コンソールを起動すると赤い光が視界を覆う。
ニンテンドーバーチャルボーイをカスタムしたこの没入型コンソールは、
CUI ベースのマルチタスクを効率的に駆動するためにデザインされている。
BG に描かれている「騙し絵」はメモリとCPUの負荷をリアルタイムに描き出す。
キーボードと時にジョイスティックを操り、京都のインディーゲーム会社 「k-Games」に侵入を試みる。

彼ら[ニホンジン]は謎が多い。
OS を作ったにも関わらずそれを組み込み用途に特化させ、
MS のように莫大な利益を上げようとしない。
噂では世界中のデバイスに TRON が蔓延った時に、
スカイネットのように突然、世界を支配すると言われているが、
ロシアやイスラエルの自称凄腕ハッカーグループが解析した結果、
個々の OS が連携するような機能は無かったとか。
k-Games も他のニホンジン同様に謎だった。
通常のセキュリティレベルよりは手こずるだろうと予想していたものの、
優に1時間以上、最初の防壁すら超えられない。
そろそろ相手もこちらに気付いて動き出す頃合だ。
俺は支度を整えて出直すために、侵入の形跡を注意深く消去し始めた時だった。
視界の端に「メール着信」の表示が踊る。
普段なら後回しにする所だが緊急レベルのタグが付いている。
慌てて後始末を終わらせ k-Games への回線を遮断するとメールを開いた。

Subject: Hello, Wolrd!