穂乃果「俺くん・・・私と、付き合ってください!」
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少し暑い、でもよく晴れた気持ちのいい日の朝だった。あまり外に出かけない俺は珍しく早起きして穂乃果を待っていた
待ち合わせ時間は10:00だったが、9:00から俺はずっと立ち尽くしていた
時折、その場でグルグルと円を描くように歩き回ったり、キョロキョロまわりを見渡しまくったり… 正直不審者と間違われてもおかしくないくらいの挙動不審さだったと思う
俺「まだかなあ… もうすぐ10:30なるぞ…」
穂乃果「ごっめ〜〜ん!! お待たせ!!」
俺「おお!穂乃果! 良かった…もし来てくれなかったらどうしようかと…」
穂乃果「あはは…ごめんね? 朝、ちょっとことりちゃんに服選んで貰ってたんだ、、。」
穂乃果「そしたら、ことりちゃん熱が入っちゃったみたいで、あれもこれもって持ってる服全部着せられちゃったりしちゃって…」
俺「うーん、ことりちゃんらしいな…」 穂乃果「だ、だいたい、俺くんとの初デートなんだからこないわけないじゃん!」
俺「いやあ、ちょっと照れるな」
穂乃果「えへへ、今日、すっごく楽しみにしてきたんだ!最高の1日にしようね!」
俺「よーーーし!! じゃあ、最初はどこにいくか!?」
穂乃果「うーん、俺くんの行きたいとこならとこでも!!」
俺「よっし、そしたら今日は晴れてて気持ちいいからでかい公園にでも行くか!」
穂乃果「うん!そうしよ!」
相変わらず、その笑顔は太陽のように眩しく輝いている。
ああ、穂乃果とこれからデートをするなんて本当に夢みたいだ…!!
穂乃果「あ、そうだ! ちょっと腕貸して!」
俺「ん?」
そう言うと穂乃果は、俺の腕に手を巻き付け、ぎゅっと自分に抱き寄せた
穂乃果「えへ、ちょっと恥ずかしいけど、恋人っぽいことしてみたかったんだ」
俺「お、おお… 」
言葉につまる俺。
少し顔を赤らめている穂乃果がとても新鮮でかわいいという情報だけが頭の中を埋め尽くす
俺「じゃ、じゃあこのままいくか!」
穂乃果「うん!」 自分の体温が高まるのを感じる
鼓動ももう自分のコントロールを完全に忘れてフル稼働してるようだ
やっべ… 汗かいたら穂乃果に嫌われるかな
周りの人めっちゃ見てる…
そんなことばっかり考えながら、穂乃果と俺は午前の和やかな公園を散歩していた
少し前までは男子と女子が仲良く歩いているのを見かけるだけでも舌打ちをして心の中でリア充しね!と思っていた俺が、まさかこんなにかわいい穂乃果とイチャイチャして散歩するとは…
公園ですれ違う老夫婦なんか俺と穂乃果をみるなり、「あらあら」なんて言ってる
お前ら、見てるか!?これが、リア充だっっっ!!!と心でネットのオタク共に叫んでいた 穂乃果「俺くん、今日の格好いつもと違うよね?どうしたの?」
俺「ああ、ちょっとね」
穂乃果「ちょっと?」
俺「やっぱり穂乃果とのデートだから、できるだけオシャレ気取って見たんだけど…どうかな?」
正直、オシャレなんて意識したこともなかった俺はコンビニで買ったファッション雑誌を見よう見まねで着飾ってみた
少しでも冴えない感じが抜ければと思っていたが
穂乃果「うーーん、70点!」
俺「ええ!? なんだよその点数! 何についての点数だ!?」
穂乃果「俺くんは、特別にかっこよくしようとしなくても、穂乃果は普段通りの俺くんで十分カッコイイっておもうよ!」
俺「穂乃果…」
穂乃果「…あと、ここ! シャツの後ろの襟、たっちゃってるよ!」
俺「あ、ほんとだ!」
穂乃果「直してあげるよ〜♪」
そう言って、穂乃果は自分より少し背の高い俺の首の後ろに正面から手をかける
、、、穂乃果の顔が近くなる 穂乃果「はい!これでカンペキ!」
俺「あ、ありがとう…」
穂乃果「? なんでそんなに赤くなってるの?」
俺「な、なんでもねえよ!」
穂乃果はこういうとこにホント無頓着だ
他の男にもこんな事してないだろな…?
ちょっと疑心暗鬼になりつつも、近くなった時にほんのり香った穂乃果の匂いに思考は完全にもっていかれバカみたいな返事しかできなくなっていた俺であった
お昼になると、穂乃果が無邪気に元気な声で言った
穂乃果「なんとなんと! 今日は俺くんの為にお弁当作ってきたんだ!一緒に食べよ♪」
俺「まじか!!!? …まさか中身はお饅頭とかだったり!?」
穂乃果「もう!違うよ! ちゃ〜んとしたお弁当だよ!」
俺「マジかよ超嬉しいぜ!!! 人にお弁当作ってもらうのなんか小学校以来だよ!」
穂乃果「実はそんなに自信あるわけじゃないから…あんまり期待しないでね?」
俺「いやいや! 俺はたとえ泥団子でも穂乃果の作ってくれたものならなんだって残さず食べるぜ!」
穂乃果「ほんとかな〜、、? ま、いいや!ほら!あっちの丘のところ景色良さそうだよ!あっちで食べようよ! 」
俺「おう!そうしようぜ!」 丘の上でそりなりに広い公園を見渡しながらベンチで穂乃果のお弁当を広げた
そこには、想像以上の量の弁当箱が並べられた
穂乃果「お父さんがね、いっぱい料理教えてくれて… 色々作ってたらこんなに多くなっちゃった。。 食べ切れるかな…?」
サンドイッチ、唐揚げ、ハンバーグ、おにぎり、オムレツ、サラダにパスタまで…
弁当といえば? と聞かれた時に想像できるものの定番メニューがありとあらゆる箱に詰められている
種類だけでもかなりのものだが、ひとつひとつのメニューだけでOLならお昼をそれで済ましてしまいそうな量だけある
俺「な、なかなかだね…」
穂乃果「やっぱり食べきれないかぁ、勿体ないけどそれなら、」
俺「いやっっっ!食べるっっっ!!!」
穂乃果「!?」
俺「穂乃果が俺の為に作ったものは他の誰にも渡さないっ! 捨てるなんてもってのほかだ!」
穂乃果「おれくん…」
俺「ただし、一つだけワガママを言ってもいいかな」
穂乃果「なになに?」
俺「あーんってして食べさせて欲しい」
食べ物を食べるという事がまさか苦しみを伴うなんて思いもしなかった
満腹で目眩と吐き気で気を失いかけながらもなんとか穂乃果のお弁当を食いきった俺は公園のベンチで10分程ダウンしていた 意地と愛の力でなんとか復帰した俺は、平気なフリをしながら穂乃果に「ご馳走様!次はもっと増えてもいけるぜ!」なんて強がってみせていた
もちろん、同じ量でも二度とゴメンだ
俺「午後になるとやっぱり人が増えてきたなあ〜」
穂乃果「あ!そうだ!」
俺「どうした?」
穂乃果「ね!ね! 俺くんって最近一人暮らし始めたんだよね?」
俺「そうだけど?」
穂乃果「家具とか、家電とか見に行こうよ!」
俺「またどうして急に」 穂乃果「俺くんって、あんまりインテリアとかに気使わないでしょ? 穂乃果が、部屋が可愛くなるように家具選んであげる!」
俺「えー 可愛くなくていいんだけどな」
穂乃果「ペアの食器とか欲しくない?」
俺「それは… 欲しい」
穂乃果「ほらほら〜! そうと決まったら早速出発だよ! きっと行けばいいものが見つかるよ〜」
多少強引に穂乃果に連れられるようにして午後はずっと家電量販店を回ったり、時折休憩しつつカタログを一緒に眺めたりしていた
隣の穂乃果はいつだって可愛くて、どの角度から見ても愛おしかった
こんなデート、ずっと続けばいいのに・・・!! ーーーーーー ーーーーーー ーーーーーー
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穂乃果「もうすっかり夜になっちゃったね〜」
俺「うわ、マジだな… どうする?穂乃果んちまで送ってくぞ?」
穂乃果「ほんとに? … でも、今日は、」
穂乃果「俺君のおうちがいかな!」
俺「なっ…!?」
あまりの唐突さに頭の中に色んな考えが過ぎる。
これはまだ早いだろとか
部屋きたねえまんまだよとか
穂乃果のお父さんになんて言えばいいとか
今日こそ穂乃果とワンチャンあるかとか
ただ映画見るだけでもいいなとか
何もしないで飯食って帰るだけでもいいとか
あまりにも色々な考えが頭の中を埋めつくしたが、最終的に穂乃果が望むならそうしたいという思いが残った
そう、あくまで俺は、穂乃果の望む通りにしただけ…!!! 穂乃果「1回、俺くんのおうちに行ってみたかったんだよね〜!」
穂乃果「俺くんってば全然部屋にあげようとしてくれないんだからっ!」
俺「そ、そうだったっけか…?」
穂乃果「そうだよ! でも、ここからなら俺くんのおうち確か近いから丁度いいかなって!」
穂乃果「それに・・・何だか今日はまだまだ俺君と居たい気分だし…」
少し頬を赤らめて言う穂乃果の姿はとてつもなく可愛らしく、これ以上の天使がこの世に存在するのかという程だった
マジ天使…穂乃果…!!!! 俺「お、おう! わかった! じゃあ今日は俺んちにこのまま行こう!」
穂乃果「やったぁ!! 俺くん、ありがと!」
穂乃果「えへへ…! 嬉しいな、まだまだ一緒にいられるんだね」
俺「俺も嬉しいよ・・・ちょっと部屋きたねえかもしれんがそれは許してくれよな」
穂乃果「あ、じゃあ穂乃果が片付けてあげる!」
穂乃果「あでも、男の人の部屋ってあんまり探ると、エッチな本が出てきたりとか…」
俺「ねーよ!大丈夫!! おれは穂乃果だけで十分だから!」
穂乃果「? ・・それってどういう意味?」
俺「あ、いや、特に深い意味は無いが…!」
俺「さ、さあ!いくか! もうこっからなら歩いて10分だろ!」
穂乃果「む〜、なんかはぐらかされたような…」 少しムスッとしても、また新たな可愛さが生まれてしまうだけの穂乃果はずっと見ていても飽きない
おれはなんて最高の彼女を手に入れたんだ…!
暗い夜道を2人で歩く
勿論、手を繋いでだ
ああ、俺は幸せだ…!!
今こうして穂乃果と居られる
こんな時間がずっとずっと続けばいいのに! 穂乃果は楽しそうに俺に喋りかけてきてくれる。笑顔が眩しい。その穂乃果の手から伝わる暖かい体温を感じる
太陽とはまさにこれだ。ここに太陽はあったんだ
穂乃果「穂乃果も一緒にいれて、楽しいよ」
穂乃果「・・きっとこれからもずっと、俺くんと一緒にいたい」
穂乃果「こんなに楽しいの、俺くんといる時以外ないもん! ・・えへ」
思わず涙が出そうなくらい嬉しいこと言ってくれるじゃねえか…!
俺「俺も、おんなじキモチだよ」
俺「ずっと一緒にいような!」
穂乃果「うん! 約束だよ!」
穂乃果「・・・・ところで、」
穂乃果「俺くんのおうちってどこだっけ?」
俺「ん? ああ俺の家はこの角を曲がってそのすぐ先に… あれ?」
あれ?
あれ?あれ?
違うよな?俺はこんな綺麗な一戸建てに住んじゃいないよな?
俺は、どこに住んでたんだっけ?
あれ?何かがおかしい
何だこの違和感?
ああ、思い出した
この感覚は、気づいちゃいけなかった感覚だ。ずっとずっと、片隅で恐れてた
この
夢が
覚めませんようにと
現実に戻りたくないと
ずっと一緒にいようなって
いられるわけないの分かってたよな
だってこれは…ただの…
消えてく 俺の 夢が。
覚めてく 俺の 体が。
👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
真っ暗な暗闇の中、目が覚めた
その天井はいつも通りの見慣れた俺の部屋の天井。見慣れた変なシミがいくつもある
俺「・・・・・・・ぁ」
俺「…っとと、寝てたか… 今何時だ?」
もう何日も干していない不衛生な布団から身を出す。不健康な体は起こそうとするだけで悲鳴をあげるが、いつもの事なので気にしない
時計を見ると深夜の3:00だった
俺「おお、もうこんな時間か… 」
俺「いやぁ、なんだっけな。今日は久しく楽しい夢を見た気がするな… 忘れたけど」
自分の汚い体を起こして、普段から低出力な脳みそで記憶を思い起こす
しかし寝起きの頭には霧がかかっておりいくら考えても夢の内容は思い出されることは無かった 俺「ええと、タバコタバコ……。」
自分の汚い部屋を見渡す
あちらこちらにコンビニ弁当のゴミが散乱しており、ものによっては不快な匂いを発している物もある
そんなグチャグチャになった部屋の片隅には、かつて昔にハマっていたアニメのフィギュアやポスターが飾られており、その1箇所だけは綺麗に整えられていた
部屋の電気はもう何日もついていない
電気だけでは留まらず、水道も、ガスも一週間前からストップがかかっている
照らされることのなくなった部屋は静かに腐敗していく。部屋の主さえ巻き込んで
俺「おっと… ここにあったか」
少ししっけたタバコとライターを持ちベランダに出る
比較的都心に近いここら一帯は、深夜になっても長距離トラックやらなんやらが一定の感覚で通り、町あかりもそれなりについているのであまり静かではない しかし、そんなざわついた空気も月明かりだけは優しく見守っている
夜空は静かに、等しく全てを包み込む
タバコに火をつけ、月と星たちを見上げる
煙が空に舞っていく
「綺麗な月だね」
居るはずのない誰かがそっと隣で呟いてくれたような気がした ちなみに本当はSS祭りに参加したかったけど厳密には全然ラブライブSSじゃないので追悼の意味でも今日投稿しました さようならへさよならああああああああああああああああああ😭 後半寂しくてたまらなくなったが
タバコを吸うところだけがちょっと格好つけてて笑った ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています