「僕ね、負けたくないんですよ。昔っから。僕の夢は、常に一番でいることなんです。」
今までの僕は、インタビューで誰かに夢を聞かれたら、こう答えただろう。

一番になるための苦労は一切厭わない。小学3年生くらいからずっとそうやって生きてきた。

勉強で一番になりたい。運動でも一番になりたい。ディベートでも一番になりたい・・・とにかく何でも一番がいい。生まれながらの一番病である。

一番病はこじらせると厄介な病である。なぜなら、病が進行すると、誰とも力を合わせることができなくなるのだ。

「人は協力するためにいるのではなく、打ち負かすためにいる」

バカじゃないのと思われるかもしれないが、一番になるということはそういうことなのだ。

明けても暮れても常に競争。相手が競争と思ってなくても、こっちは常に心のどこかで「こいつには負けん!」と思ってて、闘争心むき出し。思えばひどい45年間を過ごしてきたもんだと思う。

そんな僕が変わったのは、5年前に妻に連れられて、とあるイベントに参加してから。

「勝間塾」と名付けられたその集まりで、僕は誰かと競争するのではなく、誰かと「楽しい時間を過ごす」ということを知った。

その不思議な集まりは形を変えて月に何回も行われ、毎回大の大人が10人以上も集まって、ゲームに興じ、会話に興じ、時には人生を語る。

回を重ねるうちに、今まで人前ではずっと気を張って生きてきた僕が、この人たちの前では全く気を張らなくなった。

今までは、相手を打ち負かし、「俺の方が上だ!」と思いたくて仕方なかった僕が、この人たちとは上とか下とか関係なく一緒にいたい、ずっとこのままの状態で過ごしたいと思えるまでになった。

40歳過ぎて友情とか言うのはちょっと恥ずかしいけど、これは紛れもなく友情だった。

ところが運命とは皮肉なもので、彼らと会い、刺激を受け、僕自身の考え方が前向きに変わったことで外資系企業への転職に成功し、大阪から東京に移ることになってしまったのである。

これは彼らと出会ってからたった9ヶ月間の出来事。いい影響を与え合える関係というのは、これほどまでに人の人生を大きく好転させるのか。

「人は打ち負かすもの」なんて考えていた一番病の僕が、たった一年弱でこれだけ変われたのは、彼らに出会えたおかげ。そしてそうした出会いは、普段の家と会社の往復では絶対に得られないのだ。

・・・こうして勝間塾のみんなと、そこに誘ってくれた妻のおかげで僕の人生は大きく変わった。

そしてさらに人生の変化は続く。外資系企業に勤めている間に電子書籍を書いたら思った以上に売れすぎて出版社から声がかかり、3冊の商業出版の著者に。その後FIREしてビジネス書作家として、自分の好きなことで生きていくことになった。

5年前には全く考えられなかったこの変化、全ては勝間塾に入って「人生はこうあるべきだ」という思い込みが外れたからに他ならない。

人生は、自分が身を置く環境によって変わる。