希「言うて良いことと悪いことくらいある蛇狼牙ッ!!!!」
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希の蛇狼牙が絵里へと襲い掛かる。例え自身にロシアの血が流れていようと直撃すれば只では済まないということを絵里は既に一撃目で理解していた。
肉は飛び散り、骨は砕け、二度と踊れなくなる程に自分は無惨な姿になるであろうと。
「…こっのぉおおおおおおッ!!」
それを理解しているからこそ、なんとしても避けねばならなかった。希を正気に戻し連れ帰っても、自分がアイドルとして踊れなくなっているなんてことはあってはならなかった。
絵里は後方へと腰を限界まで折り曲げ蛇狼牙の直撃を間一髪で回避する。
自身の胸元を通りすぎた蛇狼牙の衝撃波が遥か遠く、背後にあった山の一部を大きく抉り取ったのを絵里は確かにその目で見た。
「あんなぁ……避けんなや!!!!」
必殺の技を二度も回避された事実に希は苛立っていた。絵里は距離を取り再び蟷螂拳の構えをとる。
蟷螂拳―――近接から中間距離においての素速いスピードの攻防を得意とする絵里のこの戦闘スタイルだが、希の蛇狼拳とは相性が悪く、これまで攻撃をすれば完璧に去なされ、防御をすればそれをいとも容易くに崩されてしまっていた。
ここまではなんとか唯一希を上回るスピードと直感で直撃は避けてきたがそれも限界が来ている。
どうすれば―――もう諦めてお家に帰るしかないのか、そう考えた絵里であったがあることに気付く。
「…………」
希が追撃してこないのだ。
よく考えてみれば、先程の蛇狼牙を避けたときにだって希は自分に攻撃できた筈なのにそれをしなかった。それは何故か?賢い絵里は考えた。考えて考えて考えて…絵里のなかで、一つの仮説が生まれた。
「もしかして……蛇狼牙は連発できないんじゃない?」
「―――ッ!」
「しかも……蛇狼牙を撃ったあとはその反動で少しの間動けなくなる……違う?」
「……は、はは! 流石としか言いようがないやん? すごいね絵里ち……たった二発撃っただけで蛇狼牙の弱点を見抜くなんてね」
「私を誰だと思っているの? 賢い可愛いエリーチカよ」
「でもそれがわかったからってウチには勝てへんよ。次は当てる」
「それはどうかしら」 希が蛇狼拳の構えとる。そもそも蛇狼拳とは希が音ノ木の地に腰を落ち着けるまで各国で修行の旅をしていたときに蛇拳を組み込み編み出した我流の拳法である。
右の狼手、左の蛇手をそれぞれ攻撃と防御に分けて使い、攻防一体の無敵を体現するのだ。さらに厳しい修行の末に会得した蛇狼牙により、長距離からでも攻撃が可能である。
これには絵里も攻めあぐねていたが、今となってはそれも恐れることはない。
「撃ってきなさい、希……! 蛇狼牙を!」
「……そうやね、ええよ。もう終わりにしようか」
「ええ…私が勝って、終わらせる」
「言うてろ。最大出力の蛇狼牙や…えりちでも避けられへん……いくでッッ!!!」
「来いッッ!!!!」
「蛇狼牙ァッッッッ!!!!!」
希の叫び声と同時に、絵里は走り出した。
「!?」
そして一瞬で間合いを詰めると、蟷螂手で希の腕を巻き込み引き回し体勢を崩す。
蟷螂拳の代名詞ともいえるカマキリがセミを捕らえる形の蟷螂捕蝉式である。
これにより蛇狼牙は狙いがズレ、衝撃波は虚空へと放たれた。
「なん…やて…!?」
「―――私の勝ちよ」
希は蛇狼牙の反動で動けない。絵里は蟷螂手を解き拳を力いっぱい握ると―――。
「希ィ!歯を食いしばりなさい!!!」
「……はは、やっぱり流石やなぁ」
彼女の頬をおもっくそぶん殴った。 ―――
「ん……イテテ」
頬の痛みで目を覚ますと、目の前には美しい金髪があった。
どうやら気絶してしまった自分を背負ってくれていたようだ。
「起きた?」
「……うん。えりち、ごめんね」
「いいのよ……希が正気に戻ってくれてよかったわ」
「でも…他の皆にも迷惑かけて…」
「きっと許してくれるわよ。私も一緒に謝るから…ね?」
「えりち……うん、ありがとう」
こうして彼女達の長いようで短い戦いは幕を閉じた。
きっとこれからも、同じようなことが何度か起こるのだろう。もしそうなったらまた自分が彼女が止めればいい、絵里はそう思っT=。。。
「それにしても希…」
「ん? なーにえりち?」
「あなた…太った?」
「……」
「前に背負ったときよりなんか……」
「えりち……あんなぁ……」
「言うて良いことと悪いことくらいある蛇狼牙ッ!!!!」」
完! 二人とも形象拳なのか
形意拳、太極拳、八卦掌、ジークンドー使いも出してほしいところ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています