善子「ふたりのヨハネ」
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〜善子の部屋〜
善子「ククク……クフフフ……」
善子「買ってしまった……ふふ、買ってしまったわ」
善子「悪魔の鏡!」
【悪魔の鏡】※ヨハネ命名
学校の帰り道にたまたま見つけた怪しい骨董店で買った鏡。
小さな手鏡のように見えるけれど、鏡面じゃない方を光に翳すと鏡面がぼんやりと輝いて見えるの。謎のアイテム感がヨハネ的に高ポイント!
善子「店の主人が言うには……おのれの心を実体化させるらしいんだけど……」
善子「ふふ、そういう曰く付きなアイテムが一番ポイント高いのよね」
善子「明日ルビィとずらまるに自慢しよーっと」
『善子〜? そろそろ寝なさーい』
善子「善子言うなー! もう……分かってるわよ寝るわよ」
カチッ(消灯)
善子「わ、月明かりがすごい」
善子「ククク……このような夜は我が魔力が高ぶる夜……ふふふ、今宵はいかなる魔力を我がリトルデーモン達に授けようか……」
善子「んふふ、でも今日は自分の魔力を溜め込む日だけどね」 `¶cリ˘ヮ˚)| 「まだよ、まだ……時が来るのは、まだ……!」 〜黒澤家〜
ダイヤ「ただいま帰りました」
トテトテ
ルビィ「お姉ちゃんおかえり〜……あっ!」
善子「お、お邪魔します……」
ヨハネ「お、お邪魔します……」
ルビィ「善子ちゃん!ヨハネ様!」
ダイヤ「今夜、彼女たちも我が家で夕食を一緒にすることになりました。お母さまは台所に?」
ルビィ「うん! おさかな待ってるよ〜」
ダイヤ「では、二人のことを伝えて来ます。ルビィ、善子さんとヨハネさんをお部屋にお通しして」
ルビィ「はい!」
ルビィ「善子ちゃん、ヨハネ様、どうぞあがってくださいっ」
善子「は……はーい」 ヨハネ『なんか色々やばい』
善子『直接脳内に!?』
ヨハネ『テレパシーを忘れるんじゃないわよ』
善子『ああ、そうだったわ……』
善子『萎縮しちゃうくらい凄いわね……』
ヨハネ『ええ……でっかい日本家屋に趣のある玄関……』
善子『飾られたお花や絵からもう……お金持ちのオーラが……』
ヨハネ『実際お金持ちなのよ。内浦の有力者らしいし』
善子『……まさかヤのつく……』
ヨハネ『いやいやいやいや……』
善子『いやいやいやいや……』 ルビィ「ここだよ〜」
ガチャッ
ルビィ「あ、あんまり見られると恥ずかしいんだけど……こ、子供っぽくないよね?大丈夫かな?」
善子「……めっちゃ可愛いんだけど」
ヨハネ「まさにルビィって感じの部屋だわ……」
ルビィ「えぇっ!? えと、あの……ぅゅ……///」
善子『こんな可愛い部屋がそんなお仕事の家にあるわけないわよねー』
ヨハネ『そうよそうよ、ええ、うん』
ルビィ「隣はお姉ちゃんの部屋だよ」
善子「生徒会長の部屋……」
善子「……みちゃダメ?」
ルビィ「えっ……や、やめときなよ、怒られちゃうよ?」
善子「こそっと見るだけよ、ちらっとちらっと」
ヨハネ「やめときなさいよバカ」
善子「えー……」
ダイヤ「そうです、人の部屋を見るようとするなんて性格の悪さが滲み出ますわよ」
善子「ひいっ!?」
ルビィ「ぴぎっ!?」 ヨハネ「もっと言ってあげて生徒会長、バカな私のオリジナルに」
ダイヤ「あなたもバカなことを言うんではありませんわ……」
ヨハネ「そんなっ!?」
ダイヤ「母に伝えてきました。夕食までしばらくありますから、部屋で待っているようにと」
ルビィ「はぁ〜い」
善子「あっ……でも、夕飯をご馳走になるのに挨拶しないわけには」
ヨハネ「そうね、私もひとっ飛びして菓子折りでも」
ダイヤ「気を遣わなくていいんです、先輩の誘いに応えただけですから」
善子「で、でもご両親は別で……」
ダイヤ「先輩の行為には?」
ヨハネ「……甘えるのが後輩の務め」
ダイヤ「母からも、構わないと言われていますから。夕食の時に言ってあげてください」
善子「……わかった」
ヨハネ「ありがとう生徒会長」
ダイヤ「ふふ、構いませんわ。可愛い妹二人のためですから」
ヨハよし『……妹?』 ダイヤ「ええ、我が家に来たからには二人は妹です♪ お姉ちゃんに甘えていいのよ?」
ヨハよし『えー……』
ルビィ「お姉ちゃんの悪い癖だよー……」
善子「癖……?」
ルビィ「自分より年下で懐いてくれる子がいたらみんな妹にしちゃうの」
ルビィ「千歌ちゃんとか曜ちゃんとか」
ヨハネ「oh……」
ダイヤ「あら、それは人聞きが悪いわねルビィ。あなただってすぐに人を姉にしようとするくせに」
ルビィ「あっ……えっと、その……!」
ヨハネ「姉?」 ダイヤ「ええ、わたくしというお姉ちゃんがいるのに、ルビィはすぐ人に懐いてお姉ちゃんにしようとするんです」
ダイヤ「千歌さんとか曜さんとか」
善子「なんでその二人なの?」
ルビィ「まるちゃんを妹にしようとした時はすごかったよ〜……? まるちゃん本気にしちゃったもん」
ダイヤ「あら、わたくしこそ本気ですわ」
善子「そうか……あの話はここにつながるのか」
ヨハネ「なるほど……こう来たか」
※2話参照 ダイヤ「それはそれとして、夕食までどうします?」
ルビィ「お姉ちゃんが善子ちゃんから借りたゲームとか」
ダイヤ「あ、あれは人様と遊ぶものではないです!」
善子「! ちゃんとやってくれてるの!?」
ダイヤ「え、ええと……それは、当然です。貸してもらいましたし……ええ、もちろん」
善子「生徒会長だいすき!」ギュウッ
ダイヤ「……!!!」
ヨハネ(貸したゲームを楽しんでくれるととても嬉しいゲーマーの精神……)
ルビィ「でも、何する? うちにあるゲームって……ほんとに善子ちゃんに借りたやつと、花札、将棋、囲碁、トランプ、麻雀……」
ダイヤ「四人で遊べるもの、トランプくらいしかありませんわね」
ヨハネ「麻雀は? 4人でメンツ揃うけど」
善子「ほんとよ、遊べるじゃない」
ルビィ「……いいの? 麻雀」
ダイヤ「いいんですか、あなたたち」
善子「えっ」
ヨハネ「……え?」 ルビィ「え、えっとね、善子ちゃん」
善子「う、うん」
ルビィ「ルビィとお姉ちゃん……すっっっっっっごく……強いよ?」
ヨハネ「!?」
ダイヤ「生まれてこれまで……家での娯楽は遊び尽くしましたからね。お正月に親戚の方々が集まった時はみんなで花札や麻雀で揉まれ……」
ルビィ「負けたらお年玉が減らされちゃうから……負けないように頑張って強くなって……」
善子「……」
ヨハネ「……」
ダイヤ「それでもいいのなら、やりますが……わたくしはあまりお勧めしませんわ」
ルビィ「ルビィも……」
善子「……ふ、ふふ」
ヨハネ「くふふ……ふふ」
ダイヤ「善子さん……?」
ルビィ「ヨハネ様……?」
善子「やるわよ麻雀!」
ダイヤ「!?」 ヨハネ「私たち2人が一緒になれば無敵! 麻雀は運要素の強いゲーム……なら勝ち目はあるわ」
ダイヤ「……いいんですね」
ルビィ「な、泣かないでね……? その、ほんとにルビィたち強いから」
善子「ええ、もちろん! 本気でやらないと面白くないわ」
ダイヤ「ではテーブルと牌を持ってきます。泣いても知りませんからね?」
・・・
その日、私たちは思い出した。
ダイヤ「それロンです。8000点」
善子「えっ」
自分の人生が────
ルビィ「ご、ごめんなさい! ロンです……その、16000点……」
ヨハネ「」
『不幸』に支配されていたことを。
ダイルビ『ロン』
ダイヤ「12000」
ルビィ「8000……」
ヨハよし『』
自分が運要素に関わる一切の才能がないことを。
最終的に私とヨハネは3回ずつトバされた。
南4局までたどり着くことはなかった。
ちょっと泣いた。 `¶cリ˘ヮ˚)| 「今回は短くてごめんなさい」
`¶cリ˘ヮ˚)| 「だけどこの魔力でまた保守、お願いね」
`¶cリ˘ヮ˚)| 「私のことは心配いらないわ、善子の幸せが、私の全てだもの!」
`¶cリ˘ヮ˚)| 「また会いましょう! サラバッ!」 ヨハネ様!魔力は大丈夫なんですか!?!
乙です!
ダブロン…… |c||^.-^||乙。ですわ!
>>496
>善子「生徒会長だいすき!」ギュウッ
ここを「お姉ちゃんだいすき!」ギュウッ
にしたルートを書いて頂いても、良くなくなくなくないですわよ。 ポリポリ `¶cリ˘ヮ˚)| 「私がヨハネで」
¶cリ˘ヮ˚)| 「私が善子……ってヨハネよ!」
`¶cリ˘ヮ˚)| 「見分け方は羽根が刺さってるか刺さっていないか、よ!」
¶cリ˘ヮ˚)| 「分かりにくいわ!」 この二人にin this unstable world歌ってほしい ・・・
『いただきます』
ダイヤ母「沢山ありますから、いっぱい召し上がってくださいね」
善子「あ、ありがとうございます……」モグモグ
ヨハネ「んむ……」モグモグ
善子「えっ……やば、おいしい……」
ダイヤ母「あら、本当?」
善子「はい……えと、お味噌汁も筑前煮も……すっごくおいしいです」
善子「ね!」
ヨハネ「……ええ、本当に美味しいです」
ダイヤ母「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいですわ♪ ダイヤもルビィも、素直で可愛らしい方とお知り合いになりましたわね」
ダイヤ「ええ……ふふ、いい後輩です」
ルビィ「大好きな友達だよっ」
善子「ちょ、ちょっとやめて……///」
ヨハネ「あら、照れてるの?」
善子「うるさいっ」
ダイヤ母「ふふ、仲が良くて素敵な姉妹ですわね♪」
善子「……///」
ヨハネ「ありがとうございます」 ダイヤ母「うふふ、今日いただいたお魚もとても美味しいですわね。まだまだお代わりもありますから」
ルビィ「うんっ!」
ダイヤ母「ダイヤ、また果南さんにお礼にみかんを送ってあげてください」
ダイヤ「ええ、すでに手配しております。明日には届くと思いますわ」
ダイヤ母「それはよかった、今年のみかんも甘くて美味しいですから、きっと喜んでもらえるわね」
ダイヤ母「あなたたちも、帰りにお土産としてもらってくださいな」
ヨハネ「あっ……その」
ダイヤ「お母さま」
ダイヤ母「?」
ダイヤ「その……善子さんたちは、みかんが得意ではないんです。なので、りんごを持たせてあげたいのですけれど」
ダイヤ母「あら、そうだったの? ごめんなさい、わたくしったら……」
善子「あ、いえ、そんな……こちらこそ、申し訳ありません」
ヨハネ「申し訳ありません……」
ダイヤ母「いえいえ、誰にも好きなもの、嫌いなものはありますから。せっかく持って帰ってもらうなら、好きなものをあげたいですから」
ヨハネ「ありがとうございます、奥さま」 ダイヤ母「あらあら、ふふ……奥さまなんて呼ばなくていいんですよ? おばさんで構いませんわ」
ルビィ「たぶん雰囲気に飲まれてるんだよ!」
ダイヤ「ルビィ……」
ダイヤ母「……ルビィ、あとでお話ししましょうね?」
ルビィ「ぴっ!?」
ダイヤ母「そういえば、さっき4人で麻雀をしていたんでしょう?」
ダイヤ「あ……聞こえていましたか?」
ダイヤ母「ええ、もちろん」
ダイヤ母「2人とも、いくら強いからと全力で叩いてはいけません。せっかくの相手がいなくなってしまいますよ?」
ダイヤ「すみません……」
ルビィ「ごめんなさい……」
ダイヤ母「まさかお金を賭けたり……」
ダイヤ「してませんわ!!」
ダイヤ母「……ならばよろしい」
ルビィ「お母さんはお金賭けないとやってくれないもんね」
ダイヤ母「!?」
ヨハよし『!?』 ダイヤ母「あ、あの……えっと、これは……!」
ルビィ「おうちで一番強いよね……」
ダイヤ「それはそうですが、ルビィ、言っていい事実と悪い事実が!」
ダイヤ母「だ、ダイヤまで……っ」
ヨハネ「厳格なお母さんのイメージが崩れた……」
ダイヤ母「そんなー!」|c||>△<||💦 ・・・
善子「今日は遅くまでありがとうございました。ご飯美味しかったです」
ヨハネ「ありがとうございました。2人揃って厄介になってしまって……こんなにりんごもいただいてしまって」ガサガサ
ダイヤ母「いえいえ。また来てくださいな、今日は楽しかったわ」
ルビィ「またねぇ〜……」ポヤポヤ
ダイヤ母「あらあら、ルビィったら……」
ダイヤ「わたくしがお見送りしてまいりますわ」
ダイヤ母「ええ、お願いね。さあルビィ、行きましょう」ポンポン
ルビィ「はぁい〜……」ヨタヨタ
ダイヤ「門までですが、行きましょう」
善子「ううん、ここで大丈夫よ」
ダイヤ「お客様ですから、ちゃんと送らせてください」
ヨハネ「大丈夫大丈夫、どうせ飛んで帰るし」
ダイヤ「……ふたりとも、先輩の好意には」
ヨハよし『……甘える』
ダイヤ「よろしい、では行きましょう♪」
善子「……ぐぬぬ」
ヨハネ(……いい先輩ね) ダイヤ「ちゃんとりんごは持ちましたか?」
善子「ええ、たっぷりいただいたわ」
ダイヤ「果南さんの魚も」
ヨハネ「ばっちり」
ダイヤ「よかった、それなら大丈夫ですわね。もし忘れ物があったら連絡ください。明日、持って行きますから」
善子「ありがとう」
ダイヤ「……そのお魚、ちゃんと全部食べるんですよ?」
善子「えっ……ええ、そりゃもちろんだけど」
ダイヤ「その一夜干しは、果南さんの心配ですから」
ヨハよし『心配?』
ダイヤ「その一夜干しをみんなに配ってると、果南さんは言いますが……必ずしも全員ではありません」
ダイヤ「基本は千歌さん、曜さん、そしてわたくし。善子さんは今日が初めてでしょう?」
善子「心配と魚がどう関係あるの?」
ダイヤ「果南さんは……人と仲良くなるのは得意ですが、気配りはあまり得意ではありません」
ダイヤ「心配してるからって、ストレートにそう伝えるのは苦手なんです」
ヨハネ「……私たちが心配だから、ってこと?」
ダイヤ「ええ、そうです。きっとたくさん食べて、体力をつけろ……と言いたいのでしょう。不器用なあの人らしい、不器用な優しさです」
善子「……」
ヨハネ「……」
善子「……ふふ、心配して魚って、変なの」
ダイヤ「果南さんらしいでしょう?」
善子「……うん」 ダイヤ「ですので、しっかりと気持ちを受け止めていっぱい食べること! それが果南さんへのお礼ですから!」
善子「……うん、わかったわ」
ヨハネ「……」
ダイヤ「……はい、それでいいのです」ニコッ
ダイヤ「さて、それでは……わたくしはここで」
善子「……ありがとうございました」
ヨハネ「……また、明日」
ダイヤ「ええ、おやすみなさい」
バサッ!!
ダイヤ「きゃっ……」
バサバサバサバサ…
ダイヤ「……」
ダイヤ(月明かりに照らされて、空を舞うふたりの少女)
ダイヤ(その姿はまるで────いえ、まさに天使のようで────)
キラッ
ダイヤ「!!」
ダイヤ「……き、気のせいですよね?」
ダイヤ(いま……ヨハネさんの姿が、一瞬…………) ・・・
バサッバサッ
善子「……ねえ、ヨハネ」
ヨハネ「んー?」
善子「ごはん、おいしかったわね」
ヨハネ「……そうねぇ、私なんて言葉失ったわ」
善子「そうそう、珍しいわよね」
ヨハネ「?」
善子「あんた、何食べても幸せそうな顔するのに……最近、あんまりいい顔してないから」
ヨハネ「……そう?」
善子「ちょっと気になってたのよ、本当に体調悪いんじゃないかって」
ヨハネ「心配してくれてたんだ、善子が私を」
善子「茶化さないでよ……腐っても家族なんだから、私とあんたは」
ヨハネ「……ありがと、心配いらない。私は元気よ」
善子「……」 善子「……私、あんたが生まれてきてくれて感謝してるのよ」
ヨハネ「えっ……どうしたの?」
善子「あんたのおかげで……センパイたちとも、もっと仲良くなれた……と思うし」
善子「私の、嫌な部分を少しは好きになれたと思う」
善子「だから……感謝してる」
ヨハネ「……ね、ねえ? 本当にどうしたのよ」
善子「私と……あんたは、もう、家族よね?」
ヨハネ「えっ……ええ、もちろん。私はあなたであなたは私……そして、唯一無二の姉妹」
善子「だっ、たら…………だったら」
善子「……あんたの身に起こってること、ちゃんと話して」
ヨハネ「────!!」
善子「私、分かってるのよ。ヨハネに何か、良くないことが起こってるって」
第6話・完 ¶cリ˘ヮ˚)| 「結界の保持、いつも感謝しているわ。褒めてつかわす!」
¶cリ˘ヮ˚)| 「私の魔力をリトルデーモンたちに授ける! あともう少しお願いね!」
¶cリ˘ヮ˚)| 「またね……リトルデーモンたち」 いつも乙です
終わりが近づいてきてるって思うと寂しい… その鏡を見つけたのは、学校の帰り道────なんとなく立ち寄った骨董店。
ビルとビルの間。なぜこのような場所に────と直感的に思ってしまうくらい薄暗い場所に、その店はあった。
外観は魔女の隠れ家と呼ぶにふさわしい、洋風の外観で────明らかに怪しさ満点の、人が一切入っていない、外も中も薄暗い店だった。
だが、私にはそれがとても魅力的だった。堕天使ヨハネである私には、その店が持つ不思議な雰囲気がとても心地よく感じたのだ。
だから、迷わず店に足を踏み入れた。
「いらっしゃい。ようこそ魔法堂へ」
私を迎え入れたのは、漆黒のローブに身を包んだ────それは美女にも老婆に見える、不思議な外見の女性。
「よほど切実な願いを持つと見える」
入った瞬間、ヤバイ店だこれ────と思った。私自身が占いをかじっているだけに、このような文句を唱える相手はだいたい胡散臭く見える。まあ私の占いは本物ですけどね。
しつれいしまーす────と小さく口にし、本当に暗い店内を見回す。店主っぽい人が何やらペンダントやら願いやら色々言っているが気にしない。
特に願いなんてないし、私は怪しい雰囲気を好んだだけで──── 「あっ」
目についたのはひとつの鏡だった。装飾がとても綺麗で、薄暗い部屋なのにぼんやりと光を写しているように見える。
不思議な魅力があった。
「その鏡は心を写す魔法の鏡じゃ」
「魔法の鏡?」
「そう。その鏡には特別な魔法がかけられておる────月にかざして願えば、おまえの心が現れよう」
「……それって、どうなるの?」
「それはおまえの心次第────汚れた心であれば、おまえの身を滅ぼそう。だが澄んだ心であれば────ひっひっひ、使ってみてからのお楽しみじゃ」
「ふうん……いいわね、心を写す鏡。いただくわ」
「良いのか? それよりも使い勝手のいい、なんでも願いが叶うペンダントの方が────」
「これがいいの」
「ぐむ……まあ、よいが」
返品は受け付けんぞ────と声高に言う女性を無視しつつ、なぜか惹かれたその鏡を購入した。
そしてその翌朝────私の心が実体として現れたのだ。 ・・・
自宅の前にある河川敷。
月明かりで真っ白に輝く川を背に、私は『私の心』と対峙する。
ヨハネ「私の体は魔力で構成されてる────って、前に話したことあったっけ?」
善子「……初めて聞いた」
ヨハネ「そっか……言ってなかったのね、私」
ヨハネ「まあ、そういうわけなの。私はあの鏡────『心を写す鏡』によって生まれた。あの鏡に写った、あなたの心から生まれた魔力を媒体にして、ね」
ヨハネ「もちろんその魔力は無限じゃない。使えば使うほど無くなって、最後には……」
善子「それ、って……もしかして、あんた」
ヨハネ「ええ────私の魔力はもう尽きかけてる」
善子「────」
ヨハネ「……ふふ、隠してたつもりなのに……よく気づいたわね。私はもう……満足に体を動かすこともできないし、食べ物の味も……」
ガシッ
グイッ
ヨハネ「っ……」
善子「っ、ふっ…………あん、た、あんた……なんで……!!」
ヨハネ「……なんで言わなかったのか、って? 言ったところで私にはどうにも出来ない。出来たとしても、何も知らない。製作者を除いて、ね」 善子「そんなっ……そんなのって……」
ヨハネ「だから、どうしようもないの。あとは魔力が尽きるまで、悔いがないように過ごすだけなのよ」
善子「……」
ヨハネ「……言葉も出ない?」
善子「…………」
ヨハネ「大丈夫よ、安心なさい。私がいる限り……いえ、消えるまでに、あなたのことは必ず幸せにしてみせる」
善子「……しあわせ?」
ヨハネ「ええ、そう。これも言ったことなかったわね────私はあなたを幸せにすることが願いなの」
善子「……」
ヨハネ「だから……最後まで、あなたの幸せのために頑張らせて」
善子「……」
ヨハネ「……ね?」
善子「……か」
ヨハネ「え?」
善子「ば〜〜〜〜か!!!」
ヨハネ「は!?」 善子「だーれがあんたなんかに幸せにされるかっての! 自分の幸せくらい自分で掴むわ!」
善子「そもそも勝手に私を幸せにして消えようなんて無責任にもほどがあるのよ!」
ヨハネ「じゃ、じゃあどうしろって言うのよ! 私の魔力はもうギリギリなのよ、いつ消えてもおかしくないのよ!」
善子「だったら消えるまでになんとかするわよ!」
ヨハネ「どう、するつもりよ……? あの鏡は────」
善子「製作者なら……なんとか出来るかもしれなんでしょ? なら、またあの店に行けば……」
ヨハネ「……!」
善子「……今から行くわよ、あの店」
ヨハネ「……まじで?」
善子「いついなくなってもおかしくないんでしょ! なら今から急ぐ!」
ヨハネ「で、でも私はもう受け入れて……」
善子「私が納得いかないから行くの! ついてきなさい!」
ヨハネ「…………わかったわよ、どうなっても知らないからね」
善子「……構わないわよ、それくらい」
善子「あんたがいなくなるほうが……嫌だ」
ヨハネ「……善子」 ・・・
ガチャッ
チリンチリーン
善子「乗った?」
ヨハネ「乗った……けど、自転車で行く距離なの?」
善子「急ぐためよ!」
ヨハネ「はあ……」
善子「じゃあ出発……ふぬ、っく」グッ
善子「ぬぐっ……くくく……」
善子「……はあ、はあ」
ヨハネ「……1mmすら動いてないんだけど。私がやろうか?」
善子「ちょっと……少し動かしてから飛び乗って」
ヨハネ「……はいはい」 シャーッ
善子「ふぅ、ふう……」
ヨハネ「……ねえ」
善子「なに?」
ヨハネ「……なんでそこまでして、私を助けようとするわけ?」
善子「……じゃあ、あんたはなんで私を幸せにしようとするのよ」
ヨハネ「えっ……質問に質問で返す?」
善子「いいから」
ヨハネ「えっと……そりゃあ、私はあなたの心の写し身よ? 私は、あなたが幸せになりたいって可愛い本心を現実にするために」
善子「ぎゃーー! やめろ、やめなさいこら! そんなこと考えてないし!?///」
ヨハネ「1人が寂しい、自分のノリにばっちり共感してほしいって」
善子「わー!わー!」
ヨハネ「あと……もう1人自分がいれば、って」
善子「っ……」
善子「……そうね、そう言ったのは覚えてる」
ヨハネ「……そしてあなたの心は、寂しさに溢れていた。Aqoursのみんなと一緒にいることに若干の気後れがあって────」
ヨハネ「誰かと一緒にゲームしたり、遊んだり、中二トークをしたい」
ヨハネ「Aqoursのみんなが嫌いなわけじゃない……みんなとももっと仲良くなりたい。色々な気持ちが混ざって、とにかく寂しくて仕方なかった」
ヨハネ「……それが、あの鏡に写ったあなたの心」
ヨハネ「だから、私はあなたが幸せに、笑って暮らせるようにするために生まれた────」
善子「……余計なお世話よ、まったく」 ヨハネ「でも、さっき私のおかげでみんなと仲良くなれたって感謝してくれたじゃない」
善子「わ す れ ろ!!」
`¶cリ´・ω・`)|ショボーン
ヨハネ「でも……嬉しいわ。本当に幸せに出来てるみたいで、安心した」
善子「……けど、あんたが消えたら意味ないから」
ヨハネ「……ありがと」ギュウッ
善子「ひぃっ!? ちょ、ちょっ……!」グラッ
ヨハネ「あっぶないわね!? しがみついてんだからバランスちゃんと保ちなさいよ!」
善子「いきなり抱きつく方が悪いんでしょうが!!」
ヨハネ「いいじゃないそれくらい!」
善子「悪くはないけどタイミングってものが……!」
ヨハネ「えー……でもぉ、いつ消えるか分かんないしぃ……」
善子「くっ……それ、ずるいわよ」
ヨハネ「ふふ、たまにはね」ギュウッ
善子「……ふん」
善子「いい、ヨハネ」
ヨハネ「?」
善子「…………あなたは私が絶対に消えさせない」
ヨハネ「……」
善子「無理でもなんでもいい。なにをやってでも、必ず、絶対にあなたは消えさせない」
善子「……分かったわね。だから、もう消えるなんて言わないで」
ヨハネ「……」
ヨハネ「……」 ヨハネ「……この近くよね」
善子「っとと……」キキーッ
ヨハネ「……」
善子「……確か」
善子「この道沿いに……」
善子「ちょっと入り組んだ、ところに」
善子「──────あった」
善子「……ここ、よね」
ヨハネ「そうね、間違いないわ────ここがあの鏡の製作者の店」
ヨハネ「……魔法堂」
善子「……いきましょう」
ヨハネ「……こんな時間に空いてるの?」
善子「叩き起こすわよ、急いでるんだから」
コンコン
ギィィ…
善子「……空いてる」
「いらっしゃい」
善子「!」 「────ひっひ、ようこそ魔法堂へ。よほど切実な願いを持つと見える」
善子「……前に一度、来たことがあります。覚えてますか?」
「おお? おぉおぉ、おまえは……ひっひ、どうやらあの鏡を使ったようじゃな」
ヨハネ「……」
善子「……なら、分かりますよね」
「ああ、わかるとも。そこの写し身の魔力が切れかかってる────それをなんとかしろ、といいたいんじゃろ?」
善子「! そう、そうなんです! 製作者のあなたなら、それができるかもって────」
「無理じゃな」
善子「えっ……」
ヨハネ「……」
「あの鏡に込めた魔力は一回ぶん。あくまで一度きりの使い切りじゃ」
「確かに鏡に新たに魔力を込めることはできる────が、それとは別に改めておまえの心を写す必要がある」
善子「そ、れって……じゃあ」
「うむ……おまえの隣にいる影は、必ず消える。その後、また鏡で分身を生み出したとして────いまのそれとは別人じゃ。限りなく同一人物に近い、な」
善子「────」
ヨハネ「善子……」
善子「……」フラッ
ヨハネ「善子!」ガシッ
善子「……なんで、なんでなの……?」
ヨハネ「……」
「すまんが、わしにはどうもしてやれん。それの魔力から見て……およそ3日間くらいじゃろう。残る時間を楽しく過ごすことじゃな」
ヨハネ「……善子、帰りましょ」
善子「ま……待って、待って……」 「……」
善子「わたしは……まだ、まだヨハネと一緒にいたいの……! もっとゲームもしたい、ごはんも食べたい、出かけたり、ダンスしたり……」
善子「たとえ、それが自分の心の写し身だとしても……私が欲しかった、大切な……ものだから」
善子「もう、この子は私の家族なのよ……! 一緒に起きて、ご飯食べて……遊んで……喋って……」
善子「ねえ、お願い! なんでもするから、必要なら私の命だって差し出すから、私からヨハネを奪わないで……っ!」
ヨハネ「……善子、もうやめて」
「……おまえの気持ちはわかった」
善子「じゃあ……!」
「それでもな……可能なことと不可能なことはあるんじゃ。おまえの命をもらったところで……それを今のままこの世界にとどめることは出来ん」
善子「なんでよ! あなたは、あなたは魔法が使えるんでしょ?!」
「────先を口にするでない」
善子「っ……」
「すまんな……わしの正体は気づいているんじゃろうが、口にはせんでくれ。事情があるんじゃ」
善子「……」 「ヨハネ……と言ったな」
ヨハネ「……はい」
「おまえは、その娘の望んだ通りのことをしてやれたか?」
ヨハネ「……はい、できる限りのこと尽くしました」
「……消えることに悔いはないか?」
ヨハネ「……それは」
ヨハネ「……」
善子「……」
ヨハネ「それは………………」
ヨハネ「……………………悔いは、ありません」
善子「……ヨハネ、あんた」
ヨハネ「ですが」
善子「!」
ヨハネ「まだ……善子と、一緒にいたいです。まだ、消えたくない……です」
善子「……ヨハネ」
ヨハネ「まだ、まだ善子といたい。それに……私自身にも、友達ができたから」
「そうか、そうかそうか……」 「……参ったのう。だから売りたくなかったんじゃ、あの鏡は」
「よかろう、わしには無理だが……おまえならばできるじゃろう」
善子「え……?」
「そやつの肉体は魔力で出来ているとは、聞いたな」
善子「……はい」
「わしには……そやつの身体に魔力を補充してやることはできん。だが小娘。おまえならば出来る」
善子「えっ……?」
「……分かっとらんのか」
善子「え、えっと……」
「……あの鏡は、おまえの心を写しそれを実体化させる。あの道具に込められた魔力はそこまでじゃ」
「それの肉体を形作るのは、おまえの心から溢れた魔力を媒体にしておる。つまりはおまえの生命力というやつじゃな」
善子「……ってことは」
「うむ……小娘。おまえの血を飲ませることで、それの魔力が補充できる」
善子「!!」
ヨハネ「……っ」
善子「じゃあ……そうしたら、ヨハネは消えなくて済むの……?」
「……いや、それでもせいぜい期間を伸ばすだけじゃな」
善子「伸ばすだけ……」 「いくら血液が潤沢な魔力源とはいえ────全身が魔力の塊であるそやつにとっては腹の足し程度にしかならん」
「消費に供給が追いつかず、いずれ必ず魔力が枯渇して消える」
善子「……」
「血液が嫌ならばキスでも構わんぞ? 粘膜接触で魔力の受け渡しもできる」
「だが気を抜くと吸われすぎて死ぬかもなぁ? ひっひっひ」
ヨハネ「もうやめてください」
「ふむ。わしにしてやれるのは今のアドバイスだけじゃ。あとはおまえたちで考え、行動するのみ」
「また用があれば来るといい、わしはずっとここで店をやっておる」
善子「……」ヨロッ
ヨハネ「……」ギュウッ
ヨハネ「帰ろ……善子」
善子「……」
ガチャッ
ギィィ…
「今度来た時はなんか買ってくれ、魔法のペンダントとかな」
バタン ・・・
ヨハネ「ほら、しっかり歩いて……自転車持ってるんだから」
善子「…………ねえ、ヨハネ」
ヨハネ「……なに?」
善子「……血を、飲ませたら……」
ヨハネ「……だめよ、それはだめ。ほら、帰りましょ……帰って明日に備えて寝ないと」
善子「じゃあ、じゃあ……キス、したらいいんでしょ? そしたらあなたは、まだ一緒に……」
ヨハネ「善子……落ち着いて、まって、だめよ!」
善子「だって、だって……っく、ぅぅうう……っ」
ヨハネ「……大丈夫、大丈夫よ。私はまだ消えないから……一緒だから、ね?」ギュウッ ナデナデ
善子「うぅ、っ……く、ぅぅう……っ」ギュウッ
ヨハネ「……よしよし、ごめんね、ずっと心配かけて」
善子「よ、はねっ……ぅぅ、ぅぁあっ……」
ヨハネ「……うん、帰りましょう。私たちの家に」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています