「な、なんだコイツら木箱に座って食べているのか」
「それだけじゃないぞ……! 食事も木箱の上に乗っけている!」
「本当ね、余裕があって何だかかっこいいわ。こんな方法を思い付くなんて、凄い発想力だわ!」

「…………どうしてだろう。何故か視線を感じるよ」
「気にしすぎだ。今は食事に集中だけしていればいいさ」
「そうだね……ううっ」
もぎゅもぎゅと口を動かして食べる少女。元から量もそんなに多くなくて、あっという間に食事は終わった。
「そろそろ店を出るか」
「そうだね……」
そう思って私たちは席を立ったその時だった。先程の女店員がこちらにやって来て。
「あ、あの……! それはどうされたのですかっ!」
「それ……とは。この木箱の事かな?」
「そうです。私、それに座って食べる人を始めて見ました。だけど、これなら服も汚れなさそうで……」
「なら、君も座って見るといい」
その言葉に店員は嬉しそうな顔を浮かべて。
「い、いいんですかっ!? 座っても!」
「…………ああ、構わないが」
「ありがとうございます! 貴方は優しい人なんですねっ!」
その喜びように私もケーレスも顔を見合せて同時にため息を吐いた。
「良かったらそのまま置いてもいいが。後で捨てようと思っていた所だったからね」
元々は先程の部具店のいらないものを私が譲り受けただけの事、この店が引き取ってくれるのならば、それはそれで手間が省ける。
「そんな……本当に何と礼を言っていいのやら…………」
「それなら礼の代わりにこの技術を広めて欲しい。さすがに立ったまま食事をするのはキツイからね」
「元よりそのつもりでした。これで誰も食事の時に筋肉痛にならなくて済みます」
「そうか、では私たちはこれで……」

さっきの会話を聞くに、きっとすぐに椅子とテーブルの技術は量産されるだろう。ならば後はそれを気長に待つだけだ。
「金はちゃんとテーブルの上に置いてあるから安心してくれ」
「な、なるほど……この大きいのがテーブル。分かりました、ありがとうございました」
そう言ってお辞儀をする女店員。それに私たちは何と返していいのか分からないまま店を出た。