【ホラー系SS】せつ菜「TRPGをやりましょう!」
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踊り子3🎤「でも、姿が隠れるくらい炎が高く上がるまでは逃げようとしないで」
あなたは3人目の踊り手をまじまじと見た。
その黒く塗られた顔に、あなたは間違いなくルース・レドベターの表情を認めた。
彼女たちは踊りながら、建物の裏へと姿を消す。 あなたが信号塔の下に到着すると、10人の村人が近づいて来た。
彼らは驚くほど連携がとれた手際であなたを動けなくすると、黒ずんだ鉄製の階段の上の足場へとあなたを運んだ。
過去の炎によってねじれた中心の骨組みを見て、あなたは震えを抑えられなかった。
鎖を固定するための突起が存在感を放っている。
あなたを骨組みに縛りつけている間、誰もあなたと目を合わせようとはしなかった。 やがて、村全体が歌い始めた。
それはリズミカルだが古さを感じさせるもので、奇妙な音節で歌われていた。
2つ目の集団が信号塔に上って来た。
赤い衣に覆われた3つの人型の何かを運んでいる。
彼らは、自分たちの運んで来たものを三角形になるようにしてあなたの足元にうやうやしく並べた。
あなたは近くで見てみてようやく、それらが遺体だとわかった。 周りには、焚き付けがすねの高さにまで積まれている。
あなたが火あぶりになるのを見るために、村の全員が信号塔の周りに集まっているようだ。
顔を黒く塗った者の中に、あなたはメイ・レドベターの顔を認めた。
それに、バスの運転手のサイラスが彼女のそばに立っている。
オードリー💧「くっ……!」 1人の男が台座を上がって、落ち着いた威厳をもって手を上げた。
彼の顔に塗られた赤い三角形は、掛けている眼鏡の縁でぼやけている。
男性🎤「かくして、われらは今晩、毎年と同じく再びここに集った」
男性🎤「われらは虚空の炎に対して村を保ってくれるものに感謝をささげよう」
男性🎤「あなたはわれらの代理として、上より来たるものに連れて行かれるのだ」 男性🎤「あなたの死はわれら村人に命をもたらし、われらの畑に恵みをもたらす」
男性🎤「それは老いも若きも等しくまた1年守るのだ。われらはあなたに敬意を表しよう」
彼は頭を下げた。
信号塔の周りで、村人たちは一歩前に進むと、高く上げられた足場へとたいまつを掲げた。
足場の縁で、小さな火が明滅しながら輪となる。
火がきらめく中、村人たちの歌は、この世のものならぬ律動へと陥った。 せつ菜「信号塔に縛り付けられて絶体絶命のオードリー!」
せつ菜「ここでルート分岐です!」
せつ菜「残った力を振り絞って鎖を外そうともがきますか?」
せつ菜「それとも、このまま少しだけ成り行きを見守りますか?」
しずく「うーん……」 しずく「そうですね……ここは少し成り行きを見守ることにします」
せつ菜「それはなぜですか?」
しずく「姿が隠れるくらい炎が高く上がるまでは逃げないよう、ルースが言っていたからです」
しずく「彼女の言葉を信じたい……」
せつ菜「なるほど、わかりました!」 炎が燃えあがってうねり、あちこちに着火しては燃えあがる。
煙が立ち上って、村人たちを見るのが難しくなってきた。
あなたを取り囲む3体の遺体に火がつき、すすけた赤い炎があがった。
煙が肺に入ってあなたはせきこみ、恐怖に駆られそうになるのを何とかこらえる。
オードリー💧「……もう、これ以上は……!」 炎があなたの足をなめる。
目に涙が浮かぶ。
あなたは煙に取り巻かれた。
それは思い込みにすぎないかもしれないが、鎖に緩みがあるのではないかという感触をあなたは覚えた。
オードリー💧「……いける!」
あなたは手首にどう食い込むかなど考えず、すべての力を振り絞った。 せつ菜「さぁ! 盛り上がってまいりました!」
しずく「ハラハラします……!」
せつ菜「オードリーは炎によって1D6ダメージを受けます!」
しずく「1D6……痛いですね」
しずく「えいっ!」コロコロ しずく「結果は……2!」
しずく「2ポイントのダメージを受けて、残り耐久力は7です!」
せつ菜「では、続けてSTRロールです!」
しずく「はい! 私のSTRは60です!」
せつ菜「ルースの言葉から、鎖が緩んでいることを知っているため、ボーナスダイスを1つ差し上げます!」
しずく「よ〜し! 成功しますように……」ムムー
しずく「えいっ!」コロコロ しずく「結果は……98!」
しずく「くっ! 失敗……ですが!!」
しずく「まだですっ!」
しずく「ボーナスダイスを振りますっ!!」
しずく「えいっ!」コロコロ しずく「ボーナスダイスの結果は……0!」
しずく「やりました!!」グッ
せつ菜「では、最終的な結果は、98と08の2つですね」
しずく「はい! もちろん、小さい方の08を採用します!」
せつ菜「STRロール、成功です!」パチパチパチパチ 必死な分だけ力を増して、あなたは鎖のもろくなっている簡所だと目をつけたところを全力で引っ張った。
オードリー💧「んぐぐぐぐ……!!」グイィ
……壊れた!
オードリー💧「やった!!」
あなたは鎖を投げ出し、走り出した。
赤い衣で覆われた遺体の一体につまづいたものの、見ているだろう村人たちとは反対方向へ進んだ。
あなたはせきこんだ。
髪の毛や眉毛がくすぶっている。 あなたは信号塔の向こう側へと、炎をよけるように跳躍した。
あなたの下に絶望的な落差があるのを目にした瞬間、心臓がきゅっと締まったが、崖っぷちからわずか数cm手前に着地できた。
オードリー💧「……! 危なかった……」
あなたは転げ回って燃えている衣服の火を消した。
肺の表面が焦げたのを感じる。
体のあちこちが痛む。 村人たちの詠唱は力強さを増していた。
あなたは信号塔の周りをうかがった。
彼らは、立ち上る煙の中にあなたがいないことに気づいていないようだ。
村人のほとんどが空を見上げている。
あなたは一番近い建物の影に隠れようと、できるかぎり速く這って進んだ。
村人たちが信号塔に集まっているので、通りには誰もおらず、あなたは炎からそっと逃げ去ることができる。 彼らの儀式が終わる前に、この村から出て行かなければ。
あなたが南側の道の角を曲がった時、詠唱が速くなったように思えた。
ここで、雑貨屋の壁に立てかけられた物を目にしたあなたは、エンバーヘッドに来てから初めてツイていると思った。
自転車があったのだ!
あなたは、プロヴィデンスにいた頃に自転車の乗り方を習ったことがある。 あなたはサドルに腰を落ち着けた。
やけどをした肌が触れて痛みを発する。
周りをざっと見て、自分が誰にも見られていないのを確かめてから、あなたは大通りを振り返った。
村全体が信号塔に注意を向けている。
彼らの詠唱が新たな、熱のある高音に達した。
はっきりと理由を述べることはできないが、あなたは何かがおかしくなっているという印象を受けた。
詠唱が乱れて、村人たちは動揺している。
そして……。 ヒュー!
轟音と共にまばゆい光を発する物体が、信号塔の前にいる群衆の中に落ちる。
あなたのまぶたに炎の軌跡が焼き付く。
あなたは自転車の下の地面が震えるのを感じた。
ヒュー!
次なる衝撃がすぐ近くに落ちて、火花を散らす。
今や詠唱は乱れ、悲鳴へと変わった。
信号塔に面した建物を、炎がなめている。 煙が通りに渦巻いた。
あなたに向かって女性がよろめき、泣き叫んでいる。
彼女の腕は燃えていた。
彼女はそれを壁に打ちつけている。
ヒュー!
もう1発があなたから見えないところ、村役場のほうに落ちた。
オードリー💧「……もう行かないと」 自転車の乗り方を思い出すには少しかかったが、東に1回曲がったあとは、エンバーヘッドから出る長い坂を下るだけだった。
上のほうからの悲鳴や、火のパチパチと弾ける音をあなたは耳にしたが、それよりもペダルをこぐことに集中し続けた。
あなたは村での忌まわしい出来事に、あまりに多くの希望をくじかれてきた。
あなたは頭を下げたまま、自転車をこぎ続けた。
オードリー💧「はぁ……はぁ……」ギコギコギコギコ
20分後、追っ手が来る様子もないので、あなたは丘の頂上で止まって一休みすることにした。 エンバーヘッドが遠くにそびえているのがあなたには見える。
村全体が炎に包まれていた。
煙が黒い柱のように上がっているのが何kmも遠くからでも見えることだろう。
しかし、村が見かけどおりに孤立しているのならば、救助が間に合うことはなさそうだ。
あなたは村が燃えているのを5分間ほど見つめていた。
それからあなたは再び自転車にまたがり、文明社会へ、そして夜明けに向かって走り始めた。 ダービイの詩を理解するのに一週間かかった。
彼の詩は宇宙の中心にある何かについて語っていた。
それは震え、食い尽くす塊で、宇宙の構造そのものを引き裂くものであった。
その使者、時に「顔なきもの」、またある時は「這い寄る混沌」と呼ばれるものは、触れたものすべてに恐ろしい混乱をもたらす。
その言葉には確かな技量が見られたのだが、それは鮮明な想像力ではなく、無力な啓示であった。
その本と共に時間を過ごす中で、あなたはそれぞれの詩の間には不気味なつながりがあることに気づき、それに悩まされ始めた。
オードリー💧「あああぁぁっ……!」ガシガシガシガシ
あなたはもう二度と、安眠することができなくなった。
THE END しずく「生き残りました!……が、精神は無事では済まなかったようです」
せつ菜「そのようですね!」
せつ菜「しずくさん、〈正気度〉ロールを行ってください」
しずく「わかりました」
しずく「えいっ!」コロコロ しずく「結果は……88!」
しずく「失敗です!」
せつ菜「では、1D4ポイントの正気度喪失です!」
しずく「あわわ……」
しずく「えいっ!」コロコロ しずく「結果は……1! 1ポイントの喪失です」
せつ菜「加えて、〈クトゥルフ神話〉技能を4ポイント獲得します!」
しずく「〈クトゥルフ神話〉技能……ですか?」
せつ菜「〈クトゥルフ神話〉の技能値の数だけ、最大正気度が永久的にマイナスされます!」
しずく「それはひどい!」 せつ菜「……と、このように、クトゥルフ神話TRPGでは、たとえ生き残ったとしても身体や心に傷を負うことがあります」
せつ菜「そして、そういったものが、探索者のバックストーリーとして積み重ねられていくんです!」
しずく「そう考えるとなかなか味わい深いですね♪」
せつ菜「そうなんです! また遊びましょうね!」
しずく「はい、ぜひ♡」 〜ifストーリー・Alone Against the Flames〜 おわり これにてこのシナリオは完全におしまい
長らくお付き合いありがとう 乙です
これどの呪文唱えてもクトゥルーエンドになるのかな?
あと聴きそびれたけど、最初のルートの最後でオードリーを追おうとした乗り手って誰なんだろう?村の手の物じゃないのか?
それにしても、アザトースにクトゥグヴァにニャル、と言った名前が出るあたりホントスターターセットなシナリオだなw 分岐も乙
村人の儀式をやめさせるみたいな平和なENDって存在するの? >>725
呪文はどれを唱えても結局オードリーは焼け死ぬ
村人を巻き添えにするかどうかと死に方の若干の違いだけ
乗り手は普通に、居なくなったことに気付いて追っかけてきた村人だね
>>726
話し合いで……みたいなのは無いなあ
もはやカルトだからね ちなみに次はプレイヤー3〜5人のシナリオをやろうと考えてる
やっぱりプレイヤー多い方が書いてても楽しいし
参加者はしずく固定で後は考え中……
シナリオのおすすめとかあったら挙げてもらえると嬉しい
あとは誰々のこんなロールプレイが見たいとかでも可 ハッピーエンド的にはならないってことか
やっぱクトゥルフってそういうのが多いのかね >>728
あー……やっぱ参加キャラは自分で考えて決めることにする
モチベ高めるためにも アメリカシナリオだと銃器とか出せるのが魅力的だよなあ
日本が舞台だとそうはいかない
まぁ戦闘無しシナリオも多いけど 本家のシナリオってかんじの後味の悪さがいいねえ
とにかく1おつさん、色々期待してるキャラやら展開はあるけど邪魔にならんように秘めとこう 長らくお疲れ様でした!
数人verも期待して待ってるよ お疲れ様でした
クトゥルフ神話のこと一つも知らないけど楽しく読めました
よくわからないことだらけだったけど、次作以降を読んでいけばわかるのかな 日本でもポリ公やヤーさんのNPCがいれば銃を使えんことはない
後は田舎を舞台にすれば猟友会に入ってるNPCを生やしたりできる
勿論探索者をそれにしてもいい 人数が増えるとそれだけスレが長丁場になって大変そうだけど、次も期待してます!
面白かった >>736 まあ、それで人打ったらブタ箱エンド不可避だがなw おつ 面白くて一気読みしたわ
ソロクトゥルフもいいね
シナリオだと
・迷探偵の密室
RP重視、複数人でやると後半かなり盛り上がると思う
・迫り来る闇
都市伝説系シティシナリオ。初心者KP/PLでもやりやすいからしずくせつ菜以外でもとっつきやすそう
・エンドロールを君と共に
映画題材の半シティシナリオ。個人的にしずくちゃんがPL確定なら見てみたい
・七色の血
「色」が主題でファンタジー要素の強いクローズド系。NPCが楽しい。
あたりはどうだろう。2個目だけKPであとはPL参加だったけど面白かったよ
確かどれもPL4人 全部渋にある 乙
ウイッカーマンとクトゥルフの合わせ技のシナリオはお見事 今回は戦闘なかったし、次は多少は多少は戦闘しうるシナリオもいいかな
複数人なら技能の役割分担もできるし
と言って気付いたが、虹ってPC的に見て戦闘得意そうなキャラいないな >>739
紹介ありがとう
良いシナリオは読んでるだけでも楽しい ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています