0001名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/03/31(火) 16:44:07.51ID:xhEhFjfD
ようりこSS
0142名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:34:22.73ID:FGplaFnY
善子「ねえリリー……その……大丈夫……?」
梨子「ぐすっ……うん、ありがと善子ちゃん……私は、大丈夫、だから……」
梨子(大丈夫?大丈夫ってなに?だって私はこんなに辛くて……何していいのかも、わかんなくて……何も出来ることがなくて……)
善子「リリー……」
善子「わ、私!出来ることはなんでもやるから!リリーのために!……曜とリリーの間に、何があったかは知らないけど……リリーと曜がもう一度幸せになるために!できることはなんでもするから!」
善子「だ、だから!その!……」
善子(元気、出して、よね……)
梨子「ぐすっ……うん、ありがと善子ちゃん、その気持ちだけで、十分だよ?」
善子「リリー……」
0144名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:35:34.07ID:FGplaFnY
………
…
梨子「……」
梨子(私は、どうしたかったんだろ?)
梨子(千歌ちゃんから幼馴染を奪って……千歌ちゃんと曜ちゃんのことめちゃくちゃにして……)
梨子(千歌ちゃんは死んじゃって……曜ちゃんはいなくなっちゃって……)
梨子(全部全部、私のせい、よね……)
梨子「………ぐすっ………ひくっ」
梨子「………」
梨子(千歌、ちゃん……)
梨子(ねえ千歌ちゃん、千歌ちゃんの最期は、どんな気持ちだったのかな?)
梨子(………後悔とか……未練とか……なかった、のかな?)
梨子「わかんない、わかんないよぉ、そんなこと………」
梨子(でも、千歌ちゃんはもういなくて、千歌ちゃんがいない世界で——
ダイヤ『それが残された者の、責務というものです』
梨子「……」
梨子(私なんかに、何が出来るんだろ……)
梨子(そう、私なんかにできることは、何もなくて……)
梨子(だから、私なんて、私なんて——
梨子「ぐすっ………ぐすっ………
ポチポチ
0145名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:37:03.54ID:FGplaFnY
———
梨子:お願い曜ちゃん……もう一度だけ、元気な姿を見せて?曜ちゃんの声を聴かせて?
梨子:私ずっと、待ってるから
———
梨子「……」
梨子「……お願い曜ちゃん、もう一度だけ、お話させてよ」
梨子(たまらなく、あなたの声が、その優しくて快活なその声が、恋しいです)
梨子(曜ちゃんならきっと私のこと……)
梨子(助けてくれるよねって、無責任に、思ってしまうのです)
梨子「……」
梨子「曜ちゃん……会いたいよぉ……」
………
…
私の悲痛な心の叫びは、ただ虚空へと消えていくだけでした
0146名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:48:20.20ID:FGplaFnY
大学2年生 5月
十千万旅館
梨子「内浦……久しぶりね……」
ザァ~……ザザ~ン……
梨子「……」
梨子「ほんと、変わらないわね、海も、空も、この太陽も………」
梨子「それこそ、千歌ちゃんが言っていた通り……」
梨子(……)
梨子(千歌、ちゃん……)
梨子(ねえ、千歌ちゃん、今でも私のそばに、いてくれてますか?)
梨子(私は、あの時から……千歌ちゃんと離ればなれになった、あの日から……成長、できてるのかな?)
梨子「……」
梨子「でも……」
梨子(今は、前に進むしか、ないのよね?)
梨子(だって私には、それしか出来ないんだもん。私は千歌ちゃんとは違って、優しく、なれないから—
梨子「うん!そうよね!」
梨子(覚悟はできた、だから—
梨子(私は自分と、向き合わなくちゃいけない)
0147名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:49:07.91ID:FGplaFnY
ガラガラッ
梨子「すみませーん。私、梨子です。桜内梨子です」
志満「あら、梨子ちゃん、いらっしゃい。ごめんね、わざわざ戻ってきてもらっちゃって……」
梨子「いえ、お気遣いありがとうございます。それより、千歌ちゃんのことって……」
志満「まあまあ梨子ちゃん。そう焦らないで?せっかくわざわざ遠いところ来てもらったんだし、ほら?」
志満「お茶でも飲んでいかない?」
0148名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:50:09.43ID:FGplaFnY
梨子「すみません、こんなおもてなしまで受けてしまって……」
志満「いいのよ、だってほら?梨子ちゃんって妹みたいなものだし」
梨子「妹、ですか……」
志満「そうね。曜ちゃんも梨子ちゃんも、高校生の時は、しょっちゅう千歌ちゃんに会いに来てたじゃない?だから、妹が四人に増えたみたいで……ほんと賑やかだったわね、あの頃は……」
梨子「そ、そうですね……」
梨子(曜、ちゃん……)ズキリ
志満「あっ、そうそう、千歌ちゃんといえば……」
志満「これを、梨子ちゃんに見てもらいたくて……」スッ
0149名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:51:16.06ID:FGplaFnY
梨子「こ、これは……」
梨子(手紙、なのかな……)
志満「この前ね、お部屋のお掃除をしてたらたまたま、これが出てきたのよ。本の隙間に隠してたみたいだから、去年の大掃除では見つけられなくて……」
梨子(手紙……私と曜ちゃんに宛てた……)
志満「千歌ちゃんどうやら、卒業式でこれを、梨子ちゃんと曜ちゃんに渡そうと思ってたみたいで……」
梨子「卒業式……」
千歌『いやだよぉ……わたし、このままバイバイなんて、いやだよぉ……わたし、わたし、まだ……ようちゃんに、つたえられてないことあるのにぃ……』
梨子(や、やっぱり!千歌ちゃん、あの時のこと、ずっと、気にしてたんだ……)
梨子「あ、あのっ!志満さん!私、これ、頂いてもいいですか?」
志満「ええもちろん。だってこれは、梨子ちゃんが持っておくべきだと思うから」
梨子「そ、それと!曜ちゃんにも!私が!責任もって!手紙、渡しておきますから!」
志満「うん、お願いね、梨子ちゃん」
0150名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:51:53.06ID:FGplaFnY
志満「今日はごめんなさいね。東京からわざわざ戻ってきてもらっちゃって」
梨子「いえ、他ならぬ志満さんの頼みでしたし、それに……」
梨子(千歌ちゃんのこと、だから……)
梨子(あの時私が出来なかった償いを、もう一度やり直すチャンスだから……)
梨子(だから……)
志満「……」
ムニュッ
梨子(!!!!?)
梨子「ほえっ!?し、志満さん!?」
0151名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:53:07.52ID:FGplaFnY
志満「梨子ちゃん、顔、硬くなっちゃってるわよ?」
志満「ほら、笑って笑って。せっかく久々の内浦なんだから」
梨子「で、でも……」
志満「梨子ちゃんが笑顔じゃないと、千歌ちゃんもきっと悲しんじゃうわよ?」
梨子「千歌、ちゃん……」
志満「私もね、千歌ちゃんが死んじゃったとき、すごく悲しかったのよ……そりゃあ、かけがえのない、可愛い妹でしたもの」
志満「でもね、いつまでも亡くなった人に縛られてるのって、良くないのよ?だって幸せになれるのは、今を生きてる私たちだけなんだもん」
志満「だから、ね?梨子ちゃんもまた笑えるように、頑張ってみて欲しいな?」
梨子「……」
梨子「はい、ありがとう、ございます……」
0152名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:54:32.67ID:FGplaFnY
———
………
…
ザァ~……ザザ~ン……
梨子(21)「……」
ザァ~……ザァ~……
梨子(千歌ちゃんの残した手紙には……)
梨子(曜ちゃんのことをお願いしますって、簡単に……)
梨子(千歌ちゃんの気持ちは、言葉にしなくても、私に伝わってるって、こと、なのかな……)
梨子(それと、曜ちゃんと幸せになってねって……)
梨子「千歌ちゃん……曜ちゃん……」
梨子「……」
0153名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 20:55:43.49ID:FGplaFnY
梨子(だから私、決めたんだ)
梨子(千歌ちゃんのためにも、そして何より、私が心から笑えるようになるためにも……)
梨子(もう自分の気持ちに、嘘はつかないって……)
梨子(これが千歌ちゃんに出来る、最後の贖罪なんだなって……)
梨子(だから、だから私は……)
梨子『やっと、見つけた……久しぶり、曜ちゃん』
曜『何しに来たの!梨子ちゃんにとって私はもう!何も関係ないはずじゃん!』
梨子(この広い世界から、たった一人の曜ちゃんを見つけて—
梨子「……」
梨子「ぐすっ……ぐすっ………」
梨子「なのに……なのに………」
梨子「どうして……どうして……!」
梨子「私はまた、間違えちゃったの……」
梨子「ぐすっ……ぐすっ……」
梨子「なんで……なんで………!」
梨子(千歌ちゃん………)
梨子(ごめん千歌ちゃん……約束は果たせそうにないよ……)
梨子「ごめんね……ごめんねぇ……」ポロポロ
………
…
0154名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:20:35.75ID:FGplaFnY
———
旧浦の星女学院
曜「はぁ……はぁ……」
曜(とりあえず、ここにきてみたけど……)
曜「なんで、ここにしたんだろ……だってここはもう、閉校してて……」
曜(……)
曜「……あっ」
ギィィーーッ
曜「校門、あいてる……」
………
…
0155名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:21:37.46ID:FGplaFnY
部室
ガラガラッ
曜「……」
曜「……本当に、あの頃のまま、なんだね」
曜(記憶の中ですっかり美化された、あの頃の部室と変わらないくらい、キレイ……)
曜「……」
ピラッ
曜「……」
曜「……この紙、もしかして」
曜「……やっぱり。千歌ちゃんが歌詞考えるときの、メモだ……」
消えない消えない 消えないのは
今まで自分を 育てた景色
曜「……」
曜「……千歌ちゃんの嘘つき」ボソッ
0156名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:22:50.69ID:FGplaFnY
曜「全部なくなっちゃったじゃん!……学校も、思い出も、千歌ちゃんも、私たちも!」
千歌『大丈夫、なくならないよ』
千歌『浦の星も、この校舎も、グラウンドも、図書室も、屋上も、部室も……』
千歌『海も、砂浜も、バス停も、太陽も、船も、空も、山も、街も……Aqoursも!』
曜「はぁっ………はぁっ……千歌ちゃん……?」
千歌『全部全部全部ここにある!ここに残ってる!』
千歌『私たちの中に残っていて、ずっとそばにいる。ずっと、一緒に歩いていく。全部、私たちの一部なんだよ!』
曜「違う!そんなことない!だって千歌ちゃんはいなくなっちゃって!私を置いていっちゃって—
曜「千歌ちゃんのいない世界なんて、私、私—
………
…
0157名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:23:49.82ID:FGplaFnY
———
千歌『……よう……ちゃん』
千歌『曜ちゃん、起きて?風邪ひいちゃうよ?』
曜「え!?あれ、私、部室で……泣いてて……それから……」
曜(少し眠っちゃってたみたいで……それから……)
曜(目が覚めたら、目の前に千歌ちゃんがいて……)
曜「……って千歌ちゃん!?うそ……本物の、千歌ちゃんなの……?」
千歌『うん、本物の私だよ』
曜「えっ!?だって、そんなはずは……千歌ちゃんはあの時、死んで……」
曜(それに、不思議な空間だ……どこまでもオレンジ色が続いてて……ふわふわ漂ってるっていうか……)
千歌『そうだねー、私あの時、死んじゃったからねー、だからちょこっと神様に時間を借りて、曜ちゃんに会いに来たんだ』
曜「えっ!?ど、どういう、こと……?」
千歌『親愛なる曜ちゃん!今日は曜ちゃんにお話したいことがあって来ました!』
0158名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:25:13.30ID:FGplaFnY
曜「私に、話したい、こと……」
千歌『もうっ!曜ちゃん!私ずっと、曜ちゃんと梨子ちゃんのこと、見てたんだからね!死んじゃってから、ずーっと!』
千歌『それなのに!曜ちゃんは梨子ちゃんにまで迷惑かけて!ずーっと自堕落な生活してて!もうっ!私、かんかんだよ!かんかんみかんなのだ!』
曜「で、でもっ!それは、千歌ちゃんのことが忘れられないからで……私、千歌ちゃんのことずっと、好きだったから……」
千歌『曜ちゃん……』
千歌『甘い!甘いよ曜ちゃん!西浦のみかんよりも甘い!』
曜「……えっ?」
0159名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:26:28.83ID:FGplaFnY
千歌『曜ちゃん、私のことを大切に想うその気持ちが、梨子ちゃんを傷つけていい理由になんて……梨子ちゃんから逃げる言い訳になんて、なっていいわけじゃないんだよ?』
千歌『それに、死んじゃった私にいつまでも依存されるのは、私としても、本望じゃないから……』
千歌『だから曜ちゃんは、曜ちゃんだけの人生を、歩んで行って欲しい。私にこだわらずに、ね?』
曜「で、でもっ!私、怖いの!私の中から千歌ちゃんがいなくなっちゃうのが!私、千歌ちゃんがいないと何もできなくて!だ、だから、私、いつまでも……」
デコピーン
曜「あいたっ!」
千歌『もうっ!いつまでそんなこと言ってるつもりなの?』
千歌『曜ちゃん、もう少し自分の周り、見つめ直してごらん?』
曜「自分の、まわり……」
千歌『そう!曜ちゃんの周り!』
0160名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:28:18.97ID:FGplaFnY
千歌『もちろん曜ちゃんのそばには、いつも私が付いてるけど……でも、曜ちゃんを支えてくれてるのは、私だけじゃないはずだよ?』
千歌『果南ちゃんや善子ちゃんたちだって、曜ちゃんのこと私と同じくらい大切に想ってくれてるだろうし……それに何より、梨子ちゃんがいてくれてるから』
曜「梨子ちゃん……」
曜「でも、私、梨子ちゃんには、もう……会えないっていうか……」
千歌『……』
千歌『……私ね、曜ちゃんと梨子ちゃんには、幸せになって欲しいの』
千歌『ごめんね曜ちゃん、私、ずっと謝ろうと思ってたんだ』
千歌『ほら、高校の最後の一年間、私のせいで、ぐちゃぐちゃにしちゃったから……』
曜「違う!あれは私が悪いの!私が弱くて、逃げてばっかで……」
千歌『うん、曜ちゃんは優しいね、ありがとう』
千歌『でも、いなくなっちゃった私が、禍根を残していくわけにはいかないから』
曜「千歌、ちゃん……」
千歌『だから、梨子ちゃんのこと、お願いね?これは曜ちゃんにしか頼めないお願いだから……』
千歌『これが私の、本当に最後のお願い』
0161名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:31:32.87ID:FGplaFnY
シュワ~~~
千歌『……曜ちゃん、どうやらもうすぐ、時間みたい』
曜「えっ!?なに、時間って……ま、まさか!?もう!?だってまだ少ししか……」
千歌『うん。曜ちゃんとできるお話も、これでおしまい』
曜「だ、だめっ!だってまだ、話したいこと、聞いてほしいこと、たくさんあって……」
千歌『言わなくてもわかってるよ。だってずっと、見てきたんだもん』
曜「いやっ!待ってよ!千歌ちゃん!私のこと、置いてかないでよ!」
千歌『ううん、曜ちゃんはもう、大丈夫だよ。だって……』
千歌『私とすれ違うことも、もうないから。曜ちゃんは、私の気持ち、全部理解してくれてるから』
0162名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:32:31.31ID:FGplaFnY
千歌『だから曜ちゃんはきっと、大丈夫!』
千歌『曜ちゃんが誰よりも強いことは、私が一番知ってるから!だって私、曜ちゃんの幼馴染だもん!』
曜「待って!待ってよ千歌ちゃん!まだ言いたいこと、聞きたいこと、たくさんあって——
千歌『ううん、曜ちゃん。これからは曜ちゃんだけの人生を歩くの。曜ちゃんが自分で考えて、自分の気持ちを大切にして……』
曜「いや!そんなの無理だよ!私、私—
千歌『ほら、梨子ちゃんが待ってるから、いってあげて?』
千歌『梨子ちゃんのこと、幸せにしてあげるんだよ?』
曜「千歌ちゃん!千歌ちゃん——
伸ばした手は虚空をかすめ
………
…
ただみかん色の光を、つかむだけだ
0163名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:34:42.11ID:FGplaFnY
曜「千歌ちゃん……千歌ちゃん……」
曜「うわーん!ぢかちゃーん!!ぐすっ!ぐすっ!!」
曜(私、どうして泣いてるんだろ……千歌ちゃんが死んじゃった時でさえ、涙なんて、出なかったのに……)
曜「千歌ちゃーん!!ちかちゃーん!!!……ひくっ……ぐすっ……」
曜(……)
曜(ああ、やっぱり私、大好きだったんだな……千歌ちゃんのこと)
曜(小さい時一緒に海で遊んだこと。千歌ちゃんに手を引っ張られながら浜辺を駆け回ったこと)
曜(誰よりも最初にAqoursに誘ってくれたこと。予備予選ではダブルセンターで歌ったこと)
曜「ううっ……千歌ちゃん……千歌ちゃん……」
曜(全部が全部、私の大切な思い出で、忘れちゃいけない思い出)
曜(でも……)
曜「……」
曜「私、帰らなきゃ……」
0164名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:36:23.34ID:FGplaFnY
曜(でも、帰るって、どこに?)
曜「それは……」
曜「千歌ちゃんのいない、あの世界に」
曜「私の、現実に」
曜(いいの?また、同じ運命を、繰り返すだけだよ?)
曜(それに、ここにいれば、いつか千歌ちゃんと一緒に……)
曜「……」
曜「………!!」フルフル
曜「だめだよそれは。だって私はまだ生きてて……」
曜「だから私はまだ、生きなきゃいけなくて……」
曜(また間違えちゃうかもしれない。全部壊しちゃうかもしれない)
曜「それが千歌ちゃんとの最後の約束だから……」
曜(傷つくかもしれない。傷つけちゃうかもしれない)
曜(それでも……)
曜「これが私の、恩返しだから———
私は震える足に力をこめ、ゆっくりと歩きだす
曜「……」
曜「またね、千歌ちゃん」
曜「そして…
………
…
私と幼馴染でいてくれて、ありがとう
0165名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:37:51.90ID:FGplaFnY
———
曜「……」パチッ
曜「ここは……部室、か……」
曜「千歌ちゃん……はさすがに生き返ったりは、しないか……」
曜「……」
曜(そりゃそうだ……だってここは、現実なんだから……ははは……)
曜(そう、千歌ちゃんは、もう死んで……)
曜(……)
曜「でも、でも……」
曜「千歌ちゃんの想いは、確かにここにある……はず……」
曜「……」
曜「だって、さっき確かに、千歌ちゃんの声を聞いた、と思う……から……」
曜「だから……」
………
…
0166名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:39:23.16ID:FGplaFnY
??「千歌ちゃん、今日も来たわよ」
曜「!!!?」
曜(えっ!?誰か来ちゃうよ!?)
曜(ヤバいヤバいヤバい!だって私誰の許可ももらってないから!最悪、不法侵入だよこれ!)
曜(早くどこかに隠れないと……でも隠れるってどこに!?)
曜(ぶ、部室には、隠れる場所なんてなかったはず……ちょっと離れてるけど、更衣室とか!?)
曜(あわわ……どうしよどうしよ……)アタフタ
??「えっ?扉、あいてる……」
??「誰か、来てるの?果南ちゃんとかかな……?」
曜(あれっ?でも、この声、聞き覚えがあるような……)
ガチャッ
梨子「えっ?……曜、ちゃん……」
曜「梨子、ちゃん……」
梨子「……」
ダッ
曜「あっ待ってよ!梨子ちゃん!」
0167名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:41:25.80ID:FGplaFnY
曜「待ってよ梨子ちゃん!お願い!話があるの!」
梨子「来ないで!曜ちゃんにはあっても、私にはもう何もないの!」
ガシッ
梨子「放して!放してよ!いやっ!」
曜「いやだ!絶対に放さない!」
梨子「だって!曜ちゃんのこと!もう!傷つけちゃうのは嫌なの!曜ちゃんと一緒にいたら!私!また、曜ちゃんの気持ち!壊しちゃうから!私のワガママで、大好きな人を傷つけちゃうのは、もう見たくないの!だから!放して!放してよ!」
梨子「もう私、曜ちゃんのそばに、いられないの……」ポロポロ
曜「梨子、ちゃん……」
曜(全部、私が悪いんだよね……私が、梨子ちゃんをこんな気持ちにさせちゃって……)
曜(……)
曜(でも、反省するのはまだだ。まずは出来ることを、やらないと……)
曜(だって、梨子ちゃんは、まだ、せいいっぱい生きてるんだから)
曜(私もせいいっぱい生きるって、約束したから)
0168名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:42:56.36ID:FGplaFnY
曜「……」
梨子「ちょっと曜ちゃん、何、何するの……やだ!やめてよ!曜ちゃん!」
曜「……」
曜(私にはこれしかできないけど……この思いの半分だけでも……)
曜(届いて、欲しい)
ギュッ
曜「ごめん……ごめん梨子ちゃん……」
曜「私はもう、大丈夫だから……」
曜「今は少しだけ、こうしていて欲しい……」
梨子「曜、ちゃん……」
梨子「曜ちゃん……なんで……どうして……」ポロポロ
梨子「私、あなたのこと、大好き、大好きなのに……」
曜「うん、私も梨子ちゃんのこと、大好きだよ」
梨子「ひくっ……ぐすっ……曜ちゃん……」
梨子「曜ちゃん!曜ちゃーん!!うぇーーーーん!!」
0169名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:43:51.06ID:FGplaFnY
………
…
梨子「……」
曜「……」
梨子「……話って何、曜ちゃん?」
曜「それは……」
曜「……千歌ちゃんのこと」
梨子「……そう」
曜「……」
曜「ごめん!梨子ちゃん!」
梨子「……えっ!?」
曜「今まで中途半端な気持ちでお付き合いしててごめんなさい」
0170名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:44:49.98ID:FGplaFnY
曜「私、実は、高校二年生の時に、千歌ちゃんに振られてて、その代わりとして、梨子ちゃんを求めてたというか……」
曜「梨子ちゃんに、千歌ちゃんの影を追い求めてたというか……」
曜「り、梨子ちゃんのこと、正面から見られなかったから……」
曜「だから全部、ごめんなさい」
梨子「……」
梨子「……そう」
梨子「それに気づけただけでも、大きな成長なんじゃないかな?」
曜「え、あ、うん……」
梨子「じゃあこの話はここでおしまい。私ももう、過去のことは大丈夫だから、これからは私のことなんて気にせず、曜ちゃんは曜ちゃんだけの道を、歩んでね?」
曜「え、あ、梨子ちゃん……」
曜(ちがっ!違う!私が本当に伝えたいのは、こんなんじゃなくて……)
曜「あのっ!ちがっ……わた、しは……」
曜(上手く言葉が出てこない……だって伝えたい言葉は、二年分、山のようにたまっているから……)
0171名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:46:14.72ID:FGplaFnY
梨子「……」スタスタ
曜「まっ!いや……そう、じゃ、ない………」
曜(想いが堰をきったように溢れてきて、何が何だかわからないよ……)
梨子「……」
曜(でもっ!その中で光る原石を一つだけみつけて!)
曜(これが正解かはわからない……けどっ!)
曜(この気持ちは本物だって言いきれるんだ……だから……だから!)
曜「あのね梨子ちゃん!私!好きなの!!梨子ちゃんのことが!!」
曜「梨子ちゃんと再会して気づいた……やっぱり梨子ちゃんと一緒にいると、楽しいんだって!梨子ちゃんと一緒だと、幸せになれるんだって!!」
曜(傲慢で臆病で独善的だけどっ!これが私の素直な気持ちなんだよっ!!)
曜「梨子ちゃんに、そばにいて欲しいの!!!」
0172名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:47:16.40ID:FGplaFnY
梨子「……」
曜「……」
曜「だめ、かな?」
梨子「……」
梨子「曜ちゃん……」
ギュッ
梨子「やっと……やっと伝えてくれたね……嬉しい」
曜「りこ、ちゃん……」
梨子「もうっ……曜ちゃんのバカ……私が曜ちゃんのそばから、離れられるわけ、ないじゃない……」
曜「えっ、じゃあ……梨子ちゃん……いいの?」
梨子「……」
曜「……」
梨子「……う〜ん、どうしよっかな〜♪」
0173名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:48:28.64ID:FGplaFnY
曜「えっ!?そこは、すんなりOKするところじゃないの……?」
梨子「曜ちゃん、あなたがこの二年間でやったこと、覚えてる?」
梨子「そんな簡単に許されることだと、思ってるの?」
曜「あっ、いや、そうだよね……」
曜(たくさん梨子ちゃんのこと、傷つけちゃったから、今更全部水に流せなんて虫のいい話、あるわけないよね……)
梨子「うん、だから曜ちゃんには責任を持って、私のことを幸せにしなきゃ、だめなんだからね?」
曜「えっ!?梨子ちゃんを、幸せに……」
曜(……)
曜(そんなこと私に、できるのかなぁ……?)
梨子「私、曜ちゃんとやりたいこと、いっぱいあるんだ」
梨子「まずお洋服見に行きたい。曜ちゃんオシャレで可愛いから、きっと楽しいと思う」
梨子「それから、二人で旅行にも行ってみたい。二人でしか見れない景色を、探してみたいって思うの」
梨子「それからそれから……」
曜「えっ!?まだあるの梨子ちゃん?ちょっと、多くない……?」
梨子「いいの!だいたい二年間私をほったらかしにして、やりたいことリストを貯めさせたのは、どこの誰だと思ってるのよ!」
曜「うっ、それを言われると返す言葉がないよ……」
梨子「あとねあとね……」
梨子「……」
梨子「……二人で千歌ちゃんのお墓参りに行きたい」
0174名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:49:05.76ID:FGplaFnY
曜「千歌ちゃんの、お墓……」
梨子「もう千歌ちゃんからは……私からもだけど……逃げて欲しくないって思うから」
梨子「それに千歌ちゃんも、私たちのこと、心配してると思うんだ」
梨子「だから、私たちはもう大丈夫だよって、報告しにいくの」
梨子「お願い……できる?」
曜「……」
曜「……うん、頑張ってみるよ」
梨子「ありがと曜ちゃん、じゃあ……」スーッ
曜「梨子、ちゃん………//」
梨子「約束、だよ?//」
………
…
初めての口づけは、ちょっぴり苦い、砂糖の味がした
0175名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:50:15.34ID:FGplaFnY
———
高海家之墓
曜(21)(拝啓 千歌ちゃんへ)
曜(あの日……千歌ちゃんと最後に会えた奇跡の日を、私は一生忘れません)
曜(だって千歌ちゃんと、初めて向かい合えた、大切な日だから)
曜(千歌ちゃんと、同じ景色を見られた日だから)
曜(たとえあれが、私の空想、だったとしても……)
曜「……いや、そんなことないよ。だって千歌ちゃんは、奇跡の申し子だから」
0176名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:51:09.89ID:FGplaFnY
曜(あれから私はまた、梨子ちゃんとお付き合いをすることになりました)
曜(梨子ちゃんは、少しずつでも私と幸せを見つけていけるのなら嬉しいって言ってはくれてるけど……)
曜(私は、今出来ることを全部やって、全力で今を楽しみたいって思うんだ)
曜(いつかいなくなるとしても、分けれてしまうとしても)
曜(この今の時間だけは、間違いなくここにあるって思ってるから)
曜(私たちに出来ることは、今を幸せにして……笑って生きる、ことだけだから)
曜(今しかない、時間だから……)
曜(だから千歌ちゃんも見守っていて欲しいな)
曜(私が歩く、この人生を)
曜(もう後悔は、させないからね?)
0177名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:51:52.54ID:FGplaFnY
………
…
曜「……」
梨子「……千歌ちゃん、なんて?」
曜「……仏壇にみかん、お供えしといてって」
梨子「もうっ、千歌ちゃんらしいんだから」
曜「でも、千歌ちゃんにちゃんと挨拶は出来たと思うから……」
曜「これで、良かったんだと、思う」
梨子「そう……」
梨子「じゃあ私たちはもう行きましょ?曜ちゃん」
曜「う、うん……」
梨子「ばいばい千歌ちゃん。また来るわね」
0178名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:53:12.18ID:FGplaFnY
曜「……」
曜(ねえ、千歌ちゃん)
曜(私の声、届いてるのかな?)
曜(……)
曜(さすがにもう、あんな奇跡は起きないか……)
曜(でも……)
曜(たとえ言葉が届いてなくても)
曜(想いは伝わってるって信じてるから、私も……)
曜(だから—
0179名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:54:01.49ID:FGplaFnY
曜「そうだ千歌ちゃん!」クルッ
曜「最後に一つだけ、いいかな?」
曜「私たち三人、ずっとずーっと親友だよ!」
0180名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:54:10.96ID:FGplaFnY
FIN
0181名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 21:55:05.61ID:FGplaFnY
終わりです。お粗末様でした
ここまでコメント&お読み下さった方々、大変ありがとうございました。
0182名無しで叶える物語(もんじゃ)2020/04/01(水) 22:17:30.21ID:Li63Gxq2
お疲れ様でした!
感動しました…また書いてください
0184名無しで叶える物語(たこやき)2020/04/01(水) 23:55:00.53ID:v3dafWDS
乙!ようりこたまらん
3人それぞれに抱えた想いの描写が丁寧でウルッときたよ
感動した
0190名無しで叶える物語(SB-Android)2020/04/04(土) 18:45:23.10ID:0jMjsFvk
乙