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2018/05/20(日) 21:34:32.05ID:CAP_USER92007年には第1次安倍政権が失速する契機となった「消えた年金」が大問題になった。約5千万件の記録が“宙に浮いている”ことがわかったが、それから11年間たっても解決のめどは立っていない。保険料をきちんと払ったのに、それに見合う年金をもらえていない人がたくさんいるのだ。
ずさんな管理体制が批判された旧・社会保険庁の代わりに日本年金機構が10年にできたが、信頼回復はできなかった。15年にはサイバー攻撃を受け、約125万件の個人情報が流出。17年には基礎年金に一定額が上乗せされる「振替加算」について、約10万6千人に計約598億円の支給漏れが発覚した。
この支給漏れをきっかけに機構が事務処理ミスについて総点検したところ、再発防止策が不十分でミスが何回も繰り返されていたケースも判明した。
そして今回は約130万人分の過少支給だ。
そもそもの発端は「扶養親族等申告書」という聞き慣れない書類だった。年金に所得税がかかる人は毎年、さまざまな控除を受けるためにこの申告書を出す必要がある。対象者には機構から書類が送られるので、それに記入して戻すやり方だ。
年金問題に詳しく「年金博士」とも呼ばれる社会保険労務士の北村庄吾氏は、申告書の重要性を指摘する。
「きちんと申告しなければ、控除額は少なくなります。収入から差し引かれる税額が高くなり、受け取る年金額も減ってしまいます」
控除を受けられないだけでなく、所得税(復興特別所得税含む)の税率が5.105%から10.21%と倍になる。申告しなかったときの不利益は予想以上に大きいのだ。機構によると、最大で年間30万円ほど損するケースもあり得るという。
この大事な書類を、機構は昨年8月下旬から9月上旬にかけて、老齢基礎年金受給者の2割強にあたる795万人に送った。ここに大きな問題が潜んでいた。
従来は往復はがきで変更点がなければ「変更なし」にチェックし送り返すだけで良かった。ところが昨年から、A3用紙に一から書く形式に突然変わったのだ。機構は「非常にわかりにくいものになってしまった」と今になって認めている。
「どう書いていいのかわからない」「毎年の申告書だとは気づかなかった」
こうした高齢者の戸惑う声が機構の相談窓口に殺到した。当初は昨年9月29日を提出期限にしていたが、12月11日まで延長。それでも期限までに出せたのは666万人しかおらず、約130万人が「過少支給」されることになった。
機構のこの問題への対応は、「不誠実」と批判されても仕方のないものだ。今年2月13日にホームページに「平成30年2月の老齢年金定時支払における源泉徴収税額について」との文書を出したが、問題の規模や深刻さは伝わらない内容だった。この時点では会見もしておらず、問題は表面化しなかった。
機構の水島藤一郎理事長は、2月15日の年金支給日から1カ月以上過ぎた、3月20日に初めて会見。対応の遅さを指摘されると「ホームページでは状況を開示してきたが、このような形で説明しなかったことは反省すべきだと考えている」と述べた。
さらに驚くべきことも明らかになった。機構が扶養親族等申告書のデータ入力を委託した業者は、契約に違反し、中国の関連企業に作業を再委託していた。この業者では入力ミスや漏れが続出し、期限内に提出された申告書が放置されるケースもあった。機構は業者の納品データをチェックしておらず、管理体制が不十分だった。
機構は再委託について、昨年12月に内部通報を受け1月6日には特別監査で把握したが、「ほかの業者がすぐに見つからなかった」として2月5日まで作業を続けさせた。監督する厚生労働省には1月9日に報告し、加藤勝信厚生労働相も1月10日には把握していた。加藤厚労相は2カ月以上公表しなかった理由について、「全体の解明がほぼ終わった3月20日の段階で、年金機構の理事長を呼んで公表に関する対応を指示した」としている。
機構は入力ミスや漏れがあった分については修正し、「おわび状」を送ったが、未提出者への対応には手間取っている。4月末までの提出を呼びかけていたが、回収状況はまだ公表していない。過少支給されたことに気づかないまま、すでに亡くなった人もいるとみられる。
問題を検証する調査委員会はできたが、結果の公表は6月になりそうで、関係者の処分もこれからだ。(本誌年金取材班)
※週刊朝日 2018年5月25日号より抜粋
https://dot.asahi.com/wa/2018051700055.html