【SS】ラクダになったミア・テイラー

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0001名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/15(水) 22:41:47.25ID:+vbQXdqG
去年落としてしまったSS
最初から始めます

0096名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:30:09.57ID:sFm8uU4J
しずく「ミアさん輸送作戦、ですか?」

栞子「はい。最近、ミアさんに対するいたずらが多く観測されています。落書きの頻度は高まるばかりです」

栞子「そこで、動画などの直接の被害を、これ以上広げない為にも、ミアさんを一時三船家で保護しようと思うのです」

エマ「でも、それってミアちゃんの意思じゃないよね?」

栞子「痛い所を突かれてしまえば、そうなのですが....」

栞子「おそらく、ミアさんには多少なりとの意思はある。でも、被害が出ている以上、なりふり構っていられないのです」

果林「...深刻な問題ね。寮からミアが居なくなるのは少し寂しいわ」

栞子「私も、学園からミアさんが去らざるを得ない状況に、少し寂しく思います」

栞子「今、ランジュにトラックの手配を頼んでいます」

栞子「皆さんのスケジュールでは、三日後がフリーでしたので、三日後に作戦を開始します」

栞子「当日の流れは、後で送ります」

栞子「...ミアさんを、よろしく、お願い、します」ぺこり

しずく「任せてください」

エマ「うん、頑張ろうね」

果林「そのほかにも、やる事あったらなんでも言って頂戴。なんでも手伝うから!」

栞子「ありがとうございます...」

0097名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:32:13.33ID:sFm8uU4J
🌟🌟🌟三日後🌟🌟🌟


エマ「はじめに、私達だね」

果林「えぇ、寮からトラックの発着場まで、ミアを誘導する」

エマ「ミアちゃん、おはよう」ガチャ

ミア「....」

エマ「ミアちゃん、栞子ちゃんから、お話は聞いた?」

エマ「ミアちゃんを守る為にね、ミアちゃん別の場所に行くんだよ」

エマ「ついて来てくれる、かな?」

ミア「...........」モグモグ

果林「理解しているのか、私達が理解出来ないわね」

果林「ラクダだから、仕方ないわ。でも、ラクダだからって容赦しないわよ」

果林「ちょっと強引だけど、縄をかけて」ふん よいしょ

果林「ミア、来て貰うわよ!」

0098名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:34:00.66ID:sFm8uU4J
ミア「すくっ」

ミア「ブルルン、ブルルン」

果林「あら、案外素直なのね」

エマ「素直なのは、いい事だよ。昔も、このぐらい素直であって欲しかった」小声

果林「ミア、ついて来て」

ミア「....のそ、のそ」

果林「いいわ、その調子、その調子」

エマ「もうすぐ、道路に出るね」

0099名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:36:09.26ID:sFm8uU4J
ミア「のそのそ」

ミア「....ボエ~」

エマ「日本人は、みんな優しいって言うけど、案外、東京の人は無関心」

エマ「そう言う所、少し不思議に思ってたけど、今日は好都合だね...」

ミア「....」

果林「みんな、そうだったら良かったのにね」

果林「無関係、無関心な振りをしているのに、本当は他人の事を知りたい」

果林「SNSは、初めは人と人を繋ぐツールだったのに、いつのまにか、安全地帯から石を投げるツールへと変化してしまった」

果林「グローバリゼーション、ユビキタス社会って言っていた頃が懐かしいわね」

果林「その頃の予想とは違って、個人の世界は、繋がるどころか、どんどん狭くなっていっている」

果林「自分の見たい物しか、見えない世界になってしまったわ」

果林「そのまま、狭くなって、先細って、途切れてしまえばいいのに....」

エマ「....果林ちゃん」

エマ「ミアちゃんの事、みんな忘れてくれるかなぁ?」

果林「だと、良いわね...」

ミア「....」

果林「こんな暗い話をしてしまって、ごめんなさい」

果林「もうすぐ発着場よ」

エマ「うん。頑張ろうね」

ミア「....のそのそ」

0100名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:37:58.18ID:sFm8uU4J
エマ「見えて来たね、おっきなトラックも」

果林「発着場到着よ。これから先はバトンタッチ」

ランジュ「ミア!さあトラックへ」

ミア「....」

しずく「どうしたのでしょう?動きませんね」

ランジュ「ミア、行きたくないかもしれないけど、これは貴方を思ってやってるのよ。少し強引だけど、わかって頂戴」

ミア「....耳ピクピク」

しずく「何かを聴いている様です。ラクダだから、遠くの音も聞こえるのでしょうか?」


しずくがそんな事を言い終えるか否かの刹那、ミアとランジュ達の間に風が吹いた。

ミアの前髪が、風に揺れる。

あら、サラサラね、なんてランジュが思っていた、その瞬間、ミアは駆け出した。

ミア「....!」すたたっ すたたっ

ランジュ「あっ!!」

エマ「ミアちゃん!待って!待って!」

0101名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:40:26.54ID:sFm8uU4J
果林「どうしましょ!!どうしましょ!」

しずく「とりあえず、家で待機中の栞子さんにも連絡を」

しずく「至急トラック前に来てもらって」

エマ「私とランジュちゃんはミアちゃんを追いかける」

ランジュ「任せなさい!」

ランジュ「ミア、止まって!」

ランジュ「止まって!!」

前にも述べた様に、ラクダの脚はすこぶる速い。

ランジュとエマはあっという間に距離を離され、小さくなっていくミアの姿を見送るだけだった。

0102名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:41:29.94ID:sFm8uU4J
🌟ミアが逃げ出すよりもちょっと前🌟

彼方「お、おぉ...」

彼方「うっ...」

彼方「はぁ...はぁ...」

彼方「彼方ちゃんの、お昼寝スポット」

彼方「ようやく、1人に...あっ」

モブ「クスクス」

モブ「...スッ」


名も知らぬ、学科も知らぬ誰かは、ポケットから、何かを取り出す。

スマホだ。

スマホで、撮られていると理解するには、瞬きの一瞬程でも十分だった。

彼方「はっ!」

彼方「やめ、やめろよ!!」

モブ「クスクス」

0103名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:44:22.92ID:sFm8uU4J
彼方「やめろって、言ってんじゃん!」


彼方はスマホを手で遮ろうとする。

名も知らぬ誰かは、不機嫌そうな、それでも面白そうな顔をしながら、ニヤニヤしていた。

モブ「加害者の癖に、それ、言うんですね」

モブ「遂に本性表しましたね!これ!全世界に配信してるんで!!」

モブ「もっと、もーっと面白い事、言ってくださいよ!」

彼方「は?はぁ??」


彼方の肩が、ワナワナと笑う。
虚無が、彼方を襲う。

ふと、視線を感じ、周囲を見渡す。


モブ「あはははは!」

モブ「こっち見ろよ!」

いつのまにか人集りが出来ていた。
あちらにも、スマホ。こちらにも、スマホ、スマホ。


スマホ、スマホ、スマホ。


彼方「わああああああああ!!!」


野獣の様に雄叫びを上げ、彼方は走り出した。

0104名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:46:25.74ID:sFm8uU4J
周囲の好奇心の目など、もう気にしていない。

己の計画の遂行のために、彼方は獣の様に走った。

髪を振り回し、スカートなぞ気にせず、息も絶え絶えに、走る。走る。

彼方「はぁ、はぁ」

たどり着いたのは、璃奈のラボの前。

扉に手を掛けようとしたその瞬間。





せつ菜「彼方さん」





意外な人物だな、と彼方は思った。

しばらく顔を合わせてない。私に罰を与える存在は、せつ菜以外が相応しいのでは?なんて思った。

0105名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:48:16.40ID:sFm8uU4J
せつ菜「その扉は、どうせ鍵が掛かっているので開きませんよ」

彼方「....」

せつ菜「彼方さんも、あの何処かの自分勝手なラクダに憧れているのですか?」

彼方「........」

せつ菜「配信動画、見ました。他の生徒が彼方さんを見つけるのは、時間の問題ですね」

せつ菜「どうして...」

せつ菜「どうして、私を見てくれなかったのですか!」

彼方「な、なんだよいきなり...」

せつ菜「かすみさんも、しずくさんも、ミアさんも。どうして有象無象ばかりに手を出してしまったんですか!!」

せつ菜「私は!ずっと貴方の事が好きだったのに!」

彼方「し、知らないよ!いきなりそんな事言われたって、知らないに決まってるじゃないか...!」

彼方「私の好きと、せつ菜ちゃんの好きは、別の方向いてただけじゃん」

彼方「逆ギレはよしてよ!」

せつ菜「なんで、なんで」 グッ

せつ菜は地面の石を掴み上げる。

一瞬、何かを思うように、顔の前で握り締め、そして大きく振りかぶった。

せつ菜「なんで貴方は!人の心を逆撫でするのが、なんでそんなに上手なんですか!!」ブン


ドスッ!

鈍い音が響く。



彼方「あう...い、痛い」

せつ菜「私はあなたを愛していたのに、ずっとずっと、あなたの側で支えていたのに!!」

彼方「...わからないよ。ごめん、わからないんだ...」

せつ菜「...んっ!」

怒りと悲しみに支配されたせつ菜は、二つ目の石を握る。

大きく、彼方へ振りかぶった、その瞬間!

0106名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:51:53.74ID:sFm8uU4J
彼方「あれ?痛くない」

ミア「ボエー」

なんと、ミアがせつ菜と彼方の間に割って入って座っていた。

ミアの大きな身体に、彼方は守られている。

石に当たってしまった様で、額からは血を流していた。

せつ菜「ちょうど良い所に来ましたね」

せつ菜「私はミアさんの事、大っ嫌いですから、ちょうど良い機会です」

ラボの前はゴロゴロとした砂利で補充されている為、石は無限にある。

せつ菜はまた一つ拾い上げると、ミアを睨んだ。

彼方「ひっ....当たったら、怪我しちゃう」身を屈める

せつ菜「せめて、人語が喋れればよかったのにね!!」

せつ菜「抵抗したら、やめるつもりだったから!」ブン

ドス

今度はミアの首に命中した。

0107名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:52:41.40ID:sFm8uU4J
⭐⭐⭐⭐

かすみ「はぁ...はぁ...」

かすみ「確か、この辺りに...」

かすみ「動画が、役に立つなんて。はぁ、はぁ」


「なんで、なんで!!」

「お前なんかに!なんで!」


かすみ「...!!」

かすみ「せつ菜先輩の声...しかもヒステリックな」

かすみ「そろり...そろり...」

かすみ「....っ!!」

0108名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:54:43.47ID:sFm8uU4J
血まみれの頭を、地面ぎりぎりに、なんとかもたげようとしているラクダのミア。

その腹部で、体をワナワナ震わせながらかがみ込む彼方。

石を片手に、ミアを睨みつけるせつ菜。

周囲には、ラクダ独特の匂いと、血の混じった不思議な匂いが漂っていた。

せつ菜「このままじゃ埒が開かないですね」ゴト

せつ菜「この石、あなたの頭をかち割るにはちょうどいいぐらいの大きさですね」

せつ菜「今楽にしてあげますよ」

せつ菜「勝手にラクダになって、自分勝手で」

せつ菜「人の復讐を邪魔するラクダには、お似合いの最後です」ザッ

せつ菜「さようなら!」ブン!

かすみ「ちょ、ちょっとなにこれ!!」

かすみ「!!」

0109名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:55:38.32ID:sFm8uU4J
かすみ「....ぐぐぐ」

せつ菜「ちょっと、誰ですか?!」

かすみ「せつ菜先輩...それ以上はミア子が!」

かすみ「なんでそんな事するんですか!!」

かすみ「私達、仲間だったじゃないですか!」

せつ菜「こいつは!!このラクダは!!」

せつ菜「私から奪った!全てを奪った!!」

せつ菜「離せ!!」

かすみ「じゃあ、ミア子より先に、私をやればいいじゃないですか!!」

かすみ「私の罪は、ミア子よりも重い!」

せつ菜「...そういえば、そう、でしたね」クルッ

0110名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:56:33.03ID:sFm8uU4J
ドスっと、鈍い音が聞こえる。

かすみの頭を、血が赤く染める。

かすみ「....うぅ」

ふらふらしながら、かすみはまだ立っていた。
足元に、ぽつりぽつりと血溜まりが出来る。

せつ菜「私が、私がどれ程、好きだったか、わかりますか?」

せつ菜「ずーっと待っていました。この不埒なラクダを仕留める機会も、かすみさん、あなた達の機会も!!」

せつ菜「これは神様がくれたチャンスなのです!」


せつ菜がまた石を大きく振りかぶった瞬間!

かすみ「なに言ってんだお前~!!」

かすみは重心を低く取り、素早く構えた。

そして、かすみの渾身の右ストレートが、せつ菜の顔面を撃ち抜いた。

0111名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:58:00.82ID:sFm8uU4J
せつ菜「ぶはっ!」

せつ菜はよろけて、後ろに倒れる。

その隙を、かすみは逃さない。

素早く馬乗りになり、何度も殴る、殴る、殴る。

かすみ「ずーっと好きだったからってなんだ!」

かすみ「何にも言わなかった癖に!勝手に期待して、勝手に自爆していった癖に!」

かすみ「彼方先輩が好きなら、好きって言えばよかったのに!」

かすみの頭から、血が荒ぶる。

周囲に鮮血を撒き散らしながらも、かすみはまだ止まらない。

かすみ「口が付いてるんだから!私達はラクダじゃないんだから!言いたいことあったら、あらかじめ言え!!」

かすみ「全部知ってるんだから!ミア子に落書きしてたのもせつ菜先輩ってことも!」

かすみ「先輩こそ自分勝手!自分勝手をふり撒いて、権利ばかり主張して!!」

かすみ「臆病者!小心者!ど三品!」ボコボコ


清々しいまでの逆ギレである。

0112名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/19(日) 23:59:05.27ID:sFm8uU4J
かすみ「めんどくさい、めんどくさい奴め!」ぼこっ

かすみ「後ろのラクダよりも、不器用な奴め!」ぼこっ

かすみ「はぁ...はぁ...」

かすみが手を休める頃には、せつ菜は既に虫の息であった。

せつ菜「...かっ!」

せつ菜「ごほっごほっ」

青あざで顔を膨らませ、鼻血を垂らすせつ菜。

せつ菜の視界は、徐々にぼやけていく。
それと一緒に、瞼も重くなっていく。

ああ、海風が綺麗だなとか、そう思いながら目を閉じた。

0113名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 00:00:10.36ID:Q6hmgJCA
かすみ「ミア子、彼方先輩」

かすみは最後の力を振り絞ろうとしたが、途中で力尽きた。

かすむ「バタン」

かすみは電池が切れた様に倒れ込んだ。

0114名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 00:02:09.42ID:Q6hmgJCA
彼方「...あっ...ああ」

彼方「みんな、なんなの?大丈夫なの?」

自分を巡って、乱闘が繰り広げられ、そして誰も起き上がらない。

事の大きさに気づいた時から彼方の膝は笑っていた。

彼方「起きて、起きてミアちゃん!」

ミア「.....ボエ」

彼方「今死んだらラクダになっちゃう!!だから死なないで!」

ミア「.....」

ミアはゆっくり目を閉じて、首を地面に伏せた。

0115名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 00:02:52.77ID:Q6hmgJCA
彼方「あっ...あっ....」

彼方「こういう時は....」

パシャ

彼方「!?」

モブ「いい所とったぞー!」

彼方「...」

彼方の顔がサーっと青くなっていく。

モブ「これ全部一人でやったんでしょ?傷害沙汰で退学じゃね?」

モブ「退学したくない様に口合わせてやるから、今までの事に対して土下座しろ」

モブ「(まあ本当は隠し撮りして拡散するつもりだけど)」

モブ「どーげーざー!どーげーざー」

彼方「(うぅ...)」

彼方「(自分の蒔いた種だし)」

彼方は両膝を抱え込み、額を道路につけた。

モブ「申し訳ございませんでしたって言え」

彼方「申し訳...」

半分言いかけたその時。

0116名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 00:04:54.84ID:Q6hmgJCA
あなた「何してるの!!」

歩夢「ミアちゃんが逃げたってランジュちゃんから聞いて...あっ」

モブ「(変なやつらが来たけど仕方ない。こいつらまとめて配信してやろ)」

あなた「ねえ、今悪いこと考えたでしょ」

あなた「スマホ見せてよ!」

モブ「えっ、ちょっ!」

あなた「やっぱり!カメラ回してた!」

あなた「ダメだよね、悪意のある動画撮ろうとしてたんでしょ」

あなた「こんなの、こんなの!!」

ピッ!削除

モブ「あっ!」

あなた「今のやり取り録音したから。彼方さんが悪いのはそうだけど、行動が行き過ぎてるよね?」

モブ「ちっ」

モブ「後で覚えとけよ!」

0117名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 00:05:42.14ID:Q6hmgJCA
あなた「彼方さん、この惨劇は?」

彼方「かすみちゃんと、せつ菜ちゃんが、殴り合ってて、相打ちになって」

彼方「ミアちゃんも...」

あなた「とりあえず、医務室、でいいのかな?救急車は大袈裟かも」

歩夢「ミアちゃん!ミアちゃん!」

歩夢「ミアちゃん、起きて!」

歩夢「血が、止まってるけど...」

ミア「.....」

彼方「ミアちゃん、お願い、まだ死なないで」

彼方「私、ミアちゃんに謝りたい事、いっぱいあるの。だから!!」


パタパタパタパタ

0118名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 00:08:23.59ID:Q6hmgJCA
ランジュ「ミア!ミア!」

ランジュ「ミア!しっかり!!」

あなた「ランジュちゃん!ダメ、今揺すったら!」

ランジュ「...っ!!」

彼方「...ぐすっ」

彼方「ミアちゃんは、私を守って...」

ランジュ「何よ、彼方!この機に及んで泣くの!?」

ランジュ「アナタの撒き散らした種なの。泣くんじゃないわよ!泣きたいのはコッチなの!」

ランジュ「彼方には罪をキチンと贖って貰うためにも、無傷で居てもらわなきゃいけないの」

ランジュ「彼方!」べチン!

彼方「いたっ!」

彼方「何するんだよぉ!」

ランジュ「私からの一発。本当は退学にしたいところだけど」

彼方「.....」

ランジュ「もうすぐ璃奈達が来るわ」

ランジュ「それまでに、ミアを動かさないと...」

0119名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 00:09:39.34ID:Q6hmgJCA
結局、人間二人は担架で、ラクダ1匹は大きな台車で運ばれていった。

獣医「人間がラクダになったと言うのも初めて聞きますし、その処置と言われましても、私達にもわかりませんので」

璃奈「それは、重々承知しています」

璃奈「あの...」

璃奈「あの後、人間に戻す薬を開発しました。錠剤タイプだから、目が覚めないと、飲ませる事は出来ないんだけど...」

獣医「それまではなんとかしてみます」

璃奈「...」バッ!物凄い速さのお辞儀

璃奈「ミアちゃんの事、お願いします....」

璃奈の声は、蚊の鳴き声の様な、小さな小さな声だった。

0120名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 00:12:09.69ID:Q6hmgJCA
貼るのここまで
もう少しだけ期間伸びます

0121名無しで叶える物語(もんじゃ)2023/03/20(月) 00:57:03.19ID:SGLHW/5l
おつおつ

0122名無しで叶える物語(SIM)2023/03/20(月) 09:37:18.83ID:a2IdxYoK
支援

0123名無しで叶える物語(茸)2023/03/20(月) 22:29:47.10ID:jbCBNgeU
続けろ

0124名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 23:02:14.29ID:Q6hmgJCA
くすくすくす

クラスメイト「ざわざわ」

歩夢「ねぇ、あなた」

あなた「歩夢ちゃん....」

あなた「私ね、絶対学校休んだりしない」

あなた「カメラ向けられても、怒ったりしない」

あなた「ミアちゃんの事ね、ラクダになってから、ずっとやだなって思ってた」

あなた「だって、ラクダだもん。異質だもん」

あなた「でもそうやって避けてても、何かがあるわけじゃないんだ」

あなた「逃げた先に、何かある訳じゃないの」

歩夢「.....うん」

歩夢「私も、逃げない」

あなた「......」

あなた「....すぅ」

0125名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 23:06:07.61ID:Q6hmgJCA
あなた「見てろよ!虹ヶ咲の全員!」

あなた「私はミアちゃんの事から逃げない!!」

あなた「学校も休まない!」

あなた「そうやって、安全な所から、石を投げて楽しいか!」

あなた「来るなら正々堂々とかかって来い!」


「.......」シーン


ざわざわ  ざわざわ




歩夢「ポカーン」

あなた「あははっ、思った事、叫んじゃった」

あなた「らしくないや。ほんと、不器用だね、みんな」

0126名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 23:09:52.05ID:Q6hmgJCA
⭐⭐⭐⭐

ラジオ体操~ 第一~

いちにっ さんしっ~


軽やかなメロディと共に、かすみは目を覚ました。

どこか遠くで、体育の授業を行っているらしい。

柔らかな日の光と、優しい風がかすみの肌を撫でる


かすみ「....」パチリ

かすみ「...っ!」ズキズキ

かすみ「いっ、たぁ」



「ようやく、目覚めましたね」


かすみ「!?」

0127名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 23:17:48.66ID:Q6hmgJCA
「虹ヶ咲の教員は何を考えているんでしょうね」

「先程まで、殴り合ってた生徒二人を、同じ教室にするなんて」

かすみ「せつ菜、先輩...?」

せつ菜「よくも私の鼻折ってくれましたね。スクールアイドルは顔が命なのに」

かすみ「それを言ったら、先輩こそ」

せつ菜「痛くて口しか動けません」

かすみ「....認めたくないけど、かすみんも」

せつ菜「.....」

かすみ「.....」

せつ菜「私、どこで間違えたんでしょう」

かすみ「.....」

せつ菜「かすみさんが言った通り、口で言えば良かった。私達人間には、言葉を話して理解する能力がある」

せつ菜「私は、人間に生まれたのに、このツールを使えない。人間に生まれたのに、人間じゃなかった」

かすみ「.....」

かすみ「なんなんでしょうね、人間」

0128名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 23:21:28.81ID:Q6hmgJCA
かすみ「先輩、私の事殴ってスッキリしました?」

せつ菜「....はい」

かすみ「じゃあ今度は、彼方先輩ビンタしに行きましょう」

せつ菜「....はい」

0129名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/20(月) 23:26:03.13ID:Q6hmgJCA
今日はここまで

0130名無しで叶える物語(SIM)2023/03/21(火) 09:33:18.20ID:vl59+ZAm
支援

0131名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 19:10:54.75ID:LZKkfm4S
>>127
教室→病室

0132名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 19:16:53.52ID:LZKkfm4S
⭐⭐⭐⭐

四角い小さなはめ殺しの窓を背に、嵐珠が座る。

ランジュの前には、机、椅子、そして彼方。

彼方が逃走しない様に、しずく、果林、エマ、栞子が出口を塞ぐ。

密室となったこの部屋には、息もできない様な空気が流れていた。


彼方「.......」

ランジュ「...今回の件」

ランジュ「...処分は重くつくわ」

彼方「...」

0133名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 19:24:05.18ID:LZKkfm4S
ランジュ「しばらくの間、停学って所ね。あなたの進路も、全て白紙。事情はあなたから説明しなさい」

彼方「....はい」

彼方「....」

ランジュ「やけに塩らしいじゃない。いつもの飄々とした態度はどこ行ったの?」

ランジュ「本当はさっきの一発でも、退学にした所でも済まされない。八つ裂きにしても、済まされないぐらいよ」

ランジュ「あなたの、彼方の人生が、この先どんなに酷くなっても、私は因果応報だと捉えるわ」

ランジュ「詫びて。そして、地を這いつくばって、惨めに生きなさい」

彼方「....うぐっ」

ランジュ「....泣いてるんなら、初めからこんな事するんじゃないわよ」ぼそっ

彼方「ごめんなさい」ズビズビ

ランジュ「私じゃなくて、ミアに言うべきよ!」

ランジュ「本当どこまでも!「彼方さん」」

0134名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 22:04:24.41ID:LZKkfm4S
しずく「彼方さん!」

しずく「最後に、最後に聞かせてください」

しずく「私達を誑かして、どんな気持ちでした?」

彼方「....」

しずく「どんな気持ち、でした?」

彼方「....ごめんなさい。自分でも、よくわからない」

彼方「みんな、私には眩しすぎるんだ。地位も、
頭も、お金も」

彼方「みんな、私より上で、恵まれてて」

彼方「そんな人達を、自分と同じ水準に引き摺り下ろしてるみたいだった」

彼方「だから、楽しんでいたのかもしれない」

しずく「.....」テクテク


しずくは彼方の前に立つ。そして。


しずく「...!」パァン!

彼方「....っ!」じんじん

しずく「最低」

しずく「一生、許しませんから、私も」

彼方「....うん」

0135名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 22:18:54.26ID:LZKkfm4S
⭐⭐⭐⭐

ぴっぴっぴっ

ミア「.....」シュコー


鼻に繋がれたチューブのせいで息がしづらい。

点滴のせいで、身動きも取れない。 

様々な管が身体に繋がれ、大怪我をしている様に見える中、ミア・テイラーは目を開くのを拒んでいた。

本当は意識だってあるし、人間の言葉だってわかっている。

砂漠に耐えうる動物のラクダである。ちょっとやそっとではくたばらないし、生命力だって強い。


璃奈「ミアちゃん....」

愛「ミアち...」


璃奈や愛が、ベッドの脇に立っている。実にバツが悪い。


ミア「(結局、自分のわがまま所為で、他人が傷つく)」

ミア「(それは、とっても嫌だ)」

ミア「(そう思って行動したけれど、結局、僕のわがままの所為で、みんなが傷ついてしまった)」

ミア「(あぁ、今度は本当に、人間を辞めて、全部ラクダになってしまいたい)」

ミア「(全部ラクダになって、人間の記憶も、全部消してしまいたい)」

0136名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 22:23:17.26ID:LZKkfm4S
ミア「ボエ~」

璃奈「ミアちゃん!」

ミア「(はっ....!)」

ミア「(もっと病人になり切らないと)」

ミア「.....」耳ピクピク


動物の耳というのは、言葉の様に内面をそのまま現す。

人間が、目は口ほどに~と言うならば、ラクダの耳は人語のほどに~と言った所か。

それを、璃奈が見逃す訳がない。

璃奈「ミアちゃん、もしかして、起きてる?」

ミア「....!」

0137名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 22:28:57.36ID:LZKkfm4S
ミア「....」

璃奈「ミアちゃん、聞いて」

璃奈「起きてないんだったら、私の独り言」

璃奈「あのね、実はね」

璃奈「ラクダから、人間に戻れる薬を作ったの」

璃奈「でも、これ、錠剤だから、昏睡状態のミアちゃんに無理矢理投与も出来ない」

璃奈「ましてや、薬を飲みたいって言う、ミアちゃんの意志もないし...」

璃奈「でもね、ミアちゃん」

璃奈「私ね、ミアちゃんにもう一度人間に戻って欲しいの」

璃奈「ミアちゃん、前に言ってたよね」

璃奈「人間には、内枠と外枠があるって」

0138名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 22:33:35.10ID:LZKkfm4S
璃奈「その枠って、ある意味、自分はそこまでだって決めつけてるんじゃないかな?」

璃奈「別の人から見たら、別の枠組みがあるし、それを模索しないで、ただ喚いてるだけじゃ」

璃奈「ミアちゃん。ミア・テイラーはそんな人じゃないでしょ?」

璃奈「もっと、傲慢で、鼻が、文字通り高くて、そのくせ実力も玄人で」

璃奈「他をコテンパンにやっつけちゃう実力の持ち主だった筈だよ。勇気も持ってる。じゃなきゃ、彼方さんを助けなかった」

璃奈「お願い、ミアちゃん。人間に戻って」

璃奈「戻って、もう一回、好きって言って」

ミア「.....」

ミア「..........」

ミア「.................」

0139名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 22:42:42.76ID:LZKkfm4S
ミア「(ボク、またわがまま言ってる)」

ミア「(わがままの所為で璃奈が悲しんでる)」

ミア「(ラクダって、なんだったんだろう。ラクダになっても、問題が解決された訳でもなかった)」

ミア「(でも、心のどこかで、まだ人間でありたいって気持ちが大きくなってる)」

ミア「(喋れない事、何にもやらないって返って不自由だ)」

ミア「(ラクダを辞めることも、ある意味わがままだ)」

ミア「(わがままは、もうやめにしよう)」

ミア「(ラクダは、もうやめにしよう)」ムクリ


ミア・テイラーはムクリと起き上がる。

そのまま、まっすぐな黒い瞳で、璃奈と愛を見つめて、ボェ~と鳴いた。

そして、璃奈の手から、錠剤を口で器用に舐めとると、ゴクッと全て飲み込んだ。


ピカ~っとミアの身体が光る。

0140名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 22:50:04.79ID:LZKkfm4S
光は、ラクダから、ミアの形にメタモルフォーゼした。

光の後には、ミア・テイラーが残った。

ミア・テイラーは人間になった。


璃奈「おかえり、ミアちゃん」

ミア「ただいま、璃奈」

愛「人間に戻って、何かしたい事はある?」

ミア「ハンバーガー食べたい」


しばらくミアは、質素なベッドに寝かされ毛布がかけられた。

ボーっと待っていると、璃奈が息を切らしながら戻ってきた。

璃奈「これ、コンビニのだけど」

ミア「ありがとう」ぱくっ

ミア「.....うまい」


ラクダ期を経たためか、いつも散々酷評している、コンビニのハンバーガーさえ、とても美味しく感じられた。

0141名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 22:54:44.92ID:LZKkfm4S
⭐⭐⭐⭐

ちびっ子「ねえ、今日もミアちゃんの所いこー」

ちびっ子「あれ~、ミアちゃんいない~?」

ミアは校門を優雅に歩く。ラクダの様に、優雅に歩く。

そこには、かつての弱気なミア・テイラーは居ない。

今のミア・テイラーは、自信にあふれている。

テクテク  

テクテク


「あっ」

「あっ」

0142名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 23:00:45.51ID:LZKkfm4S
彼方「あっ」

ミア「あっ、うん」

彼方のほっぺは大きく腫れている。


彼方「あっ、あのーっ!」

ミア「知ってる。しばらく、停学になるんだろ?」

ミア「ボクも、みんなも、彼方の事許さない」

ミア「だけれど、ボクだけは、彼方が戻ってくる事、待ってるから」

彼方「....ありがとう」

ミア「Until the next time we meet, be well」

彼方「.....うん」




ミア「ははっ、次会うときまでお元気で、かぁ」


木漏れ日の下でミア・テイラーは静かに笑った。






ラクダになったミア・テイラー  


おしまい

0143名無しで叶える物語(らっかせい)2023/03/21(火) 23:07:16.63ID:LZKkfm4S
過去作

璃奈「たとえば、姉妹愛について」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1664541605/l50?v=pc

【SS】エマちゃんのおっぱいで学ぶ世界遺産
https://fate.5ch.net/fate/test/read.cgi/lovelive/1671241165/

璃奈「出会い厨釣って安曇追分駅に放置する」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1677840423/?v=pc

0144名無しで叶える物語(しまむら)2023/03/21(火) 23:27:49.68ID:GVX9wiXW
やっぱり全部理解してたのか…

0145名無しで叶える物語(SIM)2023/03/21(火) 23:52:01.23ID:i8UwZODg
ぶっ飛んだ世界観なのに話が丁寧で泣ける😭
乙でした

0146名無しで叶える物語(鮒寿司)2023/03/22(水) 18:30:34.11ID:fzbhxlSI
滅茶苦茶面白かったわ

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