かすみ「ダメなところも武器に変えるのが、一人前のアイドルだよ」
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璃奈(──…まただ)
璃奈「………」
璃奈(──初ライブから、3日)
璃奈(ステージを降りても冷めなかった熱と興奮は、ようやく落ち着いたけれど)
──ね、りな子。
璃奈(朝起きて、ベッドの上でボーッとしているとき。登校中。授業中。帰り道。お風呂に入っているとき。──こうやって、ソファに寝転がっているときにも)
璃奈(ふとした瞬間に、かすみちゃんのあの時の言葉が、声が、頭の中にふっと蘇って)
璃奈(そのたびに、胸の中が温かいような、苦しいような、よく分からない感覚に苛まれる)
璃奈「……私、どうしちゃったのかな」 璃奈「………」
──ダメなところも、武器に変えるのが──
璃奈(……あの時の、かすみちゃんの声)
璃奈(すごく優しくて、穏やかで、ちょっと大人っぽくて)
璃奈(なんだか、まるで…──)
璃奈(………)
璃奈「………か」
璃奈「……かすみ、おねえちゃん」ボソッ
璃奈「〜〜〜〜〜〜っっ!!! /////」ゴロゴロジタバタゴロゴロ
璃奈(む、ムリ…!///)
璃奈(もう明日、かすみちゃんの顔見れない…///) すっごく可愛いね!2人には幸せになって欲しいなあ@ 璃奈「………」ポケー
璃奈(…昨日は、あまり眠れなかった)
璃奈(なんだか、気付いてはいけないことに気付いてしまったような気がして)
璃奈(それを直視しないように、うっかり言語化してしまわないように、そっと意識の隅へ追いやろうとしたのだけれど)
──かすみ、おねえちゃん。
璃奈(自分が口にしたあの言葉が、頭の中をぐるぐると巡って)
璃奈(向き合いたくない考えを、否応なく目の前にぶら下げていく)
かすみ「──それでさ、りな子。……りな子?」
璃奈(第一、私とかすみちゃんは同い年であって)
かすみ「おーい、りな子ー」ヒラヒラ
璃奈(あれはいつものかすみちゃんとのギャップが為した、一時の心の迷いというか)
かすみ「りな子ってば!」
璃奈「⁉︎ ///」ビクゥ
璃奈(め、目の前…近…!///)ドキドキ
かすみ「…もしかして、ぜんぜん聞こえてなかった?」
璃奈「…ごめんなさい」
かすみ「りな子、なんだか今日ずっとボーッとしてるよね。寝不足? もしかして具合悪いとか?」
璃奈「…ううん、大丈夫」
璃奈「心配かけてごめんね。かすみおね
璃奈(ハワ⁉︎)
かすみ「…おね?」
璃奈(ハワワワワワワ///) 璃奈「半人前がよく語る りなちゃんボード[やれやれ]」
かすみ「こんの〜!」プンスカ かすみ「おねって何? Honesty? ビリー・ジョエル?」
璃奈(かすみちゃん意外と渋い……じゃなくて)
璃奈(何か…何か言い訳…)
璃奈(………あ)
璃奈「……お礼」
かすみ「え?」
璃奈「お礼を言いたいって、言うつもりだったの。かすみちゃんに」
かすみ「お礼…? 何の?」
璃奈「……ライブの前の日に、かすみちゃんが言ってくれた言葉」
璃奈「『ダメなところも武器に変えるのが、一人前のアイドルだよ』って」
璃奈「──私、あの言葉にすごく救われた。あの言葉のおかげで、前向きになれた」
璃奈「あの言葉がなかったら、きっと今でも塞ぎ込んでて、ステージにも上がれなくて。…すごく、後悔してたと思う」
璃奈「かすみちゃんには本当に、本当に感謝してるの」
璃奈「何度言っても、ぜんぜん言い足りないくらいなんだけど。改めて言わせて」
璃奈「──ありがとう、かすみちゃん」 かすみ「えっと、ど、どういたしまして…///」
かすみ「あーもう何これ! すっごい恥ずかしい! 嬉しいけど!///」
かすみ「うぅ〜…顔が熱い…///」パタパタ
璃奈「………」
璃奈(咄嗟に出た言葉ではあったけど)
璃奈(ウソやデタラメなんかじゃない、紛うことなき本心だ)
璃奈(言いたかった事がひとつ言えて、思いがけず心が軽くなった気さえする)
璃奈(けれど──足りない。まだ、足りない)
璃奈(ありがとうをいくら吐き出しても、それは胸の奥から際限なく湧き出てきて、心のメモリをどんどん圧迫していく)
璃奈(足りない。ありがとうだけじゃ、言葉だけじゃ、ぜんぜん)
璃奈(だから、次は、今度は──)
璃奈「かすみちゃん」
かすみ「な…なに?」
璃奈「ごめん。…やっぱり、お礼を言うだけじゃ、ぜんぜん足りない」
かすみ「え」
璃奈「だから──もっと、何かしてあげたい」
璃奈「何か、してほしいこと、ないかな」 > 璃奈(ありがとうをいくら吐き出しても、それは胸の奥から際限なく湧き出てきて、心のメモリをどんどん圧迫していく)
りなりーの新曲の歌詞かな? かすみ「ええ!? さすがにそれは悪いって! かすみんはただ、りな子を元気付けようとしただけで…」
かすみ「それに、かすみんだけそんなに色々してもらう訳にはいかないよ。りな子が立ち直れたのは、みんなの言葉があったから、でしょ?」
璃奈「…わかってる。でも──それでも」
璃奈「かすみちゃんには一番に、一番のお礼をしたい。…だから、お願い」
かすみ「………」
璃奈「………」
かすみ「…りな子って、けっこう強情だよね」
璃奈「えっへん」
かすみ「別に褒めてないし」
かすみ「…はあ。分かった。分かりました。そこまで言われちゃ断れないよ」
璃奈「かすみちゃん…ありがとう」
かすみ「お礼を言うのはこっちのハズなんだけどね」
かすみ「でも…うーん、してほしいこと…してほしいことかあ…」
かすみ「んー………」
かすみ「………あ」
かすみ「そうだ。──じゃあさ、りな子」
かすみ「付き合ってくれない?」
璃奈(!? !? !? パードゥン!!!!???? ////)
璃奈「あ、あの、かすみちゃ、それは、どういう」
かすみ「んふふ♪ 決まってるでしょ!」
かすみ「かすみんと、お買い物に!」 @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ 2人が仲良しさんで嬉しいな 璃奈「──すごい。壮観」
璃奈(店内に所狭しと並べられた、ブロマイドにポスター、CDにDVD、その他諸々)
かすみ「でしょー。かすみん、ココ来るとなんだか無性にワクワクしちゃうんだよねー」
璃奈「うん…私も、ちょっとワクワク、してきたかも」
璃奈(──土曜日のお昼過ぎ)
璃奈(かすみちゃんに連れられて訪れたのは、秋葉原のアイドルショップだった)
璃奈(ここは3階、スクールアイドルグッズのフロア)
璃奈(ビルが丸ごとアイドルグッズの専門店で、国内でも最大級の規模らしい)
璃奈「………」
璃奈(この品揃えを見れば、それも頷ける。私でも知ってるような有名校のグループなんて、壁の棚一面を贅沢に使ってコーナーが展開されているし)
璃奈(それ以外の学校も、日本中の高校を網羅してるんじゃないかってくらい、津々浦々の校名が次々と目に飛び込んでくる)
璃奈(……ここなら、もしかして)
璃奈「………」キョロキョロ
かすみ「…ふふ、やっぱり気になる?」
璃奈「!」ギクッ
璃奈(見透かされてる…! ///) かすみ「わかるよ。やっぱりスクールアイドルやってると、気になっちゃうよね。自分のグッズって出てるのかなとか、──手に取ってくれてる人が、いるのかなとか」
かすみ「かすみんたちはまだ始めたばかりだから、どこのお店でも取り扱ってる、ってことはさすがにないけど」
かすみ「でもココなら──あ、ほら」
璃奈(かすみちゃんが棚の一角を指差す。その先を覗き込むと)
璃奈「わ…」
【虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】
璃奈(あった。私たちの学校、私たちの同好会の名前。そして)
璃奈「…私の、グッズ」
璃奈(種類も数も少ないけれど、同好会のみんなが、私が、この大勢のスクールアイドルたちの一員に加わったと認められた証が、確かにそこにあって)
璃奈(わずかに空いた棚の隙間は、その大勢から私を選んでくれたという事実を、ささやかに物語っていた)
かすみ「──どう? 結構じーんとこない?」
璃奈「…うん。なんだか、感慨深い」
璃奈「みんなと、繋がる、繋がれる、そのためのスタートラインに、ようやく立てたような──そういう実感が今、じわーって、こみ上げてきてる」
かすみ「……もしかしたら、スタートラインよりもっと先にいるかもよ?」
璃奈「え?」
璃奈(そう言ったかすみちゃんの、視線の先にあったのは)
璃奈「───」
璃奈(『今週のピックアップスクドル!』と書かれたポップが貼ってあるコーナー)
璃奈(そこに据え付けられたディスプレイに映っていたのは)
璃奈「……私だ」
璃奈「………」
璃奈「──かすみちゃん」
かすみ「ん?」
璃奈「私、頑張る。もっと、もっと」
璃奈「今よりも、たくさんの人たちと、繋がっていけるように」
かすみ「……そっか」 璃奈(それから、私たちはしばらく、ディスプレイに流れるあの日のライブ映像を眺めていた)
璃奈「……」チラ
璃奈(ふと、かすみちゃんの横顔を盗み見る)
璃奈「──……」
璃奈(あの時は、ダンボール箱をすっぽり被っていたから、声だけしか聞こえていなかったけれど)
かすみ「………」
璃奈(きっとあの時も、こんな顔をしていたんだろうなと、思った) もうお前だけが続くかを決められる段階じゃないんだぜ? かすみ「あ〜満喫したっ♪」
かすみ「ちょっとグッズの新作をチェックするだけのつもりだったのに、つい長居しちゃったなあ」
かすみ「ねぇりな子、ちょっとカフェで休憩でも──」
璃奈「かすみちゃん」
かすみ「ん?」
璃奈「…かすみちゃん、知ってたんだよね」
かすみ「……何が?」
璃奈「あのショップに、私たちのグッズが置いてあることも。ああやって、特設コーナーで私が取り上げられてることも」
璃奈「かすみちゃんは知ってて、私を連れてきてくれたんだよね」
かすみ「………鋭いなあ、りな子は」
璃奈(かすみちゃんはそう言って、少しだけバツが悪そうに笑った) かすみ「──りな子、ライブの後からずっと、ボーっと考え事してることが多かったでしょ」
かすみ「それでね、かすみん思ったんだ。もしかしてりな子──ライブの出来に、納得いってないんじゃないか、って。…りな子、結構ストイックなところがあるからさ」
かすみ「そりゃ初めてのライブだし、細かいところまで突き詰めていけばいくらでも反省点は出てくると思うよ? でもさ」
かすみ「りな子も言ってたじゃん。『いま出来るだけのことをやるんだ』って」
かすみ「かすみんね、りな子はあの時できる最高のライブができてたと思う」
かすみ「一番近くで見てたかすみんが言うんだから、間違いないっ!」ビシッ かすみ「──…って、身内のかすみんが言っても、もしかしたら信じてもらえないかもしれないな、って思ってさ。だから、証拠を見せてあげることにしたの」
璃奈「証拠?」
かすみ「うん。自分のグッズを作ってくれて、それをお店に並べてくれていて。しかもそのお店で、注目のスクールアイドルとして取り上げられているのを見れば、りな子もきっと信じてくれると思って」
かすみ「それで、言ってあげたかったんだ。りな子のライブは、ちゃんとみんなの心に届いたんだって。りな子の想いは、ちゃんと伝わってるんだって」
かすみ「──だから、たまには自分を褒めてあげてもいいんだよ、ってさ」
かすみ「…もし、りな子が未だに、変われないとか、変われてないとか思ってるなら」
かすみ「どこ見て言ってるのさバカりな子っ!」
かすみ「……って、怒ってやるから」ニヒッ 璃奈「───……」
璃奈(ああ──ダメだ)
璃奈(胸の奥が、きゅんとして、うずうずしてもやもやして、じーんと熱くなる)
璃奈(本当は気付いてた。知ってたんだ。見ないようにしていたこの感情を、判っていたけど解っていなかった、その正体を)
璃奈(そして次の瞬間、その感情は堰を切ったように私の心から溢れ出し、出口を求めて全身を駆け巡った。まるで、名前が付くのを見計らっていたかのように)
璃奈(もうダメだ。限界だ。この感情はもう間もなく、溢れ出てしまう)
璃奈(けれど──そうだ。ここは自室じゃない。いまは、一人じゃない)
璃奈(いるじゃないか、目の前に。この感情をぶつける相手が。ぶつけなきゃいけない、相手が) 璃奈「………かすみちゃん」
璃奈(大丈夫)
かすみ「…りな子?」
璃奈(かすみちゃんが、教えてくれたじゃないか)
璃奈「一度しか言わない──言えないから。よく、聞いててね」
璃奈(顔が見えなくたって)
── 一人前の、アイドルだよ。
璃奈(コトバの表情は、伝わるんだ)
璃奈「私、かすみちゃんのこと──」 璃奈「………」
璃奈(見慣れた自室の天井)
璃奈「……はぁ」
璃奈(私はベッドに身体を投げ出したまま、今日の出来事を思い返しながら、小さく溜息をついた)
璃奈(──言えなかった)
璃奈(……いや、言えたといえば言えた、のかな) ──私、かすみちゃんのこと、大切な──…
──…大切な、友達だと思ってる、から。
──だから、これからも。きっと、
──いつまでも、一緒にいて、ほしい。 璃奈(できないからやらないはナシ、だけど。やってできなかったのなら、それは潔く受け入れるべきで)
璃奈(だから、きっとこれが、今の私が伝えられる気持ちの限界、なんだと思う)
璃奈(……でも)
──ど、どうしたのりな子、改まって…
──…でも、うん。
──こちらこそ。これからも、仲良くしてね!
璃奈(あの言葉と、あの笑顔が貰えたんだから。ひとまずそれで、私は満足、かな)クスッ 璃奈「………」
璃奈「……………あ」
璃奈(…いま、少しだけ、笑えたような気がする)
璃奈「………」ムクッ
璃奈(──うん、決めた)
璃奈(次に、この本当の気持ちをかすみちゃんに伝える時は、きっと)
璃奈「…きっと」
璃奈(きっと、とびっきりの笑顔で──) かすみ「………」
かすみ(お気に入りのクッションを抱きかかえて)
かすみ「……はぁ」
かすみ(私はベッドに身体を投げ出したまま、今日の出来事を思い返しながら、小さく溜息をついた)
──こちらこそ。これからも、仲良くしてね!
かすみ(そう答えた私に、りな子は)
──うん。…ありがとう。
かすみ(声色からでも分かるくらい、嬉しそうに──安堵したように、そう言った)
かすみ(そんな、ある種の先入観があったからなのか、単なる気のせいだったのか、今となっては分からない)
かすみ(けれど、そのとき確かに)
かすみ(りな子の口許は、ほんの少し、笑っていたように見えた) かすみ「………」
かすみ(もしそうなら、それはそれで、喜ぶべきことではあるのだけれど)
かすみ(ひとつだけ──ひとつだけ問題なのは)
かすみ「はあぁぁ〜……」ゴロン
かすみ(…ドキッとしてしまった)
かすみ(わずかに綻ぶ、りな子の口許を目にした瞬間)
かすみ(単にびっくりしただけとか、普段とのギャップのせいだとか、色々な言い訳を思いつくたびに、他ならない自分自身が、それを次々と否定していく)
かすみ(もしかしてという気持ちと、違うという気持ちが交互に押し寄せてきて。こうしてベッドに寝転がっているだけなのに、目が回りそうになる)
かすみ「はあぁぁ〜…ううぅぅ〜…」ゴロゴロゴロンゴロン
かすみ「……私、どうしちゃったんだろう」 いいやん
今後もss書いてくれていいよ
おまえにはその適正がある これがりなかすというものか、なかなか興味深いですね ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています