穂乃果「敗北を知りたい」千歌「シンクロニシティ?」
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鞠莉「そう」
鞠莉「シンクロニシティ」
鞠莉「一見無関係に隔絶された物質や生物、果ては思想が」
鞠莉「地球規模で同時同様の変化を起こす」
鞠莉「そういう現象よ」
千歌「…それが一体…」
鞠莉「ここ数日中にここ日本…いや内浦にとってもワンダフルな人達が上陸する」 ゴロゴロ…
刑務官1「気をつけろッッ」
刑務官1「猛毒を持つ大型の猛獣と思えッッ」
刑務官2「カ〜〜〜ッこれだきゃ嫌だっつったのになァ」
刑務官1「絶対に話かけるなッッ」
ゴロゴロ
1人の少女が厳重に拘束された状態で台車に乗せられ、死刑台へ運ばれている。
刑務官1「停止!!!」
ピタッ
少女の首に縄が掛けられる。聖書を手にした神父が一歩前に出た。
神父「ミスコウサカ」 ・アメリカ 高坂穂乃果
神父「ミスコウサカ」
神父「言い残す言葉は」
穂乃果「……………」
敗 北 を 知 り た い
神父「………」ポカーン
刑務官1「やれ」
刑務官3「はい…」
刑務官が少女の命を絶つレバーに手をかける。
起きてはならぬ事が その時起こった!! 理亞「ラブライブは遊びじゃない!そんな風に考えていた時が私にもありました」 穂乃果「刑やめーーーーーッッッ」
全員「!!!」
少女のよく通る声が反響し、水を打ったように静まり帰る刑場。
レバーは下ろされない。誰も動かない。――刑は一向に執行されない。
穂乃果「キミ」
刑務官2「ハッ」ケイレイ
穂乃果「解いて」
穂乃果「拘束具(コレ)」
刑務官2「かしこまりました」 穂乃果「…」
ガチャガチャ
一人の刑務官が少女の拘束具を解き始める。その他の人間はやはりただじっと立ち尽くしている。
ガチャガチャ
穂乃果(いつもそう)
穂乃果(キミたちは私につまらない勝利をもたらしてくれる)
刑務官2「完了いたしました」ガチャリ…
穂乃果「ありがとう」
少女は刑場を歩いて出ていく。もちろん他の誰も動かない。
穂乃果「内浦―――だね」
―――
千歌「…スゴい…」
鞠莉「問題なのはここからよ」 ・イギリス 西木野真姫
刑務官a「なに?」
敗北を知りたい?
刑務官a「ハッ。それが最後の言葉かね。では質問しよう真姫ちゃん」
刑務官a「この結末も君にとって勝利………とでも言うつもりかね」
少女が電気椅子に拘束されている。
刑務官a「ここから見る君の人生の最後の姿は正に敗北者そのものといった風情だが…」
真姫「………」
刑務官a「いずれにしろ死の手前…ほんの一瞬ではあるが…」
刑務官a「君は自分の夢が実現したことをイヤでも実感できるだろう」
刑務官a「はじめいっ」サッ パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ…
刑務官a「やめっ」サッ
ピタッ
人間の致死量を大きく上回る高圧電流が一分間流れ―――――刑は執行された。
刑務官b「………」フゥ
バンッ
刑務官ab「!!!」
電気椅子が………空席になっている……………。
真姫「どうしたのかしら?緊急事態発生よ」 刑務官b「ヒッ…」
グシャッ
ドサッ
少女のハイキックが入り、刑務官bは崩れ落ちる。恐ろしく早い。少女が天才だとして、さらに血のにじむ鍛錬を重ねてきたとしても、それらによってこれほどの蹴りが手に入るのだろうか…?
刑務官a「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ」
真姫「拳銃を抜きなさい。」
真姫「貴方の腰に下がった近代兵器の使用を許可すると言っているの」
真姫「人と猛獣は銃というハンデがあって初めて対等と言われるけど」
真姫「私と貴方の戦力の差はそれ以上よ」 刑務官a「ア〜〜〜〜〜〜〜!!!」
ドッ
刑務官aは拳銃を抜きかけたが、少女の右ストレートが彼の顔面に到着する方が早かった。
ドシャアアアァァァッ
真姫「…甘いよ甘いそんな装備じゃ」
少女は歩いて部屋から出ていく。追うものは誰もいない。
真姫「逃げられるわけ無いじゃないか…」 ・ロシア 綾瀬絵里
ここを よじ登ったというのか……
ミサイルの発射口の中に看守が二人。呆然と上を見上げている。
看守1「身長162cmの少女が――なんの突起もない100mに及ぶなめらかな金属の壁を…」
看守1「いったいどうやってッッッ」
看守2「一つ考えられることがございます」
看守2「バレエ」 看守2「単に踊る――というだけのスポーツなのですが」
看守2「その実奥は深く、片足、その指の先だけを頼りに全体重を支える技術が幾通りも存在し」
看守2「その道の一流となれば恐るべきバランス感覚で半径1p大のコインを足場に立つことも可能と聞き及びます」
看守2「この刑務所はもともとはミサイル基地を改造したもの…」
看守2「この発射口も幾多の発射実験と厳しい自然条件にさらされその壁面は必ずしもなめらかではありません」
看守2「わずかの傷…わずかの錆…」
看守1「そんなものに足をかけて登ったというのか!?100mもの垂直の壁だぞッッ」
看守2「エリーチカの身体能力は特別中の特別…。もし彼女がスクールアイドルに手を染めなければ我がロシア共和国に幾つの金メダルをもたらしたことか…」
あのエリーチカならあるいは!!! 外に出て、囚人を捜索する看守ら。
看守2「所長…たしかこの先には…」
看守1「ああ…もしエリーチカがあの場所に立ち寄っていたなら…その通りだ」
看守1「昨日スイスからやってきた…」
エマ・ヴェルデが危ない!!
宿舎に入っていく二人。彼らが部屋に入ると―――
看守1・2「エマッッッ」
エマ「あへっあへっあへっ」ビクンビクン 看守2「スイスの巨乳がッッ」
看守2「巨大なスイスの豊乳がッッ」
看守1「…当たり前だ………。」
看守1「これは胸の大きさを競う競技ではないのだッッ」
看守1「純粋な闘争でエリーに勝てるわけがないッッッ」
看守2「所長ッッ」
部屋の壁に文字が書かれている。
『看守諸君、内浦で会いましょう♡』
――
千歌「…あの…エマちゃんが…」 ・アメリカ 南ことり
記者「万年筆、ライター、腕時計…」ガチャ…
記者「まるでギャンブルで負けたようだな。もういいかな。」
看守a「申し訳ございません。タイピンとカフスボタンを……」
記者「やれやれ。」
記者はあきれ顔でそれらを身体から外した。
記者「いくら超凶悪犯人とはいえ、奴さん拳銃も通さない特殊アクリルの檻の中だろ?」
看守a「これは二日前ことりに会いに来たカウンセラーです。」ヒラ…
看守が見せた写真の男は、見るも無残なことになっていた。 看守a「彼は不用意にことりに近づいた。我々が大声で注意したときはことりの狩りは終了していた。」
看守a「奴の手先は恐ろしく器用なのです。まるで超一流のデザイナーのように…。全く気づかれずに人の物をくすねてそれを躊躇なく武器として使用するのです」
記者「………一応、ベルトも外しておこうかな」アセアセ
看守a「というより当然の心がけでしょう。」
看守が記者をことりの檻まで案内する。
看守a「奥の左側です。ことりの質問や挑発には決して答えないように」
記者「………」コクリ
びくつきながら歩みを進める記者。時間をかけてなんとか檻の前まで来た。が、 記者「いない…」
看守a「なッ…」
ことり「看守諸君!お世話になりました!」
ことり「ことりはたった今から内浦へ向かいます!」
突如、外?から件の少女の声が聞こえる。
看守a「バカな…ここは…」
ことり「わかるかな看守諸君ッ、ことりはねッ、敗れ去りたいんですッ」
看守a「ここは…」
上空200mだぞ!!! ・航空刑務所の外。
少女が立っているのは一歩でも足を踏み出せば上空200mから地上に叩きつけられる位置である…………。
看守b「見つけたぞことりッ」
看守b「中に戻るんだッッ」
ことり「バイバイ」ピョンッ
ヒュウウウウウウ…
看守b「バカかてめェェッ!!」
ことり(残念でしたね看守の皆さん…私にはあなた達に教えていないことがまだまだあるんです…)
ヒュウウウウウウウ…
ピィン
ことり(例えば…) ・日本 園田海未
看守A「それにしてもこの娘が…」
看守B「屈強で鳴る受刑者十数人を………」
ガラス張りの檻の中に一人の少女が収監されている。その前で二人の看守が話している。話題は目の前の少女のことらしい。
看守A「なにか武術を使うとか…?」
看守B「イヤ…それが…」
看守B「弓矢……らしいんだ」
看守A「弓矢?」
看守B「弓矢らしいものを隠し持ってそれを使用したとは聞いている」
看守A「大丈夫かな…こんなガラス張りで…」
看守B「防衛省から取りよせたロケット砲もハネ返すってシロモノだ」 海未「貴方達…」スッ…
看守B「動くなッッ」ビクッ
海未「地球上で最も強力な武器が何かワカりますか……?」
看守A「動くなと言ってるンだッッ」
看守B「撃つぞッ」
海未「特製強化ガラス越しに拳銃を向けてどうなさるつもりですか?」フフ
看守AB「〜〜〜ッッ」 海未「最も強力な武器というのはですね…」
弓を引くポーズをとる海未。ポーズだけで手には何も持っていないように見えるが…?
パッ
ピシピシッ
彼女が握っていた手を放すと、特製強化ガラスにひびが入り、そして…
ガラガシァァアア
看守AB「〜〜〜〜ッッ」
海未「―――――ですよ。」
海未「鈍いのですね…」ザッ…
海未「内浦に向かいます。敗北を知るために」 鞠莉「シンクロニシティ」
鞠莉「私たちスクールアイドルにとって伝説の5人」
鞠莉「同じ時、同じ言葉を残して内浦へ向かっている」
千歌「…なにしに来るの内浦まで」
鞠莉「それはモチロン…」
ダイヤ「私たちと闘いにですわ!」バァーン
千歌「ダイヤさん!」
鞠莉「もー!私が言いたかったのに〜!」
千歌「私たちと闘いに…って……」 ダイヤ「千歌さん。貴方、少し自覚が足りないのではなくて?」
千歌「じかく?」
ダイヤ「この冬、私たちはラブライブを制したのですよ!いうなればスクールアイドルの頂点に立ったわけです!そしてμ'sといえばスクールアイドル界の伝説!神に等しい存在ですわ!つまりこれは…」
鞠莉「現王者と絶対王者!!真に強いのはどちらか、全面戦争ってこと!!」
ダイヤ「ですわ!」
千歌「無理やりすぎるよソレ…」 ダイヤ「お黙りなさい。現にμ'sの5人は着々とこちらに向かってきているのですわ。」
千歌「そんなこと言われたって…私たちはどうすれば…」
鞠莉「もちろん、迎え撃つわよ」
ダイヤ「当然ですわ。μ's相手だからといって、退くわけにはいけません。現王者としてのプライドを持って、全力でお相手するしかありません」
千歌「…でも…μ'sは5人しか来てないんですよね。私たちは9人…。5対9ってちょっと卑怯なんじゃ…」
ダイヤ「おっしゃる通り、5人で向かってきているμ'sに9人で挑むのはスクールアイドル道に反しますわ。ですので、我々Aqoursからも、5人を選抜します!」 千歌「!」
千歌「…そのメンバーの中に私は…」
ダイヤ「当然、入ってますわよ」
千歌「やっぱり!」
鞠莉「当たり前じゃない。千歌っちはAqoursのリーダーなんだから」
千歌「うう…あんまり自信ないよお…」
ダイヤ「残りのメンバーについては、これから私と鞠莉さんで協議して決めます。その後の具体的な動きについては、追って連絡しますわ。ですが千歌さん、このことはくれぐれも他言しないよう…」
鞠莉「関係ない子に知られたら、色々とめんどくちゃいからね」
千歌「…はーい…」 ・翌日。内浦のとある喫茶店
聖良「…千歌さん?」
千歌(まだあれ以来ダイヤさんからなんの連絡もない…誰が選ばれたんだろう…っていうかμ'sと闘うなんて…)
聖良「千歌さん」
千歌 (私なんか普通なのに勝てるわけないじゃん…)
聖良「千歌さん!」
千歌「えっ、あっ、ハイ、なんですか?」
聖良「…大丈夫ですか?何か悩みでも…」 千歌「…えーと…」
千歌 (…聖良さんなら…?バク転だってできるし…いや)
千歌「あー!この店あっついなぁー!暖房いれすぎだよー!」
店員「」ジロッ
千歌「あ…いや…スイマセーン…」
聖良「…本当にどうしたのですか?私でよければ、相談に乗りますよ」
千歌「………」
千歌 (聖良さんなんてAqoursでもないのに、巻き込むようなことできないよ…)
聖良「…そうですか……。…仕方ありませんね。無理言って申し訳ありません」
千歌「聖良さんが謝ることじゃ」 聖良「しかし千歌さん、厳しいことを言うようですが、リーダーである貴方がそのように暗い顔でいるのは、Aqoursにとってもマイナスだと思うんです。」
千歌「!」
聖良「スクールアイドルは、私情をステージの上に持ち込んではいけません。例えメンバーと喧嘩中でも、ヨーイドンがかかればいつでも踊る、そういう気持ちが…」
千歌「…あ…あ…」ガクガク
聖良「…千歌さん?」
千歌「聖良さん…うしろ…」
聖良「え?」
絵里「ヨーイドンよ」 聖良「!!あなたは…!」
ヒラッ
聖良「えッ!?」
絵里「ハラショー…すごいパンツね」
聖良「〜〜〜〜〜ッッ!!あなた…」
ズキュウウウン
千歌「や、やったッ!!」
聖良「あっあっ」ビクンビクン
千歌「酷い!純情な聖良さんの唇をいきなり…!」
絵里「ヨーイドンでしか踊れぬ者はスクールアイドルとは呼ばない…。やはりこの程度ね、
Saint Snow…素人にしか見えない…」 鞠莉「出揃ったわね」ザッ
絵里「!」
千歌「鞠莉ちゃん!」
鞠莉「二人とも、私についてきて」
絵里「…私はあなたに命令される筋合いはないわね」
鞠莉「お仲間の4人はウェイトしてますよ。絵里ちゃん遅いよーってげきおこぷんぷんまる」
絵里「…」
鞠莉「それに私について来てくれたら、もっと美味しいフルーツを4つ、ご馳走できるかも。もっとも、逆にアナタが食べられることになるかもしれないケド…」
絵里「…面白いわね」 ・浦の星女学院校庭。
穂乃果「あー!絵里ちゃーん!」
絵里「遅くなってごめんなさい」
真姫「どうせ、もう何人か食べてきたんでしょ?」ハァー
海未「破廉恥です!絵里!貴方という人は…」
ことり「海未ちゃん、久しぶりに会えたのに怒らないで〜」
千歌「…ほ、ほんもののμ'sだあ…」
千歌(そしてこっちの四人は…) 曜「全速前進!だね!」
善子「ハザード、開幕…クックック」
果南「こういうのって、なーんか負けたくないよねー」
梨子「みんな、ちゃんと気を引き締めて」アセアセ
千歌「曜ちゃん、善子ちゃん、果南ちゃん、梨子ちゃんか…」
千歌(流石に上級生中心…)
千歌「って、アレ?…ダイヤさんと鞠莉ちゃんは!?」
鞠莉「私たちはとりあえず保留ね」
千歌「ずるいよー!なんで…」 ダイヤ「千歌さん。μ'sのメンバーは、ここにいる五人だけですか?」
千歌「!」
ダイヤ「メンバー1の俊足で “デンジャラスライオン”の異名を持つ星空凛、白米への愛と不屈の魂を秘める小泉花陽、わしわしとスピリチュアルパワーの二刀流・東條希、そして大銀河宇宙No.1アイドル矢澤にこ」
鞠莉「今現在居ないからといって、残りの四人が後からやってこない保証はないわ。そのときは、今回選ばれた五人以外が、相手をすることになるのよ」
ダイヤ「相手のメンバーとの相性なども考えて、今回のメンバーを決めたのですわ。決して自分が楽をしたいがために外れたわけではありません」
千歌「…………」
果南「三人とも、いつまで話してるの?みんな待ってるよ」
穂乃果「そうだよー、ダイヤちゃーん!」
ダイヤ「ダイヤちゃん…!?」ジワァ
鞠莉「ソーリー、私が仕切るわ」
ダイヤ「あっ、ちょ」 鞠莉「まずはじめにクエスチョン。皆さんがここにやってきた理由を聞かせてもらえるかしら?」
真姫「その質問を…私たちに問う権利が貴女のどこに?」
穂乃果「真姫ちゃん、上級生だよ」
真姫「ヴェエ!?アニメ時空なら私の方が…」
絵里「そうね、上級生の質問には答えなきゃね」
絵里「あなたが私を連れてきた――と言うより私が誘いに乗った」
穂乃果「癒される場を求め続けてたどり着いた――としか言いようがないね〜」
ことり「匂い……かな、ここの匂いにつられて―」
海未「この日本、今年のラブライブ決勝を見たなら誰でもここを知っています」
真姫「競技者じゃない――強者に会うため、気が向くままに…」
鞠莉「…スバラシイ…皆さんはスバラシイ細胞を持ってる…」フルフル
鞠莉「ご褒美に敗北をプレゼントするわ」 千歌(自分はやらないくせに…)ムー
善子「それで、ルールはどうするのよ?」
鞠莉「前田光代方式を採用するわ。どういうものかというと…」
果南「うーん、良いんじゃない?ルールなんてなくって」
鞠莉「ハァ?」
穂乃果「それ良いねー!私も難しいの苦手なんだよー!」
ことり「サバイバルっていうのかな?」
海未「つまりこういうことですか」
お互いの五人がいつでもどこでも相手の五人の誰かを狙う!! ことり「お裁縫してるときでも」
海未「山頂でも」
絵里「女と寝てるときでも」
曜「船の上でも」
果南「海の中でも」
千歌「恨みっこなし…ってこと!?」
鞠莉「いつでもどこでもって……」ハッ
ダイヤ「……では…」
海未「そう――」
もう開始まっているということです 静寂。強者達の発する闘気で空気が歪む。まさに一触即発。
しかしその緊張感は、欠伸交じりの声によってかき消された。
穂乃果「じゃあ、私はホテルに戻るねー」ファ…
穂乃果「のっぽパンいっぱい買ってあるんだ。食べ比べしなきゃ」
穂乃果「お休み…」ズチャ…
ことり「フフ…」
海未「ふむ…」
鞠莉「とりあえず…試合開始ということで…」
鞠莉「解散しますか…」
ダイヤ「…ですわね」 ・帰り道
千歌(どうしよう…大変なことになっちゃった…)
千歌(やっぱりビシッと断れば良かったよ〜〜〜)
千歌(私なんか普通だし一番に狙われそう…)
千歌(曜ちゃんや果南ちゃんは強いからいいけどさ……)
千歌「あれ?」
千歌「そういえば梨子ちゃん………どこ行ったんだろ」
一人で帰る千歌の後を何者かがつけている………。 ・人通りのない夜道。
絵里(あんな美味しい五人の…誰とやってもいい…)
絵里(…全員食べちゃうのもいいわね…)ペロリ
???「………」ヌッ…
絵里「!」
聖良「さっきはどうも」ニッコリ ・賑わっている市街を二人の少女が連れ立って歩いている。
梨子「眼でわかったわ」
梨子「ビリビリきたもの」
梨子「あなた私に惚れてる」
ことり「ありがとう…すぐに声を掛けてもらって…」
梨子「どこで始めようか」
梨子「ってもう始まってるのよね…」
???「待った!」
二人「!」 ぬ…
梨子「善子ちゃん…」
善子「ここで始められない理由はないわね……………」
ことり「……アナタもとってもカワイイ………」
梨子「もう…」
ガバァッ
善子「!!」
梨子が肩にかけていたバッグをことりの顔面にぶつけた――。
ことり「…………ッッ」フラ…
ザン…
ことりは両膝を着いた。 通行人「ケンカだッ」
通行人「スンゲェ〜〜〜」
梨子「善子ちゃんごめんね」
梨子「先にやらせてもらったわ♡」
善子「…………………」ムス…
シャクン…
ことりの手にはいつの間にかライターが握られている。
善子「……………………」
キラッ
善子「リリーッ!!」
梨子「え?」
ボタッ
梨子の左手首が……地面に落ちた―――――。 通行人「いやァアァアアァッッ」
ことり「繊維を使わせてもらいました」カチャッ
改造したのか、ことりのライターから、タコ糸のように極細のワイヤーが伸びている。
ことり「細く丈夫な繊維に関する最新情報を科学者の次に入手するのはマジシャンというのが常識とされているけど――」
ことり「現実は私たちデザイナーがマジシャンよりはるか前に科学者たちと闇取引を済ませている」
梨子「………」
ことり「現時点での最先端はこのアラミド繊維とチタニウムを焼結させた一品」
ことり「宇宙飛行士の命綱や防弾チョッキとして使用されるこの傑作――1ミリメートルの1000分の4、4ミクロンにして張力200キログラムという境地に達している」
ことり「梨子ちゃんの手首にかかったラインはクモの巣ほどの感触も与えていなかったハズだよ」 梨子「嫌だな…………」ハァ~~~ッ
梨子「スクールアイドルも科学の勉強が必要みたいだね………」
梨子「ねえ善子ちゃん」
善子「………ッ」アセダラダラ
ことり「流石だね。上腕内側を走る動脈を圧迫して止血が完成してる」
ことり「まだ続ける?Aqoursの桜内梨子ちゃん…」
梨子「…昔ね…」
梨子「ピアノを弾くのが嫌になっちゃって…」
梨子「いっそ指なんて全部無くなっちゃえばいいのにって…」
梨子「夢が叶ったわ」
ドチャッッッッ
善子「――――ッ」
通行人「ないほうの手で殴ったァ―――ッ」 ドシャァァァアッッ
梨子の正拳を顔面に受け、ことりは吹っ飛んで仰向けに倒れた。
通行人「警察呼べェッ」
ムク・・・
ことりが半身を起こす。口元と鼻から少量の鮮血。
通行人「二人いないぞッッ」
通行人「消えちまったッッ」
ことり「フフ。なんてファンタスティックなの…」 聖良「い〜いキスでした」カロ…
聖良「舌のここのところでですね…」
聖良が口を開けて舌を指さす。口の中には飴玉も見える。
聖良は飴玉を口の中に入れたまま、器用に舌を動かした。
聖良「ムチュ…チュバ…ナチョ…」
聖良「…ですか?気持ち良いんですねこれが」
絵里「……で、どうするの?やりましょうかもう一回」
???「こいつ?」
絵里「!」
絵里の背後に一人の人影。
理亜「姉様の唇奪ったの」 タンッ
絵里が振り向くのと同時に理亜の身体が宙を舞う。
絵里「!!」
ガコッ
聖良「胴廻し回転蹴り…見事です、理亜」
ドサッ
聖良「敗北することが生きがいだったらしいですが…」カロ…
聖良は口から飴玉を取り出して倒れている絵里の口に押し込むと、その上からガムテを貼った。猿轡完成。
聖良「アッサリ実現してしまいましたね」 理亜「とりあえず札幌まで運ぶ?あそこなら煮ようが焼こうが姉様の自由でしょ」
聖良「いえ、それは流石に遠すぎます…」
聖良「ここでいいでしょう」スッ…
ブゥゥゥゥゥゥン…
聖良は懐から淫具を取り出した。
理亜「姉様……ッ」
聖良「タチでなければレズバトラーは脆いもの」
聖良「覚悟してください」
理亜(遊びじゃない…ッッ)
長い夜になりそうだが、絵里の猿轡の下の口は笑って見える…………。 海未「高海千歌さん…でしたね」
千歌「!!」
背後から声をかけられ、千歌は初めてつけられていたことに気づいた。
千歌「あなた…」
間合いは10メートル程か………。海未は背中から何かを取り出した。
夕陽を受けて白銀に光るそれは―――日本刀(サムライソード)。
千歌「ちょ…待…」
海未「卑怯とは言わないでしょうね」
海未「参ります」ダッ 千歌(ヤバい…)
海未が鬼の形相で迫ってくる。
千歌(殺されるッッ)
ダッ
海未「!!」
千歌「果南ちゃん!!」
どこに潜んでいたのか、横から果南が二人の間に割って入る。
が、海未はそれに怯みもせず突然の乱入者に向けて刀を振り下ろした。
海未「御免ッッ」
ガキィィン
海未「!!!??」 およそ人間を斬ったとは思えない音が響く。現実、その人間は斬れてはいなかった。
いや、厳密に言えば切れ目は入っていたのだが…
海未(バカな……ッッ)
海未(真剣を腕で防ぐことなど…………ッッ)
ガードを上げた果南の左腕に斬りたてられた日本刀は、半分…四分の一…八分の一もいかずに止まっていた。
果南「フンッッ」ボッ
海未「!!」ザッ
果南が右の拳を振り下ろす。
海未は一瞬で数メートルも下がって躱したが、刀を取り直す余裕はなかった。
再び間合いが開く。 果南「痛たた…」
果南は腕に刺さった刀を抜くと、刃の方を握り直して力を込める。
ギュウウウウウ・・・
海未は動かない。千歌は動けない。
ビキッ
海未「!!」
ビキッビキッビキッ
海未(名刀が…)
ギャリンッ
果南はバラバラにヘシ折った日本刀を地べたに捨てた。 海未「……成る程」
海未「お会いするのは初めてですが貴方の噂は何度も耳にしています」
海未「流石は内浦最強の生物―――」
果南「どうでもいいよそんなことは。ただ…」
果南「こっちは二人がかりだよ」
千歌「!」
果南の言葉とアイコンタクトで、千歌はようやく我に返った。
海未が刀を手放したことも手伝ってか、冷や汗をかきながらも前に出る。
千歌「卑怯とは言わないよね」 果南「合わせろや千歌ァッッ」ダッ
千歌「応ッッ」ダッ
二人がつっかける。果南は振りかぶってパンチ、千歌はロンダートの要領で回転蹴り。
二人の攻撃がそれぞれ海未のボディと顔面を捉えようとした瞬間――
海未「フンッ」
フワッ
果南千歌「!?」
ダダンッ
二人の身体は不自然に宙にハネ上がり、地面に叩きつけられた。 千歌は大の字で寝転がって空を見上げている。
千歌(何…今の…!?)
果南「千歌ッッ」
千歌「!!」バッ
ダシュッ
千歌はまたも果南の注意で我に返り、すんでのところで海未の下段蹴りを躱した。
海未「…少しは動けるようですね…」
千歌が果南と反対方向に躱したことで、二人が海未を挟む形になった。
海未は千歌の方を向いている。
海未「………一つ質問をしましょう」
海未「この地球上で最も強力な武器とは何かワカりますかね」
果南「千歌ッッ!油断するなァッッッ!!」 海未「この地球上で最も強力な武器―――」
海未「日本刀も銃も危険には違いありません」
海未「青酸ガスも人を死に至らしめるでしょう」
ゆら…
間合いは開いたまま、海未の両手がゆっくりと胸の位置まで上がる。
果南「気をつけなよ千歌ッ」
千歌(え……ッッ!?これが構え…………?)
千歌(弓道―――!?でも肝心の弓と矢が無いじゃんッッ) 海未「しかしそれらで絶命するとき人は――――」
海未「あるいは吐血しあるいは苦痛を憶え―――徐々に……………………徐々に……」
海未「死に至る」
パッ
千歌「ッ」ストーーーン
果南「!!?」
千歌「」ゴロリ…
海未「答えはラブアローシュート。ワカったときにはもう遅い」 果南(海未さんがエアで弓を引く動作をしたら千歌がぶっ倒れた……ッッ)
海未「半日は起き上がってこれませんよ。ボクシングのKOとはワケが違います」
果南(まったく理解できない………武術・格闘技の概念とは全く違う技だッッ)
海未「説明が必要のようですね」
果南「…………………」
海未「弓矢がなくては人は射れませんか」
海未「弓矢とはそんな不便なものですか」
果南「…………………ッッ」
海未「さて……ではいよいよメインディッシュ……」
果南「〜〜〜〜〜〜ッッッ」(ちゃんと言ってよッッ) ファンファンファンファン
パトカーのサイレンの音がこちらに近づいてくる。
海未「お出ましですか。のんびりしたものですね」
海未「せっかくのご馳走に邪魔が入ってはつまらないですね…日を改めましょうか」タッ…
果南「………」
果南(逃げられちゃしょうがないね………………)
ファンファンファンファン…
千歌「!」ハッ
果南「千歌………」
果南「アンタ負けたよ………」
千歌「………ッッ」 ・鞠莉の家
ダイヤ「…早い話が…手も足も出ずに敗けたと……」
鞠莉「しかも2人がかりで……」
部屋にいるのは、鞠莉、ダイヤ、Aqoursの選ばれた5人の戦士、計7人。
梨子の左腕はギプスと包帯で覆われている。
鞠莉「現役バリバリの専門家が引退したレジェンドに不覚を取る。よくあるハナシではあるけど―――」
鞠莉「それは現役のランクが低いからこそ起こりうること」
鞠莉「今年の――現役のスクールアイドルの最高峰であるアナタたちが…」
五人「…………」
鞠莉「いかなる評価いかなる賞賛を得ようが引退した相手に不覚をとる王者なんて無価値と言ってもいい」
グイッ
一人話し続ける鞠莉の胸倉が不意に掴まれた。
果南「わかり切ったことをクドクドと…」イララァ ピシャンッッ
内浦最強の頬が打たれた。どんなに鍛え上げられた肉体にも、この痛み―――皮膚を打つ平手打ちの痛みは赤子と共通である。
鞠莉「私がAqoursを思う気持ちをッ甘くみないでッッ」
涙を流しながら鞠莉が絶叫する。
鞠莉「Aqoursの最強をッッ誰よりも信じていたのは私よッ」
鞠莉「千歌をッ曜をッ善子をッ梨子をッ果南をッッ」
鞠莉「誰よりも信じてたのはこのワタシよッッ」
果南「………ッッ」
果南も流石に返す言葉がない。五人の戦士は押し黙るしかなかった。
ガララッ
全員「!!」
不意に窓が開いた。 絵里「グッドモーニング子猫ちゃんたち……」
千歌「嘘…」
善子「ここ7階でしょッッ」
絵里「私がどうやって刑務所を脱出したのか聞かせてあげるわ」
絵里「ミサイル発射口――あの滑らかな鉄壁に比べたら――」
絵里「起伏に富むホテルの壁面を登ることなど」
絵里「階段を歩くに等しい行為よ」
果南「…それは良いけど…こっちは7人だよ?」
絵里「あいにく…私も1人じゃないわ」
開かれた窓………その左下から、2人目が顔を出した。
梨子「!!」
ことり「ヨキニハカラエミナノシュウ…」 千歌(ことりさんまでッッどうやってッッ)
善子(アラミド繊維かッあれを絵里さんに引っ掛けさせて…)
果南「…それでも2人…」
絵里「残念ね。まだあと2人いるわよ」
ゴロンッ
さらなる2人は、ことりにほとんど投げ捨てられる形で無造作に床に転がった。
!!
果南「聖良ッッッ」
聖良理亜「あへっあへっ」ビクンビクン 曜「………酷い…」
果南「…こんなことして…」キッ
!!!
果南が顔を上げるとそこにはもう絵里の姿はなかった。さらに――
梨子「…曜ちゃん…果南ちゃん…」
曜果南「!!」
いつの間にか曜、果南以外のAqoursの4人までもが横たわっている。
2人が聖良と理亜に気をとられた一瞬――――その一瞬で絵里とことりは4人をKOし、逃亡したのだ。……4人………?
梨子「さらわれたよ…………………千…歌ちゃん」 ・ホテルの外。
絵里「フッフッフッフッフッフ」
絵里「笑わせてくれるわね………………」
千歌「…………ッッ」
絵里「王者とはいえ所詮みんな子供ね」
ことり「やはり少女(ガール)です…」
絵里「フフフフフフ」
千歌「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ」 梨子「さらわれたよ…千歌ちゃん…」
梨子の言葉が終わったとき、曜の身体は既に地上7階の空中にあった。
曜(急ぐのだからこそ飛び降りるッッ)
曜(問題はない!!15メートルまでなら!!)
ダァンッッ
ことり「!」
絵里「ハラショー…」
曜「千歌ちゃ…」
曜「!」
千歌「こんなんなっちゃった…」シタギダケ
曜「……………ッ」ブルブルブルブル
曜「一人も動くなッッ!!!」
静寂。2秒して、曜は自ら自分の作った膠着を破った。 曜「ッッ」ダッ
ことり「アハ♡」
快速を飛ばして、曜がことりに突っ込む。曜は勢いそのまま、アッパー気味に右の拳を突き出した。
ブンッ
パシィッ
ことりは両腕を前に伸ばし、重ねた掌をパーにして受け止める―――
フワ…
ことり「えっ…」
想像以上のパンチの威力で、ことりの身体が僅かに宙に浮いた。
そして曜も――跳び上がった曜の両足は折り畳まれて、ことりの顏の高さにあった。 ゴシュッ
ことり「………ッッ」
千歌(ドロップキックッッ曜ちゃんの得意技だッッ)
絵里(なんて高さ……ッッ)
ドッシャァァァ
曜のドロップキックをまともに喰らい、ことりは数メートル吹っ飛んで頭からアスファルトに落ちた。
千歌「曜ちゃんッッ」ダッ
千歌「怖かったよ〜〜〜ッ」ウワーン
曜「ゴメンね…」アハハ
パチパチパチパチパチパチパチ
曜千歌「!」
小慣れた拍手の音が、再会の喜びに水を差した。 絵里「おめでとう、童貞を捨てたわね」※初めて人を殺すこと。
曜「え………」
ことり「」
絵里「受け止めきれるかしら。自らの手で他人の人生を断ち切ったこの現実に」
曜「………」
曜「………ッ」ブルッ
曜「〜〜〜〜〜〜ッッッ」ガクガクガクガク
絵里(やっぱりね…)
絵里(身体能力では私にもひけをとらない…でも精神が未熟……甘すぎる…)
絵里(敵の言葉にやすやすと踊らされる………それどころか敵を憎み切れないなんて…)
上等な料理にハチミツをぶちまけるがごとき思想!! 千歌「よっ曜ちゃんが気にすることじゃないよッ」
曜「うん…」ブルブル
見かねた千歌に庇われるが、曜の顔は晴れない。
果南「千歌ッッ曜ッッ」
千歌「果南ちゃんッ」
曜千歌らとはやや離れた位置―――玄関から果南の声が飛ぶ。
果南「まだ終わっちゃいないッッ!!」
千歌「え…」
曜「!!」ハッ
ことり「ラウンド2ゥ〜」 ダッ
ことり「!」
千歌「きゃっ」
曜「逃げよ♡」
曜は千歌をお姫様抱っこするとことりには目もくれず一目散にホテルの中に駆け込んだ。
曜(勝てなくてもいい)
曜(守護れればそれでいい)
果南(曜………)
果南(それで良い)
ことり「ム〜〜〜ッ」プクーッ
ザッ
果南「私じゃ不服かなん?」 絵里「……曜は……アナタ一人で私たち二人を相手できると………」
絵里「大した信頼ね」
果南「ハハ…自分でも、ちょっと買いかぶられすぎだとは思うよ……
絵里「その通りね。いくら内浦最強の生物…
ことり「絵里ちゃん」
ことり「ここは私に任せてもらえないかなぁ?」
絵里「!」
ことり「おねがぁい」
絵里「……私は海未じゃないのだけれど……」
絵里「他ならぬあなたにそう言われちゃ…ね」
果南「ちょっと。私は…」
絵里「次があったらまた会いましょう、果南」スタコラ
果南(………逃げられちゃしょうがないね………) キラ…
果南「!」
果南(ピアノ線…ッ!?)
いつの間にか、果南の身体に例のアラミド繊維が巻き付いていた。無論その先端は、ことりの手にしているライターと繋がっている。
ことり「………」ブンッ
果南「ッッ」
ピピ…
ことりが大きく腕を振ると、極細の繊維が果南の身体に食い込む。
ことり(今夜はお刺身かな…♡) 果南「ハッッッ」シュバッ
ピュイイン
ことり「え…」
プツン…
内浦最強の手刀が、アラミド繊維を切断した。
果南「梨子ちゃんの手首を切断したナントカ繊維とやら」
果南「意外にあっけないじゃんか」ドヤァ
ことり「……………」
果南「もっと大きいオモチャ見せてよ」 ことり「………フフ……」
ことり(やっぱり私は……)ゴソ…
ことりは胸をまさぐると何か取り出した。
ごろ…
果南(手榴弾……ッ!?)
果南「それは流石に…ッ」
ピィンッ
ことり(焼き魚の方が好きかな………)
ドォンッ
・ホテル内
千歌「花火…?かな……」
曜「…イヤ………」 プスプス…
辺りには焦げ臭いにおい。
ことり「…………」
徐々に煙が晴れていく。
ことり「………!」
ことり「……………ッッ」
晴れていく煙の中心で、女は、こともなげに腕組みして立っていた。
果南「……熱いんだね…爆発って……」プスプス…
果南「当分、カイロはいらないかな……」フゥーッ
ことり「……………ッ」ギリ…
果南「もういいでしょ、終わらせるよ」 曜「果南ちゃんッッ」ザッ
爆発音を気にした曜が玄関に舞い戻った。
果南「曜…」チラッ
ダッ
曜「前ッ前ッッ」
ことり(内浦に最強の生物がいるって聞いた……)キラ…
曜「ハサミだッ磨いであるッッ」
果南「フンッッ」ボッ
グシャッ
曜「うわァ…」
曜(直突きでハサミの方が折れてる…ッ) ことり(あなたならあるいは!!?)ブワッ
曜(足を上げ…かかと落としかッッ)
曜(靴の底に刃が仕込んであるッッ)
ことり(あなたならあるいは!!?)シュザッ
果南「よっと」パッ
ガキィィン
曜「真剣白刃捕り―――――」
曜「実戦で使用されるのを初めて見たッッ」
ことり(夢を叶えてくれるのかも!!?) ヒネッ
ことり「ッッ」
ドシャァァッ
ことり(あれを使ったら勝てたとか――)
果南「………」ザ…
曜(終わらせる気だ……ッッ)
グイッ
ピッ…
果南「!」
曜(襟に………カミソリ!!?)
果南「フンッッッ」ビキバキバキッ
ことり(こうすれば良かったとか―――――)
曜(力技だ〜〜〜ッ) ことり(一点の疑問の入る余地もなく――――)
ことり「ペッ」
曜(唾だッッ眼を狙ってるッッ)
ビチャ
ことり「〜〜〜ッッ」
ダラ……
曜(そのまま受け止めた…ッッ)
果南「あなたは内浦を嘗めたッッ!!」
ことり(真の敗北を与えてくれるのかも!!?) 果南「まだやるかい」
ことり「げ……元気イッパイ…………だちゅん………」
グワシャァッ
ことり「〜〜〜〜〜〜ッッ」
曜(果南ちゃんの腹パンは特別製だ……)
曜(本気で入れてなくても肋骨は無事じゃすまない)
果南「まだやるかい」
ことり「ハ…ハ…」ニィ・・・
グワシャァッッ
ことり「ケハアッ」
ビチャッ…
曜(もう良い……) 果南「私が本気で拳を固める前にあきらめた方がいいよ……」グ…
ことり「………ッッ…………!!!」ブルブルブルブル
ことり(震えてる………!!?)
果南「まだやるかい」
ことり(私が恐がってる……………!!?)ブルブルブルブル
曜「果南ちゃんッッ」
果南「!」
曜「も……」
曜「もう……やめ……」
ことり「………」グス…
ことり「ウワァァァァァァァァァァァン」エグッエグッエグ
果南「………そうだね…」
果南「決着だ」 果南「正直……ちょっと舐めてたかもね」
果南「私だったから良かったけど…他だったら死んでたよ」
果南「残り4人……私と曜で全部やるしかないかもね」
曜「…うん……」
果南「じゃ、私はことりさんを交番まで連れてくから、曜はみんなをよろしく」
曜「了解であります」ピシッ
ことり「………」エグッ 果南「じゃあ、お願いしますねー」
警官「はいよーー」
ことりを警官に預けて、果南は交番を出た。
果南「いよしっ」
果南(何はともあれこれで残り四人…出だしはまずまずだね)
バッタリ
花丸「果南ちゃん!」
果南「マル!」 花丸「どうしたの?交番から出てくるなんて…それにその恰好……」
花丸「果南ちゃんが不良になっちゃったずら〜〜〜」
果南「いやいやいやいや、これは例の…あ」
果南(マルとルビィには絶対に秘密にしとけってダイヤが言ってたっけ…)
果南「ま、まあ、ちょっとね、トラブルに、巻き込まれちゃって…」
花丸「トラブル?」
果南「ま、マルの方こそ、どうしたの?今日、日曜なのに…」アセアセ
花丸「マルはただの買い物帰りずら。マルのお家から町に行くときは、いつもここを通るずら。日曜日なのにって、平日にいる方がおかしいずら、それじゃ不良ずら」
果南「あ、そ、それもそうかー」アハハ…
花丸「今日の果南ちゃんちょっとおかしいずら」ジトー…
果南「や、やだなあ…」
ゾクッ
果南「!!」 ――偶然その場に居合わせた国木田花丸(15)はこのときの様子をこう語っている。
花丸「果南ちゃんと話してた時間ですか?」
花丸「いや…もう1、2分ぐらいで……ハイ」
―――
果南「マルッッ!!」バッ
ドォンッ
花丸「果南ちゃんッ!?」ズシン
―――
花丸「だからそのあとにことりちゃんが使用した数々の道具も………ハイ」
花丸「その1、2分で調達したということになります」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています