果南「スポイル・ストライク」
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spoil とは
(…を)役に立たなくする、台無しにする、腐らせる 果南「もしルパン3世のオチがさ、突然現れたモブキャラに2秒で倒されるとかだったらどう思う?」
私は身体を横に揺らしながら聞いた。
ダイヤ「ひっどい終わり方ですわね、何考えてたらそんなの思いつきますの?」
ダイヤは真っ直ぐ立ちながら答えた。
果南「何ていうかこう、銭形警部とか警察を華麗に撒いてさ、いざ行方を眩まそうってところで突然モブみたいな新キャラがばーっと出て…死ねルパン!バーン」
ダイヤ「めっちゃめちゃじゃないですの。万が一出版しようものなら、作者の家に火が放たれますわ」
果南「でもさぁ、最近は奇抜な、そう、意外な演出ってのがウケるんだよ」
ダイヤ「奇抜にすればいいってものじゃないでしょう。そういう最期はもっとこう、怪盗を引退した数年後のある日…みたいな感じでやるべきですわ」
そうかなぁ、と私は不服気に漏らし、手に持っていたりんごジュースを飲み干した。 ダイヤ「誰もそんな最終回認めませんわよ」
果南「そんなに?」
ダイヤ「その結末だけで、それまでの全てが駄作扱いされかねませんわ」
果南「ふーん……」
空になったペットボトルのキャップを閉める。
果南「それさ、確かめてみたくない?」
ダイヤ「は?」
間の抜けた声を出すダイヤに、私はある方角を指差した。
果南「不審車両1台、あっち」 時間を遡る事約36時間、世間で話題沸騰中の怪盗エリーチカから予告状が届いたとの通報があった。
通報者及びこれから被害者となるのは国木田大図書館。
ありとあらゆる本が集められ、若き館長である国木田花丸が言うには、将来的にロシアのモスクワ国立図書館と並ぶ世界的規模にまで成長する予定らしい。
その中でもとくに貴重な書物が盗まれるというのだ。
…実際どんな本かは知らないけど。
これにより元々警備を担当していた民間軍事会社オハラ・セキュリティのオペレーターを急遽3倍に増やし、更には常日頃からその怪盗を追い回している音ノ木坂警察署の担当チームがわざわざ足を運んでくる事態となった。
私とダイヤはオハラ・セキュリティの下っ端オペレーターであり、今回の件で急遽増援として呼び出されたのだ。 実はダイヤは怪盗エリーチカの大ファンであり、彼女を生で見るチャンスと喜んでいたのも束の間、私と共に警護対象から大きく離れた正面玄関の警備に回されてしまい物凄くがっかりする羽目になっていた。
ダイヤ「玄関から堂々と入る手口は2件前にもうやりましたわ!あの賢いエリーチカが今回わざわざここを通るなんて事あり得ません!」
図書館の中でどんな作戦が練られているのかまったく知る由もなく、拗ね気味のダイヤと私は3時間程前からほぼずっと正面玄関でぼーっと立ち尽くしていた。
どうせここには来ないと居眠りを試みたり、無線機のイヤフォンをこっそりウォークマンに挿し替えたり、予告時間の直前に自動販売機へ出向いたり………
今は午前0時5分……犯行予告から5分が過ぎ、そして図書館全体の停電で無線が騒ぎ出してから5分が経過したところである。 ダイヤ「いつ見つけましたの!?」
果南「さっき飲み物買いに行った時」
ダイヤ「10分は前じゃありませんの!貴女何で報告してないんですか!?」
果南「いやぁほら、無線とか盗聴されてるとアレじゃん?」
ダイヤ「とってつけたような理由を……」
図星。
果南「絶対さ、エリーチカの逃走用だよね」
図書館の周りは4時間も前に封鎖され、車両は警察と警備のものを除いて敷地内から全撤去されている。
その後で芝生の、それもライトの当たらない位置に車を持ち込むような人間は彼女しか居ないだろう。 ダイヤ「誰か乗ってましたか?」
果南「あー、人影はあったかも」
この仕事、夜間に車の運転席を狙い撃つような出来事は決して少なくない。
例え暗くても見れば何となく誰か乗ってるだろう程度には判別できるようになっていた。
ダイヤ「それはもしや、助手の希さんでは!?」
果南「誰?」
ダイヤ「3件目で初登場を果たした、ミステリアスな風貌とアグレッシブなスキルを持つ女性ですわ」
何だその紹介は。
まるでアニメの登場人物を語るように話すダイヤの顔はとても嬉しそうだった。 ダイヤ「凄かったんですわよ、ニュース映像なんですけど。博物館の件ではことり巡査相手に華麗なドライビングを見せつつ、自身の運転するミニクーパーから身を乗り出してロケットランチャーを…」
果南「あ、そうそう。ミニクーパーだったよ」
ダイヤ「間違いありませんわ!あぁどうしましょう、報告する前に一度鏡を……」
果南「まぁまぁ落ち着きなさいな」
私は少し悪い人っぽくダイヤの肩に手を回す。
果南「あと数分もしないうちに、エリーチカがあの車に乗る」
ダイヤ「それはそうでしょう、だから応援を呼んで先に押さえようと」
果南「できると思う?」
ダイヤ「無理ですわね」
きっぱりと即答しよった。 ダイヤ「希さんならきっと、エリーチカに負けず劣らずのガジェットで包囲網を突破するに違いありませんわ」
何で負ける前提で行動しようとしてるのさ。
ダイヤ「何もたもたしてますの?同じカメラに映るチャンスですのよ!?」
果南「違う違うちがーう!捕まえるのが目的でしょ!?」
ダイヤ「捕まえられる訳が無いじゃないですか!ただ一瞬、エリーチカの活躍のワンシーンに映る事ができればそれが名誉です!」
果南「警備員のセリフじゃないよ!?」
咳払いをし、いいから聞けとのメッセージを送る。
果南「そんなねぇ、動くな武器を捨てろーっ、とかやってるから逃げられちゃうの。そう思わない?」
ダイヤ「じゃ、どうするんですの」 果南「私達だけで、エリーチカが来る前に車をダメにしちゃうの」
ダイヤ「ダメにって…2人で?あっははは、そんなの無理」
何故バカにされたのだ。
果南「何もこっそり希さんを逮捕、とかじゃないよ。もっとこう、車をガツンと」
ダイヤ「というと?」
果南「希さんを捕まえようと追い回してたパトカーは大勢居た。でも、希さんごとミニクーパーをひっくり返そうと突っ込んでくる緊急車両は居なかった筈だよ」
緊急車両とは、文字通り緊急時に危険勢力を鎮圧する目的で用いる装甲車の事である。
今回オハラ・セキュリティが用意しているHVYインサージェント・アーマード・オフロードはやはりその名の通り乱暴な運転や爆発的エネルギーに耐える事を専門とし、むしろその存在が緊急事態とされる車の一つだ。
ダイヤ「貴女ってばまぁろくな事考えませんのね」 果南「少なくともただでは逃がさない、もし捕まえられたら…懸賞金いくらだっけ?」
ダイヤ「はい?」
果南「エリーチカの賞金だよ、かなり懸かってた筈でしょ?」
ダイヤ「前回から400万円に上昇しましたわ」
前回って何?まぁそれはともかく。
果南「400万だよ!今がそれを掴むチャンスだよ!?」
ダイヤ「しかし、ここを離れるわけには………」
果南「どうせ誰も来ないし大丈夫だって!それに今は奇抜な展開が大切なんだよ!400万だよ400万、400万円がこの手に……」
しつこい位に金額を繰り返す。言っておくと普段の私はこんなはしたない人間ではない。
ダイヤ「よよ、よんひゃく…そうですわね、400………」
ふへへ、とダイヤが悪い笑みを浮かべた。
お金が人を動かす、実に芸術的で哲学的な瞬間である。 その直後、図書館の上階の方から銃声が響いてきた。
誰かがエリーチカを撃ったんだろう、そしてそれは大方の予想通り多分命中していない。
時計は8分を差している。停電から8分もあれば、トリックに関しての十分な推理シーンが撮れるだろう。
ダイヤ「ここまでの長話の場合、平均的な戦闘シーンの尺は約4分ですわ」
つまりあと4分かそこらでエリーチカは図書館を脱出、希の車に乗って逃走を始めてしまう。
もしかしたら銃声の前からそのカウントダウンは始まってるのかもしれない。
果南「急げぇっ!」
私はペットボトルを足元に投げ捨て、ダイヤと共に駐車場へ駆け出した。
ものの十数秒で装甲車の一台に乗り込み、会社指定の隠し場所からキーを取り出してエンジンをかける。 ダイヤ「具体的な作戦とかは?」
シートベルトを閉め、拳銃を点検するダイヤに、私は後部座席から適当に引っ張り出したサブマシンガンを押し付けた。
果南「突っ込んで、あと撃ちまくって、逃げられる前に車をぶちのめす」
ダイヤ「や、それじゃ死んでしまうのでは?」
果南「それはまぁ……プロ同士、お互い引き際ってやつをさ」
ダイヤ「何て適当な」
窓を開け、気づかれるのを遅らせるためにライトを切る。
果南「捕まえさえすれば何かやらかしても大目に見てもらえるだろうし、もしかしたら昇格できるかも」
私は若社長である小原鞠莉の顔を思い浮かべた。
彼女は頑張る人間に誠実というかまたは何かの社会実験に手を染めてるのか、社員の実績を極秘の点数で管理し、地位と給料をちらつかせて自主的な無茶を煽りまくってる人間だった。
エリーチカの首なら傭兵稼業丸1年分程の加点に該当するだろう。
果南「絶対いける、大丈夫だよ」
私達は顔を合わせ、笑い合った。
残念な事にその笑顔は青春ドラマの感動シーンとは大きくかけ離れた代物だったが、ともかく私はアクセルを踏み込んだ。 希「えりち、遅いなぁ。また警察の人達とお喋りしとるんかな」
うち、東條希は怪盗エリーチカもといえりちが逃げる時に備えて、20分前から敷地内に車で潜入している。
この車、ミニクーパーの小さいボディには数多くの逃走用グッズが備えられているだけでなく、特別なチューンもたっぷり行っていた。
スピリチュアルやね。
コンパクトで走りやすいし、それでいて武器は満載。怪盗稼業にはうってつけの代物なんよ。
……んー、暇やな。
逃げようと思えばすぐ逃げられる筈なのに、えりちは大抵いつも警察の人と遊んでから出てくる。
希「もー、待つ方の身にもなっ…!?」
ちらっとバックミラーを覗き、そこに映る光景にうちは心臓が止まりそうになった。
え、何!?
目を擦ってもう一度バックミラーに目をやると、そこには真夜中だというのにライトも点けず、柵をまるで避ける事無く弾き飛ばし、芝生を片っ端から押し花に変えてこちらに向かってくる巨大な鉄塊が映っていた。 果南「あーっはっはははは!」
私達はげらげら笑いながら、慌ててエンジンをかけたミニクーパーに猛スピードで接近していた。
今の私達の顔はまさしく悪の手先そのものであり、ギャングであり、警察が追うべき対象だった。
ダイヤ「逃げてます!逃げてますわ!」
果南「逃すなぁ!」
ダイヤ「あっはははは!」
窓から身を乗り出したダイヤが、ミニクーパーに向けてサブマシンガンをフルオートで放つ。
本来なら威嚇射撃を挟んでいないこの発砲は違反だが、誰も見てなど居ない。そもそもマシンガンに威嚇も何もあるものか。 ダイヤの放った銃弾はほとんどがミニクーパーに当たったが、そのどれもがかすり傷程度の効果しかもたらさなかった。
果南「げっ、防弾加工か!」
ダイヤ「エリーチカの相棒ですわよ?それ位やってて当然です!」
そう言いつつもダイヤはマシンガンを撃ち続け、クーパーのかすり傷を増やしていった。
敷地の突き当たりに来たところで、クーパーがドリフトを繰り出した。
果南「曲がった!」
もしかしたら敷地の外周をぐるぐる回り続けて、エリーチカを待つつもりなのかもしれない。
しかしそれは私達にとって、少なくともエリーチカが来るまで彼女が逃げる心配が無くなった事と同義である。 ダイヤ「もっと速度を上げられませんの!?」
果南「おっしゃ、急接近だ!」
私はギアを更に上げ、ペダルを踏み直した。
装甲車はすぐにミニクーパーの真後ろへたどり着き、勢い余って軽く衝突した。
弾倉を取り替えたダイヤが先程よりぐっと近い距離でマシンガンを浴びせる。
ミニクーパーの車体は相変わらず火花を散らすだけで大したダメージを受けなかったが、防弾ガラスはそうもいかず、ついにヒビが入り始めた。
勝てる。
私達がそう感じた直後、クーパーの上部が開き、小型のマシンガンを持った手が伸びて火を噴いた。
私とダイヤは悲鳴を上げ、慌てて身を屈めた。
何発かの銃弾がフロントガラスを突き破り、シートにぶち当たる。
この装甲車は車体こそとてつもない防御力を誇るが、ガラスは何故か搭乗者自らが叩き割る事を前提としているため、防弾加工がまったくされていないのだ。 果南「面白いじゃあないの!」
私は拳銃を抜き、設計者の想定通りフロントガラス越しにクーパーヘ発砲した。
その横でダイヤが弾切れのサブマシンガンを後部座席に放り投げ、代わりにより強力なロシア製軽機関銃を取り出し、助手席に固定する。
ダイヤ「いきますわよぉ!」
掛け声と共に、ダイヤの新しい武器が唸りをあげた。
クーパーの防弾ガラスに7.62ミリの凶悪な弾丸が降り注ぎ、同時に装甲車のフロントガラスをヒビと穴ぼこだらけにする。
シートベルトを外したダイヤは腰を上げると、視界をほぼ完全に失ったガラスを蹴り破った。
これで遮る物なしだ。 私は左手でハンドルを握り、右手の拳銃でミニクーパーを撃ちまくった。
塗装が剥がれ、ガラスが窓の機能を果たさなくなり、サイドミラーが弾け飛ぶ。
相手も負けじと撃ち返すが、その全てがボンネットの装甲に跳ね返された。
それどころか倍以上の弾を車全体に浴びせられ、銃を持つ手を車内に引っ込めざるを得なくなってしまった。
果南「やーい!降参しな!」
バカにするかのように、空になった弾倉をミニクーパーに投げつける。
すると、同じ手のひら程の大きさの何かが投げ返された。
それはボンネットにぶつかると跳ね返り、丸い特徴的な姿で私の視界に飛び込んでくる。
手榴弾!?
私は反射的にそれを窓の外へはたき飛ばし、身を屈めた。
手榴弾は窓からすっ飛んですぐに炸裂し、装甲車のボディに大量の破片を叩きつけた。
果南「危なっ!?」
ダイヤ「ちょっと!?気をつけてくださいまし!」 次にミニクーパーの上部から姿を現したのは、大量のロケット花火だった。
一斉に点火された花火の大群が、銃弾より激しく装甲車に襲いかかる。
果南「うぉっ、あっつぅ!?」
ダイヤ「うぎゃぁぁぁっ!」
フロントガラスを私達の手で撤去された装甲車は、危険な火の玉が車内に数多く侵入する事を許した。
丸焦げになる!
2人して意味不明なわめき声を上げ、火花を叩き消し、燃えるシャツの火をもみ消し、ついに花火自体を手掴みで車外に放り投げ始めた。
その間抜けな消火活動の隙を突いて、ここぞとばかりにミニクーパーが加速する。
だが今は追いかけている場合ではなかった。花火の始末を優先すべく、私はブレーキをかけた。 果南「やっば……死ぬかと思った………」
ダイヤ「流石……やりますわね………」
私達は何とも間の抜けたな姿でシートにもたれかかっていた。
シャツはところどころ焼け焦げ、髪はギャグ漫画のようにぼさぼさだ。
よく見ると防弾ベストにも少し焦げ跡があり、よく見なくてもグローブには穴が空いている。
ダイヤ「ぬぬ、これしきで逃がしはしませんよ、希さん!」
ダイヤが自身の頬をぺちんと叩き、第2ラウンドの意思を見せたところで、なんとミニクーパーが自ら戻ってきた。
それは100メートル先で静止したかと思えば、中からついに希が姿を現した。上半身だけ。
その手には4連装のロケットランチャーが担がれている。
果南「うそぉん」
ダイヤ「あれま」
実にあほらしい感想を口にしていると、煙と共に砲身がきらめいた。 果南「うそぉん」
ダイヤ「あれま」
実にあほらしい感想を口にしていると、煙と共に砲身がきらめいた。
果南「あーっ!ヤバイっ!?」
ダイヤ「ピギャァァァ!?」
私はダイヤとわめきながら大慌てで装甲車を急発進させたが、真っ直ぐ飛んできたロケット弾はそれの左側面に容赦なく直撃した。
爆音と共に装甲車は大きく車体を揺らし………何とそれだけだった。
あれ? あろう事かインサージェント・オフロードはロケット弾の攻撃に耐え切り、横転すらせずにミニクーパーへの直進を再開したのだ。
その姿はまさに暴徒であり、希はもちろん搭乗者である私達すらも驚愕していた。
驚きのあまり固まっていた希が、我に返ってもう1発ロケットを発射する。
私はすぐさまハンドルを切ってそれを避けようとしたが、失敗して今度は右側面に命中してしまった。
車体が跳ね上がり、それでもなおこの装甲車は止まる事を知らない。
高速で距離を詰める暴徒に、希は3発目の発射を諦めて自身の車を発進させた。 ダイヤ「もぉぉ逃がしませんわよぉぉっ!」
ダイヤは後部座席に頭から突っ込み、じたばたと尻を振り始めた。
果南「何する気?」
ダイヤ「え!?」
果南「次は何をするのさ!」
ダイヤ「次は……これですわ!」
ようやく這い戻ってきたダイヤの腕には、6連発のグレネードランチャーが抱えられていた。
果南「車吹っ飛んじゃうよ?」
ダイヤ「そんなヘマはしませんのよ」
シリンダーに弾が入ってる事を確認し、安全装置を外す。
ダイヤ「真っ直ぐ突っ込んでくださいまし!」
果南「当然!」 私は速度を上げた。ミニクーパーに近づき、その真隣でダイヤがグレネードを炸裂させる。
左右、前方とランチャーを撃たれ、クーパーは思うように走る事ができない。
このままでは吹き飛ばされると思ったのか、希はまた何かを上部から出して固定した。
直後に謎の装備から大量の煙幕が噴き出してくる。
果南「ええいしぶとい奴め!」
そう言った私の口とダイヤ、車内全体を紫色のスモークが包み込む。
果南「見えなぐぇっふぉ!あれ止めないと!」
ダイヤ「ブレーキ!ブレぇっごほっげほっ!」
果南「どっち!?」
ダイヤ「何が!?」
私とダイヤは激しく咳き込みながら意味不明な会話をぎゃーぎゃー騒ぎ立て、挙句急停止せざるを得なくなった。 窓から上半身を垂れ、新鮮な空気を吸い込む。
果南「あんの車ぁ、どんだけ武器積んでんのさ」
ダイヤ「こっちも、人の事言えませんけど、ね………」
スモークから逃れた今でもまだダイヤは咳き込み、口をぱくぱくさせている。
果南「次で仕留めよう、時間をかけ過ぎた」
ダイヤ「ですわね、何より身が持ちませんわ」
私達は大きく息を吐き、まるでエクソシストのように車内へと滑り戻った。
長く騒ぎ過ぎた。ここまでの間3人きりだったのが不思議な位だ。
だがもうそうはいかない。いつエリーチカが出現して私達を魔法の世界に叩き落としたり、それか騒ぎを聞いて駆けつけた仲間のオペレーターを誤って撥ね飛ばしてもおかしくないだろう。
やるぞ。
私は車を反転させ、図書館を逆回りで走り始めた。 ダイヤ「どうしますの?」
果南「良い感じの時に撃って」
ダイヤ「はっ」
ここ数分で十何回目の自販機前へたどり着いた時、爆走中の希に出くわした。
まだ背後から追われてると思っていたのか、煙幕が焚かれ放題になっている。
果南「見ぃぃつけたぞぉぉぉ!」
悪の叫び声を希に吐きかけ、威嚇するようにライトを点けた。
あらゆる意味での暴徒が目を覚まし、希へ真正面から襲いかかる。
もしこの時速80キロ以上で大地を滑る巨大な塊にぶつかってみようものなら、ミニクーパーのような小型車など一瞬でぺしゃんこになってしまうだろう。
来い!かかって来い!
2台の距離がみるみる縮まっていく。 手品はもう終わり!度胸を見せろ!
速度メーターが時速100キロより先を差す。
果南「来ぉぉい!ルパァァァァン!」
衝突する一歩手前というところで、恐怖に満ちた希の顔がクーパーのガラスに映った。
私の顔に笑みが浮かんだ。
寸前でミニクーパーが軌道を逸らし、僅かに擦りながら一瞬で装甲車とすれ違う。
私は即座にブレーキをかけ、ハンドルをぶん回して車体を180度反転させた。
果南「ダァァァイ!」
名前を呼ぶつもりで誤って暴言を叫び、同時にダイヤがグレネードランチャーをぶっ放した。
発射されたグレネードは放物線を描き…急なハンドル操作でバランスを崩したミニクーパーの横っ腹に突っ込んだ。
爆音が轟き、爆風がスモークを晴らし、爆炎に照らされた小さな車体がサイコロのように転がる。
途端に辺りへ静けさが戻り、新しいスモークは出てこなくなった。 果南「………やった?」
そう言うと、ダイヤにどつかれた。
フラグを立てるな、というメッセージが肩に伝わってくる。
車へとゆっくり近づき、少し離れた場所で私達は装甲車を降りた。
ミニクーパーはひどい有様だった。
防弾ガラスは使命を限界まで果たし、榴弾の直撃箇所は凹み、塗装がボロボロの車体は文字通り真っ逆さまにひっくり返っている。ドライバーが生きているかも正直怪しい。
私は拳銃を構えながら、車の前方に回った。
その場にしゃがみ、ヒビだらけのガラスに懐中電灯を当てる。
車内を覗くと、運転席のかつて天井だった部分の上で頭を抱えながらうずくまっている希が居た。
果南「生きてる」 ダイヤが扉を開けようとしたが、歪んでいてびくともしない。
果南「ダメ?」
ダイヤ「お待ちくださいまし」
ダイヤはいつの間にか持ち出していたショットガンを構え、助手席の窓を撃ち始めた。
1発撃つ度に中の希が悲鳴を上げる。
4発目を叩き込むと、ついに限界を超えた防弾ガラスが粉々に砕け散った。
割ったばかりの窓から腕を突っ込み、希を掴んで引きずり出す。
果南「ははは!やった!捕まえたぞ!」
希「嫌やぁ!殺さないでぇ!」
2人に銃を突きつけられた希は、両手を上げながら泣きわめいた。 その号泣っぷりに私とダイヤは顔を見合わせた。
どうやら自分達が思ってる以上に、自分達には悪魔の素質があったらしい。
よく考えてみれば、あんな大きい装甲車が突然やってきてマシンガンを撃ちまくっていたら、誰だって自分を殺そうとする狂人だと思うだろう。
殺人鬼に追いかけ回されたと信じて泣き叫び命乞いを続ける希に、私達はこれ以上銃を向けている気になれなかった。
果南「そ、そんなに怖がらなくてもいいじゃん………」
人間というものはこんな時、ここまでデリカシーに欠けた発言しか出てこないのだろうか。
ダイヤ「ねぇ、ほら落ち着いて……私達はただの警備員ですから………」
希はまったく聞いていない。もしくは聞いていたが、信じてくれなかったんだろう。私でも信じない、こんなのに自分の図書館を警備させてたまるか。 ダイヤ「私達は、貴女を、殺しません。大丈夫ですよ、殺しません」
そう片言気味に言い聞かせながら、ダイヤは希の頭を撫で始めた。
何してるの?
希「うぅ………ぐすっ、本当?」
ダイヤ「えぇ、本当です。さぁ、ハグしましょう」
そう言うとダイヤは希を抱き締め、やはり頭を撫でた。
何をしているんだ。
そしてそのハグしよう、は私の決め台詞ではないか。
私の決め台詞を使って何をしているんだ。
犯人の仲間を抱き締めるダイヤの顔はとてもニッコニコとしていた。 しばらくしてようやく希は泣き止み、私は拘束バンドで彼女を後ろ手に縛って壁際に座らせた。
果南「全体へ。こちら玄関チーム、容疑者の仲間を拘束した。オーバー」
何故かずっと静かだった無線機に呼びかける。
もしかしたら、皆とっくにエリーチカが倒してしまったのかもしれない。
ややあって、警備隊長の声が流れてきた。
「玄関、無事だったのか」
その声は弱々しく、まるで絞り出すように発せられていた。
「エリーチカがやってくれたよ。いでででで!…ここに居るだけでも既に4つのチームがノックアウトされ、今は警察がおもちゃにされてる」
だろうとは思っていた。 「目標とこっちのゴム弾銃をパクられた。残ってるのは婦警の姉ちゃん達が3人……クソ、今1人ぶっ飛ばされた」
館内の警備が拳銃を除き非致死性のゴム弾で武装しているのは、エリーチカを生け捕りにしようという慈悲や人道、はたまた何かしらの野望の為ではなく、単に本の山をめちゃくちゃにしないための安全策である。
それが吉か凶かは不明だが、エリーチカの飛び道具が増えたのは間違いなかった。
「俺は撃たれて動けない、死んだ方がマシな位痛ぇ。まだ起きてる奴は今すぐ緊急車両に乗って敷地を封鎖しろ、その内1チームは倒された門番チームの代わりを務めるんだ。アウト」
果南「了解。玄関、アウト」
私に続いて了解、と送信したのはたった2チームだけだった。
全部で12チームは居た筈だが、いつの間にか4分の3が撃沈していたようだ。 今のところ誰も見てなさそうだし休憩
30分位ほっといてもスレ落ちないでしょ(適当) ダイヤ「やはりエリーチカは凄いですわ」
果南「これから私達も倒されるかもしれないんだけど」
ダイヤ「それはそうですわ。だってこちらは希さんを捕獲してるんですもの」
希の方を見やる。
彼女は相変わらずちょこんと座り込み、膝に顎を乗せて貧乏ゆすりをしていた。
ダイヤ「エリーチカが仲間を見捨てる筈ありませんわ」
果南「じゃあ取り返しに来る」
ダイヤ「手柄欲しさに助手を捕らえた悪は無事、彼女に滅ぼされるというわけです」
果南「ダメじゃん」
また相変わらず自信があるのか否かよくわからないダイヤだったが、私達がやるべき事に変わりは無かった。 ダイヤ「やられるにしても、主演として全力で戦わなくてはエリーチカに失礼ですわ」
果南「いつ主演になったのさ」
ダイヤ「今こそそうなるチャンスですわよ」
不思議な会話に、耳を傾けていた希が首も傾げる。
希「ねぇ、もしかして……えりちの、ファン…とか?」
何故そうなる………えりち?
ダイヤ「まぁ!エリーチカは普段そう呼ばれていますの?」
希「え?あ、うちがそう呼んでるだけなんやけど………」
ダイヤ「あらぁ〜それってとても親しい間柄を意味!…エリーチカの好きな食べ物とかは?」
希「えぇ?えー……よくチョコ食べてるよ」
新しい情報の数々にダイヤの頬はゆるっゆるだ。
梅干しがどうとかいうまるで関係無い話に突入していたところ、突如頭上で図書館の窓が大きな音を立てて砕け散った。
やっぱりこんな話してる場合じゃなかった! 割れた窓から影が飛び出し、膨らむと同時に無線機から隊長の声が響く。
「全体、エリーチカが窓から逃げた。東だ!」
東とはまさしく、今私達が居る方角であり、現れたのは間違いなくエリーチカだ。
「げほっ、婦警を1人攫ってった。誤射に注意しろ。アウト」
ちっ、あっちも人質を取ったか。
エリーチカと人質の警官であろう影は、風船のようなものでふわふわと何処かへ去っていく。
私は希に詰め寄った。
果南「この後の計画は?」
希「へ?」
果南「今から、本来はどうやって逃げるつもりだったの?」
希「え、でもそんなの教えちゃったらえりちが………」
悪人らしい表現をすれば、彼女はまだ自分の立場を理解していなかった。 果南「干物のジュースを飲んだ事ある?」
は?という顔をされた。2人に。
果南「実家ではよく干物を作っててね、それを幾らかと海水を2対1の割合でミキサーにかけるとそれはそれは………」
希の気味悪そうにしていた顔が更に青ざめていき、ダイヤがそっぽを向いて吐きそうな顔をした。
果南「どす黒い海が喉をゆっくりと流れて………」
でっち上げをそれらしく吹き込むと、希はあっさり観念した。
希「わかった、わかったから!あの窓から出た後、敷地外に飛んでったと見せかけてここまで旋回して来る事になってるん」
旋回?
果南「じゃあもうすぐここまで来る!?」
私とダイヤは慌てて周囲を見回したが、さっきの影はまだ戻ってきていない。
だが次に言葉を発したのは、私達3人の誰かではなかった。 「はーい、希!ちょっと手間取っちゃったけど、上手くいったわよ」
ひっくり返ったミニクーパーからだ。
希「えりちや、車に無線機が」
私は床に伏せ、窓から運転席に身体を滑らせた。
散乱したお菓子の袋やマシンガン、使用済みの煙幕弾、使われなかった未知のガジェットを退け、声の発生源を手に取る。
エリーチカ「待たせてごめんなさい。それと、いつも邪魔しに来る娘、捕まえちゃった。可愛いからつい」
仕事を既に半分以上成功させたエリーチカは、人質を取った事を楽しそうに話していた。
エリーチカ「帰りの車、ちょっと狭くなっちゃうけど……いいわよね?えへへ」
呑気過ぎる。例えエリーチカが最近のライトノベル主人公に強く影響されていたとしてもだ。
エリーチカの普段と違う話し方に胸をときめかせていたダイヤもそこに違和感があったらしく、視線が思考の海を泳ぎ出す。 果南「無線の盗聴は?」
希「警察無線の内容は全部」
果南「警察だけ?」
希「だけ……?」
なるほどね。
ダイヤ「私達セキュリティの回線は警察とは別ですわ」
果南「つまり私達の会話は聞かれてなかった!」
エリーチカが既に勝ったつもりでいるのは単に自信があるというだけではなく、逃走用のクーパーがここでひっくり返ってる事を知らないからだ。 エリーチカ「ねぇ希?そっちは大丈夫?」
無線から少し心配そうな声が聞こえてくる。
今すぐ返事をしなければ、希に何かあった事がバレるだろう。
果南「何も無かったふりをすれば、不意打ちできるかも」
ダイヤ「どうやって?あれを隠すのは無理ですわ」
ダイヤがめちゃくちゃのミニクーパーを指差す。
そうだった。例え今希が嘘をついても、ほぼ廃車のこれを見たら怒って一帯に爆弾を投げまくるかもしれない。 ダイヤ「私に考えがあります」
果南「え?」
有無を言わさず、ダイヤが私の手から無線機をもぎ取って送信ボタンを押した。
ダイヤ「そっちは大丈夫ぅ?ははっ、残念でしたぁ!お友達の希ちゃんはもう貴女とは逃げられませぇん」
衝撃的なセリフに、私と希は口をあんぐりと開けた。
ややあって、エリーチカの真剣な声が返ってくる。
エリーチカ「貴女は誰?希はどうしたの?」
ダイヤ「えー、言わなきゃわかりませんのぉ?まったく、この美人をこんな場所にほっとくなんて悪い人ですわねぇ」
エリーチカ「………そう、捕まえたのね?やるじゃない。あの子たまに抜けてるところあるから、まぁ、幸運はそう長く続かないわよ」
ダイヤ「えぇおっしゃる通り、本当に幸運でした。何せのんちゃんの必死の抵抗は無に帰し、自慢の車は今や鉄屑同然ですからね」
ダイヤは無線機を口元から離し、ぷくく、と笑った。
想像以上の状況を伝えられたエリーチカが驚く顔を想像するのは難しくない。 エリーチカ「貴女、希に何をしたの!?希は無事なの!?」
まさか相棒の乗る車がスクラップになっていると思っていなかったエリーチカは声を荒げた。
ダイヤ「ここに居ますわよぉ。ほんと可愛いでちゅわねぇ〜、希ちゅわん」
そう言いながらダイヤはまた希の頭を撫で、頬ずりをした。
ダイヤ「ほら、エリーチカに元気な声を聞かせてあげましょう?」
ダイヤは無線機を希の口元にあててから、彼女のみぞおちを軽くつついてえずかせた。
希「んえっ、げほっごほっ……えいちぃ、助けて………」
今頃エリーチカは怒りに燃えている事間違い無しだ。
希の状態を実際よりずっと悪く言うダイヤを見て、私は激怒した怪盗を撃つためのオートマチック小銃を用意したくてたまらなくなった。 エリーチカ「今すぐそっちへ行くわ。私が警官を捕まえてる事、忘れないようにね」
通信を終えると、ダイヤは希の胸元に無線機を引っ掛け、手を叩いて達成感を表現した。
果南「あいつ凄い怒ってるじゃん」
ダイヤ「たった今、私達の戦いは最高にドラマティックな物となりました」
果南「変な事を」
私は装甲車に飛びつき、先程ダイヤが使っていたサブマシンガンを取り出して弾倉を差し込んだ。
ダイヤ「わくわくしてきましたよ」
果南「早いとこ作戦を立てるべきだと思う」
とはいえ、作戦なんて立てようがあるのだろうか?
1人で警官隊とオペレーターチームを倒せる程近接戦闘に長けた女に、まさか素手で掴みかかるわけにはいかない。
銃弾もきっと数発程度は回避できるのだろう、まともにかち合ったら1分耐えられるかも怪しかった。 ろくな計画も思いつかないうちに、あ、と希が声を発する。
視線の先にはついさっき窓から飛び出した影が、その時よりずっと低い位置を飛行してこちらへ近づいて来ていた。
ダイヤ「見せ場ですわ」
私は銃の装填レバーを引き、影に狙いをつけた。
ダイヤが希を立たせ、その背後に回って拳銃を突きつける。
影はみるみるうちに姿形をはっきりとさせていき、ついに2つの人型と大量の風船が浮き出てきた。
私達を見つけたであろうエリーチカの声が、再び無線機から響く。
エリーチカ「希を解放するなら今のうちよ。でないと……後悔させるわ」
その時、私の中に眠る悪の心はこのセリフを気に入らなかった。 果南「うるっさい!バァァァカ!」
私は空を飛ぶエリーチカに直接叫び返し、風船に向けてマシンガンの引き金を絞った。
一度に3、4発ずつの弾丸を小刻みに発射し、風船を次々と貫いていく。
数の大半を失った風船は急速に飛行能力を失い、数秒後にはほとんど落下に近い速度で使用者を地面に叩きつけた。
誰もが度肝を抜かれた中、ぎゃっ、という悲鳴が微かに響く。
希「………あ、ああ」
果南「本人には当ててない、多分」
残った風船が2人から離れ、空へ上がっていく。
ダイヤ「あの、人質の方も居たのでは………」
果南「脚は折れても死ぬ高さじゃない」
あいつには何もさせるな、何かされたら終わりだ。 怪盗が立ち上がり、警官を連れてこちらに歩み寄って来るのをじっと待つ。
彼女等が落ちたのは僅か50m程先だったが、今はそれがひどく遠いように感じた。
エリーチカ「突然撃ってくるなんて、ひどいじゃないの」
また無線だ。
私はそれを無視し、銃で彼女を狙い続ける。
約10メートル程まで近づいた時、突如図書館全域の照明が起動した。
慌てちゃダメだ、これはエリーチカの仕業じゃない。
恐らくは仲間の誰かが電源を復旧させたんだろう。 果南「そこで止まれ!」
私は動じる事なく大声で呼びかけた。
エリーチカ「女の子にしては、ちょっと威勢が良過ぎるんじゃない?」
やっと無線ではなく自分の口から直接言葉を出したエリーチカは、出動前にニュースで見た時以上の美女だった。
綺麗な顔立ち、金髪のポニーテール、見た目と性能を両立したステルススーツ。右手に持った銃は人質のこめかみに押し当てられていた。
復旧した照明に照らされるその姿は、敵に回すのが残念な程に……カッコ良かった。デスクトップの壁紙にしてもいいだろう。
エリーチカ「いつも邪魔しに来る娘達の方がこう、礼儀正しいわ」
果南「武器を捨てろ」
一番安全な解決策は今すぐに彼女の頭を撃ち抜いてしまう事だったが、そうすれば後で警察に文句を言われるだろうし、何よりダイヤと希がひどく悲しむに違いない。 エリーチカ「あら、わかってないようね。貴女達こそ銃を捨てないと……この娘が死ぬわ」
彼女の左手が人質の顎を優しく持ち上げ、緊張に染まった顔をこちらに見せつける。
あいつのペースに乗るな!
映画の悪人達はこんな時何て言ってた?全員がただヒーローに撃たれて終わりではない筈だ。
エリーチカ「ふーん………理解できないかしら?今すぐ武器を置かないと、この警察官を撃つと言ってるのよ」
これだ。
果南「勝手に撃ちなよ。こっちの銃は1秒に最大13発の弾を発射できるんだ、人が2人位一瞬でずたずたになる」
私の言葉にエリーチカは片眉を上げ、耳を疑った。 果南「わかりやすく言ってあげる。私達はそいつがどうなろうと知ったこっちゃないし、少しでも余計な事をすればまとめて撃つ」
わざとらしくサブマシンガンを構え直し、発砲の意思を見せつける。
怪盗の顔には驚きが浮かび、警官は新しい恐怖に凍りついた。
このままハッタリをかまし続ける事ができれば、もしかしたら役に立てない警官を離してくれるかもしれない。
エリーチカ「貴女、本気?自分の言ってる事が何なのか理解してる?」
果南「自分の1番欲しいものが何かは解ってる。あんたの首だよ」
私は精一杯の狂気をエリーチカに向けた。
少しでも警官を助けようとする素振りを見せれば、この目論見は頓挫するだろう。 歯軋りをするエリーチカが焦り気味に言い放つ。
エリーチカ「だったら今すぐ撃ったらどうなの?私の生死は関係無いって事でしょ?」
痛いところを突かれた。私は心の中で大きく舌打ちをする。
危機的状況で、私の意図を察したダイヤの口から猟奇的なセリフが飛び出した。
ダイヤ「それじゃ面白くありません。だからこうしましょう、5つ数えた後、希さんを撃ちます」
そう言ってダイヤは希の頭を拳銃で強く小突いた。
エリーチカ「希!」
ダイヤ「どこにしましょうか。まずは…腕。次は脚です。その次は……あぁ何という事でしょう!この銃には弾が15発も入ってますわ!」
ダイヤの完璧な演技をエリーチカは信じ、彼女の顔に隠しきれない怒りが滲み出る。
エリーチカ「正気じゃないわ……最低よ!」
ダイヤ「ありがとう。はい、いーち」
快楽殺人者顔負けの笑顔でカウントダウンを始めたダイヤに、エリーチカはなす術無くピストルを地面に落とした。 ダイヤ「武器を捨てろと言いましたよね?背中のそれと……そうだ、盗んだ物がありましたね。そこの警官に渡して、こっちに来させなさい」
エリーチカはそれに従い、背負っていたゴム弾銃を警官の肩にかけ、盗んだ本が入ってるであろう鞄を警官に渡した。
果南「待て!警官、中身の確認を」
警官はぎこちない手つきで鞄を開けると、首を縦にぶんぶんと振った。
果南「よーし、ゆっくりこっちに来な」
泣き出しそうな顔の警官をじっと見守りながら、私は内心焦っていた。
これが物語であるならば、仮にも怪盗と名のつく人間が何もできないまま終わる筈がない。
今から何かしでかすとしたら、それは何?今のあいつに何ができる?
それとも捕まえた後、隙をついて隠し持っていた何やらで華麗に逃げ出す気か。そんなものどうやって対処すればいい?
警官が私に近づき、私は彼女をその場で待たせた。 果南「膝をつけ、両手は頭の上に」
指示通りに動くエリーチカの鋭い目が、私を睨みつける。
せめて今すぐにどんでん返しが起こらない事を祈りながら、私はエリーチカに近づいた。
一歩、そしてもう一歩………
あと2、3メートルというところで、エリーチカが再び口を開いてしまった。
エリーチカ「ただじゃ済まないわよ」
明らかに奥の手を使う際のセリフだ。
果南「ちくしょう」
毒づく私の目の前で、エリーチカのスーツのあちこちから火花が噴き出した。 間も無く大量のロケットが射出され、真っ白な煙を撒き散らしながら彼女以外の全てに飛びかかる。
果南「エリィィチカァァァッ!」
私は襲い来るロケットを大きくのけ反って避け、一瞬前までエリーチカが居た辺りにマシンガンを撃ちまくった。
一瞬だけ、側転をして自分のピストルを拾い、煙の中に消えて行くエリーチカが見えた。
負けられるか!
私はマシンガンを腰に構え、彼女の消えた方角に弾をばら撒きながら警官の元へ駆け出した。
驚く警官の腹部に肩から突っ込み、タックルを繰り出すように一気に持ち上げる。
えずく警官を抱えた私は装甲車に全速力で駆け寄り、ボンネットに飛び乗ると、彼女を運転席に投げ入れた。
一帯が煙で完全に満たされれば、ここはエリーチカの独壇場となる。
今すぐダイヤと希を車に乗せるため、私は煙の中に飛び込んだ。 視界が狭まっていく中、ぼんやりと2人分のシルエットが浮かび上がる。
ダイヤ「走って!もっと速く!」
今の話し声でそれがダイヤ達だと確信し、近づこうとしたところで、その背後に別の影が揺らめいた。
果南「伏せろぉぉぉっ!」
私は反射的に叫び、マシンガンを構えた。
ダイヤはすぐに希を抱えて倒れ込み、私は影に向けて引き金を絞った。
2人の頭上を弾幕が突き抜け、白い靄を引き裂く。
果南「こっちに、急いで!」
2人を立たせ、その後ろについて行きながらしつこく銃弾を撒き散らす。
エリーチカがこれらの1発でもくらっているとは思えない。だが、この状況で突っ込んで来れる程人間離れしてはいない筈だ。 牽制射撃の効き目がどれだけあってか、ダイヤは希を後部座席に押し込み、警官を助手席に追いやって運転席へ乗り込んだ。
ダイヤ「果南さん!」
私はこれでもかとマシンガンを振り回し、残弾を全てばら撒いてから車に飛び乗り、扉を閉めた。
果南「出して!」
装甲車が発進し、煙の中を強引に突き進む。
何秒もしないうちに銃声が響き、防弾のタイヤに弾丸がぶち当たる音がした。
この煙幕の中でタイヤを狙い撃てるの!?
もしこの車じゃなければ、今頃お陀仏だろう。 エリーチカの射撃と透視の能力に感心していると、弾丸とは違う衝突音が背後から聞こえた。
果南「何かぶつかった!」
ダイヤ「え、嘘!?」
果南「後ろから…!?」
振り向こうとした私の首は左に90度回ったところで釘付けになった。
扉に張り付き、窓越しに銃を構えたエリーチカが不敵な笑みを浮かべていたからだ。
クソッ!こんな近くに居たのか!
彼女の指が引き金を絞ろうとした瞬間、私は弾切れのマシンガンで窓に殴りかかった。
ガラスが彼女の想定を大きく上回るであろう脆さで砕け散り、破片となって襲いかかる。
エリーチカは怯んだが、それでも銃を落とさなかった。
もう一度私を狙おうとしたエリーチカに向き合い、私は両足で扉を思いきり蹴り開けた。
勢いよく開いた扉に叩きつけられた彼女は耐えきれず、地面に転げ落ちていってしまった。 ダイヤ「大丈夫ですか!?」
果南「もう大丈夫!」
私は扉を閉め、大きく息をついた。
希はまた一連の展開に衝撃を受けており、それ以上に警官が怯えている。
数秒後、ようやく私達は煙幕から脱出し、新鮮な空気をまた吸える事となった。
果南「何とか逃げたけど、急がないとあいつが逃げ…はしないか」
ダイヤ「何分もしないうちに、私達をぶっ潰す名案を閃きますわ」 ダイヤが希の方を向く。
ダイヤ「さっきは小突いてごめんなさい」
希「え?あぁ、ええよ………」
果南「あー、さっきの演技。あれ凄く良かった」
ダイヤ「私ですからね」
額の汗を拭い、煙幕の方を見やる。
エリーチカはあの中からいつ出てくるだろうか。今すぐか、それとも姿を眩まし、何時間も待って忘れた頃に襲いかかるつもりだろうか。
不意に、私の隣からエリーチカの声が聞こえて死ぬ程驚いた。
慌てて振り向くも彼女の姿は無く、同じく驚いた顔の希が胸元の音源を見ている。
無線機か……… エリーチカ「あの程度で私が死んだと思ってるなら、それは大間違いよ」
お喋りな奴。
エリーチカ「最後のチャンスをあげる。希を放しなさい、そうすれば貴女達を許すし、本も諦めるわ」
決して悪い提案ではなかった。
任務を達成し、何より化け物同然の怪盗と戦わなくて済む。
エリーチカ「私、わかったの。貴女達はあんな事を言っておきながら結局警官を置いていかなかった。本当はそこまでろくでなしってわけじゃないんでしょ?」
果南「殺る気無い事がバレてる」
ダイヤ「もうハッタリは使えませんか」
希を脅迫の材料に使う事はもうできないだろう。それでもまだ彼女を取引には使える事が恐らく唯一の幸運だった。 エリーチカ「ああやって私の意表を突こうとしたのなら、それは成功だったわ。戦闘力でも貴女達は只者じゃない。でも私だってここまでいろんな事を乗り越えてきてるの、だから……この辺りで引き分けにしましょう?これ以上はお互い怪我するだけ、それは賢くないわ」
ど正論だ。伊達に警察を負かせてはいないのだろう。
私は希と目を合わせたが、どうもこのペアが嘘をつくようには見えなかった。
果南「だってさ」
ダイヤは悩んでいるようだった。
ダイヤ「まぁ、エリーチカ相手にこれだけやれたんですし、大したものでしょう。逃がしてやった、位の面しても文句言われませんよ」
ね?と、ダイヤは希に微笑みかけた。
希は面食らったが、すぐ首を縦に振った。
希「まぁそれだと実際、うちは逃してもらっちゃうわけやし」
なはは、と笑う彼女。それを聞いて、今までずっと黙っていた警官がようやく口を動かした。
「そ、そんなのダメですっ!」
突然割って入った恐ろしく甘い声に全員が驚いた。
それが警官のものであると気がつき、私は尚の事驚かされた。 「エリーチカを、そんな、逃すなんて………」
私は車の照明を点け、彼女の帽子を取った。
今までは暗くてよく見えなかったが、彼女はとても可愛い、いかにも女の子といった風貌をしていた。
包み込むようなベージュの髪、イエローの瞳、幼さを残した柔らかい顔、制服越しにもわかる出るべきところが出た体型。
エリーチカがつい、なんて理由で攫いたくなるのも頷ける。
時代が違えば、この娘が普段から彼女の邪魔をしてると言っても信じなかったかもしれない。
ダイヤ「しかしことり巡査、正直に言って策は尽きました」
ことり巡査?そういえば、さっきそんな名前を聞いたな……この娘の事だったのか。 ダイヤ「私達も最初こそ当たって砕けるつもりでしたが、せっかく盗品を取り返したんです。それをパーにしてしまうのはもったいないかと」
ことり「しかし、それじゃまた別の場所で事件が………」
巡査は食い下がるも、顔に諦めの色が浮かびかけていた。
無線機から、エリーチカが意図せず畳み掛ける。
エリーチカ「返事が無いけど……考えるだけの理性はあるって事よね?」
巡査の顔がだんだんと悔しそうなものに変わっていく。
散々追ってきた相手を目前で諦めるのがよほど気に入らないらしい。
果南「気持ちはわかるよ」
懸賞金を取り損ねる、と言おうとしたがやめた。
先程彼女を捕らえ損ねた時点で、そのチャンスは失われたようなものだ。
避けきれない程の弾幕で引き裂いてもいいと言うなら話は少しだけ変わるが……… 果南「あいつに勝つ自信ある?」
何となく聞いてみたら、巡査の顔はますます暗くなってしまった。
ダイヤは肩をすくめ、希は心配そうに成り行きを見ている。
エリーチカ「決まったかしら?」
回答の時が来た。
私は無線機を掴み、送信ボタンに指を当てた。
玄関にでも呼びつけて、そこに希を立たせておけば勝手に連れ去ってくれるだろう。
巡査が私に潤んだ目を向けている。
その視線に、不覚にも私はときめきのようなものを感じてしまった。
彼女に魔法をかけられてしまったか、それともダイヤの悪戯心が移ってしまったか、ともかく私はボタンを押し込んだ。
果南「今からそっちに行って、あんたをぺしゃんこにする」 また休憩
全部書き溜めたはいいけどまだあと4割位あるで 急用で9時位まで戻ってこないかもしれない
すまんな 果南「この方が面白いんでしょ?」
巡査の顔がみるみる明るくなっていき、唖然としていたダイヤがにやにやと笑い出した。
ダイヤ「そう来なくては」
果南「希さん、エリーチカは他に何を持ってる?」
希「えぇ?えっと……熱源ゴーグル、位かな………」
厄介な代物だ。煙幕の中でもこっちの姿を目視できる。
果南「爆薬は?」
希「ない……かな。今回は使う予定なかったし」
果南「じゃあこの車は破壊できない。それとスピードを出しておけば、さっきみたいに引っ付いて中を撃つのは無理かも」 やべ1行飛んだ
果南「今からそっちに行って、あんたをぺしゃんこにする」
そうとだけ告げると、私は絶句する希の胸元に無線機を戻した。
果南「この方が面白いんでしょ?」 だとすれば、エリーチカはどうやって私達を倒す?
諦めが悪いのはあっちも同じだ。必ず何か方法があって、あいつはそれを見つけ出すに違いない。
希「ね、えりちは爆弾持ってないけど、うちの車にはロケットランチャーと弾が残っとるんよ」
私は毒づいた。あの廃車にまだ夢と希望が詰まっている事を忘れていたのだ。
果南「この車壊せるじゃん」
2度はロケットランチャーに耐えたこの車だが、流石にもう2、3発も爆弾を叩き込まれたら無事では済まない。
ダイヤ「早く処分しないと」
グレネードランチャーでミニクーパーにとどめを刺そうかと思ったが、この煙の中でそれは難しかった。 果南「わりと壁際だったよね………」
装甲車のライトで照らしながらのんびり探す事はまず許されないだろう。
いっそ体当たりしてしまおうか?
大体の検討はついている。最高速度で何往復かすれば、クーパーを撥ね潰せるかもしれない。
しかしこの案には問題があった。成功した際に車内の爆発物が機能を停止せず、暴発する恐れがあるのだ。
1つでも発火すれば他の爆薬や燃料が誘爆し、まもなくこの装甲車は自爆する事となる。
残された方法は……… 果南「私が降りて爆薬を始末してくる。それまで奴を引きつけといて」
ダイヤはこちらに親指を立てて見せた。
果南「巡査?それ、ちょうだい」
私は彼女から先程鹵獲した--元々私達のものだが--ゴム弾銃を受け取り、ポンプを点検した。
この銃ならエリーチカに命中しても死亡する心配はないどころか、"死んだ方がマシ"とさえ言わせる激痛が彼女をノックアウトしてくれる。
ダイヤ「ことり巡査、これを」
ダイヤは拳銃の1つを取り出して巡査に手渡した。
ことり「ど、どうすれば?」
ダイヤ「エリーチカの居そうな場所を撃ってください」 私は車の右側に移動し、扉に手をかけた。
果南「やってやろう」
ペダルが踏み込まれ、暴君は再び煙の中へ侵攻を始めた。
巨体が靄を引き裂き、その靄がほぼ全て乗員の顔にぶつかる。
ダイヤ「あと5秒位!」
ダイヤは目を細めながら、ミニクーパーの横を素通りできる位置にゆっくり装甲車を走らせた。
どうかエリーチカより早く車が見つかりますように。
私は意を決し、扉を開けて装甲車から飛び出した。 静かに転がり、そのまま去っていくダイヤ達を見送ると、私は姿勢を低くして前進を始めた。
この辺りを歩いていけば、必ずクーパーにぶつかる筈だ。
目を凝らし、耳を澄ませ、ゴム弾銃を握る手に力を込める。
やがて銃声が響き始め、ダイヤ達が制圧射撃を始めた事を私に知らせた。
エリーチカがあっちを狙う事を信じるしかない。
十数秒程が経過した頃、ついに私の目の前にボロボロの車体が現れた。
これだ!
私は車内に滑り込み、危険と思われる物を手当たり次第に引っ張り出した。 ロケットランチャー、手榴弾、粘着爆弾……それと、使い捨ての無反動砲が見つかった。
無反動砲とは、砲身と逆方向へ爆風を噴射する事で反動を相殺し、戦車をも破壊する砲弾を子供でも扱えるようにした兵器だ。
こんな物まで必要………?
何であれ、危険物に変わりはない。
私は粘着爆弾から信管を引きちぎり、起爆リモコンを叩き壊すと、まとめてロケットランチャーの砲身に突っ込んだ。
更にそこへ手榴弾を押し込み、ピンを抜いて車の向こうに放り投げる。
きっかり5秒後にランチャーが爆発し、ロケット弾と爆薬は使用不可能になった。
次に無反動砲を掴もうとした時、私は背後に迫る気配を感じた。 果南「うらぁぁっ!」
私は雄叫びをあげ、振り向きざまに銃床で殴りかかった。
それは空を切り………その真下でエリーチカが拳を突き上げていた!
腹部に痛烈な一撃を受け、よろけた私の右腕が捻り上げられ、こめかみに拳銃がぶつけられる。
あっという間に私は拘束されてしまった。
何てこった。
エリーチカ「頭いいじゃない、先手打たれちゃったわ」 右からは銃の冷たい感触、左からはエリーチカの熱い吐息が私の頰を挟む。
この状況を打開できるかどうかは、まだ自由な左腕に懸かっていた。
しかしゴム弾銃は右腕を封じられた際に地面へ落ち、拳銃のホルスターがあるのも右脚だった。
エリーチカ「多分貴女が想像してた通り、ここに使える物がないか探しにきたんだけど………もう無くなっちゃったかしら?」
希のお返しと言わんばかりに拳銃がぐりぐりと押し付けられる。
果南「強盗風情が」
エリーチカ「あら、もう少しお洒落なつもりだったんだけど………」
今すぐダイヤとこの役目を代わってやりたかった。
憧れのエリーチカが密着して囁いてくるとなれば、大喜びでふるいついてくるだろう。 果南「完璧な計画をたかが見張りなんかに潰される気分はどう?」
エリーチカ「まだ潰れたわけじゃないわ」
果南「そうだね、これからぶっ潰すんだった」
彼女が長話を嫌いになる前に、私は自分が取るべき行動を考えなければならない。
エリーチカ「女の子が乱暴な事ばかり言っちゃダメよ」
果南「"セクシーで凶暴"が今の流行りなの」
エリーチカは笑い、ぺろりと唇を舐めた。
エリーチカ「そうかもね、猛獣さん………世の中には虎やライオンを飼う人も居るそうよ」
果南「何さ、私を飼おうってわけ?」 エリーチカ「いいわね、それ………貴女は犬?それとも猫………?」
その時、私はエリーチカの警戒心が揺らいだ事を信じて、彼女の尻をがっちり掴んだ。
果南「猫かなっ!」
私は彼女を持ち上げながら上体を折り曲げ、前方に思いきり投げ飛ばした。
不意の行動に対応できず、エリーチカは大の字で地面に叩きつけられた。
上手くいった!
すかさずスタンプを繰り出したが、彼女の回復は予想以上に早く、転がって回避された上に足首を掴まれ、こっちが転ばされてしまった。
私は負けじと拳銃を引っこ抜き、再び煙に消えゆくエリーチカに向かって連射した。
銃弾、銃声、そしてエリーチカの行方が靄に溶けていく。 ここが勝負だ、目に物見せてやる!
私は手探りでゴム弾銃と無反動砲を掴み、一目散に走り出した。
全てを跳ね除ける自分をイメージし、真っ白な空間を突き進む。
何秒もしないうち、そろそろエリーチカに追いつかれる事を感じた私は意を決して立ち止まり、振り返って無反動砲を"逆さ"に構えた。
果南「あんたに虎が飼えるか!?」
私は背後に余計な物がない事を祈りながら、目を閉じて発射ボタンを押した。 無関係な何かを破壊するための成形炸薬弾が後方へ射出され、その反動を打ち消すための強烈なバックブラストが前方に吹き出す。
危険域数十メートルの爆風は空まで覆いかけていた煙を瞬く間に分子の世界へ追いやり、何秒としないうちに一帯には薄暗い夜が取り戻された。
私は空の無反動砲を捨て、ゴム弾銃を構えて照明の下を歩き出した。
果南「もう隠れる場所はないぞ!」
あらゆる闇に目を凝らし、声を張り上げる。
果南「それとも弾切れか、怪盗!」
エリーチカ「そうね、感服だわ」
エリーチカは自販機の陰から堂々と現れた。 エリーチカ「乱暴なやり方、した事ないわけじゃないけど………貴女は特別激しいようね」
ピストルをこちらに向け、首にはもはや役立たずとなった熱源ゴーグルを下げている。
果南「これが傭兵のやり方ってわけ」
エリーチカ「そうらしいわね」
いつこの女を撃つ?
連射の効かないこの銃では、間違いなく1発以上撃つチャンスはない。
いつ、どこを狙えばエリーチカがゴム弾を避けきれず、激痛に悶えてギブアップを申し出てくれるのかを今すぐに閃く必要があった。 エリーチカ「激し過ぎて、何だかバカにされてる気分だわ」
頭に入らない。
斬新なアイデアと豊富な武装はここまで私を助けてくれたが、それは彼女のそれと同様に尽きてしまった。
同じ条件なら、不利なのは圧倒的にこちらだ。
果南「降伏する気になったかなん?」
エリーチカ「私、諦めがあんまりよくないの」
こっそり、少しずつ引き金を絞っていけばバレないのではないだろうか。
いや、あまり悠長な事をしていたら先にあっちから撃たれてしまう。
かといってこれ以上話を長持ちさせる自信がまるでない。 目を細め、自分が勝利するビジョンを必死に探していると、エリーチカが薄ら笑いを浮かべた。
エリーチカ「ねぇ、貴女。なま…っ!?」
その時、突然彼女の顔が苦痛に歪み、左手が頭に伸びた。
何が起きた?
困惑に反し、私の指はそのチャンスを見逃さなかった。
視線が飛び、銃口を逸らしたエリーチカに真っ直ぐゴム弾銃を向け、私は引き金を絞った。 一際大きい銃声が響き、怪盗が倒れ込む。
………やったの?
私は慌てて次弾を装填し、駆け寄って右腕を踏みつけた。
反応が無いのを確かめ、乱暴に手からピストルを弾き飛ばす。
本当に倒した?
私は恐る恐るしゃがみ、彼女の首筋に手を伸ばした。
手袋越しに頸動脈が波打ち、喉に呼吸を感じる。
よほどくどい死んだふりをしているのでなければ、これはゴム弾の痛みと衝撃で失神した事を意味していた。
一瞬の出来事だったが、私は間違いなく彼女を倒したのだ。それも生け捕りで。 何故そうできたのかはわからなかったが、私は拘束バンドを取り出して彼女をこれでもかと縛り上げた。
4本目のバンドでエリーチカの両足首を固定した時、ダイヤ達の乗った装甲車が私の前に戻ってきた。
ダイヤ「本当にやってのけた、そうですよね?」
ダイヤとことり巡査が車を飛び出し、エリーチカに銃を向けながら駆け寄ってくる。
果南「ばっちりね」
既に3本もバンドを巻きつけたエリーチカの両腕に、さらにことり巡査が手錠を付け足した。
ことり「や、やったぁ!怪盗エリーチカ、逮捕!」
念願を果たした巡査はつい大声ではしゃぎ、喜びの感情を振り撒いた。 ダイヤ「おぉっと巡査、それは少し違いますね」
不敵な笑みを浮かべるダイヤに巡査は困惑を見せ、私はにやりとした。
果南「この"ヒト"はまだ私達のもの。おわかり?」
怪盗の対処はまだ警察に任せられる程十分とは言えず、そしてここまで頑張ったのに懸賞金の話を誤魔化されるわけにはいかなかった。
この数十分で誰よりも悪人の顔をする私達に、ことり巡査はただ鳴き声のような悲鳴を上げるのみだった。
おろおろする巡査を尻目に、私は怪盗への疑問を口にした。
果南「エリーチカが私に撃たれる前、突然苦しみ出したの。何か持病を?」 ダイヤ「あぁ、上手くいったでしょ。希さんの無線機に向かって思いきり叫んでやりましたの」
そう言われてみれば、彼女は耳を押さえようとしていた気がする。
果南「耳元で大声出された隙に撃たれたってわけ?」
ダイヤ「その通り。いいトリックだったでしょう」
意外にしょうもない結末だ。
だが、だからこそ、誰にも手を読ませたりしない。例え怪盗が相手でも。 私とダイヤはまだ目覚めないエリーチカに入念なボディチェックを実施した。
未だ緊張の続く頭にはタイツのすべすべした感触を楽しむ余裕もなく、ただ装備の類をぷちぷちと引き剥がしていく。
果南「………よし、こんなもんか」
1分程経ち、ようやく私達の納得がいくまでにエリーチカの身包みは剥がされた。
傍に積み上がる予備弾倉や刃物などの山は、まだこんなに持っていたのかと見る者を感心させる力がある。
もしまだ検査漏れがあったとして、せいぜい針が1本位なものだろう。
果南「いっそ全部脱がしとくべきかな」
ダイヤ「それはエリーチカの尊厳に関わります」 ここでようやくエリーチカが意識を取り戻し、私は反射的にホルスターへ手を伸ばした。
エリーチカ「………これは……」
彼女は動こうとして、自身の手足がめちゃくちゃに縛られている事に気がつき、ため息をついた。
ダイヤ「ゲームオーバーです」
エリーチカ「………希は?」
ダイヤは車の後部ドアを開け、希を降ろした。
希を見たエリーチカは表情を緩ませ、やがて諦めたように頭を地面につけた。 希「うちらの負けやんね、えりち」
エリーチカ「そうね………もう手も足も出ないわ………」
ふと、その目がことり巡査を見やる。
エリーチカ「ざーんねん。私を捕まえたのは貴女じゃなかったわね、ことり」
巡査が何か言おうと口を開いた時、誰かの怒号がそれをかき消した。
「そこを動くな!」 私とダイヤは素早く銃を抜き………声の主が別の警官である事に気がついた。
もしあと5メートル離れていたら、新しい刺客と勘違いして撃ってしまっていたかもしれない。
「そこで何をしてるんです!?」
果南「銃を下ろしな、エリーチカは捕まえたよ」
叫んだ警官は訝しげに拳銃を向けながらこちらに歩み寄り、横に居た2人の警官仲間…その片方がこちらに駆けてきた。
「ことりちゃん!」
ことり「ほ、穂乃果ちゃぁん!」
危うく拉致されかけた同僚がよほど心配だったのか、穂乃果と呼ばれた警官はことり巡査に飛びつき、強く抱き合った。 穂乃果「怪我はない!?」
ことり「大丈夫………」
エリーチカ「ちょっと、そんな事しないわよ」
警官達の足元でエリーチカが抗議を入れた。
戦意は捨てたが、喋る事は諦めていなかったらしい。
穂乃果「よく言うよ!真っ先に穂乃果の事ぶっ飛ばしたくせに!」
エリーチカ「貴女が突っ込んでくるからでしょ!」
口論の幕開けを感じた直後、怒号を飛ばした警官が拳銃からわざとらしく操作音を響かせ、話を強制的に止めてしまった。
「今までよくも………!」
地べたで身動き1つ取れない上に銃を向けられても、エリーチカはにやにやした態度を崩さなかった。
恐るに足らないのか、それとも今までそうだった事にプライドを持ち、姿勢を貫いているのかはわからない。 エリーチカ「また戦ってみる?私の方が強いけど」
「黙りなさい、貴女達は終わりです」
怒りと正義感を全身から醸し出す警官は希の膝裏を蹴り、容赦なく地面に倒して手錠をかけた。
エリーチカ「ちょっと!希に八つ当たりするんじゃないわよ!」
「出し抜かれるつもりはありませんので」
苦悶の声をあげる希に、事件のシリーズが始まって以来のファンであるダイヤが明らかに不愉快な顔をした。
ダイヤ「海未巡査、希さ…容疑者に抵抗の意思はもうありません。拘束も済ませてます」
ダイヤは当然のように警官を名前で呼びながらその行動に異を唱えたが、今度は赤毛の警官が口を開いた。
警官、警官といい加減ややこしい。何故私は名簿に目を通しておかなかったのか。 「貴女ね、こっちは何ヶ月もこの泥棒を追っかけてるの。どんだけたち悪いか知ってるの?」
待て警官、この黒髪ぱっつんはあんたの予想よりずっとエリーチカの事を知っているぞ。
ダイヤ「そのたち悪いのをもう捕まえたと言ってるんです、これ以上の乱暴は不当ですよ!」
海未「この2人はこれまでに幾つも盗み、そのために多くの人を傷つけました。同情する必要なんてありませんよ」
数ヶ月の追いかけっこが海未巡査に多大なストレスを与えた事は明らかだ。
「それより、やるじゃないことり。連れてかれた時はどうしようかと思ったけど、まさか"貴女"が怪盗を捕まえるとは思わなかったわ」
赤毛婦警の発言に私とダイヤ、そしてエリーチカは顔を見合わせた。 海未「そうですね。あれ程手こずったエリーチカを………」
穂乃果「ことりちゃん、凄い!」
ことり「えぇ?いや、私は………」
この婦警達は何を言ってるんだ?
果南「ちょっと、捕まえたの私達なんだけど」
割り込んだ私に3人の視線が突き刺さる。
待ってよ、何で突き刺さらなきゃいけないわけ?
危険を冒して偉業を果たしたというのに、どうして毎回出演してただけの何もしてない警官などに冷たくあしらわれなければならないのだ。
そんな事があってなるものか。婦警のいかにも部外者を見るような視線は私の癪を貫いた。 果南「大体何さ、あんた等さっき図書館でやられてたらしいじゃん。それを今更出てきて偉そうに何なの?」
「何よ貴女、喧嘩売ろうっての!?」
赤毛が食ってかかるが、そこへ名実共に鉱物のような傭兵が立ち塞がった。
ダイヤ「実にその通りです。仲間を攫われただけでなく、その鬱憤を降伏した相手にぶつけるとは……敵役として最低ですわ!」
穂乃果「か、敵役ぅ!?」
自身の立場上誤解しがちだが、ダイヤを含めたニュース視聴者から見れば主役はエリーチカである。
彼女やダイヤの様子から察するに、警察の特別対策チームはヒロインであることり巡査以外皆ショッカーの親玉かそこら程度のポジションでしかないだろう。
ダイヤ「ことり巡査は私と共に戦ってくれました。貴女達は?今まで一体何してましたの?」
ファンからの強烈な非難が警官達─とくに赤毛の巡査─に叩きつけられる。
「勝手な事言ってくれるじゃない。怪盗を捕らえたからって、何様のつもり?」
ダイヤ「あら、何様なら許されますの?」
この切り返しは使えそうで中々使えない質問の1つであるが、本件ではどう返事が来るのか。 やがて赤毛が嘲笑を浮かべた時、私は自分達がモブみたいなぽっと出の新キャラであり、頑張れば頑張る程エリーチカ・ヒストリーを破壊しかねない邪魔者である事に薄ら勘づいてしまった。
「わからない?じゃあ教えてあげるわ。これは警察が市民の安全と安心を懸けたヤマで、信念もなくお金で動く傭兵なんかの分際で口出していい事じゃないの。意味わかる?」
彼女の指がダイヤの胸を突く。
返す言葉が見つからなかった。あったところで、発言権が存在しない事をたった今知らされた。
私は職務を果たしたと思っていたが、実際は由緒正しい王道に深い亀裂を入れただけなのだ。
怪盗と警察の争いにケリをつけていいのは、やはり怪盗と警察だけだったのか。
私があほのように口を開けていると、意外にもことり巡査が噛みついた。
ことり「それはひどいよ真姫ちゃん!2人は本を取り返したのに、私の無理聞いて頑張ってくれたの!お金のためかもしれないけど……それだけじゃないと思う」
天使か。
彼女が私達を除け者にせず、恩人として認めてくれた事に胸が熱くなる。 真姫という名前が判明した婦警はたじろぎ、代わりに海未が2人を制止すると私の前にやってきて顔を突き合わせた。
海未「貴女方が、エリーチカを捕まえたんですね?」
果南「そうだよ」
海未「感謝します、オペレーター。ですがここからは警察の管轄です、彼女達の処遇はうちの上層部が決めますので」
これでこの一件は終了だ。
怪盗の対策チームは見事目的を達成、彼女達は署内で賞賛を受け、怪盗エリーチカとその助手は刑務所に送られる。
私達は………何でもない、ただ警察に手を貸しただけの警備員達として一括りにされ、ニュース記事の端に一文書き足される存在だ。
それでいいのか?
怪盗エリーチカのシリーズに綺麗な最終回をもたらしたからといって、私は何一つ納得などできない。
これは私の武勇伝だ!
ことり巡査のくれた熱が、私の悪人魂に再び火を点けた。 海未「ことり、盗まれた本はどこに?」
ことり「あ、えっと……この中に」
ことり巡査が自分の肩にかかった鞄を指差す。
海未「真姫、警部に報告を。穂乃果、希を連れて行ってください」
海未巡査がてきぱきと指示を出し、自身はエリーチカを連行しようと彼女の身体を掴む。
その背後に歩み寄った私はゴム弾銃を手に取り、海未を突き飛ばして銃口を向けた。
海未「はっ…!?」
婦警達の目が驚愕に見開かれる。
その中で穂乃果だけが素早く拳銃を抜いたが、構えると同時に彼女の頭へダイヤの銃が突きつけられた。 真姫「ちょっ…なに、何してんのよ!?」
果南「これは私達の女だ、おたくには渡さない」
尻餅をついた海未が私を睨みつける中、ダイヤが吹き出す。
海未「何のつもりですか」
果南「やっぱりさ、こっちの努力をあんた等に持ってかれるのはね。認めらんないよ」
海未「これは公務執行妨害です」
果南「だから?」
そんなものが脅しになるか、という意思を銃に込めて突きつけ直す。
果南「黙ってそこに居な。2人は私等が最寄りの警察署まで連れて行く、あんたより公正にね」 ふと、今まで静かに話を聞いていたエリーチカが笑い出した。
エリーチカ「貴女達、こんな猛獣みたいな奴に犯人の扱いを説かれるなんてね。あっははは!」
海未「何を………」
この状況に何一つ気に入る要素を見出せなかった真姫は、尚も口から怒りを吐く事をやめなかった。
真姫「ふざけるのも大概になさいよ、やり方に文句つけたかと思えば手柄がどうとか言い出して、今度は脅し?意味わかんないんだけど!」
果南「これ以上喋ったら撃つ、それだけ理解しな」
余計な問答はしないに限る。それは無駄な隙を生むだけであり、それが許されるのはエリーチカ位なものだ。
何より目の前の海未、彼女の目に反抗の意思が集中している事がその視線からビリビリと伝わって来ていた。
来るなら来い。
私は引き金に力を込めながら、エリーチカの襟首にゆっくり手を伸ばした。 その時、微かにローター音が聞こえてくる事に気がついた。
何だ?
その音が徐々に近づいてきているのがはっきりとわかり、私は慌てて飛び退いた。
クソ、新手か!?
エリーチカにまだ秘密の仲間が居たか、警察の増援部隊かは不明だが、どちらにせよマズイ。
こちらに向かって来るヘリコプターが何をしでかすかわからない上、この反抗的な警官が何もしないとはとても思えない。
果南「あのヘリは何!?」
ダイヤ「わかりません、こっちに来ます!」
果南「やい怪盗、あんたの仲間か!」
エリーチカ「知らないわ、私達は2人1組よ」
いっそ警官達を撃ち、新しい問題が解決するまで黙っててもらうべきだろうか。
私が知恵を絞っていると、無線機が反応した。 「全オペレーターへ。こちらバックアップ、ヘリコプターでそちらに接近中。撃たないでくれ、オーバー」
こっちの仲間!?
しかし、バックアップなどというチームがある事は聞かされていない。
まもなく、仲間のオペレーターが無線に異を唱えた。
「バックアップがあるとは聞いてない!貴様は何者だ!?」
脳のタスクを少しでも解放すべく、ダイヤが穂乃果から銃をもぎ取って捨て、床に押し倒した。
ダイヤ「床に伏せてなさい!」
彼女はそのまま真姫に詰め寄り、流れるような動作でやはりその場に倒してしまう。
おろおろすることり以外全員を私はゴム弾銃で威嚇し、その間にダイヤがマシンガンを取り出してヘリコプターに向けた。 奇跡的に海未や真姫が何も言わないでいると、今度は隊長が無線に口を出した。
「全体、これは本物だ。繰り返す、本当に仲間だ、撃つな!」
何だと?
「これは機密事項で、俺しか知らされてないんだ」
土壇場まで秘密にされるバックアップとは何だ?
ヘリコプターはその答えを持っているような雰囲気を醸し出しながら、やがて私達のすぐ近くに着陸した。
ダイヤがマシンガンを向けたまま、懐中電灯でヘリを照らす。
小型の攻撃ヘリだ。
小さなボディに機関砲とミサイルランチャーが2門ずつ備えられ、それが5枚刃のメインローターにより時速175マイルで飛び回る恐ろしい代物である。
ここまでライトを点けずに飛んで来た事から、恐らくは暗視かサーマルのどちらかが装備されていた。
これが秘密のバックアップ? 全員が固唾を呑んで見守る中、オハラ・セキュリティのエンブレムが描かれたドアがスライドし、搭乗者が姿を現わす。
スーツ姿にツインテールという不可思議なファッションの彼女を見るなり、海未が声を上げた。
海未「警部!?」
つい彼女達の方を見やると、警官達が皆驚愕の表情をヘリに向けていた。
海未「そこで何をしてるんです!?」
その通りだ。何故警察がうちのヘリに乗ってる?
だがそれよりも、次にヘリを降りた副操縦士に私とダイヤの目が釘付けになった。
あの特徴的な金髪は………!
ダイヤ「社長!?」
彼女は間違いなくオハラ・セキュリティ社長の小原鞠莉だった。
ローター音の中をそれぞれのトップが駆けてくる状況に私達は唖然としていた。
エリーチカと希だけが、不思議そうに私達を見ている。 鞠莉「驚いた?」
少なくとも私は口を閉じる事ができない。
軍事会社の社長と対策チームのトップが乗ったヘリとなれば確かに機密でもおかしくはないが、何故そんな必要があるんだ?
おまけに社長は副操縦席に居たが、あの攻撃ヘリで副操縦士とは即ちミサイル・ガンナーの事を指しているのだ。
どうして社長が警察の前で武装の引き金に手をかけている?
「あー……じゃあまず、何で私の部下が這いつくばってるのか説明してくれるかしら?」
マズイ、警部がお怒りか。
果南「ええと…容疑者への対応が不適切だった事と、反抗の意思を見せたため危険とみなし拘束するところでした」
何とかすらすらと答えたが、常識的に考えて反抗の意思を見せたから警察官を拘束というのはおかしいのではないか。 鞠莉「ほーら、正真正銘怪盗エリーチカ!うちのスタッフが捕まえました!」
産地か………ん?
果南「まだ確保の連絡はしてないかと」
鞠莉「ん、こっそりドローンで見てたわ。気づかなかったでしょ?」
その言葉は私ではなく、エリーチカと希の2人に向けられていた。
鞠莉「捕まってよかったわね〜本当、グッド!」
エリーチカが縛られているのをいい事に、社長は彼女をべたべた触りまくる。 私が銃を下ろした事で立ち上がった海未達は、やはり納得がいかない様子で突っかかった。
海未「にこ警部、説明してください。貴女は国木田館長と共に対策本部で待機している筈ではなかったのですか?」
だが、にこという上司は簡単に突っぱねてしまった。
にこ「あんた達には話せないわ、機密事項なの」
鞠莉「いいのよ気にしなくて。それよりにこっち………」
にこ「ええ、わかってる。会社はばっちり宣伝しといてやるわ」
社長と警部はお互いをあだ名で呼ぶ間柄であり、彼女達の秘密作戦はどうやら成功を収めたようだった。 にこ「エリーチカ、あんたの盗った本は?」
ことり「あ、ここです!」
にこ「よし、撤収よ!全ての備品を片付けて、先に本部へ戻ってなさい!」
真姫「ちょっと待ちなさいよ、そんな内緒話は認められないわ!」
巡査とは警部にそんな風に話していい身分だっただろうか。警察の階級はわからない。
にこ「うっさいわね、大人の事情ってやつよ!黙って指示に従う!」
警部に追い立てられた警官達は、渋々ながらも指示通り去っていった。
その途中、ことり巡査が振り返って叫んだ。
ことり「警備員さぁーん!助けてくれてありがとう!」
やはり天使だ。
エリーチカ「ちょっと、あの娘に目をつけたのは私なんだけど」
巡査の私達への好意的な態度に怪盗がご不満であられた。 にこ「さて……まさかプランAが通るとはね」
鞠莉「お小遣いが減ってがっかり?」
にこ「名誉をお金で買うのは難しいわ、これが最良よ」
鞠莉「そうね、それに……まさか今日に限って人攫いとはね」
裏で進行していたであろう話が目の前でこぼされ、私は何だか居心地が悪くなってきた。
聞いてて後に問題を引き起こさないだろうか。
そんな心配に応えるかのように社長は私とダイヤを見ながら両手を広げ、とびきりの笑顔を向けた。
鞠莉「オーウオーウ、貴女達!本当に貴女達のお陰だわ!」
このオーバー気味な感謝に裏はないだろうか。 社長は手を広げたまま私達に歩み寄り、肩を組むと笑みをまさに悪らしいものへと変えた。
鞠莉「ねぇ、貴女達………出世に興味はおあり………?」
私とダイヤは目を丸くし、見合わせた。
鞠莉「これからは私のより身近で、その才能を活かしてみない……?」
恐ろしいオファーだ。鞠莉社長は私達に目をつけ、これから危険で非合法な仕事を寄越そうとしているに違いない。
何とも刺激的ではないか。
こんな仕事をしていて、金の亡者達と泥水のような札束の海を泳ぐ日々を一度も夢見ない私ではない。
目が眩みそうな闇の香りに、私はにやにやとだらしない笑みを浮かべた。
果南「えぇ、いいんですかぁ社長」
鞠莉「貴女達さえよければ、私は貴女達の手を今まで以上によく借りたいわ………」
甘い囁きに私はすっかり虜となっていた。
ダイヤは興味津々ながら尚悩んでいる顔をしていたが、社長が耳に息を吹きかけるとすぐ話へ乗っかってきた。
鞠莉「決まりね」 社長は上機嫌で警部にすりつき、私達を新しいブラックオプスとして紹介する。
にこ「いいじゃない、よろしく」
握手を交わす私達の足元で、ふとエリーチカが忘れかけていた謎を口にした。
エリーチカ「教えてくれない?仲間に知らせてない話。私達に関わる事なんでしょ?」
機密事項。
攻撃ヘリとドローンの監視、結託する軍事会社のトップと警察チームのボス。
2人にプランBがあったなら、それは何なのか?
鞠莉「やーね、本人に言うわけないじゃない」
あっさり突っぱねた社長にエリーチカはまだ何か言おうとしたが、2人分の足音がそれを止めた。
「社長!」
隊長だ。恐らく機密に関わっているであろう彼とそのバディの2人が駆けつけてきていた。 鞠莉「大成功よ、警備隊長」
「果南達のお手柄ですな」
鞠莉「後で詳しく話しましょう。そこの怪盗コンビを捜査本部まで運んでくれるかしら?」
指示を受けた2人は直ちにエリーチカ達を担ぎ、私達に簡単な敬礼をして立ち去った。
その直前にエリーチカは不満気な態度を漏らしたが、抵抗はしなかった。
鞠莉「貴女達には教えてあげるわ、知らせてない話」
果南「はい?」
何だって? にこ「あぁ、いいんじゃない?"今後"の参考にも」
どうせ永遠の謎になるものだと思って気にするのをやめるつもりだったが、何と社長の方から聞いてもいないのに教えてくれると言うのだ。
ダイヤ「し、しかしよろしいのですか、大事な話なのでは?」
ダイヤが心配そうに尋ねたが、社長はにこやかに答えた。
鞠莉「貴女達はべらべら言いふらすタイプじゃないでしょ?まぁ、別にそんな面白い話でもないけどね」
彼女は目をくるっと回し、もう一言付け足した。
鞠莉「それに…謎は残さない方がすっきりするじゃない?」
社長と警部は計画の全貌を話し始め、私とダイヤは目を大きく開いた顔を見合わせる事になった。 実は懸賞金を狙っていたのは私達2人だけではなかった。
以前エリーチカに美術品を盗まれた被害者の1人が激怒し、彼女を殺害した者には警察の倍額を支払うと裏社会ネットワークで言いふらしていたのだ。
そこで偶然にも取引先に予告状が届いたオハラ・セキュリティは前々から裏で繋がっていたにこ警部に相談を持ちかけた。
そこで今回の計画が生まれた。
エリーチカを捕まえる事ができれば万々歳、仮に失敗した場合─ほぼ前提ではあったが─に用意したのが例のプランBだった。
あえて警察の追跡を甘くし、振り切ったと確信させたところでステルス攻撃ヘリが参上、怪盗コンビを地の果てまででも追い回してミサイルランチャーで木っ端微塵にするのだ。
いかなるトリックをも圧倒的破壊力で無に帰す、単純且つ最良の方法である。
早いとこエリーチカ事件を片付けたがっていたにこ警部は賞金の半額という条件に喜んで食いついた。
にこ「警察だからね、逮捕しなきゃなんないのよ。でもそのせいでことごとく失敗してるわけじゃない?」
軍事会社であれば警備の名の下に堂々とエリーチカを爆殺する事が可能で、彼女達はそれを実行するつもりだった。
だが結局は私とダイヤが独断で希を撃破、続けてエリーチカを捕縛したために本件はプランAとして処理される事となった。
この後は計画の通り、オハラ・セキュリティは警察の対応チームに協力した優秀な組織として宣伝され、警察から贈られる懸賞金の一部がにこ警部の懐へ入る手筈である。 鞠莉「これが計画の概要。敵の知らない勢力、規格外の攻撃力、ルール違反のやり方で全てをぶち壊しにする。名付けてオペレーション・スポイル・ストライク(台無し攻撃)よ」
私とダイヤは見合わせた顔をにやけさせた。
数十分前に私達が企んだ話とほとんど同じじゃないか。
果南「これからの私達は、そういう仕事を?」
私の問いかけに社長はウインクをした。
鞠莉「えぇ、その通りよ。できるでしょ?」
果南「得意分野です」
私達は笑い合った。
にこ警部があんた達最低、と褒め称えて肩を叩く。
ダイヤ「あぁ、しかし…本は?プランBで焼き捨てるつもりなら、あれは偽物?」
にこ「偽物っちゃ偽物ね」
ダイヤ「エリーチカは気づかなかったんでしょうか?」
にこ「価値があるのは内容で、どうしても原本である必要はないらしいわよ。だからそっくりそのままカラーコピーしたの。実質あれも本物みたいなもんよ」
何ともまぁひどい話だ。
私はにやにやと聞いていたが、謎はもう一つだけ残っていた。 果南「ところで………賞金の分配はどのように?」
ダイヤの顔が引きつった。
事の発端である以上聞かぬわけにはいかなかったが、内心では空気を凍らせないかと心配でたまらなかった。
しかし社長はやはりにこやかな態度で、楽しい解説を続けた。
鞠莉「えぇ、元々は私とにこっちで二等分の筈だったんだけど、貴女達はとくによく頑張ってくれたから………」
期待が膨らむ。
鞠莉「あれを………見てくれるかしら」
社長の指差した方向には瓦礫があり、正体に思い当たった私とダイヤは息を詰まらせた。
果南「あ」
先程煙幕を晴らすために使用した無反動砲、あれの弾頭は後方に射出された後でしっかり役目を果たしており、お洒落な塀の一部を粉々に打ち砕いていた。
鞠莉「それと………この辺りを見てちょうだい」
指を差せば差す程そこら中に弾痕が見つかり、道がグレネード弾で焼け焦げた跡があり、薬莢やら残骸やらが散乱していた。
ダイヤ「あぁ………その………」
にこ「ま、次稼げばいいのよ。この業界はチャンスが溢れてんだから」
にこ警部になだめられるままに、この事件は幕を閉じた。 エリーチカと希は刑務所に収監され、予定通りオハラ・セキュリティの株は爆上げとなり、意外にもファンからの非難は少なかった。
きっと報道陣に提供された映像が警備隊長のヘッドカメラしか無かったためだ。
間違っても私が装甲車で希をひっくり返したり、エリーチカを撃ち落としたり、希やことり巡査を脅しに使ったり、他の警官にまで銃を向けた旨を報道していたら結果は違っていただろう。
ことり巡査を除いた対策チームのメンバーが今後も黙っていてくれる事を願いたい。
ファンサイトによれば刑務所収監は過程に過ぎず、脱獄パートを経て活動を再開する説が濃厚らしい。
どうやら最終回はまだまだ先のようだ。
何だかんだで賞金は少しだけ貰えた。
私達が破壊した建造物の修繕に大半を持っていかれたものの、社長が個人的に本件を楽しめたという事で見物料としてくれたのだ。
にこ警部は評判の向上に満足しており、それによって今後のヤマを期待するらしい。
全てが丸く収まった中、私とダイヤは賞金で実に庶民的なお祝いをしていた。
エリーチカに勝ったと喜ぶダイヤの横で、彼女が持ってきた日本酒を飲みながらそれを深く実感する。
ただ、恐らく丸く収まったと思ってるのはこっちだけの話で、エリーチカや警官達にしてみれば………
果南「台無しにしたかもね」
おわり 連投規制なのか5分に1レスしかできなくなっちまった
地の文を出したのは初めてだが120ちょいレスも行くんだな おつおつ
エリーチカはこの後脱獄して警察と警備会社の癒着を公にするでしょ(信者) 元ネタはないぞ
しいて言えば去年位にSSまとめで怪盗エリーチカ系を読み漁ってて「怪盗に勝ちたい…たまには和解エンドとかじゃなくて純粋に勝利を収めたい…」とか考えたのが始まりの一つ
お陰で詰まっては投げ詰まっては投げを繰り返してえらい時間かかった UR一枚(二枚)でこんだけ色んなssとか同人書かれてるのが凄いよなぁ
怪盗エリーチカが敗れるってのが斬新だった
欲を言えば希が人質にされてるのに呑気に風船でふよふよ近づいてくる辺りもうちょっとどうにかして欲しかったけどまあぽんこつかわいさも必要か せっかく書いたしミリオタや映画オタクの同志向けに登場兵器のモデルも紹介するで
セキュリティの拳銃 → SIG P226 15連発のイケてるピストル
(サブ)マシンガン → UMP9 ただし性能はGTAV WikiのSMG
ロシア製軽機関銃 → RPK でかい、強い、ただし古い
ダイヤのショットガン → GTAVのポンプ式ショットガン
ゴム弾銃 → 実はダイヤのショットガンにゴム弾詰めてテープで目印つけただけ
希のマシンガン → イングラムM10 市民から特殊部隊まで何なりと
エリーチカのピストル → ワルサーPPK 昔のボンドが持ってたアレ
ロケットランチャー → M202 バイオハザードお馴染みのやつ
無反動砲 → M72 LAW 使い捨てのやべーやつ
警官の拳銃 → ベレッタM92F カッコいい
HVYインサージェント → GTAVの同名装甲車 車体は爆弾に10発位耐えるくせしてガラスの強度が肘で割れるレベル、お陰でほぼ確実に運転手が先に死ぬ
社長の攻撃ヘリ → GTAVのバザード攻撃ヘリ 速い、小さい、強い >>137
エリーチカ「撃たれると思ってなかった」
俺の読んだ事あるSSでこういう時撃つ奴居なかったから… >>47のやりとりの後でそれは流石PKE
本来ならダミー用意して撃たせてる間に希救出してたんだろうなぁ 大丈夫だ、その辺はちゃんと考えてあるさ
そもそも風船で戻ってくる計画だった以上、別の場所で降りようもんなら逃げたと思って街へ繰り出した警察に捕まっちまうんだ
だからバカ正直に戻るしか手が無かったし、ことりの人質効果を信じるしかなかった
仮にダミーがあってもまずそっちまで行けないしな
もし勝とうもんなら残念だがプランBだ 読むのだるそうだからレスだけみて判断しにきたら作者しゃべりすぎだったw
自酔いいね 敷地外に飛んだと見せかけて引き返してくる余裕があるなら空中で風船にダミー人形でも付けて自分はこっそり降りた後地上から戻って来れるのでは?
街で普通の警官隊相手に捕まるようならそれこそ図書館でお宝と警官1人拐って脱出なんて無理っぽい
プランBならそれこそヘリ撃ち落として不正役人天誅な展開になってそう
まあこのssでは死亡エンドなんだろうけど
>>140見る感じ他のエリーチカssはご都合主義って言いたいんだろうけど、このssもそこは一緒だね
創作にご都合主義は付き物だし面白かったけど そんなつもりはないさ、ただ和解したり義賊だったりのエンディングばかりなのが不満でね
このSS最大のご都合はセキュリティの軍事力だ、そこらの怪盗エリーチカ像に打ち勝つには俺の知識量じゃどうしてもそれが必要だった
いくら警官隊を倒せる力量でも武器満載の緊急車両に乗った傭兵の大群じゃ勝てないって寸法よ ルパンとかもそうだけど警官は捕まえに来てるから生かしたまま無力化してるだけで
初めから殺りに来てる相手ならそれなりの対応しそうだけどなぁ
防弾ガラスじゃないAPCとか何台用意しても運転手容赦なく撃ち殺して終わりそう
まあそれやっちゃうとただの悪人になっちゃうから魅力半減だけど そうだろう?どんな話だろうとそれなりの対応をさせるからマズイんだ、ならその前にぶっ潰せばいい
そのためのプランBであり、希の撃破なんだ 追って振り切ったところで都合よく攻撃ヘリ現れたらどんだけポンコツでも察するしその時点でそれなりの対応に切り替えると思うけど
ステルスヘリっつってもレーダーに映らないだけで見えないわけでもなけりゃローター音もうるさいわけだし
プランBは悪人が成敗されるお決まりの展開にしか思えないなぁ >>149
まぁもちろん勝てる可能性が無いとは言わんさ、でもこれはGTAの話になるが夜にレーダーから消えた真っ黒なヘリコプターが高度から突然ミサイルを放ってきた場合勝つのは非常に難しいんだ
サービス開始からやられてきた実績ある暗殺方法の一つでもある、きっと上手くいく
>>151
すまんな、でもスレがすぐ落ちると寂しいからいつもこうやって2日位寿命を延ばしちまう 前ガンアクション書きたい言ってた笑か
今から読むわ >>154
そりゃ上手くいくだろそれ前提に書かれてるssなんだから
>>146で言ってるそこらの怪盗エリーチカなら脱出上手くいった想定でヘリの射程に入る前に音で察して車走らせたまま脱出
ミサイルで車粉々にして勝ち誇ってる連中にスティンガー撃ちこんてジ・エンドだろうな
最大のご都合は怪盗エリーチカのナーフかな
脱出プランは一つだけ、無線盗聴も警察だけ、特殊なツールも花火と煙幕だけ、相棒人質にされて傷つけられてるかもしれないのに呑気に風船で戻ってくる、爆発物を使うこともあるのに大声ごときで耳が痛くなるような安物のインカム
まあ挙げてけばキリがないけど
このssでは怪盗エリーチカ敗北ってシナリオでよくできてるのに他の二次創作のイメージも腐らせて敗北者にしたいって言うのはちょっと無理がある おいおいおい、誰も他の作品をバカにしたいとまで言ってないだろ
それにこう言ってる、敵の知らない勢力、規格外の攻撃力、ルール違反のやり方で全てをぶち壊しにするのが作戦ってな
この話は卑劣な不意打ちと一撃必殺、圧倒的な武装が前提条件なんだ、そりゃそこを崩せばいくらだって勝機はあるだろう
これは多分他の話でもそうだが、戦闘シーンというのはいつだって後出しした方が勝つ事になってるんだ
この装甲車なら耐えられる、実は風船がダミー、そもそも弾が当たらない、いくつでも思いつく
ただ今回の後手はセキュリティが頂いたまでさ
どうしても結果が不満ならいい案があるぞ、あんたもSSを書くんだ
いつも同じキャラばかりが勝ち星を貰っちゃ不平等、その帳尻を合わせるにはSSを増やすしかない
それに俺はそうやって布教しろと住民に教わった、もしその気があるなら地の文のアクションを増やしちゃくれないか これ以上書くとせっかくの面白かった本編の評価下がりかねないので何も言わない方がいい この読ませる気なしの長文はクセなのか?
三行でよろしく 本編も内容は面白かったけど無駄な文も多いと思った
地の文なしでバトル書くほうが難しいんだよね 卑劣な不意打ちとか圧倒的な武装って割にはステルスヘリだけってのがいくらでも対応できそうだなって感想
おそらく元ネタのキラーエッグのミサイルは一発650万だから二発撃ったら大赤字だしレーザー誘導だから
一撃必殺って言っても都合よくだだっ広い荒野にでも逃げてくれなきゃ当たらないし周囲の被害で損害賠償プラス営業停止処分
警部で揉み消せる規模の案件じゃないからな
そもそも800万で人1人殺すってのが安すぎるけどPMCが利益度外視してどうすんのと
要するに怪盗ss読んでて毎回エリーチカが勝ってばかりなのが気に食わないから負けさせるss書いたってことでしょ
このssではエリーチカの敗北で終わりで普通に良くできてたのに他のss読んでて勝ちたいと思ったとかそこらの怪盗エリーチカ像に打ち勝つとか言い出すからひっかかった
バラバラの作者が書いてて世界観共有してるわけでもないのに勝ち星がどうのってのも理解できんが
>>134でカッコ書きした通り俺は怪盗エリーチカ信者だからこれで完全敗北とは思ってないし気が向いたら勝手に続きのss書かせて貰うかも なんか一人相撲してる感じがするんだけど、人に読ませる文くらい配慮して書けよ 色々言ったけど内容は良かったし面白かったよ
ツッコミどころも多いけどツッコミどころがない物語なんて存在しないしあったとしてもたぶん面白くない
結末に不満がないと言えば嘘になるけどこれはこれで斬新だしこの後の展開の妄想も捗る >>159の言うとおりだ、この辺にしておこう
結果的に冒頭の仮説は上手くいったようだし万歳だ
これからは続きか別の話でも考えつつ皆に期待してるぞ >>166
まったく見てないから冒頭の仮説てのだけ教えて 後書きってそんなダメかな?
普通にSS終わった後に作者と話したいわ
ここがどうとか >>138
> せっかく書いたしミリオタや映画オタクの同志向けに登場兵器のモデルも紹介するで
> HVYインサージェント → GTAVの同名装甲車 車体は爆弾に10発位耐えるくせしてガラスの強度が肘で割れるレベル、お陰でほぼ確実に運転手が先に死ぬ
> 社長の攻撃ヘリ → GTAVのバザード攻撃ヘリ 速い、小さい、強い
ミリオタの同志向けとか言ってるのに実在の兵器じゃなくてゲームの名前で紹介してるのが最高にキッズで草
あとがき含めて今が春休みなんだなと感じられるSS
ここよりVIPでやったほうがウケそうだな >>169
それくらいならわかるけど長文でレスバってるし >>170
反論にもGTAの喩え引っ張り出してるのはうーんだな
あとベレッタをM92Fって表記するやつは信用できない GTAでは通用するからキリッとか草
ヘリや戦闘機が街中に突如現れたりする世界観のゲームと一緒にしてもな でも現実世界でのステルス攻撃ヘリの恐ろしさとか大多数の人間が襲われたことないからわかんねえよ テンポ良くて面白かったよ
兵器ヲタには不満なのかもしれんけど、それ言っとったらSSなんて書けんしな 当てになるならない以前にコメント4
最愛は40
かー!w 最愛引き合いに出してる辺りが最高に頭悪いな
それに他SSの話はご法度だよ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています