セントヘレナの回顧録といわれる物は、正確なナポレオンの口述記録ではなく、複数のゴーストライターによる政治的プロパガンダ。
その目的は、自身の無謬性・悲劇性を喧伝することで、ボナパルティズムを隆起させ、ローマ王による帝政を再興させることにある。
その中で、早々に死去した人物は、帝政の殉死者として美化される傾向にある。
書き手が複数なものだから、所々記述に矛盾があったり、ナポレオンではありえないような事実誤認が含まれているので、あんまし内容を真に受けすぎない方がいいと言われる。
同時代のメッテルニヒも、「ラスカーズほかによる回顧録は、ナポレオンの手によるものでなく、書き手がこうあって欲しいナポレオン像が描かれているに過ぎない」と違和感を述べている。