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キュウソネコカミ【亀婆出禁】
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0115名無しさん@純邦楽2018/11/28(水) 11:17:38.13ID:3XneJTtE
>>113
亀婆のことか
はやく、首吊りー?
0117名無しさん@純邦楽2018/12/06(木) 17:10:27.33ID:WOPbLii/
>>116
そうなんじゃね?
0118名無しさん@純邦楽2018/12/07(金) 16:00:58.36ID:IgaCwUsl
米ツアーWOD全然出来てなくてワロタ
0119名無しさん@純邦楽2018/12/08(土) 08:40:04.91ID:rxWHqQlb
>>118
コブクロと同発な
0120名無しさん@純邦楽2018/12/09(日) 09:53:20.80ID:shqkizkd
コブクロWODあんの?www
0121名無しさん@純邦楽2018/12/09(日) 14:15:51.39ID:vavWsv+J
>>120
ないとは限らないwwww
0122名無しさん@純邦楽2018/12/09(日) 17:47:39.60ID:shqkizkd
どの曲でやるんだろwww
0123名無しさん@純邦楽2018/12/09(日) 23:12:10.01ID:czsk66Dl
なんで松井玲奈は叩かれてて松本穂香は歓迎されてるの?
匂わせてないほうが怪しくないかな
0124名無しさん@純邦楽2018/12/10(月) 22:29:15.75ID:kMTeR/14
馬乗り好きな人多いのキュウソファンらしいな
0125名無しさん@純邦楽2018/12/10(月) 23:17:43.84ID:Hi9QJnmn
キュウソファンは粘着だからな
0126名無しさん@純邦楽2018/12/11(火) 18:56:19.63ID:NQOpto9C
日本人の婚姻数と出生数を増やしましょう。そのためには、公的年金と生活保護
を段階的に廃止して、満18歳以上の日本人全員に支給する、『ベーシックインカム』
の導入は必須です。月額約70000円位ならば、廃止すれば財源的には可能です。
よろしくお願い致します。
0127名無しさん@純邦楽2018/12/12(水) 03:01:59.06ID:WWSLo850
もうDMCCの整番わかるんだね
0128名無しさん@純邦楽2018/12/12(水) 23:14:07.80ID:LchcgbCq
ウィークリー13
0129名無しさん@純邦楽2018/12/17(月) 23:29:19.05ID:W3XmeT7v
ガチ恋でーーーす
0132名無しさん@純邦楽2018/12/17(月) 23:56:47.40ID:uF96m9Ya
某球場近くの駅に住んでる知り合いがセイヤが髪色明るい女と歩いてるの見かけたっていってたけどそれがキャバかな?お幸せにな!
0133名無しさん@純邦楽2018/12/18(火) 00:20:23.00ID:7cwkAE6e
>>132甲子園?
0135名無しさん@純邦楽2018/12/18(火) 00:26:18.59ID:tW2L3y8U
キャバは匂わせてたから見てたけど甲子園口って書いてました
ガチ恋じゃないんでその後は見てないけど
0136名無しさん@純邦楽2018/12/18(火) 00:34:13.73ID:7cwkAE6e
>>135
キャバの垢って鍵かかってますよね
外す時があるんですか?
0137名無しさん@純邦楽2018/12/18(火) 00:35:48.96ID:opFpnxg4
ファンに手を出したら、
キュウソ 脱退って何かで言ってなかった?
0138名無しさん@純邦楽2018/12/18(火) 00:43:23.95ID:LLpLnAzn
キャバってファン上がりだよね?
0139名無しさん@純邦楽2018/12/18(火) 00:49:53.98ID:2gqs7ZIp
そごうの女に連れられてライブ見に来たのが最初じゃなかった?もう一年以上前だよね
0140名無しさん@純邦楽2018/12/18(火) 00:54:28.81ID:7cwkAE6e
セイヤとソゴウファンのキャバ二人組だよね?
セイヤの方が繋がったって聞いたけどソゴウの方も繋がったの?
0142名無しさん@純邦楽2018/12/18(火) 01:37:51.34ID:KatnpAyt
本当にセイヤ本人なのか分からないのにここまで盛り上がれるの凄いね
0144名無しさん@純邦楽2018/12/19(水) 19:35:37.76ID:HbRJGNJM
それなのに松井玲奈のことあんなに叩いてたのか…怖
0146名無しさん@純邦楽2018/12/20(木) 04:08:03.43ID:WTUVVWB8
coast落ちた
0150名無しさん@純邦楽2018/12/23(日) 18:02:03.10ID:ynnNZayk
>148
>149
亀梨婆の自演がまた始まったぞw
自治ぶる亀婆の惨めったらしさワロ
カキコできないようにするんだろw亀婆さんwwで、何故か赤西アンチスレにこの投稿をコピペする魂胆かw
0152名無しさん@純邦楽2018/12/24(月) 16:03:29.54ID:MDRMxGOU
>>151
お前頭わるいのう
コピペ亀婆さんw
0154名無しさん@純邦楽2018/12/24(月) 23:59:54.70ID:qyfY4mZz
キュウソの話しよ
0156名無しさん@純邦楽2018/12/26(水) 18:33:32.68ID:Ydzl7bzr
キュウソの話ししない荒らしの亀梨婆さん巣に逝けや
0158名無しさん@純邦楽2019/01/12(土) 16:20:50.53ID:oiav8l07
亀婆精神科にすぐ逝けやw
0160名無しさん@純邦楽2019/01/14(月) 12:01:07.44ID:MWxfxe3t
亀婆早急に精神科逝け!
基地外亀梨のヲタは救いようがないw
0162名無しさん@純邦楽2019/01/15(火) 09:32:15.36ID:26Tltx2y
亀梨とか赤西ってKAT-TUNか。キュウソ無関係じゃん。消えろボケ。
0163名無しさん@純邦楽2019/01/15(火) 16:16:41.89ID:+O2H2oDH
>162
亀梨婆とっと消えろ!ボケ
読点に癖があるからなりすましバレてるでww
0166名無しさん@純邦楽2019/01/17(木) 17:34:17.50ID:jVnZz/tn
亀婆が発狂しておりまするw
0168名無しさん@純邦楽2019/01/18(金) 07:01:46.34ID:jomGeBgB
亀婆が荒らしを自白してるw
0170名無しさん@純邦楽2019/01/19(土) 19:02:53.37ID:yp1Hn3R9
亀婆が発狂してスレ潰しばっかりやってるよ!
0175名無しさん@純邦楽2019/01/21(月) 12:05:58.39ID:5h6fphPa
整形亀梨のヲタがこのスレも発狂して潰そうとしてる
性悪亀梨と性格悪いのソックリ
0177名無しさん@純邦楽2019/01/22(火) 08:58:13.93ID:Cfq8BQ5C
亀梨とか赤西とかキュウソ無関係でしょ。馬鹿じゃないの。
0178名無しさん@純邦楽2019/01/23(水) 01:49:54.20ID:4tURIhAa
亀梨婆がボッチで赤西さんに嫉妬してるの???
読点癖の強い亀梨婆さんw
0179名無しさん@純邦楽2019/01/23(水) 02:18:15.34ID:YgGlHX8k
KAT-TUNファンがキュウソ好きとか胸熱
0182名無しさん@純邦楽2019/01/24(木) 03:19:16.82ID:kiVCiO2n
まあ亀?とか気にせずまったりセイヤの彼女の話でもしようよ
0184名無しさん@純邦楽2019/01/25(金) 03:16:09.38ID:nkqFrLEg
>>183
どこならいいの?
オンナネタ聞きたいーー
0186名無しさん@純邦楽2019/01/31(木) 18:36:11.06ID:pGxenbXK
整形亀梨がキモい
0187名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:17:29.72ID:gRpfFhMi
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0188名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:18:19.99ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0189名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:20:30.89ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0190名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:20:44.20ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0191名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:21:04.68ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0192名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:21:16.97ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0193名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:21:33.11ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0194名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:21:43.95ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0195名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:22:17.29ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0196名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:22:51.43ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0197名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:23:00.45ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0198名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:23:10.84ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0199名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:23:25.31ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0200名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:23:37.10ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0201名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:23:51.20ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0202名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:23:59.94ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0203名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:24:09.65ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0204名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:24:17.26ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0205名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:24:29.09ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0206名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:24:40.55ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0207名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:24:47.98ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0208名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:24:56.57ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0209名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:25:04.70ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0210名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:25:17.19ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0211名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:25:25.21ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0212名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:25:37.17ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0213名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:25:49.59ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0214名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:26:00.67ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0215名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:26:09.97ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0216名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:26:16.69ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0217名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:26:27.99ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0218名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:26:34.26ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0219名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:26:43.76ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0220名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:26:52.67ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0221名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:27:02.22ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0222名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:27:11.43ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0223名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:27:18.95ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0224名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:27:27.78ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0225名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:27:35.59ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0226名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:27:45.55ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0227名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:27:54.47ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0228名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:28:02.15ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0229名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:28:16.19ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0230名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:28:30.77ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0231名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:28:39.28ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0232名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:28:47.08ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0233名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:28:55.75ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0234名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:29:06.83ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0235名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:29:16.58ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0236名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:29:25.07ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0237名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:29:33.89ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0238名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:29:44.96ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0239名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:29:53.50ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0240名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:30:00.75ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0241名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:30:08.85ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0242名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:30:16.69ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0243名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:30:25.57ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0244名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:30:32.01ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0245名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:30:40.41ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0246名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:30:49.00ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0247名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:30:57.11ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0248名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:31:04.61ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0249名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:31:13.51ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0250名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:31:21.63ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0251名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:31:31.03ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0252名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:31:42.11ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0253名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:31:51.26ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0254名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:31:59.79ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0255名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:32:09.77ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0256名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:32:18.99ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0257名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:32:28.31ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0258名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:32:36.95ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0259名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:32:45.40ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0260名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:32:53.56ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0261名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:33:01.66ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0262名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:33:09.13ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0263名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:33:32.42ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0264名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:33:40.96ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0265名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:33:49.03ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0266名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:33:58.22ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0267名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:34:07.98ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0268名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:34:19.52ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0269名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:34:30.37ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0270名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:34:41.08ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0271名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:34:50.54ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0272名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:34:56.73ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0273名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:35:08.07ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0274名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:35:19.91ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0275名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:35:29.65ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0276名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:35:41.08ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0277名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:35:50.30ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0278名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:35:57.66ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0279名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:36:08.16ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0280名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:36:18.54ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0281名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:36:27.74ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0282名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:36:36.26ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0283名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:36:47.77ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0284名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:36:55.57ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0285名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:37:04.96ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0286名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:37:11.26ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0287名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:37:27.02ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0288名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:37:35.64ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0289名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:37:44.08ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0290名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:37:51.28ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0291名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:37:59.02ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0292名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:38:09.39ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0293名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:38:17.96ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0294名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:38:25.48ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0295名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:38:33.31ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0296名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:38:42.11ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0297名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:38:52.48ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0298名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:39:05.28ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0299名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:39:12.86ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0300名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:39:32.84ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0301名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:39:39.70ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0302名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:39:54.40ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0303名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:40:01.82ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0304名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:40:13.73ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0305名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:40:21.66ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0306名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:40:34.77ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0307名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:40:45.83ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0308名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:40:55.02ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0309名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:41:05.86ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0310名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:41:16.03ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0311名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:41:27.93ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0312名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:41:41.42ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0313名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:41:51.78ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0314名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:42:04.78ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0315名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:42:13.64ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0316名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:42:26.29ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0317名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:42:41.01ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0318名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:42:51.52ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0319名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:43:00.24ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0320名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:43:11.46ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0321名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:43:19.43ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0322名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:43:27.59ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0323名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:43:34.43ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0324名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:43:44.29ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0325名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:43:49.30ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0326名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:43:56.94ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0327名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:44:03.85ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0328名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:44:13.57ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0329名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:44:21.98ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0330名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:44:30.28ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0331名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:44:37.77ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0332名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:44:45.61ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0333名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:44:53.82ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0334名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:45:03.51ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0335名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:45:15.19ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0336名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:45:29.52ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0337名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:45:38.73ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0338名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:45:47.43ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0339名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:46:07.85ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0340名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:46:14.27ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0341名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:46:26.32ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0342名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:46:48.94ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0343名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:46:57.96ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0344名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:47:05.14ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0345名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:47:13.01ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0346名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:47:21.12ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0347名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:47:28.94ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0348名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:47:37.14ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0349名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:47:45.61ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0350名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:47:53.65ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0351名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:48:01.19ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0352名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:48:08.53ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0353名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:48:16.53ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0354名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:48:25.29ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0355名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:48:34.82ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0356名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:49:01.10ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0357名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:49:29.35ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0358名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:49:38.98ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0359名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:50:01.52ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0360名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:50:12.09ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0361名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:50:25.27ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0362名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:50:32.87ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0363名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:50:43.06ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0364名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:50:50.51ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0365名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:50:58.79ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0366名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:51:08.37ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0367名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:51:18.47ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0368名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:51:24.21ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0369名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:51:32.43ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0370名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:51:39.24ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0371名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:52:00.70ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0372名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:52:08.60ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0373名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:52:17.65ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0374名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:52:26.60ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0375名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:52:40.70ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0376名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:52:50.77ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0377名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:53:00.90ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0378名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:53:10.40ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0379名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:53:25.89ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0380名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:53:31.29ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0381名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:53:44.17ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0382名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:53:55.27ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0383名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:54:06.16ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0384名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:54:12.16ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0385名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:54:19.22ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0386名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:54:26.39ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0387名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:54:42.95ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0388名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:54:50.68ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0389名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:55:02.55ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0390名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:55:13.96ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0391名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:55:24.33ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0392名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:55:35.26ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0393名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:55:43.61ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0394名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:55:51.62ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0395名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:56:01.22ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0396名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:56:11.93ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0397名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:56:23.30ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0398名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:56:32.26ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0399名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:56:42.90ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0400名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:56:52.81ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0401名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:57:01.43ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0402名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:57:10.76ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0403名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:57:19.36ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0404名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:57:30.93ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0405名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:57:44.42ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0406名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:57:51.01ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0407名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:58:09.25ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0408名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:58:17.73ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0409名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:58:28.98ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0410名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:58:36.95ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0411名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:58:46.18ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0412名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:58:56.34ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0413名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:59:03.46ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0414名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:59:12.51ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0415名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:59:24.36ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0416名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:59:35.80ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0417名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:59:45.02ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0418名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 10:59:54.42ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0419名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:00:03.22ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0420名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:00:11.87ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0421名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:00:20.31ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0422名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:00:28.21ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0423名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:00:36.45ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0424名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:00:46.59ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0425名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:00:56.06ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0426名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:01:05.16ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0427名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:01:16.11ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0428名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:01:23.87ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0429名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:01:31.41ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0430名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:01:42.12ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
0431名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:01:50.88ID:gRpfFhMi
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音楽の音楽用語を指導
するようになっています。伝統音楽の表現法や楽器などの音楽用語については,一
般化されていないものも多くあります。音楽用語については,学校教育を通して,
だんだんと共通の言葉にしていかなければならないという課題があります。箏・尺
八・三味線などの演奏法が民間で伝承されていますが,そこで使用されている音楽
用語が学術的なものなのか,民間で伝承されるなかで使われる用語なのか判然とし
ないものもあります。学校教育の音楽教育として指導する内容となると,誰にでも
共通に理解できる学術用語にしていかなければなりません。これも,本事業のよう
な教材開発というなかで整理されていくものと思います。
3.生成の原理で指導する
伝統音楽を学校で指導する際には,音楽として在るものを「再現」するのではな
く音・音楽を「生成」するという考え方をとることが重要です。楽譜として在る音
楽を「再現」するのではなく,常に現代の子ども達の感覚や感性で音楽を生成して
いくことです。「生成」とは,子どもが音や音楽に自分の感性によって働きかけ,
その働きかけた行為によってどのように音や音楽が変化したかを感受しながら,音
楽の世界を構成(生成)し,それと共に自分の内面の世界のイメージや感受性を再
構成(生成)していくことです。
この事業で開発した教材の中にも,「身のまわりのようすをことで表現しよう」
という題材があります。海・雨の日・卒業式などの様子を箏で表現するものです。
このような教材においても,子ども達の感性を生かし,箏の音色に働きかけながら,
リズム・旋律・速度・強弱・構成などを変化させると共に曲想の変化を感受させま
す。このように外的世界の音楽を構成(生成)しながら,内的世界のイメージや感
受性を再構成(生成)していくようにします。このような方法をとることで,子ど
も達の音色や音楽に対する感性や美意識を培うことができるのです。
4.指導内容を設定し子どもの学力(知覚・感受)を育成する
学校教育として伝統音楽を指導するとなると,指導内容を設定し子どもの学力を
育成することが必要となります。例えば,小学校の第5学年及び第6学年の器楽の指
導事項には,「曲想を生かした表現を工夫し,思いや意図をもって演奏すること。」
また,中学校第1学年の器楽の指導事項には,「楽器の特徴をとらえ,基礎的な奏法
を身に付けて演奏すること。」とあります。そして,小学校も中学校もこれらの指
導事項は,共通事項の音色・リズム・速度・旋律・強弱・構成などの音楽の要素を
知覚し,それらの働きから生まれる曲想・特質・雰囲気を感受することを関連させ
ながら指導するようになっています。
従って,小学校においても中学校においても伝統音楽を教材として取り上げ,箏
や尺八・三味線などの和楽器を指導する際には,演奏の技能と共に音色・リズム・
速度・強弱・構成などの音楽の要素を知覚させ,それらの要素や要素同士の関連か
ら生まれる曲想・特質・雰囲気を感受させるようにし,子どもの音楽的な学力を育
成するように計画します。
このことは,鑑賞指導として伝統音楽を指導するときも同じです。例えば,中学
校で吉沢検校の箏曲,「春の曲」「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」を鑑賞として指導す
るときにも,学習指導要領のなかの共通事項,音色・リズム・速度・強弱・形式・
構成などやそれらの関連から生まれる曲想・特質・雰囲気を知覚・感受させ,生徒
の学力を育成するように計画します。
その際には,その楽曲が日本の伝統音楽としては,どういうところに特質がある
のかを見極め,そこの部分を教材化していくことです。その部分に焦点を当て,生
徒との接点をつくり,この部分を通して知覚・感受の能力を育成するようにします。
以上のように,学校教育で伝統音楽を教材として取り上げる際には,指導内容を
設定し学力を育成するようにするところが,地域においてそれぞれの実演家が演奏
として継承しているところとは違います。
5.日本の伝統文化を教えることの意味
箏や尺八,三味線を学校に持ち込んで,演奏している子どもの姿が教室にある様
子は,田園風景の日本の学校によく合っています。ピアノが教室にあるよりも,箏
や尺八・三味線の方が地域の田園風景と合った音色だなと思います。それは,これ
らの日本の楽器の音色は,日本の自然に溶け合う音色だからです。また,日本の伝
統音楽は,日本の四季の変化を表現したものや,花鳥風月
0432名無しさん@純邦楽2019/02/10(日) 11:02:00.88ID:nGNXGcYj
1.我が国の学校教育における伝統音楽の扱い
日本の学校の音楽教育においては,明治5年の「学制」公布以降は,西洋音楽ま
たは西洋様式に基づいた日本人の作品を教材にして,教育が展開されてきました。
戦後においても教材の一部に伝統音楽が取り上げられましたが,実際には伝統音楽
が児童・生徒の学習として定着をみることはなかったのです。
漸く平成10年告示の中学校音楽科の学習指導要領において,演奏表現として「和
楽器」を指導するようになりました。これに伴い教員免許法も改正され,音楽の免
許取得においては,「和楽器」や「伝統的な歌唱法」が必修になりました。そして,
平成18年に「教育基本法」が改正され,この中に「伝統文化を尊重する」態度を養
うことが新しく規定されました。これを受け,平成20年の小学校音楽科学習指導要
領では,鑑賞としてわらべうたや民謡を,器楽として和楽器を,中学校音楽科の学
習指導要領の中では演奏表現としての「和楽器」の他,「民謡,長唄などの伝統的な
歌唱」を指導するようになりました。高等学校音楽科の学習指導要領の表現(歌唱
・器楽・創作)の指導に当たっては「我が国の伝統的な歌唱及び和楽器を含めて扱
うようにする。」と改訂されました。このような学習指導要領や教員免許法,及び
「教育基本法」の改正から学校において伝統音楽を教材として指導することが本格
的となりつつあります。
2.伝統音楽を学校で指導するための教材開発の考え方
以上で示したような我が国の学校教育における伝統音楽の扱いから,その教材や
指導方法もまだ十分に研究されていません。小学校から中学校までの伝統音楽の教
材として,学校現場で実践をしながら開発したというものが少ないのです。あって
も,部分的です。過去には,音楽学者の小泉文夫氏も,学校の音楽教育としてわら
べうたや民謡を中心に日本の伝統音楽を指導する教科書をつくりました。しかし,
これは学校教育において実際に実践するまでには至りませんでした。それは,本事
業のように現場の先生と実演者が実践・検証しながら子どもの学習として成立する
ように教材や指導方法を開発するようにしなかったこと,また,その時期はまだ伝
統音楽を学校で指導するための環境が整っていなかったこと,推進する勢いがなか
ったということが背景にあったと推察されます。現在は,学習指導要領に伝統音楽
を指導する内容が記述されたことを含め,学校教育で伝統音楽を指導することの重
要性を日本人が気づき,学校の音楽教育を変えなければいけないという考え方を日
本人が持ち始めたと言えます。
では,どのような考え方で教材を開発したらよいのでしょうか。これについては,
まず,音色を指導することが大事だと思います。日本人の音に関する美意識は,箏
・尺八・三味線などの和楽器に凝縮されています。従って,現代の子ども達もこれ
らの伝統的な楽器の音色にふれると,親しみを覚え,日本人としての自分を自覚し
ます。また,世界がグローバル化されるなかで,他の国と異なる日本文化の特色を
発信する必要があります。我々は,和楽器の音の響きを通して,日本文化の特色を
知ることができます。この音色の特質を感じ取れるような教材の開発が必要です。
次に,「かりかりわたれ」「なべなべそこぬけ」などの2音,3音,4音,5音から
なる「わらべうた」を教材とし,それを歌えるようにして,そのうえで箏や尺八,
三味線で演奏として指導するようにします。日本の伝統的なわらべうたは,日本人
が誰もが話す日本語に節が付いたもので,音と言葉と動きが一体となっています。
従って,わらべうたは,誰もがその節を自分の感覚に持っているので,誰もが直ぐ
に歌えるようになります。
わらべうたを教材にして,これを箏で演奏させるとき,調弦をしておけば,すぐ
に子どもたちは弾けるようになります。子どもが一人で箏の演奏ができるのです。
その日のうちにできることで,子ども達は箏を演奏するのは楽しいという満足感を
得,次の学習意欲につなげます。そして,箏や尺八や三味線の実演家が実際に音を
出しながら教えれば,音色や奏法から本物の表現の美しさに触れることで,学習が
進みます。このように,子ども達が財産として持っているわらべうたを教材にし,
これを伝統的な楽器で表現していくことで,子ども達は感覚として持っている音楽
を形にすることができるようになると思います。それを学校の教員と実演家が協働
しながら展開するのです。
それと,学校で伝統音楽を指導する際に音楽用語などの問題があります。中学校
音楽科学習指導要領でも「間」や「序・破・急」などの伝統音
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