ルビィ「お姉ちゃん、今すぐバク転できるようになって!!」ダイヤ「」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
ダイヤ「わたくしにバク転のコツを教えてくださいっ、何でもしますから!」ドゲザァ!!
千歌「なんだなんだ!? 突然!」 千歌「えっと。どうしたの、いきなり」
ダイヤ「黒澤として。姉として。為さねばならぬことがあるのですわ」
千歌「何も伝わらないんだけど」
ダイヤ「お願いですわ! どうか何も聞かずにバク転の伝授を!!」グリグリ
千歌「わ、分かった! 分かったから頭を地面に擦り付けるのはやめて!」
ダイヤ「ありがとうございます、ありがとうございます!」グリグリ
千歌「だからやめてってばぁ!」 ダイヤ「というわけで、体育倉庫からマットを持ってきましたわ」
千歌「じゃあやろうか。何が何だか分からないけど」
ダイヤ「それでは、よろしくお願いしますわ千歌先生」
千歌「先生はやめて。むず痒いから」
千歌「じゃあコツを簡単に説明するからよく聞いてね」
ダイヤ「はい! メモの用意もばっちりですわ!」 千歌「えっとね。まず、バッと勢いをつけるでしょ?」
ダイヤ「ふむふむ。バッと勢いを」メモメモ
千歌「その勢いで、グィッ!と捻ってバッ!と跳んでグルッ!と回ってスタッ!と着地するの」
ダイヤ「ふむふ……む?」
ダイヤ「千歌さん。今なんと?」
千歌「グィッ!と捻ってバッ!と跳んでグルッ!と回ってスタッ!と着地」
ダイヤ「……」メモメモ
ダイヤ「……」
ダイヤ「グィッ!と捻ってバッ!と跳んでグルッ!と回ってスタッ!と着地……ですか」
千歌「そう!」 ダイヤ「難しいですわね、バク転って。何も分かりませんわ」
千歌「そうだね。でも練習すればダイヤちゃんなら大丈夫だよ。頑張ろう!」
ダイヤ「……先生の選択、失敗したかもしれませんわ」
・
・
・ ダイヤ「――はっ! ……ピギャ!?」ドサッ
千歌「うーん……。上手くいかないなぁ」
ダイヤ「ま、まだですわ。もう1本……ピギャ!」
ダイヤ「ぜぇ、ぜぇ……まだまだ」
ダイヤ「とぅ! ピギッ……痛いですわ。でも、まだっ」
千歌「……ダイヤちゃん」
ダイヤ「何ですの? あっ、新しいコツの伝授とか!?」 千歌「休憩にしよう」
ダイヤ「え。で、でも」
千歌「疲れて変な失敗したら怪我しちゃうって。これ、見てると危なっかしいね。あの時のみんなの気持ちが分かるよ」クスッ
ダイヤ「っ、……分かりましたわ。従います」
千歌「あはは。なんか、ごめんね。自分のこと棚に上げて、卑怯な言い方だって千歌も思うんだけど」
ダイヤ「いえ。……痛いほど分かりますわ。あの時の千歌さんの気持ちも、今の千歌さんの気持ちも」 千歌「身体も痛いしね?」
ダイヤ「ふふっ。そうですわね」
千歌「はい。お茶、飲むよね?」
ダイヤ「ありがとうございますわ。……ずずず」
千歌「……でも、意外だな。ダイヤちゃんのこんな姿って」
ダイヤ「意外?」 千歌「ダイヤちゃんって、ほら。いつも涼しい顔して何でもやっちゃうじゃん」
千歌「黒澤家の長女として当然ですわー、なんて。苦労してるようなところは見せないし」
ダイヤ「実際、黒澤家の長女として当然ですもの」
千歌「うん。だから、意外だった。こんなに汗かいて、マットの埃に汚れて、髪も乱れて」
千歌「それでもまだ跳ぼうとするダイヤちゃんは、意外だよ」
ダイヤ「……幻滅しましたか? あの黒澤ダイヤもこんなものか、と」
千歌「そんな、幻滅なんて。ただ、ダイヤちゃん的にはどうなのかなって思っただけ」
ダイヤ「わたくし的には?」 千歌「だってダイヤちゃんプライド高いじゃん。こういう泥臭いのって、嫌いだと思ってた」
ダイヤ「ふふっ」
ダイヤ「もちろん嫌いですわよ。このわたくしが埃まみれだなんて。まったく、人様には見せられません」
ダイヤ「でもわたくしは、こんな方法しか知らないから。……ねえ、千歌さん」
千歌「?」
ダイヤ「わたくしは別に優秀な人間ではないのです。果南さんのような体力も、鞠莉さんのような柔軟な頭脳もない」
ダイヤ「わたくしは凡才ですわ。個々の才能ならルビィに劣ることも少なくない。きっと、あなたにだって」
千歌「……そんなこと、ないと思うけど」
ダイヤ「どうしてそう思うんですの?」 千歌「実際、何でもやっちゃうじゃん。不安そうな顔も見せないし、いつも自信満々で、自分なら出来て当たり前だって」
千歌「ダイヤちゃん、怖がることとかないし。辛いことがあってもみんなを支えて、ダイヤちゃんだけは絶対に折れない」
千歌「みんな、そう思ってるよ」
ダイヤ「――当然ですわね」
千歌「ほらぁっ!」
ダイヤ「しかしそれはわたくしが、ただのダイヤではなく黒澤ダイヤだからですわ」
千歌「……どういう意味?」
ダイヤ「黒澤の名に求められるものがある。黒澤の名を背負い積み上げてきたものがある」
ダイヤ「それらはすべて、わたくしの誇りですわ。わたくしは、才など無くともわたくしが築き上げてきたすべてを信じています」
ダイヤ「これだけのことをやって来たのだ、何を恐れることがあるものか――と」
千歌「……」 ダイヤ「もちろん、その道程は決して優雅なものではありませんでしたわ。あなたの言う泥臭い道でした」
ダイヤ「でもその泥が、今のわたくしを支えているのです。これからも、積み上げるべきものなのですわ」
ダイヤ「このバク転だって同じことです。黒澤の長女として求められるのならそれを果たす。ただ、それだけ」
千歌「……」
千歌「私は」
ダイヤ「ええ」
千歌「私は昔から、結構簡単に諦めちゃう子だった」
ダイヤ「らしいですわね」 千歌「いつも曜ちゃんや果南ちゃんと一緒にいたから。あの2人が出来ることが千歌には出来なくて」
千歌「頑張って追い抜いてやる!って思ったこともあるよ。でも、またすぐに抜き返されるんじゃないかって」
千歌「そう思ったら頑張れなかった。頑張っても敵わないなんてそんなの……怖いから」
ダイヤ「けれど、今のあなたはそうではない」
千歌「そう言ってくれるんだ?」
ダイヤ「もちろん。あなたはAqoursの、わたくしたちが認めたリーダーですもの」 千歌「……私は私を信じてなかった。でも、みんなが私を信じてくれたから。私が凄いって思うみんなが私を信じてくれたから」
千歌「諦めなければ私でもどこかに辿り着けるかも、輝けるかもって。そう思えたんだ……」
千歌「ダイヤちゃんは、やっぱり凄いよ。自分一人で、自分をそんなにも信じることが出来て」
ダイヤ「同じことですわ。わたくしには家が、あなたには仲間があった。それだけのこと」
ダイヤ「あなたが高海千歌に向けるその信頼――とても尊いと思いますわ」
千歌「……ありがとう」 千歌「えへへ。ダイヤちゃんが卒評する前に、この話が出来て良かったよ」
ダイヤ「本当に。ルビィの無茶ぶりにも感謝しませんとね」
千歌「ルビィちゃん?」
ダイヤ「何でもありませんわ、何でも」
ダイヤ「……長話をしてしまいましたわね。さあ、バク転の練習を再開しましょうか」
千歌「うん。私もしっかりアドバイスするね!」 千歌「ダイヤちゃんはもっとこう、思いっきりグィッとやった方がいいと思う!」
ダイヤ「さ、参考にさせてもらいますわ……」
千歌「ダイヤちゃんなら出来るよ。信じてる」
ダイヤ「ふふ」
ダイヤ「当然ですわ。誰にものを言っているつもり?」
ダイヤ「――ありがとう」
ヒュ、タンッ… ――――
――
聖良「私に日舞をご教授頂けないでしょうか、何でもしますから!!」ドゲザァ
海未「は、函館からはるばる!? 何事ですか、いったい!?」
おしまい 〜ダイヤちゃんのバク転☆虎の巻〜
|c||^.- ^|| ワンポイント!
グィッ!と捻ってバッ!と跳んでグルッ!と回ってスタッ!と着地ですわ!
それから――仲間への感謝を
ルビィ「??? ……なにこのメモ」
本当におしまい ダイヤを凡才と明言するSSは珍しい気がするな
元普通怪獣と黒澤家長女か。良きダイちかだった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています