0001名無しで叶える物語(ささかまぼこ)2023/05/13(土) 22:44:31.19ID:qv670tHv
さやか「教室で授業の復習をしていたら少し遅れてしまいました」
さやか「失礼します。少し遅れました」ガララ
梢「……」ナデナデ
綴理「あ、さや。おはよ」
さやか「こんにちは、綴理先輩、梢先輩」
さやか「あ、そうです。今日花帆さん無断で休んだんですよ。理由を知ってますか?」
綴理「うん。知ってるよ。ほら、こず。説明してあげなよ」
梢「……」ナデナデ
さやか「……あの。どうしてそんな暗い顔をしてるんですか?しかも、蛍光灯を撫でながら……」
梢「……村野さん。落ち着いて聞いてちょうだい」
さやか「え、はい」
梢「花帆さんが、蛍光灯になってしまったの……」
──
さやか「花帆さん。英語の小テストですが、自信のほどはいかがですか?」
花帆「・・− ・・− ・−−−・ ・・ ・−・−・ ・−−−・ ・・ ・−・−・ −−・−・ ・・ −−・−・ ・−・−・ ・−・ ・− −− (うぅ、全然自信ないよ〜っ!)」
さやか「あはは。正直ですね。まぁ、スピーキングができないのでその分リーディングの難易度が上がっているのは可哀想です」
花帆「−・−・− ・−− ・−・・ ・・−・ ・−・−・ −・ −−−・− −・−− ・−・−− (さやかちゃん助けてよ〜っ!)」
さやか「えぇ。そう言うと思いました。なので、花帆さん専用の教材を作りましたっ!」ババーン
花帆「−・−−− −・−−− −・− −・ −−・−・ ・・−− −・ −・・・− −・−・ −・− −・−・− ・・ −・− −・−・− ・・ −・・・− −−・−・ −−・−− −・−・− ・−− ・−・・ ・・−・ ・−・−・ ・−・−− −− ・−・−・ ・−・−− ・・ −・・−・ ・− ・− (えぇ!?私のためにわざわざ!?メシアさやかちゃんって呼んでもいい!?)」
さやか「だめです。でも、小テストで満点取れればいいですよ」
花帆「・−− −・ −−・−− −−・−− −−・ ・−・・ ・・ ・・−・・ −−・− −・− −・ −−・−・ ・−・・ ・・ ・−・−・ −・・・ ・・ −・−−・ (やったあ!ありがとね!私がんばるよ!!)」
さやか「ふふ。人に教えるのはいい勉強になりますから。私としてもいい機会なんですよ」
綴理「……すごいね、さや。あれからすぐに覚えちゃったよ」
梢「そうね。真面目な娘だとは思っていたけれど、そのベクトルを集中させればここまで上達が早いなんて……。何か秘訣でもあるのかしら」
綴理「秘訣も何も、見たまんまじゃない」
梢「見たまま?それってどういうことかしら?」
綴理「もう一度、かほと一緒にお喋りしたい。だから頑張った。それだけだよ」
梢「……えぇ。そうね」
綴理「……?なんかこず、ちょっと変。さやがかほと喋れるようになったのに嬉しくないの?」
梢「いえ、嬉しいわ。当然じゃない。でも、なんだか……。私もモールス信号を知らない方が花帆さんとより親密に……」
綴理「……ふふ。こず、君ってほんと、面倒くさい女だね」
梢「なっ。綴理っ!あなたに言われたくないわよっ!!」
綴理「あはは。こずが怒った〜。さや助けて〜」
さやか「わわっ。ど、どうしたんですか急に!」
梢「ちょっと綴理!後輩に助けを求めるなんて狡いわ!」
綴理「使えるカードは全て使う。それが清く正しい後輩であっても……。それがボク。夕霧綴理さ……」
0015名無しで叶える物語(泡盛)2023/05/13(土) 22:57:01.84ID:IV1tfggC
なんか急にモールス信号わかるようになったわ
梢「なに適当なこと言ってるのよ。全く綴理ったら……」ハァ…
花帆「・−・ ・−・−・ −−−・ −−− ・・−・ ・・−・・ −−−− ・− ・− ・−・−− ・・ −−・− 」
さやか「……あれ。花帆さん、今なんて言ったんですか」
綴理「ごめん。ボクにもちょっと分からなかった」
梢「ごめんなさい。私にも分からなかったわ」
花帆「−・−−− ・−・ −・−・ ・−・・ ・ ・−・−・ ・−・ −−−− ・・−・・ ・− ・・−・ ・− −・・− −−・−・ −・ ・−・・ (え、何か変なこと言っちゃいましたか?)」
綴理「今度は分かった。もしかして、あれかな。蛍光灯でも、言葉を噛むことがあるのかもね」
さやか「あぁなるほど。綴理先輩、賢いですね」
綴理「もっと褒めてくれていいんだよ。ボク、褒めればどこまでも伸びるからね」
花帆「・・−・・ ・・ −−−− −・・− ・−・−− ・・ −・・−・ ・−・−− ・・−・・ ・・ −−−− −・・− ・−・−− ・・ ・−・−− ・・ −−−・− ・−・・ (どこまでもって、どこまでですか!?)」
綴理「う〜ん。軽く、大気圏外?」
花帆「−・− −−・−− −−−・ −−− −−・−・ ・・ −−・−− ・−・ ・−・・ ・−・ ・−・・ −−・−− ・− −・−・ ・− −・−− −・・− ・−−−・ ・−・−・ −−・− (わあ。それじゃあなかなか会いに行けませんね!)」
梢「……まさか」ハッ
花帆「−−−− −−−・− ・・ −・−−− ・−−−・ ・−・−・ −・・・ ・・−−・ ・− ・・−・・ ・・ ・・− ・−・・ −−・−・ −・・− −−・−・ −・ ・−・・ (梢先輩?どうかしましたか?)」
梢「……村野さん。今日は少し、日野下さんを借りるわね」
さやか「え?別にいいですけど……。どうしてですか?」
梢「いえ、少し気になることがあって……。大丈夫よ。明日になったら、村野さんの寮に帰すわ」
さやか「……そう、ですか。割れないように気を付けてくださいね」
梢「えぇ。当然、配慮するわ」
──
バタン
さやか「何だったんでしょう。気になることって……」
さやか「いえ、今は忘れましょう。とりあえず花帆さん用の教材を見直しますか。梢先輩に任せておけば心配はいらなさそうですし」
さやか「えぇと、こっちが関係代名詞。こっちが仮定法っと。花帆さんはやればできる人ですし、問題を多く解かせる練習の方がいいですよね」
さやか「……綴理先輩のお世話をしているからですかね、お節介が板についてきた気がします」
さやか「いえ、綴理先輩とは違う……」
さやか「綴理先輩とはまた別の……運命」
花帆『せっかくバスで隣の席になれたんだよ!?これってもう運命じゃん!』
さやか「……聞きたいな花帆さんの声」コテン
さやか「声だけじゃない。あのうるさいくらいに自己主張する身振り手振りも……。花帆さん、あなたの気持ちを少しは理解できたつもりです……」
さやか「だから、もう一度あの……蕾が何度も咲き渡るような笑顔を……見せてください」
さやか「……どうすれば、花帆さんは蛍光灯から人間に戻れるのでしょうか」ハァ
チカッチカッ
さやか「あれ、照明が点滅して……。蓮ノ空は創立100年を越えますし、この蛍光灯も歴史深いのかもしれませんね」
さやか「寮長に替えてください、とお願いしなければなりませんか」
さやか「──蛍光灯に、寿命が来ていますよ、と」
──
さやか「え……嘘、ですよね」
梢「いえ……受け入れ難いことだろうけれど、事実よ」
さやか「そんな……花帆さんに寿命が来ているだなんて……」フラッ
綴理「さやっ」ガシッ
さやか「あ、すみません……。で、でも、どうして寿命が来ているだなんて……。それに、花帆さんも何か言ってくださいよっ。黙っているだけじゃ分からないですよっ!」
花帆「……」
梢「あのね、村野さん。蛍光灯って何で動いているか知っているかしら」
さやか「え。電気、じゃないんですか……?」
梢「そうよ。でも、今の花帆さんは何からも供給を受けず、蛍光灯として機能している。これがどういうことか、分かるわよね?」
さやか「そ、それは……。じゃあ、今の花帆さんは一体何を動力にして……。まさか、命そのもの……?」
梢「かも、しれないわ。いずれにしろ、花帆さんは少しずつだけれどモールス信号で伝えるのも難しくなってきてる。昨日の歯抜けになったような点滅は、そういうことよ」
さやか「じゃ、じゃあっ。今すぐこの部屋の蛍光灯と変えればいいじゃないですか!そうすれば命なんて使わずとも充電可能なはずです!」
綴理「さや。たぶん、それはだめ」
さやか「綴理先輩……。どうしてですか?」
綴理「根拠は無いけど、蛍光灯として電気を供給した瞬間……花帆は『蛍光灯になっちゃう』と思う」
さやか「蛍光灯に、なっちゃう……?い、いえ。今でも花帆さんは蛍光灯じゃないですか」
綴理「そういうことじゃないよ。今の花帆は、花帆でありつつ蛍光灯でもある中途半端な存在。でも、蛍光灯本来の使い方をされた瞬間、そこから花帆が抜ける、とボクは思う」
さやか「で、でも、根拠はないんですよね?」
梢「……村野さん。あなたも綴理と数か月一緒にいたから分かるでしょう?綴理の勘は、よく当たる、って……」
さやか「そんな……」
梢「だから、言葉は悪いけれど、少しでも花帆さんを永らえさせるために、今は点滅を禁止させているの」
さやか「花帆さん……」
花帆「……」
綴理「ね、さや」
さやか「は、はい。何ですか?」
綴理「さやは、絵に描いたような優等生だって思う。でも、そんなさやがモールス信号を知らないだなんて理解できないんだ」
さやか「え……?」
綴理「ボクだって分かるくらい、モールス信号は社会に浸透してる。義務教育で叩き込まれた記憶しかない」
さやか「義務教育で……?そんなわけ……」
綴理「──ボクはね、かほが蛍光灯になるのと同じくらい、さやがモールス信号を知らないことに驚いてる」
さやか「──」
──
綴理「ね、よかったの?」
梢「……何のことかしら」
綴理「かほのこと、さやに任せちゃって。首を突っ込みたいんでしょ?」
梢「……はあ。綴理、そういうことは興味本位で聞くものじゃないわ。人の心にズケズケと入り込むなんて図々しいとは思わない?」
綴理「はは。ボクに図々しさを説くつもり?」
梢「全く……」
綴理「それで?どうなのさ」
梢「首だってなんだって、突っ込みたいに決まってるじゃないっ。たった数か月だけれど、日野下さんは私にとって大切な……後輩なのよ」
梢「けれど、私にできるのは手を差し伸べることじゃない。手を伸ばそうと努力する村野さんの背中を押して、花帆さんに届かせることだわ」
梢「私にできることなんて、そんな程度のことよ。全く、先輩って嫌な役回りね」
綴理「ふっ」
梢「……あなた、今鼻で笑った?」
綴理「いや、笑ってないよ。ほんと」
梢「……」ジトッ
綴理「こずももう少し、素直になればいいのに、と思って。でも、こずはそれでいいと思う。私たち二年生にできるのは、ここへ戻って来たい、と思わせるような場所にし続けることだと思うから」
梢「……綴理、あなたやっぱり、二年生になってから言葉の重みが増したわね」
綴理「それは……ぴーすしてもいいこと?」
梢「どうかしら。村野さんに聞いてみなさい」
綴理「それじゃあ……そうしようかな。それと、かほにもね」
梢「……えぇ、そうね。日野下さんの口から、直接、ね」
──
さやか「花帆さん。私、どうすればいいんでしょうか」テクテク
花帆「……」
さやか「あはは。答えることなんてできませんよね。花帆さんが光れば光るだけ、寿命は縮むんですから」
さやか「……」
さやか「あの、一つだけ聞いてもいいですか?」
花帆「……?」
さやか「あなた、本当に花帆さんなんですか?」
花帆「……!?」
さやか「梢先輩や綴理先輩、クラスメイトの方たちから花帆さんと認定されたので、私は蛍光灯であるあなたを花帆さんと認識しています」
さやか「ですが、普通に考えるなら蛍光灯を人扱いするなんておかしいですよね」
さやか「偶然、光の点滅が会話の呈を為していただけかもしれない。あなたが花帆さんである確証をどうやって証明できるでしょうか」
花帆「……」
さやか「ねぇ、信じられますか?昨日まで普通に会話していた友人が、突然蛍光灯扱いされているんですよ。信じられませんよね」
さやか「この現実を一言で言えば……馬鹿馬鹿しい。この一言に尽きます」
花帆「……っ」
さやか「──でも」
花帆「……?」
さやか「それでも、私は考えてしまうんです。花帆さんをどうすれば蛍光灯から人間に戻せるのか、その方法を」
さやか「馬鹿馬鹿しいと一蹴しておきながらも、しっかりと解決策を考えているんです。えぇ、そんな私こそ馬鹿馬鹿しいと思うでしょう」
さやか「……それは全て、花帆さんのせいです。蛍光灯になっても尚、花帆さんの輝きが私を掴んで離さないんです」
花帆「……」
さやか「花帆さん。自分では知らないでしょうけど、あなたは蛍光灯ではない、人間だった頃も……輝いていましたよ」
花帆「……っ!?」
花帆「−−−・ ・−・−・ ・−・ −・・・ −−−・− ・・ ・−・ ・− (そんなはず、ないよ……)」
さやか「いいえ。私は確信を持って言えますよ。あなたは輝いていた。目が眩む……いえ、違いますね。目を離してくれないほど、瞬きを許さないほど、あなたは輝いていたんです」
花帆「・・− ・・− −−−・ −・ ・・ −− −・− −・ −−・−・ ・・−・・ ・・−・ ・−・・ ・・ ・−・−− −・−・− ・−− ・−・・ ・・−・ ・−・−・ −・・・ (う、嘘。あたしと違ってさやかちゃんは……)」
さやか「何ですか?私と違って、何ですか?」
花帆「−・−・− ・−− ・−・・ ・・−・ ・−・−・ −・・・ −・・− −−・・ ・・ −−・−・ ・− −− −・− −・ −−・−・ −・・・ −−−・− ・・ ・・−・・ −−−・− −・・ ・・−−・ ・・−・・ ・・・ ・− ・・−・・ ・−−− −・・・− −・−・ ・・− −・−− ・−・−− ・− −・−−・ ・・−・− −・ ・− (さやかちゃんは眩しいよ。あたしはずっと、スポットライトを目に受けているみたいに……)」
さやか「……ふふ。ありがとうございます。花帆さんから見て、私がそう見えていたのなら、恥ずかしいですけど嬉しいです。村野さやかの頑張りが、きちんと伝わっていたんですから」
さやか「ですが私にとっても、花帆さんは羨ましく映る、手の届かない一等星なんですよ」
花帆「・− ・−・−・− ・− ・・−・・ ・・− ・−−−・ ・− −・ ・・ ・−・ ・−・−・ ・−・−− ・−・・・ ・−・・・ −・−− ・・ −・−・− ・−・ (い、一等星だなんて、大袈裟だよ……)」
さやか「……あの、花帆さん。一つ思ったのですが、あなたは自分を過小評価し過ぎでは無いですか?」
花帆「−・−−− (え……?)」
さやか「確かに、私のようなフィギュアスケートで培った実技は無いかもしれません。綴理先輩のような感性だけで全てをこなす天稟も無いかもしれません。梢先輩のような現実的な視野と理想の折り合いを付けた表現はできないかもしれません」
さやか「でも、花帆さん。あなたには『あなた』がいるじゃないですか……っ!」
花帆「−・− −・ −−・−・ (『あたし』……?)」
さやか「人前で歌うことが大好き。人前で踊ることが大好き。想いを言葉にするのが大好き。みんなを笑顔にしたい。そんな気持ちが十全に表れた表現……。それに、心惹かれないわけ、無いじゃないですか……っ!!」
さやか「あなたは日野下花帆だから。私、村野さやかの心を掴んだんですよ……?」
花帆「・−・−− ・・ ・−・−− ・・ −・・−・ (……で、でも)」
さやか「まだ、足りませんか。でもも何もありませんよ。そもそも、花帆さんは今のままでいいんですか?」
花帆「……」
さやか「蛍光灯になって、声も動きも表せない今のままで。ライブにも出られない。抑揚で喜怒哀楽も表現できない。今のままで」
花帆「−・− −・− −・ −−・−・ −・・・ (あ、あたしは……)」
さやか「あたしは、何ですか?」
花帆「・・− ・・− −・ ・− −・ ・− ・−・・・ ・・−・・ ・・ −−・ −・ ・− −−・−− −・ −−・−・ ・・−− −・−−− ・−・・ ・・ ・−・・・ ・−・−− ・・ ・・−・− ・−・−・ ・−・ ・−−− −・−−− ・−・・ ・・ ・−・・・ −・−・ −−・−・ −・ ・− (う、歌いたいっ!踊りたいっ!あたしの笑顔で、みんなを笑顔にしたいよっ!)」
花帆「でも……あたしにはさやかちゃんや先輩達みたいな花が無いから……。せいぜい、歌声と言葉くらいしか無いから……」シュゥゥウ…
花帆「目を惹くような踊りも無い。見ただけで真似られるようなセンスも無い。辛いことがあっても立っていられるだけのメンタルも無い」
花帆「そんなあたしの言葉が、本当に届くのかなって……。ただ、キャッチーな歌詞をうわごとみたいに呟いているだけなんじゃないかって……。言葉は便利だけど、その分伝わり過ぎちゃうから……」
花帆「そう思ったら……あたし。言葉を口に出すのが怖くなっちゃって……」
さやか「──だから、蛍光灯になっちゃったんですか?」
花帆「わかんない。でも……そうかも」
さやか「花帆さん。聞いてください」ガシッ
花帆「わわっ。な、なんでしょうかっ」ピーンッ
さやか「花帆さんには歌声、言葉だけじゃないですよ。体全てを使って感情を表現する花帆さんのことです。四肢の末端に至るまで、指先の揺らぎ一つすら花帆さんなんです」
さやか「言の葉を口にするのが怖いのなら、代わりに指先に思いを込めればいいじゃないですか。それさえも怖いなら、メロディに従って笑顔で応えればいいじゃないですか」
さやか「花帆さんは、足の先から髪の毛の先まで全て、花帆さんなんですから」
さやか「私は、そんな花帆さんだからこそ、心惹かれたんですよ」ジッ…
花帆「さやかちゃん……」
さやか「……あの、気付いてます?蛍光灯じゃ無くなったこと」
花帆「え……。あっ!本当だ!あたし、ピカピカ光ってない!視界も180度全開じゃないっ!人間に、戻ってる〜っ!」
さやか「……ふふっ」
花帆「あ〜……よかったっ!さやかちゃんっ!本当にありがとね!あたし、このまま無機物として一生を終えるんじゃないかって不安でいっぱいだったんだよ〜っ!」
さやか「私としても、外出の際蛍光灯を持って歩く奇人に思われずに済みました」
花帆「え、えぇ!?戻って早々優しくない〜っ!」
さやか「ほら、早く寮に帰りますよ。迷惑をかけた皆さんに、今回の顛末を仔細に伝えなければなりませんから」
花帆「うぇ、えぇ〜?言葉を口にするのが怖いから蛍光灯になった、って伝えるの〜?な、なんだか背中がむずむずするよ〜っ」
さやか「迷惑をかけたのなら、しっかりと清算しなければなりません。ほら、さっさと行きますよ」
花帆「は、はい……」トボトボ
さやか「……ほんと、戻ってきてくれてよかったです」ボソッ
花帆「え?今、何か言った?」
さやか「い、言ってません」プイッ
花帆「へぇ〜……?」ニヨニヨ
さやか「な、なにニヤけてるんですかっ!ほらっ、さっさと行きますよ!」パーンッ
花帆「いたっ。お尻叩くこと無いじゃんっ!!」
さやか「叩くお尻が戻って、大変結構なことじゃないですか」
花帆「そ、それは……確かに……」
──
梢「……ふむ。モールス信号……全く理解できないわね。私たち、これを本当に理解していたのかしら」
綴理「今日一日あれば、たぶん理解できると思う」
花帆「わわっ。やっぱり綴理先輩って天才肌ですね!あたしにも教えてください!」キラキラ
梢「なっ。日野下さん。モールス信号なら私が直々に、手取り足取り、手順を丁寧に踏んで教えて差し上げますから」
綴理「でもこず、モールス信号ちっとも理解してないじゃん」
梢「そ、それは……。でも、現時点で言えばあなたも同様でしょう?」
綴理「はいはい。張り合わない張り合わない」
梢「つ、綴理〜っ?」ワナワナ
綴理「おっと、少し外の空気でも吸ってこようかな。ばいば〜い」ヒュンッ
梢「ちょっ。綴理っ!待ちなさいっ!」バビュンッ
花帆「わぁ〜お。かまいたちみたいな梢先輩、初めて見た〜」
さやか「……おかげで。私たち二人取り残されちゃいましたね」ハァ
花帆「まーまーっ!無事にスクールアイドルクラブを再始動できていい感じじゃんっ!」ピース
さやか「まあ、そうですね。花帆さんも無事に戻ってきてくれて何よりです」
さやか「ですが、一つだけやや不満は残りますが」
花帆「不満?なにかな。あたしに解決できることなら何でも言ってよっ!蛍光灯から人間に戻してくれた恩を返さないとっ!」ドンッ
さやか「……折角覚えたモールス信号。これを披露できる場が一切無いことです」
花帆「……あぁ〜、そ、それはねぇ。ど、どうしようもない、かなぁ……?あはは……」
さやか「……」
花帆「あ、えっと、そのぉ……。そ、そうだっ!あたし、ちょっと疑問に思ってたんだけどさっ。ちょっと聞いてもいい!?」
さやか「……どうぞ」
花帆「なんであたしが蛍光灯になった時、さやかちゃんだけ変わらなかったのかなぁって……。みんな知らないはずのモールス信号を知ってたじゃん?」
花帆「それって、さやかちゃんがあたしを助ける人だって最初から決まってたみたいで……」チラッ
さやか「……ふむ。なるほど」
花帆「ま、まぁ、そんなこと言っても分かりっこないんだけどね!」
さやか「いえ、主観的な視点入りまくりの結論ですが、私の中で答えはでています」
花帆「え、えぇ!?分かったのさやかちゃん!教えて教えてっ!!」
さやか「いいですよ。それじゃあ、目を離さないでくださいね」
花帆「?」
花帆「うん。目を離さないけど……」
さやか「・・− ・−・−・ −・・・− ・− ・・−− −−・・− ・・−・・ −・ ・・ ・−・・ ・・・ ・−・−− ・・ −−−・− −− 」パチッパチッ
花帆「え……?何そのウインク」
さやか「花帆さん、モールス信号、知らないんですか?義務教育ですよ?」
花帆「え、えぇぇぇええ〜〜〜〜っ!?習ってないよ〜っ!!教えてよぉ〜〜っ!!」
さやか「ほら、先輩方を追いかけて練習に行きますよ」タッ
花帆「ちょっ、待ってよさやかちゃ〜んっ!!なんだったのさぁ〜っ!!」タッ
おしまい
0038名無しで叶える物語(泡盛)2023/05/13(土) 23:19:31.34ID:IV1tfggC
蛍さやは運命の出会いなのね
素敵なSSだったわ
「っゃゅょ」が無いから
サヤカチン
ケイコウトウニナチタ
になるの笑う
モールス信号で告白とはロマンチックですわね
やはりかほさやは素晴らしい
0042名無しで叶える物語(ますのすし)2023/05/13(土) 23:52:19.09ID:0GMt6F3u
おつおつ
これも運命の人だね
素晴らしいSSをありがとう
0044名無しで叶える物語(ぎょうざ)2023/05/14(日) 00:05:35.92ID:95PRecN6
蓮ノ空を追うにはモールス信号も履修しないといけないのか…
0045名無しで叶える物語(もんじゃ)2023/05/14(日) 00:12:05.29ID:1BR1MLwO
面白かった
蛍光灯になる1発ネタで終わらない感動作で良かった
0046名無しで叶える物語(もんじゃ)2023/05/14(日) 00:21:48.37ID:z73zMjzb
奇妙な物語かと思ったら正統派で驚いてるのよね
素晴らしいわ
最近俺の身の回りでモールス信号が普及しすぎている気がする
ホラーの気分
0049名無しで叶える物語(新日本)2023/05/14(日) 01:33:28.31ID:Kox18GEa
初期の傑作として挙げられるような作品なんじゃないかこれ
セリフも勝手に脳内再生されるくらい全部キャラに合ってて自然だった
俺はモールス信号変換してくれるサイト使いながら読んでたから「言葉は便利です」のくだりが刺さったし考えさせられた
>>1にしか書けない逸品だと思う とりまモールス信号勉強してくるわ
基礎教養だしね(?)
さやかほ最高!!!
ネタSSかと思いきやお話のテーマもありつつ、読後感も良い繰り返し読みたくなる名作……
さやかちゃんの独白のシーンとか彼女らしい真っ直ぐに花帆ちゃんを想う気持ちが出てるように感じて良い文章読めたなぁって思った
0054名無しで叶える物語(もんじゃ)2023/05/14(日) 06:52:33.43ID:h/+zuOHU
素晴らしい作品だわ、モールス信号が難しいのだけれど
一発ネタとしても面白いけど昇華して作品書ききってるのすごい
キャラ理解もぶれてないし
>>44
ラブライバーなら歩夢のモールス信号ソングで履修済みのはずですよね 拗音促音が飛んでてサヤカチン、ケイコウトウニナチタってなってるのかわいい
トンデモネタをしっかり読ませる内容に昇華できる才能すごいわ
0062名無しで叶える物語(もんじゃ)2023/05/14(日) 23:12:23.14ID:/P/PumZC
最高だな