夏の稲川怪談 新大陸のジョー

あたしの知り合いでもって、ギルドのハンターやってる人がいるんですがね。仮にHさんとしときましょうか。
新大陸来た時からこのHさん、変な女につきまとわれはじめた。
行くとこ行くとこついて来て、アイボーアイボー言ってくる。
なんだ〜こいつ変な女だな〜と思ってたんですけどね。
ある時このHさん、キャンプからキャンプにファストトラベルしたんだ。クエストでもってね。
したら……いるんだ……! いるんですよその女……! さっき出たキャンプにもいたのに着いた先にも、もういる……!
そんなわけない……! ありえないんだそんなこと……! 
こっちは翼竜に捕まって飛んでるんだ……先回りなんてできるはずない……!
こいつ……!生きてる人間じゃないぞ……!
Hさんゾーっとして、気絶耐性つけてなかったもんだからそのまーんまフーッと意識なくなっちゃった……
気がついてすぐ拠点に帰って、総司令に相談したんですけどね。
この総司令、にらみつけるような目つきで、しばらくじーっとHさんを見つめてから、
あのな、Hさん、忘れないでくれ。その女、ずっとあんたと一緒にいるぞ。
なんて言って来る……!
Hさんたまったもんじゃあないですよ。もう何もかもイヤになって、半分やけっぱちでもって、大団長と一緒にクエストに出ちゃった。
けどうまくいかない時はいかないもんで、一緒に来たはいいけれど、
竜人ハンターは失神しちゃうわ変な古龍は生まれるわ、とうとう大団長さん、竜人ハンター送ってくってんでHさん置いてどっかいっちゃった。
こうなったらどうにでもなれ、ってなもんでね、その見たこともない古龍と戦ってると、
誰もいないはずなのに、耳もとでもってその女の声が
何 が あ っ て も 私 は こ こ に い ま す
……そう……言ったらしいですよ。

……稲川さん。新大陸って怖い所だよね。
Hさん、そう言ってましたよ。ええ。