穂乃果(24)「ありがとうございました、またのお越しを〜!」
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何年か前にエタッてしまったSSです
そこまで行くのにだいぶ長いので、以前に読んでくださってた方は退屈かも知れませんがお付き合いください ・
・
・
〜北海道〜
聖良「じゃ、理亞…行ってくるから、留守番お願いね」
理亞「行ってらっしゃい、気をつけてね」
理亞「……あんまり、姉様に迷惑かけないでよ」
善子「迷惑って…私のことなんだと思ってんのよ!かけないわよ!」
聖良「あはは…じゃ、行ってくるね」
ブルルンッ、キー
理亞「まったく…」スタスタ
理亞「……ん?」
理亞「これって……」スッ
理亞「こんなカセットテープ……あったっけ」 聖良「それにしても、2人で行くのは久しぶりですね」
善子「私、最近はずっっっと留守番でしたからね!」
聖良「出来ることなら、3人で行きたいんですが…何せ、2人乗りの車ですからね」
聖良「でも、久しぶりの食料探し…燃えるんじゃないんですか?」
善子「……もう、この北海道に食料なんて残ってないんじゃ」
聖良「………」 聖良「……いずれ、私たちもここから出ないといけなくなるでしょうね」
聖良「実際、たくさんの人が出て行きました…」
聖良「でも、ギリギリまで私たち…いや…少なくとも私はここに残ります」
聖良「ふるさとですから!」ニコッ
善子「……ま、まぁ……付き合いますけど」
聖良「ふふ…ありがとうございます」 キーーー!
ガチャ
聖良「私は向こうの工場に行ってみます」
聖良「善子さんはあっちの工場の探索、お願いしますね」
善子「はーい…ってヨ…!」
聖良「では、また後で!」タッタッタッ
善子「……〜〜〜」
善子「はぁ…」
善子「もう食べれる食料なんて缶詰ぐらいしかないわよね……」スタスタ キィ…
善子「失礼しま〜す…」
・・・シーン
善子「……なんかもう雰囲気からして、食料なんて無さそうな感じなんだけど……」
善子「はぁ…わざわざ遠出してこれって…もうね…」
善子「東京では…みんな何してるのかな」
善子「ずら丸やルビィは元気にしてるかしら…」スタスタ ピタッ
善子「……って」
善子「食料発見ッ!」
善子「缶詰ね……賞味期限は……まだ大丈夫じゃない!」
善子「久しぶりに探し当てたわ…!」
善子「ククク…やはり私の探知能力は人より優れてい…」
カンッッッッ…!!
善子「!?」 善子「……何?なんの音?」
善子「……だ、誰かいるの?」
善子「聖良……さん?」
善子「それとも、まさかまだ北海道に…私たち以外の人が…?」
善子「」ドキッドキッ
ノソノソ…
カンッッッッ!!
善子「わわっ!?」
善子「……な、なんなのよ!!」
善子「……あっちの方から聞こえたわね」スタスタ スタスタ
善子「この扉の向こうから聞こえたわよね」
ガチャガチャ
善子「閉まってる…」
善子「…あ、あの」
・・・
善子「……あの!」
・・・
善子「……あれ?」
善子「おかしいわね……空耳だったの?」
「………なに?」
善子「いっ!」
善子「う、うわぁ…!」ドサッ 善子「い、いった〜…!」
善子「(…っ、いい歳して尻餅ついちゃったじゃない…)」
善子「…あ、あなた…誰?」
「お前こそ誰だよ」
善子「わ、私…?…私は…堕天使ヨハネ!」
「ヨハネ……お前……“あいどる”の手先か?」
善子「…はぁ?」
善子「何よ手先って!逆に“あいどる”が私の手先なぐらいなんだから!」
「あぁ…なんだ…ただの痛い人間か」
善子「…い、痛い言うなッ!」 善子「って言うか、こんな扉越しで喋るの…疲れるんだけど?」
「………」
善子「出て来なさいよ」
善子「(私がこんなこと言う立場になるなんて…)」
「…外はどうなってる?」
善子「外?」
「ウィルスだよ、ここが一番被害を受けた」
善子「……ほとんどの人が死んだ」
善子「……僅かに生き延びた人たちもみんな……比較的安全な場所へ移った」
「……敵は?」
善子「敵?」 善子「あんた、誰と戦ってんのよ…」
「裏切られたんだ……仲間に……」
善子「人にイタいとか言っといて……あんたの方がイタいじゃないのよ」
「お前と一緒にするな、俺は……“あいどる”に……騙されたんだ」
善子「…!」
「信用してたのに……くそっ、くそっ……」
善子「……あんな見るからに胡散臭いの、信用する方が悪いんでしょ」 善子「……見返したいとか思わないの?」
「……俺は何もできない、1人では何も」
善子「私も…今、出来ることなんて何もないと思ってたけど…一緒にいる子たちの発案で…ラジオで音楽を流してるの」
善子「昔、私も放送とかよくしてたから…」
「そうか……お前らか」
善子「……?何がよ」
「……あの音楽、グータラグータラ言ってる歌をラジオで流してるの」
善子「っ、グータラスーダラだから!」
善子「いや、別に私が訂正する義理なんてないんだけど…」
善子「……去年だっけ?もうずいぶん前よ」
善子「私が、1人で留守番させられてた時に…その人は現れた」
善子「……ボロボロだったのに」
善子「すごく、オーラが……あったっけ」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
-1年前-
善子「なんで私が留守番なのよッ!」
理亞「あなた、いつも何も見つけてこないじゃない!探すの下手なのよ!」
善子「ぐっ…ぐ〜…」
聖良「すみません、善子さん…すぐに帰って来ますから!」
ブルルンッ!ブウゥゥーン
善子「あぁ〜…もう〜!!」
善子「1人で留守番は暇なのよぉ〜!」 善子「なによ…私、もうずいぶんと食料調達に行ってないじゃない…」スタスタ
ザッ…
善子「!」
「…………」
善子「だ、誰…?」
「…………」
善子「い、生きてる…わよね?」
「………水」
善子「は…?」
「お水…ちょうだい…」バタッ
善子「えっ!?ちょ、ちょっと…」
善子「大丈夫…!?」ユサユサッ
「うぅ〜…」 「ゴクッ…ゴクッ…!」
善子「………」
「っぷはぁ〜!生き返る!」
「ありがとう!ホントに助かったよ」
善子「それはどういたしまして…」
善子「しかし、この北海道に私たち以外に人がいたとはね…」
「あ、ここ、北海道なんだ」
善子「え、知らなかったの…?」
「うん」
善子「……今までどこにいたの?」
「さぁ…どこにいたんだろう」 善子「…?」
善子「あなた…名前は?」
「名乗るほどの者じゃないよ、ただのシンガーだよ」
善子「……あっそう」
女性シンガー「そっちこそお名前は?恩人の名前を覚えときたいな!」
善子「ふっ、ヨハネよ」
女性シンガー「ヨハネちゃん…ヨハネちゃんか!よし!覚えとこう!」
善子「!!」パァァ…
善子「〜〜!ツッコまなくて良いなんて…いい人…!ヨハネ、感激…!」 女性シンガー「ご飯まで出してくれるなんて…!なんて優しい子…モグモグッ」
善子「あなた、今まで何してたの?」
女性シンガー「」ピクッ
女性シンガー「…記憶を無くしてて」
善子「え…き、記憶喪失?」
女性シンガー「何より…泣いてた…ずっと…毎日毎日」
女性シンガー「得体の知れない何かにずっと怯えてて…でも、誰かを守らなきゃって…思ってたの」
善子「…そうなんだ」
善子「…今は何してるの?」
女性シンガー「今?今は帰ろうとしてるよ」パクパクッ
善子「どこによ…」
女性シンガー「家だよ?……帰るって約束したし」モグモグッ
善子「家か…私もぶっちゃけ帰りたいわね…」
善子「……ちなみに、約束って誰としたの?」
女性シンガー「………」
善子「……?」 善子「そういえば…それは?」
女性シンガー「それって…このギターのこと?」
善子「そっ…それ、何か弾けるの?」
女性シンガー「いや〜、なんにも…」
善子「なによそれ……」
女性シンガー「あ、いや…1曲だけ弾けるや」
善子「…聴かせてよ」
女性シンガー「いいよ…!」
女性シンガー「…日が暮れてどこからか…」
善子「へぇ…弾き語りなのね」 女性シンガー「グータラ〜スーダララ〜」
ジャーン…
女性シンガー「…どうかな?」
善子「いいんじゃない?私は好きよ」
女性シンガー「そっかそっか!なら良かった…」
女性シンガー「…さてと、じゃあ…そろそろ行こうかな」
女性シンガー「ご飯、ありがとうね!」
善子「あっ…最後に…本当の名前…」
女性シンガー「…また」
善子「…え」
女性シンガー「また会えるよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 善子「その時にコッソリ録音させてもらってたのよね…」
善子「あなたもいい曲と思うでしょ?」
「……あぁ」
善子「……ねぇ、そろそろ出てきたら?」
「帰れ」
善子「なっ…!なによぉ…急に!心配してあげてるのに!」
「頼んでない、帰れ」
善子「〜〜〜!!!」
善子「帰るッ!」
「そうしてくれ」
「……俺はずっとここにいる」
善子「……ふんっ!」 善子「ああもうっ!なんなのよ!なんなのよ!」
善子「まったく!ムカつくわね!」
善子「缶詰は重いし…!まったく、いくつ入ってるのよ!?」
善子「…って、これは」
善子「ヘリコプター…篭ってるあいつの…かしら…」
善子「……あ〜もう……知らないんだから、知らない知らない……」
善子「…聖良さん…早く来ないかな」 ブゥーン
聖良「今日は善子さんのおかげでお腹いっぱい食べれそうですね!」
善子「ふふふん!ま、私の能力にかかればこんなものです!」
聖良「ふふ…そうですね」
キッ
聖良「ただいま理亞。ごめんなさい、結構かかっちゃって…」
善子「ふふ、待たせたわね…」
善子「喜びなさい…!我がリトルデーモン!今日は存分にマナを回復でき…」
ダダダダダッ!!
善子「へ?」
理亞「善子おぉ…!あなたねっ!!」 ズイッ
善子「いっ!ち、近い…な、なによぉ…!」
理亞「このカセットテープ、いつ手に入れたの!?」
善子「え、えぇ…?それは…きょ、去年よ…」 理亞「なんでこんな大事なこと黙ってたのよっ!!」
善子「ど、どういうことよぉ…!勝手に放送したのがまずかったの…!?」
理亞「……あなた、このカセットテープの曲、誰が歌ってるのか本当にわからないの?」
善子「え?いや、本人はシンガーとしか言ってなかったけど…」
理亞「言ってた…言ってたってあなた…これを生で聴かしてもらったの!?」
善子「そ、そうよ?去年1人で留守番してた時に彼女が来て…」
理亞「うそ…来たって…ここに…?」
聖良「さっきからどういうことなの理亞?そのカセットテープはいったい…」
理亞「姉様も聴けばわかる!わからないのは善子だけ!」
善子「むっ…もう、いったいなんなのよ…!」
理亞「……いい?これを歌ってるのは間違いなく……」 ・
・
・
〜園田家 道場〜
海未「…………」
ギシッ…
海未「………!」パッ
花陽「海未ちゃん」
海未「……花陽」
海未「久しぶりですね…」
花陽「うん…」 海未「……どうぞ、座ってください」
花陽「うん…ありがとう」スッ
花陽「……海未ちゃんは……家元を継がないとダメだもんね」
海未「……はい」
花陽「………」
海未「私はもう…やれる事はやりました…」
海未「家元を継いで…ずっと迷惑をかけてしまった母上に恩返しを…」
花陽「……やれる事はやったっていうのは……秋穂ちゃんのこと?」
海未「………」
海未「今まで、あの子の面倒を見ることで私も手一杯でした……」
海未「でも、今はもう…その必要もないので…」
花陽「…そっか」 花陽「海未ちゃん……私、秋穂ちゃんに会いたいんだ」
海未「…秋穂に?」
花陽「うん…」
海未「…なぜですか?」
海未「“あいどる”が蘇ったあと秋穂は…花陽、あなたのところに行ったと聞いていましたが」
花陽「……一時は協力を仰がれて、一緒に行動してた」
花陽「でも、秋穂ちゃんはだんだんやる事言う事が過激になっていって…ついに私たちと意見が対立しちゃって…」
海未「………」
花陽「今、噂になってる組織があるの…」
花陽「“あいどる”と敵対する過激派組織…リーダーはその冷徹さから、氷の女王と呼ばれてるって」
花陽「……この氷の女王って秋穂ちゃんじゃないのかな……?」
海未「………」 海未「……はい、そうかもしれませんね」
海未「……秋穂の件ですが……今、あの子と連絡を取るのは私でも難しいんです」
花陽「お願い海未ちゃん……私、秋穂ちゃんを説得したいの」
花陽「私たちの一派と秋穂ちゃんたちの一派で意見が対立して…それ以来もう絶縁状態なんだ…」
海未「…武装蜂起をやめさせるつもりですか?」
花陽「うん…止めた方がいいよ、絶対に」
海未「花陽も知っていると思いますが、秋穂は説得されてやめるような子じゃありません…」
花陽「………」
海未「しかし、花陽の言う通り……止めないといけません」
海未「秋穂は……穂乃果に似て、1人で抱え込む癖があります」
花陽「………」
海未「放っておいたら…本当に自らの命さえ、投げ出すかもしれません…」 海未「物心がつく前から母親である雪穂はいなかった…」
海未「幼少期に最愛の伯母を失った…」
海未「唯一の肉親である祖母とは会えなくなり……1人であの子はずっと戦い続けている」
海未「片親は誰かもわからない悪の権化……あの子の心情を思うと……私は……」
花陽「私もそう思うよ……だから秋穂ちゃんに何とかして……」
海未「……いえ、秋穂を止めるのは無理です」
花陽「え?」
海未「ですが…秋穂の手を汚さない事は出来ます」
花陽「それって…」
海未「……もう一度、私たちμ'sが立ち上がるんです」 花陽「う、海未ちゃん……本気?」
花陽「無理だよ……もう……私たちじゃ」
海未「…っ!何を弱気になっているんですか花陽!」
海未「あなたはボノカ一派のリーダーなんですよ…?もっと自信を持ってください!」
海未「……“あいどる”は世界を征服しました……あとはもう、人類を滅ぼす以外にやる事がありませんッ…!」
海未「“あいどる”の標的は私たちです……なぜ、ここまでμ'sを目の敵にするのかはわかりませんが……」
花陽「………」
海未「最近、思うんです……彼女ほどの力があれば……いつでもμ'sを……私たち8人を殺せたはずではと……」
海未「それをしなかったのは…何か理由があるからではないかと…」
海未「……もし、彼女の暴走の原因が私たちにあるとすれば……それを解決するのは娘である秋穂ではなく、私たちμ'sだと思うんです…!」
花陽「………」 花陽「」スッ
海未「……?」
花陽「」スタスタ
海未「花陽…?」
海未「どこに行くんですか…?」
海未「…花陽!」
花陽「」ピタッ
花陽「……海未ちゃん……もう無理だよ」
花陽「なるようにしかならないと思うの……」
海未「花陽…」
花陽「…やっぱり、私はリーダーに向いてない」
海未「そんな事……ボノカ一派をここまで率いてきたのは……他でもないあなたなんですから」
花陽「………」 海未「花陽、今ここで挫けてどうするんですか…?」
海未「私たちが踏ん張らないと…本当に世界は…」
花陽「……私には何もないから」
海未「え?」
花陽「海未ちゃんみたいな包容力とか統率力とか……穂乃果ちゃんみたいなカリスマ性もない……」
海未「……そんな事ないですよ」
海未「スクールアイドル部の部長だって、やり遂げたじゃないですか…。どうしたんですか、いきなり…」
海未「花陽にしかない長所はたくさん…」
花陽「……きっと、きっとね」
海未「……?」
花陽「きっと、“あいどる”は本当のアイドルになれなかったんだと思う…」
花陽「どこかで踏ん切りをつけて諦めていたけど…急に疎ましくなったんだと思う」 花陽「μ'sは…しっかりみんなで終わりって決めて…ちゃんとライブもやって…最後を迎えられた」
花陽「あの時の今が楽しくて…最高で…私たちはそれで満足だった…充実感もあったし…やり遂げたっていう達成感もあった…」
海未「………」
花陽「でも…本当にみんながみんな、そうだったのかな…?」
海未「……どういう事ですか?」
花陽「例えば…“あいどる”となった彼女はその後…虚無感に襲われたんじゃないのかな…」
海未「……虚無感?」
花陽「うん……まだまだやりたいって……一緒に歩みたいって……思ったんじゃないのかな……」
花陽「私、思うの…もしかしたら“あいどる”はどこかで……誰かに……中途半端に希望を持たせられたんじゃないのかな……って」
海未「………」
花陽「……μ'sのリーダーは間違いなく穂乃果ちゃんだよ」
花陽「その事に疑問を持ったことがある?」
海未「そんな事…私は一度だってありません…」 花陽「そっか……そうだよね」
花陽「うん、私もないよ……やっぱりμ'sのリーダーは穂乃果ちゃんだもんね」
花陽「でも、その事に納得がいかない人もいるって事だよ…たぶん…」
花陽「リーダーをやって気づいたことがあるんだ…」
海未「気づいたこと?……何ですか?」
花陽「………」
海未「……花陽?」
花陽「……“あいどる”の気持ちなんて誰にもわからないよ」
海未「……そうかもしれませんね」
花陽「海未ちゃん、そうかもじゃなくて……そうなんだよ……?」
花陽「わからないんだよ、誰にも……それは穂乃果ちゃんだって、海未ちゃんだって、絵里ちゃんにだってわからないよ……」
海未「………」
花陽「………」
花陽「……秋穂ちゃんに会わないと」 このSSの続きずっと楽しみにしてたから再開すごい嬉しいわ!
ラストまで頑張って欲しい このSSの続きずっと楽しみにしてたから再開すごい嬉しいわ!
ラストまで頑張って欲しい -数日後-
海未「……花陽の様子」
海未「あれは…なにか…」
海未「………」
ガラッ
海未「……?」
こころ「海未さんッ!」
海未「こ、こころちゃん…?」
海未「どうしたんですかいったい、こんなところまで…」
こころ「こっちです!」テマネキ
海未「え?」
こころ「ついてきてください!」グイッ!
海未「え!?ちょ、ちょっと…!こころちゃん…!」 タッタッタッ…
海未「こ、こころちゃん…!どこに連れて行くつもりですか…!?」
こころ「海未さんに会いたがってる人がいるんです!」
海未「あ、会いたがっている人…?」
海未「…ッ!それにしたって…!いったいどこまで…!」
こころ「あとちょっとですから!」グイッ!
海未「わっ…!」ヨロッ
こころ「あ…」
「…ッ!危ない…!」パシッ
海未「……ほっ」
海未「あ、ありがとうございます……って」
海未「絵里…?」
絵里「海未…大丈夫…?」 こころ「ご、ごめんなさい海未さん!」
こころ「私が引っ張りすぎたから…」
海未「いえ、気にしないでください。今のは私が足を引っ掛けただけですから」
海未「……それにしても、絵里……帰っていたんですね」
絵里「えぇ…つい先日ね」
曜「東京に帰ってくるまで2年ぐらいかかりましたもんね〜…」
海未「……あの、そちらの方は?」
曜「……あっ、そうだ!海未さんとは初対面ですもんね!」
曜「初めまして!私は渡辺曜って言います!」
曜「そうですね……絵里さんの……絵里さんの弟子です!」
絵里「……連れ人」
海未「そ、そうですか…」
海未「園田海未です。よろしくお願いしますね」
曜「はいっ!存じてます!」 海未「しかし……ここまで来るのは大変だったんじゃないですか?」
こころ「そうですね…移動は全部徒歩なので…正直疲れました〜…」
絵里「私の都合で新幹線や電車…公共の乗り物は使えなかったから」
曜「でもまぁ、4人で固まって歩いてたから、どのみち目立っちゃいましたけどね!」
絵里「なるべく人のいない道を通って来たから大丈夫とは思うんだけど……」
海未「あの……一ついいですか?」
絵里「どうしたの海未?」
海未「4人ではなく……3人では?」
曜「…え?」
海未「絵里に曜にこころちゃん…。3人ですよね?」
こころ「あれ?」
絵里「そう言えば…」
曜「1人足りないような…」
こころ「………ッ!」
こころ「ここあ……!ここあがいないです……!」
絵里「あ……!」 ・
・
・
ここあ「あれ〜…」
ここあ「もしかして…迷ったかぁ?」
ここあ「この辺り、あんまり来ないから道わかんないよ〜…」
グ~
ここあ「〜〜〜ッ」
ここあ「お腹減ったな〜…」スタスタ
ここあ「……ん!」ピタッ
ここあ「ラーメン屋さんだ……食べた〜い!」
ここあ「でもお金な〜い……」
ここあ「はぁ……お姉ちゃんたち、どこだ〜」
ここあ「おーい!」 ここあ「人通りまったくないから訊ねることも出来ないしぃ…」
ここあ「それに、海未さんの実家…どこって言ってたか覚えてないし…」
ここあ「う〜ん…」
ここあ「……あっ、そうだ!」
ここあ「せっかくここまで来たんだし…にこお姉ちゃんを探しちゃおう!」
老婆「!」
グ~
ここあ「もしかすると、この辺りなら何か手がかりがあるかもしれないし……しかし、お腹減った〜……」
老婆「無料」
ここあ「…え?」
老婆「今ならラーメン無料」
ここあ「えぇ…!?」
老婆「中にいる娘に、店の前にいた老婆に無料と言われたと言いなさい」
ここあ「……ほ、本当に?無料?」
老婆「無料」 ここあ「やったー!ラッキー♪」
ここあ「ん?」
ここあ「(…でも、なんか怪しいなぁ…このおばあちゃん)」
グ~
ここあ「(うっ…だけど…)」
ここあ「(もう限界だし…いいや!入っちゃえ!)」
ガラッ
ガラーン…
ここあ「………ありゃ?」
ここあ「あの〜!」
・・・シーン
ここあ「全然、お客さんいないじゃん……それに店員さんもいない」
ここあ「というか、肝心のおばあちゃんが言ってた娘さんがいない…」
ダッダッダッダ
ここあ「!」
主人「へい!すみません遅くなって!」
ここあ「あれ?」
主人「へい?」 ここあ「私、娘さんが中にいるって聞いたんだけど?」
主人「娘さん…?…あ〜!はいはい!」
主人「その子なら、そこにいますぜ!」
ここあ「そこ?」キョロキョロ
ここあ「……どこ?」
主人「そこっすよ!ってほらほら漫画読んでないで反応してあげてよ…!」
主人「秋穂ちゃん!」
ここあ「秋穂?」
秋穂「」パタンッ
秋穂「……」
ここあ「うわっ…!?」
秋穂「……なに?」 ここあ「い、いつからそこに…!?」
主人「たぶん入店した時からいたっすよ」
ここあ「……う、うそー」アングリ
秋穂「それで、私に何か用?」
ここあ「あっ!えーと、ラーメン無料って店前にいたおばあちゃんに言われたんだけど」
秋穂「……作ってあげて」
主人「へいっ!」
秋穂「………」スッ
秋穂「………」ペラッ
ここあ「(ありゃりゃ…また漫画読み始めちゃった)」 ギィ…
ここあ「よいしょっと」
秋穂「」ペラッ
ここあ「……なんか、この辺り人いないね!」
秋穂「………」
秋穂「」ジッ
ここあ「え…な、なに?」
秋穂「………」ペラッ
ここあ「……!?(む、無視……!?)」
ここあ「(すっごい冷ややか…!)」 主人「へいっお待ち!」
ドンッ!
ここあ「お〜!美味しそう〜!」
ここあ「お姉ちゃんを探す景気付けに…!」
ここあ「いっただっきま〜す!」
ここあ「ズルズル!」
秋穂「………」ジッ
ここあ「……ん、ん?」
ここあ「にゃに…?」
秋穂「いや…美味しそうに食べるなと思って」
ここあ「うん!美味しいよ!」 秋穂「あなた…」
ここあ「ふぇ?ズルズル」
秋穂「どこかで会ったことある?」
ここあ「……わたひ?にゃいとモグモグおおうズルズルけど……」
秋穂「…ごめんなさい、食べてる最中に話しかけて」
秋穂「食べてからでいいや…」
ここあ「うん、ズルズル」
ここあ「(…なんだ、案外普通に喋るんだ)」 ゴクッ…ゴクッ…
ここあ「ぷはぁ〜!美味しかった!」
ここあ「ご馳走様ッ!」
秋穂「……あのさ」
ここあ「ん?あぁ、なんだっけ?」フキフキ
秋穂「さっきお姉ちゃんって言ってたけど、そのお姉ちゃんの名前って…」
ここあ「にこ!矢澤にこだよ」
ここあ「……え?もしかしてっ!お姉ちゃんを知ってるの?」
秋穂「………」 ここあ「あれ?待てよ?」
ここあ「そういえば私もどこかであなたの声を聞いたことある気がぁ…」
ここあ「ん〜…と…」
秋穂「………」
ここあ「どこでだっけ……」
ここあ「……ぶそ……武装……あっ!」
秋穂「………」
ここあ「思い出した!あなた、もしかして…」
ここあ「……いや、そんなわけないか〜!」
秋穂「……そうだよ」
ここあ「え!?」
秋穂「私だよ……。私が……氷の女王」 ここあ「氷の女王……ほ、ほんとなんだ」
秋穂「……どうする?ラーメン、まだ食べる?」
ここあ「い、いや!もういい、お腹いっぱい!」
秋穂「そうっ…」
秋穂「……おばあちゃんから無料で食べる事を許されたって事はあなたは白って事だ」
秋穂「……でも、そっか……にこおばちゃんの……」
ここあ「……えっ?にこおばちゃん?」
秋穂「いや、なんでもないの……忘れて」
ここあ「……??」 秋穂「……もう帰れば?」
ここあ「(ラーメン食べるって聞いたり、帰れって言ったり忙しい子だな)」
ここあ「ま!お腹も膨れたし、そうしようかなぁ」
主人「えっ!?」
ここあ「えっ、なに!?」
主人「い、いいのかい秋穂ちゃん!?せっかく仲間になれそうな子なのにッ!」
秋穂「………」
主人「チャンポン達が使えない今、戦力補強は急務だろうに…」
ここあ「(チャンポン…?長崎の?)」
秋穂「……いらないよ」
秋穂「……ねぇ」
ここあ「んっ!?なに?」
秋穂「……にこおばちゃんなら凛おばちゃんたちと一緒にいるはずだよ」
ここあ「えっ!?や、やっぱりあなた…お姉ちゃんを知って…!」
ここあ「……お姉ちゃんは今、どこに?」
秋穂「……どこにいるかまでは知らない」
秋穂「そう…生温い…ボノカ一派のことなんて…知らないもん…」
ここあ「……生温い?」
主人「……そうかい」
主人「さっ、食ったなら帰った!帰った!」ドンッ
ここあ「……え、えぇ!ちょ、ちょ〜〜!」
ガラッ、バタンッ
秋穂「……はぁ」 ガララッ
秋穂「帰った?」
主人「ふぅ…。あぁ、追い出してからもしばらく秋穂ちゃんと話がしたいって喚いてたが、ようやく帰ったよ」
秋穂「……そう」ペラッ
主人「……しかし、氷の女王ねぇ」
主人「誰が言い出したか知らねぇがそんな子じゃないんだがなぁ」
秋穂「……」ペラッ
主人「伯母さんの友達の妹を死地に連れ込むのは抵抗があったんだろう?」
秋穂「……別に……そんなんじゃ……ない」ペラッ
主人「……フッ」
秋穂「」パタンッ
主人「!」
秋穂「アジトに戻る。しばらくここには来れないから、お店も閉めといて」
主人「あいよ」
秋穂「よろしくね」
ガラッ、バタンッ…
主人「……非情になりきれてねぇんだよなぁ。女王さんよ」 バタンッ
老婆「いらなかったかい?」
秋穂「……ごめんなさい、せっかく勧誘してくれたのに」
老婆「にこの妹なら白なのは間違いないし、いい戦力になると思ったんだがねぇ」
秋穂「……白なのは間違いないけど」
老婆「……気が引けたか?」
秋穂「……アジトに戻るね」
老婆「秋穂」
秋穂「なに?」
老婆「……穂乃果は生きてる」
秋穂「…………」
秋穂「……もう、聞き飽きたよ」
秋穂「……生きてるならなんで帰ってこないの?」
老婆「………」
秋穂「いらないよ、同情なんて…」スタスタ トボトボ
ここあ「はぁ……女王様、もっとお姉ちゃんのこと知ってそうだったのに」
「ここあーー!!」
ここあ「!」
こころ「ここあ!」
ここあ「お姉ちゃん!なんでここに?」
こころ「なんでここにって…あなたを探してたのよっ!」
ここあ「あっ、そっか!ごめんね」
こころ「ほんとにもう…」
こころ「さっ、皆さん心配してくれてるんだから、早く来なさい」
ここあ「はーい」 ・
・
・
海未「こころちゃん一人で探しに行かせてよかったんですか?」
曜「やっぱり、私も行きましょうか?」
絵里「大丈夫。こころちゃんももう立派な大人よ」
絵里「……本題に入りましょう」
海未「……はい」
絵里「海未、単刀直入に聞くわ」
絵里「氷の女王は……秋穂ね?」
海未「……おそらく……いえ」
海未「きっと、秋穂です…」
絵里「……そうよね」 絵里「武装蜂起の話は知ってる?」
海未「聞きました、存じています」
絵里「……私には、秋穂が大勢の都民を扇動して、自分や人の命を粗末にするとは……どうしても思えない」
海未「……あの子が変わったのは……全部、私のせいです」
絵里「……海未のせいじゃないわ」
絵里「そう…言うなれば、あの子を取り巻く環境の全てが……変えてしまったのね」
海未「……もし、こんな事がなければ……もっと……もっと普通の愛らしい女の子に育ったはずなんです、秋穂は……」
絵里「そうね……。あの子が見てきた現実は……あまりにも残酷すぎたわ」
絵里「物心がつく前から、彼女は戦い続けてる」
海未「……その緊張の糸はいつ切れてもおかしくありませんでした。ですから……そうならない様に、私がもっと愛を注いでいれば」
絵里「いいえ、海未は充分なほどの愛情を持って育ててきたはずよ。秋穂もそれは理解してるはずだわ」
絵里「……ただ、あの子にとって……穂乃果の穴はなんぴとも埋めることが出来ないのよ……」
海未「………」 絵里「……秋穂に会わせてちょうだい」
海未「……」
絵里「きっと、どこかにアジトがあるはず。海未、あなたなら知ってるんじゃないの?」
海未「……花陽にも聞かれましたが。すみません、私も知らないんです、本当に……」
絵里「…………花陽?」
絵里「花陽がここに来たの…!?」
ガシッ!
海未「…っ!」
海未「え、絵里…?は、はい…先日1人で…」
絵里「ダメ…花陽に秋穂を会わせてはダメ!」
海未「え、え…?」
海未「なぜですか…?」
絵里「………」 絵里「あのパレード…“あいどる”が暗殺されたあの日…私は1人で裏路地に入りこむ花陽を見たの…」
海未「えっ…?あの日、花陽もパレードに来ていたという事ですか?」
絵里「……」コクッ
絵里「“あいどる”は…殺される直前、私に花を見せた」
海未「……花?」
絵里「……思いたくはないけど」
絵里「花陽が……“あいどる”かもしれない」
海未「…花陽が…“あいどる”…?」 絵里「いや、花陽だけじゃない…」
絵里「海未……もしかしたら、穂乃果は生きているかもしれない」
海未「ッ!?」
海未「穂乃果が…生きている?」
絵里「えぇ…ラジオから穂乃果の歌が流れたてきたの。でも、それには今までに聞いた事のないフレーズが入ってた。あれは血の大晦日の前に録音したものじゃない」
海未「そうですか…!なら…穂乃果が生きているなら希望が!」
絵里「いや…おかしいのよ…」
海未「…え?」
絵里「だってありえないじゃない…!」
絵里「あの大爆発の中心にいたのよ穂乃果は!?」
絵里「それなのに、生きてるなんて…あそこから助かる可能性なんて0に近い…いや、0なのよ…?」
海未「……」
絵里「本当に穂乃果が生きているとすれば……穂乃果は……最初から私たち側ではなかったのかもしれないわ」
海未「いえ、そんなはず……」 海未「……ですが、本当にそうだとしたら、“あいどる”は最低でも2人以上は存在するという事に」
絵里「その線は十二分にありえるわ」
絵里「海未、穂乃果から……“あいどる”は複数人いるかもと仄めかされたことはない?」
海未「そんなこと…!」
海未「…ッ!」
・
・
・
海未『つまり穂乃果は“あいどる”は一人ではなく…複数人存在していると言いたいんですか?』
穂乃果『……どうかな、あくまでもなんとなく感じただけだから……私も断言は出来ない』
穂乃果『でも…あの違和感…その線もあるのかな』
・
・
・
海未「………」
絵里「……あるのね」 海未「確かにありました…ありましたが…」
絵里「ことりも行方をくらましてるんじゃないの?」
海未「え?」
絵里「……“あいどる”があの日示した、花の意味」
絵里「私は昔、花陽にあの花を見せてもらったことがある」
絵里「……自ずと答えが導かれるわ」
絵里「……Printempsが……“あいどる”」
曜「……あの、Printempsって確かμ'sのユニットですよね?」
曜「Printempsと花って何か関係があるんですか?」
絵里「……Printempsといえば花のイメージなのよ」
曜「……なんか……言いがかりのようなぁ……海未さんはどう思うんですか?」
海未「絵里、それは…」 海未「…それはありえません」
絵里「……!」
絵里「……なぜ、そう思うの?」
海未「……勘です」
絵里「勘……?」
絵里「勘だなんて…海未らしくないわね」
海未「らしくないのは絵里ですよ」
海未「疑心暗鬼になる気持ちはわかります…。ですが、ありえません」
海未「はっきり言います。μ'sに“あいどる”はいません!」 絵里「……どうして、そう言い切れるの?」
海未「……恥ずかしながら私も昔、ことりは“あいどる”なのでは……?と、疑った事があります」
絵里「………」
海未「ですが……私はあの時、確信したんです」
絵里「……あの時?」
海未「はい、2019年……“あいどる”を止めるために、μ'sが再集結したあの時」
海未「誰1人として私たちを陥れようと……嵌めようと考えているメンバーはいませんでした」
海未「…目を見ればわかるんです」
海未「それに…私たちには切っても切れない縁がある…」
海未「絵里も本当は分かっているでしょう?」
絵里「……ごめんなさい」
絵里「早計だった。私が間違ってたわ…」 海未「……さっき、ことりの行方がわからないと絵里は言いましたが」
絵里「えぇ…」
海未「ことりは…理事長と共に海外へと発ちました」
海未「……絵里は血の大晦日のあと、すぐに“あいどる”から追われる身となったので……伝えそびれていましたが……」
絵里「なぜ、ことりは海外に…?」
海未「PTSD…ストレス障害の疑いがあると聞きましたが…」
絵里「……そうだったのね」
絵里「……仕方ないわ。そうなるのが……普通なのよ」
海未「……理事長がついているので、無事だとは思いますが……」 ガラッ
絵里「!」
こころ「皆さん…お騒がせさせてしまい申し訳ありません!無事、見つかりました!」
ここあ「えへへ、すみません!迷っちゃってて…!」
海未「ここあちゃん…。ほっ…無事で何よりです」
絵里「変な人に声掛けられなかった?大丈夫だった?」
ここあ「大丈夫!あ…でも、ラーメン食べた!」
海未「ラーメン?」
ここあ「あっ!そうだっ!そんなことより、あのね!」
絵里「?…どうしたの?」
ここあ「私、氷の女王に会った!」
絵里「!?」
曜「う、うそ!?
海未「……えっ?」 絵里「ここあちゃん…それは本当?」
ここあ「うん、自分で言ってたもん。氷の女王だって」
海未「……外見はどんな風だったか、覚えていますか?」
ここあ「え〜、なんて言えばいいんだろ」
海未「前髪がパッツンだったとか…」
ここあ「それはわかんないなぁ…キャップ被ってたし」
ここあ「でも、だいぶイメージとは違ったよ?」
ここあ「思ってたより幼くて、割と可愛らしい顔つきで、身長は155ぐらいかな?」
絵里「……たぶん、間違いないわね」
海未「はい、秋穂です……」
絵里「ここあちゃん、どこで氷の女王に会ったの?」
ここあ「さっき言ったラーメン屋さんだよ?」
絵里「彼女はまだいるかしら?」
ここあ「えっ…どうだろう、私、先に出たからなぁ。というより追い出されたから…」
海未「……ここあちゃん、そこへ案内してもらえますか?」 海未がこころちゃんって言ってんのを脳内再生するとどうしてもシャロになってしまうわね ガラッ
主人「ん?すみません!今日はもう閉店…」
主人「…!」
絵里「」コツ…コツ…
絵里「氷の女王はどこ?」
主人「……なんのことですかねぇ?」
バンッ!
絵里「とぼけないでっ!私たちは今すぐ…あの子に会わないといけないの!」
海未「お願いします!秋穂の居場所を教えてください!」
主人「……園田海未に絢瀬絵里。秋穂ちゃんに会って……何をする気で?」
絵里「決まってるでしょ。説得するのよ」
主人「説得?本当に彼女はそれを望んでいるのかい?」
海未「えっ…?」 主人「いつまでも保護者面するのはやめた方がいいですぜ」
主人「彼女のためにならん」
海未「それは……そうかもしれませんが……」
絵里「……いいえ、全然そんな事ないわ」
海未「…!」
絵里「いい?私たちはあの子の行く末を見守る義務があるの」
絵里「あの子に傷一つでもつけさせてしまったら、穂乃果に顔を合わせられないわ」
海未「絵里…」
絵里「教えなさい、秋穂のアジトを」
主人「……知らねぇな」
絵里「…っ、早く言いなさい!」 主人「勘違いしないでくれよ。言わないんじゃねぇ、知らねぇんだ」
絵里「……なんですって?」
主人「あくまで俺は協力者だ。それ以上でも以下でもねぇ」
主人「彼女は用心深い。俺もアジトの場所は教えられてねぇんだ。」
絵里「……なら、何か他に秋穂について知っていることはないの?」
主人「ねぇな…」
海未「……ッ」
主人「おっと、言っとくがここを張り込んでも無駄ですぜ、もう彼女は来ないだろうからね」
絵里「……本当でしょうね?」
主人「嘘をついてるように見えますかい?」
絵里「…………」
海未「…………」
絵里「……くそっ」クルッ
海未「絵里……」
主人「……またのお越しを」 ガララッ、バタンッ
曜「!」
曜「絵里さん!どうでした?」
絵里「……」フリフリ
曜「そうですか…」
海未「……秋穂、いったいどこに」
絵里「………」
絵里「ここあちゃん、氷の女王は何か言ってなかった?」
ここあ「えっ…うーん…」
ここあ「特になにもないと思うけど…」
絵里「……そう」
こころ「本当に?何かないの?些細なことだけど、会話の中で気になったこととか」
ここあ「え〜、気になったこと…?」
ここあ「うーん、気になったことぉ…」
ここあ「……あっ」
絵里「何か思い出したの?」
ここあ「長崎ちゃんぽん…!」
海未「長崎ちゃんぽん…?」 ここあ「そうだそうだ!ちゃんぽん!」
絵里「ちゃんぽん…?」
ここあ「氷の女王じゃないけど、おじさんが言ってたんだよね……」
ここあ「なんて言ってたっけ……確か、チャンポン達が使えない今……戦力補強はうんぬんかんぬん……とか言ってたような……」
絵里「チャンポン……戦力補強……」
絵里「……!」
絵里「お手柄よ!ここあちゃんっ!」ガシッ
ここあ「へ?」
海未「絵里…?」
絵里「タイマフィアと秋穂に接点があるとすれば……いける!秋穂に会えるかもしれないわ!」
海未「ほ、本当ですか?」
絵里「えぇ。まったく……何が秋穂について知ってることはもうないよ……大嘘つきじゃない、あの店主」
絵里「けど、ハラショー……。なんとかなりそうね……!」 ・
・
・
公野「ふふふふふ〜ん♪」ジュー
ガララッ
公野「ん!」
公野「いらっしゃ〜い!」
ハターキ「は〜、お腹減った!」
公野「あら、先生!お一人?」
ハターキ「いいえ?あれ?何をしてるの2人とも、早く入りなさいよ」
ことり「は、はい…」
公野「…!こ、ことり…!」
ことり「えっ…あ、神様…?」
ハターキ「あら?2人とも、お知り合い?」
ことり「はい!昔に色々とお世話になって…」
ハターキ「そう…。って、なにしてるの!梨子ちゃんも入りなさいよ」
梨子「あっ、はい…ありがとうございます」
公野「……おやおや〜。先生、可愛いお供だね」
ハターキ「そうでしょ?使える子たちなの」 ジュー
ハターキ「」モグモグッ
ことり「……神様は……こんなところで何を?」
公野「ん〜…?見ての通りだよ。お店構えてんの」
公野「こういうの、ちょっと興味あってさ」
ハターキ「ももとカワ2本ずーつ!」
公野「は〜い」
梨子「先生、食べ過ぎじゃないですか…?」
ハターキ「大丈夫大丈夫!あなた達も何か食べなさい」
梨子「は、はい…」
ハターキ「そうだ。GODとことりちゃんは顔見知りみたいだけど梨子ちゃんは初対面なんでしょ?」
ハターキ「ご挨拶しときなさい」
梨子「あっ…はい…私、桜内…」
公野「桜内梨子ちゃんでしょ?知ってるよ」
梨子「え?な、なんで…」
ことり「びっくりしちゃうよね、ほんとに…。神様は初対面でもわかるんだ…人の名前とか性格が…」
ことり「私たちも昔、すごく驚いたもん…」
梨子「……す、すごいですね」
公野「なはは!まーね!」 ことり「……神様、すごく機嫌いいですね」
公野「え?……あー、まぁ……機嫌いいっていうより、テンションおかしいのかもね」
ジュー
公野「世界のトップがあんなんじゃ…もう先は長くないしね…」
ことり「………」
公野「名前や性格当てるなんて特技、今じゃなんの意味もないよ」
公野「……それよか」
公野「ことりは今まで何してたの?」
ことり「えっ…わ、私ですかぁ?」
ことり「私は……」 ことり「……ずっと、逃げてたんです」
ことり「私は…穂乃果ちゃんと海未ちゃんに支えられて生きてきたから…」
ことり「穂乃果ちゃんを失ったあの時に……現実から目を背けて、海外へ逃げたんです……」
ことり「全部、みんなに任せて……秋穂ちゃんや海未ちゃんの気持ちなんて考えずに……自分だけ逃げたんですっ……!」
ハターキ「……モグモグ」
公野「……ま、別に普通だよ」
公野「他の子たちのメンタルがおかしいんだよ」
ことり「……でも」
公野「なんにしたって、もう過ぎたことよ。気にしなさんな」
ことり「神様……」
ハターキ「それに、今となってはそう言えても、当時は言葉では表せないほどのストレスを抱えてたんだし、仕方がないわ」
ことり「先生……」
ことり「……ありがとうございますっ」 公野「で、梨子はなんで先生と?」
梨子「私は…昔、友達と一緒にとある件の情報収集をしていた時に急に拉致されて…」
公野「ダイヤと花丸とで穂乃果の情報を集めてたんでしょ?」
梨子「そ、そうです…よく知ってますね…」
梨子「それで……拉致されて……でも、ダイヤさんと花丸ちゃんがなんとか私だけでも……って、逃がしてくれて……」
梨子「途方に暮れていた時に“あいどる”の追っ手から逃げていたことりさんと出会ったんです…」
ことり「それから、梨子ちゃんと一緒に逃亡生活を続けて…もう限界……って、なった時に先生が拾ってくれたんです」
梨子「先生はいち早く“あいどる”が悪だと気づいていたんです」
公野「へぇ…」 公野「しかし、先生はよく“あいどる”に取り込まれませんでしたね」
ハターキ「だって見るからに胡散臭いでしょ」
ことり「そうですけど、実際問題…“あいどる”に心酔する人はたくさんいますよ?」
ハターキ「人間、不安な事が多いんだよ…何かに支えられていないと、酔っ払ってないと…やってられないのよ」
梨子「……つまり、先生は何かに酔っ払ってると?」
ハターキ「え?うん、梨子ちゃんと一緒」
梨子「私と一緒…?」
梨子「あっ…音楽…ですか?」
公野「なるほどねぇ…そう考えてるにもかかわらず、“あいどる”に勘付かれずに上手く取り入ってるって…」
公野「世渡り上手ですね、先生」
ハターキ「そうでしょ?という事で!酔っ払い繋がりでお酒飲んでもいいかな?」
ことり&梨子「ダメですっ!」
ハターキ「……ね?」
公野「ね…?とは…」 ハターキ「梨子ちゃんは作曲センスに長けてるし、ことりちゃんもデザイナーとしての実績がある」
ハターキ「有能な子たちなんだけど…ちょっと怖いところがあってねぇ…」
梨子「こわっ…!別に怖くなんて!先生のためを思って言ってるんです!」
公野「怖いですか?少なくとも、ことりは優しくないですか?」
ハターキ「そうなのよ。ことりちゃんは優しい方なんだけど…」
ハターキ「」チラッ
梨子「〜〜っ!なんで私を見るんですか〜!」
ハターキ「だって…。ね〜!」
ことり「あ、あははは…」
公野「ま、この後もお仕事があるんでしょ?ここはマネージャー達の言う事を聞いといた方がいいんじゃないですか?」
ハターキ「んー…そうね、仕方ないか…」 公野「ま、私も…先生にはお世話になってるから、あんまり強くは言えないんだけど」
ことり「お世話…?というと…?」
公野「歌詞ノートの横流しとか…ま、いろいろ」
公野「そんな事よりことり、あなたこれからどうするの?」
ことり「えっ…?」
公野「先生に付き添ってるだけでいいの?」
公野「世界の終わりを…このまま何もせずに待ってるだけでいいの?」
ことり「……私は」
公野「μ'sにしか、あいつは止められない」
梨子「……ことりさんにはトラウマがあります、ですから……」
ハターキ「トラウマなんて……そんなのみんなあるよ」
梨子「!」
ハターキ「みんなあるけど…どこかで割り切らないと前に進めないのよ」
梨子「……はい」 ことり「……神様はどうしたらいいと思いますか?」
公野「え…私?」
公野「……いいの?私に聞いて?」
ことり「え…?」
公野「……昔からいたでしょ」
公野「あんたの近くに、正しい答えを持った子が」
ことり「………」
ことり「海未ちゃんやみんなにばっかり頼っていられない……私も何かやらないと……って」
ことり「でも、私には……」
公野「……ことり、あんたの幼馴染は世界中から極悪人と呼ばれながら……みんなを守ろうとした」
ことり「……穂乃果ちゃん」
公野「あの子のやる事に付き合って、後悔した事ある?」
ことり「……ない。ないですっ!」
公野「……だよね」 公野「先生、ことりをお借りしてもいいですか?」
ハターキ「え?……えぇ、まぁ……仕方ないわね」
ハターキ「正直、ことりちゃんがいなくなると苦しいけど、そのぶん梨子ちゃんに頑張ってもらいましょう」
梨子「え…?」
ハターキ「いいわよね?」
梨子「は、はい!頑張ります…!」
公野「梨子は……近いうちに仲間に会えると思う」
梨子「……その前にまず、ダイヤさんと花丸ちゃんを……」
公野「……その2人も含めて会えるって、近々」
梨子「え…ほ、本当ですか?」
公野「うむ!私を信じなさい!」 ことり「あの…神様、私たちはこれから何をするんですか…?」
公野「“あいどる”を討つ!」
ことり「………」
公野「……ま、あんまり乗り気にはなれないよね」
ことり「いえ、そんな…」
公野「私は昔みたいにことりに笑って欲しいんだけどな」
ことり「……私にとって、穂乃果ちゃんは太陽みたいな存在だったんです」
公野「……太陽が無くなったら人間は生きれないもんね」
公野「そうだなぁ……うん、仕方ない」
公野「あのねことり」
ことり「なんですか…?」
公野「確証が持ててないから、言うか言わないか……迷ってたんだけど」
ことり「はい…」
公野「ことりのモチベーションを上げるために言う」
公野「……あのね」
ことり「は、はい…」
公野「穂乃果は」 段々キャラが揃ってきたな
そういえばA-RISEはどうしてるんだろ いやそれは分かるけど、穂乃果に潜伏先紹介したり死なないって予言したり
しかもその頃(20年前)から老婆だし ・
・
・
スタスタ
曜「絵里さん、タイ語まで喋れるなんてすごいですね」
絵里「軽くしかわからないけどね」
下っ端「」ピタッ
下っ端「ボスはここだ」
絵里「案内ありがとう。曜、行くわよ」
曜「私も入っていいんですか?」
絵里「別に入るくらいならいいわよ。行きましょ」
曜「なら…失礼します」
ガチャ 絵里「チャンポン」
チャンポン「……ゼェゼェ」
チャンポン「……エリーチカ……か」
絵里「……老いたわね、チャンポン」
チャンポン「お前は……牙が抜けたな」
絵里「……えぇ、そうかもね」
チャンポン「かつては弾丸を当てることが出来なかった……あのエリーチカも……ハァハァ」
チャンポン「今では……ただの娘に成り下がったか……」
チャンポン「そんなお前では……ハァハァ……世界は救えんな……」
絵里「………」 チャンポン「しかし……親友に再開した気分だよ……」
絵里「……私はそんな呑気なこと思えないわ」
チャンポン「ふふっ……釣れん……やつだな」
絵里「チャンポン、時間がないの」
チャンポン「……ある意味、私にも時間がない……」
チャンポン「もういつ…迎えが来ても…おかしくないのでね…ゼェゼェ」
チャンポン「だからこそ……お前に頼みたいことがある、エリーチカ……」
絵里「頼みたいこと?」
チャンポン「ハァハァ…あぁ…」 チャンポン「私が……とある女の子のファンでね……」
チャンポン「昔のお前と同じだよ……。エリーチカ……」
チャンポン「肝が……据わった少女でね……」
絵里「………」
チャンポン「……聞けば彼女は……テロリストホノカの姪っ子らしいじゃないか……」
絵里「………」
チャンポン「エリーチカ……お前が……止めてやれ……彼女……何をしでかすか……わからないぞ」
絵里「……チャンポン、彼女のアジトの場所を教えて」
チャンポン「……彼女は……アジトを転々としている」
チャンポン「だが……おそらく、今は……ここに……いるはずだ……」サッ
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