曜とYou
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少しまだ肌寒いある春の日。
千歌「ねえ、よーちゃん聞いてる?」
曜「えっと、千歌ちゃんが夢の中で宇宙人に襲われたって話だったっけ?」
千歌「違うよ、それはその前にしてた話じゃん……」
何の話をしてたんだっけ?
気がついたら千歌ちゃんの話を聞きながらウトウトしていた。
曜「それで、宇宙人に襲われてどうなったんだったっけ?」
千歌「えっとね、宇宙人に謎の薬を飲まされて自分が2人になっちゃったんだ!!2人になったら、夜ご飯も減ってもう、大変だったよ……」
曜「アハハ、千歌ちゃんらしいね……」
千歌「美渡ねえには『バカが2人もいたら疲れる』とか言われるし……まあ、夢で良かったよ。って、そーじゃなくて!!歌詞の話だよ!!」 曜「歌詞??」
千歌「ほら、この前梨子ちゃんと言ってたじゃん。ソロ曲を作ろうって話だよ。」
そういえば、そんな話をしていた気がする。
確か、6人になって行うAqoursの3rdライブはみんなのソロ曲を披露しようって話だった。
作詞は全員自分でするのがコンセプトみたい。
曜「あー、そうだったね…千歌ちゃんは何か考えてるの?」
千歌「私はね…まだだよ!!なんとかなるでしょ!!」
そう言ってニカッと彼女は屈託のない笑顔を見せた。
千歌ちゃんらしいなあ…
相変わらず真っ直ぐで良い目をしている。
千歌「よーちゃんは??」
曜「私は……まだだよ!!」 ようちかSSはカップリング自体が人気すぎて荒れるぞ 千歌「そっか〜、梨子ちゃんに怒られないように頑張ろうね。」
曜「……そうだね!!」
私は言葉を飲み込んだ。
私に歌詞は思いつかないかもしれない。
なぜなら、私自身が私を理解していないからである。
書きたいこと…が
ない。
そう考えているうちに私の意識はどこかに沈んでいった。
~間~ ここはどこだろう。路地裏の暗い通りにある一軒の店。
看板には「Shop East Dream」
物凄く怪しい………
けど、ここは夢である。
入ってみても悪いことがあれば起きれば良い。
曜「こんばんは…誰かいますか?」
誰も…いない?
怪しい薬や瓶など所狭しと並んでいる。
マッドサイエンティスト?とでも言うのだろうか。
誰もいないから戻ろう…と思ったその瞬間……
??「お客さんやん。何をお探しかな?くせ毛のお嬢ちゃん。」
曜「うわぁぁぁぁ!!」
後ろから声をかけられたからびっくりした。
白衣にほうき、謎のステッキが腰に刺さっている様子を見ると科学者と魔法使いかを足して2で割ったような恰好である。 ??「お嬢ちゃんは何を悩んでるのかな?歌詞作りだったっけ?」
曜「なんで分かるんですか?」
??「ウチは魔法使いなんよ。お嬢ちゃんの考えてることくらいお見通しやで。」
曜「そんなわけ……」
??「ソロ曲の歌詞作りに悩んでるんやろ?」
図星である。
さすが自称魔法使いなだけはある。
??「君の悩みは歌詞作りと…それ以外にもありそうだけど……」
曜「そんなのない…ですよ。」
??「そっかあ。まあ、いいよ。お嬢ちゃんにぴったりの商品があるんよ。」 曜「何ですか?」
??「このココロマジックAZを飲めば、歌詞に自分の正直な気持ちを込められるよ。どうかな?」
曜「いや、魔法使いさん。そんな怪しい薬飲む人いないでしょ…」
??「目の前におるやん。君なら飲むと思ったんやけどなあ…ウチの見込み違いやったんかなあ…残念やね……」
なんだか少し、バカにされた気分である。
??「こんな安全なの飲まないなんてもったいなくて涙出てくるわ…まあ、歌詞を自分で考えるのもありやと思うから好きにすればいいと思うで。」
曜「分かりましたよ。いただきます、お代はいくらですか?」
??「毎度あり。お代は…君のこれからのストーリーを見せてもらえるだけでいいよ。」
言ってることがよくわかんないけど、飲んでしまった。あれ?また眠くなっ……
??「千歌ちゃんと上手く頑張るんやで〜」
その声はどこよりも遠い場所から聞こえたような気がした。
~間~ 千歌「よーちゃん!!よーちゃん!!大丈夫!!よーちゃん!!」
曜「うーん、何…頭が痛い…」
千歌「早く目を開けて今の状況を理解してみてよ!!」
目を開くと驚きの光景が広がっていた。
曜「私の前に私がいる??なんで??」
ここから導き出される答えは一つだった。
曜「まさか……」
千歌「よーちゃんが増えちゃった!!」
~間~ 曜「えっと、君は一体何者なのかな?」
??「私は私だよ。自分がよく知ってるんじゃない??」
千歌「えっと、よーちゃんがよーちゃんでよーちゃんが2人??うーん……」
曜「千歌ちゃんが混乱してるし、ちょっと屋上で話さない?千歌ちゃんのいない所で。」
??「いいよ。その方が都合がいいや。」
千歌「ちょっとよーちゃん。私にも詳しく……」
??「ごめんね、千歌ちゃん。君の笑顔が可愛い過ぎて話になりそうにないから、屋上で話して来ていいかな?」サラッ
千歌「ひゃ、ひゃい……」
曜「千歌ちゃんの髪に触るな!!!!」
??「いいじゃない〜、減るものじゃないん出しさ…」
曜「ほら、早く行くよ!!」
??「は〜い。」
~間~ 曜「ところであなたは何者なのか、教えてくれない?」
??「君が一番私のことを分かってるんじゃない?」
曜「ややこしいからYouって呼んでいい?」
??「ちょっと読み方が違うんじゃない?」
曜「ようもゆうも似たような感じだからいいじゃん……ローマ字で書いたら一緒だし。」
You「まあいいや。それで、こんな所に呼び出してなんだっけ?」
曜「ゆーはなんで私の姿でここにいるの?私の何なの?」
You「心当たり……無いの??」
こんな摩訶不思議なことに心当たりなんてあるわけな……………………
??「ココロマジックAZを飲めば〜」
曜「……………」
曜「もしかして、あの薬が原因?」 You「大正解。だったら私の正体くらい分かるんじゃないの?」
曜「君の正体は……」
分からない……訳が無い。
千歌ちゃんとの話し方。
髪を触る時にちょっと躊躇した表情。
少女漫画のようなことをする君は……
曜「君は……」
曜「私の欲望、だよね。」
You「……ちょっと違うけどまあほぼ当たってるかな……」 曜「人を見て、何もかも嫌いな感覚に陥ったのは初めてだったよ。だって大嫌いな私そのものなんだから当たり前だよね。ゆーは何が目的なの?私と入れ替わるとか?」
You「うーん、私は君だから。目的なんて無いよ。勝手に現れちゃったとでも言うべきか。」
まさか、あの魔法使いさんが渡してきたココロマジックAZは何か違う薬と間違えて渡されちゃったのかなあ。
You「ところで曜、あなたに聞きたいんだけどさ。いいかな?」
曜「ん?何?何でも言ってよ。」
You「君は高海千歌ちゃんが好きなんだよね?」 曜「千歌ちゃんは…友達だよ。」
You「はあ…まだそんな寝言言ってんの?」
曜「寝言なんてそんな……」
You「我が身ながら、ホンットにイライラする!!そんなだから、10年以上も告白できないんでしょ!!いい加減認めなさい。」
曜「だって……女の子が女の子を好きなんておかしいよ。君はそう思わないの?」
You「思うよ。私は君だからね。そう思うよ。でもさ、そんなことよりも千歌ちゃんのことが好きって私は思うんだ。曜は違うの??」
曜「私はそんな……」 パシーン
鈍い音と痛みがした。
You「いつまでそんなこと言ってるの!!」
You「自分のことが嫌いでもいい!!でも……でも……」
You「千歌ちゃんへの気持ちを偽るのは最低だよ。」 曜「…………」
曜「ごめん。」
You「はあ……ビンタした右手も痛いけど、左頬も痛いんだからね!!」
曜「知ってる。ビンタされた時に右手も痛かったからビックリしたよ。」
You「まあでも………」
曜「何??」
You「そろそろ帰ろうかな、やるべきことはやった気がするし。」
曜「早くない?」 You「私のこと好きになったの?」
曜「まさかそんな訳ないじゃん。」
You「その言葉を聞いて安心したよ。」
曜「ねえ、一つだけ最後に聞いていい?」
You「何?」
曜「君が…ゆーが作詞するなら何をテーマに渡辺曜として作詞をする?」 You「聞くまでもないでしょ?そんなの。」
そう言って彼女は笑った。
曜「そうかもね。」
曜「ありがとう。君のおかげでヒントが貰えた気がするよ。そして、君のことを大嫌いとか言ってごめんなさい。」
You「どうして謝るの?」
曜「だって自分のことをずっと嫌いなのに大好きな女の子を幸せになんてできないでしょ?」
You「ふーん、曜にしては及第点ってとこかな。」 You「こちらこそありがとう。私のことを好きって言ってくれて。嬉しかったよ。」
You「とりあえず、作曲頼んだわよ。さっさと千歌ちゃんに告白しなさいよ!!」
曜「そ、それは……」
You「じゃあ、私もう行くね。結構楽しかったよ。"私"と喋るの。」
曜「うん!!」
そう返事したとき、私はまた意識が沈んでいくのを感じた。
~間~ ??「よーちゃん!!よーちゃん!!大丈夫?よーちゃん!!」
頬が痛い。
目を開けるとそこに千歌ちゃんがいた。
曜「どうしたの千歌ちゃん?」
千歌「ずっとよーちゃん起きないから…死んじゃったのかと思ったよ……」ウワーン
曜「うわあ、泣かないで千歌ちゃん!!」
千歌「ホントに良かったよ……」
曜「寝不足かなあ…ところで千歌ちゃんはもう1人の私のこと知らない?」 千歌「どーいうこと?」
曜「え?さっき会ったもう一人の私……」
千歌「宇宙人の話より壮大な夢だね……」
曜「……分かんないならいいや。千歌ちゃん、歌詞のきっかけ掴めたよ。お先であります!!」
千歌「あっ、ずるーい!!いいな〜、宇宙人の夢じゃ作詞出来ないよ……」 曜「千歌ちゃん。」
千歌「なあに?」
曜「私……千歌ちゃんに言いたいことがあるんだ。」
千歌「うん。聞かせて。」
曜「私は……」
~間~ ??「いやー、ココロマジックAZは面白い効果を発揮したね…バッチリってとこかな。」
??「相変わらず人間を助けるのが好きだよね、ノゾミは。」
ノゾミ「エリチが苦手過ぎるだけなんちゃう?私が曜ちゃんの相談受けてる時もずっと箒に変身してたやん。」
エリ「初対面の人は苦手なのよ。」
ノゾミ「もったいないな〜。」
エリ「それで、アレはホントに正直になる薬だったの?」
ノゾミ「そんな訳ないやん。飲んだ人の"理想の自分"が現れる薬やで。」
エリ「なるほどね…それで、お代はしっかり貰ったの?研究費結構使ってたわよ。」
ノゾミ「あっ…………」
エリ「ホントに相変わらずね………」
~間~ 千歌「次はよーちゃん出番だよ!!」
曜「行ってくるであります!!」
大観衆の前で初めて一人で立つステージ。
怖い。
でもね……
きっといろんな私と一緒にこのステージに立っているはずだから。
曜「この曲は私の大切な人を思って、一生懸命作詞した曲です。心を込めて歌います!!
曜「それでは聞いてください。」
昨日の私より今日の私がもっと自分のことも好きでありますように。 終わりです、だいぶ前に書いた奴を自分でリメイクできて楽しかったです(笑) 乙ですとても良かった
「Beginner‘s Sailing」良いよね
千歌ちゃんを応援するための歌
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