千歌「吸血鬼になったのだ!」
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曜「……何言ってんの?」
千歌「ホントだよ。ほら、この歯見てよ」
曜「わ、すごい尖ってる」
千歌「ね。こんなのが生えてるなんて、これはもうひとつしかないよ」
曜「ひとつって?」
千歌「吸血鬼だよ!」
曜「いや、牙が生えてる生き物なんてたくさんいるでしょ」
千歌「うぅ、私はもう人間には戻れなくなってしまったのだ……」
曜「おーい、千歌ちゃーん…………聞いてないし」 千歌「――あれ?」
鞠莉「どうしたの、千歌」
千歌「いない……」
鞠莉「え?」
千歌「いないんだよ、あいつが!」
鞠莉「嘘……確かに殺したはずなのに!」
千歌「そんな……」
鞠莉「貴方達、ちゃんと見張ってたわよね!?」
黒服A「勿論です。誰一人ここから出していません」
黒服B「血を吸われた者もいないはずです」
鞠莉「ってことは、出入口はひとつじゃないってこと?」
千歌「見て! 血の跡が壁の下に続いてる!」
鞠莉「まさか……」スッ ズンッ……ガチャッ
鞠莉「こんな所に隠し扉が……これよりもっと下があるっていうの?」
千歌「追いかけなきゃ!」
鞠莉「待って! ここまで来たんだもの、最後まで着いていくわよ」
千歌「……鞠莉ちゃんは、梨子ちゃんをお願い」
鞠莉「千歌!」
千歌「梨子ちゃん、きっと混乱してるから。鞠莉ちゃんが傍にいてあげて?」
鞠莉「……わかった。ならこれを持ってって」スッ
千歌「拳銃……でも」
鞠莉「ノープロブレム。何かあったら小原家の力で何とかするわ」
千歌「えぇ……」
鞠莉「ついでにこのイヤホンもつけていきなさい。あとスマホも」
鞠莉「暗闇で寂しくなったら、マリーが話し相手になってあげる」
千歌「……」ポカーン
千歌「クスッ……頼りにしてる」
千歌「――行ってきます」 ―――
―
千歌(すごく暗い。襲撃に備えなきゃ)
千歌(この通路が外に繋がってたとしたら……もう逃げられちゃってるか)
コツン
千歌(なんの音……!?)
コロコロ…
千歌(石……)
ルビィ「ねえ」
千歌「――っ」
千歌「……いつの間に」
ルビィ「手、組まない?」
千歌「え?」
ルビィ「同じヴァンパイアじゃん。仲良くしようよ」
千歌(暗くて、表情がよく見えない) 千歌「生きてたんだね」
ルビィ「はっ、私がどれだけ血飲んできたと思ってんの。純血種のヴァンパイアは、たとえ脳を破壊されようが死なない」
千歌「不死身ってこと?」
ルビィ「さあね。知りたいなら殺してみれば? ほら」
千歌「……」
ルビィ「クスッ……だよねー、君じゃ私は殺せない。だから交渉しようよ」
千歌「交渉?」
ルビィ「あの子は解放してあげる。その代わり君、私の仲間になって」
千歌「は……」
ルビィ「きっと楽しいよ。好きな時に、好きなだけ血を飲むんだ。私たちヴァンパイアに秩序やルールなんてものは必要ない」
ルビィ「ヴァンパイアは人間より強い。弱肉強食って言葉知ってるよね」
ルビィ「私たちは、地上の支配者なんだよ」
千歌「――残念だけど、ルビィちゃんはもう見つけてる。貴方の話には乗れない」
ルビィ「ふーん……つまんない」 千歌「それに、もし見つかってなかったとしても……」
千歌「ヴァンパイアが人間を制服するなんてことは、絶対にあり得ない」チャキッ
ルビィ「さっき私に銃が効かなかったこと、忘れたの?」
ダッ
パアンッパアンッ――
ルビィ「適当に撃ってるだけじゃ当たらないよ」
ルビィ(いや……違う。当てるつもりがない?)
千歌「……りちゃん……ねがい……」ボソッ
ルビィ(何かを呟いて……?)
ルビィ「気を取られてる場合かよ!」ダッ 千歌「くっ」ザッ
ゴスッ!
千歌「かはっ……」
千歌「ケホッ……オェ……」
ルビィ「鳩尾殴ったんだ、暫く立ち上がれないよ」
千歌「あ……ぐ……」
ルビィ「おらっ!」ガンッ
千歌「がっ!」
ゴロッ
ルビィ「おらっ! おらっ!」
ゴスッゴスッゴスッ
ルビィ「なり損ないの癖に粋がってんじゃねーよ!」
千歌「ぐっ……がっ……」
ルビィ「はぁ……はぁ……」 チカ……シッカリ……
ルビィ「ん……?」スッ
千歌「あっ!」
ルビィ「なに、このイヤホン」
ルビィ「まさか、ずっとこれで話してたの? 一体何が目的で……」
ルビィ(――まさか)
ルビィ「時間稼ぎ?」
千歌「……」
ルビィ「はっ……ハハ! お仲間が来るのをずっと待ってたのかよ! 情けねー!」
ルビィ「それでも誇り高いヴァンパイアなのかよ!? ……ああ、なり損ないだったか」
ルビィ「同種の情けで生かしてやろうかと思ったけど……気が変わった」
ルビィ「面汚しの君は、ここで殺していくよ」 千歌「……ベラベラ喋りすぎ」
パアンッ
ルビィ「ぐっ……」ドクドク
ルビィ(目が……!)
千歌「よっ……と」パンパン
千歌「あーあ、こんなの病院に返せないや」
ルビィ「お前……!」
千歌「散々時間稼いでくれたおかげで、私の目的は果たしたよ……もう少しで警察の機動隊が到着する」
ルビィ「は!?」
千歌「流石小原家だよね。その辺の手回しは得意分野らしいよ」
千歌「いくら不死身って言っても、牢獄に閉じ込められたら終わりでしょ?」 千歌「それと……貴方とはここでケリをつけるつもり」
千歌「お母さんの分、まだ返してないでしょ」
ルビィ「こ……の……」
ルビィ「殺す……殺す殺す殺す殺す殺すっ!!」
ルビィ「お前は!! ここで殺してやるっ!!」
ダダダッ
鞠莉「千歌っ!」
『警察だ! 止まれっ!!』 千歌「――っ!」ダンッ
ルビィ「があああああああああっ!!!」
鞠莉(――それは、一瞬の出来事だった)
千歌「……コプッ」
ルビィ「が……ぁ……」
鞠莉(両者の腕が、互いの胸を貫き)
千歌「あ……ぁ……」ガクッ
ルビィ「ちく……しょう……」
バタンッ
鞠莉(2人のヴァンパイアが、同時に崩れ落ちた) ――――――
――――
――
ワン…ツー…スリー……
果南「みんなお疲れ。今日の練習はここまでだよ」
鞠莉「水分補給しっかりねー」
花丸「ふぃー……疲れたずら」
善子「ズラ丸、みっともないわよ」
ルビィ「……」タタタッ
ルビィ「お姉ちゃん、お水」
ダイヤ「ああ、ルビィ。ありがとう」ナデナデ
ダイヤ「今日の分はちゃんと飲みましたか?」
ルビィ「うん」
ダイヤ「フフ、ならいいのです」 曜「梨子ちゃんは大丈夫? ちゃんと飲んだ?」
梨子「ええ。今のところは副作用も特にないし、安定してる」
曜「そっか……よかった」
果南「今日、ダイヤがようやく練習に復帰したわけだけど……どうだった?」
ダイヤ「すみません、まだ体力が戻っていないのですわ」
鞠莉「本番には間に合いそう?」
ダイヤ「何とか、善処致します」
ルビィ「うゆ……」
ダイヤ「大丈夫よ。無理はしてないから」ナデナデ
曜「私、もう帰るね」
梨子「待って、私も行く」
曜「え?」
梨子「お見舞い、行くんでしょ?」
曜「……うん」
鞠莉「……」 鞠莉(あれから、二週間が経った)
鞠莉(一連の事件の犯人だったヴァンパイアは、千歌っちに胸を貫かれ、即死)
鞠莉(ヴァンパイアの弱点は心臓だったらしい)
鞠莉(同じく胸を貫かれた千歌は、辛うじて急所は外れていた)
鞠莉(奴の左目を撃ちぬいたことが功を為したのか、それとも自ら急所を外したのか)
鞠莉(どちらにせよ重傷は避けられず……今も千歌っちは意識を取り戻していない) ―――
―
果南「いよいよ明日、決勝だね」
ダイヤ「感覚は取り戻しました。ベストパフォーマンスとは言い難いですが」
鞠莉「となると、問題は」
梨子「センターを誰にするか」
曜「そんなの決まってるよ。今日までずっと……」
梨子「肝心の千歌ちゃんがあのままじゃ、どうしようもないでしょう」
曜「それは……!」 善子「そろそろ決めるべきだわ。現実を見ましょう……リアルこそが正義なんだから」
花丸「千歌ちゃんは、明日の決勝大会に出場できない」
ルビィ「うっ……うぅ……」
花丸「泣かないで、ルビィちゃん」
善子「そうよ。千歌はそんなの望んでない」
果南「千歌が出られないのは残念だけど。だからって、決勝をないがしろにしていいわけじゃない」
果南「――曜、お願いできる?」
曜「え?」 ―――
―
翌日
コンコン…ガラッ
看護師「失礼します。診察のお時間ですよ」
看護師(なんて、寝ている子に言っても仕方ないわね)
看護師「……あら? 窓が開いてる」
看護師「不用心ね。誰よ、開けっ放しにしたの」
看護師「――え?」
ヒュー…バサバサ…
看護師「嘘……でしょ」 ―――
―
曜「スー…ハー……」
梨子「曜ちゃん、大丈夫?」
曜「うん、なんとか」
梨子「きっとできるよ、自信もって!」
曜「そう……かな」
善子「頼りにしてんだから。しっかりしなさいよね」
花丸「マルたちも頑張るずら!」
ルビィ「一緒に頑張ろうね、曜ちゃん!」
曜「うん、ありがと」ニコッ 果南「曜……」
鞠莉「大分緊張してるわね」
ダイヤ「当然ですわ。曜さんにとって、千歌さんの存在はそれほど大きいのです」
果南「やっぱり、無茶だったかな」
鞠莉「ノーノー。ちゃんと曜のこと、信頼してあげて」
鞠莉(とは言っても、全員の表情が硬いのは確か)
鞠莉(こんな状態で本番だなんて……正直、最悪としか言いようがない)
鞠莉(ううん。ウジウジ言ってても何も始まらないわ)
鞠莉(今の私たちにできることを、全力でやるしかない) 『次のグループは――』
梨子「そろそろ私たちの出番ね」
曜「あ……うん」
ゾワッ
曜(あれ……なんだろう。急に緊張してきた)
曜(さっきまでとは違う……怖い)
曜(出場するのが、怖い)
曜(そっか……隣に、千歌ちゃんがいないから)
曜(ダメだ、私。千歌ちゃんがいないと、何もできないよ)
曜「千歌ちゃん……!」 「――遅れてごめんっ!!」
曜「え……」
梨子「嘘……千歌ちゃん?」
千歌「ハァ……ハァ……」
千歌「なんとか……間に合った!」
果南「千歌……!」
鞠莉「千歌っち、どうして!?」
千歌「病院、抜け出してきた……えへへ」
果南「抜け出してって……」
ダイヤ「体は大丈夫ですの!? 先程目を覚ましたということでしょう!?」
善子「あんた、二週間も寝込んでたのよ!?」
花丸「あんな重傷だったのに……」 千歌「えと……多分傷は治ってる、と思う」
梨子「治ってるわけ……治ってる?」
ルビィ「ヴァンパイアの治癒力は高いんです。一昨日指を怪我した時、次の日には跡も残ってなくて」
梨子「それにしたって……」
千歌「私なら大丈夫だよ。ほら、体も動くし!」
曜「千歌……ちゃん」ポロポロ
千歌「曜ちゃん?」
曜「――千歌ちゃんっ!!」ギュッ
千歌「わわっ!」
千歌「ただいま、よーちゃん」
曜「おかえり……千歌ちゃん」 ルビィ「千歌ちゃん、衣装だよ」スッ
千歌「うん……ありがとう」
果南「えと……正直、何が起こってるのか把握しきれてないんだけど」
鞠莉「決勝は、全員で出場できる。そういうことでしょ?」グスッ
ダイヤ「鞠莉さん……」
鞠莉「ソーリー。この会場で、Aqoursのみんなと歌うのが……私の夢だったから」ゴシゴシ
鞠莉「だから、嬉しくて」
果南「……うん。私も」ウルウル 『――Aqoursの皆さん、お願いします』
花丸「マルたちの出番だよ」
ルビィ「うん!」
善子「全く、冷や冷やさせんじゃないわよ……」ゴシゴシ
千歌「さあ! いくよ、みんな!」
千歌「今、全力で輝こうっ!!」
千歌「1!」
曜「2!」
梨子「3!」
花丸「4!」
ルビィ「5!」
善子「6!」
ダイヤ「7!」
果南「8!」
鞠莉「9!」
「「Aqoursー、サンシャインっ!!」」 どうなるかと思ったけどきれいに締まった感
しかし3人ヴァンパイアか… ――――――
――――
――
チーン…
千歌「……」
千歌(あの時……もしお母さんが胸を貫かれてたことを思い出さなかったら)
千歌(もしも命を落とす前にお母さんが私の下に来てくれなかったら)
千歌(きっと、私は勝てなかっただろう)
――人間に生んであげられなくて、ごめんね
千歌(違うよ、お母さん)
千歌(お母さんのおかげで、今私はここにいる)
千歌(私を助けてくれて、ありがとう) 美渡「千歌ー! 梨子ちゃん来てるぞー!」
千歌「はーい!」
千歌「……行ってきます、お母さん」 ―――
―
梨子「結局、血はもう飲んでないんだね」
千歌「うん。なんか、要らないみたい」
梨子「タブレットも飲んでないってこと?」
千歌「たくさん輸血したから、体質が変わったのかな」
千歌「美渡姉と志満姉は、ヴァンパイアの血が薄いから元々要らなかったわけだし」
梨子「ってことは、体内の血を入れ替えればタブレットは必要なくなる……?」
千歌「よくわかんないけどね」
梨子「とにかく、おめでとう」
千歌「――うん!」ニコッ
梨子(この笑顔をもう一度見ることができて、よかった) プシュー
千歌「あ、バス着いたよ!」パタパタ
梨子「うん」パタパタ
曜「おーい! 千歌ちゃーん、梨子ちゃーん!」
千歌「あ、よーちゃん!」
曜「二人とも遅いぞー!」
梨子「ごめんごめん。でも曜ちゃんズルいな、学校がこんなに近いなんて」
曜「えへへー! 沼津の特権であります!」
キーンコーンカーンコーン
千歌「わわわっ、鐘なってるよ!」
梨子「やば、急がなきゃ!」
曜「始業式から遅刻はマズいよー!」 「――いてっ!」
千歌「……?」
「うぇぇ……」ポロポロ
曜「千歌ちゃん?」
千歌「ごめん、先行ってて!」
千歌「どうしたの? 転んじゃった?」
「うん……」グスッ
千歌「ありゃりゃ、血が出てるねー」
千歌「えーっと」ゴソゴソ
千歌(どうしよう、絆創膏持ってきてないや) 梨子「千歌ちゃん」
千歌「ほえ?」
梨子「絆創膏でしょ。私が張ってあげるね」
「うぅ……ありがとう」
曜「元気だしなって! きっといいことがあるよ!」
千歌「じゃあ私からは……これ!」
「みかん?」
千歌「そう! ビタミンCパワー! ……なんちゃって」
「ありがとう、おねーちゃん」ニコッ 千歌「バイバーイ!」フリフリ
梨子「あーあ、完全に遅刻」
曜「仕方ないよ、言い訳考えよう」
千歌「ハァ……ハァ……」
梨子「千歌ちゃん?」
千歌「ハッ……ハッ……ハッ……」
曜「おーい、千歌ちゃーん」
――ドクン 設定的に矛盾があるのはわかってるけどダイヤの番が見たかった……
乙。面白かったぞ。 ルビィはヴァンパイアになったならその身体能力を活かして
ダイヤとヴァンパイアハンターになったら面白い そういやSaint SnowのATP衣装って妙にヴァンパイアしてたよね。 千歌、梨子、ダイヤ、ルビィがヴァンパイアになった後の日常後日談くれ!! 個人的に好きなSS
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