「どうして突然…」
狼狽える岡本。
「ちょっと、一言二言言いたいことあってな。手短に言うわ。
たけらさん。"働きアリみたいな人生やめとけよ"」

思わず岡本は息を呑んだ。
「な、何馬鹿なこと…」
「俺には分かるで。壇上のたけらさん、流石社長さんらしく、堂々としてたな。けど、たまに上の空みたいな顔して、どこか別のとこに居るみたいやった。」
「…」
「たけらさん、本当はまだやるべきことがあるやろ?他の誰にも伝わらなくても、俺には伝わったで。」

そう言いながら、黒フードの男は机の上に一枚のポスターを置いた。



「先、行くで。」




気が付けば、岡本ーーー否、"takera"は一人になっていた。

すっかり小さくなった煙草を思い切り吸い、赤熱したフィルターを灰皿に押し付ける。

『篝火#35』と書かれたポスターを手に取り、立ち上がった彼の目には、炎が宿っていた。

takeraは携帯を取り出し、とある男へと電話をかけ始めた。
それは、かつての彼の同僚で、今は昔の誼で傘下の支店長を任せている男だ。

「あばさん、久しぶり。今、少しいいかな?」

男たちの病の唄は終わらない。窓の外では、これから訪れる灼熱の季節を予感するように、初夏の日差しが差し込んでいた。