ドライ璃奈ちゃん
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愛 「璃奈ー、見てみてこれ」
璃奈「……何ですか?」
愛 「じゃじゃーん、名付けて"璃奈ちゃんボード"ぉー♪」
璃奈「…………」
愛 「これ使えば、恥ずかしが璃奈ちゃんも、あっちゅーまに表情豊かな……」
璃奈「…………」
愛 「…………」
璃奈「…………」シラケ
愛 「あら、駄目?」
璃奈「ありがとうございます。必要になったら使わせて貰いますね」ゴソゴソ
愛 「ち、ちょっとちょっとーん。言った傍から鞄に仕舞ってるじゃーん。絶対一生使わないオチじゃんそれー」
愛 「折角ラブ込めて作ったのにー」
璃奈「大きな御世話です……」スタスタ
愛 「ちぇー」
璃奈「…………」
璃奈(ふんだ。愛先輩のオバカ) 璃奈「…………」チューチュー
愛「璃奈」
璃奈「ん、愛先輩?」
愛「璃奈それ、何飲んでんの?」
璃奈「モンスター……だけど」カオス
愛「モンスター」
愛「あー……知ってるかも。エナジードリンクってやつだ」
璃奈「そうだよ。いろいろ種類が有るの」
愛「わざわざストローで飲むの」
璃奈「通の飲み方」
愛「ほーん?」
愛「つーことは璃奈、それに頼るほど疲れてたり……」
璃奈「ん……別に疲れてはないけど」
愛「え、じゃあ何で」
璃奈「エナドリって疲れてないと飲んじゃいけないものじゃないよ?」
璃奈「美味しいから飲むの」
璃奈「寧ろ、エナドリに味以外を求めたら損すると思うよ」
愛「な、何か凄いこと言いだした……」
愛「……」
璃奈「一口ちょーだい、とか言うんでしょ。どうせ」
愛「ヒョッ?! 何で分かった!」
璃奈「分かるよ……」
璃奈(猿も察してエサ隠すレベルだよ) 璃奈「いいよ、一口ならあげる」
愛「あら、いいん?」
璃奈「あんな欲しそうな顔されちゃ気まずいもん……」
愛「えー嬉しいけど……そんな顔してたー?」
璃奈「してたしてた」
璃奈「飲んで良いよ。ほら」
愛 「あらまーありがと三角」
愛 「……」チビチビ…
愛 「───」ゴクン…
璃奈「どお?」
愛 「…………」
愛 「あ」
璃奈「?」 愛「あぁんッま……」
璃奈「え?」
愛「なァーにコレ……すっげ甘いんだけど」ウゲー…
璃奈「甘い……えぇーそうかな?」
璃奈「糖分量は普通のジュースとそんな変わらないけど……」
愛「いや甘いよ……ゲロ甘だよこれは」
愛「璃奈大丈夫なんこれ? これ毎日飲んだら糖尿病になるんじゃね」
璃奈「と……べ、別に体調崩す量は飲んでないよ」
璃奈「それに今は運動だって沢山してるもん」
愛「それにしたって、こりゃ世辞にもカラダに良いモンじゃないね……」
愛(モンスターだけに)
愛「璃奈の好みは否定しないけど、愛さんはチョイ苦味あった方が好きだなー」
璃奈「そんなこと言われても」
愛「ちょっと緑茶サーバーで口直ししてくるわ……」スタスタ 璃奈「行っちゃった……」
璃奈「……」
璃奈(そんなに甘いかなぁ?)
璃奈(こんな美味しいのに……)チューチュー
璃奈「……」
璃奈(あ……)
璃奈「…………」キョロキョロ
璃奈(ま、いっか)チューチュー… 愛「よっす璃奈、ボンタンアメあるけど食べる?」
璃奈「ボンタン……? ……あめ?」
愛「あれま知らない?」
愛「まあいいや、とりま1個食べてみ」コロリ
璃奈「……キャラメルみたい」
璃奈「…………」
璃奈「…………」ムキムキ
璃奈「……?」
愛「どした璃奈。食べないの?」
璃奈「この包み紙、取れないんだけど……」
愛「 」
愛「……璃奈はカワイイねぇ」ナデナデ
璃奈「……なに、いきなり」ペシッ 愛「璃奈ってドコに住んでんの?」
璃奈「?……渋谷だけど」
愛「渋谷? おおー渋谷? 華やかなトコ住んでんじゃん」
璃奈「華やかって……」
璃奈「……別に普通の住宅街だけど」
愛「えー? まーたまたそんなこと言ってー」
愛「実は松濤辺りに住んでたりとか……」
璃奈「え?何で分かったの?」
愛「 」
璃奈「どしたの?」キョト
愛「……今度お邪魔してもいい?」
璃奈「え、やだ」
愛「そんなー」 愛「今日の愛先輩はグイグイ行くぜー」グイグイ
璃奈「こないで」
愛「うぉう、璃奈が絶好調すぎて辛い……でもそんなこと言うなよーぅ」グイグイ
璃奈(うっざ……)
愛「実は昨日見たハングオーバーが最高に面白くってさー」
璃奈「酔っ払いのやつ?」
愛「ザッツライ。だから愛さん今日は御機嫌なんだぜ」
愛「まあ実際いつでも無駄に御機嫌だけどね!」グイグイ
璃奈(うっざ……)
愛「そんなワケで、今なら特別に、璃奈のやってほしいコト何でもしたげる」
璃奈「何か変な飛躍した」
璃奈「え、何でもって……」
愛「何でもだよ? 今なら愛さんランプの魔神になれるんだよ?」
愛「どんとこい」
璃奈「……」
璃奈「じゃあ」
愛「あ、璃奈に近付かないでは駄目だよん」
璃奈「……チッ」
愛「舌打ちしたァ?!」ガビン 愛 「璃奈はさー」
愛 「同好会の先輩の中で誰が一番好き?」
璃奈「…………」(¬_¬)シラー
愛 「な、何か言ってよぅ……」
愛 「えーと……じゃあ歩夢のことは?」
璃奈「優しいから好き」
愛 「菜々は?」
璃奈「割と話合うから……好きな方」
愛 「……」
愛 「アタシのことは? 好き?」
璃奈「…………」プイス
愛 「何か言ってよッ!?」
璃奈「そういうこと聞いてこなければ好き」
璃奈「かも」
愛 「かもって何だよヘイヘイ」ナデナデ
璃奈「気安く触んないで」ペシッ
愛 「ヘーイ……」シューン… 愛「…………」カリカリ
璃奈「……愛先輩?」
愛「ん? あ、璃奈。おつかれ」
璃奈「うん」
璃奈「それ、勉強してるの? 部室で……」
愛「そーだよ?」
愛「うちのクラス、明後日に英語のテストがあるんだ」
愛「しかも論述問題付き。いくつかの課題からランダム出題のね」
愛「事前通知される分は、今の内に書けるようにしときたいんだよ」
璃奈「そ、そうなんだ……」
愛「別に気は遣わなくても良いからねー。うるさくしても大丈夫だよ」ヘラヘラ
璃奈「はあ、しないけど」 愛「…………」カリカリ
璃奈「…………」
璃奈(先輩が勉強に集中してる所……初めて見た)
愛「…………」カリカリ
璃奈(こうして見ると……本当に格好良い人だなぁ)ジー
璃奈(普段のアレさえ無ければなー)ジー
璃奈(……考えてみれば、先輩だって、この学園に入学出来た1人なんだ)
璃奈(難関な入学試験に、厳しい人格適性検査)
璃奈(勉強に集中出来ないようじゃ、ここには居ないよね。そもそも)ジー…
愛「……」カリカリ
愛「……」
愛(すっげー見られてんだけど)カリカリ
愛(アタシ何かしたっけか)カリ…カリ… 愛「よーう、かすかすー」ナデナデ
かすみ「うげ、愛先輩……」ベシッ
愛「えーなにその反応、ひどくね? 愛さん泣いちゃうんだけど」
かすみ「りな子とのアレ見てれば当然の反応でしょうよ」
かすみ「事ある毎に絡んでくっついて……何です? 今日の餌はかすみですか?」
愛「愛さん蛸ちゃんかい。後輩は先輩にとってカワイイもんじゃん」
かすみ「だから、こちらの意見シカトで絡みますか」
かすみ「はー毎日楽しそうで良いですね、愛センパーイ」
愛「り、璃奈より毒濃度たけぇ……」(;´д`)
かすみ「それに愛先輩だと、遠目で見たらカツアゲにしか見えないんですよ……」
愛「ハハ、カツは元から揚がってるでしょー」
かすみ(うっざ……) 璃奈「いたた……」ヨタヨタ
愛「璃奈?」
璃奈「あ、愛先輩」ヨタヨタ
愛「どしたの、何かヨタヨタ歩いて……って」
愛「璃奈その脚……! 血だらけじゃん?!」
璃奈「え、あー……」
愛「ソックスまで破けて……転んだの!?」
璃奈「ちょっとイロイロあって……」
璃奈「もう学校着くし、すぐ保健室行くから……」ヨタヨタ
愛「……」 愛「背中、乗って」
璃奈「へ?」
愛「アタシの背中に乗って。保健室まで連れて行くから」
璃奈「へ……へ?」
愛「その怪我じゃ、歩くのも億劫でしょ。ほら」シャガミ
璃奈「で、でも……その」
愛「なに見てんの! 見世物じゃないよ!」
璃奈「!」
通行人A「……」ソソクサ
通行人B「……」メソラシ
璃奈「あ……」
愛「さ、気にしないで。早く行こ」ニコ
璃奈「…………」
璃奈「ありがと……」 璃奈(愛先輩、こういう時は本当に格好良い……)
愛「こういう時は、ちゃんと頼らなきゃ駄目だよ」
愛「女の怪我は重大なコトなんだからね」
愛「それじゃなくても、アタシらカラダが資本なんだから……」
璃奈「うん……」
愛「…………」
愛「それに早く消毒しないと、傷にバイ菌が入って……」
愛「そのまま化膿する可能性もあるんだからね!」ドヤ
璃奈「…………」
愛「…………」
愛「…………」
愛「あ、今のはね……」
璃奈「ねえ」
璃奈「怪我人」(半ギレ)
愛「ハイ…スンマセン…」
璃奈「愛先輩のオバカ」 −巣鴨 宮下家−
ジリリリリン ジリリリリン
ガチャン…
愛「ハイ、宮下で御座います…」
愛「はあ……」
愛「あー……申し訳ありません、母は只今、海外の方に居りまして……」
愛「言伝でしたら私の方で承りますが……ハイ」ガサガサ
愛「ハイ……あ、少々お待ちください」チキチキ
愛「……ハイ、大丈夫です」
愛「……ハイ、○○高校バレー部、同窓会の××様ですね」φ(._.)メモメモ
愛「再来月の……第一土曜日……ハイ」φ(._.)メモメモ
愛「銀座……○○○にて……16:00……現地集合……ハイ」φ(._.)メモメモ
愛「21:00解散……分かりました」φ(._.)メモメモ
愛「ハイ、確かに承りました。必ず伝えますので……」
愛「私……ですか? あ、申し遅れました、わたし娘の愛と申します……ええ」
愛「え、そうですか?」
愛「あはは……いえいえ、そんなことは……////」テレテレ
愛「あはは……はい…はい……では、失礼しまーす……」
愛「はい……はい」
ガチャン……
愛「……フヒー」 愛「あ、もしもし璃奈? ゴメンね待たせて」スマホ
愛「いやー何か知らないけどさ、ママの高校時代の同級生みたい」
愛「うん、同窓会のお誘いだって……あ、聞こえてたの?」
愛「アッハハ、ママ今ヨーロッパに居るし、行けるか分かんないのにさ♪」
愛「てゆーか、ママがバレー部に居たことすら初耳だよアタシ」ケラケラ
愛「……璃奈? どしたん?」
愛「ん……え、ここに? いやアタシ以外居ないよ? 飼猫なら居るけど」
猫「ニャー」
愛「おばーちゃんは買い物に行ってるし……うん、アタシだけ」
愛「アッハハ、急にどーしたん? 変な璃奈だねぇ」ヘラヘラ 璃奈「…………」パクパク
愛「うーん」
愛「毎回思うんだけどさー」
璃奈「?」
愛「璃奈の昼御飯、少なくない?」
璃奈「そう?」
愛「少ないよー……煮豆の缶詰とサンドイッチ2個だけじゃん」
愛「女子高生の食事じゃないねそりゃ」
璃奈「んー……実際、毎日これで足りてるし、問題は無いと思うよ」
愛「…………」 −次の日−
璃奈「…………」
璃奈「先輩、なにこれ」
愛「璃奈の弁当だよん」
璃奈「私の……って」
愛「作ってきた」
璃奈「あ、愛先輩のは?」
愛「あるよ?」
璃奈「…………」
璃奈「……いや、でも悪い……」
愛「悪くない」
璃奈「え」
璃奈「で、でも」
愛「いいから」
愛「食べな」
璃奈「……」
璃奈「……いただきます」
愛「ハイハイ、召し上がってちょーだい」
愛「放課後に弁当箱は返してねー」スタスタ
璃奈「あ……」
璃奈「…………」
璃奈(お母さんみたい……) 璃奈(手作り……なんだよね)
璃奈「……」パカ…
璃奈「あ、美味しそ」
璃奈(あれ? 何か紙が入ってる……)
璃奈(…………)
"愛さんの愛妻弁当たんと食べんとー!"
璃奈「…………」
璃奈「…………」
璃奈「…………」クシャクシャ……ポイ
璃奈「いただきます」 璃奈「あれ、愛先輩それって……」
愛「んー?」ゴクゴク…
愛「あーその通り。エナドリだよ」
璃奈「"ピーカー"だよね、国内メーカーの」
璃奈「あまり好きじゃなかったんじゃないの、エナドリ」
愛「いやー最初はそうだったんだけど、アタシ璃奈に影響されたんだね」
愛「あの後、何だかんだ興味が湧いちゃって、イロイロ調べたんだよグーグル先生で」
愛「で、辿り着いたのがコレだったんだ」
璃奈「ピーカー自体は知ってるけど飲んだことない。どんな感じ?」
愛「甘過ぎなくてビター。これがアタシ的にヒット賞でさ」
愛「何となく買って味わってる内に、いつの間にかファンになっちった」エヘ
璃奈「……」
愛「アタシらエナドリコンビだね♪」
璃奈「……糖尿病がどーとか言ってたクセに」ジト
愛「あっ」
愛「ご、ゴメンよー……食わず嫌いしちゃったんだよ愛さん。特例で許しとくれー」←
璃奈「一口飲んだし食わず嫌いじゃないじゃん……」プイス
愛「り、璃奈ー……」
璃奈「ふんだ。本国版モンスター飲んで出直してきて」 おじさん、できれば、300レスくらいまで見たいな。 愛 「今度、うちの地元で清掃活動があるんだけどさー」
愛 「友達を3人誘うと、全員に商品券が貰えるんだよ。23区内で使えるやつ」
璃奈「ふーん」
愛 「菜々も来るから、璃奈も一緒に」
璃奈「うん、行くよ」
愛 「なーんでさー」
愛 「…………」
愛 「……ん、あれ?」
璃奈「どしたの、テスト明けの部長先輩みたいな顔してるよ」
愛 「え、来るの? 璃奈?」
璃奈「うん、商品券は欲しいし」
璃奈「……どうかしたの?」
愛 「いや……うん、うん分かった。じゃあチラシあげるね」ピラリ
璃奈「うん」
愛 「それに日時は書いてあるから、巣鴨駅前のセブンに集合で……」
璃奈「はいはい」
果林「2人とも、そろそろ練習始めるよ」
璃奈「はーい」
璃奈「行こ、先輩」
愛 「あ、うん……」
愛 「…………」
愛 (拒否られるの前提で考えてたわアタシ)
愛 (ちょっと考えた方が良いかな。自分の振る舞い) 愛「璃奈はここの中等部に居たんだよね」
璃奈「……そうだけど」
愛「部活は何やってたん?」
愛「ちなみにアタシは中学時代バスケ部♪」
愛「僭越ながら青春してました」ドヤ
璃奈「あ、あっそう……」ヒキ…
愛「璃奈は? 何部で青春?」
璃奈「ユーチュー部」
愛「……」
愛「何て?」
璃奈「ユーチュー部」
愛「……」
愛「You……Tube……?」 璃奈「YouTubeは知ってるでしょ?」
愛「それはまあ……」
愛「やっぱ動画作る感じの?」
璃奈「そう。部活全体でユーチューバーするの」
愛「へー!」
愛「そんなんあるんだ!」
璃奈「うん」
璃奈「私の代は映画のレビュー動画とかを投稿してたよ」
愛「え、なにそれ見たい。それ超見たいんだけど」
愛「璃奈のレビューもあったんでしょ?」
璃奈「あ、あったけど……卒部したから削除してるよ?」
愛「…………」
愛「えー」
璃奈「ろ、露骨に残念そうな顔しないでよ……」
璃奈「それに、仮に残ってても見せないからね」
璃奈「顔は出してないけど恥ずかしいもん」
愛 「なんだよー……見たかったのに」シューン…
璃奈(…………)
璃奈(本当は幽霊部員で、一度も撮ったこと無いんだけどね) ー山手線 品川・東京方面行き車内ー
───間もなく 新宿 新宿 お出口は……
愛 (が、ガチで眠い……)ウツラウツラ
愛 (周囲がおじさんの背中だらけで寄り掛かっても問題無いし、しかも揺れが良い感じに……)ガタンガタン
愛 (こ、このままじゃ愛さん立ったまま寝落ちしてしまう……)
愛 (ぐぬぬ)
愛 (この状況じゃスマホ出したら迷惑だし、何か無いか何か……)
男子A「子どもっていや知ってるか? 1年生の女子でさぁ」
男子B「1年生女子? あーもしかして情報科の……」
男子A「あーやっぱ知ってるか」
愛 (ぬ? ……情報科? もしかして虹ヶ咲の男子かな)
男子A「スゲーよなマジで。トラックに轢かれそうになってるトコなんてさぁ……」
男子B「俺ン友達でそこ見た奴居てさ。ガチで漫画のワンシーンみたいだったってよ」
男子B「でも脚が血だらけになってたみたいだけど……」
男子A「うわ……そらキッツいな」
男子A「でも虹ヶ咲の誇りだわな。人命助けた訳だし、後で表彰とかされるんじゃね」
男子B「噂じゃ、もう話が来てるってことも……」
愛 「──────」
愛 「──────」
気付けばアタシは、もう眠くなくなっていた ー虹ヶ咲学園 第一教務室ー
愛 「失礼しまーす」ガラリラ
愛 「数学の小泉先生いらっしゃいますかー?」
先生「いるよー。どうした宮下、珍しいな」
愛 「あ、センセー。おっはよーん」ガサリ
先生「ん、おはよう」
先生「……で、何だ。そのデカい袋」
愛 「うん、ちょっと折り入って頼みがあるんだけどさぁ」
先生「お、おう……」
愛 「数学準備室の冷蔵庫、昼休みまでで良いから使わせてくーださい」
先生「冷蔵庫ォ?」 果林「そういえば、1年生は修学旅行の時期よね、そろそろ」
璃奈「うん……」
愛 「2年もだけどねー」
果林「いいわねー2人とも……今年は何処にしたの、行き先」
璃奈「遥が誘ってきて、ホノルルになった」
愛 「アタシは去年ロンドンだったから、今年は香港にした」
愛 「美味しい物たーくさん食べるんだー」
果林「あら偶然ね」
璃奈「何が?」
果林「私1年の時に香港で、2年はホノルルだったのよ」
愛 「へーぇ! どっちも経験者だったんだ」
璃奈「ホノルル、銃声とか聞こえたりした?」
果林「き、聞こえない聞こえない……」
果林「でも、美味しいトンカツ屋さんはあったわ」
璃奈「え……ハワイまで行ってトンカツ?」
果林「まあ、どっちも良いトコロよ。期待して損は無いかな」
愛 「おぉー今から楽しみだぜ」 愛 「ところでりーなーちゃーん」スリスリ
璃奈「なに? ちょ、触んないでよ」ペシッ
果林(あ、またいつものが始まったわ)
愛 「ハルハルと随分、仲良いんじゃーん? 学科違うのにー」
璃奈「だ、だからなに。良いでしょ、私が誰とどうだって……」
果林「自分とどっちが好きとか言うのよ、どうせ」
愛 「ぬおっ、歌丸師匠みたいな事しおって」
果林「あなた解りやすいもの」
璃奈「…………」シラー
愛 「…………」
璃奈「…………」
愛 「どっちが好き?」シレッ
璃奈「遥」
愛 「ほげっ」ガーン
果林「地雷原でも突き進む辺り、愛は無敵ね」
愛 「寂しくなったら香港まで電話してイーヨー」グイグイ
璃奈「大きな御世話です」グググ 愛 「あ」
璃奈「どしたの」
愛 「いやね? アタシ、料理出来るんだよ」
璃奈「……はあ」
愛 「そんでさ、歩夢も菜々も一通り作れはする訳ね、料理」
璃奈「…………」
愛 「見たトコ、シズもかすかすも出来そうだし───」
愛 「果林もエマちんも出来る……意外や意外、カナは料理上手」
愛 「そんで部長も、何ならカナ級に上手いっぽい」
璃奈「……御手洗い行ってくるね」スタスタ
愛 「さっき行ってたでしょー?」ガッシ
璃奈「は、離して痴漢! 良いじゃん別に! 1週間ピザ出前でも!!」バタバタ
愛 「ちょっと待った思いもしない新情報来たんだけど?!」
璃奈「はっ」 愛 「え、なに? 璃奈んチ御両親が殆ど帰らないのは知ってたけど……」
璃奈「…………」
愛 「まさかガチで毎日デリバリーな訳?」
璃奈「うう……だって料理なんてワケ分かんないんだもん」
愛 「マージか」
愛 「こないだのアレ(>>22)で何となくそーじゃないかって思ってたけど……」
璃奈「料理なんて出来なくたっていいもん……」
愛 「ふむ……」
愛 「よし、わかった」←矢部のポーズ
璃奈「あ、結構です」
愛 「アタシ璃奈んチ行くから教え……ちょっと」
愛 「前から言おうと思ってたんだけど、アタシの時だけ先回りするのやめよ?」
璃奈「やだよ。愛先輩にプライベート知られるなんて」ジト
愛 「そ、そんなストーカーに向ける目しないでよぅ」
愛 「んーじゃあ璃奈がウチに……」
璃奈「巣鴨の方が遠いよ」
愛 「ぐぬぬ」 男子A「うちの女子ってレベル高いの多いよなぁ」
男子B「まあな。性格も良い人ばっかりだし……」
男子A「そこはまあ、あの人格適性検査の結果だから」
男子A「俺達も、そこパスしてきた人間だぜ」
男子B「はは……まあそうなんだけど」
男子A「俺が知ってるのだと……2年の宮下先輩なんか最高だな」
男子B「あー俺も知ってる。あんな外見でスッゲぇ優しくて、友達多いらしいね」
璃奈 「…………」
男子A「良いよなー。ギャップあるってのは」
男子B「何か人伝に聞いた話だと、女子人気もエグいらしい。あの人」
男子A「あー言われてみりゃ解るかも、それ。カッコいいもんな、シッカリしてるし」
男子A「俺も、もーちょいイケメンになれたらなー……」
男子B「でも宮下先輩も良いけど、俺は3年の───」
璃奈 「…………」
──────
────
── 璃奈「こんにちはー」ガラリラ
璃奈「……って」
愛 「ゲッホゴホ、うおぇ……」
璃奈「ちょ、何してんの愛先輩」
菜々「あ、天王寺さん」
璃奈「中川先輩……なにこれ。何があったの」
菜々「わ、分かんないんです。ジュース飲んだと思ったら急に……」
璃奈「……」チラリ
コーラ「危険は日常の中に潜んでいる」
璃奈「それってまさか……」
愛 「ちょっと前……メントス食べたの……忘れてた」
愛 「えぼふっ」オエー
璃奈「やっぱり……愛先輩のオバカ」
菜々「え、え、どういう事ですか?」
璃奈「これはメントスガイザーって言ってね……」 ──
────
──────
璃奈 「…………」
璃奈 「…………」
女子A「ね、ねえ……」
女子B「何?」
女子A「何か……天王寺さん、笑ってない?」
女子B「は? 天王寺さんが?」
女子B「…………」
女子B「いつも通りだけど」
女子A「あれー……確かに笑ってたと思ったんだけど」
女子B「気のせいでしょ、きっと」
女子A「んー……」
女子B「で、上原先輩のさ……」 前に同好会設立前(?)のエピソード書いてた人かな
ぽむと愛さんが昔からの顔馴染みって設定のやつ 愛 「キャープテンデェーップゥーゥー♪」スラスラ
歩夢「あれ、日誌書いてるんですか?」
愛 「お、歩夢おつかれー」
歩夢「お疲れさまです」
愛 「そーなんだよね。日直だったから……」
愛 「相方の人に、文章苦手だからって押し付けられちゃってさー」
愛 「アタシだって手書き文はド苦手だってのにもー……」
歩夢「でも、ソコで断れないのが愛ちゃんですよね」
愛 「まーね、見た目通り優しいから、愛さんってば」
歩夢「そういうとこですよ愛ちゃん」
愛 「え」
歩夢「でも……相変わらず字は綺麗ですね、本当に」
愛 「え……あ、ああ、まあね。数少ないアタシの自慢出来そうな点だからねー」 歩夢「ところで、それとは全く関係無いんですけど」
愛 「うん」
歩夢「重くないの? 背中のそれ」
彼方「スヤァ…………」
愛 「やっとツッコんでくれたね。待ってたよ」
歩夢「凄い体勢なんですけど……」
愛 「だよね。よく座ってる人間に寄り掛かって寝られるよね」
愛 「正直、そろそろ弾き落とそうか真剣に考えてたトコ」
歩夢「どうします? 生徒会行って遥ちゃん呼んできますか」
愛 「いや、ハルハルよりエマちん呼んできて……」
愛 「あの人ならメンバーで一番苦無く持ち上げられるから。これ」
彼方「ハルカチャ……イカナイデ……」 歩夢「は、はあ……じゃあ、呼んできますね」
愛 「頼むわ。ホント動けないからマジで」
歩夢「も、もう少し頑張ってくださいね」タタタタ…
愛 「ふぃー……疲れるわぁ」
愛 (これ剥がしたら、久しぶりにエナドリでも飲もっかなー)
彼方「トリニク……キュウリ……」
愛 「…………」
璃奈「…………」
愛 「あのね」
璃奈「…………」
愛 「いまアタシ迂闊に動けないからアレだけど、心臓止まるかと思ったからね」
愛 「急に璃奈が居て」
璃奈「…………」
愛 「璃奈? ちょっと?」 璃奈「…………」チラリ
愛さん鞄「くっ」
璃奈「…………」スタスタ
璃奈「…………愛先輩」ガサゴソ
愛 「ち、ちょっと璃奈!?」
璃奈「普段からさ、スマホのロック掛けない派だったよね?」つ愛スマホ
愛 「や、やめて!! 早まんないで!! その画像ファイルだけは」
彼方「…ウルヒャイ」ベキョッ
愛 「あでっ」
璃奈「これと……これと……これも」ポチポチ
愛 「あ、ああああああぁ……」
璃奈「これ……いつ撮ったの。私の寝顔」
愛 「や、やめてそれだけはぁ……」
璃奈「はい削除ォ」ポチポチ
愛 「いやあああぁ……」
愛 「やめてぇえええ……」 璃奈「これは……まあいっか。これは駄目だね」ポチポチ
璃奈「……ッッ!? さ、削除ッッ」ポチィィィ!
愛 「ああああああああああああ」
愛 「ああああああああああああ」
歩夢「…………」
エマ「え、ええと……何かな、これ」
歩夢「…………はぁ」
歩夢「自業自得ですよ。愛ちゃんのオバカ」
愛 「ふ、ふたりとも璃奈を止めてぇ……」
歩夢「いやですよ」
エマ「あ、愛ちゃん、本気で泣いてる……」
彼方「……コタロークンメ……」 −渋谷駅2番ホーム−
ざわ… ざわ…
璃奈(……やっぱり、この時間は混むなぁ)
璃奈(このコンクリートの島に、見渡す限りの人、人、人……)
璃奈(私の身長じゃ、サラリーマンのおじさん達に埋もれちゃうよ)
ざわ… ざわ…
璃奈(中等部の時からだけど、毎日よく生きて登校出来てるよね、私……)
璃奈「…………」
璃奈(効率化の波は五輪の後も激しいままだけど……)
璃奈(この辛気臭い一時が無くなるのは、果たして何世紀後になるやら)
―――間もなく 2番線に 品川 東京方面行きが 参ります…
璃奈(そろそろだね) 璃奈(ふぅ……今日は遅延無しで行けるかな)
各々の使命を持った人間達が埋め尽くす渋谷駅。
その2番線ホームに、東京では実に馴染み深い通勤通学の友、山手線の、緑色が特徴的な車体が逞しい駆動音を轟かせながら 滑り込んできた。
璃奈(うげ、これは……多分、全員は無理ぽいね)
その名状しがたいグロテスクな光景に、思わず璃奈は表情そのままに硬直する。
彼女が乗ることになる車両は、既に隣駅、原宿駅以前からの乗客で寿司詰め状態。
渋谷で降車する客を考慮に入れても、大崎駅まで変な態勢を維持する羽目になりそうだった。
それが本国の首都に於ける通勤通学の常であるとはいえ、璃奈は今という時間を、1日24時間の中で最も嫌った。無論、それは璃奈だけに限った話では決してないだろうが。
璃奈(うわわ……)
魔窟への扉が開くと同時に、まるで機械仕掛けの如く人の海は動き出す。
璃奈(電車なんて大っ嫌い……)
璃奈「わわ……」ダキ
璃奈「あ……ご、ごめんなさ……」
璃奈「え」
愛 「ん?」
愛 「……」
璃奈「……」
愛 「あ、璃奈だ」ダキシメ
璃奈「愛先輩……」ダキツキ
果たしてこれは、彼女にとって願ってもない清涼剤となるか。
それとも、願ってでも避けたい新たなストレス源となるのか。 女子「ねえ、天王寺さん」
璃奈「はい?」
女子「何か、呼んでるよ? 2年の先輩」
女子「宮下って人……」
璃奈「え」チラリ
女子「あそこ……」
愛 「やっほい」
璃奈「…………」
璃奈「はぁぁー……」
女子(え、なに? 凄い溜息……)
璃奈「ありがと、わじわざ」ガタリ
女子「う、ううん。気にしないで」 璃奈「何ですか? お弁当は毎週火曜と木曜ですよね」
愛 「んふふー、ちょっとしたサプライズだよん」
璃奈「サプライズ……」
愛 「そう、サプライズ・ギフト」
愛 「はいこれ、プレゼント・ウィズ・マイ・ハート」ガサリ
璃奈「何ですかこれ……ケーキ?」
愛 「その通り。登校する途中で買ってきたんだ」
璃奈「何でケーキ……私、誕生日ならまだ先で……」
愛 「ごほーび」
璃奈「は?」
愛 「いつも頑張ってる璃奈に、愛さんから御褒美だよ♪」
璃奈「?????」
璃奈「……いつもそうですけど、全く訳が分かんないんですが」
璃奈「くれるなら貰いますけど……」
愛 「御進呈ー」
璃奈「って、冷た」
愛 「あはは、冷蔵庫借りて冷やしてたからねー」
璃奈「はあ……ありがとうございます」 璃奈「……本当に何なんですか。気味悪いですよ」
愛 「…………」
愛 「あのさ、ところで、脚……大丈夫?」
璃奈「脚? ああ、もう大丈夫ですよ」
璃奈「傷跡も殆ど……」
璃奈「…………」
愛 「…………」ニコリ
璃奈「どこで聞いたんですか」
愛 「ん、まあ噂はどこからでも漏れ出すからね」
璃奈「誰にも言うなって言っといたのに……」
愛 「アタシね、璃奈のそういうとこ、本当に立派だと思うし、好きだよ」
愛 「璃奈が言わないでほしいなら、誰にも言わない。約束する」
璃奈「…………」 愛 「言っちゃえばアタシの自己満足なんだけど……」
愛 「でも、知っちゃったアタシだけでも、璃奈のこと褒めておきたかった」
愛 「だからさ……それ、アタシのちょっとした尊敬の気持ち。それだけ」
璃奈「…………」
璃奈「そう、ですか」
璃奈「ありがとう……ございます」
愛 「うん」
愛 「一応、高級品の部類だから、味わって食べてね」
愛 「じゃ、後でねー」タタタタ…
璃奈「…………」
璃奈「先輩……」 璃奈「…………」スタスタ
女子「おかえりー」
璃奈「うん」
女子「どしたのそれ」
璃奈「なんでもない」
女子「…………」
女子「そっかあ」
璃奈「……うん」
女子「…………」
女子「味わって食べようね」
璃奈「……うん」 愛 「まあ虎も貴重だし、下手に撃つ訳にもいかなくてさ」
歩夢「あー、確かにスマトラの虎さんって絶滅危惧種でしたしね」
愛 「そう、だから銃は仕舞って素手で……んっ?」
歩夢「どうしました?」
璃奈「……」テクテク
愛 「…………」
歩夢「璃奈ちゃんですね?」
愛 「うん」
愛 「…………」
歩夢「愛ちゃん?」
愛 「…………」
歩夢「また変なこと考えてるでしょ」 璃奈(今月発売のやつは大体……うん、大丈夫)テクテク
璃奈(後は……そうだ、明日は美容院の日だっけ)テクテク
璃奈(美容院嫌いだけど……仕方無いよね)テクテク
璃奈(明日は早めに練習抜けさせて貰うとして)テクテク
璃奈(えーと後は……)テクテク
次の瞬間───
璃奈は、ふとももに生暖かい感触が這うのを感じた
思考が一気にホワイトアウトした
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璃奈「大体先輩はいっつもそうなんだよニーソズリ落ちてるなら言ってくれれば済む話でしょあんなのいきなりされたら痴漢と思うに決まってるし仮に男の人だって悲鳴上げるよ何で愛先輩って動く前に考える事が出来ないのかな幾ら格好良くても考えがトカゲ並みじゃ───」
璃奈「ガミガミガミガミガミガミ───」
愛 「はい……はい……ごめんなさい……」ヒリヒリ
歩夢(まさか、いきなり人のふともも撫でに行くとは)
歩夢(中学から付き合いあっても、愛ちゃんの底は計り知れませんね)
歩夢(今度から愛ちゃんが変な事しだしたら、とりあえず必ず止めに入ろう)
璃奈「ガミガミガミガミガミガミ───」
愛 「はい……はい……」 すごいよかった
いつか続きが来ると期待して待ってる ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています