>>588
そんなこと言わないでくださいよこんな恥ずかしい予想外したんすよもうちょっと言葉選んでくださいよ

それにこたえる柄崎は、「さあ」とひとことで流し、続けてこれからどうするのかと質問する。柄崎は、このたった二言で、任務を果たしている。丑嶋にかんして、柄崎はそのよしあしを判定する立場にない。というか、じぶんでそう考えている。
それが、最強の柄崎を保証するからである。だから、正しいとも間違っているとも、彼はくちにすることができない。重要なのは、正しいともいわなかったことである。
しかし、それでいて、彼は次の行動を丑嶋に訊ねるのだ。丑嶋が正しいか間違っているか、じぶんにはわからないし、その立場にもない、だが従うと、彼は、一言も間違えずに伝えているのである。
くどいようだが、ここでは、「社長が間違っているかどうかわからないがついていきます」というふうにくちにすることもしなかった、ということが重要なのである。丑嶋の正しさに関する判定の回路のいっさいを閉ざしている、
しかも閉ざしていることを表明することもしない、それでいて従う、こういう流れを、柄崎はたったふたことで示してみせたのである。