「孤独死は独居老人より独身40代のほうが多い」

人知れずに死んでいく……。独居老人よりも多い中年孤独死
真夏のある日、東京都大田区にあるマンションの一室のドアを開けると、
視界を完全に塞ぐほどの黒い虫の大群が襲いかかってきた。
よく見ると、コバエだ。そして、部屋の奥から漂う強烈な死臭が防臭マスク越しの鼻をつんざく。

部屋で亡くなっていたのは、某上場企業の中間管理職だった42歳の独身男性(写真参照)。
すでに死後1か月が経過し、腐乱した遺体から流れ出た体液は、畳裏の板張りにまで達していた。
死因は糖尿病による合併症。

「孤独死=独居老人のイメージは、間違い。実は40〜50代の独身中年にこそ多い。
糖尿病など病気による離職や休職、リストラをきっかけに、
唯一の社会との接点だった会社での人間関係が断たれ、孤独死へと向かうのです」(石見氏)

特殊清掃人として孤独死の最前線に立つ石見氏によれば、
中年の孤独死には共通する特徴があるという。
50代の独身男性が都内自宅で孤独死していたケースでは、遺体発見時には死後3か月が経過。
メーカー系プログラマーとして活躍していたが、糖尿病で療養中だった。

「ほかにも『健康は精神の安定から』などといった自戒メモが大量に残されていることも、
中壮年男性の孤独死現場にはよくあります。
また、アニメやアイドルのDVDやフィギュアなどの収集品が大量に残されていることが多いのも特徴。
アウトドアな人よりは、インドアな人が孤独死に陥りやすい」

「ここ数年は現役世代の孤独死が増加傾向にあり、20〜25%を40代、50代が占めています。
そんななか、女性よりも社交性に乏しい男性は、さらに孤独死の可能性が高い。
例えばマンションの廊下などで隣人と会っても挨拶もしないような独身男性は、
立派な孤独死予備軍と言っていい。
地方出身で周りに親族もいなければなおさら。また、独身男性は食生活が乱れやすく、
脳梗塞などで突然死するリスクも高いでしょうね」

死後1か月が経過し、畳の下にまで遺体のシミがついてしまった孤独死現場。
<取材・文/週刊SPA!編集部 写真提供/あんしんネット>