイヤさんに匹敵する >>26
璃奈ちゃんも普段トレーニングしてるんだよね… 侑ちゃんジャージ羽織ってる時に強者の風格だけはあるから…… 勝負する時は羽織ってるジャージをカッコ良く脱いで挑みそう 果林さんも時々ボケを挟んでくるのがテンポよくていいな 〜筋トレ開始しばらく後〜
侑(果林さんに教えてもらって、体力も少しずつマシになってきた)
侑(前よりセット数も増やせてるし、フォームも安定してきた気がする)
侑(見た目だと全然分からないけど、お腹を触ると奥に腹筋の存在を感じるようにもなってる)フニフニ
侑(お尻とかふとももも、ただふにゅふにゅだった感触が違ってきた)
侑(しずくちゃんにも「なんだか立ち方が変わりましたか?」って言われたし)
侑(せつ菜ちゃんも「姿勢が綺麗になりましたね」って言ってくれた)
侑(少しずつだけど変われてるんだ!)
侑(みんなに比べたら大したことないけど、それでも厳しい日々だったなあ……) 〜回想〜
侑「アッ……オオオ……」ビクビク
侑「動くだけで全てがヤバいと分かる……」
侑「寝る前はっ……平気だったのに……!」
侑「初日っから張り切りすぎた……っ!」
侑「これが……果林さんの言ってた『翌日死ぬ』ってやつか……!」
侑「やばい、太ももに力が入らなっ」フラッ
侑「お腹で踏ん張ると筋肉が痛ッあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」ビクンビクン
侑「」グタァ
──────
───
侑(起き上がった瞬間上半身以外が全部終わってた朝もあった) 〜回想〜
侑「スクワット、少しずつできるようになってきたなぁ」
侑「回数を増やすのと負荷を上げるのと、どっちが良いのかな?」
果林「筋肉が刺激に慣れてる場合もあるから、同じスクワットでもフォームを変えると良いわ」
果林「足を広げた状態で腰を落とすワイドスクワットをやってみましょう」
侑「よーし、下半身も鍛えられてきたからきっといける!」 果林「そこで5秒止めて、ゆっくり上げて」
侑「無理無理無理無理お尻取れる! お尻取れる!!」プルプルプルプル
果林「大丈夫よ、位置が上がるだけだから! あと3回頑張って!」
侑「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」プルプルプルプル
──────
───
侑(普段動かしていない筋肉を動かすたびにもんどり打った) 〜回想〜
愛「それじゃあ今日も同好会の練習頑張っていこうかい! なんつって!」
侑「あはははっ! 愛ちゃんやめっふふう゛う゛う゛!?」ビキッッ
愛「ゆうゆ!? どしたの!? 具合悪い!?」
侑「だっ……大丈夫……!」ビクビク
侑「あっヤバい笑いの余波が全部っ……腹筋に……っ!!」
愛「ゆうゆ!? ゆうゆーっ!!」
──────
───
侑(愛ちゃんのダジャレでインナーマッスルが壊れかけたこともあった) 侑(かすみちゃんを膝に乗せた瞬間に筋肉痛で太ももがもげるかと思ったり、彼方さんを起こそうと引っ張ったらお腹が外れるかと思ったり)
侑(他にもたくさんあったなぁ)
侑(元がへなちょこだから、なにをやってもえげつない筋肉痛で)
侑(……でも、少しずつでも進めているのが分かって、嬉しかった)
侑「そろそろ、挑戦してみようかな」 〜放課後〜
同好会部室
侑「璃奈ちゃん、ちょっと良い? 頼みたいことがあって」
璃奈「頼みたいこと?」
侑「うん」
かすみ「りな子に頼みごとですかぁ? んもぅ侑先輩ってば、このかすみんを頼ってくれれば良むぐぅっ!?」
彼方「はぁーい、かすみちゃん、ステイだよ〜」
かすみ「むーっ! はまみめくらまい!」モゴモゴ
果林「侑も真剣なのよ。分かってあげて?」
侑「頼みというか、リベンジかな」
璃奈「リベンジ?」
侑「もう一度、私と相撲を取ってほしい」 璃奈「前にやったときのこと、気にしてるの?」
侑「ちょっとね」アハハ
侑「でも、自分の体に向き合う良い機会になったよ」
侑「あのときより少しだけ自信もついてきて。だから良ければ、挑戦させてほしい」
璃奈「……侑さんも、変わりたいって思ったんだ」
侑「そうなるかな? 微々たる変化だけど」
璃奈「いいよ。相撲、取ろう」スクッ
侑「ありがとう!」 侑「……」バッサァッッッ‼︎
かすみ「侑先輩がジャージの上着を脱ぎました!」
かすみ「そして……」ゴクリ
侑「……」パタム パタム
侑「……」ポスン
果林「畳んだわね」
彼方「机の隅に置いたねぇ」 侑「よし……やろう」
璃奈「うん」ウデグルングルン
璃奈「私も、準備はできてる」ジャージバサッ
璃奈「負けないよ」クビコキコキッ
璃奈「彼方さん、行司をお願いできる?」セスジグッグッ
彼方「おお、彼方ちゃんご指名? おっけ〜」
かすみ「りな子のやる気エグくない?」
侑「……あ、相手にとって不足なしだよ」ビクビク
かすみ「侑先輩ビビっちゃってますし」 侑「気圧されてはいるけど……でも、璃奈ちゃん。本気で来てほしい」
侑「即ぶっ飛ばされても良いし、5秒でカタがついてもいい。私が弱くても遠慮しないで」
璃奈「うん」コクッ
果林「基本的に覚悟が悲壮なのよね」コソッ
かすみ「前回10秒くらいで負けてましたからね、侑先輩」コソッ
果林「……そう。璃奈ちゃんもあれから鍛えてるだろうし、なおさらなのかしら」スマホスッスッ
果林(え? じゃああのときは粘った時間をちょっと盛ってたってこと?) 侑「あっ、張り手と猫騙しは無しでね」
璃奈「分かった」
かすみ「言われなければやる気だった……?」
彼方「準備は良いかな? それじゃあ、見あって見あって〜……」
侑「……」スッ
璃奈「……」スッ
彼方「はっけよ〜い」
彼方「──のこった!」 侑「……!」ガシッ
璃奈「っ!」グッ
グググググ……ッ
璃奈「んっ……う、んぅう……」グイッ
侑「! っふ、っ、う゛う゛う゛ぅ……!」
かすみ「す、すごい! 侑先輩がちゃんと踏ん張れてる!」
彼方「逆に前回はどうだったの?」
かすみ「……こういう例えはアレなんですけど」
果林「ええ」
かすみ「ちびっ子相撲のエキシビションって感じでしたね」
果林「どっちがプロでどっちがちびっ子だったのかは聞かないでおくわね」 璃奈「侑さん、前のときとは、全然違うね」ズズズッ
侑「りなちゃ……こそっ……前よ、つよっ……なった、ね……!」グググ
彼方「のこったのこった〜」
果林「彼方の行司は気が抜けるわねぇ」
彼方「えぇ、彼方ちゃん悲しい〜……」
璃奈「……負けない……!」グンッ!
侑「うっ……あ゛あ゛あ゛あ゛!」ガシィッ
璃奈「っく……んんっ……!」ググッ
彼方「のこったのこった〜」
かすみ「温度差が凄いんですよね」 侑(少しだけでも鍛えるようになったから、前よりもずっとよく分かる)
侑(璃奈ちゃんの小さな体に詰まったエネルギーに、しっかりついてきてる筋肉)
侑(普段からコツコツ積み上げてきた、璃奈ちゃんの努力の証)
侑(柔軟だって毎日続けてすごく柔らかくなって。ダンスも歌も体力も表情も、全部が頑張りの成果)
侑(……)
侑(……分かってる。私はまだ、追いつくような領域でもないんだって) 侑(近くでみんなの練習を見てきたから、じゅうぶん分かってる)
侑(私よりずっと璃奈ちゃんは頑張ってて、こなせるセット数も体力も違う)
侑(勝てるなんて思ってない。でも──)
侑『璃奈ちゃんと相撲するとき、30秒粘りたい!』
侑(果林さんと最初に立てた目標)
侑(これだけで良い。ここからで良い。たとえ負けても、達成できれば私の中だけでは勝ちなんだ)
侑(だから──!)
璃奈「っ、ん……あと、ちょっと……!」グググ
侑「う゛う゛う゛う゛」ググググ
かすみ「っ……」 かすみ「がっ……」
かすみ「……頑張れぇー!」
果林「かすみちゃん?」
かすみ「侑先輩もりな子も、頑張れーっ!!」
果林「……どっちも応援してたら、どっちが勝ってほしいのか分からないわよ?」クスッ
かすみ「だ、だってぇ……!」
彼方「かすみちゃんの気持ちも分かるなぁ。お相撲だけど、あんなにお互い必死だとねえ」
侑「ふぅーっ……う、ぐ、ぅうう゛……!」プルプル
璃奈「っ……!」ググッ 侑(前よりはずっと粘れてる。何秒かは分からないけど)
侑(たぶん、あと一歩で負ける。それなら1秒でも長くここに立つ!)
侑「うう゛ああぁぁぁっ!!」ギギギギギ
璃奈「んっ、む、む、ぅうっ!!」グィイイイ
璃奈「侑さんが、こんなに、全力なら」ググッ
璃奈「私だって……本気の本気で、応える……!」グッ‼︎
侑「なっ──!?」
トンッ‼︎
侑「わっ……っぅう!」フラッ
……コテン 璃奈「……っ」フゥーッ
彼方「勝者、璃奈の里〜!」
かすみ「なんですかその名前……」
彼方「決まり手は押し出しだねぇ」ナデナデ
璃奈「やった。嬉しい」コロンビア 侑「くぅーっ、やっぱりダメかぁ〜!!」
果林「確かに負けは負けだけど、ダメじゃないわ」スッ
侑「? スマホの……タイマー?」
果林「1分近くよ。すごいじゃない!」
果林「璃奈ちゃんも鍛えてたのにこれだけ粘れたなら、侑もそれだけ頑張れた、ってことじゃない?」
侑「そう? ……そっか。そうかな」
果林「ええ。キミの体幹、大腿四頭筋、大臀筋。そのどれもが輝いてたわ」
侑「果林さん……」
彼方「なんか果林ちゃん、筋肉の回し者みたいだね」 かすみ「彼方先輩、彼方せんぱいっ」クイ
彼方「ん〜?」
かすみ「体幹は分かりますけど、だいたい……とかなんとかってなんですか?」
彼方「ざっくり言うと、大腿四頭筋は太ももまわりで、大臀筋はおしりの大きな筋肉のことだよ」
かすみ「ふむふむ……あれ、ということは」
かすみ「果林先輩、あんな熱い勝負の間にどこ見てたんですか?」
彼方「侑ちゃんの太ももとおしりを凝視してたってことだねぇ」
果林「そうはならなくない? そうはならないわよね?」 侑「ふー……」
侑「なんでかな。負けたけど、前とは気持ちが全然違うよ」
璃奈「侑さん」シャガミ
侑「あっ、ごめんね璃奈ちゃん。練習前に変なことに付き合わせちゃって」
璃奈「ううん、良いよ。楽しかった」
璃奈「……」スッ
侑「璃奈ちゃん?」
璃奈「軽く手を握って、私の手に当てて」
侑「うん。……こうかな」コツン
璃奈「そう。ナイスファイト」
侑「……えへへ、ナイスファイトだったら、嬉しいな」 侑「ふぃー、ダメだ。立てないや」ゴロン
侑(普段の筋トレのときとはまた違って)
侑(ひとつひとつの筋肉が全力を出してるみたいな感じがした)
侑(なんだかそれに、心が弾んで──)
侑「……しっかり鍛えたら、もっと感じられるのかな」
璃奈「?」
侑「ううん、こっちの話」 ガチャ
エマ「お疲れさま〜♪」
エマ「……って、えぇ!? どうして侑ちゃんが床に大の字になってるの!?」
侑「お疲れ様エマさん。場の流れでちょっとね」グテン
エマ「流れ? は分からないけど、それじゃ体を痛めちゃうよ。椅子かソファへ行こう?」
侑「確かに。ちょっと待ってね……よ、っと」ヨタヨタ…
エマ「わっ、危ない!」ポスン
エマ「も〜、なにしてたかは知らないけど、無理しちゃダメだよ」ヒョイッ
侑「うわっ!?」プラーン
エマ「1名さま、ソファへご案内でーす♪」トコトコ
侑「え? すごっ……すごっ!!」プラプラ
侑(上を見たらキリがないなぁ) 〜後日・部活終了後〜
帰り道
トコトコ
侑「ねえ、歩夢。話したいことがあるんだけど」
歩夢「改まってどうしたの?」
侑「私ね、夢が……やりたいことができたんだ」
歩夢「え? このまえ音楽やりたいって話してくれたよね? それじゃなくて?」
侑「それもあるよ。でも、もうひとつ」
侑「聞いてほしいんだ。良いかな……?」 歩夢「……」コクン
歩夢「もちろん。侑ちゃんの夢なら応援するよ」ニコッ
侑「ありがとう、歩夢」
侑「……」スゥッ
歩夢「……」
侑「あのね、私……」 侑「──私ね、マッチョになりたいんだ」
歩夢「……はぁ?(1話冒頭のトーン)」
おわり 筋肉に魅せられたか…
乙!しっかりまとまってて面白かった 相撲のシーン歩夢と愛さんは鼻血だしながら応援してそう 相撲ってことは璃奈ちゃんと侑ちゃんががっつりくんずほぐれつしてるんだよね……ゴクリ >>65
トン…コテッ…
迫真の攻防の割に音が可愛い オチでワロタ
相撲シーンは熱かったしテンポもよくて面白かった、乙 会話のキレが素晴らしい
とても楽しく読ませていただきました! 待てよ、ジャージのちんちくりん侑ちゃんでは勝てなくても制服侑ちゃんならあるいは… 身長とジャージの人だろうか
激弱侑ちゃんシリーズ続けてほしい ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています