-それが当たり前なんですか?
「そう。特に怖かったのが魚屋と床屋だな」

-えっ? なんでですか?
「魚屋はさぁ、毎月何日が休みって決まっているんだよ。それで休みになるとみんなで花見にきて、そこで包丁でもってその場で魚をさばいて花見客に売るの。それで、あいつらはまた喧嘩っ早いから、酒飲んでいると喧嘩になって包丁が出てくる」

-な、なるほど床屋は?
「床屋も一緒。あの人たちは花見に来て、花見客の髪を切る。だからカミソリを持ってるでしょ。それで飲んで喧嘩する」

-カミソリと包丁と本物の刀、とんでもない花見ですね?
「今じゃ信じられないだろうけどね。私はまだ10歳くらいだったから花見が怖くてね。毎年、床屋と魚屋が来る日は軒先にある農具とか武器になるようなものを隠して、私は畑の奥に逃げていた」

これが「江戸の華」たる喧嘩の現実