「めぐ、このあとちょっといい?」
声のトーンで察した。
「うんわかった。」
愛子が積極的に相談を持ちかけてくれるようになってどれくらい経つだろう。

他のメンバーがレッスン室から出て行くのを愛子の隣で何気なく待つ。
「どうしたの?」
軽く息をつきながら壁に寄りかかる。

空調の音だけが聞こえる空間で沈黙する愛子に長期戦を予感してしゃがみ込む。
ここ2年間ですっかりと身長差が付いた私と愛子。でも愛子を見上げる機会は増えた様に思う。
7代目生徒会長は口を真一文字にして何度も小さく頷いている。見慣れた仕草だ。
そんな光景をぼおっと眺めていたらようやく愛子が口を開いた。

「なんかさ、最近色々考えちゃって」
「うん、私も。」
「どうしたら良いんだろうって、具体的に」
「うん。」

「愛子はどうしたい?」
「今のままじゃダメだと思う」
「私もそう思うよ。」
「うん」
「多分きっと最愛ちゃんも莉音ちゃんも颯良もみんな同じように悩んだよね。」
「うん」
「だから私たちも大丈夫だよ。」
「うん」
確かめるように静かに相づちをうつ愛子に少し安堵する。

愛子は甘え下手だ。特に私に対して。
以前は焦れったかったが今はそれが堪らなく愛しい。
グッと力を入れて愛子の両手を引くと愛子は抵抗なく距離を許した。

「愛子ってキスの時絶対に手がグーになるよね。」
「しらないっ」
「・・・・」
「ほらまた。」

私はキスの時だけは愛子にジャンケンで負けた事が無い。

                          



「ちょ、え、今なの??無理でしょ!?今は無理でしょ!??」
入り口の外では困惑する百々子に顔笑れ!!委員長としての責務を遂行させようと
押し問答が続いていた。
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