3月上旬のある日、マツダのイベントで懐かしい人に再会した。
初代ロードスターの開発に携わり、今はマツダを退職してジャーナリストとして活動している人だ。
ありきたりな挨拶が終われば、話題はやはりロードスターのことになる。
彼は、厳しい表情で、最新世代のNDロードスターを指して「あれはダメだ」とハッキリ言った。
当然ながら、完璧なクルマは歴史上一台も存在しないので、筆者はNDが完璧だとは言わない。
が、少なくとも、現在の世界のスポーツカーの中で、ベストのうちの1台に挙げることを躊躇(ためら)わない。
もちろん「スポーツカーとは何か?」というある種の神学論争において、
人それぞれのスポーツカー像は異なり、満場一致になることは考えられない。
だが、それでもベストスポーツカーにロードスターを推すのは極めて順当だ。
それだけに驚いた。
「どこがそんなにダメなんですか?」と問うと、
「走っている間中、接地感が希薄だ」と彼は即答した。
イベントもお開きとなり、参加者が三々五々帰って行く姿を見送りつつ、
筆者が要領を得ない顔をしているのを見て、彼は少々機嫌の悪い表情になり、
「もっと厳しくクルマを見ないと」、そう言い残して部屋を後にした。