【SS】トイレの曜さん
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生徒A「おい、今日は金持ってきたんだろうな?」
善子「……」
生徒B「あ?また持ってこなかったのかよ?」
善子「…あんたたちに渡すお金なんてない」
生徒A「んだとゴラァ!」ゴスッ
善子「うぐっ!?」ドサッ
生徒B「…次はぜってー持ってこいよ」スタスタ…
善子「うぅ…」 周りの人「……」
善子「……」ヨロッ
花丸「……」チラッ
善子「あ…」チラッ
花丸「…!」プイッ
善子「……」
善子(はあ…なにやってんだろ、私) 〜〜〜
私、津島善子はいじめられている。
高校に入って間もなくしていじめっ子グループに目をつけられ、毎回お金を持ってくるよう迫られたり理不尽に殴られたりしている。
クラスの人たちもそれを見て見ぬふりで、いつしか誰も私と関わろうとしなくなった。
…そう、あの子も。
国木田花丸は私の幼馴染で、高校に入ってから再会した。最初はとても仲良くしていたが、私がいじめられてるようになって、次第に向こうから離れていってしまった。
まあ、仕方ないことだけど。 べつにあの子を責めたりはしていない。ショックなのはショックだし、悲しいけれど。
そしてお昼休みがやってくると、私はひっそりと教室を抜けてトイレに入る。
誰も使用しない、旧校舎の3階のトイレだ。
ここで私はお昼ごはんを食べている。
教室は居心地が悪いし、食堂は私の嫌いないじめっ子たちがいるから、ここが一番安心できるのだ。
今日も私はトイレに来ると、一番奥の個室にこもる。便座に座ってお弁当を開く。フタを開けると、彩り豊かで美味しそうなおかずたちが顔を見せた。
お母さんはいつも豪華でおしゃれなお弁当を作ってくれる。きっと、友達に見せて話題にできるように頑張ってくれているんだろう。
そう思うと、こうやって一人で誰にも見られることなくお弁当を食べていることが本当に申し訳なく思えてしまう。 善子「…ごめんね、お母さん」ポロッ
不意に涙がこぼれる。どうしようもなく悲しい気持ちがあふれてくる。
善子「うぅ…なんで私ばっかり…」
入学してから3ヶ月、私はずっと耐えてきた。今くらい、泣いたっていいよね…どうせ誰も来ないし…
???「わー、すごく美味しそうなお弁当だね!」
善子「!…だ、誰!?」
チョンチョン
善子「!」バッ
???「やあ、どうもー」
善子「うわあ!?だ、誰よあんた!?」 ???「ああ、ごめんごめん。私は渡辺曜。ていうか、そんなに驚かなくてもいいのにー」
善子「て、ていうかどっから入ってきたのよ!」
曜「うーん、入ってきたというか、もとからいるというか」
善子「え、もとからいたの?でもカギ開いてたし…」
曜「ああ、大丈夫だよ。私はいるようでいないようなものだから」
善子「は、はあ?あんた何言ってるのよ…」
曜「私、幽霊だから」
善子「…は?」 曜「だから、私はここのトイレの幽霊なんだ」
善子「幽霊って…ちょっと、頭大丈夫?」
曜「うーん、やっぱり信じてくれないかあ」
善子「そりゃねえ…だってあんた、足があるじゃないの」
曜「幽霊だって足はあるよ。じゃあ、ちょっと見てて」スッ
善子「なにを…え?」
曜「ほら、これでどう?」フワフワ
善子「あああああんた、う、浮いて…」
曜「ほら、天井にも届くよ」
善子「ていうか危ないから!早く降りなさいよ!」
曜「はーい」スタッ
曜「よいしょと…これで信じてもらえた?」
善子「なんだか信じたくないけど…まあ、とりあえずは信じるわ」 曜「よかったー!じゃ、これからよろしくね、善子ちゃん」
善子「よろしく…って、なんで私の名前知ってるのよ」
曜「なんでって…ほら、お弁当箱に書いてあるし」
善子「え?…あ、ほんとだ」
曜「にしても、本当に美味しそうだねー」ジュルッ
善子「…じゃあ、一口いる?」
曜「え!?いいの!?」
善子「べ、べつにいいわよ」
曜「わーい!じゃあ卵焼きちょーだい!」 善子「し、仕方ないわね…ほら、とっていいわよ」
曜「え?食べさせてくれないの?」
善子「は、はあ?なんで食べさせなきゃいけないのよ…」
曜「善子ちゃんにあーんしてもらいたいなあ…」チラッ
善子「うっ…し、仕方ないわねえ…ほら、口開けて」
曜「あーん…ぱくっ、もぐもぐ…うん、とっても美味しいよ!」
善子「そ、そう?よかった…」
曜「あ、でもごめんね、私、なにもあげられないや…」 トイレには それはそれはキレイな
渡辺曜がいるんやで
だから毎日 キレイにしたら 渡辺みたいに
べっぴんさんになれるんやで 善子「べ、べつにいいわよ…」
曜「また今度、なにか用意しとくから」
善子「まあ、期待しないで待ってるわ」
曜「うん、期待して待っててね!」 〜〜〜
昼食後・教室
善子(なんだったんだろ、さっきのは…)
善子(まさか、幽霊に会っちゃうなんて…)
善子(…また明日も会えるかな?なんて)
善子(って、なに考えてんのよ私ったら。幽霊なんて会わない方がいいに決まってるでしょ)
善子(でも…)
キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン
善子(あ、予鈴だ)
善子(次の授業は…げっ、体育だ)
善子(仕方ない、着替えるか…) 体育館
善子(うわ、やっぱり2人組で柔軟体操…いつも余っちゃうから嫌なんだよね…)
???「あっ、善子は一人かなん?」
善子「うわっ」
???「もう、そんな嫌そうな顔しないの!じゃあ今日も私とやろう!」
善子「べつに、柔軟くらい一人でできますよ…果南先生」
果南「でも二人でやった方がもっとできるから!ほら、前屈からだ!」
善子「はーい…」
果南「じゃあいくよ!いちにの…さーん!」
善子「イタタタタタタ!!?ちょ、ちょっと!ストップストップ!いきなりやりすぎだから!痛い痛い!!」
果南「あははは!もう、体かたいなあ善子は!」
善子「いや、誰でもこうなるから!」
果南「よーし、どんどんいってみよー!」
善子「はあ、もう…」 放課後・廊下
善子(やっと1日が終わった…帰ろ)
???「あ、善子ちゃーん!」タッタッ
善子「げっ」
???「もう、そんなに嫌がらないでよ…私だって傷ついちゃうんだからね…?」ウワメチラッ
善子「いや、そんなことしても可愛くないですから、千歌先生」
千歌「あはは、やっぱ効かないかー」
善子(まあ、普通に可愛いんだけどね、この人)
千歌「善子ちゃん、今から帰り?」
善子「そうですけど」
千歌「じゃあちょっと職員室によって行きなよ!」
善子「私、なにかやりました?」 千歌「いや、ただ単にお話しよっかなって」
善子「じゃあ、さよなら」
千歌「ああ、待ってよ!ちょっとだけでいいから!ね?」
善子「…はあ、分かりました」
千歌「わーい!」
〜〜〜
職員室
千歌「まあ、座ってよ」
善子「…失礼します」 千歌「いやー、それにしてももう暑くなってきたねー」
善子「そうですね」
千歌「でもそうなると夏服になるし、なんかみんな露出が多くなるよね!」
善子「…そうですね」
善子(何言ってんのこの人)
千歌「あ、コーヒーいる?」
善子「遠慮します」
千歌「まあまあ、飲んで行きなよ」
善子「大丈夫です」
千歌「そんなこと言わずに!砂糖とミルクは?」
善子「はあ…じゃあ、お願いします」
千歌「りょーかい!じゃあちょっと待っててねー」スタスタ 善子(まったく…)
この人は高海千歌先生、私の担任だ。
いつもあつかましくて鬱陶しい、正直私の嫌いなタイプの人だ。
なぜか私によく絡んできて、たまにこうやって職員室で話したりもする。
結構若くて、まだ2年目らしい。
見た目は悔しいけど可愛くて、わりと天然だと言えるような性格でもある。
そして。
そして唯一、学校で私と話してくれる人でもある。
千歌「おまたせー。熱いから気をつけてね」
善子「…ありがとうございます」
千歌「ゴクッ…うん、今日も美味しい!」
善子「ゴクッ…って苦っ!砂糖は!?」
千歌「え?あ、忘れてた。テヘッ☆」
善子「この人はまったく…」 千歌「まあまあ、これも大人への第一歩だよ」
善子「先生だって、砂糖入れてるんじゃ…」
千歌「私はブラックだよ?飲んでみる?」
善子「うっ…いや、いいです」
千歌「ふふーん、先生も立派な大人なのだ!」
善子「はいはい、そうですか」
千歌「なんか冷たい!?」
善子「いつも通りです」
千歌「それもそうだねー…それで善子ちゃんは、最近どう?」
善子「どうって…まあ、普通です」
千歌「そっか、普通か」
善子「はい」
千歌「なんか面白いことはあった?」
善子「特になにも」
千歌「そっかそっか。じゃあ、悲しいことは?」
善子「それも特には」 千歌「そっかー。じゃあ、変わったことは?」
善子「べつに…あっ」
千歌「なになに?なんかあった!?」
善子「あ、いや、べつに…」
千歌「なんだー」
善子(さすがに、『幽霊に会った』なんて、信じてもらえないわよね)
千歌「先生はね、最近合コンに行ったんだー」
善子「そうなんですか」
千歌「でもやっぱりいい人はいなかったなあ。みんなパッとしない感じでさ」
善子「はあ」
善子(生徒にする話じゃないでしょそれ) 千歌「善子ちゃんは?恋愛とかしてる?」
善子「いや、そういうのは…ていうかここ、女子校だし」
千歌「それもそうだね。じゃあ、友達は?ちゃんといる?」
善子「そ、それは…って、知ってるでしょ、私に友達いないことくらい」
千歌「あはは、ごめんごめん」
善子「まったく…」
千歌「大丈夫だよ、善子ちゃんなら。きっと友達もできるから」
善子「そうだといいですね」
千歌「うん、この千歌ちゃんが保証するよ!」
善子「いや、いい歳して千歌ちゃんって」
千歌「まだピチピチの20代ですー!」
ギャ-ギャ-…
先生たち(うるさいなあ…) 〜〜〜
家
善子「ただいまー」
善子母「おかえりなさい。今日は遅かったわね」
善子「うん、ちょっとね」
善子母「ご飯できてるから、手洗ったら食べましょ」
善子「はーい」
善子・善子母「「いただきます」」
善子母「今日は学校どうだった?」
善子「べつに…普通」
善子母「そう…お友達と遊んだ?」
善子「うん、まあ」
善子母「勉強、中学のときより難しいでしょ?塾とかは行かなくても大丈夫?」
善子「うん、大丈夫。まだついていけるから」
善子母「そう、ならよかったわ」 善子「…ねえ、ママ」
善子母「なあに?」
善子「ママは、幽霊とか信じる?」
善子母「どうしたの、いきなり」
善子「いや、べつに…聞いてみただけ」
善子母「うーん、そうねえ…信じるかしら」
善子「信じるの?」
善子母「ええ。だって、その方が面白いじゃない?」
善子「そういうものかな…」
善子母「そういうものよ」
善子(…明日、もう一度行ってみよう) 〜〜〜
翌日・昼休み・トイレ
曜「あ、今日も来てくれたんだ!」
善子「ええ…というか、ここにずっといるなら、私が毎日ここに来てるのも知ってるでしょ?」
曜「あはは、まあね」
善子「そういえば、どうして今までは声をかけてくれなかったの?」
曜「え?かけて欲しかったの?」
善子「べ、べつにそういうことじゃないわよ!」
曜「…そりゃあ、幽霊が声かけたらびっくりしちゃうでしょ?」
善子「まあ、そうね…でも結局話しかけてるじゃない」
曜「あはは、どうしてもおしゃべりしたくて」 善子「あなたは、ずっとここに一人でいるの?」
曜「うん、そうだよ。多分もう何年もここにいると思うよー」
善子「何年もって…暇じゃないの?」
曜「暇といえば暇だけど、基本的にいつも寝てるから大丈夫かな」
善子「幽霊にも寝るとかあるんだ…」
曜「というか、ずっとここにいるから、今どのくらい経ったのかも分からないや。ねえ善子ちゃん、今って何年?」
善子「今は2018年よ」
曜「え!?未来じゃん!じゃあ私が死んでからもう10年くらい経ってるんだ…」
善子「そんなに!?あなた、よく10年もこんなところに一人で居られるわね…」
曜「えへへー」
善子「べつに褒めたわけではないんだけど…」 曜「でも善子ちゃんが来てくれるようになってよかったよ!やっぱり誰かと話したりするのは楽しいなー」
善子「あっそう…」
曜「ねえねえ、なんで善子ちゃんはこんなところでお弁当食べてるの?」
善子「え?そ、それは、その…」
善子(や、やばい、いじめられてるのがバレる!)
曜「あ、分かった!」
善子「…!」
曜「さては善子ちゃん…」
善子「……」
曜「食いしん坊だな!?」
善子「…へ?」 曜「教室で食べると友達におかず取られちゃうから、ここでこっそり食べてるんでしょ?」
善子「…そ、そうよ、悪い?」
曜「あはは、まあ気持ちは分かるよ」
善子「で、でしょ?」
曜「うんうん!」
善子(あ、危なかったー…)
曜「それよりも善子ちゃん」
善子「なに?」
曜「今日のお弁当はどんな感じかな?」ワクワク
善子「…あげないわよ?」
曜「えー、なんでー?」
善子「なんでって、そりゃあ…」
曜「もう、1個くらいいいじゃん、友達なんだしさ!」 善子「と、友達?」
曜「うん。私たち、友達でしょ?」ニコッ
善子「友達……し、仕方ないわね!じゃあ特別になにか1個あげるわ!」
曜「わーい!じゃあウインナーを貰おうかな」
善子「まったく…はい、どうぞ」
曜「あーん」
善子「…また?」
曜「あーーん」
善子「はあ…じゃあ、はい」
曜「はむっ…もぐもぐ…うーん、やっぱり善子ちゃんのお弁当は美味しい!」
善子「そう、それは私のお母さんが喜ぶわ」
曜「私が美味しかったって言ってたって、伝えといてよ!」
善子「はいはい…ったく、元気な幽霊ね」 〜〜〜
放課後・教室
善子(今日も終わった…帰ろ)ガタッ
生徒A「おーい、津島さーん」
生徒B「ちょーっとついて来てもらえるかなー?」
善子「…なに?」
生徒C「いいから来いっつってんだよ!」ゴスッ
善子「ぐふっ!」
生徒A「ほら、はやくこいよ」
善子「…分かったわよ」 〜〜〜
体育館裏
生徒A「お前さあ、いつも私たちが遊んでやってもクールに振舞ってるよな?」
善子「…べつに」
生徒B「そういうのがそうだって言ってんだよ!」
生徒C「お前、それで私らに対抗してるつもりなの?」
善子「そういうつもりじゃないわよ…」
生徒A「まあ、この際もうそれはいいんだよ…今日は徹底的にお前の立場を分からせてやろうと思ってたわけ」
善子「……」
生徒A「おい、押さえとけ」
生徒B・C「ガシッ」
善子「ちょ、ちょっと、なにすんのよ!」 生徒A「よし、これで身動きは取れないな」
生徒B「おら、暴れんなよ」
生徒A「じゃあいくぞ」
善子「…なにするつもり?」
生徒A「大丈夫、痛いことはしない」カッタ-カチカチ
善子「!?そ、それはなに!?」
生徒A「このカッターのこと?べつに…お前の制服を切るだけだよ」
生徒B「それで裸の写真を撮ったらちゃんと解放してやるから」
生徒A「すぐ終わるさ…ほら、こんな風に」ビリッ
善子「や、やだ!離して!やめてよ!」
生徒C「大人しくしろ!」
生徒B「あんまり暴れると刃に当たってケガするぞ?」 善子「くっ、この…」ジロッ
生徒A「あ?なんだその目は…そうだ、お前結構可愛い顔してるよな」
善子「…!?」
生徒A「そんな顔に傷がついたら…どうだろうな?」カチカチ…
善子「や、やめて…それは嫌…嫌だ…」
生徒A「ふふふ…」カチカチ…
千歌「先生方!!!こっちです!!はやく!!!」
生徒B「や、やべえ!高海の声だ!」
生徒C「とりあえず逃げよう!」
生徒A「チッ…覚えとけよ」タッタッタッ…
善子「……」ガクッ 千歌「善子ちゃん、大丈夫!?」
善子「…べつに、どうってこと…」
千歌「……」ダキッ
善子「!」
千歌「怖かったよね…ごめんね、すぐに助けてあげられなくて…ごめんね…!」ギュッ
善子「…うぅ…怖かった…怖かったよぉ…」ウルッ
千歌「よしよし、もう大丈夫だからね…」
善子「うわあぁぁぁぁん!!」
千歌「大丈夫、大丈夫だから…」
千歌「――今度は絶対、守るから」 〜〜〜
職員室
千歌「これで…よしっ!」
善子「あの…ありがとうございます」
千歌「いいよいいよこのくらい!幸い、ちょっとしか切られてなかったし!」
善子「いや、それもなんですけど、その…助けてくれて、ありがとうございました」
千歌「そんな…違うよ、私は感謝されるようなことはしてない」
善子「でも」
千歌「本当に、違うんだよ。私はずっと、善子ちゃんがいじめられているのに気づいてた…だけど、なにもしてあげられなかった」
善子「先生…」
千歌「ごめんね、善子ちゃん。私、先生失格だよ…困っている生徒に、なにもしてあげられないなんて…ホント、情けないよ」
善子「…そんなことないです。先生には、いつも感謝してます」 千歌「…いつも?」
善子「だって先生、毎日私に声をかけてくれるじゃないですか。ずっとひとりぼっちの私に、先生だけはいつも」
千歌「うぅ…善子ちゃあん…」ウルウル
善子「って、先生!?」
千歌「先生、なんでもするから!善子ちゃんが困ってたらいつでも助けるから!だから善子ちゃん…」
善子「…?」
千歌「もうひとりぼっちなんて、思わないでね…」
善子「!…はい」 千歌「うむ、いい返事だ!」
善子「…もう、台無しですよ」
千歌「えへへ」
善子「でも、なんで先生は私が危ない事されようとしてるって分かったんですか?」
千歌「ああ、それなら、同じクラスの国木田さんが教えてくれたんだ」
善子「…あの子が?」
千歌「うん、なんかすごい慌てた顔して私のところに来て、『善子ちゃんがやばいずら!』って言ってきたの」
善子「…そう、ですか」
千歌「善子ちゃんもちゃんと友達いるじゃん」
善子「……」 〜〜〜
夜・自室
善子「なんであいつが…」
善子「てか、そんな回りくどいことするくらいなら、自分が助けに来なさいよ!」
善子「…なんて」
善子「それはさすがに無理よね…そんなことしたら、今度は自分がいじめの標的になっちゃうから」
善子「あー、もう、やめやめ!気持ちが暗くなっちゃうわ。今日ははやく寝よ…」 〜〜〜
「――ちゃんなんか、大嫌い!」
「こっちだって!もう知らないから!バカ!」
「――ちゃんなんて、――ちゃんなんて…もう消えちゃえ!!」
「…!」ダッ
「……あっ」
「私、なんてことを…」
「――ちゃんに『消えちゃえ』だなんて…どうしよ…どうしよう…」
〜〜〜 休日・朝・善子部屋
チュンチュン…
善子「…うーん、よく寝たわ。今日は休みか…なにしよう」
善子母「善子、おはよう。入るわよ」
善子「あ、ママ、おはよう。どうしたの?」
善子母「ねえ善子、お友達が来てるわよ」
善子「え?友達?誰?」
善子母「曜ちゃん?って子だけど」
善子「曜!?なんでここに!?」ダッ
善子母「ど、どうしたのよそんなに慌てて?」
善子「曜!?」ガチャッ
曜「やっほー!よーしこー!」 善子「なんであんたがこんなところにいるのよ!?」
曜「いやー、なんかよく分からないけど、来れちゃったんだよね」アハハ
善子「来れちゃったって…」
曜「多分、善子ちゃんのお弁当を食べたから、ここにだけ来れたんじゃない?」
善子「てことは…他のところには行けないの?」
曜「うん、そうみたいだね」
善子「もう、よくわかんないわね…とりあえず、上がりなさいよ」
曜「わーい!お邪魔しまーす!」 〜〜〜
善子母「ゆっくりしていってね、曜ちゃん♪」
曜「ありがとうございます、善子ちゃんのお母さん!」
善子母「ほんとに礼儀正しいいい子ね〜…善子のこと、これからもよろしくね」
曜「はい、こちらこそ!」
善子「ちょっとママ、やめてよ…」
善子母「うふふ、じゃあね」ガチャ
善子「まったく…」
曜「それじゃ、なにしよっか?」
善子「うーん、と言っても、テレビゲームくらいしかないのよね」
曜「おお、いいね!今のテレビゲームってどんな感じなんだろう…」ワクワク
善子「まあ、10年前に比べたら進化してるわよ」
曜「やろうやろう!」 善子「じゃあ…とりあえずスマブラでもやりましょ」
曜「スマブラなら私もやったことあるよ!ちょうど私が死ぬ何ヶ月か前にWiiで友達とやってたなあ」
善子「なによそのなんとも言えないエピソードは…」
曜「って、なにこのハード!Wiiじゃないの!?」
善子「これはスイッチっていうゲーム機よ」
曜「へえー、すごいねえ…」
善子「じゃ、やりましょ」 〜〜〜
曜「わあー!映像がすごく綺麗!」
曜「すごーい!キャラがたくさん!」
曜「くっ、善子ちゃん強いな…!」
〜〜〜 曜「いやー、楽しかったねー!」
善子「そうねー」
善子(まさかスマブラで1日潰れるとは…)
善子母「曜ちゃん?」ガチャッ
曜「あ、お母さん」
善子母「もう遅いけど、今夜は泊まっていかない?」
曜「いいんですか!?」
善子母「もちろん♪善子も嬉しいわよね?」
善子「べ、べつに私は…まあ、いいんじゃない?」
曜「わーい、今日は善子ちゃんと一緒に寝れる!」ギュ-
善子「ちょっ、くっつくなー!」
ギャ-キャ- 〜〜〜
善子「じゃあ、電気消すわよー」
曜「うん、おっけー」
善子「おやすみ」カチッ
曜「おやすみー」
善子「……」
曜「……」
善子「……」
曜「…………ねえ、善子ちゃん」
善子「……」 曜「善子ちゃんってば。起きてるでしょ?」
善子「…なによ」
曜「私、友達と遊ぶなんて久しぶりだから…今日はすごく楽しかったよ」
善子「…そう」
曜「うん」
善子「…べつに」
曜「?」
善子「べつに、またいつでも来なさいよ」
曜「善子ちゃん…!」 善子「…もう、早く寝るわよ!」
曜「えへへ…おやすみ、善子ちゃん」
善子「おやすみ」
善子「……」ニコッ 〜〜〜
月曜・朝・教室
善子「……」ガラガラ
生徒A「…チッ」
生徒B・C「……」
善子(大丈夫、大丈夫…)
生徒A「よお、津島」
善子「…なに」
生徒B「この前は運が良かったな」
生徒C「でも次は…楽しみにしとけよ」
善子「…!」ゾクッ
キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン 千歌「みんなおはよー!」ガラガラッ
千歌「さあ、今日も元気にいってみよー!」
千歌「みんな、席についてねー」
生徒A「……」
千歌「ほら……席について?」ジロッ
生徒A「…チッ」スタスタ
千歌「…よーし、ホームルーム始めるよ!」 〜〜〜
昼休み
善子「曜〜」
曜「おっ、善子ちゃん!この前はどうも!」
善子「ええ」
曜「今日もお弁当豪華だねー」
善子「まあね」
曜「…どうしたの?元気なさそうだね」
善子「べつに、そんなことないわよ」
曜「…なにかあったなら聞くよ?ほら、私って口が硬いし」
善子「だれとも喋らないってだけでしょ」
曜「えへへ、まあね」 善子「ていうか、曜はこのトイレから出られないの?」
曜「うん、そうだよ。でも、善子ちゃんの家だけは行けるんだ」
善子「私の家まではどうやって来るの?」
曜「なんかね、『善子ちゃんの家に行きたい!』って念じると、いつのまにか善子ちゃんの家についてるんだよね」
善子「そうなんだ」
曜「うん。それで、善子ちゃんの話に戻るけどさ」
善子「ほんとに大したことじゃないから」
曜「でも、大したことじゃないっていうことは、なにかあるんでしょ」
善子「それは…」
曜「お願い、話してよ…私、善子ちゃんの友達として、ちょっとでも力になりたいんだ」
善子「曜…」
曜「お願いだよ、善子ちゃん」
善子「…分かったわ」 〜〜〜
善子「……っていう感じよ」
曜「そうだったんだね…ごめん、私、なにも知らなかった」
善子「べつに、あなたが謝ることじゃないわ」
曜「だからいつもここでお弁当食べてたんだね…でも、許せないよ、善子をいじめてる奴ら!今度会ったら、私の霊能力でぶっ飛ばしてやるのに!」
善子「ありがとう、その気持ちだけで嬉しいわ。それに、まだ1人、私の味方がいるの」
曜「そうなの?」
善子「ええ、私のクラスの担任の先生」
曜「そうなんだ」 善子「いつもそそっかしくて、たまに鬱陶しいときもあるけど…でも、優しくて、生徒思いで、とっても頼りになるの」
曜「へえ〜。なんだか、私の友達に似てるなー」
善子「曜の?」
曜「うん。私の親友だよ」
善子「親友…」
曜「あ、でも私が死ぬ直前に喧嘩しちゃってさ。『曜ちゃんなんて消えちゃえ!』なんて言われちゃって…それが最後の言葉になっちゃった」
善子「曜…もしかして」
曜「違う違う!私はそれで自殺したんじゃないから!偶然、ここのトイレに入ってたら心臓発作で…」
善子「そう、なんだ…」 メイ*; _ ;リ 涙が止まらないわ‥
メイ*σ _ σリ あっ。楽しみにしてます 曜「でも…もしかしたらその子は気にしてるかも…自分があんなこと言っちゃったから…って」
善子「曜……優しいのね」
曜「優しい?私が?」
善子「だって、そうじゃない?自分が死んでも、喧嘩別れしたその友達のことを心配するなんて」
曜「そうかな…」
善子「そうよ、ほんとに…」
善子(私とは、まるで違う) 〜〜〜
放課後・図書室
善子「借りてた本を返しに来たけど、図書室っていつも誰もいないわね…」
善子「まあ、私的には嬉しいんだけど」
???「善子ちゃん…?」
善子「え?――ずら丸」
花丸「ど、どうしたの、図書室に来るなんて」
善子「いや、ちょっと、本を返しに…」
花丸「そう…」
善子「あんたこそ、なんで…」
花丸「まるはいつもここにいるずら」 善子「そうなの…」
花丸「うん…」
善子「そ、それじゃ――」クルッ
花丸「あ、善子ちゃん!」
善子「な、なに?」
花丸「えっと、その…」
善子「……」
花丸「…ごめんね」
善子「…!」
花丸「……」
善子「……」スタスタ…
花丸「あっ…」
花丸「善子ちゃん…」 〜〜〜
夜・善子部屋
善子「はあ…」
善子(分かってる、花丸に悪意がないことくらい)
善子(あの子が私を遠ざけるのだって、仕方ないこと…)
善子(でも、でも…)
善子母「善子、お友達から電話よ」ガチャッ
善子「電話?誰から?」
善子母「千歌ちゃんって子だけど…クラスメイトかしら?」
善子「ブッ!?なんで…」
善子母「あら、やっぱりクラスメイト?」
善子「ま、まあ、そんなところ」 善子母「ほら、早く出てあげなさい。じゃあね」バタン
善子「うん……もしもし?」
千歌『あ、善子ちゃん?』
善子「なにしてるんですか先生、家の電話に友達名乗ってかけてきて…」
千歌『えへへー、驚いた?親御さんに先生ってバレたらまずいから、友達ってことにしたのだ!』
善子「はあ、まったく…それで、どうしたんですか?」
千歌『ああ、そうだった…いまからちょっとドライブでも行かない?』
善子「ええー、なんですかそれ…生徒を夜中に誘うなんて、バレたらまずくないですか?」 千歌『だからバレないようにしてるんだよ』
善子「まったく、あなたという人は…」
千歌『それで、どうする?嫌だったら全然いいんだけど…』
善子「…まあ、行ってもいいですけど」
千歌『ホントに!?』
善子「はい」
千歌『じゃあ、善子ちゃんの家の近くのコンビニで待ってるから!20分くらいしたら着くと思う!』
善子「分かりました」
千歌『じゃあまた後で!』 〜〜〜
コンビニ前
千歌「あ、善子ちゃん!こっちこっち!」
善子「こんばんは」
千歌「こんばんはー。なんかこんな時間に会うなんて、ちょっと緊張するね!」
善子「まあ、ふつうに悪いことしてるわけだし」
千歌「このくらいいいじゃ〜ん、真面目なんだから善子は」
善子「先生が不真面目なだけです」
千歌「さ、とりあえず乗ってよ」 善子「…お邪魔します」
千歌「どうぞどうぞ」
善子「ふう、乗り心地は割といいわね」
花丸「そうずらね」
善子「……」
花丸「……」
千歌「ふふっ」
善子「って、なんであんたがいるのよ!?」
花丸「……」 善子「千歌先生、これはどういうこと?」
千歌「どうもこうも、そういうことだよ」
善子「そういうことって…」
千歌「それじゃ、しゅっぱーつ!」ブゥ-ン
善子「まったくもう…」
花丸「……」
善子「……」
千歌「あ、音楽かけようか?なにがいい?」
善子「適当でいいです」
花丸「おらもなんでもいいずら」 千歌「じゃあ、千歌ちゃんベストセレクションでいこうか!」カチャッ
ダカラシュ-ント-シ-ナイデ-♪ネ-ハ-ナシキ-クヨ-♪
善子「……」
花丸「……」
千歌「フンフフン♪」
善子「……」
花丸「……」
善子・花丸「「あのっ!」」
善子「あ、ごめん、なに?」
花丸「いやいや、善子ちゃんから」 善子「じゃあ、私から…コホン…えっと、久しぶりね」
花丸「…今日会ったずら」
善子「いや、そうだけど…なんていうか、こうやってちゃんと話すのが」
花丸「そうずらね」
善子「それで、そっちは?」
花丸「その…善子ちゃん、怒ってる?」
善子「…なんで?」
花丸「それは…まるが、最低な友達だから」
善子「……」 花丸「ううん、ごめん。もう友達なんかじゃないよね…」
善子「……」
花丸「ほんと、ごめん…ごめんなさい…!」
花丸「まる、自分のことばっかりで…善子ちゃんが苦しんでるの知ってるのに、なにもしてあげられなくて…うぅ…」ポロポロ
善子「ほんと、最低よ」
花丸「うん、そうだよね…」ボロボロ
善子「最低だわ、私」
花丸「…え?」 善子「ずら丸だって、ちゃんと私のこと考えてくれてるのに、そんなこと知ってるのに、あんたのこと、ちょっと憎んでた…ごめんなさい、あんたはなにも悪くないのに」
花丸「なんで…なんで善子ちゃんが謝るずら…悪いのはまるの方なのに…」
善子「なら、お互い様ってことにしましょう…あんたも悪いし、私も悪い。そうすれば、私たち、恨みっこなしでしょ?」
花丸「善子ちゃん…善子ちゃんは優しすぎるよ…」
善子「あら、今頃?そりゃ私、善い子だから」
花丸「えへへ、そうだったずらね」 善子「だから…」
花丸「…?」
善子「『もう友達なんかじゃない』なんて、言わないでよお…」ポロポロ
花丸「…!うん…うん…!」ポロポロ
ズ-ット-イッショダト-♪オ-モ-ウンダ-♪
千歌「…そう、大丈夫だよ」ボソッ
La-la- la-la la la-… 〜〜〜
翌日・教室
生徒A「よお、津島。ちょっと来いよ」
生徒B「今日こそは一緒遊ぼうぜ?」
善子「…やだ」
生徒C「あ?なんだよお前、早く来いよ!」グイッ
善子「や、やめっ――」
花丸「やめるずら!」ガシッ
生徒C「な、なんだよ国木田?…ってお前握力強っ!」
花丸「善子ちゃんを離すずら」 生徒C「チッ」パッ
生徒A「国木田…お前もどうなるか分かってんだろうな?」
生徒B「お前も津島と同じように――」
???「もうやめようよ」ガタッ
花丸「ルビィちゃん!」
ルビィ「こんなことしちゃダメだよ…ルビィも、津島さんと花丸ちゃんの味方だから」
善子「黒澤ルビィ…」
ザワザワ… 生徒A「…チッ、面白くねえ」スタスタ
生徒B・C「「…フンッ」」スタスタ
ルビィ「ピ、ピギィ…」ヘナヘナ
花丸「あ、ルビィちゃん!」
善子「ちょっと、大丈夫?」
ルビィ「う、うん。でもやっぱりちょっと怖かったかも…」
花丸「もう、無茶するから…」
善子「でも、とっても嬉しいわ…ありがとう、黒澤さん」
ルビィ「ルビィでいいよ」
善子「じゃあ、ルビィ。私のことも善子って呼んで」 ルビィ「分かった、善子ちゃん。それと…今までごめんなさい!ルビィも、見て見ぬ振りしてたから…」
善子「いいの、気にしないで」ニコッ
ルビィ「…ありがとう。優しいんだね、善子ちゃんは」
花丸「なんたって、善子ちゃんは善い子だからね」
善子「もう、からかわないで」
花丸「あははっ」
ガラガラッ
千歌「よーし、今日もホームルーム始めるよー!」
千歌(チラッ)
善子(グ-)
千歌(よかった…) 〜〜〜
昼・教室
花丸「善子ちゃん、一緒にお弁当食べるずら!」
善子「うん、もちろ――あ、ごめん、今日はちょっと」
花丸「なにかあるずら?」
善子「うん、ちょっとね。ごめん」
花丸「ううん、大丈夫ずら」
善子「じゃあ、行ってくる」
花丸「はーい」
善子(曜に報告しなきゃ…友達ができたって) 〜〜〜
トイレ
曜「やあ、よーしこー!」
善子「相変わらずテンション高いわね」
曜「そうかなー?」
善子「まあいいわ。それより聞いてほしいの」
曜「どうしたの?」
善子「やっとね、友達ができたの」
曜「おお、よかったじゃん!」
善子「いや、友達ができたっていうか、仲直りしたって方が正しいかしら」
曜「仲直り?」 善子「そう、幼稚園の幼馴染で、高校に入って最初の頃は仲良かったんだけど、だんだん離れていって…でも、ちゃんと仲直りできた」
曜「そっか…善子ちゃんは仲直りできたんだね」フフッ
善子「あっ、ごめんなさい…曜の過去のこと知ってるのに…」
曜「ううん、大丈夫だよ。善子が嬉しそうで、私も嬉しいから!」
善子「曜…ありがとう」
曜「うん!それで、どうやって仲直りしたの?」
善子「ああ、それはね、前に言った先生が取り持ってくれたの」
曜「へえー、ほんとにいい先生だね」 善子「うん、本当に…千歌先生には感謝してもしきれないわ」
曜「――え?」
善子「?」
曜「千歌先生って…その先生のこと?」
善子「そうだけど…」
曜「その先生、苗字は?」
善子「えっと…たしか"高海"だったっけ」
曜「その先生の特徴は?」
善子「えっと…まだ若くて、結構幼い顔で可愛くて、あとは…」
曜「匂いは?」
善子「あ、そうだ、みかんの匂いがするわ」
曜「…やっぱり」
善子「どうかしたの?」
曜「その人だよ……私の親友だった子」 〜〜〜
放課後・廊下
千歌「フンフフーン♪」スタスタ
善子「あの、千歌先生」
千歌「あ、善子ちゃん!どうしたの?珍しいね、善子ちゃんから話しかけてくるなんて」
善子「ちょっとお話しませんか?」
千歌「もちろん!」 職員室
千歌「どうぞ、座ってよ」
善子「失礼します」
千歌「いやー、やっと善子ちゃんも心を開いてくれたかー」
善子「はい。私、先生のこと大好きですよ。先生には救われてばっかりだし…」
千歌「ど、どうしたのいきなり…あはは、改めてそう言われると恥ずかしいな…」
善子「本当に、ありがとうございます」ペコッ
千歌「も、もう、やだなあ、やめてよ〜」テレテレ
善子「それと、教えてほしいことがあるんですけど」
千歌「ん?なになに?」 善子「先生は、親友っていますか?」
千歌「…!」
善子「例えば、幼馴染とか」
千歌「……ううん、いないよ」
善子「え?」
千歌「私には、親友なんていない」
善子「そう…なんですか?」
善子(なんで…?)
千歌「うん、そうだよ…」
善子「で、でも――」
千歌「ほら、私の話なんていいじゃん!それより善子ちゃん、花丸ちゃんとはうまくいきそう?」
善子「え?…あ、はい、大丈夫だと思います」
千歌「そっかそっかー、よかったー!」
善子「……」
善子(今、話をそらしたような…) 〜〜〜
放課後・帰り道
善子(結局、千歌先生が曜ちゃんの言う人かどうか分かんなかったな…)スタスタ
善子(って、話し込んじゃってもう真っ暗じゃない!)
善子(はあ…はやく帰って…ん?)
???「……」ボ-
善子(あの人…海の前でボーッと立って何やってんだろ)
???「バカーー!!!!」
善子「うわっ!?」
???「なんで…なんでこんなことになるのよ…」ウゥ... 善子(びっくりしたー、いきなり叫ぶなんて…って、あの人…泣いてる?)
???「もう…バカ千歌…」
善子(…!今千歌って…)
???「…あら?」
善子「あっ」
???「ごめんなさい、大声出しちゃって」
善子「い、いえ」
???「こんばんは、私は桜内梨子」
善子「どうも、津島善子です…」
善子(…なんでいきなり自己紹介?) 梨子「あ、その制服…もしかして浦の星の生徒さん?」
善子「はい、そうですけど」
梨子「わあー、懐かしいなー!私も浦の星の卒業生なの」
善子「そ、そうなんですか?」
梨子「うん。あ、てことは千歌ちゃんとも知り合いだったり?」
善子「千歌先生のこと知ってるんですか?」
梨子「うん、友達なんだ♪」
善子(これは…先生のことを聞くチャンス!)
善子「あ、あの…梨子さん!」 梨子「どうしたの?」
善子「千歌先生のこと、教えてくれませんか?」
梨子「あら、知りたい?」
善子「ぜひお願いします」
梨子「うーん、それはいいけど、タダってのも…ねえ?」
善子「じゃあ、どうすれば…あ、でもお金はあんまり持ってないし…」
梨子「お金なんていらないわ。そうねえ…じゃあ!」 〜〜〜
梨子宅
善子「お邪魔しまーす…」
梨子「どうぞー、楽にしてってね」
善子「はあ…」
善子(なんで私、こんなことになってるのよ…)
梨子「じゃあ早速、やってもらおうかしら」
善子「だから、何をすれば…」
梨子「ほら、こっち来て」グイッ
善子「あっ、ちょっ…って、どうするんですか、壁際に来て」
梨子「今からあなたには、壁ドンをしてもらいます」
善子「…え?」 梨子「だから、壁ドンをしてもらうわ」
善子「いや、聞こえたから…じゃなくて、壁ドンって…私が梨子さんに?」
梨子「そうよ。よっちゃん、なかなか女の子にしてはカッコいい顔してるし」
善子「よっちゃんって…じゃあ、やれば教えてくれるんですか?」
梨子「もちろん♪あ、壁ドンした後のセリフは、『なあ梨子、俺以外を見るなよ』でお願いね」
善子「うわあ…なんかやばい人だ…」
梨子「ほら、やるよ!」カベモタレ
善子「はあ、分かりました…ドン! …なあ梨子…その…俺以外…み、見るなよ…?」
梨子「はあ…」 善子「ど、どうですか?」
梨子「ダメ。ぜんっっっぜんダメね」
善子「えぇー…」
梨子「まずは恥を捨てなさい。そこがスタートラインよ」
善子「うぅ、そんなこと言ったって…」
梨子「あらー?別にいいのよ?教えてあげなくたって」ニヤッ
善子「くっ…もう一回やります」
梨子「どうぞ?」
善子「…ドン! なあ梨子…俺以外を…み…見るなよ…」
梨子「くぅっ、さっきよりは良いじゃない…でもまだね!完全にキャラに入りなさい!」 善子「完全にキャラに入る…なるほどね」
梨子「…?」
善子「それなら私の得意分野よ…ドンッ!!」
梨子「!?」
善子「なあ梨子……俺だけを見ろよな…」アゴクイッ
梨子「☆\8☆%々19○+5×<3$!?!?」
善子「どうよ?」
梨子「あ…ありがとうございましゅ…」プシュ-
善子「うわあ…」 〜〜〜
梨子「で、千歌ちゃんのなにを知りたいのかしら?」
善子「いや、その前に鼻血…」
梨子「大丈夫、すぐ止まるから。それで?」
善子「…ずばり、先生の友達のこと」
梨子「あー、なるほどね」
善子「やっぱり、なにかあったんですか?」
梨子「うん、まあ…ていうか、そんなことどこで知ったの?」
善子「それは…色々とありまして」
梨子「ふーん…まあいいわ、教えてあげる」
善子「!」
梨子「うーん、どこから話そうかしら…」
善子「……」 梨子「…千歌ちゃんにはね、とっても仲良しな幼馴染がいたの。その子とはいつも一緒にいて、ホントに姉妹みたいだったわ」
善子「……」
善子(曜のことだ…)
梨子「2人はずっと喧嘩もしたことなかったらしいんだけど…高校2年のとき、ちょっとしたことで初めて喧嘩になっちゃったの」
善子「…それで?」
梨子「うん…その幼馴染の子は、あんまり人が来ないトイレの個室に入っちゃって…それで…」
梨子「そこで亡くなったの」
善子「…!」
善子(やっぱり…)
梨子「まあ、こんなところかしら。気にはなるだろうけど、あんまりこの話はしないであげてね…千歌ちゃん、まだ気にしてるみたいだから」
善子「はい……あの、もうひとつ聞いてもいいですか?」
梨子「なあに?」 善子「梨子さんは、その子はなんで死んじゃったと思いますか?」
梨子「そうね…普通に考えれば自殺ってことになるんだろうけど、私はそうは思わないかな」
善子「どうして?」
梨子「だってあの子、そんなことするような子じゃなかったから」
善子「…たしかに」
梨子「ん?たしかに?」
善子「あ、いえ、なんでもないです!」
梨子「まあいいわ…そろそろ遅くなるし、送っていくわよ」
善子「あ、ありがとうございます」
梨子「うふふ、意外としっかり者なのね、よっちゃん」
善子「なんですか、意外とって」
梨子「あはは、もう、可愛いんだから♪」
善子「なんなんですか…」 〜〜〜
夜・善子部屋
善子(やっぱり、曜の親友は千歌先生で間違いない…)
善子(でも、どうして千歌先生はあんな風に言うんだろう…?)
善子(先生があんな感じだってこと、曜には言いづらいなあ…)
善子「曜になんて言おうかな…」ボソッ
曜「なにが?」
善子「なにがって……うわぁ!?」
曜「やっほー、よーしこー!」
善子「なんであんたがここにいるのよ!」 曜「いやあ、千歌ちゃんのことが気になったもんで」エヘヘ
善子「まったくもう…ていうか、わりと移動自由なのね」
曜「あのトイレと善子ちゃんの家に限っては私は自由なのであります!」
善子「あっそう…」
曜「それで、千歌ちゃんはなんて?」
善子「あ、えっと、それは…」
曜「…なるほど、だいたい察したよ」ハァ
善子「曜…」
曜「千歌ちゃん、まだ気にしてるんだね…千歌ちゃんのせいじゃないのに」
善子「…どういうこと?」
曜「きっと千歌ちゃん、『自分には親友なんていない』とか言ったんでしょ?」
善子「…そう、よく分かるわね」 曜「そりゃ、親友だからね。多分千歌ちゃん、自分のせいで私が死んだと思ってるんだよ。それで、『私には親友でいる資格はない』なんて考えてるんだ」
善子「そういうこと…」
曜「ねえ善子ちゃん」
善子「…なに?」
曜「私、千歌ちゃんに会いたい。会って、話したいよ」
善子「…そうね、2人で話し合うべきだわ。こんな機会、滅多にないだろうし」
曜「でも千歌ちゃん、死んだはずの私が現れたら、やっぱり驚くかな?」
善子「そりゃあそうでしょうけど…というか、その前に曜と会ってくれるかしら?」
曜「まあ、そこは善子の技量が試されるところだね」
善子「…まあ、頑張って連れてくるわ」
曜「おお、頼りになる〜!」グイグイッ 善子「ちょっと、やめなさいよ!もう!」
曜「えへへ〜…と、それじゃあそろそろドロンするであります!」
善子「本当にドロンしてるじゃない」
曜「やっぱり本物が使うと貫禄あるでしょ?」
善子「べつに貫禄はないけど」
曜「もう、そこはなんでもいいじゃん!」
善子「はいはい…ていうか、泊まっていけばいいのに」
曜「いやあ、そんなに頻繁にお世話になるのも悪いからさ」
善子「そう…じゃあ、またね」
曜「うん、千歌ちゃんのこと、よろしくね」
善子「まあ任せなさい」グ-
曜「ヘヘッ」グ- 〜〜〜
翌日・昼休み
花丸「善子ちゃん!お弁当一緒に食べるずら!」
善子「ええ、食べましょう」
ルビィ「ルビィも一緒に食べる!」
花丸「もちろんずら!」
善子「3人で食べましょ」
ルビィ「うん!」
花丸「わあー、善子ちゃんのお弁当、すごく美味しそうずら!」
善子「えへへ…そうかしら?」
ルビィ「善子ちゃんのお母さんすごい!」
善子「ありがとう…きっとママも喜ぶ――」
ガシャッ!! 生徒A「おおっと、ごめんごめん、手が当たっちゃって弁当ひっくり返しちゃったよ」
グチャッ!!
生徒B「うわっ、気づかずに踏んじまったじゃん」
生徒C「ったく、汚ねえなー」
花丸「ちょっと!なにするずら!?」
生徒A「偶然当たっちゃっただけだって。すまんすまん」クスクス
ルビィ「最低…こんなの最低だよ!」
生徒B「あ?なんだと黒澤?」
ルビィ「うゆっ…負けないもん…」
生徒C「お前も覚えとけよ」
生徒A「じゃあな」スタスタ
生徒B・C「……」スタスタ
善子「……」 花丸「善子ちゃん…大丈夫?」
ルビィ「ほ、ほら、ルビィたちのおかず、一緒に食べよう?」
善子「うん、ありがと…なんであんなことするのかしら」
花丸「ほんとだよね…まる、許せないずら」
善子「……」 〜〜〜
放課後・職員室
善子「あの、千歌先生」
千歌「どうしたの?」
善子「聞いてほしい話があるんです」
千歌「なになに?」
善子「先生の、親友の話です」
千歌「!」
善子「話は、梨子さんから聞きました」
千歌「梨子ちゃん?梨子ちゃんと知り合いなの?」
善子「はい、まあ」
千歌「そっか、聞いちゃったか…」
善子「聞いちゃいました」 千歌「どう?幻滅したでしょ?私、本当は最低の人間なんだ」
善子「そんなことないです」
千歌「…善子ちゃんは優しいね」
善子「…そんなことないです」
千歌「でも、本当に私は最低なんだよ…なんてったって、親友だった子を、殺したんだから」
善子「先生のせいじゃないです」
千歌「ううん、私のせいだよ」
善子「いいえ、違います。きっとそれは――」
千歌「私のせいなの!!」
善子「ビクッ!?」 ザワザワ...
千歌「私が…私が『消えちゃえ』なんて言ったから…曜ちゃんは…」
善子「先生…」ダキッ
千歌「!…もう、善子ちゃんは本当に優しいなあ…」
善子「先生…もしも」
千歌「?」
善子「もしも曜ちゃんに会えるとしたら、会いたいですか?」
千歌「もしも会えるなら…そりゃ、会いたいに決まってるよ」
善子「そうですか…じゃあ、行きましょう」
千歌「行くって、どこへ?」
善子「それは…曜ちゃんのところ、です」 〜〜〜
トイレ
千歌「ここって…」
善子「ここに曜がいます」
千歌「…え?いやいや、なに言ってるの善子ちゃん、だから曜ちゃんは死んだって――」
善子「います」
千歌「!…善子ちゃん…冗談言ってるんじゃないんだね?」
善子「はい」
千歌「分かった、信じるよ」
善子「……」
千歌「…曜ちゃん、いるの?」
ガタッ
千歌「!…曜ちゃん?」 善子「……」
千歌「本当に…曜ちゃんなの?」
ガチャッ…
曜「千歌ちゃん…久しぶりだね」ニコッ
千歌「曜ちゃん…曜ちゃんだ…」
曜「うん、私だよ」
千歌「曜ちゃん!!」ダキッ
曜「おおっと」
千歌「曜ちゃん、曜ちゃん…!」ギュ-
曜「もう、千歌ちゃんってば、甘えん坊だなあ」ヨシヨシ
千歌「寂しかった…寂しかったよお…」グスッ
曜「うん、ごめんね」
千歌「ううう…曜ちゃん、曜ちゃん」 曜「よしよし…でも千歌ちゃん、私がここにいて、驚かないの?」
千歌「だって、曜ちゃんは曜ちゃんだもん…なんで曜ちゃんがいるのかなんて、なんだっていい…ずっとずっと会いたかったんだから!」
曜「そっか…うん、ありがとう千歌ちゃん」
善子(よかった…本当によかった)グスッ
千歌「本当に会いたかった…それで、謝りたかった」
曜「千歌ちゃん…」
千歌「曜ちゃんはきっと、私のことを恨んでるよね…多分、謝ったって許されないと思う…けど、どうしても謝りたい。曜ちゃんにあんな酷いこと言っちゃってごめんなさい」ペコッ
曜「…うん、いいよ。私こそ、千歌ちゃんに色々言っちゃったし、お互い様だよ」
千歌「でも…私があんなこと――消えちゃえ、なんて言わなかったら、曜ちゃんだって…」 曜「ううん、違うんだよ千歌ちゃん」
千歌「違う?」
曜「私は、千歌ちゃんと喧嘩したから自殺したんじゃないの。偶然、心臓麻痺になっちゃっただけなんだ」
千歌「…そうなの?」
曜「うん…私こそ、本当にごめんなさい。千歌ちゃんは今までずっと、そのことで自分を責めたりしてきたんだよね。私が死んじゃったばっかりに」
千歌「ううん、いいの。だって、今こうして再会できたんだから」
曜「そうだね…これも善子ちゃんのおかげだよ。ありがとう」
千歌「善子ちゃん、なにがどうなってるのか私には分からないけど、善子ちゃんが私たちをもう一度会わせてくれたってことはなんとなく分かるよ。ありがとね」
善子「お礼なんていいわよ…私だって、2人には助けられてきたんだから」
曜「もう、可愛いなあ善子ちゃんは」
千歌「ほんとにいい子だよ、善子ちゃんは」
善子「や、やめてよ///…って、曜?」 (*> ᴗ ;*)ゞ 从/*;ヮ;§从 メイ*; _ ;リ¶cリ;ヮ;)|
|c||^.- ^|| 曜「ん?なに?…あっ」
千歌「曜ちゃん、体が…」
善子「透けてる…」
曜「あはは、どうやら私にもお迎えが来たみたい」
千歌「そんな…やっと会えたのに!」
曜「やっと会えたから…もうここに留まってる必要はなくなったってことかな」
千歌「やだ、やだよ!私もっと曜ちゃんといたいよ!これからもずっと、曜ちゃんと一緒がいい!」
曜「こらこら。千歌ちゃんももう大人なんだから、わがまま言っちゃだめだよ?」
千歌「でも、でも…」
曜「もう、困ったなあ…」
千歌「……」グスッ
曜「千歌ちゃん」ギュッ
千歌「曜ちゃん…?」 曜「私はずっと千歌ちゃんの側にいるから」
千歌「!」
曜「千歌ちゃんと私はずっと一緒だよ。今までだって、これからだって」
千歌「曜ちゃん…」
曜「だから…ね?もう泣かないでよ。私、千歌ちゃんの太陽みたいな笑顔が大好きなんだから」
千歌「曜ちゃん…本当に行っちゃうんだね」
曜「…うん」
千歌「…分かったよ」
曜「うむ、よろしい」
千歌「曜ちゃん、私頑張るから。だから見ててね…絶対、見ててね!」
曜「大丈夫だよ。約束する」
千歌「うん、約束だよ」 曜「善子ちゃんも、友達を大事にするんだよ!あと、千歌ちゃんのこともよろしくね!」
善子「うん、任せて」
曜「あ、そういえば善子ちゃん、お弁当のおかず貰ったお礼をしてかったっけ」
善子「いいえ、もうとっくに貰ってるわ」
曜「え?何かあげたっけ?」
善子「ええ、たくさんね」
曜「…そっか、ならいいや」ニコッ
善子「うん」 曜「じゃあ、もう行くね…これで本当にさよならだ」
千歌「曜ちゃん…ばいばい!」
曜「千歌ちゃん、ばいばい!元気でね!」
千歌「曜ちゃんもね!」
サァ-…
善子「…行っちゃったわね」
千歌「…うん」
善子「……」
千歌「ありがとう、善子ちゃん。なんだかスッキリしたよ。私もゆっくりだけど、前を向ける気がする」
善子「…なら、よかったです」
千歌「うん!」 プルルルッ
善子「あ、電話…ずら丸から?」
千歌「どうしたの?」
善子「さあ…はい、もしもし」ピッ
花丸『あ、善子ちゃん!?大変ずら!ルビィちゃんが…ルビィちゃんが!オラ、どうすればいいずら!?』
善子「ちょ、ちょっと、落ち着きなさいよ。なにかあったの?」
花丸『ご、ごめん…スゥ...ハァ...えっとね、さっきルビィちゃんと教室で話してて、ちょっとオラがトイレに行ってきて、帰ってきたらルビィちゃんがいなくなってて、それで…』
善子「…それで?」
花丸『ルビィちゃんのいた席に、「体育倉庫まで来い」ってメッセージがあって…』
善子「…まさか」
花丸『うん…あのいじめっ子たちかも』 善子「とりあえず、そっちに行くわ」
花丸『分かったずら』
善子「……」ピッ
千歌「花丸ちゃん、どうしたの?」
善子「ルビィが危ないかもしれない」
千歌「ルビィちゃんが?」
善子「私、行ってきます」
千歌「なんだかよく分からないけど、私も行くよ!」
善子「先生…はい、お願いします」
千歌「うん!」 〜〜〜
教室
花丸「あ、善子ちゃん!それに千歌先生も!」
千歌「話は善子ちゃんから聞いたよ。早速体育倉庫まで行こう」
善子「ええ、すぐにでも行かないと、ルビィがどうなるか分からないわ」
花丸「でもちょっと待つずら、わざわざこんなことするんだから、向こうもなにか持ってたりするかもしれないし…」
千歌「大丈夫だよ、花丸ちゃん」
花丸「え?」
善子「私たちにも、ちゃんと策があるから」
花丸「そうなんずら?」
千歌「うん、任せてよ!」
花丸「まあ、先生と善子ちゃんがそう言うなら信じるずら!」
善子「よーし、じゃあ行くわよ!」
花丸・千歌「「おー!」」 〜〜〜
体育倉庫
善子「よし…じゃあ開けるわよ」
千歌「うん…」
花丸「ずら…」
ギイィ...
ルビィ「っ!善子ちゃん!花丸ちゃん!」
生徒A「よお、津島」
生徒B「国木田と、それに高海までいるじゃん」
ルビィ「ダメだよ3人とも、早く逃げて!」
生徒C「お前は黙ってろ!」カミヒッパリ
ルビィ「痛いっ!」
花丸「ルビィちゃんになにするずら!」 千歌「あなたたち、こんなことして許されないんだからね!」ズカズカ
生徒A「おっと、それ以上近づいたらこの黒澤の可愛い顔が傷つくことになるぞお?」カチカチ
千歌「うっ、カッターなんてそんな危ないもの、人に向けちゃダメだよ…」
生徒B「さすが先生、ちゃんと注意するんだなあ」
生徒C「津島へのいじめは見て見ぬふりしてたくせに」
千歌「それは…」
津島「違うわ、先生は見て見ぬふりなんてしてない」
生徒A「でも対応してくれなかっただろ?」
津島「先生はいつも私に寄り添ってくれてた、味方でいてくれてたの。それがどれだけ嬉しかったか…だから、あなたたちにとやかく言われる筋合いはないわ!」
千歌「善子ちゃん…」 生徒B「チッ…生意気なこと言いやがって」
生徒C「国木田も黒澤も、長い間お前を無視し続けてきたじゃねえかよ。お前はそれを許せるのか?」
善子「ええ、許すわ。たしかにみんなを恨んでたことはあった…けど、今はこうやって仲良くできてるの。だったらもうそれでいいじゃない」
花丸「善子ちゃん…」
ルビィ「うゆ…」
生徒A「はっ、じゃあ一生仲良しごっこしとけばいいさ」
善子「ええ、そうさせてもらうわ…それで、あなたたちの目的はなんなの?」
生徒B「そんなの決まってるだろ、お前を潰すことだよ」
善子「……」
生徒C「津島、とりあえず脱げよ」
善子「…は?」 生徒A「だから、着てるもの全部脱げって言ってんだよ」
善子「…そしたら、ルビィを解放してくれるの?」
生徒B「さあ、どうだろうな?」
生徒C「でもやらなかったらこいつは傷つくことになるぞ?」
善子「くっ…分かったわよ」
ルビィ「善子ちゃん、ダメだよ!ルビィなんかのために善子ちゃんが嫌な思いする必要ないよ!」
善子「いいえ、これは元はと言えば私のせい…だからいいのよ」プチプチ…
ルビィ「善子ちゃん!やめて!」
千歌「善子ちゃん、待って」
善子「先生、止めないで。これは私が――」 千歌「私がやる」
善子「え?」
千歌「ねえ、私が代わりにやるから、それでもいいかな?」
生徒A「ああ、それでもいいことにしてやるよ」
千歌「……」プチプチ
善子「ちょっと、なにしてるのよ!」
千歌「大丈夫だよ、善子ちゃんにはこんなことさせられないから」
善子「だからって先生が…」
千歌「先生だから」
善子「?」
千歌「先生だから、やるんだよ。先生なら生徒を守らないと、ね?」
花丸「千歌先生…」 善子「でも…」
生徒B「ほら、はやく」
千歌「分かってるよ…」
生徒C「ふふっ、先生が脱ぐなんて、恥ずかしいなあ?」
善子「……」
花丸「今ずら!」サッ
善子「しゃがんで!」サッ
千歌「やっときた!」サッ
ブォン!!
生徒A「え?――ぐはっ!」バコ-ン!!! 生徒B「!?」
生徒C「なんだ!?」
善子「ルビィ、今のうちにはやく!」
ルビィ「う、うん!」タッタッ
生徒A「」ノビ-
生徒B「な、なにが起こって…」
???「お前ら、なにやってるんだ?」
生徒C「あ…松浦」 千歌「果南ちゃん、遅いよー!」
果南「ごめんごめん、ちょっと用事に手間取っちゃって」
生徒B「さっきのは…バスケットボール?」
果南「そう、私が投げてその子に当てたの」
生徒C「投げたって…常人のスピードじゃないって…」
生徒A「」チ-ン
果南「さてと…それで?そこで伸びてるやつの手にあるものは何かなん?」
生徒B「こ、これは…ええい、もうヤケだ!」カッタ-ヒロイ
果南「こらこら、そんなもの人に向けちゃダメだよ?」
生徒B「う…うわあー!!」ブンブン!
果南「……」パシッ
生徒B「うっ、離せ!」
果南「はい、これは没収」 生徒B「うう…くそ…」ガクッ
生徒C「……」ソロ-リ
果南「そこの君、なに逃げようとしてるの?」
生徒C「っ!に、逃げるだなんてそんな…」アハハ
果南「じゃあ、とりあえず3人とも、理事長室に行こっか」
生徒B・C「「はい…」」
生徒A「」チ-ン 〜〜〜
果南「ふぅ、とりあえずあの3人は理事長室に届けたから相応の処分は下るはずだよ」
千歌「いやー、助かったよ果南ちゃん。ありがとう!」
果南「いいっていいってこのくらい。それよりみんなに怪我がなくてよかったよ」
善子「果南先生…本当にありがとうございます」
花丸「果南先生のおかげでルビィちゃんもみんなも助かったずら〜」
ルビィ「あ、ありがとうございます!」
果南「あはは、どういたしまして」
花丸「それにしても、まさか果南先生がまるたちの策だったとは…この作戦を聞いたときはびっくりしたよ」
千歌「まあ、荒事は果南ちゃんに任せればおおよそ大丈夫だから」 果南「千歌は私をなんだと思ってるの」
千歌「うーん…頼れるお姉ちゃん的な?」
果南「いや、絶対違うでしょそれ…」
千歌「あはは!まあいいじゃない。じゃあ、いろいろ片付いたことだし…帰ろっか!」
善子「そうね」
花丸「善子ちゃん、ルビィちゃん、寄り道して帰るずら!」
ルビィ「うゆ!」
果南「こらこら、寄り道なんてしないで、まっすぐ帰りなよー?」
千歌「あはは、果南ちゃんだっていつもしてたくせに」
果南「まあ、それはそうだけどね」
善子「まったくもう…」
アハハハ… 〜〜〜
あれから何ヶ月かが経った。結局、いじめっ子たちは退学となり、もうその姿は見なくなった。少し可哀想ではあるが、彼女たちもこれで懲りたことだろう。
教室の中でも変化はあって、少しずつみんなも喋ってくれるようになった。
花丸「善子ちゃん、ルビィちゃん!お弁当一緒に食べるずら!」
ルビィ「うゆ!」
善子「ええ」
そして私は、親友たちと今も仲良くしている。
千歌「善子ちゃーん!放課後だし、久しぶりに職員室でお話でもしようよー!」
そそっかしい先生も、相変わらずそそっかしいままだ。
善子「はあ…仕方ないですね」
まあ、そんなところも嫌いじゃないけど。 花丸「あ、善子ちゃんだけずるい!まるたちも入れてずら!」
ルビィ「うゆうゆ!」
千歌「もちろん大歓迎だよ!ほら来て来て!」
花丸・ルビィ「「わーい!」」
善子「はぁ、まったく…」
善子(…ねえ曜、見てる?私、今とっても楽しいわよ)
ヨカッタネ ヨ-シコ-!
善子「…!」
善子(…ふふっ)
花丸「ほら善子ちゃん、行くよ!なにニヤニヤしてるずら?」 善子「ううん、なんでもないわ」
花丸「…?変な善子ちゃん。あ、いつも変だったずら」テヘッ
善子「ずら丸ー?」
花丸「あはは、にっげろー!」タッタッタッ
善子「こら、待ちなさーい!」タッタッタッ
ルビィ「あ、2人とも、廊下は走っちゃダメだよぉ〜」タッタッタッ
千歌「って、ルビィちゃんもー!」
千歌「…はあ、まったく」
千歌(…曜ちゃん、見てくれてる?)
千歌(私、頑張るから)
千歌(もう絶対に、大切なものを失ったりはしない)
千歌(だから曜ちゃん…)
千歌(ちゃんと見ててね――!)
ヨ-ソロ-! 後日談で壁ドンで妊娠した梨子ちゃんが曜ちゃんの生まれ変わり生んだとか書いてよ みんなありがとう
いつかまた千歌ちゃんや善子ちゃんが曜ちゃんと会えたらいいな イジメっ子はトイレのメノノリさんがおいしくいただきました 花丸がずらずら言ってたのが気になる
そんないわねーよ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています