岡山県津山市で2004年、小学3年だった筒塩侑子(つつしお・ゆきこ)さん(当時9歳)が殺害された事件。有力な物証はなく、
捜査は14年間難航していたが、岡山刑務所で服役中の勝田州彦受刑者(39)が侑子さん殺害を認め、急展開する見通しとなった。
遺族や知人らは真相解明を願い、捜査の行方を見守っている。

 勝田受刑者はこれまで、多数の少女に対する事件で立件され、判決で少女への特異な執着について指摘されていた。

 15年5月、兵庫県姫路市の路上で、面識のない中学3年の女子生徒の胸や腹をナイフで刺したとする殺人未遂容疑で県警に逮捕。
神戸地裁姫路支部は16年5月、勝田受刑者に懲役12年(求刑・懲役15年)の実刑判決を言い渡し、大阪高裁で懲役10年の判決が出た。

 1審判決では、事件の動機につながる特異な執着について言及されている。勝田受刑者は以前から、自身の腹部をシャツの上から
ナイフで刺し、血に染まる状況を見ながら、少女が同じように出血する姿を想像していた。

 自傷行為を繰り返した末に入院し、担当医から「もう自分を刺すことはできない」と告げられ、これを機に「現実の少女の腹部を
刺したい」と考えるようになった。裁判長はこの事件について、「少女のシャツが血に染まるのを見たいという特異な性癖から、
女子中学生を無差別に狙った通り魔事件」と断じていた。

 また、10年3月には、少女5人に対する傷害と暴行の罪に問われ、神戸地裁姫路支部で懲役4年の判決を受け、服役している。
判決によると、兵庫県の姫路市や三木市、太子町で小学1年〜高校3年(いずれも当時)の少女計5人の腹部をすれ違いざまに殴ったり、
ドライバーの先で突いたりした。このうち、姫路市で被害に遭った小学1年の女児は内臓出血の重傷を負った。

 一連の判決によると、勝田受刑者は学校や家庭内のストレスから自傷行為をしていたが、高校生の頃から少女が登場するアニメに
関心を持ち始めた。その後、10歳前後の少女らに対し、胸を拳で殴るなどするようになった。精神科に通院していたが、自ら通院をやめていた。

 一方、勝田受刑者の侑子さん殺害の疑いが強まった29日夜。兵庫県加古川市にある勝田受刑者の木造2階建ての住宅からは
明かりが漏れるが、出入りはなく静かだった。

 近所の女性(80)は3〜4年前、勝田受刑者が自宅前の路上で自家用車を毎日のように洗車する姿を見かけた。
女性が「車をいつもきれいにして、彼女でも乗せるの」と声をかけると、「違いますよ」と照れていたという。
女性は「車が大好きで、物を大切にする優しい青年だと思っていた。殺人事件への関わりを疑われているなんて信じられない」と話した。

■岡山・小3女児殺害事件の経過表

2004年 9月 3日

午後2時50分ごろ    筒塩侑子さん(当時9歳)が友人と下校

午後3時15〜20分ごろ 侑子さんが帰宅

午後3時35分ごろ    帰宅した姉が胸を刺されて倒れている侑子さんを発見

午後3時47分ごろ    姉から連絡を受けた母親が119番

午後4時59分      搬送先の病院で侑子さんの死亡が確認される

         4日  司法解剖の結果、死因は失血か窒息の疑いと捜査本部が発表。凶器は鋭利な刃物と断定する

  10年 4月27日  殺人罪などの公訴時効廃止を盛り込んだ改正刑事訴訟法施行

  18年 5月29日  岡山県警が、別の事件で服役中の勝田州彦受刑者(39)の逮捕状を取ったことが判明

2018年5月29日 21時21分(最終更新 5月30日 01時45分)
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180530/k00/00m/040/114000c