善子「怪異症候群?」花丸「ずら」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
ザァー……
タッタッタッ…
善子「ハァ…ハァ……ったく、なんで私がこんな目に……」
善子「傘ぶん投げなきゃよかった……あーもうビッショビショじゃない!」 善子「もう少しで、あいつの寺に着く――きゃっ!」
バシャーン
善子「いったた……最悪」
善子「――やばっ」
オオオオオオオ…
善子「いや……来ないで……」
アアアアアアアアアアアアアアアアアア
善子「いやっ……助けて……ずらまるぅー!!」 花丸「――遅いよ、善子ちゃん」
善子「ふぇ?」
バシンッ
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォ…
花丸「流石に、札だけじゃ除霊できないか」
善子「やだあ……早く倒してよ……」
花丸「ごめんねー、そう簡単にいかないんだよ。なにせ――」
花丸「善子ちゃん、強い悪霊にばっかり狙われるから」 トン…
善子「蝋燭……?」
花丸「霊力を籠めた、ね。2本でいけるかな」
ジャラッ
花丸「南無大慈大悲救苦救難広大霊感白衣観世音……」
アアアアアアアアアアアアアアアアアア
善子「苦しんでる……」
花丸「まだだよ、気を緩めたら駄目ずら」 グウォォォォォォ…
善子(蝋燭の火が激しくなってる……?)
花丸「もう少しだけ耐えて……お願い」
シュゥゥゥ……
善子(火が……消えた)
花丸「……ふぅ」
善子「終わったの?」
花丸「うん」ニコッ
善子「ホッ」 花丸「善子ちゃんが毎回変なの連れてくるから、まるは大変ずら」
善子「仕方ないじゃない、そういう体質なんだから。っていうか、もっと早く来なさいよ!」
花丸「悪い気を感じたから、気づいてはいたんだよ。善子ちゃんが早くまるを呼ばないから」
善子「うぅ……」
花丸「ま、とにかく。善子ちゃんが無事でよかった」ギュウッ
善子「う……うぇぇぇ……」グスッ 善子(――私は、幽霊が見える)
善子(こうして悪霊に取り憑かれては、お寺生まれの幼馴染である花丸に除霊してもらう)
善子(そんな日々を、小さい頃からずっと繰り返していた) ―――
―
善子「ひとりかくれんぼ?」
モブA「うん。最近流行ってるんだよー」
モブB「善子ちゃんもやってみない?」
善子「いやー、私は……」
善子(ひとりかくれんぼって、最近動画サイトとかで人気のやつよね? なんでも一種の降霊術だとか)
善子「うーん……私はパス」
善子(変なことに巻き込まれたくないし) モブA「えー? 絶対面白いのに」
善子「でも、怖いのはちょっとね」
モブB「願いが一個叶うって話もあるんだよ。私の知り合いも、ひとりかくれんぼで彼氏ができたんだって!」
モブA「なにそれ、うさんくさー」
モブB「まあ確かに、その子めっちゃ可愛い方だけど」
善子「……」
善子(願いが叶う、ね) 花丸「善子ちゃん、次は移動教室だよー」
善子「あ、うん」
ルビィ「どうしたの、何かあった?」
善子「何でもないわ、気にしないで」
花丸「……?」 ―――
―
キーンコーンカーンコーン
ルビィ「善子ちゃん、練習行こ?」
善子「ちょっと待ちなさいよ、今ズラ丸のノート写してる所なんだから」
ルビィ「あー……授業中ぐっすりだったもんね、善子ちゃん」
善子「ヨハネよ」
花丸「夜更かしするからそうなるずら」
善子「うっさいわね……悪かったわよ」 花丸「あ、そうだ善子ちゃん」ゴソゴソ
善子「?」
花丸「これ、持ってて」
ルビィ「お守り?」
花丸「うん。マルが作ったお守りだよ」
ルビィ「へえー、いいなあ」
花丸「ルビィちゃんにも、あとで作ってあげるね」
ルビィ「え、ホント? やった♪」
善子「……前にも同じようなの貰わなかったっけ」
花丸「丁度今日で1年だよ」
善子「毎年寺娘からお守り渡されるこっちの気持ちも考えてよ」
花丸「ごめんごめん、でも善子ちゃんは特別だから」
ルビィ「特別?」
花丸「うん……ちょっと、厄介な体質なんだ」 ―――
―
屋上
果南「ワン、ツー、スリー、フォー……はいストップ」
鞠莉「うーん……ノットグッドねぇ。」
ダイヤ「善子さん、家でのトレーニングは欠かしていませんわよね?」
善子「うっ」
花丸「善子ちゃん」
善子「ヨハネヨ……確かに、新曲の振り付けは確認しきれてないわ」
ルビィ「うゆ……仕方ないよ、善子ちゃんはPVの作成で忙しいもん」
果南「それは梨子と千歌、曜も一緒だよ」 千歌「まあまあ、善子ちゃんには動画配信だってあるしさ」
曜「善子ちゃんの動画を見てくれてた人たちが、そのままAqoursのファンになってくれてるみたいだしね」
梨子「そういえば、AqoursのPVのコメント欄に、善子ちゃんの配信で流れてるのと似たようなコメントもたくさんあったね」
千歌「えっ……それは知らなかった」
曜「まさか梨子ちゃん、善子ちゃんの配信いつも見てるの?」
梨子「うっ……たまたまよ! たまたま開いたらそれが善子ちゃんの配信で……」
ようちか「ふーん」ニヤニヤ 善子「はぁ……」
花丸「善子ちゃん、気にする事ないずらよ」
ルビィ「そうだよ善子ちゃん、これから練習がんばるビィ!」
果南「ごめんね、善子を攻めてるつもりはないんだ」
鞠莉「昔の私たちは、振り付け覚えてないなんて当たり前だったからねー。善子はまだマシよ」
ダイヤ「それは鞠莉さんが家に帰ってからさっぱり自主トレをしなかったからでしょう。善子さんと比べないでください」
鞠莉「だってぇ、今と違って作曲も全部私がやってたんだよ? マリーってホーントファンタスティックなんだから!」
善子「だからっ、ヨハネだってばぁー!!」 ―――
―
津島宅
善子「ここを、こう……キャッ!」ドスン
善子「いったあ……」
善子(ダンスなんて、そんな簡単にできるわけないのよ)
善子(帰って来てから1時間も同じ所練習してる。元々才能がないのね、私)
善子(元来インドアなわけだし、当たり前だけど)
善子(これができなきゃ、Aqoursのメンバーである資格はない)
善子(彼女たちはみんな才能の塊で、インドアな私なんかが傍にいられるのは……見てくれだけはいいから)
善子(いつまでもそのままじゃ、ライブで足引っ張るだけ)
善子(やっと見つけた私の居場所なのに……) ――願いが一個叶うって話もあるんだよ。
善子「……」
善子(そういえば今日は、お母さん帰ってこないんだっけ)
カチカチッ
『ひとりかくれんぼ やり方』 ――――――
必要な物
・手足のついたぬいぐるみ
・米
・縫い針と赤の縫い糸
・包丁
・自分の爪
・コップ一杯の水と塩
事前準備
@夜中の三時までにこれらを準備しておく
Aぬいぐるみの綿をすべて取り除く
Bぬいぐるみに米を詰める
C自分の爪を切り、そのひとかけらを入れたあと赤い糸で縫う
D縫い終わったらそのまま赤い糸をぬいぐるみに巻きつけ、ある程度いったらくくる
Eぬいぐるみに名前をつける
やり方
ぬいぐるみに向かって「最初の鬼は◯◯(自分の名前)だ」と三度告げる。
次に風呂場へ向かい、水を張った浴槽にぬいぐるみを沈める。
部屋に戻り、家中の明かりを全て消し、テレビだけ付ける。
目を瞑って十秒数える。
包丁を持って風呂場へ向かう。
ぬいぐるみに向かって「△△(ぬいぐるみの名前)見つけた」と告げ、包丁をぬいぐるみに刺す。
「次は△△が鬼」と言いながら包丁をその場所に置く。
その場を去って身を隠す。
終わらせ方
コップに塩水を入れ、半分口に含む。
準備ができたらぬいぐるみを探す。
ぬいぐるみを見つけたら、口の中の塩水とコップの残りの塩水を吹きかける。
ぬいぐるみに向かって「私の勝ちだ」と三度告げる。
ぬいぐるみを燃やす。
注意
必ず二時間以内に終わらせること。
―――――― 善子(意外と複雑なのね。事前準備とかあるし)
善子(動画を見た限りでは、それらしい心霊現象が起きてる様子はなかった)
善子(ぬいぐるみがその場から動いていたって話も、動画を加工すればどうとでも作れる話)
善子(ぶっちゃけ、こっくりさんよりも胡散臭いわね)
善子「……ばかばかしい」
善子(でも)
善子(もしも、本当に願いが叶うとしたら……?)
――ダンスが上手くなりたい。 ―――
―
善子「……貴方の名前はフェンリル」
善子「このヨハネから名を授かったこと、感謝しなさいよね」
善子「……あと1分で3時か」
善子(また夜更かししたでしょって、ズラ丸に怒られちゃうかしら)
善子(もしも本当にダンスが上手くなったら、あいつきっと驚くわね)
善子「よし……最初の鬼は津島善子だ、最初の鬼は津島善子だ、最初の鬼は津島善子だ」 ―――
―
花丸「おはようルビィちゃん」
ルビィ「おはよう」
花丸「……善子ちゃんはまだ来てない?」
ルビィ「ふぇ? うん、来てないけど」
花丸「……」
ルビィ「花丸ちゃん?」
花丸「善子ちゃんに……何かあったかも」
ルビィ「何かって……え、待ってよ花丸ちゃん! もう学校始まるよ!?」
花丸「ごめんルビィちゃん、今日は休むずら!」パタパタ
ルビィ「休むって、えぇ!?」 ―――
―
善子「ヒック…グスッ……」
善子「ごめんなさい……ごめんなさい……」
善子「もう二度とこんな事しないから、だから……花丸……助けてよぉ……!!」
「みぃーつけたぁ」
善子「ひっ」
「」クスクス
善子「いや……こないで」
「どぅしてぇ、にげるのぉ?」
善子「あ……ぐ……」 善子(まさか、本当にぬいぐるみが動くだなんて思わなかった)
善子(動転した私は、口に含むのを忘れ、コップの塩水をそのままぬいぐるみにかけた)
善子(ぬいぐるみは、今もなお当然のように動いている)
善子(手に持った包丁で、私に仕返しするために)
善子(私があいつに刺したのと同じように……包丁を私の血で染めるために)
善子(そういえば、注意書きに2時間以内に終わらせろって……)
善子(かくれんぼを始めてから2時間なんて、もうとっくに過ぎてる)
善子(それを過ぎてしまったら?)
善子(私……どうなるの?) 善子「いやあああああああああああ!!」ダッ
「またかくれんぼするのぉ?」
「フェンリル、あきちゃったなぁ」
「次は殺す」 ―――
―
プルルル…
花丸「やっぱり出ないか」
花丸(今朝起きたら、善子ちゃんに渡したお守りの気配が消えていた)
花丸(自分で作ったものだから、中身が壊れてさえいなければ"ある"って何となく感じることができる)
花丸(それができないってことは、善子ちゃんの身に何かがあったってこと)
花丸「お願い……無事でいて」 ピンポーン
花丸「……」
ピンポーン
花丸「……出ない」
ガチャッ
ガチャガチャッ
花丸「善子ちゃん! マルだよ! 花丸だよ!!」
花丸「返事してよ!」
花丸(おかしい、この部屋から一切気配が感じ取れない)
花丸(隣の部屋からは感じるのに……善子ちゃんの部屋だけ)
花丸(まるで、結界が張られているみたいな――)
花丸「一体何をしているの、善子ちゃん……?」 花丸(結界を破るには、まず誰が張ったのかを突き止めないと)
花丸(マルより霊力が強い人間の結界だとしたら、マルに破るのは不可能ずら)
花丸(善子ちゃんが自分で張った? 善子ちゃんって魔術の本とか色々持ってるし、あり得ない話じゃない)
花丸(でも、本当にヤバそうなものだったらやらないだろうし)
花丸「そういえば……」
――願いが一個叶うって話もあるんだよ。私の知り合いも、ひとりかくれんぼで彼氏ができたんだって!
――なにそれ、うさんくさー。
――まあ確かに、その子めっちゃ可愛い方だけど。 花丸(その、"ひとりかくれんぼ"をしているとしたら?)
花丸(ひとりかくれんぼがどういったものか分からないけど、恐らくはこっくりさんの類)
花丸(降霊術……だとしたら)
花丸(浮遊霊如きに結界を張る力があるとは思えないけど)
花丸「時間的にも、無理やりこじ開けるのが正解ずらね」 ―――
―
善子「ハッ…ハッ…」
「」クスクス
善子「――っ」
「どこにかくれたのぉ?」
善子「……」
善子(声を出しちゃダメ……息も止めなきゃ……!)
「かくれてもぉ、むだだよぉ」
「ベッドの下に、かくれてるのかなぁ?」 ザクッ…ザクッ…ザクッ…
善子(この音……マットレスを切り刻んでるの?)
「ざーんねん、はずれー」
「つぎは……クローゼット」
善子「――っ!」
「うふふ……」
ズンッ
善子「――ヒッ!!」
善子(刃が足元に……!)
「みーつけた♪」
善子「いやあああああああああああああああ!!」 善子(にげ……なきゃ……!)
ガバッ
善子「きゃっ!!」ズルッ
ビタンッ
善子(こんな時に、服が絡まるなんて……)
「」グイッ
善子(引きずられるっ!!)
善子「やめてぇ!!」
「津島善子ちゃん、の、負け」
「フェンリルの、か、ちぃ〜〜〜」ブンッ 「……」
善子「……?」
「それ、邪魔だよ」
善子「それ……?」
善子「あ……お守り……」
「外せぇぇぇぇぇええええ!!!」
善子「きゃあっ!! こないでぇ!!」 バシンッ
「ぐぇっ」
善子「ハッ…ハッ……」
善子(ぬいぐるみが……吹っ飛んだ?)
花丸「善子ちゃん」
善子「――っ」
善子「は……な……まる?」
花丸「そうだよ。善子ちゃんの、花丸だよ」ニコッ
善子「あっ……ああ……」
善子「うわあああああああああん!!」ギュウウウッ
花丸「よしよし……」ナデナデ 「だれ……だ」
花丸「お前こそ誰ずら。見たところ、ぬいぐるみにとりついた浮遊霊……って感じではないずらね」
花丸(仮に浮遊霊だとしたら、さっきお札で叩いた時に追い出せたはず)
花丸「善子ちゃん、これは"ひとりかくれんぼ"なんだよね?」
善子「……そうよ。ネットでやり方調べて」
花丸「そのやり方、あとで詳しく教えて欲しいずら」
花丸「今はとにかく、こっちをなんとかしないと」
「殺す」
花丸「なぜ? 貴方は善子ちゃんを憎んでいるの?」
「コロスコロスコロス――」
花丸「話が通じないんだね。強制的に成仏させるよ」 トンッ
善子「その蝋燭……」
花丸「前に使ったのと一緒」
花丸(お札程度じゃ払えないくらい霊力が強いのだとしたら、なおさら成仏させなきゃダメずら)
花丸「南無大慈大悲救苦救難広大霊感白衣観世音……」
「……」
善子「苦しんでる、もうちょっとよ」
花丸「……いや」
「あ……があああああああああああああああっっっ!!!」
花丸「死霊じゃ……ない?」 「殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すっっっ!!!」
プシュッ
善子「蝋燭の火が消えたっ!!」
花丸「そんなっ……お前は一体何者ずらっ!?」
善子「ズラ丸っ! 一旦逃げるわよ!!」
花丸「うんっ……」
ガチャッ
花丸「どうして!? 結界はさっき破ったはずなのに!!」
善子「お父さんの部屋に行くわよ!」 ガチャッ……バタン
花丸「ハァ…ハァ…」
善子「……ごめんなさい、巻き込んじゃって」
花丸「いいよ。いつものことずら」
善子「本当にごめん」
花丸「いいって。それより……ひとりかくれんぼってなんずら?」
善子「あ、うん……」
カクカクシカジカ… 善子「そういえば、幽霊を見たっていうコメントが少なかったわね」
善子「降霊術っていうくらいだから、呼び寄せた幽霊を見たって体験談もありそうなもんだけど」
善子「体調がおかしくなったとか、変な物音がするとか……別に幽霊が原因ってわけじゃなさそうなのばっかりだったわ」
花丸「――それは降霊術じゃない」
善子「へ?」
花丸「そもそも降霊術って、占いとかが目的で亡者の霊を呼び寄せる呪術なんだけど……ひとりかくれんぼの目的って、なに?」
善子「願いを叶えるため……」
花丸「ううん、それは違うよ。神様にお祈りする要素が一つもないでしょ?」 花丸「ぬいぐるみに米や爪を入れたり、名前を付けたりするのは、『映し』を作る過程と同じ」
善子「映し?」
花丸「ぬいぐるみを人に近い存在に仕立てているんだよ」
花丸「米は、人の肉や内臓の代わり」
花丸「爪を入れるのも、ぬいぐるみを人間に近い存在にするため」
花丸「名前を付けるのは、ぬいぐるみに他の無機物とは違う『個』を与えるため」
花丸「縫った糸でぐるぐる巻きにするのは魔術で用いられる手法。エネルギーを糸の力を借りて視覚化して、より強固なものとする」
花丸「あのぬいぐるみは、善子ちゃんの分身なんだよ」
善子「分身……?」 花丸「そんな自分の分身とかくれんぼして、『お前の負け』と言って包丁を突き立てる」
花丸「つまりひとりかくれんぼは……"自分自身に呪いをかける呪術"」
善子「嘘……なんでそんな」
花丸「とにかく、今はアレをどうにかしないと」
花丸「とはいえ……死者ならともかく、生霊をどうこうするのはマルには無理ずら」
善子「えぇ!? アンタ、ここまで来て何言ってんのよ!」
花丸「あのぬいぐるみに取り憑いているのは浮遊霊じゃない。悪意を持った生霊だよ」
花丸「白衣観音経が効かなかったのも、死者じゃないから。生ある者にお経を唱えても効果はない」
花丸「生霊は生者の思念。発信源が特定できない限り根本を断つことはできないんだよ」
善子「じゃあ、どうすれば……」
花丸「この儀式を終わらせるしかないよ。儀式を始めた、善子ちゃん自身の手で」 >>48
あのさぁ…
まあss面白かったら許してやるよ >>54
>>55
そもそも俺が書きたかったのはクール組中心の話だし
イッチがss書いてくれるのは全然構わない
でもなんで嘘つくん? なんだそんなことしてたのか、悪い子だ、ごめんなさいしなさい >>56
何を勘違いしてるのか知りませんが自分が書いたのは↓です
52 名無しで叶える物語(庭) sage 2018/03/23(金) 21:03:06.79 ID:HZI1w3Og
善子「友達は霊媒師」花丸「ずら」
善子は生まれながらにして"見える"体質
だが善子自身には霊を祓う力はない
幼なじみかつ寺生まれの花丸には強い霊力があり、善子は物心ついた頃から花丸に霊を祓ってもらっていた
善子がAqoursへの加入を渋っていたのは、他のメンバーに悪影響を与える可能性を考えていたからでもあった
千歌たちと関わっていく中で、善子の不幸体質、憑かれ体質はAqoursのメンバーにも降りかかる
確かにあなたのレスで『怪異症候群』というワードを見て利用させてもらいましたが、あらすじと全く異なることから別の話だとわかりますよね >>58
まぎらわしかったね
ごめんなさい
でも俺も書こうと意気込んでたから勘違いしてちょっと偉そうに言っちゃったんだ
ごめんね… >>56
よくわかんないけど、これが恥ずかしい庭ってこと? やだもう…
もうみんなssに集中しよ?
ほらイッチはよ書いて!
生霊の正体気になるから! 善子「……わかったわ。やってみる」
花丸「マルも手伝うよ」
善子「もし失敗したら……ちゃんと守ってよね」
花丸「約束ずら」 ―――
―
「」スタスタ
「ウフフ……みぃつけたぁ♪」
善子「それはこっちのセリフよ、フェンリル」
花丸「フェンリルって……それ、ぬいぐるみの名前?」
善子「そうよ、かっこいいでしょ」
花丸「全然カッコよくないよ、センス悪いずら」
善子「う、うっさいわね!」
「津島善子ちゃん……フェンリル、の、かちぃ」
善子「……どうかしら」 「ふふふ、つーかまーえ……」
「……うごけ、ない」
善子「アンタが馬鹿でよかった」
花丸「つかまえた、ずら」
「……」
善子「床にガムテープ張ってるって気付かなかった?」
花丸「善子ちゃん、今だよ!」
善子「分かってる、あとヨハネ!」クイッ
プシャッ
「」 善子「動かなく……なった?」
花丸「いや、まだ呪いは解けてないよ」
善子「えと、あとは確か……"ぬいぐるみを燃やす"」
花丸「ならキッチンで――」
善子「待って、ガスコンロはダメ」
花丸「え、どうして?」
善子「キッチンについてる火災感知器は、炎を感知するやつだから……ぬいぐるみから火があがったら、消防車が来ちゃうの」
花丸「それは……そうだろうけど、そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
善子「ダメよ! それだけは……お母さんに迷惑は、かけたく……ない……」クラッ
花丸「え?」
バタンッ 花丸「善子ちゃん? 善子ちゃ……善子ちゃんっ!!」
花丸(善子ちゃんの気がみるみる弱くなってる……どうして?)
花丸(ぬいぐるみは動かなくなった。それはつまり、呪術を解除したんじゃ……)
花丸(いや……確か善子ちゃんは、塩水をかけることで"終わらせる"と言っていた)
花丸(呪術を終わらせる……それが意味することは、つまり)
花丸「対象の……死?」
花丸「――っ」
花丸(早くぬいぐるみを燃やさなきゃ! でも、どうやって……?)
花丸(やっぱり、ガスコンロしか――)
――お母さんに迷惑は、かけたく……ない……。
花丸(そんなこと言ってる場合じゃないずら!) 花丸「あーもう!! どうすれば……」
花丸「……スマホ?」
花丸(そういえばここに来るとき、善子ちゃんに電話がつながらなかった。それはきっと結界が張られていたから)
花丸(さっき玄関から逃げようとした時には、結界は再び張られていた。今もこの部屋と外の世界は遮断されているんだ)
花丸「……」スッ
ルビィ<どこにいるの?>
千歌<さっき走ってたみたいだけど、何かあった?>
通話履歴2件 黒澤ルビィ
花丸(この家でぬいぐるみを焼くにはガスコンロしかない。でもそれを使う事はできない)
花丸(ぬいぐるみを焼かなきゃ、善子ちゃんを助けることはできない)
花丸(両方を解決するための、ただ一つの方法は……) ―――
―
ルビィ「うゆ……」
千歌「ルビィちゃん、返事は?」
ルビィ「ううん……さっきから何度もインターホン押してるんだけど」
千歌「別の場所にいるとか?」
曜「それはないと思う。近くの店の人に聞いたけど、花丸ちゃんがこのマンションに入っていったの見たって言ってたし」
梨子「なんか、不自然じゃない? この状況で2人して連絡もないなんて……何かあったんじゃ……」
曜「ただ事じゃないのは確かだね」
ダイヤ「消防に連絡した方がいいのではありませんか?」
果南「確かに、中で2人とも倒れてるかもだし」
鞠莉「そんな、やめてよ果南……縁起でもないわ」
ルビィ「花丸ちゃん……善子ちゃん……」グスッ ダイヤ「落ち着きなさい、ルビィ」
ルビィ「ぅゅ……お姉ちゃん」
ダイヤ「あまり大事にしたくはありませんが……消防に連絡を――」
ガチャッ
ルビィ「ふぇ?」
花丸「ハァ…ハァ……よかった」
千歌「花丸ちゃん……?」
梨子「どうしたの、そんなに汗かいて」
曜「」スッ
曜「酷い熱……一体何が?」
花丸「――これ、燃やしてほしいずら!」
梨子「燃やす!?」
曜「燃やすって……このぬいぐるみを?」
花丸「早く! 善子ちゃんの命がかかってるずら!!」
千歌「えぇ!?」
花丸「お願い……マルはもう、動けない……から」フラッ
曜「わわっ、花丸ちゃん!?」ダキッ ダイヤ「このぬいぐるみ……」
果南「ダイヤ?」
ダイヤ「……わかりましたわ。一刻も早く燃やしましょう」
曜「ちょ、ダイヤさんまで何言って……!?」
鞠莉「Hmm……オーケー、この裏にある川岸でなら燃やせそうよ」
果南「わかった、そうしよう」
梨子「ちょ、どうしちゃったんですか3人とも!?」
果南「ダイヤが燃やそうって言ってるから、多分それが正しいんだよ」
千歌「――っ」
花丸「早くっ! 善子ちゃんが死んじゃう!!」
千歌「……うん!」スッ 梨子「ちょ、千歌ちゃん!?」
千歌「近くのお店でマッチ借りてくる!」
果南「私たちはぬいぐるみを持って川に」
鞠莉「……」コクッ
バタバタ
曜「あらら……みんな行っちゃった」
梨子「花丸ちゃん、善子ちゃんはこの部屋にいるの?」
花丸「うん……マルが呪いを半分肩代わりしてるけど、それでもきっとすごく辛いはずだから」
曜「呪い……?」
花丸「だから、介抱してあげてほしいずら……」
梨子「……わかった」コクッ ―――
―
川岸
果南「よし、今なら近くに人はいない」
鞠莉「燃やすなら今ね」
ダイヤ「はぁ……あとで怒られるのは確実ですわね」
千歌「果南ちゃん、持ってきたよー!」
鞠莉「よし、あとはぬいぐるみに火をつけるだけ」
シュッ…ブオオッ
果南「ついた」
ダイヤ「――念が、薄れていく」ボソッ
千歌「ダイヤさん?」
ダイヤ「いえ。燃やして正解だったと、そう思いましたので」
鞠莉「そう? 可愛らしいぬいぐるみだと思ったけど」
果南「……それ、本気で言ってる?」
鞠莉「イッツジョーク♪」 >>84
ダイヤさんは見える系の人なのかな?
三年生組かっこいい ―――
―
善子(Aqoursの9人は後日、大人たちから川岸で焚火(?)をした件についてこっ酷く絞られた)
善子(そして私は、花丸と、なぜかダイヤからも、危険な行為……ひとりかくれんぼをした件について大目玉を食らった)
善子「はぁ……」
花丸「何はともあれ……無事に終わってよかったずら」
善子「そういえば、あのぬいぐるみ、川岸で燃やしたって……ホント?」
花丸「うん。マルが結界を内側から開いて、外にいたみんなに手渡したんだ」
善子「いなかったらどうしたのよ」
花丸「信じてたもん。きっといるはずだって」
善子「ふーん……ま、アンタのおかげで助かったから……えと、一応お礼は言っておくわ」
花丸「……うん」
善子「何よ、その微妙な反応は」
花丸「いや、"ひとりかくれんぼ"について考えていたずら」
善子「もういいわよ、その話は」
花丸「うん……多分、知らない方がいいと思うよ」 花丸(ひとりかくれんぼは、"自分自身に呪いをかける呪術")
花丸(呪いとは、すなわち生霊)
花丸(普通に考えれば、あのぬいぐるみに入っていたのは善子ちゃん自身の生霊)
花丸(でも、腑に落ちない点がある)
花丸(なぜあの部屋に2度も結界を張ることができたのか)
花丸(そもそも、呪いは術者が対象に強い念を送らなければ影響を与えることはできない)
花丸(簡易的な儀式で、善子ちゃんは死にかけた……それほどに強い念)
花丸(善子ちゃんが自分を呪うほど嫌っているとは思えない)
花丸(だから、あのぬいぐるみに憑いていたのは、もっと別のなにか) 花丸(……連鎖した念だとしたら?)
花丸(ひとりかくれんぼを実行する人間は、大抵こう考えるはず)
『幽霊が見たい』
『派手な霊現象に遭遇したい』
『ぬいぐるみに動いてほしい』
『ぬいぐるみに喋って欲しい』
『人が死ねば面白い』
花丸(今までにひとりかくれんぼを行った全ての人間の念が、善子ちゃんの不幸体質、憑かれ体質と重なって、今回の事件に繋がったのだとしたら?)
花丸(ひとりかくれんぼを広めた者には、何らかの意図があったんじゃないか……そう思わずにはいられないずら) 善子「ほら、ズラ丸。練習いくわよ」
花丸「うん」ニコッ
花丸「善子ちゃん、今日のダンスは成功するといいずらね」ニヤニヤ
善子「うっ……ま、まあ? 願いは自分自身で叶えて見せるわよ。なにせ私は、天界から舞い降りた天使なのだから」ギランッ
花丸「大人しく練習するずら」
善子「……へい」
花丸「クスッ」
花丸(何があっても、どんな悪意からも、守ってみせるよ)
花丸(善子ちゃんは、大切なマルの親友だから) フリーゲーム『怪異症候群』の"ひとりかくれんぼ"を題材に、他方のブログを見ながら書かせていただきました
次回、元ネタをなぞって"てけてけ"編を書くか、オリジナル()を書くかは未定です
落ちたら建て直します `¶cリ˘ヮ˚)| やるじゃない!
おもしろかったですー フリーのホラーゲーム漁ってプレイしてた頃あったな懐かしい 乙
おもしろかった!
勘違いしてごめんね…
続き待ってるよ! 善子「ハァ…ハァ……ついた」
ダイヤ「善子さん、少し遅くなってはいませんか?」
鞠莉「怠け者は勘当デース!」
善子「だって、最近淡島神社登ってなかったし」
花丸「それはみんな同じずら」 ルビィ「まあまあ、善子ちゃんは沼津に帰らなきゃで、みんなより早く帰ってるし……最近体力トレーニングに参加できてなかったもんね」
果南「それは曜も同じだよ?」
善子「バリバリのスポーツマンと比べないで頂戴……はあ、2年生組が羨ましいわ」
ダイヤ「あの3人は、歌詞や曲、衣装の雰囲気を合わせるためのミーティングをしているのですわ。決してサボっているわけではありません」
善子「分かってるわよ」ハァ…
果南「さ、そろそろ下がるよ。善子もファイト!」
鞠莉「善子はここから遠いもんね」
善子「だから、ヨハネだってば……」 ―――
―
果南「じゃあみんな、私たちはこのまま帰るから」
鞠莉「レストタイムはしっかりとるのよ♪」
るびまる「はーい」
ダイヤ「フフッ……では、帰りましょうか」
善子「あれ、財布がない」
ルビィ「へ?」
花丸「……まさか」
善子「上に忘れてきた……かも」 果南「あちゃー、やっちゃったね」
鞠莉「これから取りに戻る?」
ルビィ「今から戻ったら、船無くなっちゃうんじゃ……」
果南「それは大丈夫、ウチの船出すから」
善子「悪いわよ」
果南「気にしないで。どうせ家に帰っても暇だしね」ニコッ
善子「いいってば……」
ダイヤ「次にここへ来るのがいつになるかわかりませんし、その間に財布を盗られてしまうかもしれません。今のうちに取りに行くのが最善でしょう」
鞠莉「でもこの時間帯のバス逃したら、結局沼津方面には帰れないんじゃないかしら?」
果南「あ、そっか。なんならウチに泊まってく?」
鞠莉「Oh! そういうことなら、オハラホテルのスイートルームに泊めてあげるわ!」
善子「な、何いってんのよ2人ともぉ!」 ダイヤ「ぶっぶーですわ! 善子さんのご両親が心配するでしょう。もしバスが無くなったら、黒澤家の車をお出します」
鞠莉「ぶー……せっかく善子と女子トークできると思ったのに」
善子「えと……本当にいいの?」
果南「そりゃそうだよ。だって私たち、同じチームの仲間でしょ?」
ダイヤ「困った時に助け合うのは当然ですわ」
鞠莉「なんならウチのヘリに乗ってく? 沼津なんてすぐに着いちゃうわよ♪」
ダイヤ「鞠莉さん?」
鞠莉「ムゥ……相変わらず硬度10なんだから」ムスッ
善子「うっ……うん、じゃあ、お願いするわね……」モジモジ
果南「お願いされました」クスクス
鞠莉「照れちゃって、かーわいい♪」
善子「う、うっさいわね///」 花丸「――駄目ずら」
鞠莉「What!?」
果南「花丸……?」
花丸「あ……えと、大分暗くなってるし。足元が見えにくくなってるから、階段踏み外したら怪我しちゃうかもしれないよ」
ルビィ「確かにそうかも……」
果南「んー……じゃあ、私もついていこうかな」
鞠莉「私も私も! 人数は多い方が楽しいもん!」
花丸「そういう問題じゃ……」
ダイヤ「では、私たちも行きましょうか」
花丸「へ?」
ダイヤ「心配なのでしょう。であれば、ついていくべきよ」
花丸「……」
ダイヤ「安心なさい。この島には何もないはずですわ。何も……」
花丸「……わかったずら」 ダイヤ「――ルビィ」
ルビィ「ピギッ」
ダイヤ「貴方は先に帰りなさい」
ルビィ「え……でも」
ダイヤ「私の帰りが遅くなること、お母様に伝えてちょうだい」
ルビィ「ぅゅ……わかった」 Chapter2キターー!!
くねくねがどう現れるのか楽しみ >>111 あ、やっぱりくねくねなんですねw
がんばってください、楽しみにしています 善子「はぁ……はぁ……流石に、二度目ともなると……」
花丸「ハァ…ヒィ…フー……」
果南「頑張って善子、花丸。もう頂上だよ」
鞠莉「Aw, yeah! ようやく到着したわー!」
ダイヤ「鞠莉さん、はしたないですわよ」
鞠莉「やっぱり、体を動かすって気持ちいいわよねー!」
花丸「それは鞠莉ちゃんだけずら……疲れたずらぁ……」クタッ… 善子「ずら丸……アンタ、やっぱ先に帰った方がよかったんじゃ」
花丸「ムッ……誰のためにここまで来たと思ってるずら」
善子「私は頼んだ覚えなんてないわよ」
花丸「元はといえば、善子ちゃんが……!」
果南「はいはい、喧嘩しないで?」
ダイヤ「2人とも落ち着きなさい。怒っても何も解決しませんわ」
鞠莉「ところで……すっごく暗くない?」
果南「うん、日が落ちるの早くなってきたねー」 善子「財布はどこにあるのかしら」
ダイヤ「スマートフォンのライトを点けましょう。暗いままでは埒が明きませんわ」
花丸「わかったずら……」スッスッ
ピカッ
ガサガサ
果南「んー……あ、これじゃない? 善子の財布」
善子「あっ、それよ!」
果南「大方、お賽銭を入れた時に財布をしまい損ねて、そのまま落としちゃったって感じかな」
善子「はぁ……不幸だわ」 鞠莉「ノーノー! 何事もポジティブシンキングよ♪ 善子が財布を落とさなかったら、こーんな面白いことできなかったんだから!」
ダイヤ「何が面白いんですの……」
花丸「ぜーんぜん面白くないずら。家に帰ってのっぽパン食べてる方がずーっとよかったずら」
善子「なんなのよさっきから! いちいちつっかかってきて!」
花丸「まる、善子ちゃんに何か言ったずら? 別になーんにも言った覚えないけど」
善子「くぅ……」 パンパン
果南「はいはい。用事は済んだんだし、早く帰ろー? 私お腹空いちゃったよ」
鞠莉「マリー、ハンバーグが食べたくなってきたわ! イベリコ豚で作った飛びっきりのハンバーグ♪」
花丸「じゅらぁ……」
善子「ずら丸、ヨダレヨダレ」
花丸「なっ……これは不可抗力ずら。マルもイベリコ豚食べたいだなんて、思ってないずらよ?」
善子「いや、心の声漏れちゃってるから。全然隠せてないから」 鞠莉「ノープロブレム! うちのコックに今すぐ連絡して、ここにいる全員分作るように指示するわね♪」
花丸「ずらっ、ずらっ」コクコク
果南「あはは……花丸はもう、小原家のトリコだね」
ダイヤ「はぁ……今日中には帰るんですのよ? あと、親御さんへの連絡は忘れないように」
よしまる「はーい」 鞠莉「……」
果南「どうしたの、鞠莉」
鞠莉「繋がらないの」
果南「は?」
鞠莉「繋がらないのよ、電話が」
果南「そんな……確かにここは電波が弱いけど」
ダイヤ「全く繋がらないなんて有り得ませんわよ」スッ
果南「嘘……私のスマホも圏外だ。ダイヤは?」
ダイヤ「……圏外ですわ」 花丸「何か感じるずら」
善子「ずら丸?」
ダイヤ「感じる、とは?」
花丸「……あまり考えたくないけど」
花丸「マルたち、誘い込まれたみたい」
果南「誘い込まれた……?」
鞠莉「ちょっと待ってよ、それってまさか……」
花丸「何者かはわからない。けど……何かがいることは確かだよ」
花丸「もしかしたらマルたち、この島から二度と出られないかもしれない」 ―――
―
ゼェ…ハァ…
果南「30分くらいは、経ったかな」
鞠莉「嘘……どうして着かないの?」
ダイヤ「普段なら、15分も下ればふもとに降りられますのに」
ゼェー…ゼェー…
花丸「マル……もう限界ずら」
善子「ちょっとズラ丸、しっかりしなさいよ」
花丸「だって……」
善子「とはいえ、これだけ下ってもまだ下があるなんて。一体どこに繋がってるの……?」
鞠莉「そんなの、淡島のふもとに決まって――」 果南「ねえ、鞠莉」
鞠莉「ん?」
果南「この『頑張って』の札、いくつあったっけ」
鞠莉「んーと、一番初めと、あとひとつ……2つくらいかしら」
果南「6回は見た気がする。下りだけで」
鞠莉「まさか、そんなことって……」
ダイヤ「はぁ……最近は大人しくなっていると、安心していましたのに。どうして今日に限って……」
花丸「話が違うよ」
ダイヤ「え?」
花丸「ダイヤさんが何も無いはずだっていうから、マルは……」
ダイヤ「……ごめんなさい」
花丸「いや、そうじゃないよね。さっきからマル、誰かのせいにしてばっかりずら」
善子「ズラ丸……」 鞠莉「あー、キリがないわ。みんな、ダッシュで降りましょう」
ダイヤ「ちょ、危険ですわよ! 鞠莉さんっ!!」
鞠莉「慣れてるから大丈夫よ! シャイニー!」ダダダッ
果南「ちょ、待って鞠莉!!」ダダダッ
ダイヤ「全く、怪我をしてしまったらどうするつもりですの」
花丸「マルはもう走れないずら……ゆっくり歩かせてほしいずら」
ダイヤ「勿論、そのつもりですわ」
善子「っていうか、一体なんなのよ。この島に、何が起こってるの?」 ダイヤ「――少し、お話をしましょう」
善子「え?」
ダイヤ「花丸さん、"くねくね"はご存知ですか?」
花丸「……聞いた事はあるずら。その姿を見た者は呪われるっていう」
ダイヤ「ええ。それが何らかの生命体なのか、あるいは幽霊や妖怪の類なのか……それははっきりしていません」
ダイヤ「ただ、その特徴については、いくつも語られてきました」
ダイヤ「色は白く、人間とはかけ離れた動きで体をくねらせるから"くねくね"」
ダイヤ「真夏の水田や川原など水辺で目撃されることが多い」
ダイヤ「くねくねを遠くから眺める程度では問題は無いが、詳細が見え、それが何者であるかを理解すると、途端に精神に異常を来たしてしまう」
善子「精神に異常……」
ダイヤ「仮にその状態になってしまえば、二度と元には戻れない」 善子「それが、今この状況を作っているっていうわけ?」
ダイヤ「確証はありません。ですが……もしもそうだとしたら、原因は私にあります」
花丸「……?」
ダイヤ「いえ、"黒澤家"にある、と言った方が正しいかもしれません」 ――――――
私のご先祖様の、そのまたご先祖様……ずーっと昔の話です。
ここ内浦では、水害が絶えなかったのです。
幾度となく津波に晒され、数えきれないほどの人が亡くなりました。
ある日、内浦にあった村を取り仕切っていた……そう、後の黒澤家を形作る者……村長は、"人柱"を立てることに決めました。
今では考えられない話ですが、人間の命を土地の神へ捧げることで、災害を減らせると、本気で考えられていたのですわ。
1年に1人、村の人間を人柱として埋めた……そう、生き埋めにしたのです。
その場所が、この淡島と言われています。
生き埋めにする際の、残酷な、それは残酷な話が残っていて。
人柱として選ばれた者が、時々掘った穴から這い上がってくることがあったそうです。
それを未然に防ぐために、彼らの右足を……切断したのだとか。
右足を切断されて穴に落とされた者は、土をかけられる度に……残された左足を使って、くねくね、くねくねと土を避けようとしました。
穴の底から、穴の上にいる人々を、それはそれは恨めしそうな顔で睨んでいた……と。
―――――― 花丸「……酷い話ずら」
ダイヤ「これは私がおばあ様からお聞きした話です。この話が、果たして伝承の"くねくね"と一致するのか……それはわかりません」
ダイヤ「とはいえ、最近は見られなくなったと言われていましたのに……どうして今日に限って、こんなことになってしまったのか」 ―――
―
花丸「ハァ…ゼェ……」
ダイヤー…マルー…
ダイヤ「果南さん? 鞠莉さん?」
花丸「……あれ」
果南「よかった、ちゃんと降りてきて」
ダイヤ「お二人とも、足を捻ったりは……」
果南「なんとか、両方無事だよ」
鞠莉「フフッ、だから言ったでしょう。慣れてるってね♪」
ダイヤ「はぁ……ところで、着きましたわね」
果南「うん。さっきのが嘘みたいだよ」
鞠莉「ふもとに着いたのは、マリーが全力でランしたおかげかしら?」
ダイヤ「そんなわけありませんでしょう」
果南「まあとにかく、みんな帰ってこられてよかったよ。大分遅くなっちゃったし、今日はみんな泊まっていったほうが――」 花丸「――善子ちゃんは?」
ダイヤ「え?」
鞠莉「一緒に降りてきたんじゃないの?」
ダイヤ「いや……一緒だったはずですわ。見失うはずがありません」
鞠莉「でも、現にいないじゃない。まさか足を怪我でもして、うずくまってるんじゃ?」
ダイヤ「それで気づかないはずがありませんわ。そこまで注意力に欠けていた覚えは……」
花丸「……やられたずら」
ダイヤ「花丸さん?」
花丸「結界に誘いこまれた時からおかしいと思ってた。並大抵の結界なら、その存在にマルが気付かないはずがない。気付かずに迷い込むなんてあり得ないと思ったずら」
花丸「しかも、下りてくる時のマル、いつもの倍は神経を尖らせていたずら。それでも、隣の善子ちゃんがいなくなったことに気が付かないなんて……」
花丸「ちょっと、今回の相手は……マルの手に負えないかもしれない」 鞠莉「相手……?」
果南「そういえばマル、頂上で変なことがあった時も何か言ってたよね」
花丸「二人は、知らなくてもいいことずら」
鞠莉「どうして? 力になれるなら、なんだってするわよ?」
果南「私たちには言えないこと?」
ダイヤ「……」
果南「ねえ、ダイヤも何か知ってるの?」
ダイヤ「私は、」
鞠莉「知ってるなら言って。善子が帰ってこない事と関係あるんでしょう?」 花丸「悪いけど、話している暇はないずら」ダッ
鞠莉「あっ、花丸!」
ダイヤ「どこに行くんですの!?」
花丸「そんなの決まってるっ、善子ちゃんの所ずら!」
果南「――っ」ダッ
ギュッ
花丸「きゃっ……離して!」
果南「無茶だよ、随分疲れ切ってるでしょ?」
花丸「マルの体のことなんて今はどうだっていい。善子ちゃんを助けなきゃ!」
果南「だったら説明して。それとも……そんなに私たちは頼りないかな?」
花丸「……」 鞠莉「ねえダイヤ、お願いだから言って? 今までみたいに、周りに隠そうとするのはこれで終わり」
鞠莉「私も果南も、もう気付いてるんだよ。ダイヤが……"見える"人だってこと」
ダイヤ「――っ」
ダイヤ「……単刀直入に言わせてもらいます。今この島には、俗にいう怪奇現象が起こっていますの」
鞠莉「怪奇現象……?」
果南「それに、善子が巻き込まれてるってこと?」
花丸「そうずら。だから今すぐ助けに行かないと……!」 ダイヤ「方法はありますの? "くねくね"は、霊媒師一人の力でどうこうできる相手ではありませんわ。それに……貴方はまだ半人前でしょう」
花丸(ダイヤさん……貴方はどこまで知っているの?)
花丸「……確かに、マル一人の力では到底敵わない。現状、マルが行ったところで殺されるのが関の山」
花丸「でも、マルが行かないと善子ちゃんは間違いなく帰っては来られない。善子ちゃんだけでも助けなきゃ……!」
ダイヤ「一体、何が貴方をそこまで……」
鞠莉「倒せないのなら、他に方法はない? たとえば、えっと……そう、封印するとか!」
花丸「……無い事はないずら。でも、そのためには人数が足りないの」 鞠莉「人数が必要なのね。何人?」スッ
花丸「あと二人……だけど、その中には少しでも霊感を持った人が必要ずら」
鞠莉「待っててちょうだい」プルルル
鞠莉「マリーよ。至急、人をこっちに連れてきてほしいの。人数は二人……霊感を持った人はいないかしら。え、いない? 全員に聞いてみて! とにかく二人! できれば霊感を持った人! いいわね!!」
鞠莉「……ソーリー、霊感って条件は満たせそうにないわ」
花丸(流石小原家ずら)
花丸「上手くいくかどうか分からないけど、人数が足りるのなら……一か八か、やってみる価値はある」
果南「オッケー、私たちは何をすればいいの?」
花丸(正直言って、今のままだと成功率は限りなく低い。だったらマルは、やっぱり善子ちゃんの下に一刻も早く行くべきなんじゃ……?) ダイヤ「――ルビィ」
「ピギッ」
ダイヤ「いるんでしょう? 隠れてないで、こっちへ来なさい」
ガサゴソ
ルビィ「……ごめんなさい」
果南「ルビィ!? 帰ってなかったんだ……」
ダイヤ「いつもなら叱っているところですが……助かりましたわ」
ルビィ「え?」 ダイヤ「花丸さん。霊感のある人間なら、ここにもう一人」
ルビィ「ふぇ?」
花丸「ルビィちゃんが……?」
ルビィ「えと、その……人前じゃ話さないように、お姉ちゃんに言われてるんだけど」チラッ
ダイヤ「」コクッ
ルビィ「実はルビィも、お姉ちゃんと同じで"見える"んだ」
花丸(知らなかった……ルビィちゃん、全然そんな素振り見えないから)
花丸「なら、条件は整ってるんだね」 ―――
―
善子「ズラ丸……ダイヤ……どこ行っちゃったのよぉ」
善子「ねえ、どうせ私のことからかってるんでしょ? お願いだから出てきてよ……ねぇってば!」
善子「……嘘でしょ」
善子(本当に一瞬だった)
善子(たった一度、瞬きした瞬間に……隣にいたはずの花丸とダイヤの姿が忽然と消えてしまった)
善子(さっきまで鳴り響いていた鈴虫の鳴き声は気がついたら止んでいて、聞こえてくるのは私自身の吐息と足音だけ) 善子「静かすぎて、気味が悪いわね」
善子「」ブルッ
善子(さっきまで暑いくらいだったのに、今は凄く肌寒い)
善子(まるで異世界にでも迷い込んでしまったような――)
ズルッ
善子「ひっ!」
善子「……ズラ、丸?」 ズルッ
ピチャッ
善子「何よ、誰かいるの? いるなら返事してよ!」
善子「いや……やだぁ」
クスクス
ヒヒッ
善子(笑い……声?) 善子(白い影が、こっちに近づいてきてる)
善子「ズラ丸……ズラ丸なんだよね!? よかった、本当に……」
善子「っていうか、私を置いてどっか行ってんじゃ――」
善子(ちょっと待って)
善子(この暗闇の中で、姿がはっきりと見えるなんてこと……あり得る?)
善子「やだ……やだやだ」
善子「来ないで……来ないでよぉ……」 クスクス
ヒヒヒッ
善子(白い影……人の形をしてる)
善子(生きている人であって欲しいけれど、それは多分違う)
善子(だって、余りにも不自然だもの)
善子(踊っているのか、手をぶらぶらさせて、腰の辺りがクネクネ、クネクネと揺らめいている)
善子(関節が不自然な方向に曲がっていて、とても生きている人間の動きとは思えない)
善子(何より、余りにも異質な雰囲気を放っていた) 善子(……そういえば、ダイヤが言っていた)
――くねくねを遠くから眺める程度では問題は無いが、詳細が見え、それが何者であるかを理解すると、途端に精神に異常を来たしてしまう。
――仮にその状態になってしまえば、二度と元には戻れない。
善子「あ……あぁぁ」
クネクネ
クネクネ
「ひひひっ」
善子「いやあああああああああああああっっ!!!」 ダダダッ
善子(無我夢中で階段を駆け上がった)
善子(あの白い影から逃げようと、足が悲鳴を上げているのも構わず、ただ必死に走り続けた)
善子「――え?」
クネクネ
クネクネ
善子「どうして……上にいんのよ」 善子「やだよ」
善子「怖いよ」
善子「助けてよ」
善子「助けてっ、ズラ丸――!!」
善子(返事は、返ってこなかった) ―――
―
花丸「ゼェ…ハァ…ゼェ……」
〜〜〜
ダイヤ『淡島を囲うほどの巨大な方陣を作る……そんなことが可能ですの?』
花丸『神社の力を借りることができればね』
果南『私たちは何をすればいいの?』
花丸『島を4つの点で囲んで、各所に蝋燭を立てる』ゴソゴソ…
花丸『……よかった、丁度4本あったずら』
花丸『ルビィちゃんとダイヤさんは対角線に並んでほしいずら』
ルビィ『うん、わかった』
ダイヤ『貴方はどうしますの?』
花丸『さっきも言ったけど、この方陣は神社の力が必要。マルは神社に向かうずら』
鞠莉『それはさっき果南が無茶だって言ってたでしょう!?』
花丸『でも、これ以外に方法はないんだよ』
果南『マル……』
〜〜〜
花丸「ハァッ…ゼー…ヒュー…」
花丸(暑さを通り越して、変な汗が出てきた気がする)
花丸(幸い胃に何も入ってなかったおかげで、さっき吐いた時は胃液だけで済んだみたい。暗すぎてよく見えなかったけど) 花丸「よし……こ……ちゃん……!」
――一体、何が貴方をそこまで……。
花丸「フフッ……」
花丸(確かに、傍から見れば異常だと思う)
花丸(さっきのマルの言い方は、善子ちゃんの命を助けるためなら、自らを犠牲にしたっていい……つまりはそういうこと)
花丸(そして、それは本心から出た言葉) 花丸(どうしてマルは、善子ちゃんのためにここまでしているんだろう)
花丸(そんなの、理由なんてわかりきってるよ)
花丸(――善子ちゃんが、マルを救ってくれたから)
花丸「待ってて……今、行くからね……!」
ゼーッ…ハーッ…ゼーッ…オェ……ゼー…… 花丸「つい……た」
スッ…スッ…
花丸<到着>
鞠莉<OK。火をつけるわね>
花丸<一斉にお願い、そうしないと意味がないの>
鞠莉<Be careful>
鞠莉<電話で合図はバッチリよ>
鞠莉<火はつけた。後は頼んだわ>
花丸「よし」 ゴォォォォォォォ
花丸(凄い……近づけないくらい気が流れてくる)
花丸(マルが今からすること、全部お見通しってわけずらね)
花丸「おね……がいです。善子ちゃんを、助けてください」
花丸「貴方の力が必要なんです。マル……私じゃ力不足だから」
花丸「私はどうなったって構わない。でもどうか、あの子の命だけは助けてください。お願いします……!」 ブオオオオオッ
花丸「きゃっ!」バタッ
花丸(駄目だ、私程度の霊媒師じゃ相手にされるわけがない)
花丸(そもそもマルのお寺は仏教。その血を継ぐ人間が神社のお力を借りようだなんて、無謀にも程がある)
花丸(今の強風で、足が……)
花丸(鞠莉ちゃんたちが点けた蝋燭も、あまり時間をかけると消えてしまう)
花丸(仕方ない、ずらね) 花丸「申し訳ありません……無理やりにでも、力を貸してもらいます」
花丸(マルの体を依り代に、神社の霊力を引き出して方陣をつくる)
花丸(きっとマルの体は耐えきれない。でも善子ちゃんのためなら、マルは……)
ダイヤ「――おやめなさい」
花丸「えっ」
花丸「……蝋燭は? あれは傍に人がいないと」
ダイヤ「鞠莉さんのお付きの方に代わっていただきました。安心してください、蝋燭に私の霊力を込めましたので」 花丸「まさか……」
ダイヤ「貴方程ではありませんけれど、ね。弱い霊を払うのが精一杯です」
ダイヤ「方陣は崩していません。あとは起動させるだけですわ」
花丸「ごめんなさい、私じゃ力不足で」
ダイヤ「……」
ダイヤ「私は黒澤ダイヤ。かつてこの地に人柱を立てた、黒澤龍之介の末裔です」
ダイヤ「貴方様にご迷惑をおかけしたこと、謝罪申し上げます。ですが、善子さんはこの件に関して全く関係ありません。どうか、今この島で起こっている怪奇から救ってやりたいのです。お力添えを頂けないでしょうか」 花丸(霊力が落ち着いてきたみたい)
ダイヤ「……感謝します」
ダイヤ「花丸さん、私が神社の霊力を貴方へ譲渡致します。その間に方陣を」
花丸「わかった!」
ダイヤ「……高天原に神留まり坐す。皇が親神漏岐神漏美の命以て八百万神等を――」
花丸(大祓詞……どうしてダイヤさんが?)
花丸(ううん、考えてる暇はない。方陣を起動させないと)
ダイヤ「豊葦原瑞穂国を安国と平けく知食せと事依さし奉りき」 花丸「……え?」
花丸(何かが、這い上がってくるような気配がする)
オオオオオオ…
花丸(この気……一つじゃない。もっと、もっと、たくさんの)
花丸(禍々しい気配ずら)
オオオオアアアアアァァァァァ…
ヒヒヒヒッアヒャヒャヒャヒャシャ…
花丸「あ……あぁ……」 ダイヤ「花丸さん! お気を確かに!!」
花丸(こんなの無理だよ。封印なんてできるわけがない)
花丸(だって今マルたちが対峙しようとしているのは、生き埋めにされた人々だけじゃない)
花丸(災害で亡くなった……数多の怨嗟の集合体)
ダイヤ(花丸さんの気が乱れ始めた。このままでは……!)
ダイヤ「――っ」ドクンッ 花丸「善子ちゃん……ごめん」ガクッ
花丸(マル、善子ちゃんを救ってあげられないかもしれない)
花丸「ヒグッ…グスッ…」
「――国木田家の者か」
花丸「……え?」
ダイヤ「この方陣は主がつくったのだろう。丁度いい、借り受けるぞ」
花丸「ダイヤさん……? いや」
花丸「貴方は、誰ですか?」 ダイヤ「説明している暇は無い。事は急を要する」
ダイヤ「――地脈に巣食う負の力よ。大地の精霊に代わり、地への帰還を命ずる」
花丸「な……!?」
オオオオアアアアアアアアアアアアアア
花丸(人の形をした、数えきれないほどの"影"が、ダイヤさんの元へ向かっている)
花丸(呪文を唱えるのを阻止しようとしてるんだ)
ダイヤ「巣魔、封印」 ギャアアアアアアアアアアアアアアッッッ
花丸(禍々しい気の全てが、本殿に吸収されていく)
シュウウウウウ…
花丸「終わった……の?」
ダイヤ「いや、一時的に封印しただけだ。巣魔は完全に消し去ることはできん」
花丸「"巣魔"って……?」
ダイヤ「この機会に覚えておくといい。お主もこの先何度か相見えるはずだ」
ダイヤ「巣魔とは、地脈の乱れによって現れる怪奇現象。かつて我々黒澤家がこの地に人柱を埋めたことが災いし、淡島は巣魔が定期的に現れるようになってしまったのだ」 花丸「待ってください。善子ちゃんを襲ったのは"くねくね"ですよね?」
ダイヤ「久しく聞いた名前だ。なるほど、確かに似たような気配が残っている」
ダイヤ「だが、それがこの地に現れたのも巣魔の影響とみて間違いないだろう」
ダイヤ「しかし、周期が早すぎる。なぜこんなにも早く巣魔が目覚めたのか……」 ダイヤ「……その女子は、主の友人か」
花丸「――あ」
善子「スー…スー…」
花丸「あ……あ……」
花丸「善子ちゃんっ!!」ダッ
花丸「善子ちゃんっ、善子ちゃんっ!!」
善子「んー、うるさいっ……ムニャムニャ」
花丸「寝てるだけ、か」
花丸「よかった……本当に良かったよぉ……」グスッ ダイヤ「――気を付けたほうがいい」
花丸「え?」
ダイヤ「そやつは、神山の血を引いている」
花丸(神山って……数百年前に途絶えたはずじゃ?)
ダイヤ「多くの呪縛が見える。その歳まで逃げおおせているのが不思議な程だ」
ダイヤ「お主、長生きしたければその者から離れた方が賢明だぞ」
花丸「離れるだなんて、そんなことっ――」 ダイヤ「」フラッ
花丸「えっ、ちょ……!」ダキッ
ダイヤ「うーん……あら? ここは……」
花丸「ダイヤさん、だね」
ダイヤ「ええ、当然ではありませんか」
花丸(なんだったんだろう、さっきの) ―――
―
果南「ねえ、さっきからジャラジャラしてるのって、善子?」
善子「そうみたい。今まではこんなことなかったんだけど」
鞠莉「ネックレス、ではないみたいね」
善子「……」スッ
ルビィ「巾着袋?」
花丸「それ、マルがあげた……」 善子「ごめん、壊しちゃったみたい」
花丸「ちょっと借りるね」スッ
花丸(マルの霊力を込めた石が、砕けてる)
花丸「善子ちゃん、一体何があったずら」
花丸(これが効力を失うってことは、相当の事があったはず)
善子「多分、見ちゃったんだと思う」
ダイヤ「――まさか」
善子「うん……くねくねを」 善子「まあ、今もこうしてピンピンしてるしね。何も問題ないわ」
花丸「……そっか。よかった」
ルビィ「くねくねって何?」
ダイヤ「見た者の知能に障害を及ぼす、恐ろしい妖怪ですわ」
ルビィ「ピギッ」
果南「妖怪……」ブルッ
鞠莉「あら? 果南ってば、そういう類の話は苦手なのかしら」クスッ
果南「ま、鞠莉だって怖がってたじゃん!!」
アハハハ… ルビィ「そういえば、その巾着袋って花丸ちゃんが作ったんだよね?」
善子「そ、そうみたいね」
ルビィ「じゃあ、花丸ちゃんが善子ちゃんを守ってくれたのかも!」
花丸「ずら?」
善子「ふぇっ」
ダイヤ「その通りですわ。もしも本当にくねくねの姿を見て無事でいられたのだとしたら、そのお守りが効力を発揮したに違いありません」
果南「感謝しないとね、花丸に」
鞠莉「そうよ〜、ずーっと肌身離さず持ってたんだし♪」
善子「うっ、うるさいわね!!///」 善子「あ……ありがと」
花丸「どういたしまして、ずら」
花丸(感謝しなきゃなのはマルの方だよ)
花丸(善子ちゃんが信じてくれたおかげで、私は善子ちゃんを助けることができたんだ)
花丸(マルを信じてくれて、ありがとう) 果南「それにしても、さっきのはちょっとヤバかったね」
鞠莉「蝋燭が消えた時のでしょう? 実はマリーも寒気が止まらなくて」
ルビィ「黒い何かが、たくさん山の頂上に登って行ったように見えたような」
善子「やめてよ、私が一番怖かったんだからね」
ダイヤ「ともあれ、皆無事で本当によかったですわ。私は途中から覚えていないのですが……花丸さん、何か知っています?」
花丸「――ううん、なにも」
ダイヤ「そうですか……」
――そやつは、神山の血を引いている。
――お主、長生きしたければその者から離れた方が賢明だぞ。
花丸(神山家、か。詳しく調べる必要がありそうずらね) ダイヤさん推しの俺には最高の章だ
ダイまるコンビかっけえ ゴトンゴトン…
善子(――ここ、どこかしら)
「本日は、ご利用ありがとうございます。この電車は……」
善子(電車? これからどこかに行く予定なんてあったっけ)
ガタン…ゴトン…
「次は、しnあぐ#$あああhががが&むあ"あ"あ"あ"あ"」
善子「」ビクッ
バツンッ
善子「え、ちょ……」
善子(電気、消えちゃったんだけど) 「おおおヴヴァアアアあああああ……――次は活けづくり〜、活けづくりです」
善子「……は?」
善子(活けづくりって魚をさばいたりするやつよね。意味わかんない、どこに向かってんのよ、この電車……)
ギャアアアアアアアアアアアアアアッッッ
善子「ひっ」
善子(急に後ろから悲鳴が……)クルッ 善子「あ……ああ……」
ブシュッ
「活けづくり〜、活けづくりです」
グサッ…ザクッ…グチュッ…
「たっ、たすけでででええええええ"え"え"え"グェ――」
ゴロンッ
善子「きゃあっ!!」
善子(これ、人の頭……!!) 善子(早く……逃げ、なきゃ……!!)
「」クルッ
善子(こっち、向いた……猿?)
善子(私じゃない、見ているのは……前の人)
善子(髪が長くて、美人っぽいけど。すごく顔色が悪い)
善子(っていうか、目の前でこんな事が起きてるのに、どうして表情一つ変わってないの……!?)
善子(――ああっ、もう!) 善子「あ、あのっ!」
女性「……」
善子「逃げましょう! 一緒に、ここから!!」
女性「……」スッ
善子「早く、向こうに扉が――」
ピンポンパンポーン
「次はえぐり出し〜、えぐり出しです」
女性「」スタスタ
善子「えっ……待って!」ダッ
善子「あ……」
善子(体が、動かない) 「いやあああああああああああああっっっ!!」
グチュッ…グチャッ…
善子「ぐ……ぁ……」ブルブル
「」クルッ
善子(猿と私の目が合った)
善子(次は……私の番ってこと?)
善子(やだ……やだやだやだやだ)
善子(いや、死にたくない死にたくない死にたくない)
善子(誰か助けてっ……ズラ丸……!) 「次は挽肉〜、挽肉です」
善子「」スタスタ
善子(体が勝手に……!)
ブゥンブゥン…
善子(これ、精肉機? ちょ、待ってよ……こんなの近づけたら……!)
キュ゙イィィィィィィン
善子(いや……来ないで!!)
善子(夢なら早く覚めてぇぇぇぇぇぇっ!!!) ―――
―
善子「――っ」ガバッ
善子「ハァ…ハァ…ハァ……」
善子「……夢?」 善子(とりあえず、ズラ丸に相談しておこうかしら)
善子(教室にいなかったってことは図書室かな)スタスタ
善子(見つけた)
花丸「ブツブツ……」
花丸「神山家は200年前に途絶えた……はず」
善子(辞書? いや、百科事典ね。特別珍しい光景でもないか) 善子「ねえ……ズラ丸」
花丸「わっ」ババッ
花丸「どうしたの、善子ちゃん」
善子「……ううん、やっぱ何でもないわ」
善子(なんか大変そうだし、今すぐに相談しなくてもいいかな) 花丸「ホントに? 顔色悪いけど、何かあったんじゃ……」
善子「フッ、この程度の不幸、このヨハネにはどうってことないわよ」
花丸「……そっか」
善子「ところで、さっきから何読んでんの? 随分古そうな本だけど」
花丸「んー……内緒」
善子「教えなさいよ」
花丸「まだ全部読んでないもん」
善子「まあいいけど。面白いの?」
花丸「面白くは、ないかな」
善子「だったら読まなきゃいいのに」
花丸「そういうわけにもいかないずら」
善子「そ」 善子「ほら、部活行くわよ」
花丸「……あのね、善子ちゃん」
善子「ヨハネよ。なに?」
花丸「今日の練習、マルは見学するんだ」
善子「え?」
花丸「ちょっと、足くじいちゃって」
善子「見せなさい」
花丸「ずら……」
善子「包帯は巻いてるんだ……少し腫れてるみたいね。病院には行ったの?」
花丸「ううん。でも今朝保健室に行って、骨に異常は無さそうだって言われたずら」
善子「そう……」 善子「ねえ……ズラ丸」
花丸「わっ」ババッ
花丸「どうしたの、善子ちゃん」
善子「……ううん、やっぱ何でもないわ」
善子(なんか大変そうだし、今すぐに相談しなくてもいいかな)
花丸「ホントに? 顔色悪いけど、何かあったんじゃ……」
善子「フッ、この程度の不幸、このヨハネにはどうってことないわよ」
花丸「……そっか」 ―――
―
ワンッ…ツー…スリー…
果南「今日はここまで。みんな、練習後のストレッチは入念に」
鞠莉「体にダメージが残ったら元も子もないからね」
花丸「うぅ……ごめんなさい」
鞠莉「花丸♪ 早く治るように、よく食べてよくスリープよ」ニコッ
ルビィ「花丸ちゃん! よく食べルビィ!」
千歌「おおっ、新しいルビィ語ができたんだね!」
曜「ルビィ語って……」
梨子「あはは……語尾に"る"が付いてるだけで、全部ルビィ語になっちゃうね」 ダイヤ「……」
ダイヤ「善子さん」ヒソ
善子「何?」
ダイヤ「ちょっと、来ていただけます?」
善子「別にいいけど」 ―――
―
ダイヤ「花丸さんの件ですが」
善子「ズラ丸がどうかしたの?」
ダイヤ「あの怪我のこと、何か知ってます?」
善子「ううん、私は知らない。だってあいつ、何も言おうとしないんだもん」
ダイヤ「なるほど……花丸さんの意志を尊重するべきでしょうか」
善子「え?」
ダイヤ「……いえ、善子さんは知っておくべきですわね」
善子「何のことよ。私にはさっぱり――」
ダイヤ「花丸さんの怪我は、先日の神社で負ったものです」 善子「……」
ダイヤ「あら、あまり驚かないんですのね」
善子「なんとなく、そうだろうなって」
ダイヤ「花丸さんは、きっと貴方のためならば何だってするでしょう」
ダイヤ「ですが……先日の彼女は、明らかに無理をしていた。自分の命など平気で差し出してしまう程に」
ダイヤ「その意味がわかりますか?」
善子「……ええ」
ダイヤ「これまで貴方は、自分に降りかかる怪奇現象を全て花丸さんに解決してもらっていた」
ダイヤ「それは決して間違っているわけではありません。事実、花丸さんがいなければ貴方は無事ではいられなかったはず。貴方自身に霊を払う力は無いのですから」
ダイヤ「けれど今のままでは、いずれ破綻する時がくる」
ダイヤ「花丸さんを頼るなとは言いません。ただ、時には他の人間に頼ることも必要かと」 ―――
―
善子「……」
善子(昨夜の変な夢が気になって眠れない)
善子(ちょっと、調べてみよう)
善子「」カタカタ
『悪夢 電車』
善子「……え」
『猿夢』
『某匿名掲示板で有名な都市伝説』
『気がつくと自分は電車の中にいる。周囲には数人の乗客がおり、性別や年齢はバラバラだが、唯一共通しているのはその死人のような表情』
『自分はその中で3番目に並んでいる』
『車内アナウンスが流れる度、前の人間が独特の方法で殺されていく』
『夢を見る度自分の順番は繰り上がっていき、3度目には確実に自分も殺される』
『夢の中で死ぬと、現実の自分も死んでしまう』
『尚、猿夢の存在を知った人間は、近々必ず猿夢を見ることになる』 善子「現実の自分も、死ぬ?」
善子「嘘でしょ……」ガクガク
善子「そうだ、ズラ丸に――」
――先日の彼女は、明らかに無理をしていた。自分の命など平気で差し出してしまう程に。
善子「……」 ―――
―
ピンポーン
曜「……誰だろ、こんな時間に」
曜(参ったなぁ、お母さん今週は出張でいないんだよね)
曜(勧誘だったら、その事伝えて帰ってもらおう)
ピッ
曜「はーい」
『……あの、夜分遅くに申し訳ありません』
曜「あれ、この声って……善子ちゃんだよね」
『曜?』
曜「どうしたのさ、こんな夜遅くに」
『ごめんなさい』
曜「えと、とりあえず上がって?」 ガチャ
善子「 」
曜「珍しいじゃん、善子ちゃんがウチに来るなんて」
善子「そうね」
曜(ヨハネが返ってこない)
曜「何か、あった?」
善子「……」
善子「どうしよう」ウルッ
曜「へ?」
善子「私……眠れなくなっちゃった」
曜「 」
曜(幼児化?) ―――
―
曜「えと、つまり……怖い夢を見るから眠りたくないと」
善子「なんかすっごい語弊を生んでる気がするんだけど」
曜「でも事情は言えないんでしょ?」
善子「」コクッ
曜「うーん……どうしよっか」
善子「グスン…」ウルウル
曜(うわぁ、こんな善子ちゃん初めて見た)
曜(いつもの強気な態度と正反対で、正直対応に困る) 曜「よしわかった! 今日は私と一緒に寝ようよ」ニコッ
善子「……」フルフル
曜「え、だめ?」
善子「違うの。寝たら死んじゃう……」
曜「大丈夫だって、悪い夢で死ぬなんてそんな馬鹿なこと――」
善子「――ホントなんだからっ!!」
曜「っ」
善子「ホントに……ホントに死んじゃうんだからぁ……」
曜(この剣幕、本気で言ってるんだ)
曜(ついこの間も、善子ちゃんちで変な事があったばかりだし) 曜「……わかった、信じるよ」
善子「グス……ホント?」
曜「ホントだって。この渡辺曜に任せなさい!」
善子「」コクッ
善子「ふぇぇ……」ウルウル
曜「よしよし」ギュー
曜(もう0時過ぎてるし、大分眠くなってきちゃったよ)
曜(いつもならもう寝てるけど)
曜「じゃあ、トランプでもする?」
善子「ええ……そうね」
曜(仕方ない、善子ちゃんのために今日はオールだね) ―――
―
曜「 」コクッ…コクッ…
千歌「よーちゃーん……よーちゃーん……!」ヒソヒソ
教師「……」カリカリ
梨子(あちゃー)
教師「この問題、そこの寝てる奴」
曜「ふぇ?」パチッ
教師「お前だ、渡辺!」
曜「ははふぁいっ!」ガタッ
教師「この問題、前に出て解け」
曜「は、はぁ」
スタスタ
曜「うーんと……わからないです」
教師「分からないなら寝るな」
曜「ごめんなさい……」シュン ―――
―
曜「ふわぁ」
千歌「おっきなあくびだね、よーちゃん」
梨子「昨日は眠れなかったの?」
曜「うん、ちょっと寝不足で……」
千歌「よーちゃんが寝不足なんて珍しいねー」
曜「実は昨日、善子ちゃんがうちに来て」
千歌「えぇ!?」
梨子「あの善子ちゃんが?」
曜「それで、怖い夢を見るから眠りたくないって」
千歌「わあ……そんな小学生みたいな……」
梨子「らしくないっていうか、そんな可愛らしい面もあったんだね」
曜「それがね、ただ事じゃなさそうなんだよ」
曜「ほら、ついこないだ善子ちゃんちで変な事があったでしょ?」
曜「善子ちゃん繋がりで、また何かあったのかもしれないって……まあ勝手に私が想像してるだけなんだけど」
梨子「でも、考えられないことじゃないと思う。善子ちゃんが怖い夢のせいで眠れないなんて、どう考えても不自然だもん」 千歌「……よし、決めた」
曜「千歌ちゃん?」
千歌「私も協力する!」
曜「協力って、何するのさ」
千歌「そんなの決まってるよ、チカもよーちゃんちにお泊りして、善子ちゃんの手助けをするのだ!」
梨子「手助け? もしかして、善子ちゃんが眠らないように?」
千歌「その通り!」
梨子「無理よ、眠らないなんてできるわけないでしょ?」
千歌「うぅ……できる限りだよ」
千歌「だって、今日のよーちゃん一日中眠そうだったし。せめて何人かで役割分担くらいはしないと」
梨子「それ、私も入ってる?」
千歌「そーだよ!」ニコニコ
梨子「えぇ……まあ、いいけど」
梨子(そんなにうまくいくとは思えないなぁ) ―――
―
善子「……」コクッ…コクッ…
千歌「」ツネッ
善子「いった! お、起きてるわよ」
千歌「エヘヘ、さっきチカの太ももつねった仕返しなのだ♪」
梨子「言い出しっぺの千歌ちゃんが真っ先に寝るなんて、どうかと思うけど」
曜「スー…スー…」
千歌「よーちゃん、すぐに寝ちゃったね」
梨子「オールした後だもん、ゆっくり休ませてあげよ?」
善子「悪かったわね、曜……」 善子「 」コクッ…コクッ…
梨子「善子ちゃん?」
善子「ふぁ……寝てないんだから」
梨子「無理しないで、休んだ方がいいんじゃないかしら」
千歌「二日連続で徹夜はいくら何でも身体に悪いよ」
善子「分かってる……」
千歌「――そうだ、いいこと思いついた!」
梨子「?」
千歌「善子ちゃんが寝ている間にうなされてたら、チカたちが起こしてあげる。それならどうかな」
梨子「確かに、悪夢も途中で覚めれば大丈夫かも」
善子「あ……うん」ウトウト
善子「それなら……安心、ね」
善子「 」グラッ
梨子「わわっ」ダキ
千歌「善子ちゃん、相当無理してたんだね」
梨子「ここまでしなきゃいけないくらい怖い悪夢って、一体……」 千歌「ふわぁ……」
梨子「」ジー
千歌「わわっ、眠くなんてないもん」
梨子「クスクス……眠ってていいよ。私、今日は起きていられるから」
千歌「そう?」
千歌「じゃあ、お言葉に甘えて」ゴロッ
千歌「おやすみ……3時になったら、交代……ね」
梨子「はーい」 〜〜〜
1時間後
梨子「 」ポチポチ
『悪夢 眠れない』
『悪夢 死ぬ』
梨子(うーん、それっぽいのは出てこないなあ)
梨子(精神的な疾患を抱えてるとか、そんなのばっかり)
梨子(善子ちゃん、何かに悩んでるのかな) ウーン…
梨子「え?」
善子「あ……ぅ」
梨子(善子ちゃん、もしかして)
梨子(うなされてる?)
善子「あぐ……いや……いやぁ」
善子「いやだ……いやだぁ」
梨子(間違いない)
梨子「善子ちゃん」バッ
梨子「善子ちゃん、善子ちゃんっ」ユサユサ
善子「 」
梨子「起きて、起きて善子ちゃん!」ユサユサ
善子「ぅ……ぐ」
梨子「嘘……なんで? どうして起きてくれないの?」 曜「うーん……なぁにぃ」
梨子「曜ちゃんっ!!」
曜「ふぇ?」
梨子「善子ちゃんが……!」
曜「――っ」
曜「千歌ちゃん! 起きて!!」
千歌「ん……ぅ……?」
善子「ぁ……猿……が」
梨子(猿?) ―――
―
ピンポンパンポーン
「次はえぐり出し〜、えぐり出しです」
「いやあああああああああああああっっっ!!」
グチュッ…グチャッ…
善子「なんで……どうして」フラッ
ガタンッゴトンッ…
善子(長髪の女性の周りに1メートルくらいの猿たちが集まって、スプーンで目玉を抉り出している)
善子(しかもこの電車……この間違いない、猿夢だ)
「」クルッ
善子(猿がこちらを向いた)
善子(次は……私の番) ピンポンパンポーン
「次は挽肉〜、挽肉です」
善子「」スタスタ
善子(体が勝手に動いて、私は猿たちの目の前まで歩いていく)
ギイィィィィィィン
善子(精肉機の機械を持った猿たちが、ゆっくりと刃を近づけてくる)
善子(……いやだ)
善子(いやだ、いやだ、いやだいやだいやだいやだ)
善子(死にたくないっっ!!)
ウィィィィィィン
善子(両腕の指先を、精肉機が飲み込んでいく)
グチャグチュギュルルルルルル
善子「いやあああああああああああああああああああああっっっ!!!」
善子「痛い痛いいたい"いだいい"だいよお"お"お"お"ぉぉぉぉぉ!!」
善子(――早くっ、早く覚めてぇっっっ!!) ―――
―
善子「――っ」ガバッ
善子「ゼェ…ハァ……ハァ……」
千歌「善子ちゃん」
善子「……千歌」
曜「 」
梨子「 」
善子「二人とも……」
善子(何? みんな顔色が悪い)
善子(まるで、気味の悪いものでも見たかのような――) ズキズキッ
善子「いつっ!」
善子「――え?」
善子「なに……なんなのよ、これ」
千歌「わかんないよ……チカ、一体何が起きたのか」
千歌「全然わかんないっ!!」
曜「千歌ちゃん、落ち着いて……ね?」
梨子「 」
善子「ねえ、梨子」
梨子「ひっ」
善子「何が起きたの? これ、貴方たちのいたずらじゃ……ないのよね?」 梨子「……善子ちゃんが、うなされはじめて」
梨子「私が起こそうとしても、全然起きなくて……そしたら」
梨子「急に善子ちゃんが、『痛い、痛い』って叫び始めて」
梨子「善子ちゃんの服の袖が……真っ赤に染まっていって……!」
千歌「うぅ……」ガクガク
曜「善子ちゃんの袖を捲ったけど、間違いなくそれは善子ちゃんの血だった」
曜「一体、何が起きたのか、私たちにもさっぱり……」
善子「――見ちゃったの」
曜「え?」
善子「見ちゃった……二回目」ウルッ
善子「次は私……死んじゃうよぉ……」ポロポロ ―――
―
花丸「……」ペラッ
花丸(もしも、本当に善子ちゃんが神山家の血を継いでいるとしたら)
花丸(かつて神山家に起こった事実を紐解いていくことで、善子ちゃんの憑かれ体質を解消するためのヒントが見つかるかもしれない)
花丸「……この記事は」 "神山一家惨殺事件"
『沼津市○○で起きたあの事件から、今日で十年が経った』
『沼津警察は未だ真相を掴むことができていない』
『当時の状況を、第一発見者であるA氏はこう語る』
『――呪われたに違いない……そう思いました』
『あの時の神山家は、網元の黒澤家と並んで内浦を牛耳る立場。つまりは最盛期でした』
『そんな一族が、たった一晩で壊滅したのですから』
『彼らを恨む人間はたくさんいたと思います。神山家は、黒澤家の反対勢力を全て潰していたんです。時には、あまりにも残虐な方法で』
『沼津全体のことを考えれば、仕方なかった事とはいえ――』 花丸(呪い、か)
ダイヤ「呪い……ですか」
花丸「へ?」
花丸「わぁっ!」バタバタ
ダイヤ「何を驚いているんですの?」
花丸「何って……どうしてこんなところにいるの? こんな朝早くから」
ダイヤ「借りた本を返しに来たのです」
花丸「お昼休みでもいいのに」
ダイヤ「……花丸さんの気配を感じたから、という理由もありますわね」
花丸(気配? マルに会いに来たってことかな) ダイヤ「ところでそれは……沼津市の記事をまとめたものですわね」
ダイヤ「見聞が広いようで何よりですわ」
花丸「あ、ありがとうずら」
ダイヤ「 知りすぎて 自らの身を 滅ぼさぬように 」
花丸「 え?」
ダイヤ「どうか、気をつけてくださいね」
花丸「それってどういう……」
ダイヤ「」スタスタ
花丸(ダイヤさん……だったよね) ―――
―
―教室―
ガラッ
ルビィ「おはよう、花丸ちゃん」
花丸「おはよー」
花丸「」キョロキョロ
ルビィ「善子ちゃんならまだ来てないけど」
花丸「そう……」
花丸(昨日善子ちゃんと会った時、変な瘴気を感じたから……マルのお守りを渡そうと思ったんだけど) ―――
―
―屋上―
果南「……千歌」
千歌「なあに、果南ちゃん」ニコッ
果南「何かあった?」
千歌「……」
果南「いつもと比べて全然元気ないじゃん」
千歌「そんなこと、ないよ」
果南「ふーん」 鞠莉「梨子、曜。貴方達もアンナチュラルよ」
曜「あー……そうかな」
ルビィ「――善子ちゃんが休んでるのと、何か関係があるの?」
梨子「」ビクッ
千歌「それは、えと」
ルビィ「関係あるんだね」
千歌「……うん」 花丸「話すずら」
花丸「早く」
ダイヤ「花丸さん……」
花丸「手遅れになる前にッッッ!!!!!」
千歌「あ……ぅ……」
曜「――わかった、話すよ」
梨子「曜ちゃん……!」
曜「どっちにしろ、今のままだと」
曜「善子ちゃんだけじゃない……私たち3人も、死んじゃうんだから」 花丸「し……ぬ……?」
果南「な、何言ってんのさ。曜たちが死ぬ? 意味わかんないよ」
鞠莉「ジョークにしてはタチが悪いわ」
曜「冗談じゃないからね」
梨子「――曜ちゃんっ!!」
梨子「……みんなを巻き込むつもり?」
曜「私だって、本当はイヤだよ」
曜「でも」
曜「死なない方法を探す手掛かりは、どこにもない」
曜「もう頼れるのは……Aqoursのみんなだけなんだよ」ポロポロ 梨子「曜ちゃん……うぅ……」グスッ
千歌「チカ、死にたくないよぉ……よーちゃん、梨子ちゃん……」ウルウル
花丸「 何があったのか 話すずら」
千歌「グスッ……うん」コク
千歌「夢を、見ちゃったの」
梨子「善子ちゃんが見たっていう怖い夢が、どうしても気になって」
梨子「夢を見ている途中に、善子ちゃん……"猿"って呟いたんだ」
曜「それで、ネットで調べてみたらさ」 ルビィ「猿……?」
花丸( 『夢』 『猿』 )
花丸(まさか)
花丸「……電車?」
曜「」コクッ
ダイヤ「成程」
ダイヤ「曜さん、千歌さんも梨子さんも、それ以上話してはなりませんわ」
ダイヤ「みなさん、今の話は全て忘れてください」 ルビィ「ぅゅ……」
果南「忘れろって……千歌たちがこんなに苦しんでるのに、今更……?」
ダイヤ「――死にたいんですの?」
果南「 」ゾクッ
花丸「気になって調べるのも絶対にダメ。この話を思い出すのも禁止ずら」
鞠莉「オーケー、全部ダイヤと花丸に任せていいのね」
果南「鞠莉」
鞠莉「今までもずっとそうしてきた。今回も同じ……でしょ?」
果南「…………わかった」 ―――
―
―部室―
ガチャッ
ダイヤ「……他の皆さんは、一足早く帰りました」
花丸「うん、ありがとう。千歌ちゃんたちは?」
ダイヤ「曜さんの家に泊まるそうですわ。曜さんのご家族は、今週一杯留守にしているとのことで」
花丸(確かに、家族に感づかれたらマズいからね)
花丸「あの……ダイヤさん、ひとつお願いしてもいいかな」
ダイヤ「ええ」
花丸「千歌ちゃんたちの傍にいてあげて欲しいずら」
ダイヤ「……猿夢に対抗する術など、私は持ち合わせておりません」
花丸「それでもいいの。きっとダイヤさんがいれば心強いから」
ダイヤ「貴方はどうするんですの?」
花丸「善子ちゃんの所へ行ってくるよ」 ダイヤ「……花丸さん、猿夢を見たことはありますか?」
花丸「ないけど」
ダイヤ「なぜ、千歌さんたちと同じように猿夢の存在を知っている私たちが、猿夢を見ないのか」
ダイヤ「……いや」
ダイヤ「――なぜ、あの空間に呼ばれないのか」
花丸「……」
ダイヤ「単純な話ですわ。私たちのようにある程度霊力を操ることのできる人間ならば、猿夢に飲まれることはない」
ダイヤ「ですが、裏を返せば」
ダイヤ「私たちは、決してあの空間に足を踏み入れることができないということです」 花丸「……何が言いたいの?」
ダイヤ「つまり」
ダイヤ「今回ばかりは、どうしようもないと。そう言っているのですわ」
花丸「そんなの、やってみなきゃ……」
ダイヤ「これ以上犠牲者を増やすつもりですか?」
ダイヤ「今回だけで3人。これまでの全てを含めると、一体どれだけの人数になることか」
ダイヤ「まだまだ増え続けることでしょう。彼女に降りかかる怪異は、時が経つにつれて段々と大きくなっていく」
ダイヤ「それは、貴方も実感しているはずですわ」
花丸「……」 ダイヤ「これまで貴方は、ずっと彼女を守ってきた」
ダイヤ「ですがその代わりに、多くの人々が犠牲となったかもしれない」
花丸「……うるさい」
ダイヤ「善子さんを守ることで 多くの人々が 犠牲になる」
ダイヤ「 津島善子がいなければ 誰も 傷つかない 」
ダイヤ「 津島善子は 災いを呼び寄せる 悪魔だ 」
ダイヤ「 つまり 」
ダイヤ「 津島善子は 死ぬべき 人間だ 」
花丸「――黙れっっっ!!!!!!!!!!」 花丸「ハァ…ハァ……」
花丸「黒澤……龍之介さん、ずらね」
ダイヤ「 」
花丸「お前の言う通りに動いてたまるか」
花丸「私が守りたいのは、他の誰でもない……善子ちゃんずら」
ダイヤ「 」
ダイヤ「 愚かな 」
ダイヤ「」フラッ
花丸「くっ……!」ダキッ
ダイヤ「う……ん……」
ダイヤ「あれ? 他の皆さんは?」
花丸「さっき帰ったずら」
ダイヤ「そうでしたか……ごめんなさい」
ダイヤ「私ったら、少し眠っていたみたいですわ」 ―――
―
ピンポーン
『はい』
花丸「あ、国木田です。善子ちゃんと同じクラスの」
『……入って』 ―――
―
ガチャッ
津島母「いらっしゃい」
花丸「あ、どうも」
花丸(少し、顔色悪い……?)
津島母「善子に会いに来てくれたんだろうけど……ごめんね」
津島母「あの子ったら、昨日からずっと部屋に引きこもっちゃってるの」
花丸「あの、何か聞いてませんか? 変な夢を見たとか」
津島母「夢? さあ……あの子、何も話してくれなくて」
花丸(よかった……)
花丸「あの」
花丸「善子ちゃんと話をさせてください」
津島母「……うん、いいわよ」
津島母「でもあの子、今はまるで別人みたいで……びっくりさせちゃうかも」
花丸「構いません」 ―――
―
コンコン
花丸「善子ちゃん」
花丸「マルだよ。花丸だよ」
花丸「 」
花丸「助けにきた、ずら」
花丸「 」
花丸「絶対助ける。今までずっとそうしてきたずら」
花丸「 」
花丸「信じてくれないの?」
善子「信じてる」
花丸「……ほんと?」
善子「信じてないわけない。私はズラ丸に、何度も何度も助けられた」
善子「貴方が傍にいれば、きっと大丈夫……そう思ってる」 花丸「なら、開けてよ」
善子「無理」
花丸「どうして?」
善子「私は――悪魔だから」
花丸「……誰に言われたずら」
善子「誰に言われなくたって、もう分かってるのよ」
善子「私は悪魔。存在しているだけで周囲の人間を傷つける」
善子「ズラ丸、貴方もそう」
花丸「マルは傷ついてなんか……」
善子「強がらなくていい。昔から貴方はそうだった」
善子「私のために戦って、その度に傷ついて」
善子「そのくせ、いつも笑ってる」
善子「私は、そんな貴方が……」 グスッ
善子「フッ……フフッ」
善子「ヨハネの存在が周囲に不幸をばらまくのなら、存在自体消えてしまえばいい」
善子「それで全てが丸く収まる」
善子「もう 誰も傷つかない」
善子「誰も傷つけないで済む だから」
善子「だからね」
善子「もう……いいのよ」
花丸「 」
花丸「 」
花丸「」
花丸「ふざけないでよ」
花丸「何もよくないずらッッッ!!!!!」
善子「ズラ丸にはわかんないわよ!!!!!!私の気持ちなんてッッッ!!!!!!!」
花丸「――っ」 善子「う……ぅ……」
花丸「……ねえ、善子ちゃん」
花丸「覚えてるかな」
花丸「幼稚園の頃の話」
花丸「小さい時のマルは、他の人には見えないものが自分には見えるってことが、なんだか嬉しくて」
花丸「でも、ちょっぴり寂しくて」
花丸「友達みんなに、幽霊はいるんだよーって、いつも話してた」
花丸「善子ちゃんも、マルの話を真剣に聞いてくれた」
花丸「今思えば、善子ちゃんだけ違うベクトルで頷いていたような気もするけど……えへへ」
花丸「きっと善子ちゃん、その時から幽霊が見えてたんだよね」
花丸「同じものを見てるんだってわかって、マルすっごく嬉しかったんだよ」
花丸「それだけなら、別によかったんだけど」 花丸「マル、調子に乗って、除霊の真似事をして……幽霊を怒らせてしまった」
花丸「そのせいで友達が熱を出して、倒れて」
花丸「すぐに保健室に運ばれて、救急車を呼ぶか呼ばないかの騒ぎになって」
花丸「でもマルには幽霊が悪さをしてるって見えてたから、必死に先生を説得しようとしたけど、全然相手にされなくて」
花丸「しまいには先生に怒られちゃった」
花丸「その時……善子ちゃん、マルのこと庇ってくれたよね」
――花丸は嘘つきなんかじゃない!!
花丸「結局、マルのおじいちゃんがたまたま迎えにきて、その幽霊を払って……熱を出した子はすぐに元気になった」
花丸「お寺に帰ったら、すごく怒られちゃったけどね」 花丸「次の日から マルは いじめられるようになった」
――やーい、化物―!
――花丸の近くにいると呪われるぞー!
――あっちいけ、化物!!
花丸「先生は、前日の件でマルのことを信用してくれなくなって、いじめのことを言っても相手してくれなかった」
花丸「どうしようもなくて」
花丸「マルは、我慢するしかなかった」
花丸「そんな時 善子ちゃんは 」
――やめてよっ!!!!
――花丸はあの子を助けたんだから!! 何も悪い事なんてしてないんだからっっっ!!!
――だからっ……花丸に謝ってっ!!!!
花丸「善子ちゃんはさ。マルに助けられてばっかりだって思ってるかもだけど」
花丸「善子ちゃんは 私を助けてくれたんだよ」
花丸「一人ぼっちで、逃げ場なんて無かったマルを……救ってくれたんだよ」 花丸「 」
花丸「開けて」
ガチャッ
ギィ…
花丸「善子ちゃん」
善子「 」ポロポロ
善子「花……丸……」
善子「私……どうすれば」
善子「どうすれば……いいのよ……」 ギュウッ…
善子「 」
花丸「生きて」
花丸「マルは、善子ちゃんに生きてほしいずら」
善子「あ ぁ 」
花丸「そのためなら、何度だって助けてあげる」
善子「 」
善子「死にたくない」
善子「死にたく……ないよっ……」
善子「助けて……花丸……!」
花丸「遅い、ずら」ポロポロ
板復帰(NG!:Gather .dat file OK:NOT moving DAT 708 -> 708:Get subject.txt OK:Check subject.txt 708 -> 708:fukki NG!)1.36, 1.27, 1.19
sage Maybe not broken ―――
―
善子「ホントは怖いの」
善子「いつかみんな、私の前からいなくなっちゃうんじゃないかって」
善子「みんな私のことを怖がって、疎ましがって……離れていってしまうんじゃないかって……!」
花丸「マルは、ずっと側にいるよ」
善子「花丸……」
花丸「約束ずら、絶対に」
善子「 」
善子「信じてる」
花丸「……」
花丸「安心しておやすみ、善子ちゃん」 ―――
―
花丸(マルが猿夢に直接干渉することはできない)
花丸(でも、寝ている善子ちゃんになら)
花丸「よし」
花丸「白衣観音様……マルに力を貸してください」
花丸「南無大慈大悲救苦救難広大霊感白衣観世音――」
花丸(霊力の譲渡)
花丸(マル自身が行ったことはないし、その上対象は霊力を操る事さえできないから、成功するかどうか分からない)
花丸(それでも、あんな間近で見せられたんだ)
花丸(ダイヤさんにできて、私にできないはずがない) 善子「ん……ぅ……」
花丸(きた)
善子「あ ぁ あああああああああああああああああっっ!!!!!!!」
バチバチッ パリンッ
花丸「なっ……!」
花丸(善子ちゃんの腕からの出血と同時に、電灯が砕け散った)
花丸(ポルターガイスト……本気で殺しにかかってるんずらね)
善子「はな……ま……る……」
花丸「 」
花丸「負けてたまるか」 ―――
―
ピンポンパンポーン
「次は挽肉〜、挽肉です」
善子「」スタスタ
善子(花丸っ……!)
ギイィィィィィィン
善子(精肉機の刃に、指が……)
善子(イヤだ)
善子(イヤだ、イヤだ、イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ)
善子(死にたくないっっ!!) ウィィィィィィン
善子(ダメ 間に合 わ )
グチャグチュギュルルルルルル
善子「いやあああああああああああああああああああああっっっ!!!」
善子「痛い痛いいたい"いだいい"だいよお"お"お"お"ぉぉぉぉぉ!!」 善子( )
善子( )
善子( )
善子(私、死ぬの?)
善子(このまま、何もできずに死んじゃうの?)
善子(やだよ)
善子(まだあいつに、言いたいこと……何も言ってない)
善子「ああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!!!!」 ――善子ちゃんっ!!
善子(この 声 )
善子「ズラ……丸……」
ギイィィィィ……ィィィ…ィン…
善子(精肉機の回転が、止まった……?)
千歌「善子ちゃんっ!!」
曜「諦めちゃダメっっ!!」
善子「え……?」
善子「貴方たち……」
梨子「早くこっちに来て!!!!」
梨子「体を動かすのっっっ!!!」 善子「ぐ……うっ……」
善子「――っ」
善子(動いた!)
善子(腕、ちゃんとある)
善子(ここは夢の中……何でもありってことね)
善子「千歌……曜……梨子……!!」
善子(今すぐ 貴方たちの 所へ )
「 また 逃げるんですか〜 」
「 逃げても 無駄ですよ〜 」 ―――
―
ガチャッ バタン
千歌「ハァ…ハァ…」
曜「なんとか……」
梨子「逃げきれた、かな」
善子「……あの」
千歌「うん?」
善子「三人とも、どうしてここに?」
曜「どうしてって……まあ、チカたちも"猿夢"について調べちゃって、それで今回は二度目なんだ」
善子「そうじゃなくて」
善子「どうして、私を助けにきてくれたの?」 善子「貴方たちにしてみれば、私は貴方たちを怖い目に遭わせた元凶なのに」
善子「私さえいなければ、危険な目にあったりしなかったのに」
善子「なのに、どうして……」
曜「 」
パチンッ
善子「いたっ!」
善子「ちょ……なんでデコピンすんのよ!!」
曜「善子ちゃんが馬鹿なこと言うから」ハァ…
善子「は?」
千歌「なんで助けるか、なんて」
千歌「そんなの当然だよ」
千歌「私たち、仲間でしょ?」
善子「――っ」 梨子「確かに、善子ちゃんの怪異に巻き込まれたのは事実だけど」
梨子「それは別に、善子ちゃんが悪いわけじゃない」
梨子「寧ろ……これでよかったと思う」
梨子「一人で苦しむ善子ちゃんの姿なんて、見たくないもの」
善子「あ あ ぁ 」
善子「う……うぅ……」ウルウル
曜「」ギュッ
善子「うぇぇ……」
曜「よしよしよしこー、なんちゃって」ナデナデ
曜「泣かないで 善子ちゃん」ギュウッ
善子「グスッ……ヨハネだもん」 ―――
―
千歌「はぁ……どこに行けばいいんだろ」
曜「夢が覚めれば解決するんだけど」
善子「それができないからこうなってるんじゃない」
梨子「ダイヤさんの霊力をうまく使えないかしら」
善子「ダイヤ?」
千歌「うん……私たち、ここに来る前にダイヤさんから色々説明してもらったんだ」
曜「これまでに何があったのか、今何が起こっているのか」
梨子「二度目とはいえ、絶対に生きて帰れるとは言い切れない」
梨子「だから、猿夢に飲み込まれないように、ダイヤさんの霊力を少しだけ分けてもらってるんだ」
曜「だからこうして自由に動けてるってわけ」 千歌「善子ちゃんは、花丸ちゃんの霊力を分けてもらってるんだよね」
善子「え……?」
千歌「違うの?」
――善子ちゃんっ!!
善子(あの声は、確実にズラ丸だった)
善子(そういうことね……)
善子「ズラ丸……」ギュウッ
千歌「どうしたの? 胸、苦しいの?」アセアセ
善子「そう……ね」
善子「どうしようもなく……苦しいわ」ポロポロ
梨子「……」ニコッ
曜「ヨハネちゃんは泣き虫だね」クスクス
善子「うっ、うるさいわねっ……」ゴシゴシ ―――
―
千歌「えいっ」
ガラッ
千歌「うーん……ここ、一番端の車両だよね」
曜「運転席には誰もいないみたい」
梨子「夢だから、理屈は通用しないってことね」
善子「……いっそのこと、電車から飛び降りるとか?」
千歌「それは最後の手段」
曜「ほんの少しでもマイナスのイメージを持ったら、そのまま死んでしまうかもしれない」
梨子「ダイヤさんが言ってたんだ。夢の中で死ぬと、現実の自分も本当に死んじゃうって」 ガラッ
善子「――え?」クルッ
花丸「 」
善子「ズラ……丸?」
千歌「まさか……本当に?」
スタスタ
ダイヤ「 」
曜「ダイヤさん……なの?」 梨子「――まって」
梨子「違う……ダイヤさんじゃない」
曜「何言ってるのさ、どっからどう見ても……」
梨子「だって、言ってたじゃない」
梨子「霊力を持つ者は、この空間に足を踏み入れることはできない……って」
善子「でも……」
花丸「 よし こ ちゃん 」
花丸「紹介 す るね 」
ダイヤ「 ふ ふふ ふふふふふふふふふ」
花丸「彼女 は 殺人鬼だよ」 >>363 修正
梨子「――まって」
梨子「違う……ダイヤさんじゃない」
曜「何言ってるのさ、どっからどう見ても……」
梨子「だって、言ってたじゃない」
梨子「元来霊力を持つ者は、この空間に足を踏み入れることはできない……って」
善子「でも……」
花丸「 よし こ ちゃん 」
花丸「紹介 す るね 」
ダイヤ「 ふ ふふ ふふふふふふふふふ」
花丸「彼女 は 殺人鬼だよ」 曜「あ……ぁ……」ガクガク
梨子「いや……こないで……」
千歌「――っ」ダッ
善子「千歌っ!?」
千歌「えいっ!!!!!」ドガッ
ダイヤ「 ぐ ぇ 」
ダイヤ「 」
ダイヤ「」
千歌「溶けた……」
曜「きもち わる」ゾワッ
梨子「ウプ オェ 」
善子「梨子っ……大丈夫?」サスサス
梨子「ごめん……大丈夫よ」 花丸「クククッ フハハハハッ ヒャハハハハハヒヒヒッッッ」
善子「ズラ丸……!」
ガララッ ビュオオオッッッ
千歌「曜ちゃんっ!」
曜「……!」
善子「ドアを開けた……? まさか飛び降りるつもりっ!?」
曜「よしっ……!」
花丸「あh ぐががががぎぎぎ」
ピンポンパンポーン
花丸「次は〜、挽肉〜、挽肉〜」 千歌「こっち!!」
ギイィィィィィィン
千歌「」ダッ
梨子「千歌ちゃんっ! 危ないっっ!!!!」
花丸「挽肉〜、挽肉〜」
曜「――挽肉になるのは、そっちだよ」
曜「あああああっ!!」ダダッ
ドガッッッ
花丸「ウオオオオオオオオオァァァァァ……」 千歌「……ふぅ」
曜「へへっ」
善子「……まさか、電車の外に突き飛ばすなんてね」
ピンポンパンポーン
『人殺し〜 人殺し〜 』
千歌「……」
善子「それは……こっちのセリフよ」 梨子「――馬鹿っ!!」
ようちか「」ビクッ
梨子「千歌ちゃん、曜ちゃん……! なんて危ない事してるのよ……!」
千歌「え、だって……あのままだとホントにみんな殺されるかもしれなかったし」
梨子「私はっ……千歌ちゃんが死んじゃうんじゃないかって……!」
千歌「ごめん」
曜「もう、無理しないから。私も、千歌ちゃんも」
梨子「グスッ……うん」コクッ
善子「――でも、さっきので物理攻撃が効果的ってことは分かったわ」
曜「こっちが自由に動ける分、対等ってことだね」 ―――
―
ガタン…ゴトン…
千歌「……」
梨子「夢、覚めないね」
曜「待ってれば自然と起きると思ったんだけど」
善子「じっとしていても埒が明かないわね」
善子「後ろの車両に行きましょう」
千歌「そう、だね」
梨子「向こうへ行ったら、またアレに出くわしちゃうかも」
曜「でも……それ以外どうしようもないよ」
曜「行こう」
曜「元の世界に帰るために」 ―――
―
『人身事故が発生しました〜』
『緊急停止させていただきます〜』
プシュウウウウウ…
曜「ねえ、これで降りれるんじゃないかな」
千歌「確かに、電車は止まったしね」
梨子「……行きましょう」
千歌「外に出れば、目が覚めるかな」
善子「分からない けれど」
善子「進まなきゃどうにもならないでしょ」
千歌「……うん」 ―――
―
『↑この先地獄』
曜「なに、これ」
梨子「趣味の悪い……」
千歌「進むなってことかな」
善子「進みましょう」
千歌「……わかった」 ―――
―
善子「この建物……」
曜「他には何もないみたい」
梨子「あからさま過ぎるわ……罠よ」
千歌「でも、戻るわけにはいかないから」
善子「よし……」スタスタ
ガラッ ギィィ
善子「……ここは」
バタンッ
善子「 え 」
善子「ちょ……え?」
善子「千歌っ……曜っ……梨子!!」」
善子「……閉じ込められた?」 ―――
―
千歌「」パチッ
千歌「 あれ?」
ダイヤ「ようやく帰ってきましたのね」
千歌「ここは……」
梨子「う……ん」
曜「ふぇ?」
ダイヤ「貴方たち、一日中眠っていましたのよ」
千歌「眠って……」 千歌「あ」
ようりこ「 」
ダイヤ「?」
千歌「よし こ ちゃん」
千歌「善子ちゃんがッッッ!!!」
千歌「善子ちゃんがっ、まだ夢の中にっっ!!!!」
ダイヤ「……なんですって?」 更新されるたび思うけど、惹き込まれる文章ですごいとおもう ―――
―
―津島家―
花丸「……」
津島母「あの、花丸ちゃん」
花丸「はい」
津島母「善子は……」
花丸「安心してください、眠っているだけです」
津島母「これが、眠っているだけ?」
津島母「そんなわけない」 津島母「部屋の中は滅茶苦茶、窓ガラスは割れて散乱している」
津島母「あげく善子の腕は血で真っ赤、花丸ちゃんの体もボロボロ……」
津島母「私にもね、善子と同じで霊感があるの」
津島母「この部屋……おぞましい空気が流れてる」
花丸「 」
津島母「善子は、助かるの……?」
花丸「必ず、助けます」
津島母「貴方一人で?」
津島母「ふざけないでっ……!!」
津島母「もっと強い霊能力者を呼んでよ!!!!!!」
津島母「こんな……こんな霊気、初めて……」
津島母「早く善子を助けてよぉっ……!!!」
花丸「――今やってるずらっ!!!!!!!!」 花丸「……落ち着いてください、お母さん」
ピンポーン
津島母「……出ます」
スタスタ ガチャッ
津島母「え、貴方たちっ……!」
バタバタバタ
千歌「善子ちゃんはっ!!?」
花丸「……」
曜「ハァ…ハァ…」
梨子「まだ、眠ってるのね」
津島母「ちょっと、なんですか!! 人の家に勝手に……!」 ダイヤ「失礼いたしました」ペコッ
津島母「貴方、黒澤家の……」
ダイヤ「私から説明いたします」
ダイヤ「彼女たちもまた、善子さんと同様の怪異に巻き込まれていた被害者ですわ」
津島母「えっ……」
曜「どうしよう、千歌ちゃん」
千歌「どうするも何も……助けに行くよ!」
梨子「どうやって……?」
千歌「もう一回寝る! そうすれば、私たちもきっと……」
ダイヤ「――おやめなさい」
ダイヤ「貴方たちが再びあの世界へ足を踏み入れることが何を意味するか、承知の上で言っているんですの?」
千歌「……っ」 ダイヤ「三度目の猿夢は、すなわち死を意味する」
ダイヤ「死ににいくようなものですわ」
千歌「それでも……っ」
千歌「私は善子ちゃんを、死なせたくない!」
ダイヤ「 霊力も持たぬ人間が 出過ぎた真似をするな 」
千歌「――っ」ゾクッ
曜「ダイヤ……さん?」
花丸「いや」
花丸「黒澤龍之介ずら」
梨子「龍之介……?」
津島母「あ ぁ 」
津島母「なぜ……貴方が……」 ダイヤ「 津島善子は 悪魔だ 」
ダイヤ「 呪われた 神山の血を 引いている 」
ダイヤ「 殺せ 」
ダイヤ「 死にたくなければ 今すぐ 殺せ 」
津島母「 」フラッ
梨子「あぶなっ……!」ギュッ
千歌「呪われた、血」
曜「それを、善子ちゃんが……?」
花丸「――関係ないずら」
花丸「誰の血を継いでいても」
花丸「たとえ悪魔であっても」
花丸「降りかかる怪異にどれだけの人を巻き込んでも」
花丸「善子ちゃんは、善子ちゃんずら」 千歌「 」
千歌「……うん、そうだね」
曜「誰かが欠けたAqoursなんて、絶対嫌だもん」
梨子「絶対に助ける……そう決めたから……!」
ダイヤ「 身の程知らずが 」
ダイヤ「……あ、ぐ」フラッ
ダイヤ「すみません、少し気を失っていたようで……最近貧血気味なのかしら」
梨子「よかった、いつものダイヤさんね……」ホッ
花丸「ダイヤさん、お目覚めのところ悪いけど」
花丸「3人のこと、よろしくお願いするずら」
ダイヤ「――ええ、わかりましたわ」
花丸「それじゃあ」
花丸「おやすみなさん」 千歌(あ、もしかして今のはお休みなさいと皆さんを掛けた…)
板復帰(NG!:Gather .dat file OK:NOT moving DAT 708 -> 708:Get subject.txt OK:Check subject.txt 708 -> 708:fukki NG!)1.18, 1.14, 1.10
sage Maybe not broken ―――
―
ヒュゥゥォォォオオオオオオオオオ
善子「……」
善子(ひとりぼっちになってから、どれくらい時間が経ったんだろう)
善子(風の音以外、何も聞こえないわね)
善子「 行こう 」
善子「こうして突っ立ってても 何も始まらないんだから」
善子「曜も言ってたじゃない」
善子「元の世界に帰るには 進むしかないんだ」 ツカツカ…
善子(ここは……学校?)
善子(間違いない、浦女の校舎の中だ)
善子(夢の中だから 記憶の中の建物が再現されたってこと?)
善子(このまま適当に歩いてても埒が明かないわね)
善子(けど)
善子「どこに行けばいいってのよ……」
スタスタ タタッ
善子「 これ は 」
『逃げたら殺す』 善子「……」
善子「今更、こんなので脅してるつもり?」
善子「フフッ」
善子「ふざけないでよ」
善子「 ホント 」
善子「ふざけないでよッッッ!!!!!!!!!!」 善子「ハァ ハァ 」
ガタッ
善子「 」
クククッ ヒヒヒッ
善子「い や 」
「ヒャハハハハハヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッッッ」
善子「 」
善子「 フフッ 」
善子「いつまでもやられっぱなしだなんて」
善子「思わないでよね」
善子(千歌、曜、梨子……みんな)
善子(花丸 力を貸して) ガラッ
善子「 」ダダッ
善子(教室の中の、窓 窓 窓)
善子「全部、外れてあいつに飛んでいけっ!!!」
バリンッ バリンッ バリンッ
ビュンビュンビュンッ
「キャハハハハッ――グェッ」
善子「黒板ッ!!! アンタもよッッッ!!!」
ガタッ バキバキッ
ビュンッッッ ドゴォォォオオオオオオオオオオオオ
善子「ハァ…ハァ…」
善子「 」
善子「 」
善子「 」
善子「勝った……の?」 パラパラ…
ピキッ
ビキビキビキビキッッッ
善子「 え 」 ―――
―
―校舎内部―
千歌「ここは」
曜「浦女 だよね」
梨子「ここに、善子ちゃんが……」
ヒヒヒヒャハハハハハハッ
千歌「――っ」
曜「あの時のピエロ……!」
梨子「うぅ」ガクガク
千歌「二人ともしっかり!」
千歌「ここは夢の中」
千歌「意思を強く持てば、絶対に負けないんだ!」
梨子「……うん!」 ピキッ
ビキビキビキビキビキッ
ドガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!!
梨子「」ビクッ
曜「な、なに!?」
「ヒヒヒヒャハハハハハハ――グェ」
オオオォォォォォォォォォ
千歌「校舎が 崩れた」
曜「今の、あのピエロの仕業なのかな」
梨子「それとも、善子ちゃん……?」 ガラッ
善子「 」フラフラ
梨子「――あ」
善子「貴方たち……また、来てくれたのね」
梨子「善子ちゃんっ! 体、ボロボロだよ……!?」
善子「アイツを 倒そうとしたら」
善子「もっと大きな力で やり返されたって ところかしら ね 」
善子「 」ガクッ
梨子「善子ちゃんっ!!」ダキッ
千歌「……あ」
曜「千歌ちゃん?」
ヒヒヒッ
千歌「 逃げ よう 」
「ヒャハハハハハヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッッッ」
千歌「逃げなきゃ……みんな死んじゃう……!!」 ―――
―
ポトッ ポトッ
花丸「ハァ……ハァ……」
ダイヤ「花丸さん、汗が」
花丸「心配しないで」
花丸「」ゴホッ ゴホッ
ダイヤ(霊力の譲渡は、非常に高度な技)
ダイヤ(私は幼少時から相当の訓練を受け、最近になってようやく身に着けることができた)
ダイヤ(それを花丸さんは、ぶっつけ本番で成し遂げたのです。それだけでも天賦の才能といっていい)
ダイヤ(ですが)
ダイヤ「それだけでは、駄目なのです」
ダイヤ「それだけでは……」
ダイヤ( 猿夢に対抗することは かなわない ) ピンポーン ガチャッ
ダイヤ「――っ」
ダイヤ(しまった……鍵をかけ忘れていましたわ)
ダイヤ(私は3人から手が離せない 善子さんのお母様は眠っている)
ドタドタドタッ
鞠莉「ダイヤッ! 花丸ッ!!」
果南「善子たちは無事ッ!?」
ダイヤ「 貴方たち、でしたのね」ホッ
ルビィ「うゆ……」
花丸「どうして ここに」
果南「ルビィが、花丸ならきっと善子の家にいるんじゃないかって」
ダイヤ「 調べましたの?」
鞠莉「……」
ダイヤ「ハァ なんてことを」 果南「放っておけるわけない」
果南「私がみんなを想う気持ちを、甘くみないでよね」
鞠莉「果南……」
ダイヤ「貴方たちが来たところで 死人が増えるだけですわ」
ダイヤ「まだ それが分からないんですの?」
ルビィ「分からないよ」
ルビィ「私の知ってるお姉ちゃんなら、きっとこう言うから」
ルビィ「――みんなを守りたい って」
ダイヤ「 」
花丸「方法は、あるずら?」
鞠莉「ある」
鞠莉「小原家の地下倉庫に眠っていた……秘密兵器がね」 ―――
―
千歌「ゼェッ…ハァ……!」
曜「千歌ちゃん、この曲がり角で一旦交代!」
千歌「わかった!!」
善子「降ろ……して……」
千歌「イヤだ」
善子「このペースじゃ、どのみち全員お陀仏よ」
善子「私がおとりになるから……その内に」
千歌「そんなの絶対イヤだッッッ!!!!」
曜「私たちのAqoursは、9人」
曜「それ以外考えられないよ」
梨子「誰かが抜けるなんて、絶対にイヤ」 善子「どうして そこまで 」
梨子「――誰かを助けるのに、理由って必要かな」
善子「……」
善子「……そう……ね」ムズッ
善子「ありが……と……」
千歌「善子ちゃん……そうやってチカの背中に顔埋めたら、チカの服に涙と鼻水が……」
曜「はーい、ここで交代ね〜」スッ
千歌「わわっ、せっかく善子ちゃんがデレてくれたのに!!」
善子「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!///」
梨子「……あ、また扉が」
千歌「通り抜けるよ!」
ガチャッ ―――
―
ガタンゴトン ガタンゴトン
千歌「……電車の中だ」
曜「嘘 どうして 」
梨子「さっきまで私たち、浦の星の校舎にいたはずなのに」
善子「つまり……この夢の中は」
善子「アイツらの、思うがまま」
善子「私たちは、手のひらの上で転がされてたに過ぎない……ってわけね」 ピンポンパンポーン
千歌「 」
『大変長らくお待たせいたしました〜』
『次は挽肉〜、挽肉です〜』
曜「あ ぁ 」
『皆様にご連絡致します〜』
『ただ今、列車内の肉が激しく抵抗している為〜』
『見つけ次第、ぶち殺して頂くよう〜』
『ご協力をお願い申し上げます〜』
梨子「ふざけないで……誰が挽肉よ……!」
『 お肉〜 お肉〜 』
『そろそろ死にますか?』 花丸『――いや、死ぬのはお前ずら』
善子「 この 声は 」
千歌「花丸ちゃんっ……!?」
キィィィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイン
曜「何っ……この音っ……!!?」
梨子「耳が……!」
善子「あ……ぐぅ……!!」
花丸『南無大慈大悲救苦救難広大霊感白衣観世音……』 ―――
―
善子「」パチッ
善子「 」
善子「 」
善子「 ここ は 」
花丸「 おかえり 」
花丸「おかえり……善子ちゃん」
善子「花……丸?」
千歌「 ふぇ 」
曜「ふわぁ……ここ、どこ?」
梨子「夢 じゃ、ない?」
果南「夢じゃないよ」
鞠莉「リアルワールドでーす!!!」 善子「……」
善子「あ……あぁ……」ポロポロ
善子「あああッッ!!!」ダダダッ
ギュウウウウッ
花丸「よしよし……」ナデナデ
善子「怖かった……怖かったよぉ……」
千歌「果南ちゃあああああんっ!!!」ギュウッ
曜「うぇぇぇ……!!」
梨子「うっ……うぅ……」グスッ
鞠莉「 」ギュウッ
鞠莉「おかえり、梨子」
梨子「……うん」コクッ ルビィ(鞠莉さんがもってきた機械は、"対怪異超音波器")
ルビィ(小原グループの資金で運営されている大学の教授がかつて発明した、対怪異用の装置らしいです)
ルビィ(怪異そのものが出す特有の電磁波を感知・解析し、何パターンにも分けて独自の音波を周囲に放出する音波器とのこと)
ルビィ(実用段階には至っていないらしく、教授はこれ以上の性能向上は期待できないとして諦めてしまった)
ルビィ(この装置だけで、怪異を打ち消すことは不可能に近いのだそうです) ルビィ(でも、今回の"猿夢"は眠っている人間を襲う怪異)
ルビィ(対象を襲うにはその人間にとり憑かなければならない) ルビィ(寝ている人間を襲う猿夢には、超音波を連続的に浴びせることができる)
ルビィ(つまり、相性がよかった) ルビィ(対怪異超音波器で善子ちゃんの体内から猿夢を追い出し、無防備になったところを花丸ちゃんが除霊する)
ルビィ(鞠莉さんの提案した作戦は、大成功でした) ダイヤ「……ルビィ、行くわよ」
ルビィ「あ、うん」
ダイヤ「 」
ダイヤ「 まだ 終わらんぞ 」
ルビィ「 」
ルビィ「 お姉ちゃん?」
ダイヤ「」クルッ
ダイヤ「……どうしましたの、ルビィ」ニコッ
ルビィ「 いや 」
ルビィ「なんでもないよ、お姉ちゃん」 近日中の更新はできないのでこのスレは落としてください
これまで保守ありがとうございました ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています