穂乃果「ついに春高バレー決勝戦…」千歌「やっとここまで来たんだ!」
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キャプテンの高坂穂乃果は円陣を組む中、体育館に溢れる歓声と熱気の混じった空気を目一杯に吸い込む。
穂乃果「みんな…ついに決勝戦だね…」
そう言うと、穂乃果の両隣で肩を組んでいる彼女の幼馴染たち――南ことりと園田海未が穂乃果に目をやる。
ことり「穂乃果ちゃん、緊張してるの?」
穂乃果「うん、ちょっとね…」
海未「大丈夫ですよ、穂乃果。私たちが一緒ですから」
穂乃果「海未ちゃん…」
凛「そうにゃそうにゃ! それに今さら緊張したって仕方ないにゃ」
花陽「そ、そうだよね…よし! 頑張るぞ!」
真姫「あら、花陽にしてはなかなかいい感じじゃない。期待してるわよ」
そう言って一年生の星空凛、小泉花陽、西木野真姫はお互いに見つめ合い、そして笑い合う。
にこ「あんたたち、少しでも手を抜いたりしたらただじゃおかないからね?」
希「誰も手を抜いたりなんかせえへんよ、にこっち。それよりみんな…今日は楽しもうな?」
絵里「希の言う通りよ。今日は精一杯…楽しんで戦いましょう!」
三年生の矢澤にこ、東條希、絢瀬絵里は、三年生らしく、メンバーを鼓舞し、励ます。
そして…
穂乃果「よーし、それじゃあみんな、いくよー! いち!」
ことり「に!」
海未「さん!」
真姫「よん!」
凛「ご!」
花陽「ろく!」
にこ「なな!」
希「はち!」
絵里「きゅう!」
「「「「「「「「「μ’s! ミュージック、スタート!」」」」」」」」」 一方、もう一つのチームでは、キャプテンの高海千歌、そして幼馴染の渡辺曜や親友の桜内梨子をはじめとする九人が円陣を組んでいた。
千歌「やっとここまで来たんだね…!」
梨子「ええ…ここまで来たなら、もうやるしかないわね」
曜「そうだね! 全速前進…ヨーソロー!」
そして一年生トリオの津島善子、国木田花丸、黒澤ルビィもいい緊張感の中で互いに励ましあっていた。
花丸「ルビィちゃん、善子ちゃん、いよいよずらね…」
ルビィ「き、緊張するね…」
善子「大丈夫よルビィ、いざとなったら私のダークスマッシャーで敵なんかイチコロよ…あとヨハネ」
三年生たち――黒澤ダイヤ、小原鞠莉、松浦果南は凛とした佇まいで冷静にその試合への闘志を燃やしている。
ダイヤ「いよいよ決勝戦、相手は音ノ木坂学院バレー部、通称『μ’s』…相手にとって不足はありませんわ」
鞠莉「大丈夫だよ、こっちには果南がいるじゃない」
果南「そんなあてにされても困るな…でも、全力でやるよ」
千歌「じゃあいくよ…いち!」
曜「に!」
梨子「さん!」
花丸「よん!」
ルビィ「ご!」
善子「ろく!」
ダイヤ「なな!」
果南「はち!」
鞠莉「きゅう!」
「「「「「「「「「Aqours! サンシャイン!」」」」」」」」」 そして第1セットが始まった。
絵里「いくわよ…!」
サーブ権はμ’sからだ。
絵里は高くボールを投げる。
千歌「いきなりジャンプサーブ!?」
絵里「いっけー!」バシ-ン!
鞠莉「任せて!」パシン!
鞠莉(くっ、重い…けど!)
鞠莉「上がったー!」
裏エース・絵里の放った強烈なジャンプサーブは、Aqoursの誇るリベロ・鞠莉のレシーブによってなんとか上に上げられた。
そして乱れたものの、その落下点にすかさずセッター・曜が入り込む。
曜「オッケー! いくよ千歌ちゃん!」
千歌「いいよ、曜ちゃん!」
曜からレフトエース・千歌へと、やや低めのトスが送られる。この低さ、千歌の大好物である。曜は千歌がどんなときにどんなトスが打ちやすいか、完全に理解していた。それは幼馴染で毎日一緒にバレーをしていたから、言わずとも自然に分かるようになったものである。
そして当然、トスが低いということはボールが千歌のところまでたどり着くのも早くなる。したがって、μ’sのブロックも遅れてしまう。
千歌「いっけえー!」バシン!
そして千歌の打ったボールはμ’sのコートの床を叩く。これで1-0というわけだ。
千歌「やったー! ナイストス、曜ちゃん!」
曜「千歌ちゃんも、ナイスキー!」 ハイキュー!!とラブライブ!のコラボを常日頃妄想してる俺には格好のSS 千歌「次は曜ちゃんのサーブだね。ナイスサーブ、期待してるよ!」
曜「うん、任せてよ!」
そして曜はボールを受け取ると、ラインの後ろまで下がり、一旦目を閉じる。
曜(せっかくみんなと…千歌ちゃんとここまで来れたんだ…! 絶対に勝ってみせる!)
ピーッという笛と同時に、曜は目を開け、助走を踏み始める。そして軽くジャンプして…打つ!
ボールは回転せずにゆらゆらとぶれながら相手コートに入る。そう、いわゆる無回転サーブというやつだ。
ジャンプサーブに比べれば威力は弱いが、その分球がぶれるので、こちらの方が取りにくいという人も多い。
そんなサーブがμ’sのコートに侵入する。
が、こちらのリベロも負けてはいなかった。
凛「いけるにゃ!」パシン
凛「上がったよ!」
凛(こんなの、かよちんのサーブに比べればどうってことないにゃ)
このチームのリベロ・凛は、ベンチで応援をしているピンチサーバー・花陽と幼馴染だ。
彼女たちは中学からバレーを始めたが、暇な時間や空き時間があればいつもそこで花陽がサーブ、凛がそのレシーブをしていた。するといつのまにか、花陽はサーブに、凛はレシーブに特化した選手となってしまったのだ。
そして上がったボールはセッター・希の頭上へとジャストで落ちていく。
希「ナイスや、凛ちゃん!」
希(ここは…真っ向勝負や!)
希「穂乃果ちゃん!」
希はレフト方向へと大きく放物線を描いたトスを上げる。これはエース・穂乃果への『好きに戦ってこい』というメッセージだ。そしてそれを受け取った穂乃果はゆっくりと助走を踏み始める。
そして跳んだ――いや、飛んだ。それはまるで翼が生えているかのようなジャンプだった。
穂乃果「たあー!」バシン!
そしてAqoursの方もブロックは二人いた。十分に間に合うトスだった。しかし、無情にも穂乃果の打ったボールはAqoursの側の床を叩く。これで1-1となった。
希「いいやん!」
穂乃果「やったね!」
ダイヤ「な、なんですの、あのジャンプ力…」
千歌「さあさあみんな! 切り替えていくよ!」 最近つまんねーSS乱立しまくってんな自重しろよ
チラシの裏じゃねーんだよ そしてその後も両者譲らぬ攻防が続き…8-8、サーバーはセンター・真姫。
真姫「ここは…あそこよ!」
真姫の打ったボールは若干のぶれを伴いながら前衛にいる同じくセンター・善子のところに落ちていく。
曜「善子ちゃん、こっち!」
善子「だからヨハネ!」パシッ
曜「ナイス善子ちゃん…梨子ちゃん! お願い!」パスッ
梨子「任せて!」パシン!
海未「大丈夫…さわれます!」
なんとかそれにワンタッチしたのが真姫の対角にいるセンター・海未だ。
ワンタッチしたボールは絵里のところへと行く。
絵里「はい、希」パスッ
希「いくよ…にこっち!」パスッ
にこ「任せな…さい!」パシ-ン!
鞠莉「オーケー、取れるよ」ポスッ
曜「お願い…千歌ちゃん!」パスッ
千歌「任せて…おりゃあ!」バシッ!
そしてボールはμ’s側のコートに落ち、Aqoursに得点が入る。
こうしてさらに激しい攻防が続いていった。 穂乃果「はぁ…はぁ…」
千歌「はぁ…はぁ…」
そしてついに23-24、μ’sのアドバンテージだ。
サーブは…絵里に代わって、ピンチサーバー・花陽!
花陽(みんなが繋いできたボールなんだ…なんとしても、決める!)
花陽は助走を取らず、その独特のフォームで構える。そして笛が鳴ると同時に…打つ!
そのボールは激しくぶれながら…梨子のところへと向かった。
梨子(な、なんなのこのサーブは! ぶれが強すぎて…うまく上がらない!)バシン!
梨子「ごめん、曜ちゃん!」
梨子が弾いたボールはコートを大きく超えて後ろに行く。
曜(なんとか届くには届く…けど…オーバーでは上げられない…こうなったら…!)
曜「果南ちゃん!」
ボールは大きく上に上がりアタックラインめがけて落ちていく。そしてそこには…
果南「おーけー、任せな!」
なんと、曜は裏エース・果南のバックアタックを狙ったのだ。
後ろからのトスというのは普通のトスと比べて遥かに打ちにくい。しかしそれができるのはやはり、果南に対する圧倒的信頼があってのものだろう。それは曜と果南が幼馴染であるというのもあるが、やはり果南の実力への信頼が大きい。 果南(このボール…絶対に繋ぐ!)
この松浦果南、スパイクに関してのみならば、Aqoursの誰よりも上手い。そう、エース・千歌よりもだ。
彼女はずっと、スパイクだけを練習してきた。しかもそのトスはいろいろな人に、いろいろな位置から上げてもらうようにして、どんなトスが来ても対応できるようにしていたのだ。
となれば、この曜からの難しいトスも、果南にかかればいつものトスと同じだ。果南はやや笑みすら浮かべながら助走を踏む。そして踏み込んで…ジャンプする!
果南「っらぁ!」バシン!
花陽(なんてスパイク…いや、その前にあのトス…アンダーだったけどすごい精度だよ…)
にこ「任せて!」パシン
すかさずボールの落下点に入ったライトアタッカー・にこがボールを上げる。
にこはレシーブでは凛に次いで上手だ。そしてスパイクは二段トスもそこそこできるため、このオールマイティな技術が求められるポジションであるライトアタッカーになったのだ。
果南「ちっ…」
にん「ふん…伊達に3年間バレーしてきたわけじゃないのよ」
そして上がったボールは希のもとへと落ちていく。
希「ナイスレシーブ、にこっち!」 希(さて、前衛には真姫ちゃんと穂乃果ちゃん…普通だったらここはエースの穂乃果ちゃんに任せるんやけど…今は!)
希「真姫ちゃん!」
希はボールを自分のすぐ横に上げた――というより、置いた。
そしてすでに跳び上がっていた真姫がそれを…叩きつける!
そう、これがいわゆる速攻だ。
身長の高い真姫だからこそできる攻撃方法である。
Aqoursの側の真姫へのマークは一枚、ダイヤだけだ。そしてそのブロックは…間一髪間に合った!
ダイヤの指先に触れたボールはそのまま鞠莉のところへと落ちていく。
鞠莉はそれを正確に曜のところへと上げる。
曜(ここは千歌ちゃんに上げたいところ…でも)
曜「さっきのお返しだよ…ダイヤちゃん、お願い!」
すでに跳んでいたダイヤのもとにボールを直で届ける。そう、Bクイックだ。Bクイックとは、先程真姫がやった速攻――つまりはAクイックとは違い、少し離れたところから速攻を打つやり方だ。
ダイヤ「任せなさい!」
そして…打ち込む!
ダイヤ「はぁ!」バチン!
ボールはそのままμ’s側のコートに落ち、24-24、つまりデュースとなった。
ここで先程サーブを打った花陽と絵里が交代する。
そしてAqoursのサーブ、サーバーは曜だ。 曜(さっきの花陽ちゃんのサーブ、凄かったな…でも私だって…あれの半分くらいのぶれは出せる!)
曜「いけ!」バシッ!
曜の打ったボールは、なるほどたしかに、先程の花陽のサーブの半分ほどの揺れを伴うサーブになった。
半分、というとすこし弱そうに思えてしまうかもしれないが、そうではない。むしろ先程のサーブの半分もぶれているならば、なかなか取りにくいサーブになるだろう。逆に言えば、それくらい花陽のサーブはぶれた。
凛「大丈夫、とれるにゃ」
そしてこのブレ球は凛がしっかりとレシーブする。
曜「くそっ…」
希(凛ちゃんはやっぱりうまいなあ…じゃあうちもちょっと仕掛けようかな)
希(穂乃果ちゃん、真姫ちゃん、ちょっとごめんな…うちも出しゃばりたいときくらいあるんよ…!)
希はどちらに上げるのか、Aqoursはそれに目を凝らした。しかし希は、どちらにも上げなかった。
ヒョイッ、と、そのままボールを下に落としたのだ。そう、ツーアタックだ。これにはAqoursも意表を突かれた。その球には誰も――近くにいた梨子さえ反応できず、ボールは床にポトッと落ちてしまった。
梨子「こ、ここでツーを使ってくるなんて…」
この失点はAqoursにとってかなり痛かった。
これで24-25。再びμ’sにアドバンテージだ。 ぶっちゃけバレーするなら全員最低あと15pくらい身長足らんだろ 実際なら強豪チームなら15でも足らん
鞠莉絵里はハーフクォーターなら190は欲しいくらい
リベロでも160は欲しいし ちなみにこの決勝戦、先に2セット取った方が勝ちである。なので最初のこの1セット、なんとしても取りたいというのが両者の本音であろう。
そして今度はμ’sのサーブだ。サーバーは希。
希(さて、どこを狙おうかな)
希(ここはやっぱり…真剣勝負や!)パシン!
希の打ったボールは…果南めがけてまっすぐに進む!
果南(ちぇっ、やっぱり狙ってきたか…)
希(だって、スパイク以外はあんまり上手くないみたいやし)
果南「うっ」バチン!
果南「ごめん、カバー頼む!」
鞠莉「オーケー、任せて!」
鞠莉の上げたボールはそのままμ’sのコートに帰ってくる。
穂乃果「よし、チャンスだよ!」
凛「希ちゃん!」パシッ
希「じゃあ…任せたよ、穂乃果ちゃん!」パスッ
穂乃果「うん、任されたよ!」
そして穂乃果は飛ぶ。もはや今、穂乃果には敵がいなかった。目の前に開かれたコート、その空いているところにボールを落とせばいいだけなのだから。そして…
穂乃果「いけえええ!」バシ-ン!
1セット目は、μ’sが獲得したのだった。 今更ですがこの世界線ではμ’sとAqoursは同世代です
互いのことは一応認知していますがあまり詳しくは知りません Aqours陣営
花丸「みんな、お疲れ様ずら」
ルビィ「はい、ドリンクどうぞ」
千歌「ありがとう〜」
ダイヤ「それにしても、穂乃果さんのあのスパイク…あれをどうにかしないことには、こちらに勝ち目はありませんわね…」
果南「そうだね…あれにはブロックを増やすよりはレシーブに徹した方がいいかも」
鞠莉「果南の言う通りだね。あそこはブロックは一枚にしてあとはレシーブに回った方がいい」
曜「あと、さっきは完全にやられたけど、ツーも警戒しといた方がいいよ…多分そうやって自分の方に注意を向けさせてスパイカーに自由に打たせるのが狙いなんだろうけど」
梨子「それと、あまりあのリベロは狙わないようにね。あの子、相当うまいから」
千歌「…よし、じゃあだいたいの作戦が決まったところで、2セット目、頑張ろう!」
善子「…って、ちょっと! 私にも喋らせなさいよー!」 ランニングしてる途中でいつも同じ犬の吠え声を聞くわ
ちょっとだけでも耳障りなのに近所の人はすごく嫌だろうなと思うわこれ μ’s陣営
ことり「お疲れ様、みんな♪」
花陽「お疲れ様です」
希「ふぅ…なんとか1セット取れたね…」
絵里「ええ…でもギリギリだったわ」
にこ「ちょっと希ー、もっとにこに回しなさいよねー」
海未「それよりも、あの果南という方、レシーブはあまり上手くありませんが、スパイクは穂乃果や絵里と同じくらい…いや、それ以上にうまいかもしれません」
穂乃果「穂乃果、あんなバックアタック打てないよー」
凛「まあ、凛だったら取れるけどね」
真姫「こら、調子良かったからって調子に乗らない」
穂乃果「それじゃ…第2セットもみんな、ファイトだよっ!」 第2セットが始まった。
サーブはAqoursの果南からだ。
果南は大きくボールを放り投げる。ジャンプサーブだ。1セット目に絵里がしたもののお返しだと言わんばかりに力強く打つ。
果南「いっけぇー!」バシッ!
果南の打ったボールはにこに目掛けて一直線にドライブ回転をかけながら向かっていく。
しかし、これは失敗だった。なぜならこのサーブ、にこは慣れていたからだ。
なぜかといえば、絵里がジャンプサーブを練習する際、必ずにこにレシーブに入らせていたからだ。
おかげでにこはジャンプサーブにはすっかり慣れてしまった。
にこ「これくらいなら…!」バシッ!
にこ(絵里のよりもちょっとだけ強いくらいね。にこには余裕だわ…)ヒリヒリ
希「にこっちナイス!」
希(最初はやっぱり…)
希「穂乃果ちゃん!」パスッ
穂乃果「いっくよー…それぇ!」バチ-ン!
穂乃果が打ったボールはブロックにも当たらずにAqours側のコートに落ちる――はずだった。
鞠莉「もらったー!」
そこで穂乃果のボールを間一髪で拾ったのが鞠莉だった。そのまま上がったボールは千歌の方へ飛んでいき…
千歌「…いくよ!」
そのまま打った! ボールはμ’sのコートの床を叩く。Aqoursのポイントだった。
千歌「やったー!」
鞠莉「やりましたネ!」
希「あちゃー、やっぱり対策してくるよなー」
凛「対策って?」
希「ほら、さっきの穂乃果ちゃんのスパイクのとき、ブロック一枚しか無かったやろ?そのかわりにレシーブの人数増やして、ブロックで止めれないならレシーブで取れる確率を増やそうってこと」
凛「な、なるほど…じゃあ、穂乃果ちゃんのスパイクがピンチだね?」
希「うーん、まあ、そうやね…」
希(仕方ない、あれ使うか…)
希「絵里ち、ちょっと…」 試合が進み、8-6となった。Aqoursがやや優勢だ。結局このように一巡するまで、μ’sは、というか希は絵里との作戦は使わなかった。そしてローテーションは戻って最初のローテーションだ。
果南のサーブからだ。
果南(このサーブ…さっきはあのツインテールを狙ったけど簡単にとられた…じゃあやっぱり…)
果南「そこだ!」バチ-ン!
絵里「やっぱり私を狙ってくるのね…」
絵里「くっ…」バチッ
絵里「にこ、頼むわ!」
絵里が弾いたボールはにこの方へと行く。
にこ「ったく、しょうがないわねぇ…っと」パスッ
そしてそれを難なくにこはトスを上げる。ここで打つのは…希だ! ここまでトスばかりに専念してきた希だが、実はスパイクもなかなか強い。希が打った球はかろうじて梨子がレシーブする。少し乱れながらもボールは曜のところへ。
曜「ダイヤさん!」パスッ
そしてすでに跳んでいるダイヤの手元にボールをセットアップする。そう、Aクイックだ。
真姫「いける…!」
ダイヤが打ったAクイックは真姫の手にあたり後方へと飛んでいく。そこに待ち構えていたのは凛だった。
凛「まかせるにゃ!」ポスッ
希「ナイスや凛ちゃん!」
希(さて…準備はええ? 絵里ち!)
希「絵里ち!」
絵里「ナイストスよ、希!」
ダイヤ「まずい、バックアタックですわ!」
果南「いままで使ってこなかったのに…」
絵里「いっ…けぇ!」バシン!
ノーマークでの絵里のバックアタック、しかも低いトスであったのでブロックはおろか、レシーブも反応に遅れてしまった。
絵里のボールはそのまま弧を描くようにAqoursのコートで跳ねる。これで8-7、勝負はまだまだ分からない。 それからも試合は繰り広げられていき、再び24-23――しかし今度はAqoursのマッチポイントとなった。
千歌「ここで決めれば1セットとれる…!」
サーバーは千歌。この高海千歌、サーブはあまり得意ではなかった。理由は簡単で、面白くないと思っていたからだ。サーブを打てば必ず相手のボールになる、そう考えると面白くなかった。 しかし、あるとき梨子が教えてくれたのだ。
サーブは最大の攻撃だと。
なぜなら、サーブは絶対に自分が打てるからだ。サーブほどの自分が点を取るチャンスはなかなかない。
――梨子がそう言って教えてくれた日から、千歌はサーブの練習をとても一生懸命するようになった。そして、今ではサーブも彼女の一つの武器となっている。
千歌はボールを高く投げる。
海未「これは…! 気をつけてください、ジャンプサーブです!」
そして…打つ!
打ったボールは弧を描いて穂乃果のところへ。
穂乃果「…来た!」 穂乃果もまた、レシーブは嫌いだった。レシーブよりもスパイクの方が好きだった。ただ単純に、かっこいいから。
しかしことりに言われたのだ。レシーブがあってはじめてスパイクが打てるんだよ、と。
ことりはセッターで、レシーブはかなりうまいのだが、セットアップが希の方がうまいため、希にレギュラーを譲っている状態だ。そんなことりが穂乃果に言ったことだ、無下にはできなかった。
しかし考えてみると確かにそうだ。レシーブがあって、そこではじめてスパイクが打てるのだ。穂乃果はそのとき、レシーブのありがたみを初めて感じた。
その日から、穂乃果はレシーブ練習もまじめにするようになったのだ。
そしてその技術は、ジャンプサーブにも対応できるくらい…上達した! 穂乃果(くっ…でもやっぱり重いや…)バチン!
穂乃果「希ちゃん、お願い!」
希「うん、任せとき!」
希「絵里ち、頼んだで!」パスッ
絵里「オーケー、頼まれたわ!」バシ-ン!
鞠莉「いける!」バスッ
曜「ナイス鞠莉ちゃん!」
曜「いくよ…善子ちゃん!」パス
善子「だからー…ヨハネよ!」バシッ!
凛「いけるにゃ!」バスッ
希「ナイス凛ちゃん!」
希「絵里ち、もう一回!」パスッ
絵里「いくわよー…それ!」チョンッ
梨子「…え?」
絵里が思い切り打つと踏んでいたAqoursは、そのフェイントには対応できなかった。
ボールはあまり音を立てず床に落ちる。
これで24-24、再びデュースとなった。
そして次のサーブはにこ…に代わってことりだった。ここでことりを出すということはすなわち、ツーセッターを意味する。つまり、希が前衛にいるときはことりがセッター、逆にことりが前衛にいるときは希がセッターをするのだ。 そして笛がなる。
ことりがサーブを打つと、鞠莉が受け、曜に繋いだ。
曜(ナイスだよ、鞠莉ちゃん!)
曜(さてと…ここは誰で行こうかな…)
曜(…よし、頼んだよ…)
曜「果南ちゃん!」パスッ
果南「任せと…け!」バシン!
凛「うっ、重たいにゃっ…」バシッ
ことり「大丈夫だよ、凛ちゃん」
ことり(海未ちゃん…分かってるよね)チラ
海未(ええ、大丈夫です)チラ
ことりはボールを置く――背後に。
そしてそこにジャストで飛んでいた海未が……ボールを強く叩く!
これはAクイック、Bクイックに並んでCクイックと呼ばれる。Aクイックの背後バージョンだ。
これをこの二人は、何度も何度も繰り返し練習してきた。
それもこれも、全ては穂乃果に負けないように。
幼馴染の穂乃果がここまでやってるんだ、自分たちも何か一つ、穂乃果に負けないものをと思い、Cクイックを練習するようになった。
そして今…その努力が花開いたのだ! ボールはそのままAqours側の床を叩き、得点が入った。これで24-25、またまたμ’sのアドバンテージだ。
ことり「やったね、海未ちゃん!」
海未「ええ、やりました!」
果南「くっ、やられた…まさかCクイックも持ってるなんて…」
再びサーブはことりだ。
ことり(これで取れば私たちの勝ち…大丈夫…落ち着いて…自分を信じて…みんなを信じて…!)
ことりがサーブを打つ。
受けたのは再び鞠莉。
ボールきれいに曜のところへと落ちていく。
曜(やっぱりこういうときは…)
曜「千歌ちゃん!」
曜が選んだのは千歌のバックアタックだった。
千歌「ったああああ!」バシ-ン!
千歌のバックアタックは鋭いドライブ回転と共にμ’sコート内へと落ちていく。間一髪、それを拾ったのは穂乃果だった。
穂乃果「ことりちゃん、お願い!」
ことり「ナイスだよ、穂乃果ちゃん!」
ことり(こういうときはやっぱり…)
ことり「絵里ちゃん!」パスッ
絵里「オーケー…それ!」バシン!
絵里の強烈なスパイクは千歌のもとへ。
千歌「うぁ、ごめん、弾いた!」バチッ
曜「大丈夫だ…よ!」ポ-ン
曜(果南ちゃん…いけるよね?)
果南(二人が繋いだこのボール…絶対に落とすわけにはいかない…!)
果南「っらぁ!」バシン! 凛「大丈夫…とれる…!」バシッ
凛「上がったー!」
ことり「さすが凛ちゃん…!」
ことり(やっぱり、最後は…)
ことり「穂乃果ちゃん!」
穂乃果「たあああああー!!」ピョ-ン!
穂乃果「いけー!」バシン!
ドンッ、という音が、一瞬静まり返った会場に響いた。
それはボールが床につく音…つまり、μ’sの勝利を知らせる音だった。 穂乃果「…勝った」
希「うちら…」
凛「勝ったんだ…」
やったー! という声とともに、会場は歓声に包まれた。それはμ’sの優勝を讃える歓声でもあり、Aqoursの健闘を祝う歓声でもあった。
果南「ちぇっ、負けちゃったか」
ダイヤ「こうなってしまったものは、仕方ありませんわね…」
三年生は、これで最後の大会が終わったことになる。つまりはもう引退だ。
穂乃果「あの、千歌ちゃん」
穂乃果が千歌に右手を差し出す。
千歌「穂乃果ちゃん…次は負けないから!」
そう言って千歌は泣きながら、しかし笑顔で手を握る。
そして他のメンバーも… ことり「あの…曜ちゃん、いいかな」
曜「ことりちゃん…次こそは勝つよ!」
海未「梨子…いいですか?」
梨子「海未ちゃん…ええ、また来年、ここで会いましょう」
凛「ルビィちゃん」
ルビィ「凛ちゃん…今回は出番がなかったけど、次は負けないからね!」
花陽「花丸ちゃん、いい?」
花丸「花陽ちゃん…来年は勝負ずら!」
真姫「善子…握手、いいかしら」
善子「真姫…ええ。それとヨハネ」
にこ「鞠莉…いいかしら」
鞠莉「にこ! もちろんだよ♪」
希「ダイヤさん…ええかな」
ダイヤ「ええ、もちろんですわ、希さん。ナイスゲームでした」
絵里「果南…お疲れ様」
果南「絵里、お疲れ様。また今度、一緒にバレーしようね」
そしてここに、全国春高バレーが幕を閉じたのであった――!
終わりです。見てくださった方々、本当にありがとうございました。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています