穂乃果「異能で廃校を救うよっ!」2nd
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このssは 【穂乃果「異能で廃校を救うよっ!」 https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1544803628/ 】 の続きです。 次スレに移った経緯は前スレを参照して下さい。 第23話「カレッジガーデン」 あんじゅ「ええ、貴方が妹を昏睡状態にしたの」 絵里「私が…亜里沙を……」 希「「違うっ!」」 絵里「希ッ?…」 あんじゅ「あら、お目覚めなの?」 希「そうや」ボロッ… 絵里「希、…。…亜里沙は私のせいだったみたい」 希「…それは違うで」 あんじゅ「あなた今までの聞いてた?」 希「今ちょうど目が覚めたところや」 あんじゅ「…なら説明してあげるわ」 希「別にしなくてええで、うちは分かってるから」 あんじゅ「それで?」 絵里「…いいのよ、希。私のせいなの」 あんじゅ「そう言ってるわよ?」 希「違うって言ってるやろ…」 絵里「私が…」 希「えりち、…。…それは違うで、今えりちに必要なのは落ち込むことやない」 希「えりちのせいで亜里沙ちゃんが巻き込まれた?……そんなの知らんで…それに今は関係ない」 絵里「…でもっ私が亜里沙を」 希「今うちらがやるべきなのはこいつを倒すことや…」 あんじゅ「…」 希「ここで嘆いていても何か変わるんか?…ことりちゃんを救えるんか?」 絵里「…」 希「そして亜里沙ちゃんを……」 絵里「…っ」 希「それに何言われたのかうちは知らんけどな、どこまで本当なのかは分からんで…。」 希「…そんなもんは亜里沙ちゃんが起きてから聞けばいいんや、謝るのはそこからでも遅くはない」 絵里「…」 希「…やろ?」 絵里「…」 絵里「ええ………、そうね…」グ… あんじゅ「はっ、妹を事故に合わせたのは貴方なのに開き直るの?」 絵里「…そんなもの知らないわ。…それに直接の原因は貴方、それに変わりはない。」 絵里「今気づいたわ…私が亜里沙を巻き込んでしまった罪、そのうちの一つは事前に貴方を止められなかった事…。…それを貴方で償わせてもらうわ、優木あんじゅ……」 あんじゅ「…言うじゃない」 希「…うるさいで、元凶」 絵里「覚悟しなさいっ」 あんじゅ「…フッ」 あんじゅ「いいわぁ…私も本気で潰しにかかって上げる」…バッ 絵里「行くわよ希ッッ!」 希「もちろんやっ!」 廃ビルの屋上を全て埋め尽くすように貯まった雨水が、今も水面を揺らがせながら降りしきる雨を受け止め続けている 希「…えりち、雨量は十分やで、」 絵里「妹の敵、取らせてもらうわ…」バッ あんじゅ「出来るものならね」フ… 絵里「終わりよ…」 絵里は地面に厚く貯まった雨水の層に右手を差し入れた───────途端、 絵里からあんじゅの足元へ波のように冷気が走り、水は氷へと変化、凝固していく あんじゅの両足は完全に氷に固定され、その場所から動く事は出来ない 絵里「チェックメイトよ、」 あんじゅ「…どうかしらね」 絵里「言ってなさい…」 絵里が右腕に雨水をまとわせ、右手の先に巨大な氷の刃を作る。 透き通ったそれは鋭利な輝きを映し、骨までも軽く両断してしまうだろう。 絵里「…」タッ 絵里「…ハァッ!!」 闇に青白く光る大剣を携え、氷の上を加速していくッッッッッ!!! 足を氷の漬けにされたあんじゅに超高速の刃が迫り、…両断ッッッッッッ!! だが、 絵里「……亀裂…?」 希「ッえりちっ!!!」 ───────ドガァッ… 希が叫ぶよりも早く、凍らせた地面の雨水では亀裂が侵食を始めていた… そして、それはあんじゅの目の前にいる絵里の足元でピキピキと音を立てる あんじゅ「…チェックメイトなのはどっちかしら」 絵里「ッッッッッ!」 あと一歩、あと一センチで届くッッ… だがッッッ、氷と共にコンクリートの地面は儚く崩れッッ奈落に落ちるッッッッッ!!! ───────ドゴォッッッ 希「えりちっ!」 あんじゅ「…さよなら〜」 …ズズズズズズズ あんじゅを中心とするように屋上は大穴を開け、闇を産み出すように中心から崩れ落ちていく 絵里「希ッ!」 絵里はコンクリートの残骸と共に、 廃ビルの地面に出来た、輪郭の歪な大穴の暗闇へと瓦礫と共に落ちていった… 希「そんな……、」 希「嘘やろ…」ペタン あんじゅ「…嘘じゃないわ」 大穴にギリギリ巻き込まれず、折れ曲がった鉄の棒が突き出ているコンクリートの上で棒立ちになる希。 と…崩れ落ちた瞬間に、ワイヤーで安全地帯へ引き上げたあんじゅ。 辛うじて残っている足場に残っているのは、只二人のみ。 あんじゅ「あなたで終わりよ…」 希「………そうなんやな……。でも、そう簡単には終わらせないで、あんじゅッッッ」 希が手を捻ると、あんじゅの目前に二階ほどの竜巻が突然に出現! あんじゅは巻き上げられ、空中に投げ出されるッッッ!! 悲鳴を上げそうな急激な浮遊感!思わずあんじゅは空を掻く! だがっ あんじゅ「…」シュッ… 中空から屋上の端にワイヤーを突き刺し、そのまま落下するとその真横を落ちていく 希「…させんよっ」 希はすぐさまあんじゅのナイフを抜こうとするッ、が 1歩遅く、 あんじゅがワイヤーを引き寄せ、向こう側から飛び上がるように表れると希の前に着地! あんじゅ「遅いわよ…」 希「…チッ」 あんじゅ「…そう」シュッ そこから動揺した様子の希へあんじゅはナイフを右、左と往復して切りつけ、希は下がるようにそれを避けきる あんじゅ「ふーん…」 希「ハッ…」ブワァッ 切りつけ終わると希は風を吹かし、 あんじゅの姿勢の揺らぎに希は左ストレート、右フックからの肘打ち!! 希の連続した打撃を1発2発と外側へ受け流し、 最後の肘打ちは体を傾けて避けるとあんじゅはナイフを逆手に持ち相手の腹部へッ そして希は腹へ迫るナイフを、あんじゅの方向へ手で押すように背けると 再度風を吹かし一気に距離を取る!! 希(あの刃物をどうにかせんとな…) あんじゅ(能力の使い方が絶妙ね) 一瞬の間に思考を巡らす…。 あんじゅ「…」シュッ すると距離が離れた所であんじゅは、両手とワイヤーで繋がっている二本のワイヤーを希の両脇へ挟むように、 同時に遠隔でけしかける! シュ…────── シュ…────── 希(来たっ) ここで希は手を振るい、思いっきり風を両方のナイフへ吹き付ける きれいな円形を描いて希へ飛来する刃物は風に吹かされ、ナイフの軌道は歪む あんじゅのナイフは空中で不規則にさ迷い、ナイフはあんじゅの手から大きく離れた状態!! 希(今や…) 瞬間、希は自分に追い風を吹かし、一気にあんあんじゅの顔面に右フックを振り抜く!! 対するあんじゅはこの時間ではナイフが間に会わないことを悟り、その打撃へ合わせるように左手で希の顔に触れる!! ───────ドドッッッ… 希とあんじゅ、両者はクロスカウンターのような体勢で止まり、ググ…と力を込め合う 希の頬にあんじゅの手が触れ、あんじゅの頬へ希への拳がめり込んでいく… だが、どちらかが倒れるのは必然… …握られた一つの拳は力なく下へ落ちる 希「くっ…」ググ あんじゅ「おしかったわね…」 あんじゅは希の頬に手を触れながら語りかける。 希「残…念……や、な」ググ 一方で希は何かの重さに耐えるように、段々と姿勢が低くなっていく あんじゅ「ナイフを遠ざけるまではよかったわ、もう少し早ければって所だったけど」 あんじゅがかける重さは増していき、希は重力によってコンクリートの床に押し付けられる 希「…うぁ」ググ あんじゅ「どこまで耐えられるかしら、」 希「は…なせ……」 あんじゅ「…無理な相談ね」 希「…っぁ」 あんじゅ「…」 少しすると雨雲は消え、今まで降っていた雨は止んでいた 希「」 あんじゅ「…ここで止めといてあげるわ」 あんじゅ「さて、ツバサのとこ───────」 絵里「待ちなさいっ!…」ダッ あんじゅ「あら、まだ生きてたの?」 崩れたコンクリートの影から突然現れた絵里に、振り向きざまにワイヤー付きナイフで切り付ける 絵里はそれをナイフで弾く あんじゅ「雨、止んじゃったみたいね…」 絵里「あなたのせいでねっ!」ギンッ 一歩踏み出すと絵里は上から切りつけるが、あんじゅはそれを事も無げにナイフでいなした あんじゅ「あなたは怪我をしている上に、更に能力も使えない」 あんじゅ「…殺されに来たの?」 絵里「復讐しにきたのよ…」ボロ あんじゅ「能力も使えない上に、負傷中ね…それでも……。いいわよ、いたぶってあげる」 落下の衝撃や、打撃でボロボロの絵里にあんじゅは連続してナイフを繰り出す 最初のうちは辛うじて残っていたナイフで絵里は攻撃を受けきれていたが、あるタイミングでそのナイフも弾き飛ばされ何処かへ行ってしまう 絵里「…」ジリ… あんじゅ「…追い詰めたわよ」 あんじゅの対峙する絵里は切り傷だらけで、その太ももはぱっくりと割れ血が大量に流れ出ていた 絵里「…」ヨロ フラフラとし、先程まで歩いていただけでも精一杯。もう限界の状態… 唯一の抵抗手段も消え、希のそばに立っていた絵里はその場であんじゅに背を向けるとひざまずく。 …雨も降っておらず、頼みの綱であったナイフもどこかへ行ってしまっては何もすることができない。 絵里「…希」ボソッ そして祈るように希の手を握る あんじゅ「あら仲間思いなのね」テク… あんじゅ「…ばいばい」ダッ 絶体絶命… もう何の抵抗手段も持たない背中を向けた絵里に、余裕を持った足取りであんじゅは近付き、 ナイフを突き刺す… ドスッ… 絵里「…」 直前、何かが絵里の手先から延びているように見えた。 あんじゅ「…え」 突き刺すはずだったナイフは直前でピタリと止まり、その代わりにあんじゅが今感じているのは右足の刺すような痛み あんじゅ「…っ」ググ… 思わず右足を動かそうとするが動かない、直接みるとそこには、どす黒い赤い槍のようなものが足を貫通して地面までにも刺さっていた あんじゅ「これはッ…」 あんじゅに弾かれない箇所、狙いすまされた足元に血の槍が突き刺さり、彼女を動かす事を許さない。 絵里「…今よっ!」 希は消えかかりそうな意識の中で、かけ声が聞こえると雲がかった夜空に手を広げる あんじゅ「なにをっ!!」 僅かに見える雲が黒に変色すると金に瞬き 刹那、 膨大な量の電子が空中に流れ出すッ 夜空をジグザグに走るのは金色の閃光ッッッッ!!!!! ──────ビシャアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!! 絵里は希を覆うように伏せ、向こうへ転がっていく。 …耳をつんざくような轟音が鳴り響き、あんじゅの体には膨大な量の電流が流れるッッッ!!! 瞬間、貫かれたあんじゅの体は痙攣、 皮膚が一部焼かれ、四肢から白い煙が沸き立つと…バタリ、と倒れた……。 絵里「…」ギュッ あんじゅ「」 数秒たつと絵里は閉じていた目をそっと開け、雷の着地点を見る。…するとそこには雷に打たれ、無力にも倒れているあんじゅの姿が。 絵里「やった…のね……」 希「…よかった、」 あんじゅの体を貫いたのは雷、落下地点は黒く焦げ放射状に広がっていた。 絵里「…っ」 絵里「これで…」ガクッ 希「おっと…」ストッ 絵里は緊張が切れたのか膝からガックリと力が抜け、フラりと倒れかけるが希に支えられ持ち直す。 希「…えりち、しっかり」 絵里「そうね…」 両者の体は心身共に限界を迎えていた、 傷口が痛みながらも半壊になったビルの屋上で、二人ともなくゴロンと仰向けになる。 黒い空に星を眺めながら、絵里と希は冷たい屋上のコンクリートの床で横に並んだ 希「……ふぅ…」ゴロ… 絵里「…希、ありがとう。」 希「どういたしましてや、…」 希「……やっと終わったんやな…えりち…」 絵里「ええ、……これで亜里沙にきちんと向かえるわ、」 絵里「…それに、私が謝らなくちゃいけない事もみつかったしね」 希「そうやな、…早く目覚めるとええね」 絵里「そうね。…あとはことり達、皆の事だけど大丈夫かしら……」 希「皆なら、やれてると思うで」 絵里「そうね…」 そこで会話は途切れる… 雨水で湿った地面の上で、 猛烈な眠気と疲労に押し流された二人は同時に瞼を閉じ、ゆっくりと…いつまで続くかわからない眠りに落ちた…… ──────UTX多目的ホール 海未「では、…あの時なぜことりを含む私達を助けたのですか?」 英玲奈「…そんな事か、もし人が困っていたら助けるのは当然ではないのか」 海未「…UTXのA-RISEに所属しているあなたが、あの場面でことりを捕まえずに私達を助けた事について疑問があるのです」 英玲奈「…それを私に聞いてどうするつもりだ?」 海未「…私を見逃して、あわよくばことりを助ける手助けをして頂きたい」 英玲奈「……」 海未「…」 英玲奈「……」 英玲奈「……ふっ」 英玲奈「…フハハハハハハハハハ」 海未「…何が可笑しいのですか?」 英玲奈「いや、何。そんな事を言われるとは思っていなかったのでな」 海未「…意外でしたか」 英玲奈「まぁな…。ふむ目的は分かった」 海未「そうですか、では…」 英玲奈「ダメだ、見逃す事はできない」 海未「ッ何故ですか?…」 英玲奈「…当たり前だ」 英玲奈「行かせる訳がないだろう、…私はお前らを倒す為に来たのだから」 海未「…そうですか」 英玲奈「私が君たちを見逃していたのは、…命令に従うままの私達を止めてほしかったからだ」 海未「止めてほしかった?…」 英玲奈「…君達にアイドルをやっているか私は前に聞いたな?」 海未「ええ、」 英玲奈「…スクールアイドルではない能力者、UTXの監視下にない異能の力を持つものを私は探していたんだ」 英玲奈「……だから私は君たちを見逃した、真相に辿り着いて闇から私たちを救ってくれる。それを期待してな…。」 英玲奈「…事実、辿り着いてくれた訳だが」 海未「じゃあなぜ今は?…」 英玲奈「…ああ、だがそんな行動こそが誤ちだと気付いたんだ。今はお前達をあの娘の元に行かせない…それが私がここにいるまぎれもない理由」 英玲奈「…私はな。逃げていたんだ、自らの罪を悩みという形でうやむやにし向き合う事がなかった」 英玲奈「どっちつかずの存在、悩みに答えが出ない由に活動の目的を阻害する方向へ行動をしてしまう。」 英玲奈「君たちを泳がす…そういう形で」 英玲奈「そうなってはツバサとあんじゅが頑張っているのに、私がそれを無駄にしたようなものではないか」 海未「そうですか…」 海未「…それが悪だと知っていても?」 英玲奈「ああ…何者にもなれなかった私だが、…それに気付いた私はお前を止めなければいけない。」 英玲奈「ツバサとあんじゅ、そして私の為にも…」 海未「…」 海未「…なるほど、お互い大切な仲間がいるようですね」 英玲奈「ああ」 海未「それ故に私達は戦う、ここで…」 海未はことりの為、英玲奈はツバサとあんじゅの為に… 二人は同時に刀を構え────── チャリ…チャッ…… 真っ白な空間に火花を散らすように睨み合う 英玲奈「…こい」 海未「では、お構いなく…」ザッ 最初に刀を抜いたのは海未。 大股で一本踏み出すと英玲奈の右肩に刀を降り下ろす。 ────キンッッ が、それはすぐさま弾かれた 海未「…でしょうねッ」 そこから海未は続けて刀を振り、英玲奈へ右左上斜下上…と5閃の連続した攻撃 ここらでダメージを与えておきたいと、海未は能力で強化された肉体にさらに力を込めて刀を振るい、5つの斬撃は一瞬のうちに行われる しかし、 海未「なにっ!」 英玲奈は片手間のように刀を振るい、海未からの連続した刃をすべて受けきるッッッ! それもまるで団扇を扇いでいるような軽快さで… 英玲奈「驚いているようだな」 海未「…ええ、少しばかり」 英玲奈「そうか」ガシャッ 言うと英玲奈は顔の横ほどまで刀を振り上げ、そこから体の反対側へ斜めに刃を降り下ろした すると、その動作で刀の刃先の半分が縦についたラインに沿って外側にスライドし、 刀の刀身が倍に伸びると同時に 英玲奈「いくぞっ!」 英玲奈は一気に海未へ迫ると刀を振り抜く 刀が長いため、一撃目は海未の間合い外から横に一閃。 そして刀を往復させて二撃目。 そして海未は反撃できる、という訳ではないが連続の二撃を弾き返すことに成功! 鉄のぶつかる甲高い音が二つ響くと、海未のこめかみに冷や汗が流れる 海未「(間合い外から切られては、反撃も出来ない)」 次も間合い外からの攻撃が来るかと思い、 一思いと、海未は英玲奈の懐へ忍び込み、至近距離から腹への斬撃ッ! ──────ザンッ 英玲奈の刀は長く。おおよそ近距離では振り回しずらいように思えた。 海未(貰いましたよ…) 英玲奈「…」ジャキッ 瞬間、英玲奈の刀がスライドし元の長さに戻ると、すぐさま海未の刀を弾き返す 海未(なにっ…) 弾かれた海未はすぐさま縦に打ち返し、英玲奈は流れるように横一文字に切り裂く。 弾かれた分、英玲奈の刀よりもスピードが劣ったていた海未。つまり…英玲奈には斬撃は当たらず 英玲奈「当たりだ…」 だが、英玲奈の斬撃は海未の腹を切り裂くようなコースを描いている 海未「まだっ…」パシ 海未は英玲奈の刀へ左手を差し出し…辛うじて致命傷は避ける 海未「…っ」 腹に斬撃が直撃する事を避けるためにとっさに犠牲にした左の手から、じわりと血がにじみ出る。 海未(くぅ…) 英玲奈「ほう…」 海未(左手は使えない…ならば、それを生かすのみ) 英玲奈「ここで死ね…」 そこへ間髪いれずに英玲奈は海未を縦斬る そんな刃を白羽取りのように海未は左手一本で受け止め、英玲奈の刀を掴んだ 左手の痛みをこらえながら、これで英玲奈は対処はできまいと、右手に持っていた刀を ─────────ズズッッッ! 瞬時に突き出す!!! しかし、 英玲奈は捕まれた刀を持ちながらも、 刺し出された刃の鎬(横の平べったい部分)に左肘を打ち当て、刀を外側に受け流し回避! 海未は、これは不味いと瞬時に英玲奈に前蹴りをかます。 英玲奈「…」パシ その隙に英玲奈は刀を回収 蹴りを当てる事はかなわなかったが、海未は距離を離す事に成功ッ 海未(どういう事ですかっ…一度も攻撃が当たった所を見たことがありません。あの状況からの突きをかわすなんて……) 英玲奈「そろそろ終わりにさせてもらおうか…」 海未「…クッ」ジリ… 手に嵌めていた黒いグローブと共に血だらけになった左手をぶら下げ、海未は右手に刀を持つ。…両手で持っていた場合と比べて力は半分。 普通に振るうことは出来るが、海未が両手だった場合と比べ今の英玲奈が刀を受けるに必要とする時間はかなり短くなっているだろう 海未「…ゴク」 海未の血液で濡れた黒いグローブから血が一滴、落ちる… 英玲奈「私も…ツバサの援護に行かなければならないのでな、……はっ!」 海未にワンステップで迫ると刀は通常の長さのまま、右肩へ切りかかり、 海未は英玲奈の斬撃を右手に持つ刀のみで弾いていく! 英玲奈から海未へ、あらゆる方向から斬撃が連続して繰り出されていき、 海未は目にも止まらぬ連撃を片手の刀一本で弾いては、流し、時には受け止めていく。 両者の間では刀が急速にうごめき、数多の金属音が響いていく、 刃の軌跡が残像となり、緩やかに曲がった白い閃が幾つも産まれては消えていく。 海未(ここで負ける訳には…) もう何回刀がぶつかり合っただろうか、 そんな時、英玲奈の巻き上げにより海未の手から刀が離れ、 宙を高く舞う 英玲奈「私相手に、ここまでやるとはな…」 刀は回転しながら照明のライトを反射し、空中で瞬く 海未「…」 英玲奈と海未は向かい合う だが海未は刀を持っていないにも関わらず、まだ構えを解いてはいなかった 海未「…」ス… 海未の手から離れた刀はまだ宙空に…、 カラ…カラ… 英玲奈「…ん?」ピク… 床に落ちてはおらず、銀色の刃は英玲奈と海未のちょうど中央で刹那、キラリと輝くッッッ 海未「ここですっ!」ギラッ 英玲奈「そうはさせんぞッッッ!」 それを確認した海未は超筋力でジャンプし、英玲奈に届くよりも早く刀を手に納める そして空中から油断している英玲奈へ、頭から刀を一思いに降り下ろす!! ────────ジャキィンッ!!! だが、この場面は先程の状況と類似 予想した英玲奈は空中からの刀を頭上で受け、空中の海未と正面でにらみ合う。 刀と刀が力強くぶつかり、鉄と鉄のぶつかる甲高い音を響かせるッッッッッッ 英玲奈の力と、落下してくる海未の片腕の力はほぼ互角、一瞬のようにも見えた押し合いは引き分け!! 両者とも吹き飛ばされるが、空中から飛ばされた海未は地面に落ちる形となるが それでも、能力の効果により綺麗に着地することができた海未ッ チャンスと、 海未「ハァッッッ」 転んでいた状態から立ち上がろうとしていた英玲奈へ───── ─────シュッ 刀を瞬時に振り抜き、 英玲奈も海未を切り返さんとばかりに刀を振り抜くッッッ 二人は太極図の如く、 互いに回転するように移動し、 海未は英玲奈の胸を横に一閃!英玲奈は海未の背に刃を!! ──────ザグッ 海未「…ぅグ」 海未「……カハッ…」タラ… 英玲奈「…残念だったな」 が、海未の刀はかすりもせず、英玲奈の刃だけが海未の腹を背後から深々と貫いていた… 英玲奈「…」ズブ 腹から突き出た英玲奈の刃は、刀身を海未の血で真っ赤に染めていく。英玲奈はピタリと海未の背に立ち、貫いたまま刃を持ち続ける。 海未「……カハッ…」 英玲奈「…私には当たらない」 英玲奈「…」ズズ… 海未「……いや、…」 海未「………当てました……よ」 海未の口から真っ赤な血がドロリと流れ落ちる 海未「…フ」 英玲奈「?……な…」 海未「……カハッ…」 英玲奈「これ…は………」 そして英玲奈の口からも血が流れ出ていた 英玲奈「まさ、か…これを狙って……」タラ… 海未「……あなたもここで私と…穂乃果を待っていただきますよ……カハッ…」 英玲奈「…そう、か」 海未は自分の体ごと、英玲奈を刀で貫いたのだ ふと目線を下ろすと、自分とは別の刀が海未の体から突き出ており英玲奈の体を貫いているのが見えた 英玲奈「なる…ホど、…な……」 背後にたっていた英玲奈の支えがなくなり、真っ白い床に広がっていた赤い血溜まりにビチャリと二人同時で真横に倒れ込む。 倒れても互いの腹に突き刺さったままの刀からは未だに血が流れ出おり、二人を取り囲む液体の赤は白い地面を侵食していく。 海未(…穂乃果、あとは貴女に頼みましたよ) 海未は薄らぐ意識の中で、 固まりはじめネバついた血液に濡れた顔もそのままに、真っ赤な絨毯の真ん中で幼馴染みを思うと、意識を失った… ─────────── UTXの鉄で出来た非常階段を上へ上へと登っていく穂乃果、目的地はUTX屋上 穂乃果「はやくっ」カンカンカン 穂乃果「…」カンカン ドオォッッ!!!ズズズズズ 穂乃果「何っ?、今の音…」 穂乃果「(上から聞こえて来たけど…とりあえず行けば分かるよね)」 穂乃果「…あと、3階上がれば屋上に出れるっ」 … 穂乃果が登っていた非常階段はUTX校舎の外側に位置しており、そこから屋上に出た場所は屋上のやや端。 穂乃果「え……なに、これ」 第24話「大切なもの」 穂乃果自身は、そこには普通にUTXの屋上施設があると思っていたが実際にはそんなものはなくなっていた。 元々噴水があったらしい部分を中心にして、屋上は超巨大な球で押し潰されたように崩壊していたのだ 屋上だったものの瓦礫の中には所々緑色の芝生と土が混じって見え、そこに少し水が漏れ出ているのも確認できた 穂乃果「ことりちゃんはっ!?」 ことりを探そうと少し回りを見渡すと、辛うじて崩壊せず、半分ほど残っているヘリ発着場にヘリコプターが停まっているのが見えた 穂乃果「あそこにいるのかな…」 ザクザクと瓦礫を踏み越え、歩を進める そこで穂乃果には1つの人影が見えた…ヘリコプターの中に入り、何か機械を操作している影を ツバサ「一回分、……かしら…」 穂乃果「ん、あれは…ツバサさん?」 穂乃果の声に反応したのか、ツバサはちょうど振り替える ツバサ「穂乃果さん?…」 ことりの入っている装置の顔近くに設置してあるボタンを、ツバサは後ろ手に押した すると装置が唸り始め、ことりの血液が急速な勢いで循環していく。 それと同時にツバサの焼けただれていた部分も元の姿に戻っていく ツバサ「なるほど…」ジュワワワ 左腕を確認するように、ツバサは目の前で腕を動かすと穂乃果を見る ツバサ「来たわね…」 ツバサ「…ことりさんは渡さないわよ?」 穂乃果「やっぱり………。…話が早くて助かるよ、ことりちゃんは返してもらうからね…」 ツバサ「やれるものならね」 穂乃果「絶対にやってみせる…」 ツバサ「来なさい…」 穂乃果「っ…ファイトだよッッッ!!!!!」ダッ 真ん中に半球状に穴の開いたUTXの屋上。 屋上では強風が吹き続け、砕けた窪みの中心で睨み合う穂乃果とツバサの髪をハラハラと風が無造作に撫でていく。 完全に空は暗くなり、下界と隔離され光が遮断された瓦礫の地面を、夜空の月明かりのみがうっすらと照らし出す。 淡い白の光が地面の瓦礫に合わせて小さな影を作り、その凹凸を踏み越えて穂乃果はツバサへ向かっていく。 穂乃果「…」ダッ 走りながら、まず小手調べと手を前に出し、衝撃波を射出 ツバサ「…」バッ それに対してツバサも白柱を生成し、飛ばす! ツバサは狙っていたのだろう、生成物は衝撃波に見事当たり、衝撃波は空気に溶けるようにして消滅。 白い生成物もその場にゴトンと落ち、すぐさま無くなる。 その間に走り寄っていた穂乃果はツバサの目前で衝撃波を放ち、続けて回し蹴る ツバサはシールドを生成して衝撃波を防御、 すぐさま消滅させると、さっと一歩後ろに下がって穂乃果の蹴りを回避。 そしてその真上に白い物体を生成! 穂乃果を押し潰そうと真上から迫るのは白柱!! 穂乃果「(前にっ!)」ドン 頭上の影に気づいた穂乃果はすぐさま両手を前に出し、大きな衝撃波を放つッ! それは回避行動と共に攻撃も兼ねており、衝撃波を放つ反動により後ろへ瞬時に移動!そしてその衝撃波はツバサヘ!! 穂乃果が落下物を回避し、白柱が瓦礫の地面に派手に突き刺さると、灰色の砂ぼこりを上げる そんな砂ぼこりを巻き込んだ衝撃波をツバサはシールドを生成し、斜めに受け流すと衝撃波は形を崩し後ろへ流れていく そしてツバサは今使ったシールドをそのまま穂乃果に飛ばす! 穂乃果は二つの衝撃波でシールドを迎え撃つが、その勢いを殺し切ることはできなかった 衝撃波が接したのは面(□)ではなく、線(一)だったためである ツバサ(もらったわ…) 穂乃果(まだだよっ!)タッ 飛来する板はすぐ側まで迫ってきており、瞬時に地面に転がると真上に生成物を眺め、 横になった状態からツバサヘ衝撃波を放つ! ───────ズドォッ 砂ぼこりの中から放たれたそれをツバサはシールドで防ぐと、 今度は穂乃果の上に白柱を生成させると同時にツバサも一歩踏み出し、右に出した手の先に白棒を生成させるとブンと穂乃果を凪ぐ! 落下物の方が僅かに早く、穂乃果は衝撃波を使い反動で避ける…が、感じたのは浮遊感 穂乃果の足元が崩れたのだ 穂乃果「…!?」 崩壊した地面にツバサの白柱が突き刺さり、動大きく動かされた瓦礫は下に未だ残っていた空間へ流れ込む ドサッ… 穂乃果「いつつ…」 感覚で3階ほど落ちた穂乃果は、クッションにもなった瓦礫の上で回りを見渡す 穂乃果が落ちた場所は職員室のようであった。 何処かが壊れている様子はなく、至って普通の状態を維持していた。 穂乃果の座っている瓦礫と、その真上に開いた夜空の星までも見通せる大穴以外は。 ツバサ「貴方たちはどれだけ私の学校を壊せば気が済むのかしら…」 すると、少し離れた天井にガラ…と穴が開きツバサが降りてくる 穂乃果「どう考えたってツバサさんのせいでしょ…」 ツバサ「…そうかしら?」 真っ暗な職員室で睨み合うツバサと穂乃果。 職員室の壁はUTXらしく全面ガラス張りで、窓の下には幾つかの明かりが漏れて見える 夜空を映す大きなガラスを背にする穂乃果へ、ツバサは言う ツバサ「ことりさんは自分から留学するって言ったのよ?」 穂乃果「ことりちゃんは本当はそんな事望んでないっ」 ツバサ「だから?、留学するって言ったから留学させるだけの話よ」 穂乃果「ツバサさんはなんでこんな事するんですかっ!ことりちゃんの気持ちも本当はわかりますよね?」 ツバサ「…私は私のやるべき事をやるだけよ」 穂乃果「ことりちゃんを連れていく事が?」 ツバサ「…それで終わるのならなんでもやるわ、……だから貴方も諦めなさい」 穂乃果「あなたが何の為にことりちゃんを連れ去るのか、分からない。…でも穂乃果はことりちゃんを連れ戻す為にここに来た」 穂乃果「穂乃果の目的はそれだけ、ツバサさん。貴方は?」 ツバサ「ラブライブを、守るためよ…」 するとツバサは穂乃果へ向けて白柱を飛ばすッ 穂乃果が横に避けると飛来物は後ろの窓ガラスを突き破り、外へ消えていった そしてツバサに向き直ると、間髪いれずに連続して白柱が飛んでくるッ! 穂乃果は窓際を走るように避け、その横から連続して飛来するのはツバサの白柱。 穂乃果「これはマズイね…」 駆け逃げるが白柱が収まる様子はなく、 数コンマ前に穂乃果がいた場所を白柱は貫いていき、外した先にある窓ガラスを破壊しては空に消えて硝子が割れる音だけを残していく 穂乃果(止まったらやられるッッッ) ツバサの白柱が背後を通り抜けていくのを感じながら、職員室のガラス壁を横目に全力失踪で走る ツバサ「なかなかすばしっこいわね…」 穂乃果の後ろに張られていた壁ガラスは全て割れ、外からの風を強く吸い込み、 その走った跡は微かな光を反射する割れるガラスで彩られていた パリン、パリン、パリンと背後でガラスの割れる音を聞きながら穂乃果は走り続けていた…が、そんなに長く走り続けられる訳がない 穂乃果「…」タッタッ ここは建物の中、職員室と言っても広さというものがある。 穂乃果(行き止まりじゃんっ!) 穂乃果は職員室という部屋の角を、揺れる視界の正面に見つける ツバサ「追い詰めたわよ」 すぐ背後からはツバサの白柱が飛んできており、一瞬でも走るスピードを緩めたり、止まったら打ち跳ばされてガラスと一緒に奈落のそこへ落ちるだろう 穂乃果「…っく」ドォンッ! ならば、と穂乃果は走りつつ衝撃波を正面に放ち目の前にあるガラス壁を破壊! ガラスが弾け飛ぶと前方から風が吹き出し、その奥に建設途中の黒く高いビルが見える。 穂乃果「よしっ!」 これで進むべき道は出来た 穂乃果「…はっ!」ダッ 走る勢いのままジャンプし、空中に身を投げ出す!! 穂乃果「…」フワッ ツバサ「…まさかっ」 衝撃波を下に放ち、滞空時間を伸ばすとUTXの隣にあるビルへ! 穂乃果「…」ブワァッ 穂乃果は空中を山なりに飛び、数メートルほど落ちたところでガラスを突き破るとその中に転がり込む 穂乃果「いたた…」ゴロゴロ 床を転がるようにこのビルへ侵入したため、突っ込んだ時の小さいガラスの破片が幾つか突き刺さっていた 穂乃果は一思いにガラスを抜くと、ビルの窓から顔をつきだしUTXの上部を見上げる ツバサ「そこねっ!」 見上げた時、こちらを見下ろしていたツバサと運悪く目が合ってしまい、場所を特定される。 穂乃果(…これは移動した方が良いね) とっさに穂乃果は足先をビルの内側へ向けるが 瞬間、穂乃果の転がり込んだ場所に白柱が突き刺ささり、それを滑り台のようにしてツバサが現れ 滑るのに利用した白柱は瞬時に消える 穂乃果「結構しつこいんだねっ!」 ツバサに衝撃波を時間差で二つ放ち、続けて穂乃果は後ろ回し蹴り 時間差で来た衝撃波を両方シールドで受け止め、そこから続かれた蹴りをツバサは外側に受け流す ツバサ「…あなたにはこっちの方が良いみたいね」シュッ そう言うとツバサの両手の先には、長く鋭い白色の剣心のみが青みを帯びて現れる 穂乃果「…」ジリ ツバサ「いくわよっ!」 ツバサが右手を穂乃果に横へ振るうと、それに合わせて白い剣心も横に振るわれる 穂乃果は後ろに下がって躱すと、そこから衝撃波を利用したジャンプ! 上空からツバサに蹴りかかり、それと同時に右手から衝撃波も放つ ツバサは剣心を消すとすぐさまシールドを生成、衝撃波をブロックしたあと白柱を凪いで空中にいる穂乃果を思いっきり横に打つ! 直前、 穂乃果は左手から衝撃波を放ち、中空でフワリと白柱を回避!! 穂乃果「ここだっ!」 ツバサ「…うぐっ」ゴンッ 頭を横に蹴飛ばし、穂乃果はツバサを床に転がす! ツバサ「…ッく」クラ… 穂乃果は着地した後に続けて後ろ蹴りを振り抜く… が、ツバサの白柱が真横に迫っていたので回避し、中断ッ── 穂乃果のストップモーション中にツバサは両手の先に剣心を再度生成すると、 すぐさま穂乃果へ切りかかる! ツバサ「ハアァッ!!」 ツバサは右手の剣を振り抜いた後に左手、と連続して左右に切りつけるッッ 穂乃果はその両方を連続して後ろに下がって避け、衝撃波を両手から4つ放つとその後ろを追従するように駆ける! 穂乃果「…」ダッ ツバサは剣心を消滅させるとシールドを生成し、衝撃波を全て受けきるが、続いで来るのは穂乃果の蹴り ─────────ブンッ それもシールドで受けるが衝撃波を利用した蹴りの衝撃波は殺し切れず、ツバサはザザ…と足を後ろに滑らす ツバサ「…チッ」 穂乃果(…ここで押しきる!) 穂乃果は着地すると、瞬時にツバサヘ衝撃波を連続して放つ! ────ドドドドドドドド!!! 円錐形の歪みが幾つも現れては、その先端をツバサに向け超スピードで飛んでいく ツバサは幾つもの衝撃波を、シールドに両手を添えて受けていく。 空間を圧迫するような音と共に発射されるそれは、相当な威力とスピードを持って襲いかかり、ツバサはそれを全て受け止めていた… だが、体力的にもこれ以上受け切れそうにもない ツバサがちょうどそんな事を思っていた時、穂乃果からの衝撃波も偶然に止む ツバサ(なるほど…) そう、穂乃果も連続した衝撃波の射出により体力を大幅に消耗していたのだ… ツバサは穂乃果を一瞬、覗き見る──── 穂乃果「…」 バチッ ツバサ「…」 一瞬だけ…そんな両者の目が合い、相手の思惑を同時に理解する。 穂乃果「…」ダッ ツバサ「…」ダッ ならばと両者は互いに走り寄る!! 建設途中のビルの廊下に1つしかない小さな照明の下、穂乃果とツバサの距離が急速に縮んでいく… 穂乃果は右手を相手に振り抜き、向かいのツバサも同じように右手を振り抜く! そして両者が交錯した瞬間、 穂乃果「うあぁっ!!!」ドンッ ツバサ「があぁッ!!!!」ドンッ ツバサと穂乃果、両者は爆発したように吹き飛んでいく!!! ツバサと穂乃果は後ろへ、互いに猛烈な勢いで吹き飛ぶ 両者は空中を浮遊した後 ツバサはコンクリートで出来た打ちっぱなしの上を転がっていき 穂乃果も同じようにコンクリートの上を転がっていく… が ツバサの背後はビルの内側に面していたのに対して、穂乃果の後ろは外へと続いている 穂乃果が転がっていくコンクリートの床は途中で途切れ、その先は奈落… 穂乃果は意識が朦朧としたまま転がっていき、フワリと空中へ投げ出された 穂乃果「…」パシッ… が、間一髪でビルの縁を掴み落下を免れる 穂乃果「…うぅ」プラーン 強風に吹かされながら、ビルの側面と鼻先で向かい合う穂乃果。 穂乃果「…ふっ」ググ… 穂乃果「…」…グ…グ…… 穂乃果「…あぁっ……」プラー… 上へ這い上がろうとはするが、もうそんな力は残っていない そして、そんな穂乃果に迫ってきていたのはツバサ ツバサ「…勝負は決まったみたいね……」 ツバサはガラスの割れたビルの縁に掴まっている穂乃果を見下ろす 穂乃果「…くっ」 そんなツバサに穂乃果は睨み返すが、 ツバサ「…私もやることがあるのよ」 掲げた右手に白柱を生成すると、穂乃果の真上に移動させる 穂乃果「…ことりちゃんをっ!!」 ツバサ「諦めなさい」 穂乃果「やだよっ」 ツバサ「そう…」 穂乃果「ことりちゃんを返してっ!!」 ツバサ「………じゃあね」 穂乃果「ダメっ!」 刹那、 穂乃果の言葉もむなしく、白柱は強大な重力を伴いツバサの手から落ちた…… ────────────── 西木野総合病院の一室。 すっかり日の落ちた部屋ではベッドで横になっている少女と、やさし気な雰囲気を纏った少女がいた 凛「そうなんだ、」 花陽「…それでね」 凛「ねぇ、かよちん」 花陽「なに?」 凛「…凛に気使わなくていいよ、」 花陽「え?、…凛ちゃんどういうこと?」 凛「そのままの意味だにゃ、かよちん本当は行きたいんでしょ?」 花陽「…どこに?」 凛「皆のところに。一緒に、ことりちゃんを助けに行きたかったんだよね」 凛「凛が怪我して、心配だからこうして話してくれてるの分かるよ。すっごく嬉しい」 花陽「それなら良かったけど」 凛「…でも凛にはね、かよちんが行きたいけどさっきから我慢してるのも分かるにゃ」 凛「海未ちゃんと穂乃果ちゃんが行った時、そっちの方向見てすごく着いて行きたそうにしてたもん」 花陽「あっ…」 凛「…やっぱり?」 花陽「…///」 凛「だからさ、凛は一人でも大丈夫!」 花陽「凛ちゃん…」 凛「かよちんっ」 花陽「…本当に、いいの?」 凛「うんっ!…」 凛「…かよちんが皆を助けてきてあげて!」 花陽「凛ちゃんっ!」ギュッ 凛「かよちんっ!」ギュッ 花陽「…じゃあ、行ってくるね」 凛「気を付けてね、かよちんっ」 花陽「うんっ!」ダッ 花陽は凛に別れの挨拶を告げると、病室から飛び出し、暗い病院の廊下を走らないように早歩きでUTXに向かった ────────────── 無残にも崩壊したUTXの屋上、そこにはヘリコプターのバサバサというローター音が響き渡っていた。 ヘリコプター内でローター音に負けないように割と大きめな声を出しツバサはパイロットへ問いかける。 ツバサ「もう用意は出来てるの?」 「はい、もう行けます」 ツバサ「…じゃあ早く行っちゃいましょう」 「了解しました」 穂乃果らの抵抗もむなしく、ことりを乗せたヘリコプターはUTX屋上から夜空へ飛び立つ。そんなヘリコプター内にはパイロットとツバサ、そして装置に入ったことり。 ツバサ「…これで一段落ね」 「…とりあえずあそこに向かっておりますが、よろしいでしょうか」バタバタバタバタバタバタバタ… ツバサ「問題ないわ」 「分かりました」 ツバサ「…」 ツバサ「……この子、どこに連れて行くの」 「さて、私らにも知らされていないもので」 ツバサ「そう…」 「はい、…なにか?」 ツバサ「なにもないわ、運転よろしく。…私は景色でも眺めながら寝てるわ」 「了解しました」 ツバサ(これでやっと、開放されるのね) ツバサはヘリコプターの窓から、下に輝く秋葉原の町を見ながらひとりごちる ツバサ(…英玲奈とあんじゅは大丈夫かしら、まぁあの二人なら無事な気はするけど…) ツバサ(あとは、このまま目的地に着くだけね…) 「…あの、すみません」 ツバサ「どうかしたの?」 「いえ、あちらを見ていただいてよろしいでしょうか」 ツバサ「何?」グイ… ツバサが目を向けたのはUTXの近くに建設中の高層ビル、完成すればUTXの高さも大きく越えるだろう一番高い部分に赤色の航空障害灯が点滅していた。 ツバサ「あれはっ」 そしてツバサは鉄骨がむき出しになっている建築途中のビルの、吹きさらしになっている屋上に立つ人影を見つけた。 ツバサ「早く高度上げてっ」 「えっ?」 ツバサ「早くっ!」 まだ上がりきっていないヘリコプターの窓から、すぐ横に立っている建設中のビルをみるとそこには穂乃果の姿があった ツバサ「まだ生きてたのね…」 ツバサがふと見ると、 穂乃果は助走をつけるのか屋上で数歩後ろに下がっていた ツバサ「これは…」 第25話「トゥー バード」 穂乃果「…ツバサさんはツメが甘いよ」 白柱を穂乃果の真上に生成し、それを落下させトドメとしたのはツバサの持っていた自らへの自負。それに産み出されたチャンスを活かし… 穂乃果「あのヘリコプターだよねっ」 建設途中のビルの、風吹く屋上に立つ穂乃果。 その目線の先には先程UTX屋上から飛び立ったばかりのヘリコプターが見え、 それはだんだんと高度を上げながら斜め前方に飛行していく 穂乃果「…これならヘリコプターに届く」 穂乃果の立つビルの屋上に下からだんだんと近づいて来ているのが、ローター音で彼女には分かった 穂乃果「…(大丈夫、穂乃果ならやれる)」ゴク… そして、ここで急速にヘリコプターの上昇スピードが上がっている事にも 穂乃果「(逃がさないよっ)…」 ──────バラバラバラバラ… 穂乃果「………今だっ!」 助走をつけ、一気に走り出す ビルの柵のない縁が、走る穂乃果へ猛烈な勢いで迫ってくる 穂乃果「…はぁッ!」ダンッ そして、衝撃波を下に放つと同時にジャンプ!!!!! 穂乃果「…うわぁっ!」フワッ 舞ったのは夜空 穂乃果の遥か下方には 秋葉原のビル群の灯す光 夜の町に幾つも煌めき、その合間を縫う車もカラフルな蛍のよう そんな光景を眼科にちらつかせた穂乃果の視界の正面には上昇するヘリコプターが! 穂乃果「(もうちょっと!)」 ここでもう一度衝撃波を最大のパワーで射出! 穂乃果の体が空中で浮き上がり、ヘリコプターのランディングスキッド(ヘリコプターの足)へ接近!!! そして、 穂乃果「…よしっ!!」ガシッ ランディングスキッドを両手で掴むことに成功、第一段階はクリア! 次の段階は中に入ってことりを助ければいい 穂乃果「…フゥー……いくよっ!」 ヘリコプターに揺られ、ぶら下がりながら息を吐き出すと、 穂乃果は下を見ないようにしながら、風に吹かれながらもヘリコプターの側面を昇っていく 穂乃果「…」グイッ 穂乃果「ここに足もかけて…」ヨジッ ─────ブワァッ 穂乃果「うわっ!…」プラー 突風に煽られ、片手を放してしまう が、すぐさま体勢を元に戻す 穂乃果「あぶなっ!」ドキドキ… 穂乃果「…」グッ 穂乃果「…」グイッ 穂乃果「…ここまで来たね」 ヘリコプターのドアの真横につき、服をバサバサとたなびかせながら穂乃果は一旦停止をする 穂乃果「…ふぅ、……あとはこの窓を破壊して、中に…」 という所で ツバサ「しつこいわね…」バンッ ドアについたガラスを破壊する前にそのドアが開く、 穂乃果「ツバサさんッ!」 穂乃果がツバサを見ると、その手の平はこちらを向いていた ツバサ「落ちなさい」 穂乃果「(まずいよっ!)」ダンッ 物体をこちらに発射される前に、穂乃果はヘリコプターに飛び込む! ツバサを勢いで押し退け、ヘリコプターの機内に飛び込むと、ことりの入っている装置がパイロット席の後ろに乗っているのを見付ける。 しかし、ツバサからの右拳が迫ってきており、そちらに対応するのが先だ 精密なヘリコプター機内で互いに能力を使う事は出来ない 穂乃果は左手で受け止めると、その拳をつかんだままツバサへ右フック! ツバサはそれを腕の側面で受けると、内側から左ストレートを穂乃果へ振り抜く 穂乃果「…ぅくっ」 そして穂乃果は自らが出した腕を戻すも間に合わず、ストレートを諸に食らい呻き声をあげる。 続けてツバサが込心の右フックを見舞い、 相手の体勢が大きく崩れた所で、揺れる床に穂乃果を押さえつける。 穂乃果「…っ」ダンッ ツバサ「諦めなさい、」ググ 穂乃果「くそっ!」ジタバタ… ツバサ「…」ググ 穂乃果「…放せぇっ」ドォンッ 押さえつけられていた穂乃果は右手と左手からところ構わず、衝撃波を放つ! ツバサ「穂乃果さんッ……っ!」 右手から発された衝撃波はツバサの肩をかすめ、ヘリコプターの空いていた片方のドアから出ていく。 そして左の手から放たれた衝撃波は運転席へと向かう! ツバサ「……ッ…あっ」 衝撃波がツバサにかすり、力の抜けた間に穂乃果は拘束から抜け出す! 刹那、 ヘリコプターが大きく揺れた!! 穂乃果「…!」グラ… ツバサ「…っく」グラ… ヘリコプターから振り落とされないように、必死で機体に掴まり、揺れに耐える ツバサ「…くそっ!」 ツバサ「パイロット!起きなさい!」 ヘリコプターのパイロットに衝撃波が当たり意識を失ったのだ。 コントロールは失われ、ヘリコプターはランダムに曲がりながら除々に高度を落としていく ツバサ「起きてッ!」 「……はっ…今なにか…」 ツバサ「いいから、操縦してっ」 「分かりましたっ」 ヘリコプターの揺れに必死で耐えていた二人は、足場のバランスが戻ると、すぐさまツバサが穂乃果へ前蹴りをする 穂乃果はそれを外側へ受け流すと、鳩尾に下突く! 蹴りの体勢が終わっていないツバサに穂乃果の拳はクリーンヒット!! ツバサはヘリコプターの空け放たれたドア付近でふらつき、穂乃果はそこへ横蹴りをお見舞いしようとする…が、見切られ、逆に足を捕まれる 穂乃果「(しまったっ)」 足はツバサに捕まれ、右足の方から穂乃果は外へ投げ出されるッッッ! ツバサ「…さよなら」 上空から外に投げ出されながらも、ヘリコプター機内になにかに捕まれないかと穂乃果は手で探るが何もない 穂乃果「…(そんなっ)」 増していく浮遊感… ならば… 穂乃果「まだっ!」ガシッ 衝撃波を下に放ち落下を少しだけ遅らせると、穂乃果はツバサの手をがっしりと掴む!!! ツバサ「…ッッ!?」 穂乃果「…さよならじゃないよっ!」 ツバサは穂乃果につれられヘリコプター機内から、あっけなく空中に連れ出され…落下。 穂乃果とツバサは共に下へ落ちていく…… そして落ちる先には元の場所へ戻っていくかのように先程のUTX屋上があった そして落ち行く空中でも二人の間で行われる能力を使った格闘戦 穂乃果「(こうなったら衝撃波をヘリコプターに当てて)ことりちゃんを救うっ!」ドォンッ! ツバサ「させないわよっ!」ドォッ 穂乃果とツバサの上下が逆転しながら、互いに能力を放っては躱していく。 互いの隙を見抜いては空中で拳を振り抜き、能力を発動させる。 そして 穂乃果「やった!」 穂乃果の放った衝撃波がヘリコプターに当たり、煙を上げてバランスを失ったように動めく ツバサ「…やってくれたわねっッッ!!!」 両者は互いに回転するように、高速で落ちていく、 どちらを下にさせ、落下の衝撃を相手に与えるかの格闘が繰り返される ツバサと穂乃果は中空で衝撃波や、白い物体を周りに撒き散らしながら落下 そして ────────ズドオオォォンッッ!!!!! 両者は地面に激突する!!! UTX屋上の崩れた地面に猛烈な勢いで激突した二つの影 地に落ちた瞬間、瓦礫の粉塵が巻き上がり穂乃果とツバサの姿は消える パラ…パラ…… 宙にただよう砂埃が晴れ、 二つのシルエットが夜に栄える微かな白いLEDの光に照らされ、はっきりと輪郭をあらわす。 何者かが何者かの上に乗っている… 下に位置する者の周りを囲うように瓦礫が凹み、上に位置する者は馬乗りの体制から離れると、相手のそばに立つ ツバサ「…なかなか、やってくれるわね」 穂乃果「そうかな……」 ツバサ「そこは評価してあげるわ、」 穂乃果「…かはっ……」 ツバサ「…死になさい、」 クッション代わりにもなった瓦礫に受け止められた穂乃果を見下ろしながら、ツバサは右手に円錐形の物体を生成する。 ツバサ「私の目の前で、しっかりと」 穂乃果「…っく」 穂乃果は瓦礫の上で体を起こそうとするが、痛みと身体の損傷で起き上がることは出来ない ツバサ「…ヘリコプターも、もうダメみたいだしね」 そしてツバサのバックにヘリコプターが落ちてくるかと思うと、UTXの屋上に激突!! ────────ドゴオオオオオオォォンッッ! 派手に地面で爆発を起こす ツバサの背後から墜落したヘリコプターの爆風と熱風が流れだし、仰向けになっている穂乃果の髪を凪いでいく 穂乃果「そん…な…………」 ツバサ「あなたのせいよ…」 穂乃果「…こと…り……」 ツバサ「今度こそ、……さよならね…」 青い輪郭を纏いながら手の平で回転する白い物体、急速な勢いでツバサの手から離れ────── 穂乃果は瞼をぎゅっと閉じる 瞬間、 それは穂乃果の胸を貫いた… 穂乃果「…ガハァッ」 ツバサ「今度はあなたが息絶えるまでしっかりと見ていてあげる」 瓦礫にまでも貫通したそれは役目を果たすと溶けるように消え、 穂乃果「…っ……」 穂乃果の胸に空いた穴からドクドクと血が流れ出し、液体の中に赤色を主張しては瓦礫の隙間に染み込んでいく… ツバサ「…私の目の前で死んでもらうわ」 穂乃果「……っあァ…」 「「「「穂乃果ちゃんッッ!!!」」」」 そんな状況に突如、乱入した人物が一人 ツバサ「だれよっ」 花陽「そんな事させませんっ!!」 右手にどこから持ってきたのか割と大きめなナイフを片手に持ち、ツバサを見据える 穂乃果「…はな……よ…、ちゃ…」 花陽「大丈ですっ、そこで待っていてくださいっ」 穂乃果「……」ドクドク… ツバサ「まためんどくさそうなのが来たわね…」 花陽「…穂乃果ちゃんも死なせませんし、ことりちゃんも救いますっ!!」 ツバサ「…いいわ、やってあげる」フフ 燃え上がるUTX屋上、その避炎地となった瓦礫のサークルの上でツバサと花陽が対峙する 花陽「あなたを倒しますっ!」 穂乃果「…だめ……だ…よ…」 花陽「花陽があなたをっ!!」 ツバサ「…ここで立っているから…、来なさい?」 花陽「…いきますっ!」ダッ ツバサを見据え、一気に駆け出してからのナイフで右から左へ切りつける! ツバサは棒状の物を生成すると受け止めようとするが、ナイフは物体をすり抜ける ツバサ「何っ!?」 咄嗟に顔を左手で庇い、なんとかナイフの直撃を免れる そして間髪いれずに花陽は往復するようにツバサヘ連続して切りつけるッ 能力で防御が出来ないツバサは花陽からの連続したナイフの切り付けを、足を背後に動かしながら下がって躱していく 花陽(これならっ) が、刹那… ツバサは一瞬の隙をつき、花陽のナイフを持っている腕をがっしりと掴む ツバサ「…慣れない物は使うもんじゃないわ」ガシッ 花陽「…あっ」カラン そして腕を捻るようにされると花陽の手からナイフはこぼれ落ち、地面に突き刺さる ツバサ「はっ!」ドス そして一瞬の動揺を見せた花陽に、ツバサは渾身の膝蹴り! 花陽の鳩尾に膝が入り込み、うっ…、と背を丸めその場にうずくまる ツバサ「…悪くはないけど、実戦が足りないわね貴方は」 ツバサは上げた右手に剣心を生成し花陽の真上にあげると、一思いに降り下ろす 花陽「(今ッ)」 相手が能力に頼りきった攻撃をしたときが花陽のチャンス。痛みをこらえ、立ち上がってツバサの顔面に拳を振り抜く!!! ツバサの能力で産み出した物体など、花陽の認識内であれば効くことはない。 花陽が右から出した拳が風を切り、ツバサの顔面に向かい!!、殴る!!! 花陽の右拳にツバサの顔面を強く殴る手応え、感触が伝わってきた…… のではなく、今の花陽にあるのは腹部の焼けるような痛みのみ 花陽「…え?」 ツバサ「そこまで私はバカじゃないわ」 花陽「そん…な…」 花陽の背筋を、ある種の寒さと痛みが走っていく… ツバサ「能力が効かない位、さっき知ったわよ」 痛みに花陽は視線を下ろすと、腹に刺さっていたのはナイフ 先程、彼女自身がツバサとの対決の為に持ってきていたナイフだ… 花陽「あ…ぁ……」ガクッ ツバサ「ありがとね、…」 花陽「…ぁ」ス… 花陽「……」 ナイフを腹に突き刺したまま花陽は横にドシャリ、と倒れた… ツバサ「これでもう終わりね…」 穂乃果「は…な……よちゃ…ん」 ツバサ「…あなたたちのせいで私たちの計画はめちゃくちゃよ、」 穂乃果「でもっ…、それ…は……」 ツバサ「まぁ貴方達に悪い事をしたと思う事はあるわ、…でも私達の計画を邪魔した償いは受けて貰う」 花陽「」… 穂乃果「…あ…うぁ」ドク… ツバサ「…」 穂乃果「みん…な…ごめ………ん」 自分の体の胸あたりからドクドクと血液が流れ出るのを感じながら、穂乃果はここまでやってきた事を思い出していた 穂乃果(皆、ごめんね…私ことりちゃん助けられなかった……。皆一生懸命戦ってくれたのにね……) 心臓の鼓動と共に血が流れだしては、じんわりと瓦礫の隙間に吸い込まれていく。 穂乃果(…ことりちゃん、助けてあげられなくてごめんね。) 意識は段々と朦朧になるのと同時に、 心臓の活動も緩やかになり、ドク……ドク…と脈打つ間隔が長くなる 穂乃果(穂乃果が最初に助けないとか言ってたせいで遅れたからこうなったのかも……なんてね) 胸の傷口の感覚はすでに薄らいできており、最後まで諦めずに指先を動かそうにも、もう動きそうにない。 穂乃果(…皆と会えて本当によかったよ、……ありがとう…,……) 今にも消えさる意識の中、…… 穂乃果(じゃあね…) ──────ジュワワワワ 穂乃果(…………あれ…なに、これ……) 穂乃果(なんか胸が…熱いよ) 穂乃果(それに…腕が、動く…) 思わず胸に手を持ってくると、傷口の当たりをさわる。 穂乃果「え…?」 ツバサ「(起きた?)…!?……これはっ」 穂乃果「なにこれっ!?」 穂乃果の胸に開いた穴は、血液が沸騰するような感覚を覚えさせながらじわじわと小さくなっているのだ ツバサ「そんな筈は…」バッ… ツバサは思わずヘリコプターの墜落した地点を見る。 ツバサ「どういう事っ!?…機械ごと燃えてる筈なのに…それに、なぜ意識が」 そこには燃え盛るヘリコプターの残骸をバックに、南ことりが立っていた。 穂乃果「…ことりちゃん」 ことり「穂乃果ちゃんっ、ありがとう」 穂乃果「良かったよおぉ」 ことり「うんっ」 ツバサ「生きてたのね…、」 ことり「…そういう事だよ、ツバサさん」 穂乃果(すごい。…傷口が全部なくなってる) ツバサ「もう一度、捕まりなさいっ!ことり!!」 ツバサはことりに両手の平を向け、物体を生成する 穂乃果「させないよっ!」 ツバサの背後から、完全回復した穂乃果が全力の衝撃波を放つ!! ──────ドォンッ… ツバサ「…ぁ」 無防備な背中を撃たれたツバサは前方に吹っ飛び瓦礫に打ち付けられると、あっけなく気絶した ツバサ「…」フラ… ツバサ「」バタ 穂乃果「ことりちゃんっ!」ダッ ことり「穂乃果ちゃんっ!」ダッ ツバサを排除したことりと穂乃果は走り寄り、しっかりと互いを抱き締めた 穂乃果「ことりちゃんが戻ってきて、生きててよかったよっ」ギュ ことり「ことりもっ穂乃果ちゃんともう一度会えて嬉しいっ」ギュ 花陽「…」ユラ… 花陽「?……あれ?…」 花陽「…キヅガナオッチャッタノォ?↑」 ことり「花陽ちゃんも起きたみたいだねっ、」 穂乃果「花陽ちゃんっ!」 花陽「良かったですっ!」ダキッ 穂乃果「はなよちゃん…」ナデナデ ことり「…フフ」ヨシヨシ 花陽「うぅ〜」ギュ 穂乃果「…本当によかった。……他の皆も迎えに行って、皆で帰ろう」 ことり「そうだねっ♪」 花陽「はいっ!」 穂乃果「うん、じゃあっ…帰ろっか」 一件落着… A-RISEからことりを取り戻し夜空に月が高く上がった頃、3人は肩を並べ荒れ果てたUTX学院の屋上を後にする 直前、 「…どこに帰ると言うの?」 ────────ドオンッ ドンッ 花陽「…ッぁ」ドサ 突如、爆発音が二つUTXの屋上に鳴り響き 穂乃果「何っ!?」 小さなうめき声がし、穂乃果がそちらを向くと花陽が苦悶の表情で地面に倒れていた 花陽「っくあ゛ぁ…」 ことり「花陽ちゃんっ!」 片足と右脇腹が吹き飛ばされており、そこから真っ赤な血が生々しく、ダクダクと瓦礫を背景に流れ出していた 花陽「ぁ…」 穂乃果「花陽ちゃんっ!」 「その子が意識外の能力には対処できないのは本当みたいね、」 穂乃果「誰っ!?」 「…言っても分からないわよ」 穂乃果「花陽ちゃんをっ!!」 「貴方たちがA-RISEから話を聞いた以上、ここから帰す訳にはいかないの…」 ことり「あの人はっ…」 穂乃果「知ってるのっ?」 「私の事、知ってる?」 ことり「結構前、病院に行った時に真姫ちゃんのパパの近くにいつもいた人…」 「なるほど、確かにそうね」 穂乃果「花陽ちゃんに何をしたのっ?」 花陽「…うぅっ」 「爆発させただけよ…」 ことり「ひどいっ…」 穂乃果「爆発って、前から言ってたあの人?」 花陽「…その人は…凛ちゃんが倒しましたっ。…この人は別人、ですっ……カハッ」 ことり「花陽ちゃんはそのまま寝ててっ、怪我が…」 穂乃果「なんでこんな事をっ!?」 「UTX、A-RISEと国の繋がりを今はまだ世間に知らせる訳にはいかないの…」 ことり「なんで貴方にそんな事が関係あるんですかっ」 「…あなたは事情を余り知らないみたいね」 穂乃果「……じゃあ、…」 「そうよ。私がA-RISEそしてスクールアイドルを貴方達にけしかけたのよ…」 穂乃果「…皆の気持ちを利用してたのは、貴方なんだねッッ……」ググ… 「…そして音ノ木坂学院を廃校においやったのも…………この、私。」 穂乃果「…ッッこのぉっ!」 ことり「穂乃果ちゃんっ抑えてっ!」グッ 「…本当はことりさんさえ貰えれば良かったんだけどね、上手くいかなかったみたい」 穂乃果「…そうだよッッ!!」 穂乃果「うまく行くわけないっ、穂乃果達が止めたんだからッッッ」 「…ええ、だからこそ貴方達にはここで消えてもらうわ。ことりさんを残してね」 穂乃果「…ことりちゃんは渡さないし…ここで私達を消しても、他にもこの事を知ってる人はいるからねっ」 「……たとえば、音ノ木坂学院の生徒会長さんのこと?」 穂乃果「…っそうだよ!」 「そう?なら心配ないわ。場所の調べはついてるし、貴方の他の仲間もそう」 穂乃果「…そんな」 「死ぬ順番は変わるにしろ、全員なにも喋れないようにしてやるわ」 「…その中でも貴方達を一番最初に殺しあげる……。そうね、ここの次は絢瀬さんの所に行こうかしら」 穂乃果「皆の所には絶対、行かせないし絶対に皆を殺させない…」 「私を止めるなんて事、貴方達に出来るの?」 ことり「今度はことりが皆の為にっ…ここで貴方を止めますっ!!」 「私の能力を知っていて言ってるのかしら…」 穂乃果「知らなくてもお前を倒すんだよッッッ!!!」 「いいじゃないッッッ…」 ことり「行きますッッ!」 女医「………やれるものならねぇっ!!!」 ──────オオオオオオオォォォ… その女医は夜闇に映える炎を背後に、圧倒的なオーラを放ちながら血に濡れた白衣をたなびかせた… 第26話「μ’s ミュージックスタート!」 爆発したヘリコプターからいつのまにか燃え広がった火は十分其処らに燃え移り、猛烈な熱量で建物を焦がしていた 夜空にパチパチと炎が巻き上げられ、UTX屋上を赤く照らしているのは揺らめく炎 炎上する屋上を背景に ことりと穂乃果は白衣を着た謎の女医と睨みあう ことり「いくよっ穂乃果ちゃんっ!」 穂乃果「…ファイトだよっ!!」 ことりと穂乃果は同時にスタートダッシュ! ことりは先程花陽からもらったナイフを手に、穂乃果は自らの衝撃波を手に、女へ襲いかかる!! 女医「来なさいっ!!」 女は片手を前に出すと、走っている穂乃果の足元を爆破!その後ことりに迫ると、白衣の腰に差していた短剣を引き抜く!! 穂乃果の足元に赤色の点が現れたかと思うと、一瞬で爆発、衝撃波を射出し辛うじて避ける! ことりは女医からの短剣をナイフで受け止め、 ことり「はぁっ」 横蹴り!からのナイフで横一閃に切りつける! 蹴りは女医に足で受け止められてしまうが、続けたことりのナイフは頭の側面に突き刺さる! ことり「…やったの?」 刺さったナイフに頭から流れた血が伝い、地面にポタリと新鮮な血液が落ちる 穂乃果「やったよ!ことりちゃんっ!!」 女医「…」 女医「まだよ…」 穂乃果「え…?」 ここで女医は突き刺さっていたナイフをぬめり…と頭から引き抜く ことり「…きゃあっ!」 女医「…貴方が驚くのね、面白いわ」 すると頭の傷口が沸騰したような音を立てて小さくなっていく…そして遂には傷口はぴったりと合わさり、傷跡なんてものはなくなってしまった。 穂乃果「再生?…」 ことり「まさか…」 女医「気付いた?」 女医は頭から抜き出したナイフを地面に投げ捨てると、呆然としていたことりを蹴飛ばし炎へと追いやる ことり「…っ」ドサッ 受け身もとれずに蹴られたことりは、炎の手前の瓦礫の上に倒れ込む 女医「そこで待っていなさい…」 次の瞬間、ことりの目の前が爆発! 爆風に吹き飛ばされると、燃え盛る炎に投げ込まれる ことり「きゃあぁぁぁぁっ!!」 穂乃果「ことりちゃんっ!」 女医「大丈夫、彼女は死にはしないわ。…出てくる間に貴方の相手をしてあげる」 謎の女医が両手を前に出すと、辺り一面が爆発! 瞬足の間、 穂乃果は衝撃波を下に放ち空中で爆発を見届けるとそのまま女医にアタック!! 衝撃波を2つ同時に放ち、女医が衝撃波を横に避ける。 そして、逃げた先に穂乃果は至近距離で衝撃波を射出!! 腹を抉るようなクリーンヒット! 衝撃波を食らうと、女医は二メートルほど吹き飛ばされ地面の上をバウンドしていく 穂乃果「いけたかな…」 女医「っグ…」 女医はうつ伏せになり、骨が何本も折れていてもおかしくないような状態から何事もなかったかのように起き上がる。 女医「…無駄よ」 女医「すぐに再生するわ」 立ち上がると、落ち着き払った態度で白衣についた汚れを手で払う 穂乃果「…くそ」 穂乃果は姿勢を低くすると、更に警戒を高める 女医「……貴方たちに私は倒せないわ」 … 穂乃果の周囲の地面は爆発によってボコボコになっており、焼け焦げた地面が黒く偏食していた。 穂乃果「…がァッ」ボロ 女医「…もう終わり?」 穂乃果「…うぅっ」フラ… 女医「あなたにも消えてもらうわよ…」 穂乃果「(もう、動け…ない)…くっ」 女医「…諦めが悪いのね、あなた」 女医の肉体には一つもダメージが入っておらず、退屈そうに穂乃果へ手の平を向けた… 女医「…そろそろ、あの子も出てくる頃ね」 ことり「…ホノカチャ…ン…」ジュウウウ 女医「ほら来た、…ナイスタイミングよ」b ことり「ふざけ、ないでっ……」 穂乃果「ことりちゃん…、体が……」 ことりの体は炎に焼け、痛々しく見える全身は酷い火傷を負っているようだった。 ことり「…大丈夫、っ…元に戻るから」 ことり「…ふぅーーー」 ことり「…、ハッ」 すると ことりの目が薄く虹色に光り、肌が沸き立つように見えると焼けていた肌がジュワ…と元の姿に戻っていく ことり「…ハァ…ハァ……」 女医「へー、端からみるとこんな感じなのね」 穂乃果「ことりちゃんっ、ブレザー」 肌が焼かれていたという事は服も焼けていたという訳で、裸になっていたことりに穂乃果はブレザーを投げ渡す。 ことり「ありがと、穂乃果ちゃんっ」 ブレザーを来て上半身、と股下までギリギリ隠す事ができたことりは女医を睨み付ける。 女医「そんな怒らないでほしいわ」 ことり「…うるさいですよ」 穂乃果「…無事で良かった」 ことり「うんっ♪…ねぇ、ことりが合図したらことりの背中に衝撃波を撃つって出来る?」 穂乃果「えっ…出来るけど…。大丈夫なの?」 ことり「大丈夫っ、だから思いっきりやってね」 穂乃果「…わかった」 ことり「もう穂乃果ちゃんは休んでて…ことりがやるか───── 女医「爆ぜなさいっ!」 ことりのいる位置を連続して爆破! ことり(ここで決めるっ!) ことりはヘッドスライディングのように回避するが、膝下を爆発させられてしまう。 苦痛に顔を歪めた所へ、女医は更に容赦なく爆発を発生させる 爆炎が空間に幾重も重ねられ爆音が何度も鳴り響き、思わずその熱風に穂乃果は顔を覆ってしまう 女医(ここまでやれば、しばらくは再生できないわよね) 穂乃果(ことりちゃん…) めらめらと熱で揺れて見える爆心、爆発の余韻にはオレンジと赤色の空気。 なにも動かず、あるのはユラユラと動く赤のみ… 女医「これで…」 瞬間、爆心からナイフが一閃飛び出ると女医の額に正面からグサリと突き刺さる。 女医「」 ナイフが頭に突き刺さり、女医の動きは一瞬の停止ッッッ!!! ことり「穂乃果ちゃんっ!」 穂乃果「わかったっ!」 爆心から現れたことりの背中に、最後の力をふり絞り両手から全力の衝撃波を放つッッッ! 穂乃果の腕に血管が浮き上がりッ、発射した反動で肩が外れるッッ 空間をねじ曲げるように飛翔する衝撃波は風を切り、ことりの背中に猛烈なエネルギーをぶつける!!! ことり(きたっ!)ドォッ 衝撃波に押されたことりは前に押し出され、額にナイフが突き刺さったままの女医に急接近! ことりの体は右腕の肘から下をあえて残し、それ以外は全て蘇生!衝撃波の勢いに乗って欠損した右腕を前に突き出すッッッ!! ことり「……こんどはことりが皆を、…穂乃果ちゃんを守るっッッ!!!」 右腕の肘に当たる部分は女医の胸、心臓の正面に接触 刹那ッ、ことりの肘から先の部分が再生を始めるッッッッッ! 女医の胸までもを巻き込み、再生していくのはッことりの右腕!!!!! ─────ジュブブブブブブブブブブブブッッッッ ことり「これでぇっ!!」 女医「そんな事でッッッッッ!」 ことり「今度はッことりが皆を守るんだァッッッ!!」 (・8・)「死ねぇッッッ!!!」ズズズズズ 女医「ああああああああああッッッ」 ことりの腕は女医の胸を貫通ッッ!!! ─────ドスッ 欠損した腕は指の先まで再生ッ、右手が女医の背中から突き出るッッッ!!! 女医「…グハァッッッ」 女医の体は痙攣し、傷口から血をふつふつと吹き出していく 流れ落ちた新鮮な血液が体を伝うと、女医の白衣を赤く濡らしていく… 女医「…っつぅ」 ことり「ごめんなさい、でもっ…」 女医「…」 女医「………」 ことり「…こうしないとっ……」 女医「」 そして、動きが止まり力を無くした体がことりに頭を垂れ停止する。 ことり「…っ」 女医「」 ことり「やったよ…穂乃果ちゃんっ…」 背中からはことりの腕が突き出し、その腕は女医の心臓を貫通…… だが振り替えると、穂乃果は衝撃波の自らへの有り余る負担で意識を失っており、地面で倒れていた ことり「穂乃果ちゃんっ…」 数秒たったあとに、ことりは女医からズブリと腕を引き抜く。 ことり「穂乃果ちゃんがっ…」タタッ 手に付いた女医の生暖かい血もそのままで、自分の体の限界も知らず、無い気力を振り絞り 穂乃果の側に向かう… 瓦礫の上をゆっくりと歩き、足を前へ前へと踏み出していく。 ことり「(もう少しっ…)」ヨロ…ヨロ… …あとちょっとで穂乃果に届くっ…… 穂乃果へ手を伸ばし……… ことり「ほのかちゃ────」 ことりは穂乃果に触れる… ドサッ… 同時に限界を向かえ穂乃果の隣に膝から崩れるように倒れた。 そして、うつ伏せになったその顔は穂乃果の方を向いて……、 ことり「」 …静かに瞼を閉じた……。 …秋葉原の夜は黒に染まっていく……… 女医「」 A-RISE、そしてスクールアイドルまでもを操りことりを捕らえるためだけに、音ノ木坂学院を廃校に仕向けた謎の女医。 彼女が倒され、全てが帰着した静かなるUTX屋上─────── 穂乃果「」 そこでは穂乃果達を労るように燃え盛る炎が、深閑の夜闇に揺らぎ続けていた… さん…、ほの…… ほ………さ ほの………さん (だれか、が呼んでる?) ほのか…………ん ほのか…さ………ん 「…ほのかさん?」 大勢の人がUTX屋上にひしめいて慌ただしく消火活動や救急活動で往来している中、 穂乃果は消火が終わったのか、少し湿り気がある瓦礫の上で目を覚ました 消防隊員の叫び声や、救急のサイレンの音、水音、それらにかき消された声の主を確かめる 穂乃果「ことりちゃんのお母さんっ」 理事長「無事そうで良かったわ」 穂乃果「はい!」 理事長「穂乃果さん…ことりの事、ありがとね」 穂乃果「そんなって…、ことりちゃんと花陽ちゃんはっ!」 理事長「花陽さんの怪我は軽かったみたいで、一応だけど搬送されたから大丈夫だと思うわ、ことりはそこに」 穂乃果「ありがとうございますっ!」ダッ 穂乃果「ことりちゃんっ!」 「移送中ですので、少し離れて下さい」ガラガラ… ことり「穂乃果…ちゃん?」ガラガラ… 穂乃果「そうだよっ!ことりちゃん、大丈夫なのっ?」 ことり「大丈夫…。能力を無理な使い方しちゃったみたいなだけだから……」 穂乃果「無理させちゃったかな…」 ことり「……ねぇ…これで、ことりも皆を守れたよね」 穂乃果「うんっ」 ことり「……良かった…」 穂乃果「…意識は?」 ことり「フラフラするだけ…。花陽ちゃんは、どう?」 穂乃果「…さっき聞いたけど、もう搬送されたから大丈夫だって。なぜか分かんないけど…そんなに傷はひどくないって」 ことり「…ちゃんと再生出来たみたいだね。良かった………穂乃果ちゃん、少し疲れちゃったから…ことり寝るね……」 穂乃果「うん、いいよ…おやすみ。ことりちゃん」 「それでは」ガラガラ 穂乃果「お願いしますっ」 ことり「…」スゥ……zzzzz 穂乃果「…」ウン… 穂乃果「良かった…」 理事長「…」トン 穂乃果「…はい?」 理事長「友達の心配もいいけど、貴方の怪我も酷そうに見えるわ。運んで貰いましょう」 穂乃果「…そうですね、確かに肩とかがさっきから……いてて」 理事長「……もう一度言わせて貰うけど本当にありがとう…穂乃果さん。……冗談じゃなくて、貴方は学校の救世神よ。あなたが皆を先導して──────」 穂乃果「っ、ありがとうございますっ。でも穂乃果の力だけじゃないんです、皆が居なかったらこんなこと出来ませんでした」 理事長「ええ…そうね。その通りだわ、訂正するわね」 穂乃果「そんな畏まらなくても…」ハハ 理事長「…本当に感謝しているわよ……。」 理事長「…学校の救世主である、…9人の女神、μ’sにね」 ─────西木野総合病院 ことり「皆さんっ、お見舞いに来ましたよっ♪」ガラッ ことりが顔を除かせるのは西木野総合力病院の一室。部屋は共同病室となっており、なかで寝ているのは8人。 可動式になっている白いベッドの横並びの列が二つ、向かい合って設置されている。 穂乃果「あっことりちゃん、いらっしゃい〜」 希「ことりちゃんは本当に大丈夫なん?」 ことり「大丈夫だよっ、すぐに治っちゃったから」 穂乃果「それにさ、ことりちゃん他の人も回復出来るんでしょ?なら穂乃果の怪我も治してよっ」 ことり「いいよっ」 海未「ことり、治してはいけませんっ!」 にこ「あんたがそれ言っちゃうの?」 海未「分かってはいますが、そう言わなければ…」 絵里「だって海未は瀕死だったから手術の時、ことりに能力使ってもらったんでしょ?」 海未「それは分かっています。ただ、ことりの負担がかなり大きいので、自分で治療出来るならばするべきだと」 絵里「そんなの分かってるわよ、海未をからかっただけ」 海未「ひどいです、絵里」 真姫「それにしても回復って…ことりの能力を調べたくなっちゃうわね」ジロリ ことり「ピィッ」 凛「真姫ちゃんっダメだよ!」 真姫「当たり前でしょ?冗談よ冗談」 花陽「せっかく皆が揃ったんだからそんな事しないもんね、真姫ちゃん」 真姫「もちろんよ、花陽は良く分かってるわ」 にこ「その割には目がマジだったわね」 真姫「そんな訳ないじゃない、嘘つかないでほしいわ」 希「嘘か本当かウチが調べたるでっ!」ガタンッ 花陽「動かない方が…」 にこ「ちょっとお互い怪我してるn 希「ワシワシMAXや!!」ガシ 希「…ほうほう、」ワシワシ にこ「やめっ…んっ……」/// 希「なるほど、……」ワシワシ にこ「あっ……んっ…」/// 希「にこっちのm 真姫「ちょっと!希やめなさいっ!」 希「なんでや?」ワシワシ にこ「…ん…あぁっ…」/// 真姫「ここは病院だからよっ///!!」 希「なんでそんな赤くなってんのか知らんけど、止めたるわ」スッ にこ「はぁ……」// 真姫「…」/// 真姫「…で、にこちゃんが言ったのは結局嘘だったのかそうじゃないのか」 希「…ちょっと分からんかった、ごめんな」テヘ にこ「ちょっと!ただ揉みたかっただけじゃないっ!」 凛「…」フフ… 凛「…ちょっと不謹慎かもしれないけど、皆と一緒に入院するのも悪くないにゃ」 花陽「そうだね凛ちゃん、やっぱり皆でいるのって楽しいっ」 絵里「あっそうだ、今思い出したけど…真姫っ!」 真姫「何?」 絵里「ジュースよ!」 真姫「ああ、覚えてたのね?…フッ」 絵里「ちょっと真姫、なにを笑ってるのよ」 真姫「……いいわよ、約束だから希望するまでジュース奢ってあげるわね」 穂乃果「絵里ちゃんずるいー」 希「うちのも忘れんといてな」 真姫「…あなたは無しよ」 希「えー、なんでや!」 真姫「病室で騒いだからよ、反省しなさいっ」 希「厳しいなぁ、真姫ちゃんは」 穂乃果「穂乃果もジュースほしいー」 凛「凛もー」 海未「二人とも止めてください、子供じゃないんですから」 凛「凛たちはまだ子供だよ?」 海未「屁理屈を言わないで下さい、凛」 ことり「ことりも欲しいっ!」 海未「ことりまで…」 にこ「じゃあ私も!」 花陽「花陽も…欲しいですっ」 穂乃果「全員貰うけど、海未ちゃんは本当にいいのぉ〜?」 海未「…しかし……」 真姫「ちょっと!全員にあげるなんてまだ一言も言ってないわよ?」 ことり「本当にいいの?」 穂乃果「海未ちゃん?」 海未「うぅ…」 真姫「…ちょっと?」 海未「…」 海未「私もジュースが欲しいですっ!!」 ことり「言えたねっ!海未ちゃん」 真姫「…もう、しょうがないわね〜。皆に奢ってあげるわ、何本でもいいわよ?」 穂乃果「ほんとに?」 凛「やったにゃー!」 真姫「パパに事件の事で攻めれば、多分いくらでもくれるから大丈夫よ。…奢るのは、皆で退院した時でいいかしら」 絵里「それでいいわよ」 ことり「退院祝いにもなるしねっ」 穂乃果「退院したら、約束通り皆で遊びに行こうよっ!」 ことり「そうだね、どこいこうかなぁ」 絵里「…退院ねぇ、そしたら全部終わりって事かしら」 花陽「どういう事?」 にこ「絵里と希も、そして私もUTXの事が殆んど片付いたからその事じゃない?」 絵里「その通りよ。今までの時間を能力者として使ってたから、これからどうしようかなって…」 にこ「これからやることに困ってんのね」 凛「確かに…凛も何やろうかな」 真姫「勉強じゃない?」 凛「えぇー、それ以外の事だよ」 希「にこっちはアイドルやろ?」 にこ「ええ、もちろんよっ!スーパーアイドルになってやるわ」 ことり「…そういえばA-RISEの三人ってどうなったの?」 真姫「ここに入院してるわ」 希「…マジなん?」 絵里「…生きてたのね、殺さないとっ」グッ ことり「起きちゃダメですっ。怪我してるんだよ?絵里ちゃん」 絵里「それでも…」 にこ「っていうかなんで今になっても、そこまで復讐をしようと思うの?事情はもう十分、分かったでしょ?」 絵里「…わかったけど」 ことり「亜里沙ちゃんの事気にしてるんだぁ〜」 絵里「…そうよ」 ことり「……じゃあっ、こっち来ていいよ〜」フリフリ 絵里「…?」 ことり「これで大丈夫だよっ」 タタッ 「おねえちゃんっ!」バッ 絵里「亜里沙っ!?」ギュッ 亜里沙「おねえちゃんっ!ハラッセオ!!」ギュッ 絵里「本当に亜里沙なのっ?」ギュゥ 亜里沙「うんっ!亜里沙だよおねえちゃんっ!」 絵里「っ本当に?」 亜里沙「本当に、本当に亜里沙だよっ!お姉ちゃんっ!!」 絵里「亜里沙…」ギュ… 絵里「…嬉しくて、もう夢みたいよ」 亜里沙「亜里沙は夢じゃないよっ!」 絵里「そうね…」ナデナデ 絵里「……でも、どうして亜里沙が起きたの?」 ことり「昨日A-RISEの三人がことりの所にこっそり来てくれてね、亜里沙ちゃんはことりさんの能力なら治るって教えてくれたの」 花陽「ピャァッA-RISE?」 絵里「A-RISEが…」 海未「まさか、ことりはまた人に能力を使ったのですかっ」 ことり「ごめんね、でも本当にそれで終わりだったから」 にこ「まぁ、A-RISEも脅迫されてたみたいなもんだしね。悪に振り切んなきゃやってられなかったんでしょ」 穂乃果「……そうなんだ…。…ツバサさんたちは本当はラブライブを守りたかったんだって」 にこ「ああ、それは私も聞いたわ」 真姫「それにしてもやり過ぎだったけどね…」 凛「え、じゃあ、そのラブライブっていうのはどうなったの?」 にこ「あの女医?首謀者を倒して、ギリギリ形は保てたみたいだけど、消える寸前で…規模は更に小さくなったわ。」 花陽「そうなんですか、残念ですね」 にこ「まぁそのためにもにこがスクールアイドルで有名になって、ラブライブを盛り上げていくのよ」 海未「UTXも被害者だった、という訳ですか」 真姫「どのラインから被害者になるのかは知らないけどね」 希「なにはともあれ、亜里沙ちゃんが戻って良かったやん」 絵里「ええ、そうね」 亜里沙「亜里沙も嬉しいですっ!」 希「退院するまで絵里ちを待っててあげてな」 凛「じゃあ…凛たちっていつ頃退院出来るのかなぁ、それまでに皆がやる事とか決めようよ」 真姫「皆で行く所とかでしょ?」 にこ「そういうのはちゃんと皆で話した方がいいわよね」 花陽「それがいいですっ」 海未「そうですね、今せっかく揃っているんですから話しましょう」 穂乃果「何がいいかなぁ」 ことり「…穂乃果ちゃんなにかある?」 穂乃果「う〜ん…」 海未「穂乃果?」 穂乃果「あっ!」 穂乃果「ねぇっ…」 穂乃果「…穂乃果から皆に一つ提案があるんだけどさっ…」 ─────── コンコン… 理事長「はい」 真姫パパ『南理事長、予定通り話があるので参りました』 理事長「…どうぞ」 真姫パパ「失礼します」ガチャッ 理事長「…今日はどういった御用事で?」 真姫パパ「いやなに、娘達の事で話があるんだ。…そんなに警戒しなくても良いだろう」 理事長「警戒しますよ…」 理事長「…UTX関係者、及びに今回の事件、事故の関係者が何名か音信不通になっているそうですね…」 真姫パパ「それがどうかしましたか?」 理事長「…西木野総合病院院長の貴方に、何か知っている事があるのではと思いまして……」 真姫パパ「なるほど……知っている事もあるが、私が知らない事もある」 理事長「…現在までの貴方のサポート、それには十分感謝しておりますが、慎んで貰いたいこともあると言うことです」 真姫パパ「そうですか…まぁなんにしろ私の娘は死なくとも、今回の事件で入院することになったのは事実。」 真姫パパ「……廃校についてはどうでも良いが、その責任を取って貰わねばなるまい」 理事長「貴方はとんだ親バカですね」 真姫パパ「ほぅ…それを貴方が言うんですか?」 理事長「……なるほど、」 理事長「…言われてみれば確かにそうかもしれませんね」フフ 真姫パパ「…それでは本題に入りますが、今回の事件の鎮火に協力して頂きたい」 理事長「はい?先ほどそのような事は止めて欲しいと言った筈ですが…」 真姫パパ「今の話とこの話とは別です」 真姫パパ「現在マスコミ各社がUTXでの謎の炎上事件を嗅ぎ付けて、事件の判明の為に動き回っています」 真姫パパ「私の病院の方には彼女達の事は言わないように言っておきましたが、これでもし私の娘やその友達の関与が知れたら今回ばかりはかなり大変な事になります。」 理事長「…それはそうですが……」 真姫パパ「…なるべく騒ぎにならないように私も尽力しますので、あなたにもできるだけ関係各所に圧力をかけて事態の鎮静に努めて頂きたい」 理事長「なるほど…」 真姫パパ「よろしくお願いします」 理事長「……そうですね、娘達の為ですから…」 真姫パパ「はい…」 理事長「私にも出来る範囲というものはありますが、…関係するもの全てという事でしょうか」 真姫パパ「はい、娘達はもちろんUTX、A-RISEも含め、それらの情報がなるべく出ないようにして頂きたい」 理事長「繋がるものは全て…という事ですね?」 真姫パパ「そういうことです。」 ─────数ヵ月後 亜里沙「はぁ〜ドキドキする。ねぇ、お姉ちゃん達大丈夫かな」 雪穂「大丈夫だよ、きっと」 亜里沙「だってUTX学院でこの前凄い事件があったんでしょ?」 雪穂「ああ、屋上に保管してあったヘリコプターの燃料タンクがいきなり大爆発したってやつ?」 亜里沙「うんっ、でも友達が他にも色々あったって噂してて」 雪穂「そんな噂、嘘に決まってんじゃん。本当になにも無かったんだよ」 亜里沙「そうなの?」 雪穂「A-RISEもいい迷惑だよね、なんか変な噂が流れてるせいでスクールアイドルが完全に下火になっちゃったし」 亜里沙「じゃあ、ラブライブは?」 雪穂「うーんラブライブ自体はギリギリ残ったみたいだけど、消えちゃいそうなかんじなんだって」 亜里沙「ちょっと残念だね」 雪穂「心配しなくていいでしょ、これからお姉ちゃん達が出るんだしそんなの盛り返しちゃうって」 亜里沙「そうですねっ」 雪穂「まぁ、それにしてもお姉ちゃん達がUTXでA-RISEとライブするなんてね」 パソコン『もっと知りたい知りたい 過剰なLife いま夢の夢の中へ』 ─────UTX学院屋上 もっと知りたい知りたい 過剰なLife だから…Shocking Party!! Dancing,dancing! Non-stop my dancing Dancing,dancing! Non-stop my dancing Dancing,dancing! Non-stop my dancing Dancing,dancing! Let me do! \ワー/ \キャー/ 海未「穂乃果、そろそろ私たちの順番ですよっ」 穂乃果「は〜い」 あの後穂乃果が提案したのは、皆でスクールアイドルをやらないかっていう話。 学校の廃校の問題も終わって、皆でこれからやるなら何がいいかなって思ったらアイドルっていうのが思い付いたんだ。 皆歌もうまいし、個性があって魅力的だからスクールアイドルにすごくぴったりだと思ったの 皆、穂乃果の提案には凄く驚いてたみたい、 海未ちゃんなんかは破廉恥ですって言って顔が真っ赤になっちゃって、ハハ…可愛かったけどね。 にこちゃんがこれを聞いたときは凄く嬉しそうだったし、他の皆も乗り気だったんだ 海未ちゃんは説得に少しだけ時間がかかっちゃったけど、最終的には皆でアイドルをやるってことになったんだよ! 穂乃果「いくよっ!」 真姫「とりあえずはラブライブ予選の突破ね」 花陽「もちろんですっ」 凛「テンション上がってきたにゃー!」 絵里「…A-RISEなんかぶっ潰してやるわ」ギラ 希「マジやん…」 にこ「マジでやんないでどうすんのよ希」 希「そのつもりやけど意味が違うって、…。…エリチちょっと力抜いときー」 絵里「そんなに入ってたかしら、ありがと気を付けるわ。」 希「それがええやん?」 海未「少し緊張してきました…」 ことり「大丈夫だよっ、ここまで皆とやってきたんだもん」 海未「確かにそうですね、…ええ、なんだか大丈夫な気がしてきました」 にこ「…気合い入れていくわよっ!」 あんじゅ「…私たちはもちろんだけど、あの子たち、こうやってアイドルしてるのが妙にしっくりくるのよね。」 英玲奈「確かに。…スクールアイドルを盛り上げてくれるような…もしかしてツバサ、それを狙って彼女らを誘ったのか?」 ツバサ「さぁね、でもいちμ'sのファンとして私は彼女達のことをサポートしたつもりよ」 あんじゅ「これでラブライブがまた息を吹き返すといいわね、」 英玲奈「今度のμ'sが救うのは学校ではなく、ラブライブということかな?」 ツバサ「…うまいこと言ったつもりかしら、英玲奈。…私達がいればそんなものは十分じゃない?」 あんじゅ「それもそうね」 ツバサ「まぁ、これからお手並み拝見ってところね」 実際にやってみたらやっぱり皆は穂乃果の見込み通りぴったりで、そんな中でA-RISEとも仲良くなって… こうやってアイドルとか、廃校の阻止とか、この9人で大きなことを成し遂げようとする今が最高に楽しいんだ 花陽「そろそろ始まりますっ」 にこ「いよいよね…」 穂乃果「うんっ…。皆となら絶対やれるるっ!」 コク… そして、なんだかね。 皆と出会ってこうやってアイドルをやるのがまるで運命だったみたいに時々思うんだ。 穂乃果「よーしっ!それじゃ行くよっ!!」 それぞれに性格や個性があって、9人で調和して支え合ってる。 それこそが私達なんだって、 異能で戦っていてもアイドルになってもどんな時もずっと離れない絆で繋がってる…それが、私達μ's…… 穂乃果「1!」 ことり「2!」 海未「3!」 真姫「4!」 凛「5!」 花陽「6!」 にこ「7!」 希「8!」 絵里「9!」 「「「μ'sミュージックスタート!!」」」 The End ここまで読んでくれて感謝 バトルは地の文で書いたけど、自分が読みたいシーンがちゃんと入れられてよかったわ。 カッコ良く改編できたし自分的にはまぁまぁ満足しました。バトル物で「うちを入れて9人や」とかずっとやりたかったんだよ。 評判よかったら、Aqoursバージョンとか続編書くかもしれないからその時はよろしく 異能で戦ったらというパラレルだけど、最終的にアイドルに収束する気がしたんだよね。 読了おつかれ それじゃあまたどこかで 前作知らなかったから超速で続き読めて楽しかったわ 乙 乙。ことりの伏線も色々凄いな、めっちゃ面白かったわ。 やっと読めたよ大作で面白かった。 ちゃんとラブライブ要素もよかった乙 残ってたから保守もかねて 読み返して変更したシーン希の語り 2レス目から、 あんじゅ「ええ、貴方が妹を昏睡状態にしたの」 希「違うっ!」 絵里「希ッ?…」 あんじゅ「あら、お目覚めなの?」 希「…えりちがやったんとは違うで」 あんじゅ「今までの聞いてた?」 希「今、目が覚めたところや」 あんじゅ「なら説明してあげるわ」 希「別にしなくてええで、うちは分かってるから」 あんじゅ「それで?」 絵里「…いいのよ、希。私のせいなの」 あんじゅ「そう言ってるわよ?」 希「違うって言ってるやろ…」 希「えりちが主な原因だから?いいや、違うで」 希「…えりちを亜里沙ちゃんが探しにいってしもたんは事実や、でもそれが直接亜里沙ちゃんの昏睡に繋がったわけやない。」 あんじゅ「それで?」 希「分かったんや、あんたの能力は手に触れた物体の重力の大きさを変える能力。」 希「…あんたが建物を破壊する時はある部分に集中的に重力をかけ、それで崩壊を起こさせる。」 希「…そして大きなもの、頑丈なものを対象に破壊しようとすればするほど、崩壊を始めさせる為に力をかけ続ける時間は増えていく。」 あんじゅ「何が言いたいのかしら、」 希「まして現場はあんな巨大で頑丈でもあるショッピングセンターや。…あんたの能力を建物を崩壊させる長押スイッチと仮定しよか。」 希「建物を崩壊させるにはボタンを連続して押さなければいけない。途中で離せば崩壊は始まりもしない」 希「…そんなボタンを押しながら、あんたは崩壊地点を見つめてたんや」 絵里「なるほどね、…」 希「…亜里沙ちゃんがもし来てしまっても、崩壊を止めるのに間に合わないなんて事はないんや。崩壊する本当の直前に来た事を除けばやけど、そんな事は殆んどありえんのよな」 絵里「つまり、故意的に亜里沙を巻き込んだとしか考えられない…」 あんじゅ「…」 希「それに病院に搬送させて、異能を持ってるか秘密裏に調査も出来るって訳や…」 あんじゅ「…そこまで知ってるのね、さすがだわ」 絵里「…あなたなのね?」 あんじゅ「ええ…」 絵里「……そう…許さない」 あんじゅ「望むところよ」 絵里「本当にムカつくわね」 希「…えりち、雨量は十分やで、」 廃ビルの屋上を全て埋め尽くすように貯まった雨水が、今も水面を揺らがせながら降りしきる雨を受け止め続けている カットしたシーン(短め) 建設途中のビルに穂乃果を見つけた場面の続き>>65 の後 そしてちょうどヘリコプターがビルの近くまで来ると穂乃果は全力失踪のダッシュ! 穂乃果「…」タッタッタッタッ 充分な早さを得た穂乃果はビルの端で一歩踏み出すと、大きく踏み切って────── 穂乃果「…フっ!」ダンッ ツバサ「早く上がれないのっ?」 穂乃果「…」フワッ 「やってますっ!」 穂乃果「…よしっ!!」ガシッ ───────グワンッ…とヘリコプターが横に傾き、揺れる ツバサ「やられたわ…」 「どうしますかっ」 ツバサ「そのまま目的地へ向かって、私が相手をするわ」 「分かりましたっ」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
read.cgi ver 07.4.7 2024/03/31 Walang Kapalit ★ | Donguri System Team 5ちゃんねる