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赤西仁応援スレPart 2【整形亀梨のヲタ出入り禁止】
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0001名無しさん@純邦楽垢版2018/12/24(月) 16:09:52.41ID:MDRMxGOU
痴呆亀婆がスレ荒らして潰したから再度立てました
0003名無しさん@純邦楽垢版2018/12/26(水) 18:28:41.64ID:Ydzl7bzr
亀梨は発狂し過ぎw
0004名無しさん@純邦楽垢版2018/12/26(水) 18:30:14.26ID:Ydzl7bzr
>>3
婆が抜けてたねテヘ
0005名無しさん@純邦楽垢版2019/01/07(月) 12:06:20.34ID:v3h2MQvi
じんとぐでたまのコラボカフェ可愛い
0006名無しさん@純邦楽垢版2019/01/12(土) 11:23:35.93ID:AGuGdYav
http://www.performingarts.jp/J/overview_art/0501/3.html
純邦楽の基礎知識-杉浦聡(埼玉大学講師)

邦楽と流派
日本にはさまざまな伝統音楽があり、それを意味する「邦楽」とは「本邦(わが国という意味)の音楽」
「近世邦楽」を略した呼称とされる。広義には雅楽や声明などの古代の音楽、能狂言や平家琵琶など
の中世の音楽も含むが、一般的には江戸時代以降に生まれた、三味線による音楽、箏による音楽、
尺八による音楽、琵琶による音楽などを指す。
こうした音楽文化はその時々の時代の庇護者によって守られてきた。例えば、雅楽は宮中や寺社仏閣
によって、能楽や平家琵琶あるいは琵琶楽や尺八楽は武士(明治以降は上流市民)によって、三味線
音楽は江戸市民(明治以降は一般市民)によって、である。成立した時代や支持者によって、音楽表現
の好みが異なったことも、日本でさまざまな芸能が平行して存続してきた理由のひとつと言える。

三味線音楽の分類と流れ
一口に三味線音楽といっても、そこには多くの流派が存在する。その流派にもさまざまな分け方があるが、
これを「その音楽がどのような場で演奏されるのか」という観点で分類したのが【表1】である。劇場音楽(歌
舞伎で演奏される音楽か、人形芝居で演奏される音楽かで異る)、非劇場音楽(純演奏を楽しむ音楽)、
その他労働の場で歌われた音楽などに分けることができるが、最初は劇場音楽であったものが、時代が
経つにしたがって活躍の場を非劇場に移したものも多いので注意する必要がある。
また、三味線音楽は、16世紀半ばに三味線が中国から琉球を経て日本に輸入される以前にあった芸能(
例えば「浄瑠璃」「流行り歌」など)と同じ祖先をもつ一族から独立分派した、血縁関係がある音楽として整
理することもできる【表2】。もともと血縁関係なので、曲調などは似ているが、その音楽の支持層の嗜好に
あうように表現を変えていった結果、微妙な違いが生じ、今では専門家にしかわからない程度のわずかな
違いがそれぞれの流派のアイデンティティになっている。
0007名無しさん@純邦楽垢版2019/01/12(土) 11:32:44.79ID:AGuGdYav
演目(曲目)の違い
三味線にしろ箏曲にしろ、たくさんの流派があり、例えば有名な『春の海』という曲を習いたくて箏を習い始
めたが、習った流派のレパートリーの曲ではなかったため習えなかった、という笑えない話を時々耳にする。
また、新曲の場合も、西洋音楽と違い、その曲を外部の作曲家に委嘱した流派、あるいは作曲した演奏家
の系統以外の流派では演奏できない、ということも多い。
つまり、有名な曲でも、その曲をレパートリーとしている流派はひとつしかなく、同じ名前の曲があったとして
も内容は別の曲であることがほとんど。演奏家自身についても、二流派以上を掛け持ちしている人はほとん
どいないため、例えば長唄の「越後獅子」と津軽三味線の両方ができる演奏家は希有である。

演奏形態の違い
音楽によって目的が異るため、自ずと演奏形態も異なる。例えば「長唄」の場合は、歌舞伎を上演する際に
劇場専属の音楽として舞踊の伴奏やBGM用の音楽として発達してきた。歌舞伎は中世に出来た能狂言の
演出を取り入れており、能狂言で用いる囃子(笛、大鼓、小鼓、太鼓)も音楽として採用しているので、長唄
では歌と三味線のほかに囃子も取り込んで演奏される。つまり、長唄の場合だけ、舞台でこの三者が同時
に出演し、他の三味線音楽では歌と三味線の二職で演奏が行われる。また、歌と三味線の出演人数も流派
で違いがある。
劇場音楽に分類される三味線音楽では、「役者と違う世界」で演奏するという意味で、舞台上に演奏用の台
を別に組んでその上で演奏を行なう。こうした演奏形態は、演奏会の時にも踏襲されている。それに対して
地歌箏曲や琵琶楽は、元来室内楽として畳の上で行われていたものなので、演奏会の時には舞台に直接
(あるいは薄い台……所作台を置き)座って演奏する。邦楽にはこのような過去の演奏形態に基づく演出の
約束事というものが存在する。逆にこうした約束事や見台(譜面台)の形状の違いで、現在行われている音楽
を見分けることもできる。
0008名無しさん@純邦楽垢版2019/01/14(月) 14:33:06.75ID:MWxfxe3t
基地外亀梨婆が発狂してるw
隔離病棟に措置入院させないとヤバいぞwww
0009名無しさん@純邦楽垢版2019/01/17(木) 17:37:46.38ID:jVnZz/tn
サンリオコラボパーカーカワユス!
0010名無しさん@純邦楽垢版2019/01/18(金) 06:59:53.11ID:jomGeBgB
じんでぺDVDにムラサキ入ってるかな?
0011名無しさん@純邦楽垢版2019/01/19(土) 19:05:55.85ID:yp1Hn3R9
>>10
スカパーに入ってなかったから今回は入れるんじゃないの
0012名無しさん@純邦楽垢版2019/01/21(月) 12:10:33.52ID:5h6fphPa
>>11
スカパーで再放送決まったね
0013名無しさん@純邦楽垢版2019/01/23(水) 01:43:02.07ID:4tURIhAa
>>12
また入会しよっかなあー
0014名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:13:56.99ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0015名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:14:10.38ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0016名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:14:23.12ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0017名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:14:29.47ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0018名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:14:45.18ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0019名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:14:52.33ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0020名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:15:02.01ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0021名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:15:10.15ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0022名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:15:17.10ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0023名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:15:25.07ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0024名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:15:32.17ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0025名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:15:40.98ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0026名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:15:49.30ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0027名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:16:02.66ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0028名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:16:13.35ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0029名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:16:19.59ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0030名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:16:26.32ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0031名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:16:33.81ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0032名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:16:54.05ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0033名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:17:02.07ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0034名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:17:09.22ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0035名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:17:16.50ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0036名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:17:24.28ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0037名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:17:31.02ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0038名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:17:38.91ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0039名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:17:44.72ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0040名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:17:59.99ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0041名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:18:07.45ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0042名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:18:15.24ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0043名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:18:26.54ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0044名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:18:35.60ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0045名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:18:42.50ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0046名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:18:51.17ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0047名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:18:59.22ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0048名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:19:08.66ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0049名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:19:16.51ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0050名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:19:25.02ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0051名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:19:32.46ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0052名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:19:41.33ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0053名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:19:48.70ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0054名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:19:57.70ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0055名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:20:06.61ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0056名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:20:16.07ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0057名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:20:26.73ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0058名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:20:34.61ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0059名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:20:43.53ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0060名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:20:54.12ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0061名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:21:02.96ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0062名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:21:10.11ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0063名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:21:18.18ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0064名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:21:26.59ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0065名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:21:35.22ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0066名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:21:44.35ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0067名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:21:55.44ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0068名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:22:02.82ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0069名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:22:11.49ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0070名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:22:19.10ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0071名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:22:25.08ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0072名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:22:41.21ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0073名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:22:47.67ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0074名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:22:57.90ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0075名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:23:05.15ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0076名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:23:19.31ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0077名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:23:27.52ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0078名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:23:35.67ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0079名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:23:42.88ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0080名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:23:50.03ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0081名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:24:04.11ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0082名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:24:19.41ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0083名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:24:27.72ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0084名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:24:35.41ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0085名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:24:42.82ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0086名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:25:04.85ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0087名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:25:13.45ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0088名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:25:21.60ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0089名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:25:30.30ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0090名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:25:38.60ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0091名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:25:46.28ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0092名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:25:55.51ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0093名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:26:04.78ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0094名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:26:13.30ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0095名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:26:22.25ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0096名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:26:32.39ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0097名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:26:41.48ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0098名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:26:52.64ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0099名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:27:00.98ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0100名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:27:13.88ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0101名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:27:23.73ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0102名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:27:37.89ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0103名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:27:44.23ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0104名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:27:58.10ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0105名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:28:10.26ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0106名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:28:21.86ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0107名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:28:32.70ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0108名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:28:43.67ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0109名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:28:52.17ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0110名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:29:03.00ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0111名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:29:12.63ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0112名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:29:22.40ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0113名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:29:31.92ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0114名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:29:40.63ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0115名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:29:48.32ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0116名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:29:56.38ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0117名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:30:05.50ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0118名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:30:15.17ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0119名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:30:24.25ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0120名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:31:05.26ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0121名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:31:13.28ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0122名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:31:21.09ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0123名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:31:30.42ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0124名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:31:38.35ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0125名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:31:46.45ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0126名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:31:55.65ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0127名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:32:03.79ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0128名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:32:11.55ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0129名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:32:19.08ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0130名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:32:27.02ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0131名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:32:34.49ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0132名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:32:46.31ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0133名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:32:58.53ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0134名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:33:07.30ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0135名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:33:17.33ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0136名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:33:26.66ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0137名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:33:34.73ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0138名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:33:43.90ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0139名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:33:51.25ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0140名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:33:59.06ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0141名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:34:07.24ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0142名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:34:30.49ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0143名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:34:37.60ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0144名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:34:44.04ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0145名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:34:50.94ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0146名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:35:08.09ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0147名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:35:14.13ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0148名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:35:20.95ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0149名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:35:26.80ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0150名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:35:47.58ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0151名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:35:57.51ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0152名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:36:06.69ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0153名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:36:16.11ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0154名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:36:24.75ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0155名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:36:37.57ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0156名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:36:46.78ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0157名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:36:53.22ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0158名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:38:07.78ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0159名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:38:14.32ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0160名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:38:22.67ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0161名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:38:29.93ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0162名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:38:39.50ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0163名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:38:49.40ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0164名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:38:59.65ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0165名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:39:07.16ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0166名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:39:14.66ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0167名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:39:24.04ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0168名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:39:31.14ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0169名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:39:38.82ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0170名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:39:49.87ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0171名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:40:00.21ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0172名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:40:09.44ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0173名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:40:16.79ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0174名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:40:24.15ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0175名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:40:40.35ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0176名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:40:47.69ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0177名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:40:58.84ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0178名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:41:05.88ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0179名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:41:28.96ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0180名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:41:34.38ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0181名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:41:43.71ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0182名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:41:55.30ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0183名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:42:03.68ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0184名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:42:13.64ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0185名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:42:21.23ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0186名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:42:30.72ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0187名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:42:45.34ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0188名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:42:51.76ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0189名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:43:00.55ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0190名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:43:13.07ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0191名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:43:19.37ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0192名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:43:39.17ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0193名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:43:53.42ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0194名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:44:01.22ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0195名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:44:10.90ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0196名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:44:20.02ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0197名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:44:30.29ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0198名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:44:38.62ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0199名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:44:47.92ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0200名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:44:59.53ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0201名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:45:05.95ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0202名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:45:12.99ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0203名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:45:20.84ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0204名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:45:30.30ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0205名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:45:49.26ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0206名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:45:56.97ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0207名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:46:09.03ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0208名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:46:17.06ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0209名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:46:24.57ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0210名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:46:33.60ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0211名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:46:40.80ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0212名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:46:50.27ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0213名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:46:56.81ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0214名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:47:05.64ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0215名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:47:14.90ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0216名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:47:22.91ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0217名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:47:33.86ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0218名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:47:41.24ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0219名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:47:51.41ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0220名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:47:57.11ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0221名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:48:03.86ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0222名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:48:21.26ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0223名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:48:28.23ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0224名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:48:38.78ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0225名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:48:47.24ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0226名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:48:54.82ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0227名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:49:08.71ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0228名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:49:18.58ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0229名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:49:30.01ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0230名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:49:38.05ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0231名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:49:47.04ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0232名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:49:54.55ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0233名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:50:05.16ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0234名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:50:13.91ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0235名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:50:21.20ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0236名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:50:29.44ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0237名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:50:37.42ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0238名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:50:44.51ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0239名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:50:54.38ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0240名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:51:00.50ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0241名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:51:11.99ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0242名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:51:19.02ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0243名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:51:27.61ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0244名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:51:36.37ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0245名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:51:49.57ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0246名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:51:59.14ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0247名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:52:08.07ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0248名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:52:14.05ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0249名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:52:30.88ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0250名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:52:38.16ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0251名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:52:48.50ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0252名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:52:57.57ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0253名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:53:05.79ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0254名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:53:17.75ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0255名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:53:28.42ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0256名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:53:38.37ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0257名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:53:46.11ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0258名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:53:54.95ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0259名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:54:01.84ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0260名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:54:13.56ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0261名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:54:24.99ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0262名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:54:31.59ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0263名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:54:42.32ID:0a9BRDNc
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0264名無しさん@純邦楽垢版2019/01/26(土) 11:54:50.30ID:jqC+Zbzu
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
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