善子「ふたりのヨハネ」
レス数が900を超えています。1000を超えると表示できなくなるよ。
`¶cリ˘ヮ˚)| 「まだよ、まだ……時が来るのは、まだ……!」 〜黒澤家〜
ダイヤ「ただいま帰りました」
トテトテ
ルビィ「お姉ちゃんおかえり〜……あっ!」
善子「お、お邪魔します……」
ヨハネ「お、お邪魔します……」
ルビィ「善子ちゃん!ヨハネ様!」
ダイヤ「今夜、彼女たちも我が家で夕食を一緒にすることになりました。お母さまは台所に?」
ルビィ「うん! おさかな待ってるよ〜」
ダイヤ「では、二人のことを伝えて来ます。ルビィ、善子さんとヨハネさんをお部屋にお通しして」
ルビィ「はい!」
ルビィ「善子ちゃん、ヨハネ様、どうぞあがってくださいっ」
善子「は……はーい」 ヨハネ『なんか色々やばい』
善子『直接脳内に!?』
ヨハネ『テレパシーを忘れるんじゃないわよ』
善子『ああ、そうだったわ……』
善子『萎縮しちゃうくらい凄いわね……』
ヨハネ『ええ……でっかい日本家屋に趣のある玄関……』
善子『飾られたお花や絵からもう……お金持ちのオーラが……』
ヨハネ『実際お金持ちなのよ。内浦の有力者らしいし』
善子『……まさかヤのつく……』
ヨハネ『いやいやいやいや……』
善子『いやいやいやいや……』 ルビィ「ここだよ〜」
ガチャッ
ルビィ「あ、あんまり見られると恥ずかしいんだけど……こ、子供っぽくないよね?大丈夫かな?」
善子「……めっちゃ可愛いんだけど」
ヨハネ「まさにルビィって感じの部屋だわ……」
ルビィ「えぇっ!? えと、あの……ぅゅ……///」
善子『こんな可愛い部屋がそんなお仕事の家にあるわけないわよねー』
ヨハネ『そうよそうよ、ええ、うん』
ルビィ「隣はお姉ちゃんの部屋だよ」
善子「生徒会長の部屋……」
善子「……みちゃダメ?」
ルビィ「えっ……や、やめときなよ、怒られちゃうよ?」
善子「こそっと見るだけよ、ちらっとちらっと」
ヨハネ「やめときなさいよバカ」
善子「えー……」
ダイヤ「そうです、人の部屋を見るようとするなんて性格の悪さが滲み出ますわよ」
善子「ひいっ!?」
ルビィ「ぴぎっ!?」 ヨハネ「もっと言ってあげて生徒会長、バカな私のオリジナルに」
ダイヤ「あなたもバカなことを言うんではありませんわ……」
ヨハネ「そんなっ!?」
ダイヤ「母に伝えてきました。夕食までしばらくありますから、部屋で待っているようにと」
ルビィ「はぁ〜い」
善子「あっ……でも、夕飯をご馳走になるのに挨拶しないわけには」
ヨハネ「そうね、私もひとっ飛びして菓子折りでも」
ダイヤ「気を遣わなくていいんです、先輩の誘いに応えただけですから」
善子「で、でもご両親は別で……」
ダイヤ「先輩の行為には?」
ヨハネ「……甘えるのが後輩の務め」
ダイヤ「母からも、構わないと言われていますから。夕食の時に言ってあげてください」
善子「……わかった」
ヨハネ「ありがとう生徒会長」
ダイヤ「ふふ、構いませんわ。可愛い妹二人のためですから」
ヨハよし『……妹?』 ダイヤ「ええ、我が家に来たからには二人は妹です♪ お姉ちゃんに甘えていいのよ?」
ヨハよし『えー……』
ルビィ「お姉ちゃんの悪い癖だよー……」
善子「癖……?」
ルビィ「自分より年下で懐いてくれる子がいたらみんな妹にしちゃうの」
ルビィ「千歌ちゃんとか曜ちゃんとか」
ヨハネ「oh……」
ダイヤ「あら、それは人聞きが悪いわねルビィ。あなただってすぐに人を姉にしようとするくせに」
ルビィ「あっ……えっと、その……!」
ヨハネ「姉?」 ダイヤ「ええ、わたくしというお姉ちゃんがいるのに、ルビィはすぐ人に懐いてお姉ちゃんにしようとするんです」
ダイヤ「千歌さんとか曜さんとか」
善子「なんでその二人なの?」
ルビィ「まるちゃんを妹にしようとした時はすごかったよ〜……? まるちゃん本気にしちゃったもん」
ダイヤ「あら、わたくしこそ本気ですわ」
善子「そうか……あの話はここにつながるのか」
ヨハネ「なるほど……こう来たか」
※2話参照 ダイヤ「それはそれとして、夕食までどうします?」
ルビィ「お姉ちゃんが善子ちゃんから借りたゲームとか」
ダイヤ「あ、あれは人様と遊ぶものではないです!」
善子「! ちゃんとやってくれてるの!?」
ダイヤ「え、ええと……それは、当然です。貸してもらいましたし……ええ、もちろん」
善子「生徒会長だいすき!」ギュウッ
ダイヤ「……!!!」
ヨハネ(貸したゲームを楽しんでくれるととても嬉しいゲーマーの精神……)
ルビィ「でも、何する? うちにあるゲームって……ほんとに善子ちゃんに借りたやつと、花札、将棋、囲碁、トランプ、麻雀……」
ダイヤ「四人で遊べるもの、トランプくらいしかありませんわね」
ヨハネ「麻雀は? 4人でメンツ揃うけど」
善子「ほんとよ、遊べるじゃない」
ルビィ「……いいの? 麻雀」
ダイヤ「いいんですか、あなたたち」
善子「えっ」
ヨハネ「……え?」 ルビィ「え、えっとね、善子ちゃん」
善子「う、うん」
ルビィ「ルビィとお姉ちゃん……すっっっっっっごく……強いよ?」
ヨハネ「!?」
ダイヤ「生まれてこれまで……家での娯楽は遊び尽くしましたからね。お正月に親戚の方々が集まった時はみんなで花札や麻雀で揉まれ……」
ルビィ「負けたらお年玉が減らされちゃうから……負けないように頑張って強くなって……」
善子「……」
ヨハネ「……」
ダイヤ「それでもいいのなら、やりますが……わたくしはあまりお勧めしませんわ」
ルビィ「ルビィも……」
善子「……ふ、ふふ」
ヨハネ「くふふ……ふふ」
ダイヤ「善子さん……?」
ルビィ「ヨハネ様……?」
善子「やるわよ麻雀!」
ダイヤ「!?」 ヨハネ「私たち2人が一緒になれば無敵! 麻雀は運要素の強いゲーム……なら勝ち目はあるわ」
ダイヤ「……いいんですね」
ルビィ「な、泣かないでね……? その、ほんとにルビィたち強いから」
善子「ええ、もちろん! 本気でやらないと面白くないわ」
ダイヤ「ではテーブルと牌を持ってきます。泣いても知りませんからね?」
・・・
その日、私たちは思い出した。
ダイヤ「それロンです。8000点」
善子「えっ」
自分の人生が────
ルビィ「ご、ごめんなさい! ロンです……その、16000点……」
ヨハネ「」
『不幸』に支配されていたことを。
ダイルビ『ロン』
ダイヤ「12000」
ルビィ「8000……」
ヨハよし『』
自分が運要素に関わる一切の才能がないことを。
最終的に私とヨハネは3回ずつトバされた。
南4局までたどり着くことはなかった。
ちょっと泣いた。 `¶cリ˘ヮ˚)| 「今回は短くてごめんなさい」
`¶cリ˘ヮ˚)| 「だけどこの魔力でまた保守、お願いね」
`¶cリ˘ヮ˚)| 「私のことは心配いらないわ、善子の幸せが、私の全てだもの!」
`¶cリ˘ヮ˚)| 「また会いましょう! サラバッ!」 ヨハネ様!魔力は大丈夫なんですか!?!
乙です!
ダブロン…… |c||^.-^||乙。ですわ!
>>496
>善子「生徒会長だいすき!」ギュウッ
ここを「お姉ちゃんだいすき!」ギュウッ
にしたルートを書いて頂いても、良くなくなくなくないですわよ。 ポリポリ `¶cリ˘ヮ˚)| 「私がヨハネで」
¶cリ˘ヮ˚)| 「私が善子……ってヨハネよ!」
`¶cリ˘ヮ˚)| 「見分け方は羽根が刺さってるか刺さっていないか、よ!」
¶cリ˘ヮ˚)| 「分かりにくいわ!」 この二人にin this unstable world歌ってほしい ・・・
『いただきます』
ダイヤ母「沢山ありますから、いっぱい召し上がってくださいね」
善子「あ、ありがとうございます……」モグモグ
ヨハネ「んむ……」モグモグ
善子「えっ……やば、おいしい……」
ダイヤ母「あら、本当?」
善子「はい……えと、お味噌汁も筑前煮も……すっごくおいしいです」
善子「ね!」
ヨハネ「……ええ、本当に美味しいです」
ダイヤ母「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいですわ♪ ダイヤもルビィも、素直で可愛らしい方とお知り合いになりましたわね」
ダイヤ「ええ……ふふ、いい後輩です」
ルビィ「大好きな友達だよっ」
善子「ちょ、ちょっとやめて……///」
ヨハネ「あら、照れてるの?」
善子「うるさいっ」
ダイヤ母「ふふ、仲が良くて素敵な姉妹ですわね♪」
善子「……///」
ヨハネ「ありがとうございます」 ダイヤ母「うふふ、今日いただいたお魚もとても美味しいですわね。まだまだお代わりもありますから」
ルビィ「うんっ!」
ダイヤ母「ダイヤ、また果南さんにお礼にみかんを送ってあげてください」
ダイヤ「ええ、すでに手配しております。明日には届くと思いますわ」
ダイヤ母「それはよかった、今年のみかんも甘くて美味しいですから、きっと喜んでもらえるわね」
ダイヤ母「あなたたちも、帰りにお土産としてもらってくださいな」
ヨハネ「あっ……その」
ダイヤ「お母さま」
ダイヤ母「?」
ダイヤ「その……善子さんたちは、みかんが得意ではないんです。なので、りんごを持たせてあげたいのですけれど」
ダイヤ母「あら、そうだったの? ごめんなさい、わたくしったら……」
善子「あ、いえ、そんな……こちらこそ、申し訳ありません」
ヨハネ「申し訳ありません……」
ダイヤ母「いえいえ、誰にも好きなもの、嫌いなものはありますから。せっかく持って帰ってもらうなら、好きなものをあげたいですから」
ヨハネ「ありがとうございます、奥さま」 ダイヤ母「あらあら、ふふ……奥さまなんて呼ばなくていいんですよ? おばさんで構いませんわ」
ルビィ「たぶん雰囲気に飲まれてるんだよ!」
ダイヤ「ルビィ……」
ダイヤ母「……ルビィ、あとでお話ししましょうね?」
ルビィ「ぴっ!?」
ダイヤ母「そういえば、さっき4人で麻雀をしていたんでしょう?」
ダイヤ「あ……聞こえていましたか?」
ダイヤ母「ええ、もちろん」
ダイヤ母「2人とも、いくら強いからと全力で叩いてはいけません。せっかくの相手がいなくなってしまいますよ?」
ダイヤ「すみません……」
ルビィ「ごめんなさい……」
ダイヤ母「まさかお金を賭けたり……」
ダイヤ「してませんわ!!」
ダイヤ母「……ならばよろしい」
ルビィ「お母さんはお金賭けないとやってくれないもんね」
ダイヤ母「!?」
ヨハよし『!?』 ダイヤ母「あ、あの……えっと、これは……!」
ルビィ「おうちで一番強いよね……」
ダイヤ「それはそうですが、ルビィ、言っていい事実と悪い事実が!」
ダイヤ母「だ、ダイヤまで……っ」
ヨハネ「厳格なお母さんのイメージが崩れた……」
ダイヤ母「そんなー!」|c||>△<||💦 ・・・
善子「今日は遅くまでありがとうございました。ご飯美味しかったです」
ヨハネ「ありがとうございました。2人揃って厄介になってしまって……こんなにりんごもいただいてしまって」ガサガサ
ダイヤ母「いえいえ。また来てくださいな、今日は楽しかったわ」
ルビィ「またねぇ〜……」ポヤポヤ
ダイヤ母「あらあら、ルビィったら……」
ダイヤ「わたくしがお見送りしてまいりますわ」
ダイヤ母「ええ、お願いね。さあルビィ、行きましょう」ポンポン
ルビィ「はぁい〜……」ヨタヨタ
ダイヤ「門までですが、行きましょう」
善子「ううん、ここで大丈夫よ」
ダイヤ「お客様ですから、ちゃんと送らせてください」
ヨハネ「大丈夫大丈夫、どうせ飛んで帰るし」
ダイヤ「……ふたりとも、先輩の好意には」
ヨハよし『……甘える』
ダイヤ「よろしい、では行きましょう♪」
善子「……ぐぬぬ」
ヨハネ(……いい先輩ね) ダイヤ「ちゃんとりんごは持ちましたか?」
善子「ええ、たっぷりいただいたわ」
ダイヤ「果南さんの魚も」
ヨハネ「ばっちり」
ダイヤ「よかった、それなら大丈夫ですわね。もし忘れ物があったら連絡ください。明日、持って行きますから」
善子「ありがとう」
ダイヤ「……そのお魚、ちゃんと全部食べるんですよ?」
善子「えっ……ええ、そりゃもちろんだけど」
ダイヤ「その一夜干しは、果南さんの心配ですから」
ヨハよし『心配?』
ダイヤ「その一夜干しをみんなに配ってると、果南さんは言いますが……必ずしも全員ではありません」
ダイヤ「基本は千歌さん、曜さん、そしてわたくし。善子さんは今日が初めてでしょう?」
善子「心配と魚がどう関係あるの?」
ダイヤ「果南さんは……人と仲良くなるのは得意ですが、気配りはあまり得意ではありません」
ダイヤ「心配してるからって、ストレートにそう伝えるのは苦手なんです」
ヨハネ「……私たちが心配だから、ってこと?」
ダイヤ「ええ、そうです。きっとたくさん食べて、体力をつけろ……と言いたいのでしょう。不器用なあの人らしい、不器用な優しさです」
善子「……」
ヨハネ「……」
善子「……ふふ、心配して魚って、変なの」
ダイヤ「果南さんらしいでしょう?」
善子「……うん」 ダイヤ「ですので、しっかりと気持ちを受け止めていっぱい食べること! それが果南さんへのお礼ですから!」
善子「……うん、わかったわ」
ヨハネ「……」
ダイヤ「……はい、それでいいのです」ニコッ
ダイヤ「さて、それでは……わたくしはここで」
善子「……ありがとうございました」
ヨハネ「……また、明日」
ダイヤ「ええ、おやすみなさい」
バサッ!!
ダイヤ「きゃっ……」
バサバサバサバサ…
ダイヤ「……」
ダイヤ(月明かりに照らされて、空を舞うふたりの少女)
ダイヤ(その姿はまるで────いえ、まさに天使のようで────)
キラッ
ダイヤ「!!」
ダイヤ「……き、気のせいですよね?」
ダイヤ(いま……ヨハネさんの姿が、一瞬…………) ・・・
バサッバサッ
善子「……ねえ、ヨハネ」
ヨハネ「んー?」
善子「ごはん、おいしかったわね」
ヨハネ「……そうねぇ、私なんて言葉失ったわ」
善子「そうそう、珍しいわよね」
ヨハネ「?」
善子「あんた、何食べても幸せそうな顔するのに……最近、あんまりいい顔してないから」
ヨハネ「……そう?」
善子「ちょっと気になってたのよ、本当に体調悪いんじゃないかって」
ヨハネ「心配してくれてたんだ、善子が私を」
善子「茶化さないでよ……腐っても家族なんだから、私とあんたは」
ヨハネ「……ありがと、心配いらない。私は元気よ」
善子「……」 善子「……私、あんたが生まれてきてくれて感謝してるのよ」
ヨハネ「えっ……どうしたの?」
善子「あんたのおかげで……センパイたちとも、もっと仲良くなれた……と思うし」
善子「私の、嫌な部分を少しは好きになれたと思う」
善子「だから……感謝してる」
ヨハネ「……ね、ねえ? 本当にどうしたのよ」
善子「私と……あんたは、もう、家族よね?」
ヨハネ「えっ……ええ、もちろん。私はあなたであなたは私……そして、唯一無二の姉妹」
善子「だっ、たら…………だったら」
善子「……あんたの身に起こってること、ちゃんと話して」
ヨハネ「────!!」
善子「私、分かってるのよ。ヨハネに何か、良くないことが起こってるって」
第6話・完 ¶cリ˘ヮ˚)| 「結界の保持、いつも感謝しているわ。褒めてつかわす!」
¶cリ˘ヮ˚)| 「私の魔力をリトルデーモンたちに授ける! あともう少しお願いね!」
¶cリ˘ヮ˚)| 「またね……リトルデーモンたち」 いつも乙です
終わりが近づいてきてるって思うと寂しい… その鏡を見つけたのは、学校の帰り道────なんとなく立ち寄った骨董店。
ビルとビルの間。なぜこのような場所に────と直感的に思ってしまうくらい薄暗い場所に、その店はあった。
外観は魔女の隠れ家と呼ぶにふさわしい、洋風の外観で────明らかに怪しさ満点の、人が一切入っていない、外も中も薄暗い店だった。
だが、私にはそれがとても魅力的だった。堕天使ヨハネである私には、その店が持つ不思議な雰囲気がとても心地よく感じたのだ。
だから、迷わず店に足を踏み入れた。
「いらっしゃい。ようこそ魔法堂へ」
私を迎え入れたのは、漆黒のローブに身を包んだ────それは美女にも老婆に見える、不思議な外見の女性。
「よほど切実な願いを持つと見える」
入った瞬間、ヤバイ店だこれ────と思った。私自身が占いをかじっているだけに、このような文句を唱える相手はだいたい胡散臭く見える。まあ私の占いは本物ですけどね。
しつれいしまーす────と小さく口にし、本当に暗い店内を見回す。店主っぽい人が何やらペンダントやら願いやら色々言っているが気にしない。
特に願いなんてないし、私は怪しい雰囲気を好んだだけで──── 「あっ」
目についたのはひとつの鏡だった。装飾がとても綺麗で、薄暗い部屋なのにぼんやりと光を写しているように見える。
不思議な魅力があった。
「その鏡は心を写す魔法の鏡じゃ」
「魔法の鏡?」
「そう。その鏡には特別な魔法がかけられておる────月にかざして願えば、おまえの心が現れよう」
「……それって、どうなるの?」
「それはおまえの心次第────汚れた心であれば、おまえの身を滅ぼそう。だが澄んだ心であれば────ひっひっひ、使ってみてからのお楽しみじゃ」
「ふうん……いいわね、心を写す鏡。いただくわ」
「良いのか? それよりも使い勝手のいい、なんでも願いが叶うペンダントの方が────」
「これがいいの」
「ぐむ……まあ、よいが」
返品は受け付けんぞ────と声高に言う女性を無視しつつ、なぜか惹かれたその鏡を購入した。
そしてその翌朝────私の心が実体として現れたのだ。 ・・・
自宅の前にある河川敷。
月明かりで真っ白に輝く川を背に、私は『私の心』と対峙する。
ヨハネ「私の体は魔力で構成されてる────って、前に話したことあったっけ?」
善子「……初めて聞いた」
ヨハネ「そっか……言ってなかったのね、私」
ヨハネ「まあ、そういうわけなの。私はあの鏡────『心を写す鏡』によって生まれた。あの鏡に写った、あなたの心から生まれた魔力を媒体にして、ね」
ヨハネ「もちろんその魔力は無限じゃない。使えば使うほど無くなって、最後には……」
善子「それ、って……もしかして、あんた」
ヨハネ「ええ────私の魔力はもう尽きかけてる」
善子「────」
ヨハネ「……ふふ、隠してたつもりなのに……よく気づいたわね。私はもう……満足に体を動かすこともできないし、食べ物の味も……」
ガシッ
グイッ
ヨハネ「っ……」
善子「っ、ふっ…………あん、た、あんた……なんで……!!」
ヨハネ「……なんで言わなかったのか、って? 言ったところで私にはどうにも出来ない。出来たとしても、何も知らない。製作者を除いて、ね」 善子「そんなっ……そんなのって……」
ヨハネ「だから、どうしようもないの。あとは魔力が尽きるまで、悔いがないように過ごすだけなのよ」
善子「……」
ヨハネ「……言葉も出ない?」
善子「…………」
ヨハネ「大丈夫よ、安心なさい。私がいる限り……いえ、消えるまでに、あなたのことは必ず幸せにしてみせる」
善子「……しあわせ?」
ヨハネ「ええ、そう。これも言ったことなかったわね────私はあなたを幸せにすることが願いなの」
善子「……」
ヨハネ「だから……最後まで、あなたの幸せのために頑張らせて」
善子「……」
ヨハネ「……ね?」
善子「……か」
ヨハネ「え?」
善子「ば〜〜〜〜か!!!」
ヨハネ「は!?」 善子「だーれがあんたなんかに幸せにされるかっての! 自分の幸せくらい自分で掴むわ!」
善子「そもそも勝手に私を幸せにして消えようなんて無責任にもほどがあるのよ!」
ヨハネ「じゃ、じゃあどうしろって言うのよ! 私の魔力はもうギリギリなのよ、いつ消えてもおかしくないのよ!」
善子「だったら消えるまでになんとかするわよ!」
ヨハネ「どう、するつもりよ……? あの鏡は────」
善子「製作者なら……なんとか出来るかもしれなんでしょ? なら、またあの店に行けば……」
ヨハネ「……!」
善子「……今から行くわよ、あの店」
ヨハネ「……まじで?」
善子「いついなくなってもおかしくないんでしょ! なら今から急ぐ!」
ヨハネ「で、でも私はもう受け入れて……」
善子「私が納得いかないから行くの! ついてきなさい!」
ヨハネ「…………わかったわよ、どうなっても知らないからね」
善子「……構わないわよ、それくらい」
善子「あんたがいなくなるほうが……嫌だ」
ヨハネ「……善子」 ・・・
ガチャッ
チリンチリーン
善子「乗った?」
ヨハネ「乗った……けど、自転車で行く距離なの?」
善子「急ぐためよ!」
ヨハネ「はあ……」
善子「じゃあ出発……ふぬ、っく」グッ
善子「ぬぐっ……くくく……」
善子「……はあ、はあ」
ヨハネ「……1mmすら動いてないんだけど。私がやろうか?」
善子「ちょっと……少し動かしてから飛び乗って」
ヨハネ「……はいはい」 シャーッ
善子「ふぅ、ふう……」
ヨハネ「……ねえ」
善子「なに?」
ヨハネ「……なんでそこまでして、私を助けようとするわけ?」
善子「……じゃあ、あんたはなんで私を幸せにしようとするのよ」
ヨハネ「えっ……質問に質問で返す?」
善子「いいから」
ヨハネ「えっと……そりゃあ、私はあなたの心の写し身よ? 私は、あなたが幸せになりたいって可愛い本心を現実にするために」
善子「ぎゃーー! やめろ、やめなさいこら! そんなこと考えてないし!?///」
ヨハネ「1人が寂しい、自分のノリにばっちり共感してほしいって」
善子「わー!わー!」
ヨハネ「あと……もう1人自分がいれば、って」
善子「っ……」
善子「……そうね、そう言ったのは覚えてる」
ヨハネ「……そしてあなたの心は、寂しさに溢れていた。Aqoursのみんなと一緒にいることに若干の気後れがあって────」
ヨハネ「誰かと一緒にゲームしたり、遊んだり、中二トークをしたい」
ヨハネ「Aqoursのみんなが嫌いなわけじゃない……みんなとももっと仲良くなりたい。色々な気持ちが混ざって、とにかく寂しくて仕方なかった」
ヨハネ「……それが、あの鏡に写ったあなたの心」
ヨハネ「だから、私はあなたが幸せに、笑って暮らせるようにするために生まれた────」
善子「……余計なお世話よ、まったく」 ヨハネ「でも、さっき私のおかげでみんなと仲良くなれたって感謝してくれたじゃない」
善子「わ す れ ろ!!」
`¶cリ´・ω・`)|ショボーン
ヨハネ「でも……嬉しいわ。本当に幸せに出来てるみたいで、安心した」
善子「……けど、あんたが消えたら意味ないから」
ヨハネ「……ありがと」ギュウッ
善子「ひぃっ!? ちょ、ちょっ……!」グラッ
ヨハネ「あっぶないわね!? しがみついてんだからバランスちゃんと保ちなさいよ!」
善子「いきなり抱きつく方が悪いんでしょうが!!」
ヨハネ「いいじゃないそれくらい!」
善子「悪くはないけどタイミングってものが……!」
ヨハネ「えー……でもぉ、いつ消えるか分かんないしぃ……」
善子「くっ……それ、ずるいわよ」
ヨハネ「ふふ、たまにはね」ギュウッ
善子「……ふん」
善子「いい、ヨハネ」
ヨハネ「?」
善子「…………あなたは私が絶対に消えさせない」
ヨハネ「……」
善子「無理でもなんでもいい。なにをやってでも、必ず、絶対にあなたは消えさせない」
善子「……分かったわね。だから、もう消えるなんて言わないで」
ヨハネ「……」
ヨハネ「……」 ヨハネ「……この近くよね」
善子「っとと……」キキーッ
ヨハネ「……」
善子「……確か」
善子「この道沿いに……」
善子「ちょっと入り組んだ、ところに」
善子「──────あった」
善子「……ここ、よね」
ヨハネ「そうね、間違いないわ────ここがあの鏡の製作者の店」
ヨハネ「……魔法堂」
善子「……いきましょう」
ヨハネ「……こんな時間に空いてるの?」
善子「叩き起こすわよ、急いでるんだから」
コンコン
ギィィ…
善子「……空いてる」
「いらっしゃい」
善子「!」 「────ひっひ、ようこそ魔法堂へ。よほど切実な願いを持つと見える」
善子「……前に一度、来たことがあります。覚えてますか?」
「おお? おぉおぉ、おまえは……ひっひ、どうやらあの鏡を使ったようじゃな」
ヨハネ「……」
善子「……なら、分かりますよね」
「ああ、わかるとも。そこの写し身の魔力が切れかかってる────それをなんとかしろ、といいたいんじゃろ?」
善子「! そう、そうなんです! 製作者のあなたなら、それができるかもって────」
「無理じゃな」
善子「えっ……」
ヨハネ「……」
「あの鏡に込めた魔力は一回ぶん。あくまで一度きりの使い切りじゃ」
「確かに鏡に新たに魔力を込めることはできる────が、それとは別に改めておまえの心を写す必要がある」
善子「そ、れって……じゃあ」
「うむ……おまえの隣にいる影は、必ず消える。その後、また鏡で分身を生み出したとして────いまのそれとは別人じゃ。限りなく同一人物に近い、な」
善子「────」
ヨハネ「善子……」
善子「……」フラッ
ヨハネ「善子!」ガシッ
善子「……なんで、なんでなの……?」
ヨハネ「……」
「すまんが、わしにはどうもしてやれん。それの魔力から見て……およそ3日間くらいじゃろう。残る時間を楽しく過ごすことじゃな」
ヨハネ「……善子、帰りましょ」
善子「ま……待って、待って……」 「……」
善子「わたしは……まだ、まだヨハネと一緒にいたいの……! もっとゲームもしたい、ごはんも食べたい、出かけたり、ダンスしたり……」
善子「たとえ、それが自分の心の写し身だとしても……私が欲しかった、大切な……ものだから」
善子「もう、この子は私の家族なのよ……! 一緒に起きて、ご飯食べて……遊んで……喋って……」
善子「ねえ、お願い! なんでもするから、必要なら私の命だって差し出すから、私からヨハネを奪わないで……っ!」
ヨハネ「……善子、もうやめて」
「……おまえの気持ちはわかった」
善子「じゃあ……!」
「それでもな……可能なことと不可能なことはあるんじゃ。おまえの命をもらったところで……それを今のままこの世界にとどめることは出来ん」
善子「なんでよ! あなたは、あなたは魔法が使えるんでしょ?!」
「────先を口にするでない」
善子「っ……」
「すまんな……わしの正体は気づいているんじゃろうが、口にはせんでくれ。事情があるんじゃ」
善子「……」 「ヨハネ……と言ったな」
ヨハネ「……はい」
「おまえは、その娘の望んだ通りのことをしてやれたか?」
ヨハネ「……はい、できる限りのこと尽くしました」
「……消えることに悔いはないか?」
ヨハネ「……それは」
ヨハネ「……」
善子「……」
ヨハネ「それは………………」
ヨハネ「……………………悔いは、ありません」
善子「……ヨハネ、あんた」
ヨハネ「ですが」
善子「!」
ヨハネ「まだ……善子と、一緒にいたいです。まだ、消えたくない……です」
善子「……ヨハネ」
ヨハネ「まだ、まだ善子といたい。それに……私自身にも、友達ができたから」
「そうか、そうかそうか……」 「……参ったのう。だから売りたくなかったんじゃ、あの鏡は」
「よかろう、わしには無理だが……おまえならばできるじゃろう」
善子「え……?」
「そやつの肉体は魔力で出来ているとは、聞いたな」
善子「……はい」
「わしには……そやつの身体に魔力を補充してやることはできん。だが小娘。おまえならば出来る」
善子「えっ……?」
「……分かっとらんのか」
善子「え、えっと……」
「……あの鏡は、おまえの心を写しそれを実体化させる。あの道具に込められた魔力はそこまでじゃ」
「それの肉体を形作るのは、おまえの心から溢れた魔力を媒体にしておる。つまりはおまえの生命力というやつじゃな」
善子「……ってことは」
「うむ……小娘。おまえの血を飲ませることで、それの魔力が補充できる」
善子「!!」
ヨハネ「……っ」
善子「じゃあ……そうしたら、ヨハネは消えなくて済むの……?」
「……いや、それでもせいぜい期間を伸ばすだけじゃな」
善子「伸ばすだけ……」 「いくら血液が潤沢な魔力源とはいえ────全身が魔力の塊であるそやつにとっては腹の足し程度にしかならん」
「消費に供給が追いつかず、いずれ必ず魔力が枯渇して消える」
善子「……」
「血液が嫌ならばキスでも構わんぞ? 粘膜接触で魔力の受け渡しもできる」
「だが気を抜くと吸われすぎて死ぬかもなぁ? ひっひっひ」
ヨハネ「もうやめてください」
「ふむ。わしにしてやれるのは今のアドバイスだけじゃ。あとはおまえたちで考え、行動するのみ」
「また用があれば来るといい、わしはずっとここで店をやっておる」
善子「……」ヨロッ
ヨハネ「……」ギュウッ
ヨハネ「帰ろ……善子」
善子「……」
ガチャッ
ギィィ…
「今度来た時はなんか買ってくれ、魔法のペンダントとかな」
バタン ・・・
ヨハネ「ほら、しっかり歩いて……自転車持ってるんだから」
善子「…………ねえ、ヨハネ」
ヨハネ「……なに?」
善子「……血を、飲ませたら……」
ヨハネ「……だめよ、それはだめ。ほら、帰りましょ……帰って明日に備えて寝ないと」
善子「じゃあ、じゃあ……キス、したらいいんでしょ? そしたらあなたは、まだ一緒に……」
ヨハネ「善子……落ち着いて、まって、だめよ!」
善子「だって、だって……っく、ぅぅうう……っ」
ヨハネ「……大丈夫、大丈夫よ。私はまだ消えないから……一緒だから、ね?」ギュウッ ナデナデ
善子「うぅ、っ……く、ぅぅう……っ」ギュウッ
ヨハネ「……よしよし、ごめんね、ずっと心配かけて」
善子「よ、はねっ……ぅぅ、ぅぁあっ……」
ヨハネ「……うん、帰りましょう。私たちの家に」 |c||^.- ^|| ……
|c||;.- ;|| 乙です…
善子ちゃんもヨハネちゃんもいい子すぎる…
辛い… 善子ちゃんもヨハネちゃんもどっちも幸せになってほしい… もしかしたら魔法のペンダントが重要なアイテムなのかもしれない ¶cリ˘ヮ˚)|「店の名前は『マキハタヤマリカの魔法堂』かしら」 メノ癶ノ。癶リ え?体液の交換?レズセすれば良いじゃない? 俺も店主が勧めてくるペンダントが気になる
よしヨハに幸あれ なんだかんだヨハネ消滅エンドを見たい自分がいる
や、本当は残ったままでいてほしいけどね ブラック的にはいろいろやらかしたあげく、ヨハネだけが残りかわりに善子が消える ¶cリ˘ヮ˚)|まあそんなことは気にしないしないでー `¶cリ˘ヮ˚)|「私たち死亡ルート確定じゃない!?」 正直今まで善子9推しだったけどこのSS読んで5推しくらいまでに昇格したわ
1年生組めっちゃいいなぁ… 〜善子の部屋〜
善子「……」
ヨハネ「寝ましょう、善子。今日も学校でしょ? 早く寝て明日に備えないと」
善子「……寝ない」
ヨハネ「……寝ないって、どうしてよ」
善子「寝てる間に……あんたが消えたら嫌……でしょ」
ヨハネ「大丈夫よ……寝てる間は魔力の消費も少ないわ」
善子「でも、何があるかわからないじゃない……」
ヨハネ「善子……」
善子「……ねえ、お願いだから……血、飲んでよ」
ヨハネ「……それはだめよ。私はあなたを傷つけたくない」
善子「あなたが消える方が嫌なのよ……! その方が、よっぽど傷つく……」
善子「……キスでも、なんでもいいから……ねえ、ヨハネ……」グッ
ヨハネ「だ、だめっ! そんなこと、したら……善子の体が!」
善子「私はっ!!」
善子「わたしは……じゃあ、どうしたら……」
ヨハネ「私は大丈夫……善子が、私を想ってくれるだけで……生きていけるから」 善子「ぐすっ……ぅぅぅ……」ギュウッ
ヨハネ「……よしよし」
善子「っ、う……」
善子「…………ぐす……」
善子「……ぅ…………」
善子「…………………………」
善子「……すぅ……すぅ……」
ヨハネ「……」ナデナデ
ヨハネ「……ごめんね、善子。私があなたから魔力を吸うと────きっと殺してしまう」
ヨハネ「……死ぬ直前の猫ってこんな気持ちなのかしら」
ヨハネ「死ぬときにいなくなるのは────飼い主が自分の死ぬ姿を見て、泣くのが嫌だから」
ヨハネ「それなら……先にいなくなってしまえば、いつ死んだのか分からなくなる」
ヨハネ「死に目を知らない方が……幸せだろう、って」
ヨハネ「…………善子に言わせたら、余計なお世話ってもんでしょうけどね」
ヨハネ「…………いなくなろうにも、こんなにしがみつかれたらねぇ」
善子「すぅ……すぅ……」ギュウウゥゥ
ヨハネ「……背骨折れるっての」 〜翌朝〜
チュンチュン…チチチチ
善子「っん……」モゾモゾ
善子「……………………」ポケー…
善子「────!!」ガバッ
善子「……ヨハネ」
善子「ヨハネ! どこ!」バッ
バタバタバタ
ガチャッ
バタン!
善子「ヨハネ……ヨハネ!」
ガチャッ
ヨハネ「……」
善子「…………いた」
ヨハネ「……早く閉めて」
※トイレ 〜通学路〜
善子「ちゃんといる?」
ヨハネ「いるいる」
善子「……」ギュー
ヨハネ「もう……」
善子「……いなくなったら怒るわよ」
ヨハネ「分かってる……大丈夫、だからこうやって空も飛ばずに歩いてるんでしょ?」
善子「……」
『おはよー!』
善子「!」
曜「やっほ!」
善子「……曜センパイか」
曜「そんな言い方あんまりじゃないかなー」
善子「えっと……ご、ごめんなさい」
ヨハネ「おはよう、曜センパイ」
曜「あ、うん────」
ヨハネ「?」
曜「……あ、ヨハネちゃん!」
ヨハネ「毎日会ってるのに忘れる!?」
曜「いや〜……あはは! ちょっとしたジョークだよジョーク!」
ヨハネ「ったく……」 曜「……それで、善子ちゃんはどうしたの?」
善子「……」ムギュー
ヨハネ「……えっと、さびしんぼ?」
善子「ちがわい!」
曜「あはは、そうやってるとお姉ちゃん大好きな妹みたいだね」
善子「……」
曜「あ、あれー……? いつもなら怒るところじゃ……」
ヨハネ「……センパイ、今は、ちょっと」
曜「う、うん……ごめん」
曜「……なんかあったの?」ボソボソ
ヨハネ「……多分、そのうちみんなにも話すと思うから」ボソボソ
曜「……分かった。私でよければ力になるよ」ボソボソ
ヨハネ「……ありがと」ボソボソ
善子「……」ギュウ…
曜「……」
ヨハネ「センパイこそどうしたの? 変な顔してるけど」
曜「うーん……なんか頭がムズムズするっていうか……」
ヨハネ「はあ……」
曜「ちゃんと寝たはずなんだけどなー……」 〜学校〜
善子『いる?』
ヨハネ『……いるいる』
〜昼休み・屋上〜
善子「ちゃんと食べて」
ヨハネ「えー……」
善子「食事で少しは魔力が取れるんでしょ?」
ヨハネ「ほんの少しよ……」
善子「少しでも取れるなら……食べて」
ヨハネ「はいはい……」
るびまる『……』
善子「パンとかもあるから」
ルビィ「……朝からどうしたんだろう」
花丸「……うん」
〜放課後〜
善子「……」
ヨハネ「……みんなに話さなくてよかったの?」
善子「話したって……誰にも、どうにも出来ないもの」
善子「……やっぱり私の」
ヨハネ「だめ」
善子「……」
ヨハネ「こんなに元気な奴がすぐ死ぬわけないでしょ!」
善子「……」
ヨハネ「…………はー」 〜夜中〜
善子「すぅ……すぅ……」ギュー
ヨハネ「……」ナデナデ
ヨハネ「……」
pipipi...
ヨハネ「!」
ヨハネ「……」
【曜センパイ】
ヨハネ「……」
ヨハネ「……行ってくるわね、善子」ポンポン
善子「ん……すぅ……」 ・・・
ヨハネ「えっと……」
曜「あ、こっちこっちー」
ヨハネ「曜センパイ────と、リーダーとリリー!?」
千歌「やっほー! …………ヨハネちゃん!」
梨子「こんばんは、……うん、ヨハネちゃん」
ヨハネ「……なんで、3人とも」
曜「私が呼びました!」
千歌「ほら、これ!」
【LINE:Aqours二年部】
YOU:集合だ諸君!
チカ:ほえー?
桜内梨子:どうしたの?
【グループ通話が開始されました】
千歌「……って感じで」
ヨハネ「ほぼグル通じゃないの」
千歌「えへー」 曜「とりあえず……ヨハネ、ちゃん」
ヨハネ「……はい」
曜「ヨハネちゃんに……今、何か大変なことが起こってる……よね?」
ヨハネ「……」
曜「きっと善子ちゃんに聞いても答えてくれないと思ってさ」
曜「だからヨハネちゃんだけを呼び出したんだけど……正直に聞かせてほしいんだ」
千歌「曜ちゃんから、朝の話は聞いてるよ。あと……私たちも思うことはあるから」
梨子「……うん」
ヨハネ「……気遣ってくれてありがとう」
ヨハネ「正直に言うわ────」 ・・・
千歌「────」
梨子「────」
曜「…………」
ヨハネ「…………センパイたちもなんかあるんでしょ、私に言いたいこと。だいたい分かるけど」
曜「…………」
ヨハネ「当てようか?」
千歌「────いや」
曜「ちゃんと言うよ」
梨子「……」
曜「……ヨハネちゃん」
曜「私は…………」
曜「……私たちは、あなたのことを忘れはじめてる」
ヨハネ「────」
曜「……千歌ちゃんと梨子ちゃんにも聞いたから、間違いないと思う」
曜「それで……いま、その話を聞いて確信した」
ヨハネ「私が消えかかってる……だから、あなたたち忘れかけてる────」
梨子「……よはねちゃん」 ヨハネ「……うん、知ってたわ。私はあの子の心……だから、存在が希薄になれば……記憶からも消える」
ヨハネ「そして彼女の心に戻って────全て元通り。すべてが無かったことになる」
ヨハネ「……まあ、私も消えた時点で何もかも無くなるんだから仕方ない」
ヨハネ「どうせ私が覚えていられないんだから、みんなだって忘れた方が────」
ガバッ
ヨハネ「っ……ちょっと、3人して、なによ」
千歌「そんな、泣きそうな顔で……っ」
梨子「そんな泣きそうなこと言わないで……!」
曜「……」
ヨハネ「でも……その、悲しいのだって、そのうち忘れる」
ヨハネ「私が消えたら全て忘れて、無かったことになるわよ」
曜「そんなこと言わないでよ!」
ヨハネ「……」
曜「私たちは……忘れたくないから、今ここにきてるんだよ!」
ヨハネ「っ……」
梨子「……あなたは、善子ちゃんが大切なんでしょう? 何よりも大切で……何よりも大事で……」
ヨハネ「……そうね」 梨子「善子ちゃんもあなたが大切で……とても大事で」
梨子「でもね……私たちだって、あなたが大切なんだよ? 善子ちゃんの分身だから、とかじゃない」
梨子「あなたは……私たちの大切な友達で、仲間なんだよ。だから……忘れたくないの」
千歌「消えてほしくないんだよ、私たちだって!」
千歌「だから……だからね、私たち、忘れないようにいっぱい思い出そうって、決めたんだよ……」
千歌「……あなたのこと、今でも忘れそうになってる……これが、嫌だから……」
千歌「……ねえ、名前……何回でも教えて……?」
曜「その度に、覚えるから……だから……」
ヨハネ「……」
ヨハネ「……ふふ」 ヨハネ「仕方がないわね、我がリトルデーモンたち!」
ヨハネ「我はヨハネ! 黒より黒く、深き漆黒の闇より生まれし神!」
ヨハネ「さあ胸にしかと刻むがいい、この堕天使ヨハネの名を!」
曜「……うん! 覚える、何回だって!」
千歌「……ふふ、善子ちゃんが毎日言ってるはずなのに、なんで……なんでこんなに、初めて聞いたような気分になるんだろう……」
梨子「……ヨハネちゃん、ヨハネ……よはねちゃん……」
ヨハネ「……ありがとね、センパイたち」
曜「私たちこそ……ごめん」
ヨハネ「いいのよ……きっと3年生たちも同じなんでしょうね」
曜「たぶんね……」
梨子「……たぶん、忘れかけてることすら気づいてないと思う……まだ」
千歌「私たちも言われるまで気づかなかったからなぁ……」
ヨハネ「……そうなのね」
曜「……お願いだから、勝手に消えないでね」
ヨハネ「お願いされたわ。何も言わずに消えたりしない」 千歌「……そろそろ帰らないとやばいね」
梨子「あはは……そうだね」
曜「2人は内浦からだもんね……」
千歌「よーちゃんはいいよねー? 善子ちゃんちと近いしー」
梨子「今度は5人でお泊まり会、しないとね」
千歌「ほんとだ! 善子シェフのご飯食べないと! ルビィちゃんから聞いたやつ!」
ヨハネ「仕方ないわね……その時まで忘れないでよ、私のこと」
千歌「そっちこそ消えないでよ!!」
曜「消えたらぶっとばすよ!」
梨子「怒るからねっ!」
ヨハネ「はいはい……ほら、早く帰った帰った」
ようちかりこ『またねー!ヨハネちゃーん!』
ヨハネ「……」フリフリ
ヨハネ「……」
ヨハネ「…………」
ヨハネ「はぁ…………」
ヨハネ「……」 pi
ガシャコン
ヨハネ「……」パキッ
ヨハネ「ごく……んく、んくっ……」
ヨハネ「……はー」
ヨハネ「……」グッ
ヨハネ「……」スゥー…
ヨハネ(力を抜いたら、消え掛ける…………か)
ヨハネ「……」
ヨハネ「……センパイたちも、余計なことしてくれたわね」
ヨハネ「……尚更消えるの、嫌になったじゃん……」
ヨハネ「…………くそ、っ……」
ヨハネ「みんなに、迷惑かけて……私は……っ」
ヨハネ「私はどうしたら……」
どうしたら、みんなとずっと一緒にいられるの?
この願いは叶わないの?
神様──── ヨハネ「…………恩返し、しないと」
私はみんなから色々なものをもらった。
両親からは家族を。
ルビィと花丸からは友達を。
マリーからは仲直りの法則を。
生徒会長からは慈愛を。
果南センパイからは不器用な優しさを。
曜センパイ、リーダー、リリーからは────忘れたくないって言葉を。
そして────善子には、私という存在を。
だから私は……みんなにたくさんお返ししなくちゃいけない。
みんなのくれたものに見合うだけのものを。
でも、私にはどうしていいか分からない。
分からないから──── 善子「────この手紙を残します」
朝起きたら、ヨハネはいなくなっていた。
私が慌てて学校に来ると、部室の机に一枚の封筒────
そして、ヨハネが着ていたはずの────
私が貸していた衣服が、パイプ椅子の周りに散らばっていた。
善子「手紙なんて書いて、いなくなったの……あいつは」
【Aqoursへ】とだけ書かれた封筒。
それは……手紙。
ヨハネから、みんなへ向けての手紙。
善子「……みんな、いい?」
千歌「うん……」
ダイヤ「……構いません。事情は昨晩のうちに曜さんから伺っています」
善子「………………」 花丸。
あなたと食べた肉まん、とっても美味しかったわね。
あの日の肉まんみたいに優しくて、暖かいあなたの笑顔にいつも元気をもらったわ。
花丸「うふふ……それじゃまるで……まるが肉まんみたいだよ、もう……」
ルビィ。
あなたが私をいつも慕ってくれたのは、とても嬉しかったし楽しかったわ。
これからは、たまには善子をそう呼んであげて。
ルビィ「ぐす、ぅ……ぅう……よはね、さま……っ」 リーダー。
私がみんなに溶け込めるように計らってくれたわね。あなたが居てくれなかったら、どうなってたのかわからないかも。
これからもAqoursのリーダー、頑張ってね。
千歌「……ぅん、ぅ……ん……っ」
曜センパイ。
忘れたくないって言ってくれてありがとう。
家が近くだなんて最近まで知らなかったわ、また善子を遊びに誘ってあげてほしい。
私も一緒に遊びたかったけど、仕方ないわね。
曜「……わ、かったよ……っ! ぜったい、さそうから……!」
リリー。
あなたのピアノには、いつも感動をもらったわ。
きっとあなたの作る曲なら、ラブライブにだって優勝できる。自信を持って。
梨子「っ……ぐす、ぅう……」 生徒会長。
あなたとはもっとたくさん話がしたかった。
母のような厳しくも優しい愛で、みんなを守ってあげて。
ダイヤ「…………とうぜん、です」
果南センパイ。
あの魚、全部食べられなくてごめんなさい。
今更なんだけど。
ハグ、してみたかったわ。
果南「なんだ……そんなの、言えばよかったのに……ふ、ふふ」
マリー。
喧嘩をした時、泊めてくれて助かったわ。
そして仲直りさせてくれたことも。
あなたの明るさでみんなを守ってあげて、私のお姉ちゃん。
鞠莉「ぐすっ……あ、ぅうっ……」 そして……善子。
あなたは私のすべて、私の存在理由だったわ。
善子が幸せに、笑顔になれるようにするのが私の役目で、願いだった。
ねえ……私、ちゃんとあなたを幸せに、笑顔にできたよね?
ふふ、言いたいことは尽きないけど……ひとつだけ。
ありがとう。
愛しているわ。
大切なAqoursのみんな。
心からありがとう。
津島ヨハネより。
善子「……ヨハネ」
善子「…………私も愛してるわ」
善子「ぐっ……ぅ、ぅ…………う゛ぅぅっ……っ」
善子「ぅわぁぁあああああっ……ぁぁぁぁあっ……」ボロボロ
第7話・完 ¶cリ˘ヮ˚)|「……」
¶cリ˘ - ˘)| 「……きょうは、ここまで」 きょうは、ここまで……か!!
END かと思って読んでたわ
なきそうだわマジで
いい子過ぎるだろヨハネ…
で?続きはいつ読めるん? 追いついたと思ったらクライマックス迎えてた
こっからどうなるの?気になるわ >>636
縦読みとか久しぶりに見た希ガス
俺も消滅エンドは回避して欲しい 消滅してもしなくてもいいじゃん
作者の好きなほうを書かせてあげようぜ `¶cリ˘ヮ˚)|「わたしは……不滅だあああああ」 `¶cリ˘ヮ˚)|「あれだから!私の魔法にコンティニューとかいうのがあるから!あるはずだから!うん!」 ¶cリ˘ヮ˚)|「更新したいのに時間がなくて全然書けないわ……」
¶cリ˘ヮ˚)|「いつも待たせてごめんね、リトルデーモンたち」
¶cリ˘ヮ˚)|「我が魔力を糧とし、もうしばらく待っていてちょうだい」 むしろ俺のなんかそれっぽい力を糧として存在し続けてくれ `¶cリ˘ヮ˚)|「明日か明後日には……少しだけでも投稿する予定よ」
`¶cリ˘ヮ˚)|「待たせてごめんなさい」 浦の星女学院。
午前7時00分。
月曜日。
「ワン!ツー!スリー!フォー!ワン!ツー!スリー!フォー!」
センパイの掛け声と手拍子でリズムを取りながらの振り付けの練習も、すっかり慣れた。
ところどころで指摘されるミスも、可能な限り修正できるくらいには……ダンスもうまくなったと思う。
授業は、まあ……適当にしてるけど。
花丸やルビィとは、休日はよく遊ぶようになった。
私の家に呼んだり、2人の家に行ったり、どこかへ遠出したり。
たまに2年、3年の先輩たちに連れられて出かけたり。
これは────俗に言う充実した日々というものではないだろうか。 部活に励み────
優しい先輩たちがいて────
いつも一緒に行動する大切な友達がいる────
これ以上ないってくらい、私はいま充実している。
彼氏は特にいないけど……毎日が、とても楽しい。
苦労も当然あるけど、それがどうした!って言えちゃうくらい、私は楽しいのだ。
そう、私はいま、幸せな毎日を過ごしている。
はずなのに────
善子「……はぁ」
ルビィ「ため息なんてついてどうしたの?」
善子「えっ……あ、私ため息ついてた?」
ルビィ「うん、ばっちり」
善子「そ、そう? 疲れてるのかな……」
花丸「んー……そんなことはないと思うずら」
善子「え?」 花丸「だって善子ちゃん、ここ1ヶ月くらいずっとそんな感じずら」
善子「……えっ」
ルビィ「あ、うんうん! 何か物足りなさそう……っていうか」
ルビィ「いつも窓の外を眺めてため息……って感じだよね」
善子「……いやいや、何で私がそんな」
善子「だって……いま、私すごく楽しいのよ? 部活も学校も楽しいし」
ルビィ「引きこもってたとは思えないくらいだね〜……」
善子「う、うるさい! 今までの時間が惜しく感じるくらい、いますごく楽しいってことよ!」
ルビィ「むーん……」
花丸「それなら、まるは何も言わないけど……」
善子「大丈夫よ! どーせ次のテストが近いからだって」
ルビィ「あ゛っ……てすと……」
花丸「……2人とも、ちゃんと勉強してるよね?」
善子「してるわよもちろん! ね、ルビィ」
ルビィ「……ソウダネー」
花丸「……ルビィちゃん?」
ルビィ「チャントシテルヨー」
花丸「ふーん……」 ルビィ「そ、それより善子ちゃん!」
善子「だからヨハネ!」
ルビィ「……ヨハネ様! 春休みにね、ちょっとお出かけしたいなってまるちゃんと話してたんだけど……どうかな?」
善子「ふ……よかろう、来たる聖戦が終わり次第、そなたたちの旅の門出を祝おうではないかっ!」
花丸「善子ちゃんも行くんだよー」
善子「わかってるっ! どこいくの?」
ルビィ「んー……まだよく考えてないけど、大阪とか東京とか、結構遠くに旅行に行きたいなって!」
花丸「おおさか! 美味しいものいっぱいずら〜!」
善子「いいわね、大阪! 日本一の高層ビル『あべのハルカス』に『通天閣』、『大阪城』そしてグリコの看板!」
花丸「ずら〜! 串かつ、たこ焼き、お好み焼き、明石焼き……」
ルビィ「明石焼きは明石だよまるちゃん」
花丸「ずらっ!?」
善子「確かにずらまるの言う通り、食べ物は魅力的ね……」
ルビィ「ヨハネ様の料理好きが唸りますか!」
善子「別にそんなんじゃないわよ! ……ただ、ヨハネも喜ぶと思って」
ルビィ「ヨハネ様も!」
花丸「あ、そうだね。ヨハネちゃんも一緒に……って」
ルビィ「あれ……ヨハネ?」
花丸「あれ……なんで……いま、まる」
善子「私でしょヨハネ!! ……って」
なんで私たち────
ヨハネが他にいる、みたいな言い方をしたの? ルビィ「こ、これはもしかしていつの間にかルビィたちはヨハネ様の魔法にかかってしまって……!」
花丸「いやいやルビィちゃん……ついに善子ちゃんの自分の中にもう1人の人格が……」
ルビィ「もうひとりのぼく!」
花丸「あいぼう!」
るびまる『でゅえる!』
ルビィ「ぼくのたーん!」
花丸「それはどうかな!」
善子「違うわ! 二重人格なんかじゃないから!」
善子「あ、あれよ……ほら、私は私、で……本来のヨハネとしての自分が存在するから、そんなちょっとこう、あれな言い方でね、うん」
花丸「ふーん……」
ルビィ「もうひとりのぼくじゃないんだ……」
花丸「がっかりずら」
ルビィ「ねー」
善子「勝手に期待して勝手に落ち込むなっ!」
キーンコーン
花丸「あ、チャイム」
ルビィ「じゃあ行き先考えようよ! あとで4人……じゃないや、3人で!」
花丸「あれれ? ルビィちゃん、また……」
ルビィ「ち、ちがうよ! 今のは本当に間違えただけなのっ!」
善子「はいはい、いいからさっさと席について……」
善子「…………」グッ パッ
そう────私は今、とても充実した、幸せな毎日を過ごしている。
過ごしているのに────どうして?
胸にぽっかりと穴が空いたような────得体の知れない虚無感があるのは。 〜善子の家〜
善子「ただいま」
善子「……」
いつも通りの家。
帰っても誰もいない、日常通りの家。
こんなこと、もうずっとだから慣れている。
母は学校の先生で帰りが遅く、父は出張が多くて家にあまり帰らない。
もう慣れっこだ。
慣れっこのはずなのに────やっぱり、違和感がある。
なぜか、ひとりで『ただいま』を言うのがとてつもなく寂しいのだ。
それは────つい最近まで、誰かと一緒に『ただいま』を言っていたのでは、と思ってしまうくらいに。
どうしてだろう────
善子「まぁ……考えてもわかんないんだけどね」 部屋に入ってすぐ、私はいつものようにカバンを投げ捨てながらゲームの電源を入れる。
適当なソフトを入れて、おなかが空くまでやりっぱなし。
それが、家に帰ってからの私の日常。私の毎日の楽しみなのだ。
善子「……っはーー!」
善子「怒首領蜂……久しぶりにやると腕が鈍ってるのがよくわかるわ……」
善子「ちょっと気晴らしに別のゲーム………………ん?」ゴソゴソ
善子「……こんなゲームいつ買ったんだろ」
善子(ソロプレイヤーの私が、なんで2人プレイ前提のゲームを買ってるの……? 誰かが来たときに遊べるように……?)
善子(…………いれてみるか)
カシャ
ウィーン…
善子「……買った記憶は、ある」
善子「けど、なんで買ったんだっけ……」
善子「あ、セーブデータ…………2個ある?」
そのゲームに記録されていたセーブデータは2つ────データ名は『善子』と『ヨハネ』 善子「……なんで?」
善子「意味わかんないわね……他のにしましょう」ゴソゴソ
ガサガサ
善子「…………えっ」
善子「これも……これも」
善子「…………なんでいつの間にか私がやるはずないゲームがこんなにあるの?」
善子「誰かが……ううん、違う」
買った記憶はある────わたしが、誰かと買った、はず。
なのに、誰と買ったのかが思い出せない。
なんのために────って、それは遊ぶためなんだけど。
なんで私は、2人プレイ前提のゲームをこんなに買っているの……?
善子「……おかしい、わよね」
善子「もしかして……ここ最近の違和感も、ときどき無意識に口にする『ヨハネ』の存在も……」
善子「……まさか」 ・・・
善子「つい最近まで自分の他に、誰かもうひとり隣にいたような気がするんだけど……」
善子「……どう思う?」
花丸『……ついに善子ちゃんの中二病が次のレベルに移行したずら』
善子「違うわい!」
善子「……あんたにしか相談できなさそうなのよ、こういうこと」
花丸『うん……分かってるよ。まるが霊感っていうか……ちょっとだけ感じることができるから、頼って電話してくれたんだよね?』
善子「……ここ最近、なにか違和感はない?」
花丸『違和感……って、やっぱり善子ちゃん』
善子「ん?」
花丸『ときどき出てくる……「別のヨハネちゃん」と関係あるのかな?』
善子「…………多分ね」 善子「今日見つけたんだけど……家に2人プレイ前提のゲームがたくさんあったの」
花丸『ふたりぷれい?』
善子「そう……私はソロプレイがメインなの。だから2人プレイのゲームはほとんど買わない」
善子「なのに家にそれがいっぱいあって────しかも、なぜか買った記憶はあるのよ。どうして買ったのかは思い出せないのに」
花丸『……』
花丸『……おらもね』
善子「?」
花丸『ときどき……善子ちゃんから感じる気配に……何か物足りなさを感じることがあるずら』
善子「私の気配……?」
花丸『うん……おらも善子ちゃんと同じようになにか違和感があるの』
花丸『何かおかしい……何か忘れてる……みたいな』
花丸『まるで夢を見ていたのに……起きたら、その夢を忘れてしまうような』
善子「……夢」
花丸『うん……夢』
花丸『おらもね、ちゃんと理解してるわけじゃないんだ』
花丸『でも……この心に、もやもやがかかってるのは……Aqoursのみんながそう感じているはずずら』
花丸『それが一番大きいのは、もちろん善子ちゃんだと思うけど……』
善子「……わかった」
善子「心当たりがある……とかじゃないけど」
善子「みんなも同じ風に感じているなら……やっぱり、何かあったはずよね」
善子「……『記憶にない思い出』が」 ¶cリ˘ヮ˚)|「今日はここまでよ」
¶cリ˘ヮ˚)|「全然進められなくてごめんね」
¶cリ˘ヮ˚)|「少ないながらも、我が魔力で凌いでちょうだい」 そっか、記憶は消えても物はちゃんと残ってるんだな… ここんとこIn this unstable worldばっかり聴いてる俺にドンピシャのSSを発見してしまった 〜翌日・学校〜
昨日の電話を切った後、もう少し部屋を探してみた。
ゲームはあれ以上見つかりはしなかったけどひとつ、見つかったものがある。
それは────
千歌「おはよー善子ちゃーん!」
曜「ヨーソロー!」
梨子「おはよう善子ちゃん」
善子「ああ……おはようセンパイたち」
千歌「今日はひとりなのー?」
曜「ほんとだ、久しぶりな気がするね」
梨子「そういえば、そうかも」
善子「いやいや……いつもひとりじゃない、私。一緒に来るとしても、たまに曜センパイと会うくらいで────」
千歌「いや、そうじゃなくてヨハネちゃん────」
善子「!」 曜「……あれ?」
千歌「……わたし何言ってんだろ!?」
梨子「わたしも……あれ、なんかおかしいね、あはは……」
曜「なんか、いつも誰かいた気が……うーん」
千歌「……善子ちゃんなんか変だよ!」
善子「────大丈夫よ、リーダー。リーダーの頭は正常よ」
千歌「すっごく失礼じゃないかな!」
善子「私が必ず見つけるから……大丈夫よ」
千歌「……??」
曜「あれ、善子ちゃんそんな鏡持ってたっけ」
梨子「わあ、可愛いね。丸い手鏡?」
千歌「ほんとだ! カバンのデビル人形のとなりに鏡が!」
善子「ああ、これ────」
善子「たぶん手がかりよ、今みんなの胸にある違和感を解決するための」
梨子「……?」 ・・・
丸い鏡────
これは────私が買った。明確に覚えてる、これは私が買った……とても大切なものだ。
どうして大切なのか────その思い出はやっぱり、私の中には無い。
けれど感じる……私にとってこの鏡は、掛け替えのないほどに大切な思い出。
わざわざ綺麗な箱に入れて隠してあったんだから……これを隠した私は、よっぽど大切だったに違いない。
善子「……」
光に翳すと、鏡面が怪しく輝く。
────この輝きを覚えている。
全てを吸い込んでしまいそうなほどに美しい輝きを放つこの鏡を、私は覚えている。
よくわからない店で買ったこの鏡を月の光にかざした夜から。
その夜以降の記憶が曖昧になっていた。
だからこそ、私は確信している──── 善子「やっぱりこの鏡が鍵を……」
ルビィ「あ、その鏡!」
善子「ん……ルビィ? おはよ」
ルビィ「おはよ〜」
ルビィ「それ、前に見せてくれた鏡だよね! 光に当てたらキラキラするやつ」
善子「ああ、そうそう……よく覚えてたわね」
ルビィ「覚えてるよ〜! 買った日からずっと大事そうに持ってたのに、いきなり見なくなっちゃったから、失くしたのかと思ってたよ」
善子「失くしたりしないわよ、部屋に置いてただけ」
ルビィ「どうして?」
善子「……大切だからね」
ルビィ「そっかー……」 善子「ねえ、ルビィ」
ルビィ「?」
善子「私……この鏡、どこで買ったかって話した?」
ルビィ「んーん……学校の帰りに骨董店見つけて、そこで買ったって聞いたくらいだよ」
善子「骨董店……わかった、ありがとう」
ルビィ「? うんっ」
骨董店────そうだ、確かに古い店で買った覚えがある。
だけど外観は、場所は、名前は……何も覚えていない。
やっぱりこの鏡は……私たちの『思い出』に繋がる重要な手がかり。
あとはこれに繋がる……もうひとつ、何か鍵があれば──── 〜放課後・部室〜
鞠莉「antiqueのお店?」
善子「そう……たぶん、沼津なんだけど、知らない?」
鞠莉「そうねぇ……antiqueのお店と言われても、どんなものを扱っているかによって違うし」
鞠莉「マリーはあまりantiqueに興味ないから、やっぱり分からないカモ」
鞠莉「ごめんね、善子」
善子「ううん……いいのよ」
鞠莉「でも、どうしていきなりantiqueを? まさか古い時代の食器に宿る神様を……」
善子「フ……さすがね理事長、やはり我が目に狂いはなかったわ。さああなたも我と契約し、リトルデーモンに!」
鞠莉「なりませーん」
善子「……がくっ」
じゃあなんで乗せたのか!! 善子「で……その店を探してる理由は、これ」スッ
鞠莉「手鏡?」
善子「その鏡を売っている店を探しているの」
鞠莉「どうして?」
善子「……みんなの違和感の正体を突き止めるため」
鞠莉「違和感……」
善子「……私といて、感じることはない? つい最近まで、もう1人誰かがいた……ような気がしたり」
鞠莉「……」
鞠莉「…………それは、他の子にも聞いたの?」
善子「ええ。三年生以外には、みんな」
鞠莉「そう……で、今はマリーのターンってことね」
鞠莉「そうね、確かにふと感じることはあるわ。忘れちゃいけない大切なことを、忘れているような感覚がね」
善子「……やっぱり、あなたもなのね」 鞠莉「他の子も感じてるっていうことは……きっと果南やダイヤも感じてると思うわ」
鞠莉「善子が関係している……ってのは、初めて分かったことだけどね」
善子「手がかりはこの鏡だけ……なのよ」
鞠莉「それだけじゃあね……マリーにはどうしようもないかも」
鞠莉「内浦ならダイヤの家にお願いしたら探してもらえそうだけど……沼津なんでしょ?」
善子「ええ。だから、理事長の方が詳しいかと思って」
鞠莉「ふむ……頼ってもらえたのはとっても嬉しくて抱きしめたくなっちゃうくらいだけど、力になれなくてゴメンね」
善子「ううん……いいの。あなたにも違和感があるって分かっただけでも収穫よ」
善子「やっぱりこれは……考えないようにしちゃダメだ。気のせいにして、忘れていいものじゃない……」 鞠莉「……でも!」
善子「!?」
鞠莉「そんなに思いつめた顔しちゃNoよ!」
鞠莉「やっぱりsmileが素敵よ? 善子、今日マリーのおうちに遊びにおいで!」
善子「えっ……いや、でも」
鞠莉「考えたところで何も進まないんだから、一回考えるのをやめましょう! 息抜きは大切よ♪」
善子「う、うーん……」
鞠莉「理事長命令」
善子「……ずるいわよそれ」
鞠莉「ふふ、それじゃあダイヤに見つかる前にこっそり帰りましょ」
善子「え、サボるの!?」
鞠莉「善は急げって言うじゃない♪」
pipipi...
鞠莉「あ、セバスチャン? 帰るから車を回してちょうだい」
善子「……」
鞠莉「さ、見つかる前に出ちゃいましょ♪」ソソクサ
善子「は、はい……」コソコソ ・・・
ガチャッ
ダイヤ「おはようございます────あら、果南さんだけですの?」
果南「うん、私もさっき来たとこなんだけど……」
ダイヤ「そうでしたのね。今日は部室の大掃除をすると前々から言ってましたし、全員が集まる前にそれぞれ掃除する箇所を決めておきましょう」
果南「それがね〜……」
ダイヤ「え?」
果南「さっき鞠莉からラインがあって……ほら、これ」スッ
ダイヤ「な、なんですの……?」
『お掃除なんてめんどくさいからマリーは善子を拉致して帰って遊ぶ!』
果南「……って」
ダイヤ「…………………………」
ガチャッ
るびまる『おはようごz』
ダイヤ「あの2人はぁぁあーーーーー!!!」
るびまる『ぴぎぃっ!?』 〜鞠莉ハウス〜
鞠莉「どうぞあがって♪」
善子「お邪魔します…………相変わらず広い……」
鞠莉「んふふ、メイドや執事のみんなが綺麗にしてくれてるの」
善子「本当にすごいわね理事長……さっきのセバスチャンさんもイケメンだし」
善子「高身長で外国人で黒髪で眼の色も紅くて…………まるで悪魔の使いみたい」
鞠莉「善子はああいうのがタイプ?」
善子「ぁ、いや……そ、そういうわけじゃないわよ!? ただ、まあ……イケメンはイケメンだから」
鞠莉「ふむふむ……善子はセバスチャンがタイプ」メモメモ
善子「やめなさいよ!」
鞠莉「ふふ、女の子なんだからかっこいい男性に惹かれるのは当たり前よ♪」
善子「そういう理事長はどうなのよ」
鞠莉「マリーは秘密♡」
善子「はあ!? ずるい!」
鞠莉「ずるくなーい♪」
善子「ちぇっ……ずるいの」 鞠莉「まあまあ落ち着いて落ち着いて」
善子「落ち着いてるわっ! ……で、なにして遊ぶつもり? 私、理事長と違ってインドア派なんだけど」
鞠莉「なにって決まってるじゃない、ゲームよ!」
善子「ゲーム!?」
鞠莉「Yes! やる相手がいないから、放置してたんだけど……ほら、PS4でーす」
善子「ほんとだ」
鞠莉「ふふ、善子に仕込まれた格ゲーのスキル、今ここであなたに見せてあげるわ!」
善子「……いや、私、理事長とゲームしたことないわよ? PS4あることすら初めて知ったし」
鞠莉「……あれ? そうだっけ」
善子「そうよ」
鞠莉「じゃあ誰に教えてもらったのかしら……うーむ、分からないわね」
善子「むぅ……」
鞠莉「まあ、せっかくだしやりましょ! 起動起動っと……」ピッ
ウィーン…
鞠莉「コントローラーはこれね。アカウントは……」 【アカウントを選択してください】
『マリー』
『ヨハネ』
『ゲスト1』 善子「…………………………!」
鞠莉「そうね、善子はヨハネを選んで────」
善子「な、んで…………」
鞠莉「え?」
善子「なんでここにヨハネのデータがあるの!?」
鞠莉「……え? だってヨハネが来たから買って────あれ?」
善子「…………いま、なんて?」
鞠莉「わたし……いま、えっ……と」
鞠莉「ヨハネが来たから買った……って」
善子「……やっぱり、誰かがいたのよ。私じゃない……別の『ヨハネ』が」
善子「やっぱり私たちの中にあったんだわ……今はいない、記憶の中からほとんど消えかけてる存在が……」
鞠莉「…………」
鞠莉「マリーも……たぶん、誰かがいないとゲームなんて買わないと思う」
鞠莉「それも、1度遊びに来ただけで買うわけない……たぶん、しばらくうちに通い続けるか、泊まるか……それくらいじゃないと」
善子「……理事長にそれを買わせたのが、『ヨハネ』……?」
鞠莉「……そういう、ことになるわね」
善子「じゃあ……他のメンバーにも聞けば……!」
鞠莉「……何かしらの痕跡は見つかるかもしれない」 鞠莉「でも問題はどうしてそれを今まで忘れていたか、今でも完全に思い出せないのか、よ」
善子「それの鍵を握るのが、この鏡……のはずなのよ」
善子「鏡を買った店さえ思い出せれば……」
鞠莉「とりあえずマリーの方でも探してみるわ。執事やメイドにも聞いてみる」
善子「……ありがとう、理事長」
鞠莉「……でも、ひとつきかせて?」
善子「?」
鞠莉「どうして善子は、その消えてしまった人を追いかけようとしているの?」
善子「…………」 鞠莉「忘れてしまっているなら……その方が幸せだってこともあるかもしれないよ?」
善子「………………関係ないわ」
善子「私が会いたいから────それ以上に理由なんてない」
鞠莉「……そう」
善子「それに、理事長だってそうでしょ? そのゲーム買って一緒に遊んだくらいなんだから」
鞠莉「……ええ。会いたいわ、とても会いたい」
鞠莉「一緒にゲームをした人は……私にとって、きっととても大切な子。まるで妹のように感じていた……」
善子「……まさか、覚えて」
鞠莉「ら、いいな〜って!」
善子「がくっ……」
善子「……ともかくこれで決まった。必ずこの鏡の店を見つけて、私たちが忘れた存在を探すわ」
鞠莉「OK! じゃあまずお茶とお菓子とゲームにしましょ! せっかく来たんだからこれで帰らせはしないよ?」
善子「えっ……探しに」
鞠莉「うちのにやらせるから! ほらほら!」
善子「も、も〜……」
鞠莉「それともこのゲームに自信はないの?」
善子「は?」カチン
善子「天才ゲーマーヨハネの力、見せてあげるわよ!!」
鞠莉「よしきた!」
このあとめちゃくちゃ格ゲーやった。
理事長は結構強かった。 ・・・
善子「夕食までご馳走になって……お邪魔しました」
鞠莉「ノンノン♪ 可愛い可愛いsisterが遊びに来てるんだから、最高のおもてなしをするのが普通でしょ?」
善子「妹じゃなくてヨハネ!」
鞠莉「ふふ、ヨハネはどんな子なのかしらね? 会うのが楽しみだわ」
善子「ふん、ヨハネは私よ? 私以外にこの名前を名乗る不届きものなんて……まず出会ったらビンタしてやるわ」
鞠莉「あら怖い」
善子「ふふん」
善子「……誘ってくれたおかげで少しスッキリしたわ。おまけに『ヨハネ』の存在もより強く意識できた」
鞠莉「……うん、またおいで」
善子「ええ、また来るわ────」
善子「……マリー」
鞠莉「!! …………ふふ」
鞠莉「最高においしいsweetsと紅茶を用意して待ってるわ!」 ¶cリ˘ヮ˚)|「今日はここまでよ」
¶cリ˘ヮ˚)|「いつもありがとう、リトルデーモンたち」 こんな話の進め方されたらハッピーエンドを期待しちゃうじゃないか 物語がまた動き出したね
SSという枠内で書いてるけど大筋の構想は金取っていいレベルで面白いと思う 話自体はどこかでみたようなのだけど、キャラへの感情移にゅ〜がハンパないのだよ >>762-769
よく訓練されたリトルデーモン達だなw ヨハネと善子でオーバーレイ
闇と闇重なりしとき、冥府の扉は開かれん。光無き世界へ 〜翌日〜
不思議な夢を見た。
目の前に『私』がいて、私はその『私』と遊んでいる────
2人で街を歩き、映画を見て、クレープを食べて。
そしてケータイを買って……喜ぶ『私』
私はそんな『私』を見ている、まるで過去を追体験していると錯覚するほどにリアルな夢。
だが、こんな思い出は記憶にない。
そもそも私の目の前に『私』が存在している時点で夢確定。
どう考えたって妄想、幻の領域だ。
けれど、どうして。
私は懐かしい気持ちになっているのだろう。
────pipipipipi...
ガバッ
善子「…………」
善子「……………………」
善子「…………夢、か」
善子「…………」ポロ...
…………夢で泣くなんて、ガラでもないわね。
ふふ、堕天使が夢から覚めたら泣いてた────なんて、神様が聞いたら怒りそう。 ・・・
善子「いってきます」バタン
先に行く母を見送ってから、私も家を出る。
いつも通りのひとりの登校。
最近……ひとりでいることに感じる寂しさが、本当にひどい。
だからなのか────『ヨハネ』のことを常に考えてしまう。
昨日はマリーの家で痕跡を発見した。
けれど、あれから発展は何もない。私の家には、あの鏡とゲーム以上の痕跡はひとつもなかった。
私が持っている違和感を、親も同様に持っている……ことだけ。
やっぱり『ヨハネ』は私と暮らしていた────と見て間違いはなさそうだ。
そして、それが何らかの理由で消えた────もしくは、いなくなった。 そんな夢みたいな現象が、そもそも有り得るの?
堕天使ヨハネだからとか、魔法だとか……
普通に考えて、そんな摩訶不思議アドベンチャーが実際に起こるなんて────ね。
けれどAqoursも私も親も、みんな『ヨハネ』の存在を感じている。
記憶の残滓のようなものが、まだみんなの中に残っている。
だったら……
善子「……連れて帰らないとね」
今日は学校にも何かがないか探そうと思う。
特に部室は、私が家以外で滞在する時間が一番長い場所だから────
ブーッ!ブーッ!
善子「……メール?」
善子「差出人は……黒澤ダイヤ。何よ朝から……練習時間には間に合うってのに」
『善子さんと鞠莉さんは少し早く来るように』
善子「……」
善子「…………昨日サボったの怒られる」
朝から少し憂鬱な気分だった。 〜部室〜
ダイヤ「……」
よしまり『……』
ダイヤ「何か言うことは」
よしまり『サボってごめんなさい』(土下座)
ダイヤ「あなたたち2人、本当にわかっているんですか?」
ダイヤ「昨日は! 部室の! 大・掃・除!!」
ダイヤ「大掃除をやるって何回も言いましたよね! 前日も先週も1ヶ月前から何回も!!」
善子「……」
鞠莉「だってめんどくさかったんだもーん」
ダイヤ「あなた理事長でしょうが!」
鞠莉「り、理事長であり生徒で……」
ダイヤ「だったら尚更でしょう!?」
鞠莉「ゴメンナサイ……」 ダイヤ「善子さんもです! そこの理事長が適当なのですから、あなたがしっかりしなければならないと言うのに……どうして2人で遊びに行きますか」
ダイヤ「あの子がいた時はもっとしっかりしている印象だったのに、なぜこうなったんでしょう……」
善子「あの子って?」
ダイヤ「あの子? あの子なんて言いましたか、私?」
善子「……」
ダイヤ「はあ……」
ダイヤ「いいですか? ここはみんなの部室なのです。なら、みんなで綺麗するのは当たり前のことですわ」
ダイヤ「普段、あなたたちも使う部屋ならば、ちゃんと責任をもって、一緒に掃除するべきではないですか」
よしまり『はい……』
ダイヤ「……今回はこの辺にしておきます。来月の掃除の日は、ちゃんと来るんですよ」
善子「わかりました……」
鞠莉「sorry……」
ダイヤ「……よし。ではふたりとも、片付けてねBOXからご自分のものを回収してくださいな」 ダイヤ「今回は特に携帯電話など貴重品ががありましたので、必ず持ち帰ってくださいまし」
鞠莉「ケータイ?」
ダイヤ「ええ。あと、善子さんの手紙が」
善子「……えっ、手紙?」
ダイヤ「ええ、内容はよく分かりませんでしたが……文字が善子さんのものでしたから、おそらくあなたのものでしょう」
善子「……」ゴソゴソ
善子「……これ?」ペラリ
【Aqoursへ】
ダイヤ「ええ、綺麗に封をして引き出しに入っていました」
善子「……」パラ
ペラ……ペラ
善子「……」
ダイヤ「まったく……なんですの、それは? まるで別れの手紙のようじゃありませんか」
ダイヤ「その割には自分にもあててメッセージが書かれているし……不思議なことをしますわね。またいつもの地獄弁ですの?」
善子「……」ペラ
ダイヤ「もう、返事も忘れるくらい読み込むなんて……」 ダイヤ「ああ鞠莉さん、それは果南さんのですから持ち帰らないように」
鞠莉「あれ、ほんと? マリーも同じようなやつ持ってたと思うんだけど」
ダイヤ「あなたのとは模様が少し違うでしょう」
鞠莉「あれー?」
鞠莉「あ、ケータイ発見」
ダイヤ「ああ、それは……充電が切れていて画面がつかないんです」
鞠莉「それなら、マリーのbatteryで充電してみるわね」ガサガサ
善子「……ねえ、生徒会長」
ダイヤ「なんですか?」
善子「この手紙を読んで……何か、感じたりは、しなかった?」
ダイヤ「変な手紙だ────としか? ただ、胸にチクリと棘のようなものが刺さる感覚はありましたが……」
善子「……」
ダイヤ「花丸さんやルビィたちは、泣いてましたわね。やはり変な手紙ですわ……」
善子「……そう」
善子「泣いてたんだ……ふたりは」 ガチャッ
果南「おはよー」
ダイヤ「おはようございます」
鞠莉「good morning!」
果南「あれ、善子と鞠莉、早いね?」
ダイヤ「ふたりはお説教するために早く来てもらったんですの」
果南「あはは……そ、そっか」
果南「あ、善子、その手紙」
善子「……センパイ」
果南「あげた干物、食べてなかったの? なんのためにあげたと思ってるのさー」
善子「ち、ちがうわよ! ちゃんと食べたわよ、全部!」
果南「本当に食べたの? 善子は大丈夫そうだけど、あの子が不健康みたいだったから干物あげたのに」
果南「わざわざ食べてないです、なんて手紙にして……」
善子「……」
果南「こら、ちゃんと聞いてるの?」ダキッ
善子「は……ちょっ……!?」 鞠莉「か、果南お得意のお姫様抱っこ!」
果南「……うん、ちゃんとしっかり食べてるみたいだね! あとはヨハネが心配だけど…………」
果南「……あ、なんでもない」
ダイヤ「ヨハネ? 果南さん、ヨハネって」
果南「ううん、なんでもないから! ……なんか最近、たまに善子が2人いるみたいな変な錯覚しちゃうだけだからさ」
ダイヤ「……」
ダイヤ「……果南さんもなのね」
善子「えっ……」
善子「……もしかして、ふたりとm」
鞠莉「電源ついたわよー!」
ダイヤ「本当ですか?」ガタッ
鞠莉「ええ、いまロック画面を…………って、善子?」
善子「え?」 ダイヤ「ちょっと見せてください。…………確かに、善子さんの顔写真ですわね、しかも寝顔……」
善子「な、なっ……ななっ……」
果南「ほんとだ……あれ? ねえ、この写真…………」
鞠莉「what……?」
善子「ちょっと私にも見せて……!」
ダイヤ「……はい? な、なんですかこれは……」
鞠莉「あっ……も、もしかして善子、これ!」
善子「な、なに? ねえ、見せてよちょっと……ねーえー……」
ダイヤ「……善子さん、あなた、双子……とか、よく似た親族はいらっしゃいますか……?」
善子「えっ…………え?」
ダイヤ「こ、この写真……」
生徒会長がおそるおそる見せてきた、ケータイの画面。
映し出されていたのはひとつの写真。
そこに写っていたのは────
ふたりの『私』だった。 `¶cリ˘ヮ˚)|「第8話・完」
`¶cリ˘ヮ˚)|「短くてごめんね、今日はここまでよ」 9人じゃない……私たちが奏でるこの歌はっ!!
10人の……絶唱だぁぁぁぁぁぁ!!!!! 鞠莉「ねえ……善子、これ……」
善子「これ、って…………わたし、と……」
果南「善子が……ふた、いや……うぅ、なんだこれ……」
ダイヤ「善子さん……が、ふたり……?」
鞠莉「……ううん、きっと違うよ、ふたりとも」
ダイヤ「え?」
鞠莉「もちろん片方は善子……だけど、ねえ、善子。このもう片方は……」
善子「……うん、きっと…………『ヨハネ』だわ」
ダイヤ「よは……ね……?」
果南「ぁ、ぁあ……っ……」
果南「そう、そうなんだ……ヨハネ、やっぱり……」
鞠莉「果南?」
善子「センパイ、どうしたの?」 果南「……さっき、言ってたでしょわたし……善子が2人いる錯覚するって」
善子「……うん」
果南「でも、それは……やっぱり錯覚なんかじゃなかったんだよ」
果南「いたんだ、ここに。もう1人の善子……えっと、ヨハネだっけ? その子が……ここに」
ダイヤ「ま、まさか……そんな、これは善子さんがいつも堕天使ネタを言い続けるから、わたくしたちもそんな気になってしまっただけでは……」
鞠莉「違うよダイヤ。ヨハネはいたんだよ、ここに……私たちの目の前に」
鞠莉「善子の隣に」
鞠莉「その証拠がこの写真で……私たちがいつも感じている奇妙な感覚は、これだったんだ」
ダイヤ「では、あの手紙は……善子さんではなく、その『ヨハネ』さんが書いたもの……と考えると」
果南「……あんな風に書いたつじつまも合う、よね。何かの理由でいなくなってしまう前に……私たちに残したメッセージだ、ってさ」
善子「そっ、か……そっか……」ジワッ
鞠莉「……善子、泣いているの?」
善子「……泣いてなんか、いないわ。まだ……まだ会えたわけじゃないから」
鞠莉「……うん」
善子「……やっぱり居たのね、ヨハネ」
善子「ずっと探してたのよ、あなた。勝手にいなくなって……ほんとバカみたい。待ってなさいよ、本当に目の前まで引っ張り出してやるんだから」
ダイヤ「……」
果南「……」
鞠莉「……」 ダイヤ「……そのケータイは善子さんが持って帰ってください。その『ヨハネ』さんを探す手がかりになるかもしれませんから」
善子「……ありがとう生徒会長」
果南「もし私たちが力になれることがあったら、なんでも言ってよ! 少しくらい、センパイらしいことしなきゃねっ」
善子「センパイ……」
鞠莉「じゃあ、昨日言ってた鏡を見せてみたら?」
ダイヤ「鏡……?」
鞠莉「うん、善子の家にあった不思議な鏡……それを買った店を探すことが一番重要だと思ってるのよね?」
善子「ええ……その、不確定だけど……この鏡を買った後から、記憶が曖昧なのよ。何か奇妙な部分が抜けたりして」
ダイヤ「……なるほど」
ダイヤ「ではその鏡を見せてもらえますか?」 ・・・
ダイヤ「……店のことはだいたい分かりました」
果南「写真も撮ったし、あとは色々聞き込みしてみよっか」
鞠莉「内浦なら、やっぱりダイヤのおうちの情報網ですぐ見つけられたの?」
ダイヤ「そうですわね……ある程度は」
鞠莉「わーお……」
善子「ありがとうございます……先輩たち」
善子「私のために、ここまで……」
ダイヤ「何を言っているんです! 大切な後輩のためですわ、当たり前でしょう」
果南「そうだよ。後輩が困ってるのに無視するなんて、そんなの先輩じゃないじゃん」
鞠莉「よーするに、みんな善子の力になりたいって思ってるってコト♪」
善子「……ありがとう……ぐすっ」
果南「ど、どうしよう鞠莉……善子が泣いちゃう!」
鞠莉「Go 果南! 抱きしめる攻撃よ!」
果南「わ、わかった! 善子、ハグしよ!」ギュウッ
善子「わっ……」
善子「…………あったかい」ギュー
果南「……よしよし」ナデナデ
ダイヤ「…………」
ダイヤ「それにしても、沼津の怪しい店……どこかで聞いた、ような……」 〜教室〜
善子「……」
普通に考えたら、このケータイは私のものということになる。
けれど……私はこのケータイを見た覚えがない。なぜ今まで部室に放置していたのか────センパイの話によれば、これは部室の机の引き出しに、手紙とともに大切に保管されていたらしい。
誰も開けないように封をして、机の奥に追いやられて……いや、むしろそうすることで思い出さないようにしていた、とか。
善子「……」
この写真────私ともうひとりの『私』が写っている写真。
どう見てもこれは合成なんかではないし……これは私自身だ。
……多分、この恥ずかしそうに顔を背けているのが私だろう。
そして嬉しそうに笑っているのが多分……『ヨハネ』ということになる。
ここまで決定的な証拠を突きつけられたら……もう、信じるしかないわよね。
ヨハネはここにいた。
私と一緒に暮らしていた。
Aqoursのみんなとも仲良くしていた。
みんなから大切な仲間として受け入れられていた。
────だけどヨハネはいなくなった。 結局いなくなった原因は分からない────けれど、確実にここにいた。
なら……やることは決まっている。
善子「……」チャラ
この鏡を売っていた店を探す……だけ。
探したら会えるとは限らないけど……最後につながる手がかりはこの鏡しかない。
なら、これを作った人を見つけて、聞くしかない。
それしか────もう道はない。
花丸「善子ちゃ〜ん」
善子「ん」
花丸「あの〜……ちょっと数学を教えて欲しいずら」
善子「数学?」
花丸「今日、まるの列が当てられる日だから……教科書の問題だけ教えて欲しくて」
善子「んー……ルビィー」
ルビィ「はーいー?」
善子「ずらまるが数学教えてほしいんだって。因数分解について細かく知りたいみたい」
ルビィ「えぇ〜……なんでルビィなのぉ……」
花丸「国語は得意なんだけど、数学は苦手で……」
ルビィ「ぅゆ……ルビィも苦手なのに……」
善子「残念だったわね、私も苦手よ」
花丸「……ダメダメずら」
善子「あんたに言われたくないっての」 ルビィ「えっと、因数分解は……同じ文字をくっつけて……」
花丸「くっ……つけ……?」
ルビィ「なんでルビィの方がわかるの〜!」
善子「ずらまる、国語は神だけど数学はザルだから」
花丸「が、頑張ってるんだよこれでも!」
善子「……まあ頑張りなさいよ、私は高みの見物だわ」
花丸「むむむ……」
花丸「あ、そういえば善子ちゃん。昨日の大掃除なんだけど……」
ルビィ「そうそう! ケータイとお手紙……見た?」
善子「……ええ、見たわ。読んだし、ケータイもここに」
ルビィ「……そっか」
花丸「……まるたち、あの手紙を読んで、なんでか泣いちゃったずら」
ルビィ「……きっとヨハネちゃんは、いたんだよね? ルビィたちと一緒に」
善子「ええ、当然。……それに、まだ諦めてない。私は必ず会いに行く」
善子「……そのためにも、この鏡を売ってた店を探し出さないと」カチャ
ルビィ「うん、そうだね……」
花丸「……善子ちゃん、その鏡を売ってるお店を探してるの?」
善子「え、ああ……そうよ。これが手がかりになるはずだから」
花丸「……そのお店ってもしかして、魔法堂じゃないかな?」
善子「────え?」
花丸「あ、そこも教えてほしいずら……」
ルビィ「も〜……考えてよ〜」
花丸「数学だけはだめずら……」 善子「花丸……いま、なんて……?」
花丸「えっと、数学だけは……」
善子「……その前」
花丸「その前……あぁ、その鏡の売ってるお店でしょ? 魔法堂って言う────」
善子「どこっ!! その店、どこにあるの!!」ガタッ
ルビィ「ピギッ!?」
花丸「……よ、よしこちゃん?」
善子「その店の場所はどこって聞いてるのよ!」ユサユサ
花丸「ちょっ……や、やめてっ……」
ルビィ「よ、善子ちゃんちょっと落ち着いて!」
善子「はやく、はやく教えなさいよその店は────」
花丸「いっ……痛いよ善子ちゃん!」
善子「ぁ、ごっ…………ごめん……」パッ
花丸「はぁ、ふぅ……ふぅ……」
花丸「沼津の……バス停から帰る道を、少し逸れたところに────」
善子「………………────ぁ」 善子「…………そうだ」
善子「忘れ、てた…………」
ガツンと頭を殴られた────そう錯覚するほどの衝撃だった。
なぜ私は忘れていたのか? どうしてこんなにも近くにある店を?
それに、どうして花丸はその店のことを────
花丸「……ルビィちゃんから聞いたんだよ。前に、善子ちゃんから教えてもらったって、嬉しそうに話してくれたずら」
ルビィ「えっ……ほ、ほんとぉ? ルビィ覚えてないよ……」
花丸「……ほんとう?」
ルビィ「うゅ……」
花丸「で、でもほんとに教えてもらったのに……」
善子「……」ガタ
花丸「よ、善子ちゃん?」
善子「花丸、ルビィ……先生には適当に言っといて」
ルビィ「どこ行くつもり!?」
善子「……早退する」
花丸「……善子ちゃん」
善子「花丸」
花丸「ん……」
善子「ありがと。それと、思いっきり引っ張ってごめん、また後でお詫びするから」
花丸「う、うん……!」
善子「うん。じゃあ、よろしく────」ダッ
ルビィ「あ、善子ちゃんカバn」
ピシャッ!
ルビィ「置いてっちゃった……」
花丸「……善子ちゃん、いってらっしゃい」
タッタッタッ──── タッタッタッ!!
ダイヤ「善子さん!」
善子「生徒会長……!?」
ダイヤ「思い出しましたわ……あの、鏡のお店! ルビィが以前、話してくれたんです!」
善子「それなら今聞いたわ! ありがとう、行ってくる!」
ダイヤ「えっ、ちょっ……授業がもうすぐ始まりますわよ!?」
善子「早退するから!」タッタッタッ
ダイヤ「っ……あぁ〜もう! 今回だけですからね!」
……ありがと、生徒会長。 ・・・
全速力で学校を飛び出し、足を止めることなく道を駆け抜ける────が。
走り出して10分ほどは興奮が頂点に達していたためか、なりふり構わず学校を抜け出してしまったけれど……よくよく考えれば、バスの時間があった。
時間は今────8時35分。
田舎も田舎にある、このバス停は登校時間、下校時間以外にバスはないのだった。
結局私は沼津まで3時間強を歩き続ける羽目になり、私がいつも利用するバス停付近に来る頃には12時を回ろうかという時間になっていた。
……大馬鹿をやってしまったわ。
カバンを置いてきて正解だった。
鏡と携帯と財布だけをポケットに忍ばせて飛び出したのは、テンションが上がりすぎたせいだけど……結果的には良かったのかな。余計な荷物を持たなくて済んだし。
……と言っても、3時間のお散歩は死ぬほど辛かったわけだけどね。おかげで足が痛いわ。
────そして、私はついに辿り着いた。
ビルとビルの間。とても薄暗い閉所────立地のせいか、昼間だというのに寒い風が吹いている。
魔女の館を小さくしたものか、もしくは魔女の工房か。
看板は文字がかすれてほとんど読めず。
窓は埃まみれで中の様子は伺えない。
その館すべてから溢れる空気が、人を拒んでいるように見えた。
けれど────そう、私はここを探していた。
善子「……どれだけ冷たい歓迎でも、行くしかないでしょ」 コンコン
ギィィ…
善子「……」
扉は開いていた。
初めてきた時と同じように軽く私を迎え入れた。
そして────
「いらっしゃい」
初めてきた時と同じように女性の声が語りかける。
「ようこそ魔法堂へ。よほど切実な願いを持つと見える」
全てを見透かしているかのような物言い。まるでここに来る人は全て何か悩みがあるかのようだ。
それとも、悩みがある人を寄せ付ける何かがあるのか────今はそれを考える意味はないわね。
善子「こんにちは」
「ひっひ────そろそろ来る頃だと思っておったぞ」
善子「……会うのは2回目ね」
「なに?」
善子「え?」
「────そうか、忘れたんじゃな」
善子「……」 忘れた、か……私はここに来たのは、記憶の上では2回目。
だけど、ほんとうは……
「おまえがここに来るのは3回目じゃ。あの鏡を買ったとき、おまえの分身が消える前、そして今のな」
善子「……分身」
「今日おまえが来たのは、その分身を探しに来たからじゃろう?」
善子「……」
善子「……ヨハネってやつのことね」
「やはり、忘れておるようじゃ。それも当然か、奴は魔法の力で生まれた存在……消えてしまえば世界の修正力によって記憶も失われるものじゃ」
善子「世界……? 魔法……? 何を言ってるの、全くわからないんだけど」
「ふむ……おまえ、あの鏡は持ってきておるか」
善子「……ええ」
「それはわしが造った魔法の鏡」
善子「まほう……」
「持ち主の心を写し、それを見せる力を持っておる。今は使えぬがな」
善子「……」 少しずつ思い出してきた。
初めてここに来た時、この女性の話を聞かずに私はこの鏡を購入したんだ。
ゆらゆらと溢れ出す怪しげなオーラと、鏡という魔法のアイテムっぽい感じがとても気に入ったから……
そして。
「購入したその夜か……鏡はおまえの心を写した。そしておまえの心の奥に眠る願い────」
「わしは知らぬが、それを叶えんとした鏡は、おまえの分身を作り上げた」
鏡に込めてあった魔力を全て使ってな────と言った。
魔法。
心の願い。
分身。
買った夜のこと。
そこから分かる、ひとつのこと────
善子「鏡によって生み出された分身が……『ヨハネ』」
「うむ」
その通り、と頷いて続ける。
「魔法の力で生み出されたそやつは、おまえの願いを叶えるためにおまえをそばで支えておった」
「消える前も言っておったぞ、おまえの望むことはできる限りしてやった、と。幸せに、笑顔にしてやれた、と」
善子「……」
私の知らない話、だ。
こんな胡散臭い話を、どうして信じられる? 私の記憶では、会ったのは2回目で……こんなに話し込むほどの知り合いなんかじゃない。
ましてや魔法って……サタンとか堕天使とか、そんなのいるわけがない。全部私の中二病……設定だ。
だけど、だけど……その話を嘘だとは思えなかった。
全て真実だ────と、心が叫んでいるような気がするから。 善子「……そのヨハネは」
「消えたよ」
善子「……」
「分身は、あくまで鏡の魔力を媒体に作り上げられた。一挙手一投足すべてに魔力を消費し、魔法を使えばその消費量は段違い」
「魔力はいわば、その分身にとっての寿命じゃ。生きながらにして寿命を削っているようなもの」
善子「でも、魔力っていうからには、回復したり……」
「食事から魔力を微量に摂取することはできるが……魔力の塊である分身には、魔力を作る能力はない。言うなれば水道の蛇口を常に開け放っている状態じゃな」
善子「……」
「そして魔力を使い果たせば、当然消える」
善子「でも、それでどうして……記憶が消えるの? その、ヨハネとの……私たちの記憶が」
「これは特殊な事例なんじゃが……まあ、世界には修正力というものがあってな」
「イレギュラーが起こると、それを不可思議な力で消し去ってしまう。分身との記憶も、それじゃろう」
「まだ研究が進んでおらんから、わしにも分からんが……まあ、そういうものなんじゃ」
善子「……それは、もう思い出せないの?」
「…………」
女性は何も答えない。 善子「……なんで、答えてくれないの? もう思い出せないの? じゃあ、それなら……どうして私たちの脳裏に時々ヨハネの存在がよぎるの!?」
善子「私の家には、あいつが買ったゲームがあった! 学校にはケータイと手紙が!」
善子「それを見て、私は……私たちは、忘れていたことを思い出したような気がした……」
「待て、落ち着け。なんも言っておらん」
善子「じゃあ……」
「思い出すことは可能じゃ。記憶は消えても、思い出は違う。心の奥深くまで刻み込まれた暖かな思い出は、記憶が消えようとも残っているものじゃ」
「現におまえも、分身に関連する刺激を受けて思い出してきたじゃろう?」
「時間をかければ、分身との直接的な記憶は保証できんが、おおよそ思い出せるじゃろう」
善子「じゃあ……その子のことも」
「うむ」
善子「!!」 「だが、それには覚悟がいるぞ。忘れた記憶を刺激し、一気に取り戻すということは……脳に大きなダメージを負う可能性もある」
「ひっひっひ────そうなったら悲惨じゃぞ。廃人になってのたれ死ぬことだってある、家族や友達も驚くじゃろうなあ?」
「小娘……それでもやるか?」
善子「やる」
「」
善子「私は何したらいいの? 精一杯思い出そうとすれば?」
「待て待て待て待てぇえええ!!」
善子「なによ耳元でうるさいわね!」
「本気で言っとるんか!? 死んでもいいのかおまえ!」
善子「死なないわよ。それくらい耐えてみせるわ」
「それだけじゃないんだぞ!? 思い出すのに、まずダメージがあって……おまえはその後、分身を取り戻したいというじゃろう!」
善子「……当たり前でしょ。私はそいつに会いたい、思い出したいからここまで来たのよ? あなたの魔法の話を聞いて、いまさら代償なく取り戻せるとは思ってないわ」
「ぐぬ……おまえ、子供のくせに変に気合が入っとるな……」 善子「……それで、どうしたらいいの?」
「……そこのテーブルにペンダントがあるじゃろ」
善子「これ?」
「それをひとつ持って椅子に座れ。ちなみに売り物じゃから後で金はもらうぞ」
善子「はいはい……っと、へえ。綺麗ね」
「それはなんでも願いの叶うペンダントじゃ。わしが魔力を込めて作った逸品、それを売っておる」
善子「なるほどね……店に入った時の文句はこれを買わせるためのものなのか」
「ま、そういうことじゃ」
「だが注意しろ。そのペンダントは願いを叶えるが……その願いの大きさによって代償が異なる」
善子「?」
「大きな願いは身を滅ぼす、ということじゃ」
善子「……なるほどね」
「持ったら、わしの目の前に座れ」
善子「……」スッ
「そしてペンダントと鏡を胸の前に持ち、強く祈れ。鏡の力を借りておまえの思い出を刺激する。そしてペンダントの力で分身を取り戻す」
善子「でも、鏡にもう力はないって」
「わしは製作者だぞ? 鏡に新たな魔力を与えればそれくらい造作もないわ」
善子「……すごいわね、魔法って」
善子「わかったわ。……お願いします」
「目を閉じ、強く念じろ。記憶を取り戻したいと────」
善子「…………」スゥー
────やっとここまで来た。 私が知らない間に出会い、忘れてしまったもう1人の私。
あなたにもうすぐ追いつけるから……待ってて。
いま、そっちへ行くから────
善子「……私たちが忘れてしまった記憶、ヨハネがいた時の記憶を返して」
善子「そして────消えてしまったヨハネを返して。ずっとずっと一緒にいさせて」
そう願い、鏡を握る手に力を込めた瞬間だった。
カッ────とペンダントが強く輝いたかと思えば。
善子「──────────────────ぁ」
善子「ぁぁぁぁああああああああ─────────!!!!」
落ちる。
落ちる。
落ちる。
世界が全て反転し。
空へと加速しながら落ちていく。
眼に映るのは景色と呼べるほど美しいものではなく。
ただ流れるだけの閃光────いや、記憶の本流。
私が取り戻したいと願った記憶。
それが光となって世界を流れていく。
私を通り過ぎて彼方へ消えていく。 善子「まって────」
私はそれを追いかけようと空を落ちる。
加速は止まらない。
光に追いつくにはまだまだ足りない。
もっと速く。
もっと強く願わなくては、たどり着けない。
なぜなら私は、記憶だけではなくヨハネ自身も取り戻さなくてはいけないのだから。
だから止まるわけにはいかない。
この先にヨハネがいると信じて、私は加速し続ける。
やがて光を追い求める私の速度は音を超えた。
だが、届かない。
まだ届かない。 もっと────
もっと速く────
もっと強く────
だって、私は会いたいから。
あの手紙を読んだら、思ってしまったから。
私が幸せになれたのは、あの子がいたからだと。
あの子がいたからみんなと仲良くなれた。
あの子がいたからみんなと一緒に歩けるようになった。
あの子がいたから、私は笑えた。
だから、私はあの子に会いたい。
会うだけじゃなくて、もっと……もっと話をして、もっと一緒にいて、もっと遊びたい──── 善子「────────」
もう少し。
もう少しで届く。
あと少しで、あの光に追いつく────
手を伸ばす。
必死に手を伸ばす。
手を伸ばせば届く距離に光がある。
あと少し。
あと10センチ、5センチ、2センチ、1センチ────
────そして私は光を超えた。
掴んだと思った。
その光はあふれるような輝きを放ち、私へと向かう。
まるで鏃のような鋭さを持った光が向かってくる。
善子「ぁぁぁぁああああああああ─────」
刃となった輝きが私を刺す。
腕を。脚を。手を。頭を。首を。喉笛を。
全身のあらゆる場所を刺す。
痛い。痛い。痛い。
刺さったところから何かが流れ込んでくる。
突き刺さるような痛みと共に流れ込んでくるそれは────記憶だ。
ヨハネと過ごした記憶が私の中に流れ込んでくる。
忘れてしまっていた記憶が私の中へ落ちてくる。 善子「────ァぁああああァアあああぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁあぁあぁあああ!!!!」
いたい。いたい。いたい。
光が過っては消えていく。
目の中を閃光がほとばしる。
かつて見た記憶が。
忘れてしまっていた記憶が毒となり、行き場を求めて私の身体を蹂躙する。
光の奔流が暴れ馬のように私の身体を崩壊させていく。
皮膚を突き刺し血管を破壊し心臓を破る。
骨を砕き肉を潰し脳を破裂させる。
そこまでされても私の意識は鮮明になったまま消えない。
そうぞうをぜっする痛みだけが私のなかにのこっている。
しこうすらできない。
いまめの前を通り過ぎた記おくがいつのものかすらりかいできない。
なんでわたしがこんな思いをしなくちゃいけないの?
どうしてこんなにも苦しいの?どうしてわたしのからだがぐちゃぐちゃになっているの?
いたイ。イタい。いタい。
やメて。ヤメテ。やめて。
もうたえられない。だれかたすけて。もうさけんでもさけんでもいたいの。
もうやめて。
こんないたいのはいや。
しんジャう、いたくてしんじゃウ
やめてもうムリなのイタイのはいやなのおねがいしますたすケて────
たすケテたすけてたすけてタスケてたすけてたすケてたすけてたすケテたすけて────
たすけてたすけてタスけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて────── 『大丈夫ずら。善子ちゃんは1人じゃないよ』
いたみのなかで、あたたかいこえがきこえた。 『ルビィたちがついてるから!』
ちいさなてが、わたしのせなかをおしてくれる。
『そうだよ!みんなで会いに行こうよ!』
たよれる声が、私といっしょにあるいてくれる。
『前方確認異常なし!ヨーソロー!』
力強いゆびさきが、いく先をおしえてくれる
『善子ちゃんの帰りを、みんなで待ってるからね』
やさしい旋律が、私をまってくれる。
『無茶は良くないよら そんな時くらいセンパイを頼らないと!」
おおきな背中が、ふらついていた私を支えてくれる。
『1人でこんなところまで……あと少しですわ、諦めないで』
慈愛にあふれたまなざしが、傷ついた私の心を癒してくれる。
『ほら、あっちで待ってるよ? perfect smileでlet's go!』
美しい笑顔が、私に一歩を踏み出させてくれる。 善子「────あぁ」
私には────みんながついていてくれる。
みんなが私を、あの子を待ってくれている。
私はもうひとりじゃない。
Aqoursが、みんながいるから。
闇の中へ一歩、また一歩と足を進める。
闇の奥で蠢く影が見える。
痛みはない。
もうすべて思い出したから。
あなたと出会った日。
2人でケータイを買いに行ったこと。
毎朝空を飛んで学校まで送り迎えをしてくれたこと。
あなたを助けたくて、どんなことでもしようとしたこと。
すべて、すべて思い出しているから。
────だから、はやく。
こっちへ──── 『…………なんでここにいるのよ』
影が囁いた。
善子「会いに来たのよ、あなたに」
『どうして? どうして来ちゃったのよ!』
善子「会いたかったからよ」
『ダメよ、私はあなたと同じ世界にはいけない。また消えてしまう、またあなたを悲しませてしまう!』
善子「消えないわ、私がもう消えさせない」
『……無理よ、魔力で編まれた肉体だもの。いつか消えてしまうわ』
善子「弱気になるなんてあんたらしくないわね。いつもの自信たっぷりはどうしたの?」
『……バカね、ほんと。こんなところまで来たのに、笑ってるなんて』
善子「……舞い上がってるのかもね。また会えて嬉しいから」
『……』
善子「それにしても……ここ、真っ暗ね。ゲームも漫画もないし暇じゃない?」
『さあ……? 消えたと思ったら、今ここでいきなり覚醒させられたからね。私にも分からないわ』
善子「ふうん……じゃあ、あんたを連れて帰れば……復活ってことよね?」
『……善子』
善子「なに?」 『……私は覚悟を決めて消えたのよ? 手紙も書いて……みんなに、ごめんなさいって、泣きながら……泣きながら書いた』
『それなのに……のこのこみんなの前に帰れないわよ』
善子「……バカはそっちでしょ」
『……』
善子「いい、あなたは私の憧れ……堕天使ヨハネでしょう? それならいつもみたいに自信満々でいなさい」
善子「あんたが私を守ってくれたように……私も、あんたを守るから。ほら……いつまで座ってるの? 手を伸ばして」
『……善子。私がそっちに言っても……大変かもしれないのよ? 私を維持するためには、とっても苦しくて辛くて、嫌になるかもしれない』
『私を取り戻そうと足掻いたことを後悔するかもしれない。私は……私はあなたにそんなふうに思ってほしくない。あなたには、常に笑顔でいてほしい』
『だから私は自分の運命に従って────』
善子「……言ってくれたじゃない」
『え…………?』
善子「私とあなた……2人が一緒になれば無敵、ってね」
善子「さあ手を伸ばして! あなたの運命は……私が変える!」
『……っ!!』
そして、私は力なく伸ばされたヨハネの腕を──── ・・・
善子「────っは」ガタ
ドタン
善子「はあっ────、はあっ、ひゅっ……ひゅぅ、っ……はぁ、っあ」
「おい、大丈夫か!? しっかり落ち着いて息をしろ、もう全て終わったんじゃ!」サスリサスリ
善子「ひゅぅ……はぁ、はぁ、ぐ、っは……はぁ、はぁ……」
「よし、よし……ようやったな。おい、水を持ってきてやれ」
「はい!」
善子「……はあ、ぅふ……はぁ」
善子「こ、こは…………?」
「魔法堂じゃ……まだ喋るな、呼吸を整えろ」
善子「はぁっ……は、っは……」
「お水持ってきた! 善子、ほら……飲んで」
善子「ん、っく……んく、ごく……」 「しかし、本当にやってしまうとは思わんかったぞ……それほどに思い入れが強かったんじゃな」
「我がことながらお恥ずかしい……」
「とりあえずおまえ、服を着んか」
「……タオルとかでも貸してもらえます?」
善子「…………」
「……善子どうしたの?」
善子「ぁ、あ……あぁ……」
善子「よはね……」
ヨハネ「……あぁ」
ヨハネ「……あなたのおかげで帰ってこれたわ」
善子「……うぅ、ぅぁ……」フラフラ
「おい! まだ立てる状態じゃ……」
善子「よは、ね……よはね……」グッ…
ヨハネ「……」スッ
ギュウッ
ヨハネ「…………ただいま」
善子「ぉ、か……え゛りぃ……」ボロボロ
ヨハネ「……ぅん、うん……っ」ポロポロ ・・・
善子「……それにしても、本当に……取り戻せたのね」
ヨハネ「そうよ……あなた、あんなところまで来て……」
善子「……えへ」
ヨハネ「な、なによ……ニヤニヤして」
善子「し、してないし! ……えへ〜」
ヨハネ「な……なんなのよ……」
善子「ちょっと……ほら、ちょっと、ね?」
ヨハネ「?」
善子「うれしい……なあ、って」
ヨハネ「!! ……///」
「……なんじゃこの空間」
善子「あ、いたの」
「ずっとおるわ! わしの店じゃぞ!」
ヨハネ「ありがとうございます、善子に力を貸してくださって……」
「ん、ああ……それくらいは構わん。ペンダントも買ってくれたことじゃからな」
善子「……いつの間にか手の中に3個握らされてたんだけど」
「はて、なんのことやら。1個では魔力が足りんかったから、おまえが無意識に取ったんじゃないか?」
善子「……ありがとうございます」
「……ふん、そのぶん、ちゃんと料金はいただいたわい」
善子「やさしいのね、あなたって」
「……リカじゃ」
善子「え?」 リカ「巻機山リカ……で通しておる。そう呼べ」
善子「まきはたやま……って、変な名前」
リカ「なんじゃとぉ!?」
善子「ふふ、ありがとうリカさん。あなたのおかげで、大切なものに出会えて……取り戻せた」
リカ「ぉ、ぉう……まあ、よいよい、うむ」
善子「それよりヨハネ」
ヨハネ「?」
善子「身体に何か変わったところとか、ない? 前と比べて」
ヨハネ「……そういえば、魔力が減らないような」
善子「……おお、成功してるのねそれも」
リカ「なんじゃ、勝手に変なことしたのか?」
善子「実は、ずっと一緒にいさせてって祈ったから……もしかしたらと思って」
リカ「……おい、身体をちょっと見せろ」ポゥ
ヨハネ「は、はい……」
リカ「…………」
リカ「!!!???」ガタッ
ヨハネ「えっ……えっ!?」
リカ「な、なぜじゃ……なぜ体内に魔力を生成する機関が……」
ヨハネ「えぇぇぇえぇぇぇぇえ!!??」
善子「まさかそんな風に叶うなんてねぇ……うんうん、やってみるもんだわ」
ヨハネ「な、ななっ……善子に、そんな才能が……」
リカ「世界改変レベルの願いで、なんの代償もないじゃと……」
善子「?」 ヨハネ「……ほんとに、私が守ってあげないと……狙われるかもしれないわね」
善子「えっ……狙われるって何!? 機関なの、機関の策略なの! コングルゥなの!」
リカ「いいや、おまえはもうわしの元で修行しろ! 才能がある、わしが鍛えてやる!」
善子「え、なに! 私も魔法使いになるの!? 魔法使いの弟子なの!」
ヨハネ「守るってあんたみたいな人からよリカさん!」
リカ「なにぃ!? わしは真っ当な使い方をだな!」
ヨハネ「いいや許さないわ! 善子は私と一緒に幸せに過ごすの! Aqoursのみんなも一緒にね!」
リカ「ならばそのアクアとかいうやつら全部ひっくるめて面倒見てやるわい!」
ヨハネ「巻き込みすぎでしょあんたー!?」
善子「……結局どうなるの?」
結局ヨハネが逃げるように引っ張って店から出ました。 ・・・
ヨハネ「んーっ! シャバの空気は美味しいわねー!」
善子「仮釈放された模範囚かあんたは」
ヨハネ「ふふ、えへへ……嬉しいのよ」
善子「……まあ、私も嬉しいけど」
ヨハネ「よしこ〜♪」ギュウッ
善子「もぉ……抱きつかないでよ歩きにくい……」
ヨハネ「いいじゃない? 消える前はあんなに抱きしめてくれてたのに」
善子「い、言わなくていいから……///」
ヨハネ「ふふ、でも……あなたがね」
善子「?」
ヨハネ「忘れたはずの私に……会うために、頑張ってくれたなんて……信じられない」
善子「……ふん、当たり前よ。堕天使ヨハネは執念深いの」
ヨハネ「ヨハネは私!」
善子「……ええ、あなたに会いたかった。勝手に消えて……文句言いたかったんだから」
ヨハネ「ご、ごめん……」
善子「それはまあ帰ってからね! ちなみにみんなの記憶も戻してもらえるよう願ったし……多分大丈夫でしょ」
善子「帰りましょ、私たちの家に!」
ヨハネ「っ…………」
ヨハネ「うんっ! おなかすいた〜!」
善子「私もおなかすいた……って、ちょっともう23時!? やばい、はやくヨハネ!」
ヨハネ「わかったわ!」バサッ!
────ゴウッ!
久しぶりにヨハネに抱かれて飛んだ空は、とても美しくて。
この子が帰ってきたんだって、本当に実感できた気がして。
少し泣いてしまった。 〜翌日・部室〜
ルビィ「ヨハネ様〜!!!」
花丸「よはねちゃ〜ん!!」
ヨハネ「ルビィ、花丸……」
ヨハネ「ぁぁ……うぅ、た……ただいま〜!!」
よはるびまる『うわ〜ん!』
ダイヤ「そ、騒々しいですわよ! ヨハネさんが帰ってきたからって……」
鞠莉「なーんて言ってるダイヤもハグしたいんじゃない?」
ダイヤ「だ、だれが!」
ヨハネ「せいとかいちょぉ……」
ダイヤ「はぅっ……! さ、っ……サファイア〜!!」ギュウッ
ヨハネ「ただいま〜!!」ムギュー
鞠莉「ヨハネ! マリーも混ぜて!」ガバッ
ヨハネ「まりぃ〜……!」 善子「……」
果南「……善子?」
善子「なに、センパイ」
果南「……えいっ」ギュウッ
善子「むぐっ……な、なに!? なんで私!?」
果南「ヨハネを取られて寂しそうだったから……かなん♪」ナデナデ
善子「べ、別に……寂しくはないけど」ギュウッ
果南「素直じゃないな〜」
善子「違うから! センパイのぬくもりを感じようとしてるだけっていうかなんていうか……!」
果南「……余計恥ずかしいこと言ってないかなそれ?」 千歌「善子ちゃん!」
善子「!?」
果南「おっと千歌」
千歌「びっくりしたよ! 昨日いきなりヨハネちゃんのこと全部思い出してさ!」
梨子「しかも夜中だよお……? 起こされて大変だったんだから」
善子「リリー……お、お疲れ様」
千歌「善子ちゃんは電話でないしさー」
善子「だ、だって……多分その時間はまだ店に居たっていうか……」
千歌「む?」
曜「ヨーシコー!」
ヨハネ「だからヨハネよっ!」
善子「なんであんたが答えるのよ!」
ヨハネ「久しぶりに言いたいじゃない♪」
千歌「ヨハネちゃんだ!本物だ!」
ヨハネ「リーダー! 帰ってきたわよ私!」
千歌「元気そうだね〜! よしよしまた会えて嬉しいよ!」
曜「うんうん! あの日……話した後すぐ消えちゃうんだから、びっくりしたよ本当に」
ヨハネ「ああ……それは、本当にごめん……なさい」
曜「でも、もう消えないよね?」
ヨハネ「ええ! 私の身体は完璧よ、ご都合主義か!ってくらいにね」 ダイヤ「……よく分かりませんが、もう心配はない、と?」
ヨハネ「そうね!」
鞠莉「じゃあまたうちに遊びにきても大丈夫よねっ! gameやりましょ、game!」
ヨハネ「やるやる! マリーがどれだけ強くなったか見てあげるわ!」
果南「おっ! じゃあ今日は練習休みにしてみんなで遊ぼっか!」
ちかるび『さんせ〜!』
花丸「おらも、賛成……ずら!」
ダイヤ「ちょっ……な、何を勝手に……」
曜「はい! 曜ちゃんも賛成であります!」
梨子「それじゃあ……私もお邪魔しちゃおっかな……?」
善子「……って感じみたいだけど、どうする?」
ダイヤ「〜っ!! わかりました、わたくしもいきます!」
ちかなまり『いぇ〜い!』
ヨハネ「じゃあ善子! 早速飛んで……」
善子「私のことはヨハネと呼びなさいこらー! あと授業、授業はサボれないから!」
────こうしてヨハネは私たちの元へ帰ってきた。
前よりも私は素直になれる、と思うし。
もう、みんなもついているから……怖い事なんてひとつもない。
だからこれから先、ヨハネと暮らすことで何が起こっても大丈夫って言い切れる。
あの子と一緒に、みんなと一緒に乗り越えていける。
だって、私たちはヨハネだから。
そう────ふたりのヨハネは無敵だから!
最終話・完 `¶cリ˘ヮ˚)|「これでおしまいよ」
¶cリ˘ヮ˚)|「今まで見てくれてありがとう。心からお礼を言わせてもらうわ」
¶cリ˘ヮ˚)|「またどこかで会ったらよろしくね」
`¶cリ˘ヮ˚)|「そういえば善子、私のケータイはどうしの?」
¶cリ˘ヮ˚)|「私が持って……って、そういえばあんた、なんで勝手に人の寝顔をロック画面にしてんの!?」
`¶cリ˘ヮ˚)|「み、見たわね中を!?」
¶cリ˘ヮ˚)|「すぐ消しなさいすぐ!」
`¶cリ˘ヮ˚)|「おことわりしますぅー!」
ほんとにおしまい! ホントにMAHO堂のマジョリカで笑った
善子とヨハネに幸あれ ヨハネちゃん本当に良かった…
ヨハネちゃんを加えたAqours10人の物語もぜひ読みたいです
二人でin this unstable worldを歌っている姿を見たい… そういや書き始めは1月だったのか…超大作だな
本当にお疲れさん!見届けられて嬉しいわ
ご都合主義大いに結構、最高のハッピーエンドだから清々しい気持ちで読み終えられたよ 良かった……これ以上はないハッピーエンドで本当に良かった!!
お疲れ様!!ありがとう!!!最高だぜ!!!!
これは劇場版化希望!! おつおつ!ハッピーエンドで本当よかった!
マジョリカだったのかよw 善子は2次創作強過ぎる
アニメは勿体無い扱いだったなぁ >>1乙
ホラー系だと思って苦手だからスルーしてたけど読んでみたらほんわかした(*´-`*) よっしゃハッピーエンドやんけ!!
1話からずっと楽しく追わせてもらってたから寂しくもあるが…ヨハネが戻ってきて本当によかった
>>1乙! なんか「あなたの運命は私が変える!」ってとこシュタゲを初めてみたときの衝撃と同じものを感じた
大作乙乙!! |c||^.-^|| 盛大に乙ですわ!…次はワタクシのSSを描いて下さいまし! 良かったぁ……やっぱエンドはハッピーなやつに限るぜぇ〜
2ヵ月間もお疲れ様でした!
おもしろかったです! 今度はヨハネの存在を研究しようとする悪い組織に立ち向かうみんなの絆パワーがみたいれす 優良SSが完結したあとアーカイブするのが密かな楽しみ 皆幸せな終わり方でほんとよかった…!最高でした、ありがとう! レス数が900を超えています。1000を超えると表示できなくなるよ。