真姫「いい天気ね」
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このssはSCP財団とのクロスssとなっています。
また、一部死ネタが含まれているため苦手な方はご注意ください。 真姫「…ッ!」
すぐさま花陽に駆け寄り、脈拍を確認する。
死んでいるはずがない。
だって昨日死なないって約束したばかりじゃないか。
だからこれは何かの間違いで―
脈拍はなかった。
それ以外の生命活動を示す反応も、何一つ確認出来なかった。 真姫「嘘…嘘よこんなの…」
ポロポロと、瞳から涙があふれてくる。
何故、どうして、なんで、なんで、なんで、
真姫「死なないって約束したじゃない…」
自分の説得に応じてくれたんじゃなかったのか。
あの時のごめんね、はそういう意味じゃなかったのか。
それでも死にたい、という意味でのごめんね、だったとでもいうのか。 真姫「どうして…どうしてなのよぉ…」
涙があふれてきて止まらない。
どれほど泣いても、もう花陽は帰ってこないというのに。
真姫「なんで…なんで…」
こうまでしてこの世界で生きたくなかったのだろうか。
自分の説得が足りなかったのか?
それとも、その説得自体が花陽を苦しめてしまったのか。
真姫「花陽ぉ…」
理由は分からない。だが、事実として、
この日、大切な親友を1人喪ってしまった。
───────────────────────────────────── あれからどれくらい時間が経ったのだろう。
凛が心配してきて来ないあたり、それほど経っていないのだろうか。
真姫「……」
ずっとどうすればよかったのか考えてた。
もっと念入りに説得するべきだったか。
それとも、変な気を起こさないようにずっと一緒に行動しているべきだったか。
それとも、昨日のことを凛にも相談すべきだったか。
それとも、 真姫「……対抗ミーム」
ウプシロン-10が開発しているはずの対抗ミーム。
あれが完成していれば、花陽が死ぬことはなかったのではないか。
だが、肝心の開発チームからは一向に連絡が来ない。
対抗ミームは一体どこで何をしている?
───────────────────────────────────── >>142
すいませんここウプシロン-10じゃなくて-4でした (T-10)■■/02/23
花陽の死以降、凛は塞ぎこんでしまった。
当然だ。一番の親友が突然死んでしまったのだから。
ここ数日まともに会話もできていない。
花陽の遺体はサイト内の遺体安置所に保管してある。
本当はちゃんと埋葬してあげたいのだが、都会のど真ん中ではそうも簡単にいかない。
真姫「…全部終わったら、みんなで弔ってあげるから」
そう心に誓うのであった。
───────────────────────────────────── 真姫「ッ来た!」
対抗ミームを開発していてるウプシロン-4から遂に連絡が来た。
やっとだ。どれだけ待ち望んでいたか。
もっと早く完成していたら花陽は…
なんて考えていてももう取り返しはつかない。一刻も早くこれを世界中に拡散するべきだ。
だが、肝心のメールの内容は、予想外のものだった。
───────────────────────────────────── 報告書
我々機動部隊ウプシロン-4はSCP-3519に対する対抗ミームの開発を行ってきました。
しかし、開発段階で現場で適切な媒介メディアに挿入する事が不可能だと判明しました。
これを受け、SCP-3519の対抗ミームを開発を中止すること提言します。
───────────────────────────────────── 真姫「はぁ⁉」
メディアへの挿入が不可能?開発中止?
なんだそれは。
散々待たせたくせに、この報告書の内容は何だ。
メディアへの挿入が不可能なら普通もっと早く気付くはずだろう。
なのに何でこんなに時間がかかって…
真姫「……あっ」
そこで、ある可能性に気付く。
絶望としか言えない、その可能性に。
ウプシロン-4が感染した。 真姫「……」
それは、SCP-3519への対抗ミーム開発が不可能になってしまったことを示し、
SCP-3519へ対抗する、最後の手段が失われてしまったことを示していた。
真姫「これじゃあ…もう…」
頼みの綱は絶たれた。
もう満足に感染者を治療させることは不可能だろう。
3月5日まで、あと10日。
残された手段は。
───────────────────────────────────── (T-8)■■/02/25
先日の一件を受け、SCP-3519の特別収容プロトコルが改訂された。
───────────────────────────────────── 特別収容プロトコル:
グリーフ・カウンセリングおよび自殺の予防を、全ての生き残っている財団職員が利用できる状態にしなければいけません。
自殺用カプセルを要請に応じて利用可能にします。可能であれば、全ての生存しているKeterクラス異常存在の無力化命令が実行に移されます。
財団施設は、所属スタッフ数が30%を切った時点で、もしくは施設管理官の裁量で、施設放棄プロトコルに個々に従ってください。
───────────────────────────────────── 内容が明らかに矛盾していた。
全職員にカウンセリングを利用できる状態にしておきながら、自殺用カプセルの利用も認めるのはおかしい。
でも、もしもこれで花陽のような人が救われるのなら。
生きる気力を失ってしまった人を、無理に生き長らえさせるよりは。
───────────────────────────────────── (T-7)■■/02/26
遂にあれほど騒がしかったテレビが何も言わなくなった。
テレビだけじゃない。ラジオやネットニュースなど、ありとあらゆるメディアが沈黙している。
財団本部からの連絡は滅茶苦茶だ。
このサイト内に限らず、数多くの職員が自殺しているらしい。
また、収容下にある知的アノマリーが自殺し始めているという噂も流れてきた。
危険なオブジェクトが勝手に非活性状態になってくれるのはありがたいが、
オブジェクトですら死のうとするこの世界は、一体何なのだろうか。
───────────────────────────────────── (T-6)■■/02/27
真姫達は奥多摩にやってきていた。
ここには財団が保有している緊急時の予備施設がある。
ここに来た理由は1つ。
元居たサイトが使い物にならなくなった。
放置された遺体で衛生状態は悪化しており、これ以上の施設劣化を回避するため、プロジェクトチームを丸々こちらへ移動させたのだ。 凛「かよちん…」
花陽の遺体は遺体安置所に置かれたままだった。
置き去りにしたくはないが、かと言って連れていくこともできない。
真姫「大丈夫よ。また戻ってくれば。その時にちゃんと…」
凛「うん…」
───────────────────────────────────── 人がいなかったこともあって施設の状態は良好だった。
食料も水もたっぷりある。
これなら大丈夫そうだ。
凛「これからどうするの」
凛が心配そうに聞いてくる。
真姫「対抗ミームのプロトタイプのデータはあるわ。だからこれを私達の手で完成させれば…」
凛「凛達2人しかいないのに?」
対SCP-3519のプロジェクトチーム、というより真姫達がいたサイトの生き残りは、真姫達2人しかいなかった。
真姫「…そうよ。これしか方法はないんだから」
凛「そう、だよね」
力無さげに頷く。
不安になる気持ちもわかる。だがもうこれしか方法はないのだ。
真姫「今日はもう疲れてるだろうから凛は先に休んでていいわ。私はまだやることがあるから」
凛「……分かった」
こうして、2人は別れた。
3月5日まで、1週間を切っていた。
───────────────────────────────────── (T-5)■■/02/28
今朝、凛が自殺していた。
花陽と同じ方法だった。
凛の手にはメモが握られていた。
メモにはこう書いてあった。
ただ一言。
ごめんね、と。
それ以降のことはあまり覚えていない。
───────────────────────────────────── (T-4)■■/03/01
財団の自動継承システムからメッセージが届いた。
何でも自分がO5-6に昇進したらしい。
O5は財団の最高責任者だ。
間違っても自分のような一研究員が就けるような立場ではない。
自分にその地位が回ってくるほど、財団に人がいなくなってしまったというのか。
───────────────────────────────────── (T-3)■■/03/02
今日凛の遺体を埋葬した。
施設内に放っておかれるより、こっちの方が安らかに眠れるだろう。
後で花陽も同じところに埋葬してあげようか。
なんて、そんなことは、もう、
───────────────────────────────────── (T-1)■■/03/04
真姫の父親は一連の事件が起こった当初、本部のサイト方にいた。
事件後も現地に残り、向こうでの指揮を執っていた。
真姫とは今日この日までずっと、連絡を取り合っていた。
その連絡が、ついに途絶えた。
財団内で、最後まで連絡を取り合えていたサイトだった。 連絡が途絶える原因なんていくらでもある。
だが、死んでしまったとしか考えられなかった。
財団は崩壊した。
もう、異常存在を収容することはできない。
───────────────────────────────────── SCP-3519の特別収容プロトコルを改訂した。
これが、最後の仕事となるだろう。
───────────────────────────────────── 特別収容プロトコル:
SCP-3519への感受性を有する人物が生き残っていないことから、これ以上の収容は必要とされません。
感染は無力化したと見做されます。
世界的メディアのかなりの割合が感染を媒介すると思われ、その収容は現時点の財団に可能な域を越えています。
しかしながら、感染した記録媒体の ― 全てではないにせよ ― 大部分は更なる伝達が起こる前に劣化してゆくことが予想されます。
───────────────────────────────────── SCP-3519の無力化に成功した。
人類の滅亡によって。
対抗ミームなんて最初からいらなかったのだ。
感染する人間がいなくなれば、あとは勝手に消えていくのだから。
最後の最後で、自分達は勝利したのだ。
犠牲は、あまりにも多すぎたが。
今更自殺する気なんて起きなかった。
だって、明日になれば、世界は、
───────────────────────────────────── (T-0)■■/03/05
───────────────────────────────────── (T+1)■■/03/06
目が開く。
…どうして?
何故自分は今目を開いた。
3月5日はとっくに過ぎたというのに。
───────────────────────────────────── 体を起こす。
自分の意志で体を動かせる。
体の感覚もある。
どうやら自分は生きているらしい
どうして。
───────────────────────────────────── 辺りを見回す。
自分が最後に見た部屋のままだった。
何かが起きた様子はなかった。
どうして。
───────────────────────────────────── 廊下に出る。
他の施設内の設備も最後に見た様子のままだった。
どうやらこの中では何も起こっていないらしい。
どうして。
財団の緊急施設だからか?
───────────────────────────────────── 玄関の前に立つ。
この扉の向こうには今までいた世界がある。
3月5日を迎えた以上、どうなっているのか分からないが。
一面荒れ果てた荒野になっているのか、神話に出てくるような「終末」が繰り広げられているのか、
「何も」存在しないのか。
確かめてみる必要がある。
自分が置かれているこの状況を理解するためにも。
そして
その扉に
手を
伸ばし
───────────────────────────────────── 扉を開ける
そうして見た外の世界には、
何もなかった。
何も起きていなかった。
最後に見た景色のままだった。
何一つ変わらない景色が広がっていた。
どうして?
3月5日はとっくに過ぎたというのに。
───────────────────────────────────── 音が聞こえる。
鳥の鳴き声だ。
どうして?
どうして生き物が生きている。
どうしてさも当然のように生きている。
3月5日はとっくに過ぎたというのに。
───────────────────────────────────── 真姫「………………あっ」
そこで気付く。
やっと気付く。
一つの答えに。 SCP-3519の異常性は何だったのか。
―3月5日に世界が滅びるという情報を信じ、その日が来る前に自殺した方がいいというミーム汚染 そう、
3月5日に何かを起こすものではなかった。
そもそも、
3月5日に何も起こらないことなんて最初から分かっていたじゃないか。 真姫「ははっ…」
いつの間にか自分も感染していたみたいだ。
まったく情けない。
だが、それももう終わり。
Xデーが過ぎた終末論など、ただの妄想に過ぎないのだから。
───────────────────────────────────── 空を見上げる。
雲一つない、快晴だった。
どこまでも青いその空は、まるでこれからの世界を表しているようで。 清々しくも物悲しい、
本家に則った潔い終わり方だと感じました。
お疲れ様です。 読み終わった
壮絶な話だったな……滅亡後の世界で真姫ちゃんはどう生きていくんだろう ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています