善子「うぅ……」ルビィ「大丈夫?」
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ここは私の部屋、薄暗くて怪しげな本とか不気味なオブジェクトが点在していて、
明るさとか可愛いさとは無縁な部屋よ。
でも、今はそこに似つかわしくない可憐な少女が一人いるの。
ルビィ「善子ちゃん、大丈夫?」
善子「えぇ……平気よ………へっ…へっくしゅん!」
大丈夫、そう答えたそばから大きなくしゃみをしてしまう。
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「へーきだってば……」
鼻をすすりながら、もう一度大丈夫と言い、
私を心配してくれている、可愛い彼女の頭を撫でる。
季節は寒い冬を終え、春へと向かっていた。
木々には雪の残りのような、真っ白い蕾が出来ていて、
その蕾が綻ぶ時、春が来るんでしょうね。 善子「うぅ……」
でも、去年までなら待ち遠しかった春も今は全然待ち遠しくない。
何故なら。
善子「へっくしゅん!」
まさか、このヨハネが……
善子「うぅ……つらい……」
花粉症だったなんてね。
ルビィ「……本当に大丈夫?」 体の異変を感じたのは春休みが始まって少し経ってからだった。
外に出るとくしゃみが止まらなくて、呼吸もなんだか苦しいし、
目が痒くなって、頭の中もモヤモヤする。
なんだか熱もあるみたいだし、
最初は風邪か何かだと思ったの。
季節の変わり目だし油断しちゃったのかなって。
でも、風邪なんて栄養とって寝ておけば2、3日もせずに治るじゃない?
だからしばらくの間、家で安静にしてたんだけどね。
ずっと寝ていても一向に治る気配はなかったの。
そりゃ花粉症なんだから当たり前よね。
どうやら、この数日間無意味に休みを消化していただけみたい…… 善子「かゆい……」ゴシゴシ
ルビィ「あんまりかいちゃダメだよ、お目め傷ついちゃう」
はぁ、花粉症ってこんな感じなのね。
ルビィに「それ、花粉症だよ」って言われるまで気付かなかったけど。
善子「くしゅんっ……くしゅんっ!!」
辛いわ……
風邪とかそういう類いの病気ではなかったけど、
体は凄くダルいし。
時期的な物もあってか、凄く寒く感じる。
これじゃ風邪とあんまり変わらないじゃない。 善子「うぅ……」
ルビィ「辛い?」
善子「うん……」
力なくそう答えながら、ルビィのお腹に頭を押し付ける。
すると「よしよし」って撫でてくれた。
ふふ、気持ちいい……
ルビィ「ルビィに何か出来ることある?」
善子「……」グッタリ
出来ること?
善子「……ある」
ルビィ「なに?」
善子「こっち来て……」グイッ
ルビィ「えっ?」
風邪じゃないから、うつす心配もないし良いわよね。 善子「ルビィ」ギュッ
ルビィ「よ、善子ちゃん?」
ルビィをベットに引きずり込んで抱き締める。
ルビィ「……どうしたの?」
善子「寒いの……温めてくれる……?」
ルビィ「う、うん……わかった」
そう言うとルビィの方からも私の体をギュッて抱き締めてくれた。 善子「あっ……」
ルビィの体、温かいわ。
感触も柔らかくてとても心地いい、ずっと抱きあっていたいくらい。
ルビィ「温かい?」
善子「うん、とっても……」
凄く安心する。
ルビィ「……」
善子「……」
ベットでお互い向き合いながら抱き合ってると、変な気持ちになっちゃいそう。
今は具合が悪いからそんな気も起きないけどね。 ルビィ「善子ちゃん……」
でも……
ルビィ「他にして欲しいことある?」
善子「……ある」
ルビィ「なに?」
善子「目閉じて」
ルビィ「えっ?……うん?」
善子「……」チュッ
ルビィ「っ!!善子ちゃん……」
このくらいの気力はあるのよ。
善子「ふふ」
ルビィ「……もう……善子ちゃんは……」
顔を真っ赤にしたルビィが頬をぷくーって膨らませてジト目でこっちを見てくる。
怒ってるみたいね。
私はそれを見ても可愛いという感想しか抱かなかったけど。 ルビィ「ルビィ、そういうつもりで来たんじゃないんだよ……?」
不機嫌そうなトーンで言い、「善子ちゃんが心配で来たんだから」と少し優しいトーンに戻して続けた。
善子「そうだったわね、ごめんなさい……」
ルビィ「……もう、大丈夫なら帰るからね」
善子「……」
それは……嫌ね……
帰られるのは……嫌……
善子「大丈夫じゃないわ……」
ルビィにしがみつきながら。
善子「全然、大丈夫じゃないの……」
ルビィ「……本当?」
善子「本当よ……私、大丈夫じゃないのよ……」
何度も大丈夫じゃないと繰り返す。 善子「……だから帰らないで……」ギュッ……
ルビィ「……」
「お願い」と懇願しながらルビィの頬に自分の頬をこすりつける。
善子「帰っちゃ嫌よ……」
善子「ルビィがいないと……辛くて…苦しくて……寂しいの……」
善子「だから側にいて……」
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「お願い……」
ルビィ「もう……仕方ないなぁ」
ふふ、ルビィは本当に優しいわね。
だから、大好きよ。 善子「ルビィ……」
ルビィ「なに?」
善子「好きよ……」
ルビィ「…………知ってる」
そう答えてから、ルビィは照れた様子で目をそらす。
本当に可愛い……
私のルビィ…… 善子「ねぇ……」
ルビィ「なに?」
善子「私を甘やかして……」
ルビィ「もう十分甘やかしてると思うけど……」
善子「足りないのよ……」
ルビィ「……」
善子「お願い……」
ルビィ「……何したら良いの?」
善子「うーんとね……」
ルビィにして欲しいこと……
たくさんあるけど、今お願いしちゃいけないことばかりが頭に浮かぶ。
そんな気力ないのに不思議よね、人の頭って。
善子「……」キョロキョロ
ルビィにお願い出来そうな事を探すように部屋を見渡してみた。 ルビィ「思いつかないなら無理に探さなくてもいいよ……」
善子「ある……ルビィにしてほしいこと……あるのよ……」
ルビィ「……変なお願いはやめてね」
「わかってるわよ」と返答しながら、キョロキョロ部屋を見渡すと、あるものに視線が止まる。
善子「あっ……」
ルビィ「……?」
善子「あれ……ほしい……」スッ
ベットの脇に置いてあるテーブルを指差す。
善子「喉乾いたから……」
その上に乗ってる、ルビィに買ってきて貰ったトマトジュースを指して、
「飲ませて」ってお願いした。 ルビィ「ジュースが欲しいの?」
善子「……」コクッ
ルビィ「わかった」スッ
善子「っ……」ギュッ
ルビィ「……」
善子「……」ギュッ……!
ルビィ「……離してくれないと取れないよ?」
善子「離れたくないの……ルビィと……」
ルビィ「ジュースいらないの?」
善子「ほしい」
ルビィ「じゃあ離して?」
善子「いや……」
ルビィ「……」
善子「側にいて……」ギュッ…
ルビィ「ジュースは?」
善子「飲みたい……」
ルビィ「……」
善子「でも、離れたくない」ギュッ…… ルビィ「…………もう、仕方ないなぁ」グッ……
ルビィは私に抱きつかれたまま一生懸命、腕を伸ばしてテーブルに手をかけようとしてる。
ルビィ「うーん……!」パタパタ
必死で手を伸ばしてて……
ルビィ「んんっ……!」パタ…パタ…
可愛い……
ルビィ「んっ…………しょ!」ガシッ
あっ、掴めたみたいね。
もうちょっと眺めていたかったけど。 ルビィ「ほら、取れたよ」
善子「……そうね」グタァ…
ルビィ「?」
あぁ……
頑張って取ってもらって悪いんだけど、別にそこまで飲みたい気分じゃなくなってきちゃったわ。
テーブルの上にあった時は魅力的に感じたんだけどね……
喉は乾いてるけど、我慢できない程じゃないし、
そもそもトマトジュースなんか飲んでもそんなに喉潤わないしね。
ルビィ「はい、善子ちゃん」スッ
善子「……」
起き上がって飲むのめんどくさいわ…… ルビィ「どうしたの?」
善子「……」
あぁ、めんどくさい……
ルビィ「?」
めんどくさいから……
善子「……ねぇ」
ルビィ「なに?」
善子「飲ませて」
ルビィ「えっ?」
善子「ルビィの口に含んで、それを私に飲ませて」
それならめんどくさいないしね。
ルビィ「えっ!!」
善子「早く……」 ルビィ「や、やだよ……そんな恥ずかしい事……」
善子「嫌なの……?私にキスするの」
ルビィ「そうじゃないけど……」
善子「じゃあ……」
ルビィ「で、でも…恥ずかしいし…」
善子「……ふーん、私とキスするの恥だって感じてたのね……」
ルビィ「……違うってば……」
善子「悲しいわ……」
ルビィ「変なお願いはしちゃダメって言ったよね……?」
善子「……私とキスするの変だって言うの……?」
ルビィ「……違うよ」
善子「ルビィ……今までそんな風に思ってたのね……ぐすん」
ルビィ「……もう、あんまりルビィを困らせないで……」
善子「うぇーん……」
ルビィ「……もう、今日だけだよ?」 そう言うとルビィは仕方なさそうにトマトジュースに口をつける。
やっぱりルビィは優しい。
ルビィ「うぅっ!」
あら、お砂糖入ってないトマトジュースだからか、
ルビィが辛そうにジュースを口に含んでいるわ。
ルビィ「んっ……」
早く、私に口移そうとルビィの方からキスを迫ってきた。
ルビィからキスしてくるなんてちょっと新鮮で、ドキッてしちゃうわね。
善子「……」ゴク……ゴク……
ジュースが私の口に流れ込んでくる。
いつもより甘く感じるのはルビィを介して飲んでるからかしら。
美味しい…… ルビィ「っ……」
善子「……」ゴク……
赤い液体が唇の端から少しだけ漏れる。
なんだか吸血鬼にでもなったみたいね。
いけないことしてるみたいに思えてきちゃう。 ルビィ「んっ……」
善子「……」ゴク……
……そういえば、トマトジュースって花粉症に良いらしいわね。
だから買ってきて貰った訳じゃないけど。
善子「……」サワッ……
ルビィ「んっ……!」
まぁ、根拠が乏しかったから私は信じてないのよね。
善子「……」サワ…サワ…
ルビィ「んんっ!」
だって調べたら改善するとか悪化するとか言われてたんだもん。
どっちなのって話じゃない?
善子「……」ギュッ……
ルビィ「んっ!!……ちょっと!」バッ
ルビィが急に私の体を突き放す。
善子「なによ……」
寒いわね……
私から離れないでよ。 ルビィ「えっちな事しないで……!」
善子「……?」
そういえば、いつもの癖でルビィの体触ってたわね。
いつものキスした時の癖でね。
善子「無意識よ……」
ルビィ「もう……」
善子「ルビィがいやらしいキスしてくるから」
ルビィ「っ!!してないもん!」
善子「そんなことより、寒いから……早く温めてよ」ブルッ……
ルビィ「……」
善子「ルビィ……早く……」ガタガタ……
ルビィ「もう、変なことしないでよ……」
善子「そんな元気ないわよ……」
ルビィ「してたくせに……」ギュッ
善子「……」グタァ……
あぁ、温かい……
体の力が抜けていく…… 善子「……」フワァ……
それと同時に頭がぼんやりしてきた……
頭が重い……
重力が頭のある位置だけに集中してるみたいな感覚で辛いわ……
まぶたも重くなってきてとっても眠い……
善子「うぅ……」ゴロゴロ……
でも、眠いのに眠れそうにないの。 ルビィ「今度はどうしたの?」
善子「眠い……」
ルビィ「じゃあ、一緒にお昼寝する?」
善子「でも、眠れないの……」
ルビィ「そうなの?」
善子「辛い……」
ルビィ「大丈夫?」
善子「……」フルフル
ルビィ「そう……」ナデナデ
善子「うぅ……」
ルビィ「苦しいね……」
善子「うん……」
ルビィ「……よしよし」ナデナデ 善子「……ねぇ」
ルビィ「なに?」
善子「眠るまで頭撫でたり……ほっぺたさすたっり……背中ポンポンして……」
ルビィ「お手てが足りないよ」
善子「交互でいいから」
ルビィ「もう、本当に甘えん坊さんなんだから……」
善子「今度ルビィにもしてあげるから……ね?」
ルビィ「ルビィは別にいいもん……」
善子「辛いから……早くして…」
ルビィ「もう……わがままばっかり」ナデナデ
善子「ん……」フニャ…… ルビィに撫でられてる……
気持ちいい……
ルビィに触られるの、大好きよ……
だって優しく触ってくれるから。
ルビィ「……」スリスリ
とっても安心するの……
ルビィ「……」ポンポン
辛い時もルビィが慰めてくれるだけで……
辛くなくなるの……
ルビィ「……」ナデナデ
それは……幸せだから……
ルビィと一緒にいられるのが……
ルビィと同じ時間を生きていられることが……
ルビィに愛されてることが……
とっても幸せで…… ルビィ「……」スリスリ
私の中の不安とか恐怖みたいな悪い感情……
それを全部、幸せで塗りつぶしてくれるの……
ルビィ「……」ポンポン
辛いことが……
あってもね……
貴方さえいれば……
私は………
わたしは……………… ルビィ「…………善子ちゃん?」
ルビィ「寝ちゃった?」
ルビィ「…………」
ルビィ「眠れたみたいだね」ナデナデ
ルビィ「もう、苦しくないかな?辛らくないかな?」
ルビィ「起きたら元気な善子ちゃんになってるといいなぁ……」スリスリ
ルビィ「ふわぁ……」
ルビィ「ルビィも眠くなってきちゃった……」
ルビィ「…………」ポンポン
ルビィ「ルビィも寝るね……」
ルビィ「……おやすみ、善子ちゃん」チュッ
ルビィ「えへへ……」
ルビィ「夢で会えると良いなぁ……」
ルビィ「……善子ちゃん……」
ルビィ「…………」スー… いつもキスした時は身体触る癖がある善子、お前……!
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