【SS】もしこいつがアイドル研究部の顧問だったら
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第1話 顧問の先生です
園田海未です
我々アイドル研究部、μ'sもメンバーが9人と多くなり、
2学期から正式な部活動として、転任されてきた先生が顧問に就いてくださる事になりました
なので今日は練習前に部室で就任のあいさつをしてくださるそうです 海未「そんな馬鹿な…!
私にそんなつもりは…!
それにこう言っては何ですが、お父様は婿養子の身…
園田流の存続にそんなに固執する立場とは思えないのですが…」
園田婆「生来の生真面目さ…そして外様ゆえ…なのかもしれんの…
そうだねぇ…
いい機会だから貴女と盛男さんの馴れ初めを聞かせてあげなさい」
園田母「はい、では恥ずかしながら…」
お婆様に促され、お母様がお父様との馴れ初めを私達に聞かせてくれました お父様とお母様がお父様の実家で催された宴席で知り合った事
その席で舞を披露したお母様がお父様に見初められ、それを切っ掛けに二人の交際が始まった事
そしてお母様のお父様に対する気持ちは園田流にかける気持ちと同じくらいにまで大きくなった事
でも嫡男であったお父様に園田家の婿養子になって欲しいとはとても言えなかった事
しかしお父様はそれを汲んで弟さんに跡目を譲り、婿養子に志願した事
私も初めてお父様とお母さまの詳しい馴れ初めを聞きました
私はそんなにお母様を愛しているお父様も子供なんですね…
でもどうして私には…そんなお母様の子供である私には… 園田婆「アタシは娘の幸せのためなら園田流を畳んで、
お前のお母さんを嫁がせてもいいと思ってたんだけどね
でも結局、盛男さんの厚意に甘えてしまった…」
英吉「テメェの道を閉ざしてまでテメェの惚れた女の大切なものを護る!
…カッコいいっすね!」
園田母「…ありがとうございます
しかしそれ故にあの人にとって園田流を護る事が新しい道となったのでしょう
ですので僅かでも脅かすものは許せないのだと思います」 英吉「なるほど…
まぁ人間、自分のためより自分以外の人のための方が頑張っちゃう事、結構ありますもんね
それが自分の大切な人のためなら尚更…
だからこその外様ゆえ…っすかね?」
園田婆「その通り…
先生、若いしそのナリでなかなか聡いのぉ」
先生は無教養そうなのに時折、本質を見抜かれますね
英吉「それにしても一つ気に入らねぇ事がありますね
それは…」
?…先生、それは何ですか? ガラガラガラガラ…!
インターホンが鳴らずにいきなり門戸を開ける音がしました
それは来客ではなく、身内が帰って着た事を意味します…
現在、この家で暮らしているのは4人
そしてこの場には私、お母様、お婆様の3人がいます
帰って来たのです
今日は帰らない筈だったお父様が…! 第10話 お父様です
園田海未です
お父様が返ってまいりました
いずれは帰宅され、件のお話をしなければならなかったとはいえ、
今は正直、心の準備ができておりません…
ひょっとして今日は帰らないといったのは私を帰ってこさせるための方便かとお母様とお婆様を疑いましたが、
その驚き様からお二人にとっても予想外の事態のようです
そして慌ててお母様がお父様を迎えに行きます
…逃げ出したい!!
頭の中がその気持ちでいっぱいになった刹那―― トン!
急に背中を軽く叩かれました
叩いたのはやっぱり先生
無言でしたが任せろと言わんばかりの頼もしい笑顔を私に向け、
力強く拳から親指を突き出して見せてくれました!
先生の向こうから穂乃果もガッツポーズで笑顔を見せてくれます
穂乃果も無言でしたが、ファイトだよ!…と目が語っています
二人のお陰で勇気が出ました! でも…
お父様が迎えに行ったお母様を伴って現れました
その眼光は明らかに私達三人を射抜くように向けられています…!
折角二人に頂いた勇気が一瞬で霧散しました
ふと穂乃果を見ると私と同様に怯えています 無理もありません…
時折、私を訪ねてくる穂乃果をお父様は嫌っていたようには思えませんでした
幼い頃は私達のよく遊び相手になって、穂乃果ちゃんと呼んで私と同じように可愛がっていましたから…
余りに穂乃果を可愛がるので、私は焼きもちを焼き、二人を困らせた事もあるくらいです
それなのに今は…
私と関係を持っていると疑っている先生に向けるものと同様の敵意を向けているのです
今までとあまりに違う様子に恐れを抱かない筈がありません…
そして先生は… 流石の一言です
先生より二回り程大きく、スーツの上からでも判る隆々たる体つきのお父様を見ても、恐れるどころか不敵な笑みを浮かべています
先生が立ち上がり、お父様と向き合います
英吉「初めまして!
園田海未さんが所属するアイドル研究部の顧問の鬼塚英吉です!」
盛男「…園田盛男です」
堂々と名乗る先生に対し、一言だけ返すお父様…
でも先生に気圧されているわけではなく、ただただ煩わしいといった風です 盛男「鬼塚先生…それと高坂君
今日の所はお引き取りください」
!?
園田母「あ、貴方!
先生はこの子を連れ戻してくださったんですよ!?
お礼の一言くらいは…!」
盛男「若造…聞こえなかったのか?
失せろと言っている…
貴様の様な不逞の輩と交わす言葉などない!」 お母様の忠告を無視して、お父様は先生にお礼を言うどころか侮辱しました!
礼を欠いたお父様を恥ずかしく思うと同時に怒りを覚えます!
どうしてこんな失礼な事が言えるのですか!?
私と先生との間に何もなかったのは報告を受けている筈です!
英吉「…すんませんが、お父さんの方になくてもこちらにはあるんすよ
海未さんはここにいる高坂を含め、部員全員に必要とされています
そして彼女に退部の意思がない以上…」
盛男「退部は認めないというわけか?
なら…海未は転校させる!」 お父様…そこまでして私にスクールアイドルを辞めさせたいんですか?
穂乃果「そんな!
私達には園田さんが…海未ちゃんが必要なんです…!!」
盛男「君達に必要であっても、海未には君達は必要ない」
もう…黙っていられません! 海未「そんな事はありません!
どうして私の気持ちをお父様が決めつけるのですか!!?」
皮肉にもお父様への怒りがその恐怖を打ち消してくれました
…思えばお父様に本気で反抗したのはこれが初めてです
でも…お父様はそんな私の初めての反抗にも驚いた様子もなく、冷たい表現で言い直しました…
盛男「ならばこう言おう…
園田流の後継者に君達は必要ない!」 穂乃果「でも…でも…!」
穂乃果の眼には大粒の涙が止めどなく溢れ出ています…
そしてそれは私の眼にも…
穂乃果…ごめんなさい…
貴女まで泣かせてしまって…本当にごめんなさい 盛男「そもそも高坂君、君を海未に近づくのを許したのは間違いだったよ
日々の稽古の息抜きになると思っていたが…
スクールアイドルなどと言う浮ついたものに海未を巻き込むのは流石に捨て置けん!
そもそもアイドル自体破廉恥極まりないものだというのに、
ましてやプロでもない素人のスクールアイドル等…」
許せない…!
穂乃果は私の初めてのお友達…
始めて穂乃果と出会った時…手を差し伸べて友達の輪の中に入れてくれなければ…
内気でお稽古ごとに追われる日々の私は…ひょっとしたら今も友達がいなかったかもしれません
穂乃果のお陰で私の世界は開けました!
そんな穂乃果を…侮辱するなんて…!
…許せない!!! バキィィィ―――――――――――――ィン!!
英吉以外「!!」
先生の肘から先が畳を貫いて床に埋まっています…!!
私の怒りを代わりに体現してくださいました
でも…
…怖い!!!!
こんなに怒りに満ちた先生の顔は初めて見ました…!
先生がやらかしの方々相手に暴力を行使するのは何度も見ています
でも圧倒的に強いためか、そんな時でもほとんど真顔で戦っておられました
…先生が静かに発言します 英吉「おっさん…いいかげんにしろよ?」
盛男「何だ貴様!
それが目上の者に対する口の利き方か!」
英吉「テメェの方こそ散々礼儀を欠いて、どの口がほざいてんだ!」
盛男「下衆が…何にせよ、これは園田家の問題だ
口を出すな!!!」 英吉「…口を出すなだと!?
その部外者お断りの家の問題に他所の家の穂乃果を…
俺の生徒を引き合いに出して泣かせて…
揚げ句、スクールアイドルを…穂乃果の尊厳を踏み躙っておいてなぁ…
都合のいい事言ってんじゃねぇよ!!!」
穂乃果「先生ぇ…」
盛男「言わせておけば…!」
英吉「それにな!
園田が…海未があんたの娘だろうが、俺の生徒でもあるんだ!!
たとえ親だろうが…俺の生徒である以上、泣かす奴は絶対に許さねぇ!!」
海未「…先生!」 盛男「チンピラが…!
どの口がほざく…!」
英吉「どの口がほざくだと?
そっくりその言葉、返すぜ!
海未は…あんたの娘は何日、行方不明だった?
…3日だよな?
あんた、一体この3日間何をしてたんだ?
人探しの素人の普通の家じゃない、
警視正の…人探しのプロ集団のお偉いさんが何で3日も娘を見つけてやれないんだ?
海外に高飛びしていたわけでもない…
そこらの漫喫やビジネスホテルにいただけの…
制服姿のままの女の子を何故見つけられないんだ!?
…結局、海未を見つけたのは俺の舎弟
そしてここに連れてきたのは俺だ!
そんな体たらくで家の問題だから口を出すなとか…よくも言えたな!!」 盛男「…箝口令がかかっているので詳しくは言えないが、
重大な任務に就いていて娘を探す時間がなかった
当然、私的な理由で部下に協力を頼めるはずがなかった…」
英吉「おっさん…言い訳はそれだけか?」
盛男「何だと!?
本当に重大な任務なんだ!
下手をすれば東京が…!」
英吉「テメェの娘の一大事より重大な任務なんてあるかぁ!!!!!!」 盛男「!…もういい!!
貴様の様なヒラに話しても無駄だ!」
英吉「はっ、うちの理事長にでも泣きつきますか?
貴女のヒラの部下に言い負かされたので助けてくだちゃいってw」
盛男「そんな無様なまねをする必要はない
貴様、その体つき、眼光…チンピラなりに腕に覚えがあるんだろう?
道場に来い!
鼻っ柱をへし折ってやる!」
英吉「いいっすねぇ、分かりやすくてw
…上等だ!」 先生が受けて立つ旨を聞いたお父様は支度のため、自室へ向かわれました…
海未「先生!
先生が強いのは分かってます!
でも…お父様は…!」
英吉「言いてぇ事は分かる
あのガタイ、俺よりは二回りはデカいし、
格闘技だって素人じゃねぇはずだ…」
海未「!…そこまで気づいててどうして!?」 英吉「何度も言わせんなよ…
俺の生徒を泣かす奴が許せねぇんだよ!!
…たとえお前らが許しても…な!」
穂乃果「先生…!」
英吉「それよりお前らに頼みがあるんだ…」
海未・穂乃果「え!?」
…………………………………………………… ……………………………………………………
英吉「…というわけだ
絶対に頼む
頼むから…萎えるような事は勘弁な」
穂乃果「うん!
わかった!
絶対…絶対、守るね!!」
海未「…難しい要求ですね」
英吉「そこを何とか!」
海未「本当に…先生は私を困らせてばかりです」
英吉「ホントに勘弁w」
海未「いいです
もう慣れっこです…
その代わり…」
英吉「任せとけ!」
何だかんだで先生は頼もしいです
特に今日は今までで一番…! 登場人物紹介
園田盛男(イメージCV:石井康嗣)
警視庁警視正
身長185cm
体重110kg
柔道三段、ボクシング(プロのヘビー級の試合経験有)、レスリング
近影
https://i.imgur.com/XwJPuI5.png
往年の格闘家のドン・フライに似ているので影で部下達にそう呼ばれている
そう呼ばれているのを知らないが、自身も似ていると自覚があり、
強い有名人に似ているのはむしろ誇らしかったりする
最近、逮捕した筈なのに留置所を自由に出入りする規格外の凶悪犯に振り回され続けて機嫌が悪い 第11話 決闘です
園田海未です
今、私達は道場にいます
お父様の私達に対する暴言に対して反論してくださった鬼塚先生とお父様との決闘を見守るためにここにいます
…我ながらムシのいい話です
日頃、先生に小言ばかり言って非難しているにも関わらず、こんな時だけ頼りにしているのですから… 英吉「さっきも言ったろ?
身勝手でも構わねぇ!」
だから気にすんな」
私の顔を見た先生が声をかけてくれます
私はそんなに顔に考えが出るのでしょうか?
何にせよこれから大変な事を請け負っていただくというのに更に気を遣わせてしまい、やはり申し訳ないです
それに…この道場は私達、園田家が剣道、薙刀の稽古に用いている道場なので、畳敷きではなく板張りです 海未「先生、ここは畳ではなく板張りです
ですから…」
英吉「アスファルトや散らかった廃工場よりはマシだな
投げられても余計なもんが刺さんなくて助かるぜ」
…どうやら釈迦に説法だったようです
幼い頃から護身術を修めてはいてもケンカなどした事がない私とは違い、
実戦を恐らく何度も経験しているであろう先生にとっては、これでも安全なくらいという事なんでしょうか? そんな事を考えているうちにお父様が柔道着を纏って登場しました
お父様は柔道の有段者で警視庁の教練では師範代を勤める程の手練れ…!
身長は180半ば、体重は100を超える巨漢です
たとえ先生でも正直、この体格差は…
園田婆「盛男さん、先生、アタシが立会人をさせてもらうよ
お互い流儀は違うようだけどとりあえず…
眼突き、金的、噛みつきが禁じ手、
降参、または戦闘不能で決着…
後、念のために言っておくが武器の使用も禁止じゃ!
…それでいいね?」
お婆様が二人の決闘の注意事項を説明しました 盛男「…承知しました」
英吉「オッケーだ!」
…しばしの静寂…
園田婆「始め!」
盛男「…」
英吉「…」
お父様は柔道家らしい構えで待ち構え、
先生は悠然とお父様に向かって歩を進めます… 意外です
先生の性格上、開始と同時に襲い掛かるとおm…
ブンッ!
フォシッ!
英吉「!?」
唐突に拳を突き出した先生の顎が跳ね上がりました!
攻撃したのは先生なのにどうして!?
英吉「その格好でパンチが来るとはな!」
盛男「一応、ボクシングもやっていてね…」 …私にはまったく見えませんでした!
どうやらお父様が先生の攻撃をカウンターに捕らえたようです
その後、先生はガードを上げてローキックでお父様の足を攻撃し続けます
体格に勝る相手に対する定石…
お父様の表情が苦痛に歪みます!
でも… 盛男「言い忘れていたが…レスリングの経験もある」
英吉「言うつもりなんてなかっただろ!」
そう言った頃にはお父様は先生の蹴り脚をタックルで捕らえていました
効果的だったとはいえ、出し過ぎたためにタイミングを計られました
そして倒さず逆に先生を持ち上げ…
バッシィィィーン!!
頭よりも高い所から先生を床に叩きつけました! 穂乃果「せ、先生ぇーーーーーーー!!」
英吉「…大丈夫だ!」
辛うじて頭部からの落下は防がれたようですが、
それでもここは板の間、あの叩きつけのダメージは甚大な筈です… 盛男「…この程度か?
昔、神奈川県警が手を焼いているという悪童の二人組の話を聞いた事がある
鬼爆コンビの片割れ…鬼の鬼塚とは貴様の事だろう?」
英吉「…よくご存じでw
ひょっとして俺のファンすか?」
盛男「しかし神奈川中の悪童の目の前で殺し合いをし、結果死んだと聞いていたが…
まさか生きているとは…
ゴキブリのような男だな!!」
!…先生はただ者ではないと思っていましたが、そこまでの名の知れた強者とは流石に予想外でした…
しかし…殺し合い…とは? 真偽はどうあれ、こんな事を聞いたら穂乃果は…
穂乃果「先生が…殺し…合い…?」
ショックを受けるのは無理もありません…
でも…
穂乃果「でも…!
でも先生は良い人だよ!
面白くって…ちょっとエッチだけど…
昔は悪人だったかもしれないけど…
今は良い人だよ!!
だって、今もこうやって私達のために闘ってくれてるよ!」 …杞憂でしたね
穂乃果、貴女は心根の強い人です
過去や風評に惑わされずに人を見ることができる人です
でも、それは私だって…!
そんな私達のやり取りをよそに再び、二人は闘い始めていました
一見、常に先生の方が攻勢ですが、有効打はほとんどありません…
逆に守勢の筈のお父様は先生の攻勢の間隙を縫ってボディブローやコンパクトな投げ技でじわじわとダメージを蓄積させていきます
それにしてもどうしてお父様は寝技に持ち込まないのでしょうか?
正直、それで勝負は決します 直後、お父様の口からこの疑問の回答がなされました…
盛男「下郎…楽に死ねると思うなよ」
英吉「あぁ…殺されるつもりなんてねぇよw」
…むごい!
ただ勝つだけでなく、なぶり殺しにする気ですか? 穂乃果「海未ちゃん、ゴメン…
穂乃果、おじさんが怖いよ…!
こんな怖い…おじさん見た事ない!
気づいてる…?
おじさん、今日ね、私の事、高坂君って呼ぶの
前みたいに穂乃果ちゃん…って呼んでくれないの…!」
…それには私も気づいています
それにしてもここまで…
ここまでしなければならないほど、園田流が大事なのですか?
こんな風に人を傷つけてまで守らねばならないほど、園田流は重いものなのですか? ゴッ!!
英吉「グガ…ァ…!」
園田婆「…!」
突如、今までの派手な音とは対照的な鈍い音が響きました…!
先生が呻きながら、頭を抱えて蹲っています!
恐らくお父様の投げの受け身を取り損ね、後頭部を強打したのでしょう
正直、もう見ていられません! でも…絶対に目を逸らしてはならないのです!
先生は私達のために闘ってくれているのですから!!
穂乃果「海ちゃん、ゴメン…
私もう…」
海未「ダメです!!!!
その先を言っては…!
先生との約束を忘れたのですか!!?」
穂乃果「!」
……………………………………… ………………………………………
英吉「それよりお前らに頼みがあるんだ…」
海未・穂乃果「え!?」
英吉「もうこんなの見たくないとか、
スクールアイドル辞めますとか、
んな萎えるような事は絶対ナシな…!
…たとえ俺がどんなことになっても…な」
穂乃果「え!?」
海未「…はい!!
しかと聞きました!」
穂乃果「!?…う、うん!」
英吉「ありがとな!
…それともう一つ!」
英吉「もし…もしだぞ?
俺が無様に蹲っていたらさ…
何か気合の入る事、言ってくれよ
そうだなぁ〜
例えば…」
……………………………………… ………………………………………
海未「そして今こそ…もう一つの約束を果たす時ですよ!!」
穂乃果「うん!」
海未・穂乃果「先生!!!
立ってください!
立って闘ってください!!」
盛男「馬鹿な…!
降伏を勧めるかと思えば、まさかこの状況で闘えなどと…!」 穂乃果「先生…!
ファ、ファイトだよ!!」
海未「先生…勝ってください!!」
海未・穂乃果「私たち…スクールアイドル、続けたいんです!!」
海未・穂乃果「歌い続けたいんです!!」
その時…
私達の叫び…
私たちの想いが届いて…
先生は立ち上がりました! 盛男「信じられん!!
あの打ち方は死んでもおかしくなかったぞ!?
それなのn…!」
バキ!
ガス!
英吉「ぼぉーとしてんじゃねぇぞ、おっさん!
俺はまだ死んでねーぞ!!」
盛男「ぐ、ふぅ…!」 驚愕するお父様の隙を突き、先生の左右の正拳突きが共に顔面に命中しました!!
そして鼻と口から血が滴り落ちます
そして一気呵成に攻勢に出る先生!
でも…すぐに冷静さを取り戻したお父様は防御に徹し、ダメージの回復を図ります
結局、有効打となったのは起死回生の正拳突きの二打のみ…
今度は逆に先生の表情に今までのダメージと打ち疲れの色が見えてきました
このままでは先程の展開を繰り返すだけです…! 何か…
何か打開策はないのでしょうか?
私達にも何かできないのでしょうか!?
…歌い続けたいんです!!…
ふと、先程の自分達の叫びが頭をよぎりました…
…これです! 海未「I say... 〜♪
Hey,hey,hey,START:DASH!! 〜♪
Hey,hey,hey,START:DASH!! 〜♪」
穂乃果「!…そうだよ!
私達、スクールアイドルだもんね!
I say... 〜♪
Hey,hey,hey,START:DASH!! 〜♪
Hey,hey,hey,START:DASH!! 〜♪」
私は歌いながら、穂乃果に頷きます 英吉「!」
盛男・園田母・婆「!?」
私達以外の四人は驚いています
しかし先生だけがいち早く我に返りました
…そして!
バッシィィィーン!
反撃の狼煙の如くお父様の顎を跳ね上げる先生のアッパーカット!!
不意の急所への一撃で流石のお父様もよろめいています! 英吉「よそ見してんじゃねーつったろーが!!
せっかく人気急上昇中のスクールアイドル達が盛り上げてくれてんだ!
俺らもアゲてこうぜ!!」
うぶ毛の小鳥たちも〜♪
いつか空に羽ばたく〜♪
大きな強い翼で飛ぶ〜♪
盛男「こんなもの…!
耳障りなだけだ…!!
おい、今すぐ止めなさい!!!」 嫌です!!!
歌うのを止めず、私と穂乃果は眼でそれを拒絶します!
諦めちゃダメなんだ〜♪
その日が絶対来る〜♪
君も感じてるよね〜♪
始まりの鼓動〜♪
英吉「邪魔はさせねぇ…
こいつらの歌は誰にも邪魔させねぇ!!
こいつらの想いは誰にも踏みにじらせねぇ!!!」 明日よ変われ!〜♪
希望に変われ!〜♪
眩しい光に照らされて変われ〜♪
START!!〜♪
それにしても私達が歌い始めたのを機に先生の闘い方に変化が起きました
これまでは先生の風貌とは裏腹なクラシックな空手のそれでしたが、
今は野性的というか…変則というか…簡単に言えば先生の見た目通りのならず者の闘い方です! 悲しみに閉ざされて〜♪
泣くだけの君じゃない〜♪
熱い胸 きっと未来を切り開く筈さ〜♪
悲しみに閉ざされて〜♪
泣くだけじゃつまらない〜♪
でも…それが強い…!
さっきまでは悉くお父様の防御に阻まれていた攻撃が、
今度は悉くかいくぐり、そしてそのすべてが急所を穿ちます!!
やはりこれが先生の本来の闘い方なんですね! きっと〜♪
きっと〜♪
君の〜♪
夢の〜♪
チカラ〜♪
いまを〜♪
動かすチカラ〜♪
そしてとうとうお父様の鳩尾に先生の拳が突き刺さりました!
そのダメージでお父様の腰が落ちます 英吉「あんたと奥さんの馴れ初め、奥さん本人から聞いたよ…
己の道を閉ざしてまで愛する女の思いを成就させてやった…
男と尊敬する!!
しかしな!
どうしてその愛する女との間に生まれた娘を思いは汲んでやらねぇんだよ!!」
盛男「…!!!!」
最後に…先生の喧嘩キック…というのでしょうか?
とにかくそれがお父様の顔面を捕らえ…
お父様は倒れました…!! 信じてるよ…〜♪
だから START!!〜♪
そして私達の歌も終わります…
…私達は先生の勝利を確信しました
でも…
お父様は立ち上がりました… そんな…!
喜びが…落胆…そして絶望に変貌しようとした瞬間…!
園田母「盛男さん…!
もう…もういいんですよ…!」
お母様がお父様に訴えました
そしてそれを聞いた途端、お父様の戦意はみるみる薄れていきました…
萎える…先生が言っていた事は…これだったんでしょうか?
そんな事を思い耽っていると、お父様が先生に話しかけます 盛男「若造…もう一度…名前を教えてくれんか?」
英吉「鬼爆コンビ 鬼の鬼塚、改め!
…
GTO!
グレート・ティーチャー・鬼塚!!
…夜露死苦ぅ!」
そう言って先生は勝ち名乗りの如く、右手の拳を虚空へ突き上げます!
そしてそれと同時にお父様は再び…地に伏しました…
園田婆「…それまで!!
勝者は鬼塚英吉っ!!!」 海未・穂乃果「先生ぇーっ!!!」
穂乃果「ありがとう!」
海未「ありがとうございます!!」
私と穂乃果は号泣しながら、先生に抱きつきました
我ながら、はしたないですね…
でも…今だけはこうさせてください… 英吉「おいおいw
…しかしまさかあそこで一曲歌ってくれるとは…サンキューな!」
海未「お役に…立てましたか?」
英吉「当然!
あれ聞いて元気が出なきゃ確実にアウトだった…
お前の親父さん、強過ぎだっつーの!
ただ…」 海未「…ただ?」
英吉「もっとこう…気合が入る曲が良かったな!
さっきのは喧嘩の最中にはちと甘ったるいw」
穂乃果「もう、先生!
穂乃果達はロッカーでもヘビメタでもないんだから、
そんな曲ないよぉ〜!」
確かに…その通りですねw
…そんな私達のやり取りの外でお父様たちも何かを話しています
……………………………………… ………………………………………
盛男「すまない…負けてしまったよ…
明言していなかったとはいえ、この果し合いは海未の進路をかけたものだと思っている
だから…」
園田母「いいんですよ…
たとえ園田流が私の代で終わる事になっても…」
盛男「何故だい?
君はあんなにも園田流の存続を…!」 園田母「…そうでしたね
ですが私も子を持つ母になり、変わったんですよ
お母様が私と盛男さんが結ばれるために園田流を畳もうと考えたように…
一族の誇りより…我が子の幸せの方が大事になったんですよ」
盛男「やれやれ…私の…外様の余計なお世話だったというわけか…」
園田母「そんな風に思わないでください!
その外様の貴方が我が事のように…いえ、我が事として大事に思っていてくださる事に感謝しているのは…
今も変わらないのですから…!」
園田婆「…その通りじゃ!
盛男さんが園田流の救世主である事に何の変りもない!」
盛男「…勿体なきお言葉です
おかげで私は道化にならずに済みました
しかし…これで園田流は…終わりなのでしょうか?」 海未「待ってください!!!!!」
海未以外「!!?」
…気がつけば、私はお父様たちの前に立って叫んでいました
海未「私は…園田流を継ぎます!!!」
海未以外「!!」 海未「ですが…
今は…
音乃木坂にいる間だけは…!
スクールアイドルでいさせてください!!
どうか…暫しの猶予を…!」
お父様はいたく驚いた様子です
ですが…
盛男「…私にどうこういう資格はない」
寂し気に微笑みながら、そう言ってお母様、お婆様の方を見られました
園田母「しかと…聞かせていただきました
認めましょう!」
園田婆「…うむ!」 盛男「鬼塚先生、聞いての通りです
本当に今更ですが…それでも言わせてください!
娘を…どうかよろしくお願いします…!」
英吉「…押忍!
任せてください!」
盛男「それと穂乃果ちゃん」
穂乃果「は、はい!」
盛男「君には散々酷い事を言って本当に申し訳なかった…!
許してくれなど身勝手な事を言うつもりはない
でも…願わくば…
これからも海未と仲良くしてあげてほしい…!」
穂乃果「ゆ、許します!
それに…やっと穂乃果ちゃんって呼んでくれたね♪」
そう言って涙ながらも無邪気に喜ぶ穂乃果に…
お父様は無言ですが今までのように優しく微笑みを返します …こうして私の家出騒動は幕を閉じました
ですが先生とお父様、2人の負傷は激しく、
お父様は2週間…先生は1か月の入院を余儀なくされました
今回は本当に…私のせいでご迷惑をおかけするばかりか、
大怪我を負わせてしまい、申し訳ないの一言ではとても済ませられなく思います… スペックやらオリバやらの相手をしててストレスたまってたのか とりあえず時期的には花山がスペックを倒してくれた翌日なので、
オリバにはまだ会っていない
後、>>160で穂乃果が道案内してあげた外人の爺さんはドリアン 刃牙と同年代くらいなんだなぁ
梢江がスクールアイドルを…やっぱり結構です まぁアニメ、漫画、ゲーム、ラノベ…もっともキャラの豊富な年代は高校生やそれくらいの年頃だしな
そういえば書きかけのえりちのオムニバス話で刃牙を出してるけど、
えりちがポンコツというより知能レベルがちぐはぐになっちゃったから要修正 第12話 再起です
園田海未です
家出の件も解決し、登校を再開しました
そして絵里達に心配をかけた事を謝罪し、伏せるべき所…先生と私が致したと誤解されて通報された件、
殺し合い云々…は伏せましたが、出来る限り全ての事情を報告した次第です 真姫「どうして男ってこうなのかしら?
なんでそこで闘っちゃうわけ?
…意味わかんない!」
花陽「暴力は良くないと思うけど…
それでも男の人達が女の人のために闘う!
そんなシチュエーションは憧れちゃうなぁ…」
…花陽が想像するような所謂、三角関係的なものとは違うのですが、まぁ置いておきましょう 凛「それにしても先生、
強いんだろうなぁ〜って思ってたけど、
そこまで強かったんだにゃ〜!」
穂乃果「うんうん!
ホントに凄かったよ!!
最初はおじさんの方が強かったんだけど、
穂乃果と海未ちゃんが応援して、
歌い始めた途端…
一気に勝っちゃったんだよ!!」 絵里「ハラショー!!
なんてドラマチックな勝ち方なの!?
これは…先生だけじゃなく海未、穂乃果、3人の勝利ね!!
…って、ごめんなさい!
海未にとっては複雑よね…?」
海未「いえ、気にしないでください
後で考えを改めて頂けたとはいえ、
私も今回は完全に鬼塚先生を応援していましたので…」 にこ「それにしても先生の素性はネットで一応は知ってたけど、
どれも途方もなくてマユツバだったのよね…
でもこれは多分…」
絵里「それよりも1ヶ月も入院なんて…
今更だけど相当な重傷を負われたのね…」
海未「はい…
この事ばかりは本当に申し訳ないとしか言いようがありません…」 真姫「あんまり気に病む必要ないんじゃない?
お父さんから聞いたんだけど、
全身の骨にひびが入ってるとは思えない元気さらしいわよ
この前だって比較的元気な患者さん達集めて、
車椅子レースとかやってたらしいもん!」
凛「流石、先生だにゃ!」
そういえば先生は真姫のお父様の病院に入院されています
先生、お元気なのは何よりですが…あまりご迷惑にならないようにお願いします ことり「……………」
希「…どしたん?ことりちゃん」
ことり「え?…ううん、何でもないよ?
私も花陽ちゃんや絵里ちゃんと同じかな?
ドラマチックだよね」
希「…そっか」 …今思えば、明らかにことりの様子はおかしかったのです
ですが私は家出中の遅れを取り戻すため、
穂乃果は先生の健闘に触発されて、いつも以上に張り切っていたため、
この時はそれに気づけませんでした
そしてことりの異変に気づかない程の直向さは、皮肉にも別の事故に発展しました…
学園祭当日、雨の中、決行した屋上ライブで私と穂乃果は過労のため、倒れてしまったのです 絵里「穂乃果ぁ!!」
真姫「海未ぃ!!」
当日は起床時から意識がはっきりしていませんでしたが、
絵里と真姫の叫び声だけは鮮明に覚えています…
幸い、私も穂乃果も数日の静養で体調は回復しましたが、気持ちは沈んだまま… 私達がライブを中止にさせてしまった事もさる事ながら、
静養中に絵里達から聞かされたラブライブ出場の辞退…
これまでの無理が祟ったのではないかという理事長の指摘に従っての決定との事ですが、
入院中の鬼塚先生にも既に報告済みとの事です 理事長から報告を受けた鬼塚先生は…
英吉「そっすか…それは残念すね…
…でも!
解散というわけじゃないんでしょ?
せっかくあいつら目当てに入学を希望してくれる子達もいるんです
あいつ等ならきっとその子らの期待に応えるパフォーマンスを見せてくれるっすよ!
…きっと何があっても!」 そうです!
ラブライブという大きな目標は無くなってしまいましたが、
元々は音乃木坂の存続のためにμ'sは結成されました
努力の甲斐があって廃校は見直しとなり、
来年度も新入生を募集することになりましたが、
正直それ以降は分かりません 先生の言う通りです
来年度の新入生にもっと…さらには再来年度以降の希望者の方達にも
音ノ木坂を気に入ってもらえるように今後も活動を続けるべきなのです!
もちろん、もう倒れたりしない無理のないペースでですが…
しかし、そうして皆が発奮して再び本格的にスクールアイドル活動を再開しようとした矢先…
次の問題が発生しました
…ことりの留学です 以前、先生の家を訪問した日、家族との外食のために途中で帰ったことりですが、
その食事中にある高名なファッションデザイナーの下で本格的なファッションの勉強をしてみないかと話されたそうです
あまりに予想外の事態に私と穂乃果は祝福の言葉もそこそこに問い詰めてしまいました
どうしてもっと早く教えてくれなかったのかと… ことり「ずっと相談したいって…思ってたよ!
でも…海未ちゃんが家出して、心配で自分の事どころじゃなかったよ…
戻ってきてくれてからもそう…
みんな学園祭の準備の追い込みで、みんないっぱいいっぱいなのに…
そんな時にとても言えなかった…
それに穂乃果ちゃんと海未ちゃんが倒れちゃって…」
…返す言葉がありませんでした
立て続けの私事でことりの相談の機会を奪った私達にことりを問い詰める資格などないのです…
その日から…
ことりは練習や部室に来なくなり…
私達を避けるようになりました… この事を私と穂乃果は未だ入院中の鬼塚先生に相談しました
当然と言えば当然ですが、先生はラブライブの辞退を聞いた時に合わせて、
ことりの留学の事も聞いていたとの事です
ただ…ことり本人の口から伝えるべきことだとして、
私達に黙っていたことを悔いておられました
そして… 英吉「で…お前らはどうしたい?」
そんな問いかけをされました
もしかしたら私の時のように助けてくださるのかと、思わず期待を抱きました
でも今回は私の時とは違い、ことりが望んだことです
それを阻む事はもちろん、それを望む自体許されない事なのです 海未「私達は…残念ですが…
ことりの将来を考えるのなら、この留学を祝福すべきだと…思います」
英吉「お前ららしい優等生な回答だな…
でもお前ら、祝福するんなら笑顔でないと…な」
穂乃果「だって…だって悲しいんだもん!
さびしいんだもん!」
気づけば私達は泣いていました
確かにこんな顔で…とても祝福しているとは言えません… 英吉「すまん…悪かったな
俺ぁお前らと違って優等生じゃないんでな…」
自己嫌悪です…
私達のために傷ついた先生に八つ当たりなんて…! 気づけば私達は逃げるように先生の病室から退室していました
そのため…先生がこう言っていたのを聞き取れていませんでした…
英吉「そう…俺は優等生じゃねえんだよ…」
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ことりが来なくなってからも…
そしてことりが日本を発ったこの日も…
私達は8人で練習を続けています
無理が祟って苦い思いを経験したにもかかわらず、一心不乱に練習に取り組んでいます でも…
そうでもしないと…
ことりがいなくなった事を意識してしまうから…
それでも…
どうしても…
ことりの事が忘れられません…!
そんな折、ふと私はある思いを穂乃果に投げかけました 海未「穂乃果…
正直、ことりの留学をきっかけに…
もうスクールアイドルを辞めると言い出すんじゃないかと思ってました…」
穂乃果「…言えるわけないよ
だって…!
…海未ちゃんだって同じでしょ?」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています