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SWIFTは「特定の暗号資産を公式に採用しない」という立場を取っている。これは、ETHやXRPといった特定のトークンを、SWIFT自身が基軸通貨として指定したり、優遇したりしないという意味である。SWIFTはあくまで金融機関同士をつなぐ中立的なインフラであり、価値そのものを発行・管理する主体にはならない、という思想に基づいている。

しかし、この立場はしばしば誤解される。「特定のトークンを採用しない」という言葉が、「どの暗号資産も同じ条件で使われる」「ETHもXRPも等しく中心的な役割を担う」という意味だと受け取られてしまうからだ。だが、これは現実のシステム設計を見れば明確に誤りである。

SWIFTが現在進めている共有台帳やマルチチェーン統合の技術的中核は、ConsenSysのCEOがイベントで明言している通り、ConsenSysが提供するEthereum互換技術、すなわちEVMを前提とした構造である。CEOは、その開発にLineaを用いているとも述べている。このEVM互換技術は、スマートコントラクト、RWA(実世界資産)のトークン化、国際決済の自動化を行ううえで、最も実績があり、金融機関が実務で使いやすい基盤として選ばれている。これは思想や政治的配慮ではなく、純粋に技術と実務の問題である。

この構造は、高速道路に例えると非常に分かりやすい。SWIFTは「どんな車でも走ってよい」と言っているが、道路の規格、料金所、交通ルールは最初から決まっている。その道路がEVMという規格で作られている以上、自然に走りやすい車と、そうでない車が生まれる。これは差別ではなく、設計の帰結に過ぎない。

さらに重要なのは、たとえSWIFTの共有台帳がプライベートチェーンとして構築されたとしても、最終的にパブリックブロックチェーンと接続し、価値を外部に移動させる段階では、Ethereumネットワークを通過することが避けられないという点である。その際に支払われる取引手数料、すなわちガス代はETHで支払われる。このコスト構造は選択の問題ではなく、EVMという技術仕様そのものに組み込まれている。

つまりSWIFTは、「どの通貨を使うか」を決めていない一方で、「どの技術の上で世界の金融を接続するか」は明確に決めざるを得ない。そして、その技術基盤の上で実際に発生するコスト、報酬、価値循環の中心に位置するのがETHである。

この点を理解せずに、「SWIFTはETHもXRPも同じように使おうとしている」と主張するのは正確ではない。現時点で、SWIFTがXRP Ledgerを中核インフラとして採用したという公式情報は存在せず、少なくとも現在の設計思想と技術構造の中で、巨大な金融フローの中心にXRPが位置づけられているとは言えない。

結論として、SWIFTは特定の暗号資産を公式に指名しない。しかし、現実の金融フロー、RWAの集約、国際決済の自動化はEthereum互換基盤の上で行われ、その過程でETHが不可欠な「燃料」として大量に消費される構造になっている。この構造を理解しなければ、SWIFTの戦略も、ETHとXRPの立ち位置の違いも、正しく見えてこない。