善男善女の読者は老いも若きも「神の手」を持つブラックジャックを敬うことしきりであった。
しかし、不思議でならなかった。
医療技術であって、ごく一部の「神の手」を持つものにのみ可能などというものがあっていいのだろうか。
医療技術というものは並の器用さの者が一定以上の訓練をすれば、一定以上のレベルを達成できるものでなければならないのではないか。
当然のことであるが、人に対する手術は最も安全・確実に行われるべきである。
すなわちその手法というのは安定したものでなければならないはずである。
ごく少数の名人にのみ可能というのは、裏を返せばその手法が不安定で不確実と言うことではないのか。
そして、並の者でも一定以上の成果が出る手技というのは、安定していて確実な方法であるといえる。
スポーツにおける如何なる名プレーヤーも失策をするように、名人にだって不調の時もある。
不安定な手技では手術される者はたまったものではない。